JP6746275B2 - 低糖質ビールテイストアルコール飲料およびその製造方法 - Google Patents

低糖質ビールテイストアルコール飲料およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイストアルコール飲料とその製造方法に関する。本発明はまた、特定分子量のペプチドを有効成分とする低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤および該ペプチドを使用した低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善方法にも関する。
発泡酒や新ジャンルなどのビールテイスト発泡性アルコール飲料は、ビールよりも安価であり、ビールの代替として広く飲用されており、その中で低糖質のものは、健康志向の高まりに伴い消費者の支持を得ている。しかし、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーに欠け、ボディ感が弱く水っぽい、渋さや酸味などの雑味があるなど、香味上の欠点を有しており、味わいの調和に欠けるという課題がある。また、ボディ感が弱い、水っぽいといった欠点を補うために、水溶性食物繊維、高甘度甘味料、あるいは大豆蛋白分解物などが添加される場合があるが、味は増加するものの、渋みやざらつき、甘味やべたつきなど、特定の味が突出し、飲み始め・中盤・余韻のスムーズな味の流れがかえって損なわれてしまうという新たな課題も生じている。すなわち、低糖質のビールテイスト発泡性アルコール飲料は、ビールのような柔らかくスムーズなテクスチャーが不十分であり、渋味やざらつきなどの雑味が多い、香味の調和感に欠ける、など香味上改善すべき点があった。
ビールテイストアルコール飲料にコクや味の厚みを付与する技術としては、カルボキシメチルリジンを含みペプチドをコク付与物質として用いる技術(特許文献1および2)が知られている。しかし、低糖質のビールテイストアルコール飲料の香味の改善、特に柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や雑味の抑制、味わいの調和感の達成、については依然として改善の余地があった。
特開2011−227070号公報 特開2014−158502号公報
本発明は、香味が改善された低糖質ビールテイストアルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤と風味改善方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、低糖質ビールテイストアルコール飲料において、特定分子量のペプチドがビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れを付与するとともに、雑味の低減や調和の取れた味わいの付与に寄与することを見出した。本発明者らはまた、特定分子量のペプチドの濃度を特定の濃度範囲内にすることで、よりビールらしい調和感のある味わいが実現できることを見出した。本発明者らはさらに、ビールテイストアルコール飲料の風味改善に寄与するペプチドを具体的に特定した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド濃度が0.05mg/ml以上である、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。
(2)麦芽使用比率が3分の2未満である、上記(1)に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(3)全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率が2.7%以上である、上記(1)または(2)に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(4)分子量10〜20kDaのペプチド濃度が0.11mg/ml以上である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(5)グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が5.6mg/ml以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(6)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドが配合されてなる、低糖質ビールテイストアルコール飲料。
(7)分子量10〜20kDaのペプチドが0.05mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(6)に記載のビールテイストアルコール飲料。
(8)分子量10〜20kDaのペプチドが飲料中の全タンパク量に対して2.7%以上の比率となるよう配合される、上記(6)または(7)に記載のビールテイストアルコール飲料。
(9)分子量10〜20kDaのペプチドが0.11mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(6)〜(8)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料。
(10)ビールテイスト発酵アルコール飲料のグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が5.6mg/ml以下である、上記(6)〜(9)のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(11)分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドが、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4および非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)からなる群から選択される1種または2種以上である、上記(6)〜(10)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料。
(12)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを配合する工程を含んでなる、低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(13)分子量10〜20kDaのペプチドが0.05mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(12)に記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(14)分子量10〜20kDaのペプチドが飲料中の全タンパク量に対して2.7%以上の比率となるよう配合される、上記(12)または(13)に記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(15)分子量10〜20kDaのペプチドが0.11mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(12)〜(14)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(16)ビールテイスト発酵アルコール飲料のグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が5.6mg/ml以下である、上記(12)〜(15)のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
(17)分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドが、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4および非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)からなる群から選択される1種または2種以上である、上記(12)〜(16)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(18)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤。
