<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と[B]酸発生剤とを含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、[B’]他の酸発生体、[C]酸拡散制御体、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体(以下、「[D]重合体」ともいう)、及び/又は[E]溶媒を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(I)を有する重合体である。ここで「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。[A]重合体は、構造単位(I)以外に、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)をさらに有することが好ましく、構造単位(I)〜(II)以外のその他の構造単位を有してもよい。[A]重合体は、上記構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜の露光部では、[B]酸発生剤等から放射線の照射に起因して生じる酸により構造単位(I)の酸解離性基が解離し、その結果、上記レジスト膜の露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じる。これにより、上記レジスト膜からレジストパターンを形成することが可能となる。
構造単位(I)としては、特に限定されないが、例えば下記式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1)」ともいう)、アセタール構造を含む構造単位(以下、「構造単位(I−2)」ともいう)等が挙げられる。[A]重合体は、構造単位(I−1)及び(I−2)をそれぞれ1種又は2種以上を有していてもよい。また、[A]重合体は、構造単位(I−1)及び構造単位(I−2)の両方を有していてもよい。以下、構造単位(I−1)及び構造単位(I−2)について説明する。
(構造単位(I−1))
構造単位(I−1)は、下記式(2)で表される構造単位である。下記式(2)における−CR15R16R17で表される基が酸解離性基である。
上記式(2)中、R14は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R15は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造を表す。
ここで「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
R14としては、構造単位(I−1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R15、R16及びR17で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
上記1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
上記1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の1価の単環の脂環式飽和炭化水素基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の1価の単環の脂環式不飽和炭化水素基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の1価の多環の脂環式飽和炭化水素基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の1価の多環の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
上記1価の芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
R16及びR17の基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造としては、例えば
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロデカン構造等の単環の脂環式飽和炭化水素構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の脂環式飽和炭化水素構造;
シクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造等の単環の脂環式不飽和炭化水素構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環の脂環式不飽和炭化水素構造などが挙げられる。
構造単位(I−1)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
上記式中、R14は、上記式(2)と同義である。
構造単位(I−1)としては、下記式(2−1)〜(2−5)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1−1)〜(I−1−5)」ともいう)が好ましい。
上記式(2−1)〜(2−5)中、R14〜R17は、上記式(2)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
構造単位(I−1)としては、構造単位(I−1−1)がより好ましく、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び2−アルキル−2−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
(構造単位(I−2))
構造単位(I−2)は、アセタール構造を含む構造単位である。構造単位(I−2)としては、例えば下記式(X)で表される基(以下、「基(X)」ともいう)を含む構造単位等が挙げられる。基(X)は、酸の作用により分解して、*−RwOH、RXRY=O及びRZOHを生じる。基(X)において−C(RX)(RY)(ORZ)が酸解離性基である。
上記式(X)中、RX及びRYは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。RZは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。RWは、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。RX、RY、RZ及びRWのうちの2つ以上が、互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は原子鎖と共に環員数3〜20の環構造を形成していてもよい。*は、構造単位(I−2)中の上記基(X)以外の部分との結合部位を示す。
ここで「環員数」とは、脂環構造、芳香環構造、脂肪族複素環構造及び芳香族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
RX、RY及びRZで表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(2)のR15、R16及びR17として例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。RWで表される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、例えば上記1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
RX及びRYとしては、水素原子及び1価の鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子及びアルキル基がより好ましく、水素原子及びメチル基がさらに好ましい。RZとしては、1価の鎖状炭化水素基及び1価の脂環式炭化水素基が好ましく、アルキル基及び1価の多環の脂環式飽和炭化水素基がさらに好ましく、メチル基及びテトラシクロドデシル基が特に好ましい。
RWとしては、単結合及び2価の鎖状炭化水素基が好ましく、単結合及びアルカンジイル基がより好ましく、単結合及びメタンジイル基がさらに好ましい。
RX、RY、RZ及びRWのうちの2つ以上が形成する環員数3〜20の環構造としては、例えば1,3−ジオキサシクロペンタン構造等の1,3−ジオキサシクロアルカン構造などが挙げられる。
基(X)としては、RWが単結合であり、RX及びRYの一方が水素原子、他方がメチル基であり、かつRZがテトラシクロドデシル基であるものが好ましい。
構造単位(I−2)としては例えば下記式(3)で表される構造単位等が挙げられる。
上記式(3)中、RCは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。L1は、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。Tは、上記基(X)である。nは、1〜3の整数である。nが2以上の場合、複数のTは同一でも異なっていてもよい。
RCとしては、構造単位(I−2)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
L1で表される炭素数1〜20の2価の有機基としては、例えば置換又は非置換の炭素数1〜10の2価の炭化水素基、−CO−等が挙げられる。上記炭化水素基の置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基等が挙げられる。
L1としては、単結合及び−CO−が好ましく、−CO−がより好ましい。
nとしては、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
構造単位(I−2)としては、上記式(3)で表される構造単位であってL1が−CO−であり、nが1であり、TにおけるRWが単結合であり、RX及びRYの一方が水素原子、他方がメチル基であり、かつRZがテトラシクロドデシル基であるものが好ましい。
構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して10モル%が好ましく、25モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度等がさらに向上し、結果として、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をさらに向上できる。
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位である(但し、構造単位(I)に該当するものを除く)。[A]重合体は、構造単位(II)をさらに有することで、現像液への溶解性をより適度なものに調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜と基板との密着性をより向上させることができる。ここで、ラクトン構造とは、−O−C(O)−で表される基を含む1つの環(ラクトン環)を有する構造をいう。また、環状カーボネート構造とは、−O−C(O)−O−で表される基を含む1つの環(環状カーボネート環)を有する構造をいう。さらに、スルトン構造とは、−O−S(O)2−で表される基を含む1つの環(スルトン環)を有する構造をいう。構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
構造単位(III)としては、これらの中で、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、γ−ブチロラクトン構造を含む構造単位、エチレンカーボネート構造を含む構造単位及びノルボルナンスルトン構造を含む構造単位が好ましい。
[A]重合体が構造単位(II)を有する場合、[A]重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)の含有割合の下限としては、1モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましく、40モル%が特に好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜と基板との密着性をより向上させることができる。上記含有割合が上記下限より小さい場合、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜と基板との密着性が低下するおそれがある。逆に、上記含有割合が上記上限を超える場合、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下するおそれがある。
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(II)以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、例えばヒドロキシ基を含む構造単位等が挙げられる。ヒドロキシ基としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。[A]重合体がフェノール性水酸基を含む構造単位を有すると、KrF露光、EUV露光、電子線露光等を行う場合の感度をより向上できる。
ヒドロキシ基を含む構造単位としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
上記式中、RL2は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
ヒドロキシ基を含む構造単位としては、ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び3−ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましい。
[A]重合体がヒドロキシ基を含む構造単位を有する場合、ヒドロキシ基を含む構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。
