JP6689569B2 - ビールテイストアルコール飲料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料とその製造方法に関する。本発明はまた、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する特定分子量のペプチドを有効成分とするビールテイストアルコール飲料の風味改善剤および該ペプチドを使用したビールテイストアルコール飲料の風味改善方法にも関する。
発泡酒や新ジャンル飲料などのビールテイストアルコール飲料は、ビールよりも安価であり、ビールの代替として広く飲用されている。しかし、これらの飲料はビールのような柔らかくスムーズなテクスチャーが不十分であり、渋味やざらつきなどの雑味が多い、香味の調和感に欠ける、など香味上改善すべき点があった。
ビールテイストアルコール飲料にコクや味の厚みを付与する技術としては、カルボキシメチルリジンを含みペプチドをコク付与物質として用いる技術(特許文献1および2)が知られている。しかし、ビールテイストアルコール飲料の香味、特に柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や雑味の抑制、味わいの調和感については依然として改善の余地があった。
特開2011−227070号公報 特開2014−158502号公報
本発明は、雑味が抑制され、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがあるビールテイストアルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤と風味改善方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、ビールテイストアルコール飲料において、特定分子量のペプチドと特定重合度のα−グルカンがビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や雑味の低減に寄与することを見出した。本発明者らはまた、特定分子量のペプチドの濃度を特定の濃度範囲内にすることで、よりビールらしい調和感のある味わいが実現できることを見出した。本発明者らはさらに、特定分子量のペプチドに加えて特定重合度のα−グルカンの濃度を特定の濃度範囲内にすることで上記効果がより一層発揮されることを見出した。本発明者らはさらに、ビールテイストアルコール飲料の風味改善に寄与するペプチドを具体的に特定した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料であって、分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド濃度が0.15mg/ml以上である、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
(2)麦芽使用比率が3分の2未満である、上記(1)に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(3)全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率が3.6%よりも大きい、上記(1)または(2)に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(4)分子量10〜20kDaのペプチド濃度が0.19mg/ml以上である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(5)重合度5〜10のα−グルカンの濃度が2.1mg/ml以上である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(6)重合度5〜10のα−グルカンの濃度が3.3mg/ml以上である、上記(5)に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
(7)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドが配合されてなる、ビールテイストアルコール飲料。
(8)分子量10〜20kDaのペプチドが0.15mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(7)に記載のビールテイストアルコール飲料。
(9)分子量10〜20kDaのペプチドが飲料中の全タンパク量に対して3.6%よりも大きい比率となるよう配合される、上記(7)または(8)に記載のビールテイストアルコール飲料。
(10)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する1種または2種以上の重合度5〜10のα−グルカンがさらに配合されてなる、上記(7)〜(9)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料。
(11)重合度5〜10のα−グルカンが2.1mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(10)に記載のビールテイストアルコール飲料。
(12)分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドが、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4および非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)からなる群から選択される1種または2種以上である、上記(7)〜(11)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料。
(13)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを配合する工程を含んでなる、ビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(14)分子量10〜20kDaのペプチドが0.15mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(13)に記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(15)分子量10〜20kDaのペプチドが飲料中の全タンパク量に対して3.6%よりも大きい比率となるよう配合される、上記(13)または(14)に記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(16)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する1種または2種以上の重合度5〜10のα−グルカンをさらに配合する工程を含んでなる、上記(13)〜(15)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(17)重合度5〜10のα−グルカンが2.1mg/ml以上の濃度となるよう配合される、上記(16)に記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(18)分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドが、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4および非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)からなる群から選択される1種または2種以上である、上記(13)〜(17)のいずれかに記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
(19)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤。
(20)麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを添加する工程を含んでなる、ビールテイストアルコール飲料の風味改善方法。