(19)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを添加する工程を含んでなる、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善方法。
本発明によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaのペプチドを配合するか、該ペプチドの濃度を所定値の範囲内にすることによって、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れがあり、雑味が低減され、調和のとれた味わいを有する低糖質のビールテイストアルコール飲料を提供することができる。特に、麦芽使用比率25%未満の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では、ビールで感じられるような味わい(特に柔らかくスムーズなテクスチャー)が不十分な場合があり、また、香味上の改善点(渋味やざらつきなどの雑味)が存在する場合や、味わいの調和が不十分である場合があり、本発明はこのような飲料のビールテイスト飲料としての風味を改善ないし向上させることができる点で有利である。また、分子量10〜20kDaのペプチドは麦芽や未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に存在するものであることから、該ペプチドを低糖質ビールテイストアルコール飲料に上乗せして配合しても異味を生じさせることがない点でも有利である。
実施例1(5)でビール系麦芽アルコール飲料に添加したペプチド量を示した図である。 実施例1(5)の官能評価結果を示した図である。添加した画分ごとに官能評価スコアを示した。図2Aはビールらしい味わいの官能評価結果、図2Bは口内に残るざらつきの官能評価結果である。 実施例2(4)において実施したHPLCゲル濾過分画の保持時間と既知物質の分子量から作成した検量線を示した図である。 実施例2(5)の官能評価結果(スムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸をグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度(mg/ml)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は試験醸造品にそれぞれ対応する。バブルサイズはスムーズさのスコアを表す。 実施例2(5)の官能評価結果(スムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸を10〜20kDaペプチド比率(%)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は試験醸造品にそれぞれ対応する。バブルサイズはスムーズさのスコアを表す。 実施例2(5)の官能評価結果(香味の総合評価)を示したバブルグラフである。縦軸をグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度(mg/ml)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は試験醸造品にそれぞれ対応する。バブルサイズは香味の総合評価のスコアを表す。 実施例2(5)の官能評価結果(香味の総合評価)を示したバブルグラフである。縦軸を10〜20kDaペプチド比率(%)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は試験醸造品にそれぞれ対応する。バブルサイズは香味の総合評価のスコアを表す。 実施例2(5)の官能評価結果(スムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸を栄養表示基準に基づく糖質濃度(mg/ml)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は試験醸造品にそれぞれ対応する。バブルサイズはスムーズさのスコアを表す。 実施例3(2)の官能評価結果(スムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸をグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度(mg/ml)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様はサンプルNo.1が添加先のもの(No.1ベース)、縦縞模様はサンプルNo.2が添加先のもの(No.2ベース)、菱形模様はサンプルNo.4が添加先のもの(No.4ベース)にそれぞれ対応する。バブルサイズはスムーズさのスコアを表す。 実施例3(2)の官能評価結果(スムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸を10〜20kDaペプチド比率(%)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様はサンプルNo.1が添加先のもの(No.1ベース)、縦縞模様はサンプルNo.2が添加先のもの(No.2ベース)、菱形模様はサンプルNo.4が添加先のもの(No.4ベース)にそれぞれ対応する。バブルサイズはスムーズさのスコアを表す。 精製された画分についての2D−PAGE電気泳動の結果を示した図である。STDは、分子量マーカーである。図11AはサンプルNo.9についての結果であり、図11BはサンプルNo.10についての結果である。また、図11CはサンプルNo.11についての結果であり、図11DはサンプルNo.12についての結果である。
発明の具体的説明
本明細書において「ビールテイストアルコール飲料」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを有するアルコール飲料を意味する。
ビールテイストアルコール飲料には、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた「ビールテイストの発酵アルコール飲料」も含まれ、「ビールテイストの発酵アルコール飲料」としては、ビール、発泡酒、原料として麦または麦芽を使用しないビールテイスト発泡アルコール飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される醸造系新ジャンル飲料)および原料として麦芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。
本明細書において「低糖質」のビールテイストアルコール飲料とは、糖質の量(糖質濃度)が通常の製法で作られた同等の比較対象の飲料に対して70%以上削減されたもの(すなわち、糖質オフ表示がなされた飲料)、あるいは糖質の量が0.5g/100ml未満(すなわち、糖質ゼロ表示がなされた飲料)であるものを意味する。このうち前者(糖質オフ表示がなされた飲料)の糖質濃度は、1.1g/100ml以下とすることができ、好ましくは0.7〜1.1g/100mlの範囲である。ここで、糖質の量の測定は公知の方法に従って行うことができ、当該試料の質量から、水分、タンパク質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(栄養表示基準(平成21年12月16日 消費者庁告示第9号 一部改正)参照)に従って測定することができる。