[A]重合体は、その他の構造単位として、ヒドロキシ基を含む構造単位以外の構造単位を有してもよい。このようなその他の構造単位としては、例えばカルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基、これらの組み合わせ等を含む構造単位、非解離性の炭化水素基を含む構造単位などが挙げられる。これらの構造単位の含有割合の上限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物が含有する全重合体に対する[A]重合体の含有量の下限としては、60質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。上記含有量を上記下限以上とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。
[A]重合体の含有量の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。一方、[A]重合体の含有量の上限としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、97質量%が好ましく、93質量%がより好ましい。ここで当該感放射線性樹脂組成物における全固形分とは、[E]溶媒と後述する偏在化促進剤とを除いた成分の総和をいう。
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えばラジカル重合開始剤等の存在下、各構造単位を与える単量体を適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
上記ラジカル重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤などが挙げられる。上記ラジカル重合開始剤としては、AIBN及びジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル重合開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
[A]重合体の重合における反応温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、上記反応温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。[A]重合体の重合における反応時間の下限としては、1時間が好ましく、2時間がより好ましい。一方、上記反応時間の上限としては、48時間が好ましく、24時間がより好ましい。
[A]重合体の重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、3,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。一方、上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、20,000がより好ましく、8,000がさらに好ましい。上記Mwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗布性を向上させることができる。
[A]重合体の数平均分子量(Mn)に対する上記Mwの比(Mw/Mn)の下限としては、通常1であり、1.3が好ましい。一方、上記Mw/Mnの上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましく、1.8が特に好ましい。上記Mw/Mnを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上できる。
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:例えば東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、及び「G4000HXL」1本
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
<[B]酸発生剤>
[B]酸発生剤は、−SO3 −と、第1炭素原子、第2炭素原子と、2個以上の電子求引性基(フッ素原子、フルオロアルキル基、−SO3 −及びスルホ基を除く。)とを含む1価のアニオン、及び1価の感放射線性オニウムカチオンを有する化合物(Z)からなる。化合物(Z)は、第1炭素原子に上記−SO3 −基及び第2炭素原子が結合し、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に合計2個以上の上記電子求引性基が結合している。
[B]酸発生剤は、露光により酸を発生する物質であり、通常この酸により[A]重合体の酸解離性基を解離させてレジスト膜の露光部及び未露光部で現像液に対する溶解性の差異を生じさせ、その結果、レジストパターンの形成を促進する(以下、この目的で使用される[B]酸発生剤を「[B1]酸発生剤」ともいう)。但し、[B]酸発生剤は、自身から発生する酸よりも強い酸を発生させる化合物と併用する場合には、後述する[C]酸拡散制御体と同様に、上記化合物から生じた酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応の抑制等の効果を奏することもできる(以下、この目的で使用される[B]酸発生剤を「[B2]酸発生剤」ともいう。[B]酸発生剤は、1種又は2種以上を含有することができる。
当該感放射線性樹脂組成物は、[B]酸発生剤を含有することで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性に優れる。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[B]酸発生剤は、化合物(Z)の有するアニオンが−SO3 −及び2個以上の電子求引性基を含み、この−SO3 −に結合する第1炭素原子及び/又はこの第1炭素原子に結合する第2炭素原子に合計2個以上の上記電子求引性基が結合することで、発生する酸のレジスト膜中の拡散長が複数の電子求引性基によって適度に短く制御される。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性に優れると考えられる。
上記アニオンの有する上記電子求引性基としては、例えばアセチル基等のアシル基、メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子等のハロゲン原子(フッ素原子を除く。)や、これらの原子及び基のうちの少なくとも1種によって一部又は全部の水素原子が置換された炭素数1〜5の1価の炭化水素基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、炭素数1〜2のアルキル基及び炭素数1〜2のアルケニル基が好ましく、メチル基及びビニル基がより好ましい。
上記アニオンの有する上記電子求引性基としては、下記式(A)で表される基が好ましい。上記アニオンが下記式(A)で表される基を含むことで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上できる。この理由については明確ではないが、例えばシアノ基は他の電子求引性基と比較して特に強い電子求引性を示すため、[B]酸発生剤から発生する酸の強さを適度に強いものに調整できるためであると考えられる。
上記式(A)中、Xは、それぞれ独立して、水素原子又はシアノ基である。nは、0又は1である。*は、上記電子求引性基以外の部分との結合部位を示す。
nとしては、0が好ましい。
上記アニオンが含む上記電子求引性基の数としては、2個以上であれば特に限定されないが、例えば2個以上10個以下であり、2個以上5個以下が好ましく、2個以上4個以下がより好ましい。上記アニオンが含む上記電子求引性基は、少なくとも一部が第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に結合していればよいが、その全てが第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に結合していることが好ましい。また、第1炭素原子及び第2炭素原子に結合する上記電子求引性基の合計としては、2個以上5個以下であり、2個以上4個以下が好ましい。
上記アニオンは、上記電子求引性基として2個のシアノ基を含むことが好ましい。
なお、上記アニオンは、2個以上の上記電子求引性基を含んでいる限り、フッ素原子、フルオロアルキル基、−SO3 −及びスルホ基のうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。上記フルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基等のトリフルオロアルキル基などが挙げられる。但し、上記アニオンがフッ素原子、フルオロアルキル基、−SO3 −及びスルホ基のうちの少なくとも1つを含む場合、これらの基は、上記アニオンにおける第1炭素原子及び第2炭素原子以外のいずれにも該当しない原子に結合していることが好ましい。
第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に、上記電子求引性基以外の有機基がさらに結合していることが好ましい。すなわち、上記アニオンは、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に結合する上記有機基をさらに有することが好ましい。このように、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に上記有機基が結合していることで、[B]酸発生剤から発生する酸の拡散長をより適度なものに調整できる。上記有機基としては、例えば後述する式(1−1)〜(1−3)においてR1、R2及びR3で表される1価の有機基として例示した基のうち、上記電子求引性基に該当しないもの等が挙げられる。上記有機基としては、炭素数2以上の1価の有機基が好ましい。上記アニオンは、上記有機基を1個のみ有してもよく、2個以上有してもよい。
上記アニオンの有する1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば下記式(Z−1)〜(Z−3)で表されるカチオン(以下、「カチオン(I)〜(III)」ともいう)等が挙げられる。
上記式(Z−1)中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、−OSO2−RP若しくは−SO2−RQであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。RP及びRQは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の1価の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0〜5の整数である。Ra1〜Ra3並びにRP及びRQがそれぞれ複数の場合、複数のRa1〜Ra3並びにRP及びRQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記式(Z−2)中、Ra4は、置換若しくは非置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜8のアルコキシ基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜8の1価の芳香族炭化水素基である。k4は、0〜7の整数である。Ra4が複数の場合、複数のRa4は同一でも異なっていてもよく、また複数のRa4は互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は炭素鎖と共に環構造を形成していてもよい。Ra5は、置換若しくは非置換の炭素数1〜7のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の1価の芳香族炭化水素基である。k5は、0〜6の整数である。Ra5が複数の場合、複数のRa5は同一でも異なっていてもよく、また複数のRa5は互いに合わせられこれらが結合する原子又は原子鎖と共に環構造を形成していてもよい。rは、0〜3の整数である。Ra6は、単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。tは、0〜2の整数である。
上記式(Z−3)中、Ra7及びRa8は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、−OSO2−RR若しくは−SO2−RSであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は原子鎖と共に構成される環構造を表す。RR及びRSは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の1価の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基である。k6及びk7は、それぞれ独立して、0〜5の整数である。Ra7、Ra8、RR及びRSがそれぞれ複数の場合、複数のRa7、Ra8、RR及びRSはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Ra1〜Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、RP、RQ、RR及びRSで表されるアルキル基としては、例えば
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状アルキル基;
i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状アルキル基などが挙げられる。
Ra4で表されるアルコキシ基としては、例えば
メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。
Ra1〜Ra3で表されるシクロアルキルとしては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
RP、RQ、RR及びRSで表される1価の脂環式炭化水素基としては、例えば上記式(2)のR15、R16及びR17で表される1価の脂環式炭化水素基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
Ra1〜Ra3、Ra7、Ra8、RP、RQ、RR及びRSで表される1価の芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
