JP6691641B2 - 変性ビニルアルコール系重合体とその製造方法 - Google Patents

変性ビニルアルコール系重合体とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スルホン酸基又はその塩を側鎖に有する変性ビニルアルコール系重合体、及びその製造方法に関する。
スルホン酸基を有するビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記する。)は、汎用のPVAに比べ水に対する溶解速度が大きいため、例えば、水溶性フィルムとして有用である。近年、農薬、洗濯用洗剤、漂白剤、トイレタリー製品、工業用薬品等をはじめとする各種薬品類を一定量ずつ水溶性フィルムにより密封包装して、使用時にその包装形態のまま水中に投入し、内容物を包装フィルムごと水に溶解又は分散させて使用する方法が行われるようになってきている。このような包装形態は、ユニット包装などと称される。ユニット包装の利点は、使用時に危険な薬品に直接触れることなく使用できること、内容物の一定量が包装されているために使用時に計量する必要がないこと、薬品を包装している容器の使用後の処理が不要であること等である。
スルホン酸基を有するPVAの製造方法として、特許文献1には、スルホン酸基を含有するアクリルアミド系重合性単量体とビニルエステルとの共重合体をけん化する方法が開示されている。スルホン酸基を有するPVAの別の製造方法として、特許文献2には、PVAを水で膨潤させ、酸触媒存在下でスルホン酸基含有アルデヒドを用いたアセタール化反応を行う方法が開示されている。特許文献3には、PVAとスルホン酸基含有単量体とを混合し、その後スルホン酸基含有単量体をPVAにグラフト重合させることによりスルホン酸基を導入する方法が開示されている。
特開平7−118407号公報 特開平10−101729号公報 特開2006−291161号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、共重合体が有するアクリルアミド骨格の加水分解が進行する。その結果、スルホン酸基が遊離するため導入効果が低減するという欠点がある。また、特許文献2及び3のような方法では、PVAを水に溶解した後にスルホン酸基含有化合物との反応を行っているため、スルホン酸基が導入されたPVAの粉末を得るまでには、乾燥工程等の多段階の工程が必要である。さらに、得られるスルホン酸基を有するPVAは、スルホン酸基を導入する前のPVAと比較して水溶性の向上効果が不十分である。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、変性前のビニルアルコール系重合体と比較して水溶性が顕著に向上した、スルホン酸基又はその塩を有する変性ビニルアルコール系重合体を提供することを目的とする。また、本発明は当該変性ビニルアルコール系重合体を容易に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、スルホン酸基又はその塩を側鎖に特定量有し、残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが特定の範囲にある変性ビニルアルコール系重合体などにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、スルホン酸基又はその塩を側鎖に有し、上記スルホン酸基又はその塩の変性量が0.01モル%以上10モル%以下であり、残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが0.55以上1以下である変性ビニルアルコール系重合体(A)である。
このとき、上記スルホン酸基又はその塩に結合する芳香環をさらに有することが好ましい。また、このとき、上記塩がアルカリ金属塩であることも好ましい。
このとき、上記変性ビニルアルコール系重合体(A)の4質量%水溶液粘度が2mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。また、このとき、上記変性ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度が60モル%以上99モル%以下であることも好ましい。
また本発明は、4質量%水溶液粘度が20mPa・s以下であるビニルアルコール系重合体(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを、80℃以上240℃以下の加熱下で混合する工程を備える、変性ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法である。
このとき、上記混合工程において、上記ビニルアルコール系重合体(B)と上記スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを、溶融状態で混合することが好ましい。また、このとき、上記混合工程において、実質的に溶媒の非存在下で混合を行うことが好ましい。さらに、このとき、上記混合工程において、実質的に触媒を用いないことが好ましい。