本発明の第一の面によれば麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料が提供される。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するものとすることができ、その場合、麦芽使用比率は3分の2未満とすることができ、好ましくは麦芽使用比率が50%未満、さらに好ましくは25%未満である。本明細書において「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。麦芽使用比率が25%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料としては、麦芽使用比率が25%未満の発泡酒や、麦芽使用比率が25%未満のリキュール系新ジャンル飲料が挙げられる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではビールテイスト発酵アルコール飲料の原料に由来する分子量10〜20kDaのペプチド濃度が特定値以上であることを特徴とする。本明細書において「ペプチド濃度」は10〜20kDaの分子量を有する1種または2種以上のペプチドの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書においてペプチドの「分子量」はゲル濾過法により測定されるものであり、測定の具体例は後記実施例2に示される通りである。ペプチドの定量はローリー法(Lowry法)により実施することができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では分子量10〜20kDaのペプチド濃度を0.050mg/ml以上とすることができ、好ましくは0.055mg/ml以上、より好ましくは0.11mg/ml以上である。該ペプチド濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、0.45mg/mlを上限とすることができる。また、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を2.7%以上とすることができ、好ましくは3.2%以上、より好ましくは3.9%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。後記実施例2および3に示されるように分子量10〜20kDaのペプチドの濃度や比率を特定値以上に設定することによって、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が25%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、該飲料をビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れがあり、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が特定値以下とすることができる。本明細書において「グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度」は、グルコアミラーゼを用いて糖質を分解したときにグルコースとして測定された糖質濃度を指す。測定の具体例は、後記実施例2に示される通りである。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度を5.6mg/ml以下とすることができ、好ましくは4.9mg/ml以下、より好ましくは3.9mg/ml以下である。該糖質濃度は味の調和の観点から下限を設けることができ、例えば、0.5mg/mlを下限とすることができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、α−グルカンの濃度を所定値にすることができ、例えば、重合度5〜10のα−グルカンの濃度を3.9mg/ml未満、3.3mg/ml未満あるいは2.1mg/ml未満に設定することができる。本明細書において、「α−グルカン濃度」は重合度5〜10の1種または2種以上のα−グルカンの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書において「α−グルカン」とは複数のグルコース分子がα−1,4−グルコシド結合により結合して構成された直鎖状または分岐状のグルカンを意味する。さらに、本明細書においてα−グルカンの「重合度」はグルカンを構成するグルコース残基の個数を意味し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。α−グルカンの重合度と含有量の測定はLC−MS/MS(液体クロマトグラフ−質量分析法)により実施することができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が所定値以下であっても分子量10〜20kDaのペプチドを所定の濃度に調整することにより、雑味を抑制するとともに、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには、調和のとれた味わいを図ることができる。グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が所定値以下の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料において、分子量10〜20kDaのペプチドを所定の濃度に調整することにより、雑味が抑制されるとともに、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには、調和のとれた味わいが図られることはこれまで報告されていない。すなわち、本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が25%未満である本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料)では、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度を5.6mg/ml以下、好ましくは4.9mg/ml以下、より好ましくは3.9mg/ml以下とし、かつ、分子量10〜20kDaのペプチド濃度を0.05mg/ml以上(好ましくは0.055mg/ml以上、より好ましくは0.11mg/ml以上)とすることができ、さらに、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を2.7%以上(好ましくは3.2%以上、より好ましくは3.9%以上)とすることができる。ペプチド濃度およびペプチド量の比率はいずれも前記のような上限を設けることができる。またグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度は前記のような下限を設けることができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は分子量10〜20kDaのペプチド濃度が所定値の範囲内に調整される限り、通常の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵麦芽飲料を醸成させることができる。得られた低糖質ビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、濾過工程により酵母を除去することができる。
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。また、麦汁は、糖化工程中に市販の酵素製剤を添加して作製することもできる。例えば、タンパク分解のためにプロテアーゼ製剤を、糖質分解のためにα−アミラーゼ製剤、βアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等を、繊維素分解のためにβ−グルカナーゼ製剤、繊維素分解酵素製剤(例えば、ヘミセルラーゼ製剤)等をそれぞれ用いることができ、あるいはこれらの混合製剤を用いることもできる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では、麦芽以外に、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む));米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料;タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源;香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。すなわち、本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は、醸造用水以外の使用原料を少なくとも麦芽、未発芽の麦類(好ましくは、未発芽大麦)およびホップとすることができ、場合によっては更に糖類、米、とうもろこし、でんぷん等を使用原料とすることができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の分子量10〜20kDaのペプチド濃度を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類の仕込み・糖化工程におけるタンパク分解を抑制することや、原料である麦芽の製麦工程におけるタンパク分解度を抑制することなどにより、調整することができる。なお、タンパク分解としては、麦芽や未発芽の麦類に内在するプロテアーゼ、あるいは外から添加するプロテアーゼ製剤によるものが挙げられる。分解の抑制は、プロテアーゼ製剤の添加量を減じる、タンパク分解の作用温度における処理時間を減じる、作用pHを至適条件から変更するなどにより行うことができる。