Ra4及びRa5で表される芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
Ra6で表される2価の有機基としては、例えば上記式(3)のL1で表される2価の有機基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
Ra1〜Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、RP、RQ、RR及びRSで表されるアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、1価の芳香族炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基を置換する置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基などが挙げられる。これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
複数のRa1〜Ra5及びRa7及びRa8が形成する環構造としては、例えば上記式(2)のR16及びR17が形成する環構造として例示したものと同様の環構造等が挙げられる。
Ra1〜Ra3としては、非置換のアルキル基、非置換のシクロアルキル基、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、−OSO2−R’’及び−SO2−R’’が好ましく、非置換のシクロアルキル基、フッ素化アルキル基及び非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、シクロヘキシル基がさらに好ましい。R’’は、非置換の1価の脂環式炭化水素基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基である。
Ra4としては、非置換のアルキル基、非置換のアルコキシ基、フッ素化アルキル基及び非置換の1価の芳香族炭化水素基が好ましく、非置換の炭素数1〜5のアルコキシ基がより好ましく、n−ブトキシ基がさらに好ましい。
Ra6としては、単結合が好ましい。
Ra5、Ra7及びRa8としては、非置換のアルキル基、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、−OSO2−R’’及び−SO2−R’’が好ましく、フッ素化アルキル基及び非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。R’’は、非置換の1価の脂環式炭化水素基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基である。
式(Z−1)におけるk1、k2及びk3としては、0〜2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。式(Z−2)におけるk4としては、0〜2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、1がさらに好ましい。k5としては、0〜2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。rとしては、2及び3が好ましく、2がより好ましい。tとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。式(Z−3)におけるk6及びk7としては、0〜2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。
1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、これらの中で、カチオン(I)及びカチオン(II)が好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン及び4−ブトキシナフタレン−1−イルテトラヒドロチオフェニウムカチオンがより好ましい。
上記式(A)で表される基を含む上記アニオンを有する第1化合物(Z)としては、下記式(1−1)、(1−2)又は(1−3)で表される化合物(以下、「化合物(Z−I)、(Z−II)又は(Z−III)」ともいう)が好ましい。下記式(1−1)、(1−2)及び(1−3)において、E−に隣接する炭素原子が第1炭素原子、第1炭素原子及びR1に隣接する炭素原子が第2炭素原子である。なお、下記式(1−1)で表され、かつ下記式(1−2)及び/又は(1−3)でも表される化合物(Z)は、化合物(Z−I)とする。また、下記式(1−2)で表され、かつ下記式(1−3)でも表される化合物(Z)は、化合物(Z−II)とする。
上記式(1−1)、(1−2)及び(1−3)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基の2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子若しくは炭素鎖と共に構成される環員数3〜20の環構造を表す。E−は、−SO3 −である。A+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。Yは、上記式(A)で表される電子求引性基である。
A+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンは、上記アニオンの有する1価の感放射線性オニウムカチオンである。
R1、R2及びR3で表される1価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(α)、上記炭化水素基又は基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(2)におけるR15、R16及びR17で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基で例示したものと同様の基等が挙げられる。
上記1価のヘテロ原子含有基及び2価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば−O−、−CO−、−S−、−CS−、−NR’−、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等が挙げられる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。これらの中で、−O−が好ましい。
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基(−SH)等が挙げられる。これらの中で、フッ素原子が好ましい。
R1、R2及びR3のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は炭素鎖と共に形成する環員数3〜20の環構造としては、例えば環員数3〜20の脂環構造、環員数3〜20の脂肪族複素環構造等が挙げられる。
上記環員数3〜20の脂環構造としては、例えば
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等の単環の脂環式炭化水素構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の脂環式炭化水素構造などが挙げられる。
上記環員数3〜20の脂肪族複素環構造としては、例えば
アザシクロペンタン構造、アザシクロへキサン構造等のアザシクロアルカン構造;
オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造等のオキサシクロアルカン構造;
チアシクロペンタン構造、チアシクロへキサン構造等のチアシクロアルカン構造;
オキサゾリジン構造、1,4,2−ジオキサゾリジン構造、チアゾリジン構造、下記式(K)で表される構造などが挙げられる。
上記式(K)中、K1及びk2は、それぞれ独立して、環員数3〜15の単環又は多環の脂環構造である。
K1及びk2で表される脂環構造としては、上記環員数3〜20の脂環構造として例示したものと同様のもの等が挙げられ、これらの中で、環員数5〜8の単環の脂環式炭化水素構造、及び環員数8〜15の多環の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン構造、ノルボルナン構造及びアダマンタン構造がより好ましい。
R1、R2及びR3で表される1価の有機基は、上記式(A)で表される基等の電子求引性基であってもよい。但し、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、上記式(A)で表される電子求引性基以外の有機基であることが好ましい。
R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、酸素原子及び硫黄原子のうちの少なくとも一方を含む1価の有機基、又は水素原子であるとよい。一方、R1、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であってもよい。R1、R2及びR3を上述の基又は原子とすることで、化合物(Z)から生じる酸の拡散長をより適度なものに調整することができる。
化合物(Z−I)におけるR1としては、水素原子及び炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。特に、R1が水素原子である化合物(Z−I)は、R1に含まれるプロトンがアルカリの作用で容易に脱離する。そのため、このような化合物(Z−I)を[B]酸発生剤として用いた当該感放射線性樹脂組成物は、形成されるレジスト膜をアルカリ現像する際に、化合物(Z−I)が上述のプロトンの脱離により溶解性が向上するため、[B]酸発生剤の溶解不良に起因する現像欠陥を効果的に抑制できると考えられる。
化合物(Z−I)におけるR2及びR3としては、水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(α)、上記式(A)で表される電子求引性基が好ましく、水素原子、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜15の1価の脂環式炭化水素基、この脂環式炭化水素基の炭素−炭素間に−COO−又は−SO2O−を含む基、炭素数6〜15の1価の芳香族炭化水素基、及び上記式(A)で表される電子求引性基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜15の1価の脂環式飽和炭化水素基、ノルボルナンラクトン構造を含む1価の基、ノルボルナンスルトン構造を含む1価の基、炭素数6〜15のアリール基及びシアノ基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ノルボルナンランクトン−イル基、ノルボルナンスルトン−イル基、フルオレニル基及びシアノ基が特に好ましい。
化合物(Z−I)におけるR2及びR3は、少なくとも一方が1価の有機基であるとよい。また、化合物(Z−I)におけるR2及びR3は、一方が上記式(A)で表される電子求引性基である場合、他方は上記式(A)で表される電子求引性基以外とは異なる1価の有機基であることが好ましい。
化合物(Z−II)におけるR1及びR2としては、水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、及びこの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基が好ましく、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、炭素数3〜15の脂環式炭化水素基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、及びこれらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜15の1価の脂環式飽和炭化水素基、炭素数6〜15のアリール基、及び炭素数6〜15のハロゲン化アリール基がさらに好ましく、水素原子、シクロヘキシル基、フェニル基及びフルオロフェニル基が特に好ましい。
化合物(Z−II)におけるR3としては、水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、及びこの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基が好ましく、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、炭素数3〜15の脂環式炭化水素基、炭素数6〜15の1価の芳香族炭化水素基及びこれらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基がより好ましく、水素原子、炭素数6〜15のアリール基及び炭素数6〜15のハロゲン化アリール基がさらに好ましく、水素原子、フェニル基、ナフチル基及びフルオロフェニル基が特に好ましい。
また、化合物(Z−II)において、R1及びR2のうちの一方と、R3とは、互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に環員数3〜20の環構造を形成していることも好ましい。この場合、上記環構造としては、アセタール構造を含む環構造が好ましく、上記式(K)で表される環構造がさらに好ましい。
化合物(Z−III)におけるR1、R2及びR3としては、水素原子及び炭素数1〜20の1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、炭素数3〜15の1価の脂環式炭化水素基及び炭素数6〜15の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、水素原子、炭素数5〜15の1価の脂環式飽和炭化水素基及び炭素数6〜15のアリール基がさらに好ましく、水素原子、シクロヘキシル基及びナフチル基が特に好ましい。
化合物(Z−III)におけるR1、R2及びR3は、少なくとも1つが1価の有機基であり、別の少なくとも1つが水素原子であるとよい。
化合物(Z−I)〜(Z−III)としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