本発明によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaのペプチドを配合するか、該ペプチドの濃度を所定値の範囲内にすることによって、雑味が抑制され、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがあるビールテイストアルコール飲料を提供することができる。特に、麦芽使用比率50%未満のビールテイスト発酵アルコール飲料では、ビールで感じられるような味わい(特に柔らかくスムーズなテクスチャー)が不十分な場合があり、また、香味上の改善点(渋味やざらつきなどの雑味)が存在する場合や、味わいの調和が不十分である場合があり、本発明はこのような飲料のビールテイスト飲料としての風味を改善ないし向上させることができる点で有利である。また、分子量10〜20kDaのペプチドは麦芽や未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に存在するものであることから、該ペプチドをビールテイストアルコール飲料に上乗せして配合しても異味を生じさせることがない点でも有利である。
実施例1(6)でビール系麦芽アルコール飲料に添加したペプチド量を示した図である。 実施例1(6)でビール系麦芽アルコール飲料に添加したα−グルカン量を示した図である。 実施例1(6)の官能評価結果を示した図である。添加した画分ごとに官能評価スコアを示した。無添加のコントロールの官能評価スコアを2.5とした。 実施例2(3)において実施したHPLCゲル濾過分画の保持時間と既知物質の分子量から作成した検量線を示した図である。 実施例2(4)の官能評価結果(ビールらしい味わい)を示したバブルグラフである。縦軸を重合度5〜10α−グルカン濃度(mg/ml)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は麦芽50%未満(試験醸造)に、菱形模様は麦芽25%未満(試験醸造)にそれぞれ対応する。バブルサイズはビールらしい味わいスコアを表す。 実施例2(4)の官能評価結果(ビールらしい味わい)を示したバブルグラフである。縦軸を10〜20kDaペプチド比率(%)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は市販品に、縦縞模様は麦芽50%未満(試験醸造)に、菱形模様は麦芽25%未満(試験醸造)にそれぞれ対応する。バブルサイズはビールらしい味わいスコアを表す。 重合度5〜10のα−グルカン濃度および10〜20kDaのペプチド濃度と官能評価結果との相関関係を評価した図である。図7Aは重合度5〜10のα−グルカン濃度に対して官能評価結果をプロットした図である。図7Bは10〜20kDaのペプチド濃度に対して官能評価結果をプロットした図である。図7Cは重合度5〜10のα−グルカン濃度に10〜20kDaのペプチド濃度を乗じた値に対して官能評価結果をプロットした図である。 実施例4(2)の官能評価結果(ビールらしい味わい)を示したバブルグラフである。縦軸を重合度5〜10α−グルカン濃度(mg/ml)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は添加先がサンプルNo.4であるもの、縦縞模様は添加先がサンプルNo.19であるもの、菱形模様は添加先がサンプルNo.16であるものにそれぞれ対応する。バブルサイズはビールらしい味わいスコアを表す。 実施例4(2)の官能評価結果(ビールらしい味わい)を示したバブルグラフである。縦軸を10〜20kDaペプチド比率(%)とし、横軸を10〜20kDaペプチド濃度(mg/ml)として各サンプルをプロットした。横縞模様は添加先がサンプルNo.4であるもの、縦縞模様は添加先がサンプルNo.19であるもの、菱形模様は添加先がサンプルNo.16であるものにそれぞれ対応する。バブルサイズはビールらしい味わいスコアを表す。 実施例4(2)の官能評価結果を示したグラフである。図10Aはビールらしい味わいについての官能評価結果である。図10Bは口内に残るざらつきについての官能評価結果である。 実施例1および2で製造された飲料についての2D−PAGE電気泳動の結果を示した図である。STDは、分子量マーカーである。図11Aは実施例1の試験区1についての結果であり、図11Bは実施例1の試験区2についての結果である。また、図11Cは実施例2のサンプル16についての結果であり、図11Dは実施例2のサンプル15についての結果である。
発明の具体的説明
本明細書において「ビールテイストアルコール飲料」とは通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを有するアルコール飲料を意味する。
ビールテイストアルコール飲料には、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた「ビールテイストの発酵アルコール飲料」も含まれ、「ビールテイストの発酵アルコール飲料」としては、ビール、発泡酒、原料として麦または麦芽を使用しないビールテイスト発泡アルコール飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される醸造系新ジャンル飲料)および原料として麦芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。
本発明の第一の面によれば麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料が提供される。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するものとすることができ、その場合、麦芽使用比率は3分の2未満とすることができ、好ましくは麦芽使用比率が50%未満である。本明細書において「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではビールテイスト発酵アルコール飲料の原料に由来する分子量10〜20kDaのペプチド濃度が特定値以上であることを特徴とする。本明細書において「ペプチド濃度」は10〜20kDaの分子量を有する1種または2種以上のペプチドの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書においてペプチドの「分子量」はゲル濾過法により測定されるものであり、測定の具体例は後記実施例2に示される通りである。ペプチドの定量はローリー法(Lowry法)により実施することができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料では分子量10〜20kDaのペプチド濃度を0.15mg/ml以上とすることができ、好ましくは0.19mg/ml以上、より好ましくは0.20mg/ml以上である。該ペプチド濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、0.45mg/mlを上限とすることができる。また、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を3.6%よりも大きくすることができ、好ましくは3.7%以上、より好ましくは4.0%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。後記実施例2および4に示されるように分子量10〜20kDaのペプチドの濃度や比率を特定値以上に設定することによって、ビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、該飲料をビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、重合度5〜10のα−グルカンの濃度が特定値以上であることを特徴とする。本明細書において「α−グルカン濃度」は重合度5〜10の1種または2種以上のα−グルカンの含有量を合計して算出されるものである。また本明細書において「α−グルカン」とは複数のグルコース分子がα−1,4−グルコシド結合により結合して構成された直鎖状または分岐状のグルカンを意味する。さらに、本明細書においてα−グルカンの「重合度」はグルカンを構成するグルコース残基の個数を意味し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。α−グルカンの重合度と含有量の測定はLC−MS/MS(液体クロマトグラフ−質量分析法)により実施することができ、測定の具体例は後記実施例2に示される通りである。