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の栄養表示基準による糖質濃度やグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類等の仕込みや糖化工程における糖質分解を促進すること、原料である麦芽の製麦工程における糖質分解を促進すること、それにより麦芽および/または未発芽の麦類等に由来する糖質が酵母に資化できる糖(資化性糖)まで充分に分解すること、あるいは糖質が酵母に資化できる糖まで充分分解された液糖を用いることなどにより、調整することができ、さらには発酵・貯蔵工程において、これらの資化性糖が酵母に十分に資化され、本発明の所定の糖質濃度以下に低下するまで酵母発酵を行うことなどにより、調整することもできる。なお、糖質分解としては、麦芽や未発芽の麦類に内在するαアミラーゼやβアミラーゼ等、あるいは外から添加するαアミラーゼ製剤、βアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等によるものが挙げられる。分解の促進は、αアミラーゼ製剤、βアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等の添加量を増加させること、糖質分解の作用温度における処理時間を延長すること、作用pHを至適条件に合わせることなどにより行うことができる。
あるいは、実施例3の記載に従って、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や全糖質画分を調製し、該画分をそれぞれ低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチド濃度が所定値の範囲内に調整された低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料やグルコアミラーゼ感受性の糖質濃度が所定値の範囲内に調整された低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することもできる。
本発明の第二の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを配合してなる低糖質ビールテイストアルコール飲料と、該飲料の製造方法が提供される。該ペプチドが配合されてなる飲料は低糖質ビールテイストアルコール飲料としての風味が改善あるいは向上されており、具体的には、柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れが感じられ、雑味が低減された調和のとれた味わいがある飲料である。
麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドの例としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4および非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)が挙げられ、好ましくは、これらのタンパク質およびペプチドは大麦由来のものである。α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4あるいは非特異的脂質転移タンパク1を低糖質ビールテイストアルコール飲料に配合するときは、これらのペプチドあるいはタンパク質は麦芽または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料から調製したもの以外のペプチドあるいはタンパク質であってもよい。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料における分子量10〜20kDaのペプチド濃度は0.05mg/ml以上とすることができ、好ましくは0.055mg/ml以上、より好ましくは0.11mg/ml以上である。該ペプチド濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、0.45mg/mlを上限とすることができる。また、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率は2.7%以上とすることができ、好ましくは3.2%以上、より好ましくは3.9%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。後記実施例2および3に示されるように分子量10〜20kDaのペプチドの濃度や比率を特定値以上に設定することによって、低糖質ビールテイストアルコール飲料(特に、麦芽使用比率が25%未満である低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。分子量10〜20kDaのペプチドの分子量や含有量の測定は本発明の第一の面である低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料についての記載を参照することができる。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料ではまた、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が特定値以下とすることができる。本明細書において「グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度」は、グルコアミラーゼを用いて糖質を分解したときにグルコースとして測定された糖質濃度を指す。測定の具体例は、後記実施例2に示される通りである。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料ではグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度を5.6mg/ml以下とすることができ、好ましくは4.9mg/ml以下、より好ましくは3.9mg/ml以下である。該糖質濃度は味の調和の観点から下限を設けることができ、例えば、0.5mg/mlを下限とすることができる。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料ではまた、α−グルカンの濃度を所定値にすることができ、例えば、重合度5〜10のα−グルカンの濃度を3.9mg/ml未満、3.3mg/ml未満あるいは2.1mg/ml未満に設定することができる。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料ではグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が所定値以下であっても分子量10〜20kDaのペプチドを所定の濃度に調整することにより、雑味を抑制するとともに、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには、調和のとれた味わいを図ることができる。グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が所定値以下の低糖質ビールテイストアルコール飲料において、分子量10〜20kDaのペプチドを所定の濃度に調整することにより、雑味が抑制されるとともに、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには、調和のとれた味わいが図られることはこれまで報告されていない。すなわち、本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料では、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度を5.6mg/ml以下(好ましくは4.9mg/ml以下、より好ましくは3.9mg/ml以下)とし、かつ、分子量10〜20kDaのペプチド濃度を0.05mg/ml以上(好ましくは0.055mg/ml以上、より好ましくは0.11mg/ml以上)とすることができ、さらに、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を2.7%以上(好ましくは3.2%以上、より好ましくは3.9%以上)とすることができる。ペプチド濃度およびペプチド量の比率はいずれも前記のような上限を設けることができる。ペプチド濃度およびペプチド量の比率はいずれも前記のような上限を設けることができる。またグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度は前記のような下限を設けることができる。