上記式中、A+は1価の感放射線性オニウムカチオンである。
[B1]酸発生剤として[B]酸発生剤を用いる場合、当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、5.0質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、40質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量と上記範囲とすることで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。
[B2]酸発生剤として[B]酸発生剤を用いる場合、当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1.0質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、30質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量と上記範囲とすることで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。
<化合物(Z)の製造方法>
[製造方法(1)]
化合物(Z)は、例えば上記式(1−1)で表され、R1が水素原子である化合物(Z’−a)の場合、下記スキームに従い、簡便かつ収率よく合成することができる。
上記スキーム中、R2、R3、Y、A+及びE−は、上記式(1−1)と同義である。S1は、亜硫酸塩である。J−は、ハロゲンアニオンである。
J−で表されるハロゲンアニオンとしては、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン等が挙げられ、これらの中で塩素アニオンが好ましい。
エチレン性炭素−炭素二重結合を構成する一対の炭素原子と、この一対の炭素原子の一方に結合するR2及びR3と、上記一対の炭素原子の他方に結合する上記式(A)で表される2個のYとを有する不飽和化合物(z’−a)に、亜硫酸塩を付加反応させる工程と、得られた生成物を必要に応じてハロゲンアニオン及び感放射線性オニウムカチオンで形成される化合物であるA+J−でカチオン交換する工程とを備える方法により、化合物(Z’−a)を得ることができる。
上記付加反応工程は、例えばアセトニトリル等の溶媒下、加熱還流条件で行うことで反応を促進できる。また、上記カチオン交換工程は、例えばジクロロメタン、水等の溶媒下で行うことで、反応を促進できる。上記亜硫酸塩としては、亜硫酸水素ナトリウムが好ましい。
得られた生成物には、上記付加反応工程でR2、R3又は2個のYの位置関係が変化した副生成物等が含まれる場合もあるが、カラムクロマトグラフィ、再結晶、蒸留等により適切に精製することにより化合物(Z’−a)を単離することができる。
不飽和化合物(z’−a)は、例えば下記スキームに従い、簡便かつ収率よく合成することができる。
上記スキーム中、R2、R3及びYは、上記式(1−1)と同義である。
式(z”−a)で表されるアルデヒド化合物と、Y−CH2−Yで表される化合物とをイミダゾール等の塩基存在下、塩化メチレン等の溶媒中で反応させることにより、式(z’−a)で表される不飽和化合物を得ることができる。
得られた生成物をカラムクロマトグラフィ、再結晶、蒸留等により適切に精製することにより不飽和化合物(z’−a)を単離することができる。
[製造方法(2)]
化合物(Z)は、例えば化合物(Z−3)の場合、下記スキームに従い、簡便かつ収率よく合成することができる。
上記スキーム中、R1、R2、R3、Y、A+及びE−は、上記式(1−3)と同義である。S2は、亜ジチオン酸塩である。J’は、ハロゲン原子である。a+は、S2に含まれる1価のカチオンである。J”−は、ハロゲンアニオンである。
J’で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中でヨウ素原子が好ましい。
J”−で表されるハロゲンアニオンとしては、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン等が挙げられ、これらの中で塩素アニオンが好ましい。
S2で表される亜ジチオン酸塩としては、亜ジチオン酸ナトリウムが好ましい。
ハロゲン原子J’と、2つの炭素原子(第3炭素原子及び第4炭素原子)と、2個のYと、R1〜R3とを有し、第3炭素原子にJ’及び2個のYが結合し、第4炭素原子にR1〜R3が結合しているハロゲン化合物(z’−b)の第3炭素原子及びJ’に、亜ジチオン酸塩S2を置換反応させる工程と、得られた生成物を必要に応じてハロゲンアニオン及び感放射線性オニウムカチオンで形成される化合物であるA+J”−でカチオン交換する工程とを備える方法により、化合物(Z−3)を得ることができる。
上記置換反応工程は、例えば炭酸水素ナトリウム等の存在下、アセトニトリル、水等の溶媒中で行うことで反応を促進できる。また、上記置換反応工程で亜ジチオン酸塩を用いる場合、反応ではスルフィン体が得られるが、その後にタングステン酸(IV)ナトリウム等の触媒量と過酸化水素水等の酸化剤とを添加することで、スルホン体に出来る。さらに、上記カチオン交換工程は、例えばジクロロメタン、水等の溶媒中で行うことで、反応を促進できる。
得られた生成物をカラムクロマトグラフィ、再結晶、蒸留等により適切に精製することにより化合物(Z−3)を単離することができる。
化合物(Z’−a)及び(Z−3)以外の化合物(Z)についても、製造方法(1)及び製造方法(2)のうちのいずれかの処方を選択することで、上記同様の方法により合成することができる。
<[B’]他の酸発生体>
[B’]他の酸発生体は、[B]酸発生剤以外の成分であって、露光により酸を発生する物質である。当該感放射線性樹脂組成物は、[B]酸発生剤に加えて[B’]他の酸発生体を含有することで、よりレジストパターンを形成し易くなる。特に、[B]酸発生剤を[B2]酸発生剤として用いる場合においては、当該感放射線性樹脂組成物が[B’]他の酸発生体を含有することで、主に[B’]酸発生剤から発生する酸により[A]重合体の酸解離性基を解離させて露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性の差異を生じさせ、その結果、レジストパターンを形成させることができる。当該感放射線性樹脂組成物における[B’]酸発生体の含有形態としては、低分子化合物の形態(以下、適宜「[B’]他の酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
[B’]他の酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
[B’]他の酸発生剤の具体例としては、例えば特開2009−134088号公報の段落[0080]〜[0113]に記載されている化合物等が挙げられる。
[B’]他の酸発生剤から発生する酸としては、例えばスルホン酸、イミド酸、アミド酸、メチド酸、ホスフィン酸、カルボン酸等が挙げられる。これらの中で、スルホン酸、イミド酸、アミド酸及びメチド酸が好ましい。
[B’]他の酸発生剤としては、例えば下記式(4)で表される化合物(以下、「[B1’]他の酸発生剤」ともいう)等が挙げられる。
上記式(4)中、A−は、1価のスルホン酸アニオン、1価のイミド酸アニオン、1価のアミド酸アニオン又は1価のメチド酸アニオンである。Z+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
[B1’]他の酸発生剤は、上記式(4)におけるA−がスルホン酸アニオンの場合(以下、「[B1a’]他の酸発生剤」ともいう)、スルホン酸が発生する。A−がイミド酸アニオンの場合(以下、「[B1b’]他の酸発生剤」ともいう)、イミド酸が発生する。A−がアミド酸アニオンの場合(以下、「[B1c’]他の酸発生剤」ともいう)、アミド酸が発生する。A−がメチド酸アニオンの場合(以下、「[B1d’]他の酸発生剤」ともいう)、メチド酸が発生する。
[B1a’]他の酸発生剤としては、例えば下記式(4−1)で表される化合物(以下、「化合物(4−1)」ともいう)等が挙げられる。[B1’]他の酸発生剤が下記構造を有することで、[A]重合体の構造単位(I)との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。
上記式(4−1)中、Rp1は、環員数6以上の環構造を含む1価の基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基である。np1は、0〜10の整数である。np2は、0〜10の整数である。np3は、0〜10の整数である。但し、np1+np2+np3は、1以上30以下である。np1が2以上の場合、複数のRp2は同一でも異なっていてもよい。np2が2以上の場合、複数のRp3は同一でも異なっていてもよく、複数のRp4は同一でも異なっていてもよい。np3が2以上の場合、複数のRp5は同一でも異なっていてもよく、複数のRp6は同一でも異なっていてもよい。Z+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
Rp1で表される環員数6以上の環構造を含む1価の基としては、例えば環員数6以上の脂環構造を含む1価の基、環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等が挙げられる。
環員数6以上の脂環構造としては、例えば
シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環の脂環式飽和炭化水素構造;
シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環の脂環式不飽和炭化水素構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の脂環式飽和炭化水素構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環の脂環式不飽和炭化水素構造などが挙げられる。
環員数6以上の脂肪族複素環構造としては、例えば
ヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造;
ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造;
オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造;
アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造;
チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造等のイオウ原子含有複素環構造などが挙げられる。
環員数6以上の芳香環構造としては、例えば
ベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造等が挙げられる。
環員数6以上の芳香族複素環構造としては、例えば
フラン構造、ピラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造;
ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造などが挙げられる。
Rp1の環構造の環員数の下限としては、7が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。一方、上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで、上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。
Rp1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中でヒドロキシ基が好ましい。
Rp1としては、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がより好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン−イル基、ノルボルナンスルトン−イル基及び5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−イル基がさらに好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。
Rp2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基及び2価の脂環式飽和炭化水素基が好ましく、カルボニルオキシ基及び2価の脂環式飽和炭化水素基がより好ましく、カルボニルオキシ基及びノルボルナンジイル基がさらに好ましく、カルボニルオキシ基が特に好ましい。
Rp3及びRp4で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4で表される炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
Rp5及びRp6で表される炭素数1〜20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
np1としては、0〜5の整数が好ましく、0〜3の整数がより好ましく、0〜2の整数がさらに好ましく、0及び1が特に好ましい。
np2としては、0〜5の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0及び1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
np3の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。np3を1以上とすることで、化合物(4−1)から生じる酸の強さを高めることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
Z+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば化合物(Z)が有する1価の感放射線性オニウムカチオンとして例示したカチオンと同様のもの等が挙げられる。