さらに、このとき、上記ビニルアルコール系重合体(B)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターと、上記変性ビニルアルコール系重合体(A)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターとの差が0.05以上0.4以下であることも好ましい。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、変性前のビニルアルコール系重合体と比較して水溶性が顕著に向上する。さらに本発明の製造方法によれば、このような変性ビニルアルコール系重合体を容易に得ることができる。
<変性ビニルアルコール系重合体(A)>
本発明の変性ビニルアルコール系重合体(A)(以下、「変性PVA(A)」と略記する。)は、スルホン酸基(−SOH)又はその塩(スルホン酸基の塩、例えば−SOM:Mはアルカリ金属原子である。)を側鎖に有し、上記スルホン酸基又はその塩の変性量が0.01モル%以上10モル%以下であり、残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが0.55以上1以下であることを特徴とする。
本発明の変性PVA(A)は、特に残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが上記特定の範囲にあるため、変性前のビニルアルコール系重合体と比較して水溶性が顕著に向上する。その理由は必ずしも明らかでないが、残存ビニルエステル単位のブロック性が低下することにより変性PVA(A)の結晶性が低下し、その結果として水溶性が向上するものと推測される。
なお、変性PVA(A)は、ビニルアルコール単位を主たる繰り返し単位として有する重合体である。変性PVA(A)における全繰り返し単位に占めるビニルアルコール単位の割合の下限は例えば60モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましい。一方、ビニルアルコール単位の割合の上限は例えば99.9モル%が好ましく、99モル%がより好ましい。
上記塩(スルホン酸基の塩)とは、スルホン酸基(−SOH)の水素イオンが、金属イオンやアンモニウムイオンなどの陽イオンで置換された基をいう。上記塩(スルホン酸基の塩)としては、アルカリ金属塩(−SOM:Mはアルカリ金属原子である。)が好ましく、ナトリウム塩(−SONa)がより好ましい。
本発明の変性PVA(A)は、スルホン酸基又はその塩に結合する芳香環をさらに有することが好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭素環や、フラン環、ピリジン環等の複素環を挙げることができるが、炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。スルホン酸基又はその塩と芳香環とは、スルホン酸基の硫黄原子を介して結合していることが好ましい。このとき、スルホン酸基又はその塩と芳香環とは、スルホン酸基の硫黄原子を介して直接結合していてもよいし、他の結合鎖(連結基)を介していてもよい。但し、スルホン酸基又はその塩と芳香環とは、直接結合していることが好ましい。
ビニルアルコール系重合体の側鎖にスルホン酸基又はその塩を導入する方法としては、後述の通り、スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドを用いて、ビニルアルコール系重合体(B)(以下、「PVA(B)」と略記する。)をアセタール化する方法が挙げられる。したがって、変性PVA(A)は下記式(I)の構造単位を有することが好ましい。なお、通常、PVA(B)には、製造工程中のけん化の際に用いたアルカリ触媒が微量に残存する。このため、アセタール化の際に用いるスルホン酸基を有するアルデヒドが、塩では無くても、得られる変性PVA(A)のスルホン酸基は、アルカリ金属塩等の塩の状態となり得る。
Figure 0006691641
上記式(I)中、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルキル基又は−Z−SOYであり、X及びXの少なくとも一方は−Z−SOYである。Yは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子又はアンモニウム基である。Zは、それぞれ独立して、単結合又は連結基である。
上記Yで表される金属原子としては、例えばアルカリ金属原子(リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等)、アルカリ土類金属原子(カルシウム原子等)などが挙げられる。中でも、得られるフィルム等の溶解性の観点から、Yは水素原子及びアルカリ金属原子が好ましく、水素原子及びナトリウム原子がより好ましく、ナトリウム原子がさらに好ましい。なお、Yがアルカリ土類金属原子等の2価以上の金属原子である場合、Yは2つ以上の−SO と結合した架橋構造を形成していてもよい。