低糖質ビールテイストアルコール飲料に配合される分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料(好ましくは麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するビールテイスト発酵アルコール飲料)から調製することができる。例えば、実施例1に記載された手順に従ってビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、実施例1に記載のようにゲル濾過分画や固相抽出カラムを用いて該飲料から分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分を調製することができる。分子量10〜20kDaのペプチドは必ずしも単離・精製されている必要はなく、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分画処理されて得られたペプチド画分を低糖質ビールテイストアルコール飲料へ配合することができる。
低糖質ビールテイストアルコール飲料への配合は発酵前の発酵前液、発酵中の発酵液、あるいは発酵後の発酵液への添加により行うことができる。例えば、実施例3に記載されるように、実施例1に記載された手順に従ってビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から実施例1に記載された手順に従って分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分を調製し、該画分を発酵後の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチドが配合された低糖質ビールテイストアルコール飲料を製造することができる。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料は分子量10〜20kDaのペプチドが特定濃度となるよう配合されること以外は、通常の低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵麦芽飲料を醸成させることができる。得られた低糖質ビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することができる。
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。
本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造では麦芽以外の原料を使用でき、具体的には、本発明の第一の面の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料に関する記載に従って麦芽以外の原料を使用できる。
以上、本発明の第二の面である低糖質ビールテイストアルコール飲料を中心に説明したが、本発明の低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造方法は該飲料についての上記記載に従って実施することができる。
本発明の第三の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤と、該飲料の風味改善方法が提供される。本明細書において「低糖質ビールテイストアルコール飲料の風味改善」とは、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れ、さらには調和のとれた味わいがより感じられるとともに、雑味が抑制されることを意味するものとする。本発明の風味改善剤と風味改善方法は本発明の第二の面である低糖質ビールテイストアルコール飲料および該飲料の製造方法についての記載に従って実施することができる。
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す。
実施例1:ペプチド画分のビールテイストアルコール飲料への添加と官能評価
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
パイロットプラントでビールテイストアルコール飲料の製造を行った。50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽15.0質量部、大麦18.7質量部、酵素製剤を投入して70分保持後65℃に昇温して130分保持してさらに78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。上記の麦汁調製工程に続いて、得られた麦汁にホップを投入して100℃で60〜70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整した。この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行った。さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行った。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過して、清澄なビールテイストアルコール飲料(麦芽使用比率50%未満の発泡酒)を得た。
(2)ゲル濾過分画
上記(1)で得られたビールテイストアルコール飲料を計量して凍結乾燥した。乾燥物を100mM NaCl溶液で溶解して5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。サンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量: 5ml
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29cv(カラム・ボリューム)から19.1ml(フラクション0)、その後0.35cvから5mlずつ分画(フラクション1〜51)
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、表1のようにフラクションをプレ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
(3)ペプチド画分の精製
上記(2)で得られた各画分は、固相抽出カラム(画分プレ、A1、A2、Bは、Bond Elute C18 EWP、画分CはBond Elute C18を使用、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行い、脱塩水で洗浄した後、50%エタノール水溶液にて溶出して、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした。これをペプチド画分とした。
(4)ローリー法によるタンパク定量
上記(3)のゲル濾過分画によって得られたペプチド画分のタンパク定量は市販のキット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad社製)を用いたLowry法で行った。まず、上記分画液を50μL採って遠心減圧濃縮乾固し、超純水10μLを加えて再溶解して分析サンプルとした。そこにA液を50μL加えて撹拌し、続いてB液を400μL加えて攪拌した。室温で15分発色反応を行った後、96ウェルプレートに350μL移して750nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線に基づき、ペプチド量を算出した。なお、検量線はBSA(ウシ血清アルブミン)を用いて作成した。
(5)官能評価
これらの分画・精製サンプルを、大麦と大麦麦芽を使用した市販の麦芽使用比率50%未満のビール系アルコール飲料に、その飲料に含まれる各画分量の約20%、あるいは50%上乗せとなるよう添加し(表2および図1参照)、6名のパネルにより官能評価を行った。
官能評価は、評価項目1として、ビールらしい味わい(ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられる、調和がとれている)を1点(ビールらしくない)〜9点(ビールらしい)の9段階で実施した。官能評価はまた、評価項目2として、口内に残るざらつき(渋みや舌に残るざらざらした感触といった雑味)を1点(弱い)〜9点(強い)の9段階で実施した。