[B1a’]他の酸発生剤としては、例えば下記式(4−1−1)〜(4−1−15)で表される化合物(以下、「化合物(4−1−1)〜(4−1−15)」ともいう)等が挙げられる。[B1b’]他の酸発生剤としては、例えば下記式(4−2−1)〜(4−2−3)で表される化合物(以下、「化合物(4−2−1)〜(4−2−3)」ともいう)等が挙げられる。[B1c’]他の酸発生剤としては、例えば下記式(4−3−1)、式(4−3−2)で表される化合物(以下、「化合物(4−3−1)、(4−3−2)」ともいう)等が挙げられる。[B1d’]他の酸発生剤としては、例えば下記式(4−4−1)、式(4−4−2)で表される化合物(以下、「化合物(4−4−1)、(4−4−2)」ともいう)等が挙げられる。
上記式(4−1−1)〜(4−1−15)、(4−2−1)〜(4−2−3)、(4−3−1)、(4−3−2)、(4−4−1)及び(4−4−2)中、Z+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
[B1’]他の酸発生剤としては、[B1a’]他の酸発生剤が好ましく、化合物(4−1−1)、(4−1−2)、(4−1−11)及び(4−1−12)がより好ましい。
[B1’]他の酸発生剤としては、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩及びテトラヒドロチオフェニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム塩及び4−ブトキシナフタレン−1−イルテトラヒドロチオフェニウム塩がさらに好ましい。
また、[B’]他の酸発生体としては、酸発生体の構造が重合体の一部として組み込まれた重合体も好ましい。このような重合体としては、例えば下記式(4−1’)で表される構造単位を有する重合体等が挙げられる。
上記式(4−1’)中、Rp7は、水素原子又はメチル基である。L4は、単結合又は、−COO−又は2価のカルボニルオキシ炭化水素基である。Rp8は、炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基である。Z+は、上記式(4)と同義である。
Rp7としては、上記式(4−1’)で表される構造単位を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
L4としては、2価のカルボニルオキシ炭化水素基が好ましく、カルボニルオキシアルカンジイル基及びカルボニルアルカンジイルアレーンジイル基がより好ましい。
Rp8としては、炭素数1〜4のフッ素化アルカンジイル基が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルカンジイル基がより好ましく、ヘキサフルオロプロパンジイル基がさらに好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物が[B’]他の酸発生剤を含有する場合、[B’]他の酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、5.0質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、40質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。[B’]他の酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性を向上でき、その結果、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性をより向上させることができる。[B’]他の酸発生体は、1種又は2種以上を含有することができる。
<[C]酸拡散制御体>
当該感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、[C]酸拡散制御体を含有してもよい。特に、[B]酸発生剤を[B1]酸発生剤として用いる場合、[C]酸拡散制御体と併用するとよい。[C]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生剤、[B’]他の酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。また、感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上すると共に、レジストとしての解像度がより向上する。さらに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。[C]酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物(以下、適宜「[C]酸拡散制御剤」ともいう)の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
[C]酸拡散制御剤としては、例えば下記式(B)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
上記式(B)中、R20、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
含窒素化合物(I)としては、例えばn−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類などが挙げられる。
含窒素化合物(II)としては、例えばエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
含窒素化合物(III)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体などが挙げられる。
アミド基含有化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えばピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類;N−プロピルモルホリン、N−(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン、ピラゾールなどが挙げられる。
含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニルピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミルオキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
また、[C]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(5−1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(5−2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
上記式(5−1)及び式(5−2)中、R23〜R27は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。E−及びQ−は、それぞれ独立して、OH−、Rβ−COO−、Rβ−SO3 −又は下記式(5−3)で表されるアニオンである。但し、Rβは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
上記式(5−3)中、R28は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは、0〜2の整数である。uが2の場合、2つのR28は同一でも異なっていてもよい。
上記光崩壊性塩基としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
上記光崩壊性塩基としては、これらの中で、スルホニウム塩が好ましく、トリアリールスルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウムサリチレート及びトリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネートがさらに好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物が[C]酸拡散制御剤を含有する場合、[C]酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。
<[D]重合体>
[D]重合体は、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体である。[D]重合体を含有する当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜は、膜中の[D]重合体の分布がその撥油性的特徴によりレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があるため、液浸露光時において酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この[D]重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該感放射線性樹脂組成物が[D]重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。
[D]重合体のフッ素原子含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、4質量%がさらに好ましく、7質量%が特に好ましい。上記フッ素原子含有率の上限としては、60質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、13C−NMRスペクトル測定等により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
[D]重合体は、後述する構造単位(Da)、構造単位(Db)又はこれらの組み合わせを有することが好ましい。[D]重合体は、構造単位(Da)及び構造単位(Db)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
[構造単位(Da)]
構造単位(Da)は、下記式(6a)で表される構造単位である。[D]重合体は、構造単位(Da)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
上記式(6a)中、RDは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。REは、炭素数1〜6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の1価のフッ素化脂肪族脂環式炭化水素基である。
REで表される炭素数1〜6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、例えばトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
REで表される炭素数4〜20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えばモノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
構造単位(Da)を与える単量体としては、例えば
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル等の直鎖部分フッ素化アルキル(メタ)アクリル酸エステル;
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル等の分岐鎖部分フッ素化アルキル(メタ)アクリル酸エステル;
パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル等の直鎖パーフルオロアルキル(メタ)アクリル酸エステル;
パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル等の分岐鎖パーフルオロアルキル(メタ)アクリル酸エステルなどのフッ素化鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、
パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル等の単環のフッ素化脂環式飽和炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル等の多環のフッ素化脂環式飽和炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルなどのフッ素化脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの中で、フッ素化鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、直鎖部分フッ素化アルキル(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。
[D]重合体が構造単位(Da)を有する場合、構造単位(Da)の含有割合の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、95モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。構造単位(Da)の含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光の際に、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜の表面でより高い動的接触角を発現できる。
[構造単位(Db)]
構造単位(Db)は、下記式(6b)で表される構造単位である。[D]重合体は、構造単位(Db)を有することで、フッ素原子含有率を調整できると共に、アルカリ現像前後における撥水性及び親水性を変化させることができる。