上記Zで表される連結基としては、例えば2価の炭化水素基の他、−O−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CH(OH)−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR−、−OSi(OR−、−OSi(ORO−、−Ti(OR−、−OTi(OR−、−OTi(ORO−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等が挙げられる。ここで、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子及びアルキル基が好ましい。また、mは1〜10の自然数である。また、上記2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等の2価の脂肪族炭化水素基、及びフェニレン基、ナフチレン基等の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。上記Zとしては、単結合が好ましい。
上記X及びXは、アセタール化に用いるアルデヒドの反応性の観点から、Xが−Z−SOYであり、Xが水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルキル基又は−Z−SOYであることが好ましい。上記Xで表される−Z−SOYが、アルデヒドが結合している芳香環炭素原子に対して、オルト位の炭素原子に結合していることで、−Z−SOYが分子内酸性触媒として作用するため、アルデヒドの反応性がより一層向上するものと推測される。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも塩素原子及び臭素原子が好ましい。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等が挙げられ、中でもメチル基及びエチル基が好ましい。Xは、水素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、メチル基又は−SOYであることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
変性PVA(A)において、スルホン酸基又はその塩の変性量の下限は0.01モル%であり、0.05モル%が好ましく、0.1モル%がより好ましく、0.2モル%が特に好ましく、0.3モル%が最も好ましい。スルホン酸基又はその塩の変性量が上記下限未満の場合は、変性前のPVA(B)と比較して水溶性の向上が不十分である。一方、スルホン酸基又はその塩の変性量の上限は10モル%であり、7モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、3モル%が特に好ましい。スルホン酸基又はその塩の変性量が上記上限を超える場合は、変性PVA(A)から形成されるフィルム等の機械的強度が不十分となる。
ここで、スルホン酸基又はその塩の変性量とは、変性PVA(A)が有する全繰り返し単位のモル数に対する、スルホン酸基及びその塩の合計モル数の割合をいう。なお、本明細書においては、−CR−CR−で表される構造を1の繰り返し単位とする。上記Rは、それぞれ独立して、水素原子又は任意の置換基であり、同一又は異なる構造単位にそれぞれ含まれる2つのRは、結合していてもよい。例えば、上記式(I)で表される構造単位は、2つの繰り返し単位からなるとする。一方、ビニルアルコール単位、残存ビニルエステル単位、その他の単量体に由来する構造単位等は、それぞれ1つの繰り返し単位からなるとする。換言すれば、重合に用いられた、炭素−炭素二重結合を有する単量体に対応する構造が、繰り返し単位である。
スルホン酸基又はその塩の変性量は、変性PVA(A)のH−NMR測定により求めることができる。例えば、ベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウムを用いてアセタール化反応して得られた変性PVA(A)の場合、当該変性PVA(A)をDMSO−dに溶解し、400MHzのH−NMRを用いて測定する。ビニルアルコール単位のメチン由来のピークは4.2〜5.2ppm(積分値α)、ベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウムのベンゼン環由来のピークは7.0〜8.0ppm付近(積分値β)に帰属され、次式でスルホン酸基又はその塩の変性量が算出される。
スルホン基酸又はその塩の変性量(モル%)={(β/4)/α}×100
変性PVA(A)において、残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターの下限は0.55であり、0.58が好ましく、0.6がより好ましい。ブロックキャラクターが上記下限未満の場合は、変性前のPVA(B)と比較して水溶性の向上が不十分となる。一方、ブロックキャラクターの上限は1であり、0.9が好ましく、0.85がより好ましく、0.8がさらに好ましい。ブロックキャラクターが上記上限を超える変性PVA(A)は製造が困難である。
なお、上述のブロックキャラクターとは、残存エステル(通常、アルコキシカルボニル基)と、エステルのけん化によって生じるヒドロキシル基との分布を表した数値であり、0から2の間の値をとる。0が完全にブロック的に残存エステル又はヒドロキシル基が分布しているということを示し、値が増加するにつれて交互性が増していき、1が残存エステルとヒドロキシル基が完全にランダムに存在し、2が残存エステルとヒドロキシル基が完全に交互に存在することを示している。上記残存エステルとは、けん化処理を経て得られる変性PVA(A)におけるビニルエステル単位に含まれるエステル(−O−C(=O)−Q(Qはビニルエステル単量体に含まれるCH=CH−O−C(=O)部分以外の炭化水素基を表す。))を意味する。換言すれば、ブロックキャラクターは、残存ビニルエステル単位とビニルアルコール単位との分布を表した数値である。なお、ブロックキャラクターは実施例で後述する13C−NMR測定により求めることができる。変性PVA(A)が、ビニルエステル単位及び/又はビニルアルコール単位以外の繰り返し単位を含む場合には、ブロックキャラクターは、変性PVA(A)中のビニルエステル単位及び/又はビニルアルコール単位が連続する部位すべてを対象として算出される。