結果は表2および図2に示される通りであった。精製した画分プレ、A1+A2およびB+Cを、市販の麦芽使用比率50%未満のビール系アルコール飲料に添加した場合には、画分A1+A2が最もビールらしい味わいのスコアが高く、ざらつきも低減していることが明らかとなった。また、プレ画分では、柔らかいが味自体は少ないとの官能評価コメントだった。画分B+Cは、厚み、ボディ、旨味の寄与がより強いとのコメントだった。すなわち、プレ画分、A1、A2、B、Cで、それぞれ味質が異なっており、画分A1、A2は、ビールらしい柔らかさ、雑味低下等の効果がある事がわかった。
ペプチド分画物は、実施例2に記載の、Superdex 75 10/300カラムにて分析を行い、分子量を推定したところ、画分A1のペプチドが分子量約10〜20kDaに分布し、SDS−PAGE電気泳動上でも、画分A1〜A2において、同様の分子量約10〜20kDaのペプチドが分布している事が確認された(データ省略)。
以上の結果より、分画・精製した分子量約10〜20kDaのペプチド画分A1およびA2は、雑味が抑制され調和のとれたビールらしい味わいをビールテイストアルコール飲料に付与できることが明らかとなった。
実施例2:低糖質ビールテイストアルコール飲料の成分分析と官能評価
(1)低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造
パイロットプラントで低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造を行った。低糖質ビールテイストアルコール飲料の使用原料中の麦芽比率は25%未満とした。
低糖質ビールテイストアルコール飲料の製造においては、主原料として、大麦麦芽を使用し、副原料として、大麦および液糖のいずれかまたは両方を使用した。糖化に際しては酵素製剤を用い、糖化の温度、時間を調整し、濾過することで、異なる組成の麦汁を得た。すなわち、糖化の温度帯は、50、60、あるいは65℃など、50〜65℃の中で選択した。糖化の時間は、それぞれの温度工程において、5分から140分の間で調整した。また、原料の熱処理温度は70から100℃の中から選択した。具体的には以下のようにして麦汁を得た。
(ア)サンプルNo.5の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽11.4質量部、大麦12.1質量部、酵素製剤を投入して60分保持してさらに65℃に昇温して90分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(イ)サンプルNo.6の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、大麦26.2質量部、酵素製剤を投入して60分保持後60℃に昇温して30分保持してさらに70℃に昇温して30分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯85.7質量部に大麦麦芽24.8質量部、酵素製剤を投入して60分保持したものB醪とした。得られたA醪とB醪を直ちに混合させて65℃とした。その後、65℃で90分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(ウ)サンプルNo.7、8の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、大麦21.1質量部と酵素製剤を投入して60分保持してさらに65℃に昇温して90分保持したものをA醪とした。別の釜で50℃の湯93質量部に大麦麦芽19.4質量部、酵素製剤を投入し60分保持後65℃に昇温して90分保持したものをB醪とした。得られたA醪およびB醪を直ちに混合し、AB混合醪として78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。
上記の麦汁調製工程(ア)、(イ)および(ウ)に続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび液糖をさらに投入して100℃で60〜70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整した。この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行った。さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行った。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過して、清澄な低糖質ビールテイストアルコール飲料(発泡酒、サンプルNo.5〜8)を得た。
また、麦芽使用比率25%未満の市販の低糖質ビールテイストアルコール飲料(発泡酒および新ジャンル系アルコール飲料)をサンプルNo.1〜4としてそれぞれ分析試験に供した。なお、サンプルNo.1および2は発泡酒、サンプルNo.3および4はリキュール系新ジャンル飲料である。
(2)グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度の分析
低糖質ビールテイストアルコール飲料サンプルは、本方法による糖質濃度が0.1〜1.0mg/mlの範囲となるよう、適宜5〜10倍希釈した後、グルコアミラーゼと緩衝液(リゾプス由来精製酵素、最終濃度 20U/ml、生化学バイオビジネス社製、100mM酢酸Na pH4.5)を添加して40℃、48時間で反応させた後、市販のグルコース測定キット(グルコースC−IIテストワコー、和光純薬工業社製)を用いてグルコースとして測定した。なお、ポジティブコントロールとして、0.5〜2.0mg/mlの所定濃度のアミロースEX−I(グルコースの平均重合度:18、和光純薬社製)を用いて、本方法にてグルコース濃度を測定した結果、グルコースは93%の回収率であり、グルコアミラーゼに感受性の糖質の定量法として十分な精度と考えられた。
(3)栄養表示基準に基づく糖質濃度の分析
栄養表示基準に基づく糖質濃度の測定は公知の五訂日本食品標準成分表分析マニュアルに記載の方法に従って行った。すなわち、当該試料の質量から、水分(減圧加熱・乾燥助剤添加法)、タンパク質(自動分析装置による方法)、脂質(ソックスレー抽出法(3))、灰分(マッフル炉による燃焼法)および食物繊維量(プロスキー変法(1)HPLC法)を除いて算出する方法にて測定した。
(4)10〜20kDaペプチド量の分析
(ア)ゲル濾過分画用のサンプル調製
パイロットプラントで製造した製品サンプルおよび市販品は、計量して凍結乾燥した。乾燥物を50mMリン酸緩衝液(150mM NaCl含む)で溶解して2.5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。
(イ)HPLCゲル濾過分画
HPLCゲル濾過分画の条件は以下の通りであった。
<HPLCゲル濾過分画条件>
カラム:Superdex 75 10/300(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:100μL
溶離液組成:50mMリン酸、20%(v/v)アセトニトリル、150mM NaCl
流速:0.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分画プログラム:
(ウ)分画範囲の設定
上記HPLCゲル濾過分画条件記載のカラム、溶離液、流速、検出波長において、分子量既知のペプチドを0.1〜5mg/mLで適宜超純水に溶解したものを50μL注入してHPLC分析を行い、保持時間を確認した(表4)。その保持時間、分子量から検量線(図3)を作成し、分子量範囲と分画範囲を決定した。
(エ)分画液のLowry法によるタンパク定量
タンパク定量は、実施例1に記載のLowry法により行った。なお、得られた吸光度とBSA濃度から検量線を作成し、分画液のペプチド量(BSA換算)を計算し、分画液量、濃縮倍率から、当該画分の製品相当ペプチド濃度(mg/ml)を算出した。
(オ)10〜20kDaペプチドの定量
10〜20kDaペプチド濃度は、上記HPLCゲル濾過分画における、検量線から決定した分子量10〜20kDaの範囲である画分3に含まれるタンパク濃度を、製品相当ペプチド濃度(mg/ml)に換算して求めた。また、10〜20kDaペプチド量が全タンパク量の中に占める比率、すなわち10〜20kDaのペプチド比率は、以下の算出式にて求めた。
10〜20kDaのペプチド比率(%)=10〜20kDaペプチド量(mg/製品ml)/全タンパク量(mg/製品ml)×100
(5)低糖質ビールテイストアルコール飲料の官能評価