上記式(6b)中、RFは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R29は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基であり、R29のR30側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。R’は、水素原子又は1価の有機基である。R30は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基である。X2は、炭素数1〜20の2価のフッ素化鎖状炭化水素基である。A1は、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO2−O−*である。R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R31に結合する結合部位を示す。R31は、水素原子又は1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが2又は3の場合、複数のR30、X2、A1及びR31はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
R31が水素原子である場合には、[D]重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
R31で表される1価の有機基としては、例えば酸解離性基、アルカリ解離性基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。
構造単位(Db)としては、例えば下記式(6b−1)〜(6b−3)で表される構造単位等が挙げられる。
上記式(6b−1)〜(6b−3)中、R29’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。RF、X2、R31及びsは、上記式(6b)と同義である。sが2又は3である場合、複数のX2及びR31はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
[D]重合体が構造単位(Db)を有する場合、構造単位(Db)の含有割合の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(Db)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜表面をアルカリ現像する際に、動的接触角を効果的に低下させることができる。
[構造単位(Dc)]
[D]重合体は、構造単位(Da)及び(Db)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(Dc)」ともいう)を有してもよい(但し、構造単位(Da)〜(Db)に該当するものを除く)。[D]重合体が構造単位(Dc)を有することで、得られるレジストパターンの形状がより良好になる。構造単位(Dc)としては、上述の[A]重合体における構造単位(I)として例示したものと同様の構造単位等が挙げられる。
[D]重合体が構造単位(Dc)を有する場合、構造単位(Dc)の含有割合の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対し、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。
[他の構造単位]
また、[D]重合体は、上述の構造単位以外にも、例えばアルカリ可溶性基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位、脂環式基を含む構造単位等の他の構造単位を有していてもよい。上記アルカリ可溶性基としては、例えばカルボキシ基、スルホンアミド基、スルホ基等が挙げられる。ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位としては、上述の[A]重合体における構造単位(II)で例示したものと同様の構造単位等が挙げられる。
上記他の構造単位の含有割合の上限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物が[D]重合体を含有する場合、[D]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.5質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。[D]重合体の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜をより液浸露光法に適したものとすることができる。
<[E]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物に用いる[E]溶媒は、少なくとも[A]重合体及び[B]酸発生剤と、所望により含有される[B’]他の酸発生体、[C]酸拡散制御体、[D]重合体等の任意成分とを溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば
4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール等の炭素数1〜18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3〜18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2−プロピレングリコール等の炭素数2〜18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3〜19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば
N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸n−ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン等の炭素数5〜12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6〜16の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
これらの中で、エステル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒及び環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びシクロヘキサノンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[E]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
<[F]偏在化促進剤>
[F]偏在化促進剤は、当該感放射線性樹脂組成物が[D]重合体を含有する場合等に、より効率的にレジスト膜表面に[D]重合体を偏析させる効果を有する。当該感放射線性樹脂組成物が[F]偏在化促進剤を含有することで、[D]重合体の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、当該感放射線性樹脂組成物の解像性、LWR性能等を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出の抑制や、高速スキャンによる液浸露光の高速化が可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制できる。[F]偏在化促進剤として用いることができる化合物としては、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物を挙げることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。
ラクトン化合物としては、例えばγ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。ニトリル化合物としては、例えばスクシノニトリル等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えばグリセリン等が挙げられる。
当該感放射線性樹脂組成物が[F]偏在化促進剤を含有する場合、[F]偏在化促進剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、20質量部が特に好ましい。一方、上記含有量の上限としては、500質量部が好ましく、200質量部がより好ましく、100質量部がさらに好ましく、50質量部が特に好ましい。
<その他の任意成分>
当該感放射線性樹脂組成物は、上述の[A]〜[F]以外の成分にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
[界面活性剤]
当該感放射線性樹脂組成物に用いる界面活性剤は、塗工性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の市販品としては、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC社製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子工業社製)等が挙げられる。界面活性剤の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部が好ましい。
[脂環式骨格含有化合物]
当該感放射線性樹脂組成物に用いる脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。
当該感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、5質量部が好ましい。
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生剤、[B’]他の酸発生体等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
当該感放射線性樹脂組成物に用いる増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
当該感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部が好ましい。
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体及び[B]酸発生剤と、必要に応じて含有される[B’]他の酸発生体、[C]酸拡散制御剤、[D]重合体、[E]溶媒等の任意成分とを所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製することができる。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。一方、上記固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板の一方の面側に、当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工により得られるレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
当該レジストパターン形成方法によれば、上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、優れた焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性を発揮しつつ、LWRが小さく、解像度が高く、断面形状の矩形性に優れるレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
[塗工工程]
本工程では、当該感放射線性樹脂組成物を基板の一方の面側に塗工し、レジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えばシリコンウエハや、二酸化シリコン、アルミニウム等で被覆されたウエハなどの従来公知のものが挙げられる。また、上記基板上には、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を予め形成しておいてもよい。塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、当該感放射線性樹脂組成物の[E]溶媒等の揮発成分を除去するため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PBの温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、上記温度の上限としては、140℃が好ましく、120℃がより好ましい。PBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。一方、上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。形成されるレジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。一方、上記平均厚みの上限としては、1,000nmが好ましく、500nmがより好ましい。
撥水性重合体添加剤を含有していない当該感放射線性樹脂組成物で液浸露光を行う場合等には、上記レジスト膜上に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸液に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。この液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(特開2006−227632号公報参照)、及び現像工程で現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(国際公開第2005/069076号及び国際公開第2006/035790号参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
[露光工程]
本工程では、レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射し、露光する。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV及び電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV及び電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、EUV及び電子線がさらに好ましい。