上述のブロックキャラクターはビニルエステル単量体の種類、触媒や溶媒等のけん化条件、けん化後の熱処理等で調整することができる。中でも、一般的な方法によりけん化を行った場合には、通常、ブロックキャラクターは0.55未満となるが、その後加熱下での反応によりブロックキャラクターを0.55以上の値にすることができる。
変性PVA(A)の4質量%水溶液粘度の下限は2mPa・sが好ましく、2.5mPa・sがより好ましく、3mPa・sがさらに好ましい。一方、上記4質量%水溶液粘度の上限は20mPa・sが好ましく、15mPa・sがより好ましく、10mPa・sがさらに好ましい。上記4質量%水溶液粘度が上記下限未満の場合は、変性PVA(A)を用いて得られるフィルム等の機械的強度が低下する傾向にある。一方、上記4質量%水溶液粘度が上記上限を超える場合は、加熱時にゲル化する傾向がある。変性PVA(A)の4質量%水溶液粘度は、ロータ回転数60rpm、温度20℃の条件で、B型粘度計を用いて測定した値である。B型粘度計は、例えば、B型粘度計BLII(東機産業株式会社製)、デジタルB型粘度計 BASE(商品名、株式会社アタゴ製)、デジタルB型粘度計 PRO(商品名、株式会社アタゴ製)等の市販品を使用できる。
変性PVA(A)のけん化度の下限は60モル%が好ましく、65モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、80モル%が特に好ましいこともあり、85モル%が最も好ましいこともある。一方、当該変性PVA(A)のけん化度の上限は99モル%が好ましく、98モル%がより好ましく、97モル%がさらに好ましい。変性PVA(A)のけん化度を上記下限以上とすることで、変性前のPVA(B)と比較して水溶性の向上効果をより高めることができる。一方、けん化度が上記上限を超える場合は、変性PVA(A)を工業的に安定に製造することができず、このような変性PVA(A)からは製膜を安定に行うことができない傾向にある。変性PVA(A)のけん化度はJIS−K6726−1994に記載の方法により測定される。
変性PVA(A)は種々の用途に使用できる。以下にその例を挙げるがこれに限定されない。
(1)塩化ビニル分散剤用途:塩化ビニル、塩化ビニリデンの懸濁重合用分散安定剤及び分散助剤
(2)被覆剤用途:サイズ剤、繊維加工剤、皮革仕上剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤
(3)接着剤、バインダー用途:接着剤、粘着剤、再湿接着剤、各種バインダー、セメントやモルタル用添加剤
(4)分散安定剤用途:塗料や接着剤等の有機・無機顔料の分散安定剤、各種ビニル化合物の乳化重合用分散安定剤、ビチュメン等の後乳化剤
(5)紙加工用途:紙力増強剤、耐油・耐溶剤付与剤、平滑性向上剤、表面光沢改良助剤、目止剤、バリア剤、耐光性付与剤、耐水化剤、染料・顕色剤分散剤、接着力改良剤、バインダー
(6)農業用途:農薬用バインダー、農薬用展着剤、農業用被覆剤、土壌改良剤、エロージョン防止剤、農薬用分散剤
(7)医療・化粧品用途:造粒バインダー、コーティング剤、乳化剤、貼付剤、結合剤、フィルム製剤基材、皮膜形成剤
(8)粘度調整剤用途:増粘剤、レオロジー調整剤
(9)凝集剤用途:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、金属凝集剤
(10)フィルム用途:水溶性フィルム、偏光フィルム、バリアフィルム、繊維製品包装用フィルム、種子養生シート、植生シート、シードテープ、吸湿性フィルム
(11)成形物用途:繊維、パイプ、チューブ、防漏膜、ケミカルレース用水溶性繊維、スポンジ
(12)樹脂原料用途:ポリビニルブチラール用原料、感光性樹脂原料、グラフト重合体原料、各種ゲル原料
(13)後反応用途:低分子有機化合物、高分子有機化合物、無機化合物との後反応用途
中でも、フィルム用途が好ましく、ユニット包装用のフィルム用途がより好ましい。また、変性PVA(A)は水溶性フィルムの形成材料としても好適である。水溶性フィルムは、40mm×40mmのサイズのものが、20℃1リットルの水に溶解しきるものであってよい。
<変性PVA(A)の製造方法>
変性PVA(A)は、例えばビニルエステル単量体を重合させてビニルエステル重合体を得ること、該ビニルエステル重合体をアルコール溶液中でアルカリ触媒を用いてけん化し、PVA(B)を得ること、及び得られたPVA(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを、加熱下で混合することにより製造できる。