なお、本明細書および図面において重合度は単に「G」と表記されることがある。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料では重合度5〜10のα−グルカン濃度を2.1mg/ml以上とすることができ、好ましくは3.3mg/ml以上、より好ましくは3.9mg/ml以上である。該α−グルカン濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、13.0mg/mlを上限とすることができる。後記実施例2および4に示されるように重合度5〜10のα−グルカン濃度を特定値以上に設定することによって、ビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、該飲料をビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料において雑味をより一層抑制するとともに、テクスチャーや味わいの調和をより一層図る観点から、分子量10〜20kDaのペプチド濃度に加えて重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定値とすることが好ましい。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料において分子量10〜20kDaのペプチドを所定の濃度にするとともに重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定の濃度に調整することにより雑味がより一層抑制されるとともに、テクスチャーや味わいの調和が一層図られることはこれまで報告されていない。すなわち、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料では、分子量10〜20kDaのペプチド濃度を0.15mg/ml以上(好ましくは0.19mg/ml以上、より好ましくは0.20mg/ml以上)とし、かつ、重合度5〜10のα−グルカン濃度を2.1mg/ml以上(好ましくは3.3mg/ml以上、より好ましくは3.9mg/ml以上)とすることができ、さらに、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を3.6%よりも大きく(好ましくは3.7%以上、より好ましくは4.0%以上)することができる。ペプチド濃度、α−グルカン濃度およびペプチド量の比率はいずれも前記のような上限を設けることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は分子量10〜20kDaのペプチド濃度および/または重合度5〜10のα−グルカン濃度が所定値の範囲内に調整される限り、通常のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵麦芽飲料を醸成させることができる。得られたビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、濾過工程により酵母を除去することができる。
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。また、麦汁は、糖化工程中に市販の酵素製剤を添加して作製することもできる。例えば、タンパク分解のためにプロテアーゼ製剤を、糖質分解のためにα−アミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等を、繊維素分解のためにβ−グルカナーゼ製剤、繊維素分解酵素製剤等をそれぞれ用いることができ、あるいはこれらの混合製剤を用いることもできる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では、麦芽以外に、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む));米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料;タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源;香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。すなわち、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は、醸造用水以外の使用原料を少なくとも麦芽、未発芽の麦類(好ましくは、未発芽大麦)およびホップとすることができ、場合によっては更に糖類、米、とうもろこし、でんぷん等を使用原料とすることができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の分子量10〜20kDaのペプチド濃度を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類の仕込み・糖化工程におけるタンパク分解を抑制することや、原料である麦芽の製麦工程におけるタンパク分解度を抑制することなどにより、調整することができる。なお、タンパク分解としては、麦芽や未発芽に内在するプロテアーゼ、あるいは外から添加するプロテアーゼ製剤によるものが挙げられる。分解の抑制は、プロテアーゼ製剤の添加量を減じる、タンパク分解の作用温度における処理時間を減じる、作用pHを至適条件から変更するなどにより行うことができる。
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の重合度5〜10のα−グルカン濃度を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類の仕込みや糖化工程におけるα−グルカン分解を抑制すること、原料である麦芽の製麦工程におけるα−グルカン分解を抑制すること、あるいはα−グルカンの分解度が抑制された液糖を用いることなどにより、調整することができる。なお、α−グルカン分解としては、麦芽や未発芽の麦類に内在するαアミラーゼやβアミラーゼ等、あるいは外から添加するαアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等によるものが挙げられる。分解の抑制は、αアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等の添加量を減じる、α−グルカン分解の作用温度における処理時間を減じる、作用pHを至適条件から変更するなどにより行うことができる。
あるいは、実施例4に記載されるように、実施例2に記載された手順に従ってビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から実施例1に記載された手順に従って分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や重合度5〜10のα−グルカンが含まれる画分を調製し、該画分をビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチド濃度および/または重合度5〜10のα−グルカン濃度がそれぞれ所定値の範囲内に調整されたビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することもできる。
本発明の第二の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを配合してなるビールテイストアルコール飲料と、該飲料の製造方法が提供される。該ペプチドが配合されてなる飲料はビールテイストアルコール飲料としての風味が改善あるいは向上されており、具体的には、雑味が抑制されるとともに、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがある飲料である。
麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドの例としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4および非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)が挙げられ、好ましくは、これらのタンパク質およびペプチドは大麦由来のものである。α−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、セルピン−Z4あるいは非特異的脂質転移タンパク1をビールテイストアルコール飲料に配合するときは、これらのペプチドあるいはタンパク質は麦芽または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料から調製したもの以外のペプチドあるいはタンパク質であってもよい。
本発明のビールテイストアルコール飲料における分子量10〜20kDaのペプチド濃度は0.15mg/ml以上とすることができ、好ましくは0.19mg/ml以上、より好ましくは0.20mg/ml以上である。該ペプチド濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、0.45mg/mlを上限とすることができる。また、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率は3.6%よりも大きくすることができ、好ましくは3.7%以上、より好ましくは4.0%以上である。該比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。後記実施例2および4に示されるように分子量10〜20kDaのペプチドの濃度や比率を特定値以上に設定することによって、ビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、該飲料をビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。分子量10〜20kDaのペプチドの分子量や含有量の測定は本発明の第一の面であるビールテイスト発酵アルコール飲料についての記載を参照することができる。
本発明のビールテイストアルコール飲料では、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する1種または2種以上の重合度5〜10のα−グルカンをさらに配合してもよい。麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する1種または2種以上の重合度5〜10のα−グルカンの例としては、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオース、マルトノナオースおよびマルトデカオースが挙げられる。α−グルカンをビールテイストアルコール飲料に配合するときは、α−グルカンは麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料から調製したもの以外のα−グルカン(例えば、澱粉に酵素を作用させて得られた澱粉分解物を分画したもの)であってもよい。
重合度5〜10のα−グルカン濃度は2.1mg/ml以上とすることができ、好ましくは3.3mg/ml以上、より好ましくは3.9mg/ml以上である。該α−グルカン濃度は味の調和の観点から上限を設けることができ、例えば、13.0mg/mlを上限とすることができる。後記実施例2および4に示されるように重合度5〜10のα−グルカン濃度を特定値以上に設定することによって、ビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料)の雑味を抑制するとともに、該飲料をビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがある飲料とすることができる。重合度5〜10のα−グルカンの重合度や含有量の測定は本発明の第一の面であるビールテイスト発酵アルコール飲料についての記載を参照することができる。
本発明のビールテイストアルコール飲料において雑味をより一層抑制するとともに、テクスチャーや味わいの調和をより一層図る観点から、分子量10〜20kDaのペプチドに加えて重合度5〜10のα−グルカンを配合することが好ましい。本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料において分子量10〜20kDaのペプチドに加えて重合度5〜10のα−グルカンを配合することで雑味がより一層抑制されるとともに、テクスチャーや味わいの調和が一層図られることはこれまで報告されていない。すなわち、本発明のビールテイストアルコール飲料では、分子量10〜20kDaのペプチド濃度を0.15mg/ml以上(好ましくは0.19mg/ml以上、より好ましくは0.20mg/ml以上)とし、かつ、重合度5〜10のα−グルカン濃度を2.1mg/ml以上(好ましくは3.3mg/ml以上、より好ましくは3.9mg/ml以上)とすることができ、さらに、全タンパク量に対する分子量10〜20kDaのペプチド量の比率を3.6%よりも大きく(好ましくは3.7%以上、より好ましくは4.0%以上)することができる。ペプチド濃度、α−グルカン濃度およびペプチド量の比率はいずれも前記のような上限を設けることができる。
ビールテイストアルコール飲料に配合される分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドおよび重合度5〜10のα−グルカンは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料(好ましくは麦由来の原料として少なくとも麦芽を使用するビールテイスト発酵アルコール飲料)から調製することができる。例えば、実施例1や実施例2に記載された手順に従ってビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、実施例1に記載のようにHPLCゲル濾過分画や固相抽出カラムを用いて該飲料から分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や重合度5〜10のα−グルカンが含まれる画分を調製することができる。分子量10〜20kDaのペプチドや重合度5〜10のα−グルカンは必ずしも単離・精製されている必要はなく、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分画処理されて得られたペプチド画分やα−グルカン画分をビールテイストアルコール飲料へ配合することができる。
ビールテイストアルコール飲料への配合は発酵前の発酵前液、発酵中の発酵液、あるいは発酵後の発酵液への添加により行うことができる。例えば、実施例4に記載されるように、実施例2に記載された手順に従ってビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から実施例1に記載された手順に従って分子量10〜20kDaのペプチドが含まれる画分や重合度5〜10のα−グルカンが含まれる画分を調製し、該画分を発酵後のビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10〜20kDaのペプチドが配合されたビールテイストアルコール飲料を製造することができる。
本発明のビールテイストアルコール飲料は分子量10〜20kDaのペプチド濃度および場合によっては重合度5〜10のα−グルカン濃度が配合されること以外は、通常のビールテイストアルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵麦芽飲料を醸成させることができる。得られたビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することができる。
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。
本発明のビールテイストアルコール飲料の製造では麦芽以外の原料を使用でき、具体的には、本発明の第一の面のビールテイスト発酵アルコール飲料に関する記載に従って麦芽以外の原料を使用できる。
以上、本発明の第二の面であるビールテイストアルコール飲料を中心に説明したが、本発明のビールテイストアルコール飲料の製造方法は該飲料についての上記記載に従って実施することができる。
