以下、本発明による波源位置選択装置、波源位置算出装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による波源位置選択装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による波源位置選択装置は、波源位置の取得を繰り返して行い、それらに応じて方位角ごとの減衰特性を推定し、その推定結果等を用いて、適切な波源位置を選択するものである。
図1は、本実施の形態による波源位置選択装置10を含む情報通信システムの構成を示す図である。図1において、本実施の形態による情報通信システムは、複数の第1の受信装置1と、複数の第2の受信装置2と、波源位置選択装置10とを備える。複数の第1の受信装置1、及び複数の第2の受信装置2と、波源位置選択装置10とは、有線または無線の通信回線100を介して接続されている。通信回線100は、例えば、インターネットやイントラネット、公衆電話回線網等であってもよい。なお、図1で示される第1及び第2の受信装置1,2の個数は一例であり、情報通信システムは、図1で示される以外の個数の第1及び第2の受信装置1,2を有していてもよい。後述するように、第1の受信装置1は、波源3の位置を特定するために用いられ、第2の受信装置2は、波源3からの減衰特性を取得するために用いられる。
第1の受信装置1は、波源3からの電波を受信する。第1の受信装置1は、通常、その電波の受信に応じて、波源3からの受信信号を取得するが、そうでなくてもよい。その受信信号は、例えば、ベースバンド信号のIQデータや複素振幅値等であってもよい。受信信号を取得しない場合には、第1の受信装置1は、波源3からの電波の受信方向(すなわち、波源3の方向)を取得してもよい。なお、第1の受信装置1は、波源3からの電波を見通しで受信できることが好適であるが、そうでなくてもよい。後述するように、第1の受信装置1から波源位置選択装置10に第1の受信装置1の位置も送信される場合には、第1の受信装置1は、その位置を取得する処理を行ってもよい。第1の受信装置1が移動可能な場合には、第1の受信装置1の位置が波源位置選択装置10に送信されることが好適である。なお、第1の受信装置1の個数は問わないが、例えば、後述するように、TDoAによる位置検出が行われる場合には3個以上であることが好適であり、DoAによる位置検出が行われる場合には2個以上であることが好適である。また、DoAによる位置検出が行われる場合には、第1の受信装置1は、電波の受信の指向性を変更できるものであることが好適である。指向性の変更は、例えば、指向性アンテナを回転させることなどのように物理的になされてもよく、またはフェーズドアレイアンテナにおいて指向性を変更することなどのように電子的になされてもよい。なお、図1では、第1の受信装置1の受信アンテナがパラボラアンテナである場合について示しているが、そうでなくてもよいことは言うまでもない。
第2の受信装置2は、波源3からの電波を受信する。第2の受信装置2は、通常、その受信に応じて、波源3からの電波の受信電力を取得する。また、第2の受信装置2は、その受信電力から、受信信号強度を算出してもよい。ここで、受信信号強度とは、受信アンテナを通過する直前における電波の強度(空間電力値)である。したがって、その受信信号強度には、受信アンテナのゲインの影響が含まれておらず、次式のように示される。次式において、受信電力は、受信装置1が受信アンテナを介して受信した信号の電力である。
受信信号強度=受信電力−受信アンテナゲイン
その受信信号強度は、波源位置選択装置10に送信されてもよい。なお、受信信号強度は、波源位置選択装置10において算出されてもよい。その場合には、受信電力と、受信アンテナゲインとが第2の受信装置2から波源位置選択装置10に送信されてもよい。本実施の形態では、第2の受信装置2から波源位置選択装置10に、受信信号強度が送信される場合について主に説明する。また、第2の受信装置2は、波源3からの電波を必ずしも見通しで受信できなくてもよい。すなわち、第2の受信装置2は、波源3からの電波を見通し外で受信してもよい。第2の受信装置2から波源位置選択装置10に第2の受信装置2の位置も送信される場合には、第2の受信装置2は、その位置を取得する処理を行ってもよい。第2の受信装置2が移動可能な場合には、第2の受信装置2の位置が波源位置選択装置10に送信されることが好適である。また、第2の受信装置2は、波源3から受信した電波の周波数も、波源位置選択装置10に送信してもよい。
なお、第2の受信装置2の数は、第1の受信装置1の数よりも多くてもよいが、そうでなくてもよい。その受信装置の個数は、例えば、単位面積あたりの個数であってもよい。第1の受信装置1は、例えば、波源3からの電波を見通しで受信可能なものであり、本実施の形態による情報通信システムのために設けられたものであってもよい。そのような場合には、通常、多数の第1の受信装置1を配置することは困難である。一方、第2の受信装置2は、波源3からの電波を見通し外で受信してもよく、例えば、携帯電話等の受信装置であってもよい。そのように、第2の受信装置2は、通常、第1の受信装置1よりも簡易なものである。したがって、第2の受信装置2の数が、第1の受信装置1の数より多くなっても、本実施の形態による情報通信システムの大幅なコスト増には繋がらない。
第1の受信装置1や第2の受信装置2における位置の取得は、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて行われてもよく、ジャイロなどの自律航法装置を用いて行われてもよく、携帯電話や無線LAN等の最寄りの基地局を利用して行われてもよく、または、その他の方法で行われてもよい。