上記ビニルエステル単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。中でも、酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル単量体を重合する方法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。これらの方法のうち、無溶媒で行う塊状重合法及びアルコール等の溶媒を用いて行う溶液重合法が好ましく、本発明の効果を高める点では、低級アルコールの存在下で重合する溶液重合法がより好ましい。上記低級アルコールとしては、炭素数3以下のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールがより好ましく、メタノールがさらに好ましい。塊状重合法や溶液重合法で重合反応を行うにあたって、反応の方式は回分式及び連続式のいずれの方式も採用できる。
重合反応に使用される開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5℃以上200℃以下の範囲が適当である。
ビニルエステル単量体を重合させる際には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、さらに共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシリル基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体の使用量の上限としては、その使用される目的及び用途等によっても異なるが、全単量体に対して20モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。
上記重合工程で得られたビニルエステル重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。中でも、メタノール又はメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。このような方法により、PVA(B)を得ることができる。
上記けん化反応で得られたPVA(B)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターは、例えば0.2以上0.55未満であり、0.4以上0.5以下であってもよい。また、PVA(B)におけるスルホン酸基又はその塩の変性量(PVA(B)が有する全繰り返し単位のモル数に対する、スルホン酸基及びその塩の合計モル数の割合)は、0.01モル%未満が好ましく、0.001モル%未満がより好ましく、実質的に0モル%であってよい。
得られたPVA(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを、80℃以上240℃以下の加熱下で混合する工程(以下、「混合工程」と略記することがある。)を経ることで、上記アルデヒドでPVA(B)をアセタール化した変性PVA(A)を得ることができる。このとき、加熱時のゲル化を抑制する観点から、PVA(B)の4質量%水溶液粘度は20mPa・s以下である。PVA(B)の好適な4質量%水溶液粘度及びけん化度の範囲は、上述の変性PVA(A)の範囲と同じである。
スルホン酸基又はその塩(スルホン酸基の塩)を有するアルデヒドとしては特に制限はないが、例えば下記式(II)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0006691641
上記式(II)中、X及びXの定義及び好ましい範囲は上記式(I)と同様である。式(II)で表される化合物として、例えばベンズアルデヒド−2−スルホン酸、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸、4−クロロベンズアルデヒド−2−スルホン酸、4−メチルベンズアルデヒド−2−スルホン酸、4−ヒドロキシルベンズアルデヒド−2−スルホン酸又はそれらの塩等が挙げられる。中でも、入手容易性の観点から、ベンズアルデヒド−2−スルホン酸、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸が好ましい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、中でも、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。すなわち、スルホン酸基の塩を有する好適なアルデヒドとしては、ベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウム、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸二ナトリウム等が挙げられる。
上記スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドの添加量の下限は、PVA(B)100質量部に対して0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。一方、上記スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドの添加量の上限は、PVA(B)100質量部に対して50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。