本発明の第三の面によれば、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDaの1種または2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、ビールテイストアルコール飲料の風味改善剤と、該飲料の風味改善方法が提供される。本明細書において「ビールテイストアルコール飲料の風味改善」とは、雑味が抑制されるとともに、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーと調和のとれた味わいがより感じられることを意味するものとする。本発明の風味改善剤と風味改善方法は本発明の第二の面であるビールテイストアルコール飲料および該飲料の製造方法についての記載に従って実施することができる。
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す。
実施例1:ペプチド画分およびα−グルカン画分のビールテイストアルコール飲料への添加と官能評価(その1)
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
大麦麦芽、ホップ、酵素製剤を用いて、インフュージョン法にてビールテイスト発酵アルコール飲料を製造した。
試験区1は、50℃のお湯300mlに大麦麦芽100gを入れ、酵素製剤を添加して60分保持後、65℃に昇温して60分保持し、さらに78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。試験区2は、50℃工程を行わず、酵素製剤を添加しない以外は同様に麦汁を得た。続いて、ホップを0.8g/L投入して100℃で90分煮沸したのち、濾過して発酵前液を得た。
その後、常法に従ってビール酵母により発酵を行い、発酵液の香味確認を行った。8名のパネルにより、「味の柔らかさ」、すなわち雑味が抑制され、ビールらしく柔らかいスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがあることを指標に、最低は1点、最高は5点として五段階で官能評価を行い、平均点を算出した。結果は表1に示される通りであった。
表1の通り、試験区1よりも試験区2の方が官能評価のスコア(味の柔らかさ)が良好であり、香味の印象も好ましかった
(2)ゲル濾過分画
上記(1)で得られた発酵液を0.45μmフィルターで濾過し、濾過済み発酵液を計量して凍結乾燥した。乾燥物を100mM NaCl溶液で溶解して5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。サンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量: 5ml
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/min(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29cv(カラム・ボリューム)から19.1ml(フラクション0)、
その後0.35cvから5mlずつ分画(フラクション1〜51)
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、表2のようにフラクションをプレ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
(3)ペプチド画分とα−グルカン画分の精製
上記(2)で得られた各画分は、固相抽出カラム(画分A1、A2、Bは、Bond Elute C18 EWP、画分C、D、E、F、GはBond Elute C18を使用、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行い、脱塩水で洗浄した後、50%エタノール水溶液にて溶出して、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした。これをペプチド画分とした。また、固相抽出カラムの素通り画分は、さらにアニオン・カチオン・イオン交換樹脂(アンバーライトIR120HおよびアンバーライトXE583、オルガノ社製)にて脱塩後、少量の活性炭にて脱臭処理し、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とした。これをα−グルカン画分とした。
(4)ローリー法によるタンパク定量
上記(3)のゲル濾過分画によって得られたペプチド画分のタンパク定量は市販のキット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad社製)を用いたLowry法で行った。まず、上記分画液を50μL採って遠心乾固し、超純水10μLを加えて再溶解して分析サンプルとした。そこにA液を50μL加えて撹拌し、続いてB液を400μL加えて攪拌した。室温で15分発色反応を行った後、96ウェルプレートに350μL移して750nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線に基づき、ペプチド量を算出した。なお、検量線はBSA(ウシ血清アルブミン)を用いて作成した。
(5)α−グルカンの定量
上記(3)で得られたα−グルカン画分中に含まれるα−グルカンの定量は、グルコアミラーゼと緩衝液(最終濃度10U/ml、100mM酢酸Na pH4.5)を添加して40℃一晩反応させた後、市販のグルコースC−IIテストワコー(和光純薬製)にてグルコースとして測定した。また、含まれるα−グルカンの鎖長分布状況は、グルコアミラーゼ処理を行わず、MCI−gel CK02ASカラム(20×250mm)およびコロナCAD検出器により、評価した。具体的には、以下の条件のようにして重合度(鎖長)を分析した。移動度の標準品として、G1〜G7マルトオリゴ糖およびアミロースDP17を用いた。
カラム:MCI−gel CK02ASカラム(20×250mm、三菱化学社製)
移動相:MQ水
流速:1.0mL/min
カラム温度:85℃
検出器:コロナCAD
(6)官能評価
これらの分画・精製サンプルを、大麦と大麦麦芽を使用した市販の麦芽使用比率49%未満のビール系アルコール飲料に、その飲料に含まれる各画分量の50%上乗せとなるよう添加し(図1および図2参照)、5名のパネルにより官能評価を行った。
官能評価の指標は、「旨み、甘味、厚み、ボディ、およびオフフレーバーとしての渋み・味の不調和」の総合評価として、1〜5点の五段階スコアで評価した。無添加のコントロールをスコア2.5とした。官能評価スコアの平均値は図3に、官能評価コメントは表3に示される通りであった。
ペプチド分画物は、プレ画分からDにかけて、試験区2の官能評価スコア(図3)が高く、分画前の発酵液の官能評価結果と一致した。また、試験区2の画分A1およびA2において、スコアが高く、柔らかさ、雑味低下との官能評価コメントだった(表3)。試験区2のプレ画分では、スコアは同等に高いが、柔らかいが味自体は少ないとの官能評価コメントだった。画分B〜Dは、スコアは同等に高いが、官能評価コメントでは厚み、ボディ、旨味の寄与がより強いと評価された。すなわち、プレ画分、A1、A2、B、C、Dで、試験区2の評価は高いが、それぞれ味質が異なっており、画分A1、A2は、ビールらしい柔らかさ、雑味低下等の効果がある事がわかった。
α−グルカン画分では、画分BおよびCを添加した場合、官能評価スコア(図3)が高くなり、官能評価コメント(表3)では、甘味、まろやか、スムーズさと表現される事がわかった。画分A1、A2由来のα−グルカンは、明確な香味が感じられなかった。
ペプチド分画物は、実施例2に記載の、Superdex 75 10/300カラムにて分析を行い、分子量を推定したところ、画分A1のペプチドが分子量約10〜20kDaに分布し、SDS−PAGE電気泳動上でも、画分A1〜A2において、同様の分子量約10〜20kDaのペプチドが分布している事が確認された(データ省略)。また、香味上優れていた試験区2では、そのペプチド量が多くなっている事が確認された(図1)。
また、α−グルカン分画物の重合度分布を確認したところ表4の通りであった。
表4に示される通り、明確な香味が感じられた画分B、Cの主要な成分は、重合度(DP)が2〜10の範囲が含まれる事が確認された。また、香味上優れていた試験区2では、その画分のα−グルカン量が多くなっている事が確認された。画分A1、A2由来のα−グルカンは、主要な成分の鎖長がそれよりも長く(8〜約40)、明確な香味が感じられなかった。
以上の結果より、分画・精製した分子量約10〜20kDaのペプチド画分A1およびA2並びにグルコースの重合度が2〜10のα−グルカン画分BおよびCは、雑味が抑制され調和のとれたビールらしい味わいをビール系飲料に付与できることが明らかとなった。