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば水、フッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留める観点から屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましく、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させると共に、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウエハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生剤、[B’]他の酸発生体等から発生した酸による[A]重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性の差を増大させることができる。PEBの温度の下限としては、50℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、上記温度の上限としては、180℃が好ましく、130℃がより好ましい。PEBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。一方、上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
当該レジストパターン形成方法によれば、上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いるので、PEBの際のレジスト膜の収縮を抑制することができる。
[現像工程]
本工程では、露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水、ルコール等のリンス液で洗浄した後に乾燥させることが一般的である。現像工程における現像方法は、アルカリ現像であっても、有機溶媒現像であってもよい。有機溶媒現像の場合、露光部がレジストパターンを形成するため、当該感放射線性樹脂組成物の優れた膜収縮抑制性を効果的に発揮することができる。
アルカリ現像の場合、現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
有機溶媒現像の場合、現像液としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、上記有機溶媒を含有する溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の[E]溶媒として例示した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコンオイル等が挙げられる。
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
<酸発生剤>
当該酸発生剤は、−SO3 −と、第1炭素原子と、第2炭素原子と、上記式(A)で表される2個以上の電子求引性基と、上記電子求引性基以外の有機基とを含む1価のアニオン、並びに1価の感放射線性オニウムカチオンを有し、第1炭素原子に上記−SO3 −及び第2炭素原子が結合し、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に上記有機基及び合計2個以上の上記電子求引性基が結合している化合物からなる。当該酸発生剤は、感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性を向上するため、感放射線性樹脂組成物の成分として好適に用いることができる。
上記化合物としては、上記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が好ましい。この場合、上記式(1−1)〜(1−3)におけるR1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、上記式(A)で表される電子求引性基以外の有機基である。
<化合物>
当該酸発生剤は、−SO3 −と、第1炭素原子と、第2炭素原子と、上記式(A)で表される2個以上の電子求引性基と、上記電子求引性基以外の有機基とを含む1価のアニオン、並びに1価の感放射線性オニウムカチオンを有し、第1炭素原子に上記−SO3 −及び第2炭素原子が結合し、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に上記有機基及び合計2個以上の上記電子求引性基が結合している。当該化合物は、上述の性質を有するので、感放射線性樹脂組成物の酸発生剤として好適に用いることができる。
当該化合物としては、上記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が好ましい。この場合、上記式(1−1)〜(1−3)におけるR1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、上記式(A)で表される電子求引性基以外の有機基である。
<化合物の製造方法>
[第1の製造方法]
当該化合物の第1の製造方法は、−SO3 −と、第1炭素原子と、第2炭素原子と、上記式(A)で表される2個以上の電子求引性基と、上記電子求引性基以外の有機基とを含む1価のアニオン、並びに1価の感放射線性オニウムカチオンを有し、第1炭素原子に上記−SO3 −及び第2炭素原子が結合し、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に上記有機基及び合計2個以上の上記電子求引性基が結合している化合物の製造方法であって、エチレン性炭素−炭素二重結合を構成する一対の炭素原子と、この一対の炭素原子の一方又は両方に結合する上記有機基及び合計2個以上の上記電子求引性基とを有する不飽和化合物の上記二重結合に、亜硫酸塩を付加反応させる工程を備えることを特徴とする。当該製造方法によれば、当該化合物を容易かつ確実に製造できる。
当該製造方法により製造する化合物としては、上記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が好ましい。この場合、上記式(1−1)〜(1−3)におけるR1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、上記式(A)で表される電子求引性基以外の有機基である。
[第2の製造方法]
当該化合物の第1の製造方法は、−SO3 −と、第1炭素原子と、第2炭素原子と、上記式(A)で表される2個以上の電子求引性基と、上記電子求引性基以外の有機基とを含む1価のアニオン、並びに1価の感放射線性オニウムカチオンを有し、第1炭素原子に上記−SO3 −及び第2炭素原子が結合し、第1炭素原子及び第2炭素原子の一方又は両方に上記有機基及び合計2個以上の上記電子求引性基が結合している化合物の製造方法であって、ハロゲン原子と、第3炭素原子と、第4炭素原子と、2個以上の上記電子求引性基と、上記有機基とを有し、第3炭素原子に上記ハロゲン原子及び第4炭素原子が結合し、第3炭素原子及び第4炭素原子の一方又は両方に上記有機基及び合計2個以上の上記電子求引性基が結合しているハロゲン化合物の第3炭素原子及びハロゲン原子に、亜ジチオン酸塩を置換反応させる工程を備えることを特徴とする。当該製造方法によれば、当該化合物を容易かつ確実に製造できる。
当該製造方法により製造する化合物としては、上記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が好ましい。この場合、上記式(1−1)〜(1−3)におけるR1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、上記式(A)で表される電子求引性基以外の有機基である。
当該酸発生剤、当該化合物及び当該化合物の第1及び第2の製造方法については、[B]酸発生剤の項で説明済みのため、ここでの説明は省略する。
以下、本発明の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例における各測定は、下記の方法により行った。
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
実施例で用いる重合体のMw及びMnは、東ソー社製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、及びG4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
[13C−NMR分析]
日本電子社の「JNM−ECX400」を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して、各重合体における各構造単位の含有割合(モル%)を求める分析を行った。
<化合物の合成>
[実施例1](化合物(Z−1)の合成)
300mLの丸底フラスコに、下記式(z−1)で表されるアルデヒド化合物3g(15.4mmol)、マロノニトリル1.02g(15.4mmol)、イミダゾール0.1g(1.54mmol)、及び塩化メチレン200mLを加え、窒素雰囲気下、室温で5時間撹拌した。攪拌後の反応液に水100mLを加え、有機層を抽出した。得られた有機層を水で2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の反応液から溶媒を留去することで、化合物(z’−1)を3.73g(収率100%)得た。
次に、300mLの丸底フラスコに化合物(z’−1)2g(8.26mmol)、アセトニトリル40mL、及び亜硫酸水素ナトリウム1.72g(16.5mmol)を加え、3時間加熱還流した。加熱還流後の反応液を室温まで冷却し、その後、溶媒を留去した。続いて、この反応液に塩化トリフェニルスルホニウム2.47g(8.26mmol)、ジクロロメタン40mL、及び水15mLを加え、室温で3時間撹拌した。攪拌後の反応液から有機層を回収し、回収した有機層を水で3回洗浄した。洗浄した有機層を溶媒留去し、さらにカラムクロマトグラフィで精製することで、化合物(Z−1)を3.59g(収率74%)得た。
[実施例12](化合物(Z−12)の合成)
下記式(z−12)で表されるハロゲン化合物4.26g(14.8mmol)、亜ジチオン酸ナトリウム3.60g(20.7mmol)、炭酸水素ナトリウム1.99g(23.7mmol)、アセトニトリル20mL、及び水20mLを200mLのナスフラスコに入れ、70℃で5時間加熱撹拌してスルフィン化を実施した。次に、反応液を室温まで冷却した後、スルフィン体は単離せずに、タングステン酸(IV)ナトリウムを触媒量添加し、その後、水浴しながら30%過酸化水素水を2.86g(25.2mmol)滴下した。この反応液を7時間撹拌した後、アセトニトリルで抽出し、溶媒を留去することにより、スルホン酸ナトリウム体(z’−12)を2.15g(収率55%)得た。
上記スルホン酸ナトリウム(z’−12)2.15g(8.14mmol)、トリフェニルスルホニウムクロライド2.43g(8.14mmol)、ジクロロメタン80mL、及び水80mLを混合し、室温で7時間撹拌した。次に、攪拌後の反応液から有機層を回収し、5回水洗した。この水洗した有機層を溶媒留去した後、カラムクロマトグラフィで精製することにより、化合物(Z−12)を3.08g(収率75%)得た。
[実施例2〜11及び13〜14](化合物(Z−2)〜(Z−11)及び(Z−13)〜(Z−14)の合成)
前駆体を適宜選択し、実施例1又は12と同様の処方を選択することで、下記式(Z−2)〜(Z−11)又は(Z−13)〜(Z−14)で表される化合物を合成した。
<[A]重合体及び[D]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
[合成例1]重合体(A−1)の合成
化合物(M−1)9.38g(50モル%)及び化合物(M−8)10.62g(50モル%)を2−ブタノン40gに溶解させ、得られた溶液にさらにアゾビスイソブチロニトリル0.785g(全モノマーに対して5モル%)を溶解させることで単量体溶液を調製した。次に、2−ブタノン20gを入れた200mL三口フラスコを窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃に加熱し、そこに調製した上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、この反応液をさらに80℃で3時間加熱することにより重合反応を行った。重合反応終了後、反応液を室温まで冷却し、その後、メタノール300g中に投入して析出した固体を濾別した。濾別した固体をメタノール60mLで2回洗浄し、さらに濾別した後、減圧下、50℃で15時間乾燥させることで重合体(A−1)を得た(収量15.8g、収率78.9%)。重合体(A−1)のMwは6,100であり、Mw/Mnは1.41であった。13C−NMR分析の結果、重合体(A−1)における化合物(M−1)及び化合物(M−8)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ49.8モル%及び50.2モル%であった。
[合成例2〜7]重合体(A−2)〜(A−7)の合成
下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A−2)〜(A−7)を合成した。
[合成例8]重合体(A−8)の合成