上記加熱温度の下限は80℃であり、100℃が好ましく、130℃がより好ましく、150℃がさらに好ましい。一方、上記加熱温度の上限は240℃であり、230℃が好ましく、220℃がより好ましく、210℃がさらに好ましい。このとき、PVA(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを、溶融状態で混合することが好ましい。加熱温度が上記下限未満である場合は反応が十分進行せず、本発明の規定するスルホン酸基又はその塩の変性量を満たす変性PVA(A)を製造できない。加熱温度が上記上限を超える場合は、PVA(B)が分解したり、ゲルが発生する。なお、溶融状態とは、少なくともPVA(B)が溶融していることが確認できる状態であればよい。
加熱下でPVA(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを混合する時間に特に制限はないが、混合時間の下限は1分が好ましく、3分がより好ましく、4分がさらに好ましい。一方、混合時間の上限は3時間が好ましく、2時間がより好ましく、1時間がさらに好ましく、30分が特に好ましい。混合時間を上記下限以上とすることで、反応を十分に進行させることができる。混合時間を上記上限以下とすることで、PVA(B)の分解や、ゲルの発生を抑制することができる。
PVA(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを混合する方法に特に制限はないが、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、Vブレンダーなどでドライブレンドした後、ニーダールーダー、単軸又は2軸の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を使用できる。中でも、十分な混練力を有する単軸又は2軸の押出機を用いて溶融状態で混合する方法が好ましい。
上記混合工程において、実質的に溶媒の非存在下で混合を行うことが好ましい。すなわち、PVA(B)からなる粉末とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドからなる粉末とを、上述の加熱下で混合してアセタール化する方法が好ましい。このとき、加熱温度によって、PVA(B)からなる粉末とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドからなる粉末とは、粉末状態で混合してもよいし、溶融状態で混合してもよいが、反応性向上の観点から、溶融状態で混合することが好ましい。本発明の製造方法によれば、実質的に溶媒の非存在下で混合を行うことができるため、溶媒除去等の乾燥工程が不要であり、より容易に変性PVA(A)を製造できる。なお、「実質的に溶媒の非存在下」とは、PVA(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとの混合物に、意図的には溶媒が加えられていないことをいう。
上記混合工程において、実質的に触媒を用いないことが好ましい。通常、溶液中で行うアセタール化反応では、反応を有利に行うために硫酸、塩酸、燐酸等の無機酸又はそれらのアンモニウム塩のような酸触媒が用いられ、反応系のpHが5以下になるように添加される。反応終了後は、必要に応じてアルカリ性物質で中和する工程が必要となる。本発明の製造方法によれば、実質的に触媒を用いずともアセタール化を進められるので、中和工程等が不要であり、より容易に変性PVA(A)を製造できる。なお、「実質的に触媒を用いない」とは、混合工程において意図的には触媒を添加しないことをいう。
上記混合工程において、さらに可塑剤等を添加して溶融軟化温度を低下させてもよい。可塑剤としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル類;ポリビニルピロリドン等のポリビニルアミド類;N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
可塑剤の添加量に特に制限はないが、下限としてはPVA(B)100質量部に対して3質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。一方、可塑剤の添加量の上限としては、PVA(B)100質量部に対して40質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。可塑剤の添加量が上記範囲にあることで、得られるフィルム等の水溶性と機械的強度のバランスが取れた変性PVA(A)を製造できる。
変性PVA(A)の製造方法においては、上記の混合工程を経ることによりPVA(B)から変性PVA(A)となるとともに、PVA(B)のブロックキャラクターと比較して変性PVA(A)のブロックキャラクターが上昇する。PVA(B)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターと、変性PVA(A)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターとの差の下限は、0.05が好ましく、0.08がより好ましく、0.1がさらに好ましい。上記ブロックキャラクターの差の上限は、0.4が好ましく、0.35がより好ましく、0.3がさらに好ましい。残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターの差を上記範囲とすることで、変性前のビニルアルコール系重合体と比較して水溶性がより一層向上した変性PVA(A)を得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。以下において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準を意味する。