実施例2:ビールテイストアルコール飲料の成分分析と官能評価
(1)ビールテイストアルコール飲料の製造
パイロットプラントでビールテイストアルコール飲料の製造を行った。ビールテイストアルコール飲料の使用原料中の麦芽比率は50%未満および25%未満とした。
ビールテイストアルコール飲料の製造においては、主原料として、大麦麦芽を使用し、副原料として、大麦、コーングリッツ、コーンスターチ、米、液糖のいずれか、または複数を使用した。糖化に際しては酵素製剤を用い、糖化の温度、時間を調整し、濾過することで、異なる組成の麦汁を得た。すなわち、糖化の温度帯は、50、60、あるいは65℃など、50〜65℃の中で選択した。糖化の時間は、それぞれの温度工程において、5分から140分の間で調整した。また、原料の熱処理温度は70から100℃の中から選択した。具体的には以下の要にして麦汁を得た。
(ア)サンプルNo.16および17の糖化条件
60℃の湯100質量部に対して、コーングリッツ27.1質量部と大麦麦芽2.1質量部を投入して5分保持後78℃に昇温して5分保持してさらに100℃に昇温して30分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯246.4質量部に大麦麦芽27.1質量部、大麦45.0質量部、酵素製剤を投入して50分保持したものをB醪とした。得られたA醪とB醪を直ちに混合させて65℃とした。その後、65℃で100〜140分保持した後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(イ)サンプルNo.7の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽15.0質量部、大麦18.7質量部、酵素製剤を投入して70分保持後65℃に昇温して130分保持してさらに78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(ウ)サンプルNo.8〜10の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、大麦30.4質量部と大麦麦芽3.0質量部、酵素製剤を投入して60分保持後60℃に昇温して20分保持してさらに70〜80℃に昇温して40分保持したものをA醪とした。別の釜で50℃の湯62.5質量部に大麦麦芽34.2質量部、酵素製剤を投入し20分保持したものをB醪とした。得られたA醪およびB醪を直ちに混合し、AB混合醪として65℃にして100分保持し、78℃に昇温して5分保持後、濾過して麦汁を得た。
(エ)サンプルNo.14の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽6.8質量部、大麦26.3質量部、酵素製剤を投入して60分保持後65℃に昇温して100分保持してさらに78℃に昇温して10分保持した後、濾過して麦汁を得た。
(オ)サンプルNo.15の糖化条件
50℃の湯100質量部に対して、コーングリッツ30.4質量部と大麦麦芽2.8質量部を投入して5分保持後78℃に昇温して5分保持してさらに100℃に昇温して40分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯148.0質量部に大麦麦芽4.8質量部、大麦50.4質量部、酵素製剤を投入して60分保持した後、さらに70℃に昇温させて30分保持したものをB醪とした。また、さらに別の釜で、50℃の湯140.0質量部に大麦麦芽25.2質量部、酵素製剤を投入して30分保持したものをC醪とした。得られたB醪とC醪を直ちに混合し60℃として15分保持したものをD醪とした。得られたA醪とD醪を直ちに混合し65℃として80分保持し、さらに78℃に昇温して10分間保持した後、濾過して麦汁を得た。
(カ)サンプルNo.18の糖化条件
60℃の湯100質量部に対して、コーングリッツ27.1質量部と大麦麦芽2.5質量部を投入して10分保持後100℃に昇温して30分保持したものをA醪とした。また、別の釜で、50℃の湯246.4質量部に大麦麦芽15.7質量部、大麦45.0質量部、酵素製剤を投入して45分保持したものに、大麦麦芽11.1質量部、酵素製剤を投入して25分保持したものをB醪とした。得られたA醪とB醪を直ちに混合させて65℃とした。その後、65℃で100分保持後78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
上記の麦汁調製工程(ア)〜(カ)に続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび一部の麦汁(サンプルNo.15〜18)では液糖をさらに投入して100℃で60〜70分煮沸した後、麦汁静置を行い、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加して発酵液を調整した。この発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより主発酵を行った。さらに、主発酵後の発酵液を所定の温度で所定期間維持することにより後発酵を行った。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で所定期間維持することにより貯蔵を行い、濾過して、清澄なビールテイストアルコール飲料(サンプルNo.7〜10および14〜18)を得た。
また、麦芽使用比率67%以上の市販品(ビール)をサンプル1〜3として、麦芽使用比率50%以下の市販品(発泡酒)をサンプル4〜6として、麦芽使用比率25%以下の市販品(新ジャンル系アルコール飲料)をサンプル11〜13および19として、それぞれ分析試験に供した。
(2)重合度5〜10のα−グルカン量の分析
(ア)糖類分析用サンプルの調製
ビール製品、試験醸造設備で製造した製品サンプルを計量し、30%(v/v)アセトニトリル/70%(v/v)水溶液で50倍に希釈した物を定量用サンプルとした。
(イ)LC/MS/MSによる糖類定量
HPLC条件は表5の通りであった。
使用機器:1200 Series (Agilent technologies社製)
カラム:ACQUITY UPLC BEH Amide 2.1mm×50mm(粒径1.7μm)(Waters社製)
移動相A:95%(v/v)アセトニトリル水+0.1%(v/v)ギ酸+10mMギ酸アンモニウム
移動相B:水+0.1%(v/v)ギ酸+10mMギ酸アンモニウム
注入量:5μL
カラム温度:55℃
サンプル温度:20℃
グラジェント条件・流速:
(ウ)質量分析器条件の設定
マルトペンタオース(Maltopentaose)、マルトヘキサオース(Maltohexaose)およびマルトヘプタオース(Maltoheptaose)については東京化成社より標準品を購入し、マルトオクタオース(Maltooctaose)、マルトノナオース(Maltononaose)およびマルトデカオース(Maltodecaose)についてはElicityl SA社より標準品を購入し、質量分析器条件を設定した。購入した標準品は50%(v/v)アセトニトリル/50%(v/v)水/0.1%(v/v)ギ酸/10mMギ酸アンモニウム溶液を用いて100ppmに調整し、ABSciex社製3200Qtrapに直接導入法にて注入し、各種パラメータの最適化を行った。
(エ)サンプルの分析
上記(ウ)で設定した分析条件のもとで実試料の分析を行った。マトリックスに濃度の異なる標準品を添加した5点の試料を分析し、その結果から最小二乗法による直線近似にて検量線を作成し、傾きのみを用いて定量を行った。各試料には定量用試料に加えて濃度既知の標準品を別途添加した試料を分析し、回収率が75%以上135%以下である事を確認した。結果は表6に示される通りであった。
実施例1のα−グルカン添加試験において、強い香味付与効果が確認されたのが重合度2〜10の範囲であったこと、また、様々な重合度の成分強度と香味との相関を調べた結果、その相関が高い事が確認されたこと(データ省略)から、重合度5〜10のα−グルカン(マルトオリゴ糖)の濃度を成分指標として設定した。
(3)10〜20kDaペプチド量の分析
(ア)ゲル濾過分画用のサンプル調製