製造して得られた低糖質ビールテイストアルコール飲料、および市販品のビールテイストアルコール飲料に関して、8名の訓練されたパネラーによって官能評価した。評価項目は以下のとおりとした。
評価項目1として、ビールらしい味わい(ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられる、調和がとれている)を1点(ビールらしくない)〜9点(ビールらしい)の9段階で官能評価した。また、評価項目2として、スムーズな味の流れ(飲み始め、味の中盤、余韻といった飲み込んだときの味の抑揚の流れ方)を1点(弱い)〜9点(強い)の9段階で官能評価した。また、評価項目3として、口内に残るざらつき(渋みや舌に残るざらざらした感触といった雑味)を1点(弱い)〜9点(強い)の9段階で官能評価した。成分分析の結果および官能評価の結果は表5および図4〜8に示される通りであった。
表5に示されるように、麦芽比率25%未満の市販の低糖質ビールテイストアルコール飲料であるサンプルNo.1は、ビールらしい味わいが3.0、スムーズな味の流れは3.0と低くなり、口内に残るざらつきは5.0であった。また、大豆タンパク分解物、水溶性食物繊維および高甘度甘味料であるアセスルファムKなどを一部または全部含む、市販の低糖質ビールテイストアルコール飲料であるサンプルNo.2〜4では、サンプルNo.1に比較して、ビールらしい味わいが3.2〜3.5と高くなっているのに対して、スムーズな味の流れは3.4〜3.8と低くなり、口内に残るざらつきが5.6〜5.8と高くなった。
一方、麦芽比率25%未満のサンプルNo.5およびNo.6では、サンプルNo.1に比較して、ビールらしい味わいが3.1〜3.7と高めとなり、スムーズな味の流れは3.9〜4.8と高めとなり、口内に残るざらつきが4.4〜4.9と低めであり、香味評価が良好になる傾向が認められた。すなわち、10〜20kDaのペプチド濃度が0.05mg/mL製品以上であり、10〜20kDaのペプチド比率が2.7%以上であり、かつ、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が4.9mg/ml以下の場合に、好ましい官能評価結果が得られることが分かった。
すなわち、サンプルNo.1〜4はいずれも、ビールらしい柔らかなテクスチャーや、飲み始め・中盤・余韻のスムーズな味の流れに欠けるという香味上の問題、および/または、渋さ・酸味・ざらつきなどの雑味があるという香味上の問題を有しており、これらの結果として全体の味わいの調和に欠けるという課題があった。一方、サンプルNo.5〜8ではこれらの問題がいずれも解決されており、ビールらしい柔らかなテクスチャーやスムーズな味の流れがあり、雑味が低減され、調和のとれた味わいを有する低糖質のビールテイストアルコール飲料であった。
また、3つの香味評価項目のスコアを元に以下の計算式にて、香味の総合評価スコアを算出したところ、市販の低糖質ビールテイストアルコール飲料であるサンプルNo.1〜4に比較して、試醸品であるサンプルNo.5〜8は、そのスコアが大幅に改善されていた。
香味の総合評価スコア=(ビールらしい味わいスコア)+(スムーズな味の流れスコア)−(口内に残るざらつきスコア)
また、図4および図5にスムーズな味の流れの官能評価結果のバブルグラフを示した。いずれの図でも、枠で囲われた範囲内にプロットされるサンプルにおいて、スムーズな味の流れの官能評価スコアが3.9以上となることが分かった。
また、図6および図7に香味の総合評価スコアのバブルグラフを示した。いずれの図でも、枠で囲われた範囲内にプロットされるサンプルにおいて、香味の総合評価スコアが2.5以上となることが分かった。
また、図4のグラフの縦軸を、栄養表示基準に基づく糖質濃度とした場合においても、分析値の絶対値は異なるが、枠で囲われた範囲内のプロットされるサンプルにおいて、同様にスコアが良好であることが分かった(図8)。
以上の結果から、低糖質ビールテイストアルコール飲料において、10〜20kDaのペプチドが特定濃度の範囲内、かつ、特定比率の範囲内で含まれ、さらに、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が4.9mg/ml製品以下の場合に、ビールのように柔らかくスムーズなテクスチャーや、スムーズな味の流れが感じられ、渋味やざらつきなどの雑味が少なく、味わいの調和感が向上することが示された。
実施例3:ペプチド画分および糖質画分の低糖質ビールテイストアルコール飲料への添加と官能評価
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造と分画精製物の調製および分析
実施例1に記載したビールテイスト発酵アルコール飲料から、実施例1に記載した方法に従って、ペプチド画分(A1、A2)を精製した。さらに、以下の方法にて同サンプルから全糖質画分を調製した。すなわち、実施例1に記載した分画前のビールテイスト発酵アルコール飲料を、固相抽出カラム(Bond Elute C18 EWPおよびBond Elute C18の両方を使用、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行い、その素通り液および脱塩水による洗浄液を回収した。この固相抽出カラムの素通り画分は、さらにアニオン・カチオン・イオン交換樹脂(アンバーライトIR120HおよびアンバーライトXE583、オルガノ社製)にて脱塩後、少量の活性炭にて脱臭処理し、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした。これを全糖質画分とした。10〜20kDaペプチド量の定量とグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度の分析は、実施例2に記載した方法と同様の方法で行った。調製した分画・精製サンプルを下記表6に示した量となるように、サンプルNo.1、2、4の市販製品に添加し、5名のパネルにより官能評価を行った。
(2)官能評価
官能評価の項目は実施例2と同様にした。すなわち、評価項目1として、ビールらしい味わい(ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられる、調和がとれている)を1点(ビールらしくない)〜9点(ビールらしい)の9段階で官能評価した。また、評価項目2として、スムーズな味の流れ(飲み始め、味の中盤、余韻といった飲み込んだときの味の抑揚の流れ方)を1点(弱い)〜9点(強い)の9段階で官能評価した。また、評価項目3として、口内に残るざらつき(渋みや舌に残るざらざらした感触といった雑味)を1点(弱い)〜9点(強い)の9段階で官能評価した。官能結果および分析結果は表6並びに図9および図10に示される通りであった。
表6並びに図9および図10に記載された結果から、糖質量が一定値以下であるサンプルNo.1に対し、10〜20kDaペプチド量が0.18mg/mlとなるようにした添加1は、スムーズな味の流れが4.0、香味の総合評価が3.3と高くなった。また、併せて全糖質画分を添加してグルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度を5.6mg/mlとした添加2においても、スムーズな味の流れが3.6、香味の総合評価が2.7と改善される傾向が認められた。また、大豆タンパク分解物、水溶性食物繊維および高甘度甘味料であるアセスルファムKなどを一部または全部含む、市販の低糖質ビールテイストアルコール飲料であるサンプルNo.2および4に対し、10〜20kDaペプチド量が0.17mg/mlまたは0.16mg/mlとなるようにした添加4および6は、スムーズな味の流れが4.0以上、香味の総合評価が2.8以上と高くなった。また10〜20kDaペプチド量が0.12mg/mlまたは0.09mg/mlとなるようにした添加3および5においても、スムーズな味の流れが3.5以上、香味の総合評価が2.1以上と改善される傾向が認められた。すなわち、糖質量が一定値以下の領域において、大豆タンパク分解物、水溶性食物繊維および高甘度甘味料であるアセスルファムKなどを一部または全部含み、スムーズな味の流れや、香味の総合評価が損なわれていたサンプルNo.2および4においても、10〜20kDaペプチド量が一定値以上になると官能評価スコアは向上することが明らかになった。
また、実施例2のデータと合わせると、グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が5.6mg/ml製品以下の、麦芽比率25%未満のビールテイストアルコール飲料において、10〜20kDaのペプチド濃度が0.05mg/mL製品以上、かつ、10〜20kDaのペプチド比率が2.7%以上の場合に、スムーズな味の流れが3.5以上と高くなり、また、香味の総合評価スコアが2.1以上と高くなり、官能評価スコアは改善する傾向があることが明らかになった。