[PVAの4質量%水溶液粘度]
PVA(変性PVAを含む)の4質量%水溶液粘度は、ロータ回転数60rpm、温度20℃の条件で、B型粘度計BLII(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
[PVAのけん化度]
PVA(変性PVAを含む)のけん化度は、JIS−K6726−1994に記載の方法により求めた。
[変性PVA(A)におけるスルホン酸基又はその塩の変性量]
変性PVA(A)におけるスルホン酸基又はその塩の変性量は、上述のH−NMRを用いた方法に準じて求めた。
[PVAのブロックキャラクター]
PVA(変性PVAを含む)の残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターは、PVAを重水/重メタノール混合溶媒に溶解させた試料について、測定温度70℃、積算回数18000回で13C−NMR測定を行い、メチレン領域に現れる2単位連鎖構造(dyad)に関する3本のピークの解析により、ピークの積分値から求めた。上記3本のピークは、残存エステル(−O−C(=O)−Q(Qは上記と同一意味を有する))に結合した主鎖の炭素原子と、ヒドロキシル基に結合した主鎖の炭素原子とに挟まれたメチレン炭素;残存エステルに結合した主鎖の炭素原子と、該炭素原子に近接し、残存エステルに結合した主鎖の炭素原子とに挟まれたメチレン炭素;及びヒドロキシル基に結合した主鎖の炭素原子と、該炭素原子に近接し、ヒドロキシル基に結合した主鎖の炭素原子とに挟まれたメチレン炭素に相当する。測定法、計算法についてはポバール(高分子刊行会、1984年発行、第246〜249頁)及びMacromolecules,10,532(1977年)に記載されている。
[フィルムの水溶性向上の評価方法]
後述する実施例及び比較例で得られた変性PVA(A)を水に溶解して、変性PVA(A)の10質量%水溶液を調製した。この水溶液を20℃で流延及び乾燥し、厚み76μmのフィルムを得た。このフィルムを40mm×40mmの正方形に切り、これをスライドマウントにはさみこんだ。別途、20℃に調整した恒温バスに、1リットルの蒸留水を入れた容量1リットルのガラスビーカーを設置し、5cmの回転子を用いて250rpmで攪拌を行った。ビーカー内の蒸留水が20℃になった後、上述のスライドマウントを攪拌している冷水中に浸漬して水溶性の測定を開始した。この際、フィルムの溶解状態を目視で観察し、変性PVA(A)のフィルムが完全に溶解するまでの時間δ(秒)を測定した。さらに、変性前のPVA(B)の76μm厚みのフィルムも同様の方法で作製し、得られたPVA(B)のフィルムについて同様の方法でフィルムが完全に溶解するまでの時間γ(秒)を測定した。γ(秒)とδ(秒)の差から以下の基準で評価した。
A:30秒以上
B:20秒以上30秒未満
C:10秒以上20秒未満
D:10秒未満
[実施例1]
4質量%水溶液粘度8mPa・s、けん化度88モル%及び残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが0.52のPVA(B)100質量部と、スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとしてベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウム21.2質量部とをドライブレンドし混合物を得た。なお、上記PVA(B)は、アルカリ触媒を用いてビニルエステル重合体をけん化して得られたものを使用した(以下、同様)。得られた混合物を溶融混練した後、冷却してスルホン酸基の塩が側鎖に導入された変性PVA(A)のペレットを得た。溶融混練条件を以下に示す。得られた変性PVA(A)は、具体的には、上記式(I)で表され、Xが−SONa、Xが水素原子である構造単位を有するものであった。得られた変性PVA(A)の4質量%水溶液粘度は7.5mPa・s、けん化度は88モル%、スルホン酸基又はその塩の変性量は2モル%及び残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターは0.65であった。フィルムの水溶性向上の評価を上記方法により行った。結果を表1に示す。
(溶融混練条件)
装置:東洋精機製作所製「ラボプラストミル4C150」
混練時ジャケット温度:180℃
混練時間:5分
[実施例2〜4]
用いるPVA(B)の種類、スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドの種類及びその量、溶融混練温度及び時間を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、変性PVA(A)を製造した。得られた変性PVA(A)について、実施例1と同様の方法により、フィルムの水溶性向上を評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