化合物(M−15)45.24g(50モル%)、化合物(M−1)54.76g(50モル%)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル4.58g(全モノマーに対して5モル%)、及びt−ドデシルメルカプタン1.14gをプロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解させた後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間共重合させた。重合反応終了後、重合溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して凝固精製した後、得られた固体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加え、さらにメタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた固体をアセトン150gに溶解させた後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した固体をろ過し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−8)を得た(収量63.8g、収率72.3%)。重合体(A−8)のMwは6,400であり、Mw/Mnは1.72であった。13C−NMR分析の結果、重合体(A−8)におけるp−ヒドロキシスチレン単位及び化合物(M−1)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ48.8モル%及び51.2モル%であった。
[合成例9]重合体(D−1)の合成
化合物(M−16)5.16g(20モル%)、化合物(M−17)11.46g(40モル%)、及び化合物(M−18)13.38gを2−ブタノン20gに溶解させ、得られた溶液にさらにアゾビスイソブチロニトリル1.16g(全モノマーに対して5モル%)を溶解させることで単量体溶液を調製した。次に、2−ブタノン10gを入れた100mL三口フラスコを窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃に加熱し、そこに上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後の反応液をさらに80℃で3時間加熱することにより重合反応を行った。重合反応終了後、反応液を室温まで冷却した。反応液を分液漏斗に移液した後、45gのn−ヘキサンで上記反応液を均一に希釈し、その後、180gのメタノールを投入して混合した。次いで、この混合液に9gの蒸留水を投入し、さらに攪拌して30分静置した。次いで、混合液から下層を回収し、回収した下層の溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、固形分である重合体(D−1)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(収率72.0%)。重合体(D−1)のMwは7,300であり、Mw/Mnは2.00であった。13C−NMR分析の結果、重合体(D−1)における化合物(M−16)、化合物(M−17)、及び化合物(M−18)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ20.1モル%、38.9モル%、及び41.0モル%であった。
<感放射線性樹脂組成物の調製>
実施例及び比較例の感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[B’]他の酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及び[E]溶媒を以下に示す。
[[B’]他の酸発生剤]
各構造式を以下に示す。
[[C]酸拡散制御剤]
各名称及び構造式を以下に示す。
C−1:トリフェニルスルホニウムサリチレート
C−2:トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート
C−3:N−(n−ウンデカン−1−イルカルボニルオキシエチル)モルホリン
[[E]溶媒]
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
[[F]偏在化促進剤]
F−1:γ−ブチロラクトン
<ArF露光時の性能評価>
[実施例15](感放射線性樹脂組成物(J−1)の調製)
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B1]酸発生剤としての(Z−1)7.9質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C−1)1.6質量部、[D]重合体としての(D−1)3質量部、[E]溶媒としての(E−1)2,240質量部及び(E−2)960質量部、並びに[F]偏在化促進剤としての(F−1)30質量部を配合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。
[実施例16〜36及び比較例1〜2](感放射線性樹脂組成物(J−2)〜(J−22)及び(CJ−1)〜(CJ−2)の調製)
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例15と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物を調製した。なお、化合物(Z−1)〜(Z−14)は[B1]酸発生剤として用いた。
[ArF露光及びアルカリ現像によるレジストパターンの形成(1)]
12インチのシリコンウエハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの反射防止膜を形成した。この反射防止膜上に、上述の通り調製した各感放射線性樹脂組成物を上記スピンコーターを使用して塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、感放射線性樹脂組成物を塗布した上記ウエハを23℃で30秒間冷却することで平均厚さ90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社の「NSR−S610C」)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、上記レジスト膜に90℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて上記レジスト膜をアルカリ現像し、現像後に水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ターゲット寸法が40nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅40nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量を最適露光量とした。
[ArF露光及び有機溶媒現像によるレジストパターンの形成(2)]
上記TMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は上記レジストパターンの形成(1)と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
上記レジストパターンについて以下の測定を行うことにより、各感放射線性樹脂組成物のArF露光時の性能を評価した。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG−4100」)を用いた。
[LWR性能]
上記走査型電子顕微鏡を用い、レジストパターンをパターン上部から観察し、その線幅を任意のポイントで計50点測定した。この測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど良いことを示す。LWR性能は、4.0nm以下の場合は「良好」と、4.0nmを超える場合は「良好でない」と評価できる。
[解像性]
上記最適露光量において解像される最小のレジストパターンの寸法を測定し、この測定結果を解像性(nm)とした。解像性は、その値が小さいほど良いことを示す。解像性は、34nm以下の場合は「良好」と、34nmを超える場合は「良好でない」と評価できる。
[断面形状の矩形性]
上記最適露光量において解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの高さ方向の中間での線幅Lbと、レジストパターンの上部での線幅Laとを測定し、Lbに対するLaの比を断面形状の矩形性とした。断面形状の矩形性は、0.9≦La/Lb≦1.1である場合に「良好」と、上記範囲外である場合に「良好でない」と評価できる。
[焦点深度]
上記最適露光量において解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を測定し、この測定結果を焦点深度(nm)とした。焦点深度は、値が大きいほど良いことを示す。焦点深度は、60nm以上の場合は「良好」と、60nmを超える場合は「良好でない」と評価できる。
[MEEF性能]
上記最適露光量において、5種類のマスクサイズ(38.0nmLine/80nmPitch、39.0nmLine/80nmPitch、40.0nmLine/80nmPitch、41.0nmLine/80nmPitch、及び42.0nmLine/80nmPitch)で解像されるレジストパターンの線幅を測定した。横軸をマスクサイズ、縦軸を各マスクサイズで形成された線幅として得られた測定値をプロットし、最小二乗法により算出した近似直線の傾きを求め、この傾きをMEEF性能とした。MEEF性能は、その値が小さいほど良いことを示す。MEEF性能は、4.0以下の場合を「良好」、4.0を超える場合を「良好でない」と評価できる。
<膜収縮抑制性の評価>
12インチのシリコンウエハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの反射防止膜を形成した。この反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して上述の通り調製した各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、PBを行った上記シリコンウエハを23℃で30秒間冷却し、平均厚さ90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社の「NSR−S610C」)を用い、70mJで全面露光を行った後に膜厚測定を実施してPEB前の膜厚Aを求めた。続いて、全面露光後のレジスト膜に90℃で60秒間のPEBを実施した後に、再度膜厚測定を実施し、PEB後の膜厚Bを求めた。測定結果をから100×(A−B)/A(%)を求め、これを膜収縮抑制性(%)とした。膜収縮抑制性は、その値が小さいほど膜収縮抑制性に優れるため良いことを示す。膜収縮抑制性は、14%以下の場合を「良好」、14%を超える場合を「良好でない」と評価できる。
各感放射線性樹脂組成物のArF露光時の性能評価の結果と、膜収縮抑制性の評価結果とを下記表3に示す。
<電子線露光時の性能評価>
[実施例37](感放射線性樹脂組成物(J−23)の調製)
[A]重合体としての(A−8)100質量部、酸発生剤としての(Z−1)20質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C−1)3.2質量部、[D]重合体としての(D−1)3質量部、並びに[E]溶媒としての(E−1)4,280質量部及び(E−2)1,830質量部を配合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(J−23)を調製した。
[実施例38〜39及び比較例3〜4](感放射線性樹脂組成物(J−24)〜(J−25)及び(CJ−3)〜(CJ−4))
下記表4に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例37と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
[電子線露光及びアルカリ現像によるレジストパターンの形成(3)]
8インチのシリコンウエハ表面にスピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT8」)を使用して、表4に記載の各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、上記シリコンウエハを23℃で30秒間冷却し、平均厚さ50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社の「HL800D」、出力:50KeV、電流密度:5.0A/cm2)を用いて電子線を照射した。照射後、上記レジスト膜に120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液としての2.38質量%TMAH水溶液を用いて上記レジスト膜を23℃で30秒間現像し、その後、水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターンを形成した。
[電子線露光及び有機溶媒現像によるレジストパターンの形成(4)]
上記TMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は上記レジストパターンの形成(3)と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
上記電子線露光により形成したレジストパターンについて、上述のArF露光により形成したレジストパターンを用いる場合と同様の手法で、LWR性能、解像性、焦点深度、及び断面形状の矩形の評価を実施した。評価結果を下記表5に示す。なお、電子線露光により形成したレジストパターンの場合、LWR性能は5.2nm以下の場合は「良好」、5.2nmを超える場合は「良好でない」と評価できる。
表3及び表5に示すように、実施例の感放射線性樹脂組成物は、ArF露光を行った場合にはLWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性の全てが良好であり、かつ電子線露光を行った場合にはLWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度の全てが良好であった。そのため、当該感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能及び膜収縮抑制性に優れると判断される。これに対し、比較例の感放射線性樹脂組成物は、上述の性能のうちの少なくとも一部が良好でなかった。ここで、一般的に、電子線露光によれば、EUV露光の場合と同様の傾向を示すことが知られている。従って、実施例の感放射線性樹脂組成物によれば、EUV露光の場合においても、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れると推測される。