実施例4:タンパク画分の分子種同定
本実施例では2D−PAGEおよびMALDI−TOF−MSによりビールらしい味わいに寄与するタンパク質の同定を試みた。
(1)ビールテイストアルコール飲料の製造
サンプルNo.9および10はラボスケールにて、サンプルNo.11および12はパイロットプラントで、それぞれビールテイストアルコール飲料の製造を行った。サンプルNo.9および10の使用原料中の麦芽使用比率は100%、サンプルNo.11および12の使用原料中の麦芽使用比率は25%未満とした。
(ア)サンプルNo.9および10の調製条件
サンプルNo.9は、50℃のお湯300mlに大麦麦芽100gを入れ、酵素製剤を添加して60分保持後、65℃に昇温して60分保持し、さらに78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。サンプルNo.10は、50℃工程を行わず、酵素製剤を添加しない以外は同様に麦汁を得た。続いて、ホップを0.8g/L投入して100℃で90分煮沸したのち、濾過して発酵前液を得た。その後、常法に従ってビール酵母により発酵を行い、ビールテイストアルコール飲料(ビール)を調製した。
(イ)サンプルNo.11の調製条件
60℃の湯100質量部に対して、コーングリッツ27.1質量部と大麦麦芽2.1質量部を投入して5分保持後78℃に昇温して5分保持してさらに100℃に昇温して30分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯246.4質量部に大麦麦芽27.1質量部、大麦45.0質量部、酵素製剤を投入して50分保持したものをB醪とした。得られたA醪とB醪を直ちに混合させて65℃とした。その後、65℃で100〜140分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(ウ)サンプルNo.12の調製条件
50℃の湯100質量部に対して、コーングリッツ30.4質量部と大麦麦芽2.8質量部を投入して5分保持後78℃に昇温して5分保持してさらに100℃に昇温して40分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯148.0質量部に大麦麦芽4.8質量部、大麦50.4質量部、酵素製剤を投入して60分保持した後、さらに70℃に昇温させて30分保持したものをB醪とした。また、さらに別の釜で、50℃の湯140.0質量部に大麦麦芽25.2質量部、酵素製剤を投入して30分保持したものをC醪とした。得られたB醪とC醪を直ちに混合し60℃として15分保持したものをD醪とした。得られたA醪とD醪を直ちに混合し65℃として80分保持し、さらに78℃に昇温して10分間保持した後、濾過して麦汁を得た。
上記の麦汁調製工程(イ)および(ウ)に続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび液糖をさらに投入して100℃で60〜70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整した。この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行った。さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行った。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過して、清澄なビールテイストアルコール飲料(発泡酒)を得た。
(2)ペプチド画分の精製
得られたビールテイストアルコール飲料を用いて、実施例1に記載した方法に従って、ペプチド画分(A1、A2)を精製した。
(3)タンパク質の同定
得られたペプチド画分A1、A2の等量混合液200μLをTCAアセトン沈殿によってタンパク質を精製し、2D−PAGEによる電気泳動後、銀染色を行った。図11に、2D−PAGEの結果を示す。図11Aは、サンプルNo.9由来のペプチド画分であり、図11Bは、サンプルNo.10由来のペプチド画分である。また、図11Cは、サンプルNo.11由来のペプチド画分であり、図11Dは、サンプルNo.12由来のペプチド画分である。図11のAおよびBから分かるように、サンプルNo.9とサンプルNo.10由来のペプチド画分の間では、丸で囲った範囲のバンドにおいて量的な差があることが分かった。また、図11のCおよびDから分かるように、サンプルNo.11とサンプルNo.12由来のペプチド画分の間では、丸で囲った範囲のバンドにおいて量的な差があることが分かった。
次に、図11で示す矢印のバンドを切り出し、トリプシン(In-Solution Tryptic Digestion and Guanidination Kit、Thermo Scientific社製)を用いてタンパク質を消化した。得られたトリプシン消化ペプチド溶液を、レジン充填ピペットチップ(Zip-Tip C18、Merck Millipore社製)を用いて脱塩濃縮した。脱塩濃縮したペプチド溶液とマトリックス(10μg/μLα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸・メタノール溶液)をプレート上で等量ずつ混合した後、MALDI−TOF−MS(Bruker Daltonics社製)を用いてMSスペクトルを取得し、Mascot/SWISS−PROTデータベース検索によってタンパク質の同定を行った。
MALDI−TOF−MSによるタンパク質同定の結果は表7に示される通りであった。
サンプルNo.9および10のペプチド画分(画分A1〜A2)中の量差のあるタンパク質としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCmeが同定された。また、サンプルNo.11および12のペプチド画分(画分A1〜A2)中の量差のあるタンパク質としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCme、セルピン−Z4、非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)が同定された。なお、同定されたタンパク質はいずれもオオムギ(Hordeum vulgare)由来のタンパク質である。α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCme、セルピン−Z4は、プロテアーゼ阻害タンパク質として知られており、non-specific lipid-transfer protein 1は、脂質転移タンパク質として知られている。


Claims (3)

  1. 麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分を含んでなり、該ペプチド画分に含まれるペプチド、前記低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料中の濃度(ペプチドの合計量)が0.115mg/ml以上0.177mg/ml以下であり、かつ、前記低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料中の全タンパク量(mg/mL)に対する、前記分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分に含まれるペプチドの量(mg/mL)の比率が3.2%以上5.7%以下であり、前記ペプチド画分が、大麦由来のα−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、大麦由来のセルピン−Z4および大麦由来の非特異的脂質転移タンパク1を含むものである、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。
  2. 麦芽使用比率が3分の2未満である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
  3. グルコアミラーゼ感受性の糖質の濃度が5.6mg/ml以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
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