4質量%水溶液粘度8mPa・s、けん化度88モル%及び残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが0.52のPVA(B)100質量部を用いて10質量%の水溶液を調製し、水溶液温度を50℃に保ちながらベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウム5.3質量部を添加してよく攪拌し、そこで水溶液のpHが2.0になるように1.0規定の塩酸を加えた。この状態で6時間維持して反応させたのちに水酸化ナトリウムを加えて中和した。得られた反応生成物を精製して、変性PVA(A)を得た。変性PVA(A)の4質量%水溶液粘度は8mPa・s、けん化度は92モル%、スルホン酸基又はその塩の変性量は0.5モル%及び残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターは0.52であった。得られ変性PVA(A)について、実施例1と同様の方法により、フィルムの水溶性向上を評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
用いるPVA(B)の種類、スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドの量を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、変性PVA(A)を製造しようと試みたが、PVA(B)の4質量%水溶液粘度が20mPa・sを超えていたため、溶融混錬中にゲル化し、変性PVA(A)を得られなかった。
Figure 0006691641
表1の結果から、スルホン酸基又はその塩を側鎖に特定量有し、残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが特定の範囲にある変性PVA(A)は、変性前のPVA(B)と比較して水溶性が顕著に向上したフィルムを得ることができる。一方、比較例1のように水溶液中でアセタール化を行った場合は、得られる変性PVA(A)の残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが低すぎるため、変性前のPVA(B)と比較して水溶性の向上が見られない。
本発明の変性PVAは、水溶性フィルム等の材料として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. スルホン酸基又はその塩を側鎖に有し、
    上記スルホン酸基又はその塩の変性量が0.01モル%以上10モル%以下であり、
    残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターが0.55以上1以下であり、
    4質量%水溶液粘度が2mPa・s以上20mPa・s以下であり、
    けん化度が99モル%以下である、変性ビニルアルコール系重合体(A)。
  2. 上記スルホン酸基又はその塩に結合する芳香環をさらに有する、請求項1に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)。
  3. 上記塩がアルカリ金属塩である、請求項1又は請求項2に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)。
  4. けん化度が60モル%以上99モル%以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)。
  5. 4質量%水溶液粘度が20mPa・s以下であるビニルアルコール系重合体(B)とスルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを、80℃以上240℃以下の加熱下で混合する工程を備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法。
  6. 上記混合工程において、上記ビニルアルコール系重合体(B)と上記スルホン酸基又はその塩を有するアルデヒドとを溶融状態で混合する、請求項に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法。
  7. 上記混合工程において、実質的に溶媒の非存在下で混合を行う、請求項又は請求項に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法。
  8. 上記混合工程において、実質的に触媒を用いない、請求項、請求項又は請求項に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法。
  9. 上記ビニルアルコール系重合体(B)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターと、上記変性ビニルアルコール系重合体(A)における残存ビニルエステル単位のブロックキャラクターとの差が0.05以上0.4以下である、請求項から請求項のいずれか1項に記載の変性ビニルアルコール系重合体(A)の製造方法。
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