パイロットプラントで製造した製品サンプルおよび市販品は、計量して凍結乾燥した。乾燥物を50mMリン酸緩衝液(150mM NaCl含む)で溶解して2.5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとした。
(イ)HPLCゲル濾過分画
HPLCゲル濾過分画の条件は以下の通りであった。
<HPLCゲル濾過分画条件>
カラム:Superdex 75 10/300(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:100μL
溶離液組成:50mMリン酸、20%(v/v)アセトニトリル、150mM NaCl
流速:0.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分画プログラム:
(ウ)分画範囲の設定
上記HPLCゲル濾過分画条件記載のカラム、溶離液、流速、検出波長において、分子量既知のペプチドを0.1〜5mg/mLで適宜超純水に溶解したものを50μL注入してHPLC分析を行い、保持時間を確認した(表8)。その保持時間、分子量から検量線(図4)を作成し、分子量範囲と分画範囲を決定した。
(エ)分画液のLowry法によるタンパク定量
タンパク定量は、実施例1に記載のLowry法により行った。なお、得られた吸光度とBSA濃度から検量線を作成し、分画液のペプチド量(BSA換算)を計算し、分画液量、濃縮倍率から、当該画分の製品相当ペプチド濃度(mg/ml)を算出した。
(オ)10〜20kDaペプチドの定量
10〜20kDaペプチド濃度は、上記HPLCゲル濾過分画における、検量線から決定した分子量10〜20kDaの範囲である画分3に含まれるタンパク濃度を、製品相当ペプチド濃度(mg/ml)に換算して求めた。また、10〜20kDaペプチド量が全タンパク量の中に占める比率、すなわち10〜20kDaのペプチド比率は、以下の算出式にて求めた。
10〜20kDaのペプチド比率(%)=10〜20kDaペプチド量(mg/製品ml)/全タンパク量(mg/製品ml)×100
結果は表9に示される通りであった。
(4)ビールテイストアルコール飲料の官能評価
製造して得られたビールテイストアルコール飲料に関して、6名の訓練されたパネラーによって官能評価した。また、市販品のビールテイストアルコール飲料に関して、8名の訓練されたパネラーによって官能評価した。評価項目は以下のとおりとした。
評価項目1として、ビールらしい味わい(ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられる、調和がとれている)を1(ビールらしくない)〜9(ビールらしい)の9段階で官能評価した。また、評価項目2として、口内に残るざらつき(渋みや舌に残るざらざらした感触といった雑味)を1(弱い)〜9(強い)の9段階で官能評価した。各サンプルの成分分析の結果と官能評価結果は表10に示される通りであった。
表10に示されるように、市販ビールであるサンプルNo.1〜3において、ビールらしい味わいが7.1〜7.3と高く、口内に残るざらつきが3.1〜4.5と低くなった。また、麦芽比率50%未満、および麦芽比率25%未満の場合において、10〜20kDaのペプチド濃度が0.19mg/mL製品以上であり、10〜20kDaのペプチド比率が3.7%以上であり、かつ、重合度が5〜10のα−グルカンの濃度が3.3mg/ml以上の場合(具体的には、サンプルNo.7、8、10、14、18の場合)に、ビールらしい味わいが5.2〜6.6と高めとなり、口内に残るざらつきが3.8〜5.1と低めとなり、しかもビールのスコアに近くなる傾向が認められた。
また、図5および図6にビールらしい味わいの官能評価結果のバブルグラフを示した。いずれの図でも、枠で囲われた範囲内にプロットされるサンプルにおいて、ビールらしい味わいの官能評価スコアが5.1以上となることが分かった。
以上の結果から、ビールテイストアルコール飲料中の10〜20kDaのペプチド濃度とその比率、および重合度が5〜10のα−グルカンの総濃度が特定の範囲で含まれる場合に、ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられ、渋味やざらつきなどの雑味が少なく、味わいの調和感が向上することが示された。
実施例3:α−グルカン、ペプチドと官能評価の関係評価
市販のビール、発泡酒、新ジャンル飲料など、ビールテイスト発泡性アルコール飲料について、重合度が5〜10のα−グルカン濃度および10〜20kDaのペプチド濃度と、官能評価との相関係数(R2乗)を評価した。重合度が5〜10のα−グルカン濃度、10〜20kDaのペプチド濃度の分析方法は実施例2に示した通り。二つの成分の両方を加味した数値は、重合度が5〜10のα−グルカン濃度(mg/ml)と10〜20kDaのペプチド濃度(mg/ml)を乗じたものとして計算した。官能評価は、10名の訓練されたパネラーによって、「味の調和」、すなわちビールらしさに関わる味の調和を指標として、0〜10の11段階の幅で、0を全く感じない、10を評価者の認識の中でこれ以上感じたことがない、として評価した。
重合度5〜10のα−グルカン濃度および10〜20kDaのペプチド濃度と官能評価結果は表11に示される通りであった。また、濃度と官能評価結果の関係は図7に示される通りであった。
表11および図7に示される通り、重合度5〜10のα−グルカン濃度、10〜20kDaのペプチド濃度のそれぞれ単独で、官能評価結果との相関係数を求めたもの(それぞれ、R2=0.29、0.46)よりも、二つの成分(2成分の濃度を乗じた値)との相関係数の方が高くなる(R2=0.58)ことが明らかとなった。この結果から、重合度5〜10のα−グルカン、10〜20kDaのペプチドそれぞれ単独ではなく、二つの成分を指標とすることの有効性が確認された。
実施例4:ペプチド画分およびα−グルカン画分のビールテイストアルコール飲料への添加と官能評価(その2)
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造と分画精製物の調製および分析
実施例1に記載と同様の方法で、実施例2に記載のサンプル1(麦芽67%以上の市販ビール製品)およびサンプル7(麦芽50%未満の試験醸造製品)から、ペプチド画分(プレ、A1、A2、B、C)およびα−グルカン画分(B、C)を調製した。10〜20kDaペプチド量の定量と、重合度5〜10のα−グルカン(マルトオリゴ糖)量の分析についても、実施例2に記載した方法と同様の方法で行った。調製した分画・精製サンプルを、以下の市販製品および試醸品に、表12に示した量となるように添加し、6名のパネルにより官能評価を行った。また、精製した画分プレ、A1+A2およびB+Cを、サンプルNo.4に、表13に示した量となるように添加し、同様に6名のパネルにより官能評価を行った。
(2)官能評価
官能評価の項目は実施例2と同様にした。すなわち、評価項目1として、ビールらしい味わい(ビールにあるような柔らかくスムーズなテクスチャーが感じられる、調和がとれている)を1点(ビールらしくない)〜9点(ビールらしい)の9段階で官能評価した。また、評価項目2として、口内に残るざらつき(渋みや舌に残るざらざらした感触といった雑味)を1点(弱い)〜9点(強い)の9段階で官能評価した。官能結果および分析結果は表12並びに図8および図9に示される通りであった。
これらの結果から、10〜20kDaペプチドあるいは重合度5〜10のα−グルカン量が増加して一定値以上になると官能評価スコアが向上すること、また、これら双方の量が一定値以上になると官能評価スコアがより効果的に向上することが明らかになった。また、一定値に達していない場合でも、10〜20kDaペプチドや重合度5〜10のα−グルカン量が増加すると、官能評価スコアは改善する傾向があることが明らかになった。
また、実施例2のデータと合わせると、麦芽比率50%未満および麦芽比率25%未満の場合において、10〜20kDaのペプチド濃度が0.15mg/mL製品以上、かつ、10〜20kDaのペプチド比率が3.7%以上であり、しかも、重合度5〜10のα−グルカンの濃度が3.3mg/mL以上の場合に、ビールらしい味わいが5.1以上と高くなり、口内に残るざらつきが5.1以下となり、さらに、官能評価スコアは改善する傾向があることが明らかになった。
また、重合度5〜10のα−グルカンの濃度が2.1mg/mL以上の場合に、ビールらしい味わいは4.2以上となり、口内に残るざらつきが5.1以下となり、さらに、官能評価スコアはビールのスコアに近くなる傾向が認められた。
また、表13および図10に示した通り、精製した画分プレ、A1+A2およびB+CをサンプルNo.4に添加した場合には、画分A1+A2が最もビールらしい味わいのスコアが高く、ざらつきも低減していることが明らかとなった。
実施例5:タンパク画分の分子種同定
本実施例では2D−PAGEおよびMALDI−TOF−MSによりビールらしい味わいに寄与するタンパク質の同定を試みた。
実施例1と同様にして得られたゲル濾過分画液の画分A1、A2の等量混合液200μLをTCAアセトン沈殿によってタンパク質を精製し、2D−PAGEによる電気泳動後、銀染色を行った。図11に、2D−PAGEの結果を示す。図11Aは、実施例1の試験区1の処方であり、図11Bは、実施例1の試験区2の処方である。また、図11Cは、実施例2のサンプル16であり、図11Dは、実施例2のサンプル15である。図11のAおよびBから分かるように、試験区1と試験区2のサンプルの間では、丸で囲った範囲のバンドにおいて量的な差があることが分かった。また、図11のCおよびDから分かるように、サンプル16とサンプル15の間では、丸で囲った範囲のバンドにおいて量的な差があることが分かった。
次に、図11で示す矢印のバンドを切り出し、トリプシン(In-Solution Tryptic Digestion and Guanidination Kit、Thermo Scientific社製)を用いてタンパク質を消化した。得られたトリプシン消化ペプチド溶液を、レジン充填ピペットチップ(Zip-Tip C18、Merck Millipore社製)を用いて脱塩濃縮した。脱塩濃縮したペプチド溶液とマトリックス(10μg/μLα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸・メタノール溶液)をプレート上で等量ずつ混合した後、MALDI−TOF−MS(Bruker Daltonics社製)を用いてMSスペクトルを取得し、Mascot/SWISS−PROTデータベース検索によってタンパク質の同定を行った。
MALDI−TOF−MSによるタンパク質同定の結果は表14に示される通りであった。
実施例1の試験区1および2の間で香味に違いがあるゲル濾過画分(画分A1〜A2)中の量差のあるタンパク質としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCmeが同定された。また、実施例2のサンプル16とサンプル15の間でゲル濾過画分(画分A1〜A2)中の量差のあるタンパク質としては、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCme、セルピン−Z4、非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)が同定された。なお、同定されたタンパク質はいずれもオオムギ(Hordeum vulgare)由来のタンパク質である。α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCme、セルピン−Z4は、プロテアーゼ阻害タンパク質として知られており、non-specific lipid-transfer protein 1は、脂質転移タンパク質として知られている。



Claims (6)

  1. 麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とし、かつ、麦芽使用比率が3分の2未満であるビールテイスト発酵アルコール飲料であって、
    該飲料が、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分を含んでなり、
    該ペプチド画分に含まれるペプチドの飲料中の濃度(ペプチドの合計量)が0.15mg/ml以上0.31mg/ml以下であり、
    全タンパク量(mg/mL)に対する前記ペプチドの量(mg/mL)の比率が4.3%以上8.0%以下であり、
    該飲料が、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する重合度5〜10のα−グルカン画分を含んでなり、
    該α−グルカン画分に含まれる重合度5〜10のα−グルカンの飲料中の濃度(α−グルカンの合計量)が3.3mg/ml以上13.0mg/ml以下であり、
    前記ペプチド画分が、大麦由来のα−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、大麦由来のセルピン−Z4および大麦由来の非特異的脂質転移タンパク1を少なくとも含むものである、ビールテイスト発酵アルコール飲料。
  2. 分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分に含まれるペプチドの飲料中の濃度(ペプチドの合計量)が0.19mg/ml以上である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
  3. 麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分と、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する重合度5〜10のα−グルカン画分とが配合されてなる、麦芽使用比率が3分の2未満であるビールテイストアルコール飲料であって、
    前記ペプチド画分が、該ペプチド画分に含まれるペプチドの飲料中の濃度(ペプチドの合計量)が0.15mg/ml以上0.31mg/ml以下の濃度となり、かつ、全タンパク量(mg/mL)に対する前記ペプチドの量(mg/mL)の比率が4.3%以上8.0%以下の比率となるように配合されてなり、
    前記α−グルカン画分が、該α−グルカン画分に含まれる重合度5〜10のα−グルカンの飲料中の濃度(α−グルカンの合計量)が3.3mg/ml以上13.0mg/ml以下の濃度となるよう配合されてなり、
    前記ペプチド画分が、大麦由来のα−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、大麦由来のセルピン−Z4および大麦由来の非特異的脂質転移タンパク1を少なくとも含むものである、ビールテイストアルコール飲料。
  4. 分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分に含まれるペプチドの飲料中の濃度(ペプチドの合計量)が0.19mg/ml以上の濃度となるように、前記ペプチド画分が配合されてなる、請求項3に記載のビールテイストアルコール飲料。
  5. 麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分を発酵前の発酵前液、発酵中の発酵液または発酵後の発酵液に配合する工程と、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する重合度5〜10のα−グルカン画分を発酵前の発酵前液、発酵中の発酵液、あるいは発酵後の発酵液に配合する工程とを含んでなる、ビールテイストアルコール飲料の製造方法であって、
    前記ペプチド画分を、該ペプチド画分に含まれるペプチドの飲料中の濃度(ペプチドの合計量)が0.15mg/ml以上0.31mg/ml以下の濃度となり、かつ、全タンパク量(mg/mL)に対する前記ペプチドの量(mg/mL)の比率が4.3%以上8.0%以下の比率となるように配合し、
    前記α−グルカン画分を、該α−グルカン画分に含まれる重合度5〜10のα−グルカンの飲料中の濃度(α−グルカンの合計量)が3.3mg/ml以上13.0mg/ml以下の濃度となるよう配合し、
    前記ペプチド画分が、大麦由来のα−アミラーゼ/トリプシンインヒビター、大麦由来のセルピン−Z4および大麦由来の非特異的脂質転移タンパク1を少なくとも含むものである、製造方法。
  6. 分子量10〜20kDa(ゲル濾過法)のペプチド画分に含まれるペプチドの飲料中の濃度(ペプチドの合計量)0.19mg/ml以上の濃度となるように、前記ペプチド画分が配合される、請求項5に記載のビールテイストアルコール飲料の製造方法。
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