波源3は、電波を送信するものであればどのようなものであってもよく、例えば、携帯電話等の無線基地局であってもよく、タクシー等の無線システムの基地局であってもよく、その他の電波を送信するものであってもよい。また、本実施の形態では、説明を簡単にするため、1個の波源3が存在する場合についてのみ説明するが、2以上の波源3が存在してもよい。その場合には、その波源3ごとに、波源位置の算出が行われてもよい。
図2は、本実施の形態による波源位置選択装置10の構成を示すブロック図である。本実施の形態による波源位置選択装置10は、受信部11と、位置算出部12と、受付部13と、距離算出部14と、推定部15と、波源位置選択部16と、範囲推定部17と、出力部18とを備える。
受信部11は、第1の受信装置1から第1の観測情報を受信する。その第1の観測情報は、波源3の位置の算出に用いられるものである。1個の第1の観測情報は、1個の第1の受信装置1で受信された電波に関する情報である。受信部11は、複数の第1の観測情報を複数の第1の受信装置1からそれぞれ受信してもよく、または、複数の第1の観測情報を、いずれかの第1の受信装置1から受信してもよい。
また、波源位置選択装置10においてTDoAによる位置検出が行われる場合には、第1の観測情報には、第1の受信装置1が波源3から受信した受信信号が含まれていてもよい。その受信信号は、後述するように、波源3の位置の算出のために用いられるものであり、例えば、ベースバンド信号のIQデータや複素振幅値等であってもよい。また、その場合には、受信部11は、3個以上の第1の観測情報を受信するものとする。また、その3個以上の第1の観測情報に含まれる受信信号は、後述するように、電波の到来時間差の算出に用いられるため、同期していることが好適である。すなわち、同時期の電波に応じた複数のベースバンド信号が、3個以上の第1の受信装置1から波源位置選択装置10に送信されることが好適である。そのため、例えば、各第1の受信装置1は、GPSの時刻を用いてタイミングを同期させたり、複数の第1の受信装置1を接続する光ファイバー等を用いてタイミングを同期させたりしてもよい。
また、波源位置選択装置10においてDoAによる位置検出が行われる場合には、第1の観測情報には、第1の受信装置1が波源3からの電波を用いて取得した波源3の方向が含まれていてもよい。また、その場合には、受信部11は、2個以上の第1の観測情報を受信するものとする。その方向は、例えば、第1の受信装置1からの波源3の方向を示すものであってもよい。その方向は、例えば、第1の受信装置1を中心とする方位角(例えば、北を0度とし、東を90度とする方位角等)によって示されてもよい。また、その波源3の方向は、例えば、第1の受信装置1において、電波の受信に関する指向性を変更することによって取得されてもよい。具体的には、電波の強度の最も強い方向が波源3の方向であると判断されてもよい。
また、第1の観測情報には、第1の受信装置1の位置を取得可能な情報が含まれていてもよい。その位置を取得可能な情報は、例えば、位置そのものであってもよく、または、その第1の受信装置1の識別子である第1の識別子であってもよい。位置を取得可能な情報が第1の識別子である場合には、波源位置選択装置10の図示しない記録媒体において、第1の識別子と、その第1の識別子で識別される第1の受信装置1の位置とが対応付けられていてもよい。そして、その第1の識別子に対応する位置が、波源位置選択装置10において取得されてもよい。
また、受信部11は、複数の第1の観測情報を、複数回、受信してもよい。すなわち、波源3から送信された電波の異なる期間ごとの複数の第1の観測情報が、受信部11によって受信されてもよい。その受信された複数の第1の観測情報ごとに、波源位置の算出が行われることになる。なお、その異なる期間は、例えば、連続した期間であってもよく、不連続な期間(すなわち、期間と期間との間に0より大きい時間間隔があることになる)であってもよい。また、その異なる期間の一部は、重複していてもよく、または、そうでなくてもよい。また、受信部11は、例えば、その複数回分の複数の第1の観測情報を一括して受信してもよい。また、TDoAによる位置検出が行われる場合には、受信部11は、例えば、連続した長い受信信号を含む複数の第1の観測情報を受信してもよい。そして、波源位置選択装置10において、その長い受信信号が適宜、分割されることにより、異なる期間ごとの複数の第1の観測情報が取得されてもよい。
なお、受信部11は、第1の観測情報を、第1の受信装置1から直接受信してもよく、または、他のサーバ等を経由して受信してもよい。後者の場合には、例えば、複数の第1の受信装置1からの第1の観測情報が基地局等において集められ、その基地局等から、集められた第1の観測情報が波源位置選択装置10に送信されてもよい。受信部11は、受信を行うための有線または無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、受信部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
位置算出部12は、複数の第1の受信装置1が受信した波源3からの電波を用いて波源3の位置である波源位置を算出する。また、位置算出部12は、その波源位置を算出する処理を複数回行うことにより、複数の波源位置を取得する。その複数の波源位置の取得は、例えば、受信部11によって受信された、異なる期間ごとの複数の第1の観測情報について行われてもよい。すなわち、位置算出部12は、ある期間に対応する複数の第1の観測情報を用いて、ある波源位置を算出し、別の期間に対応する複数の第1の観測情報を用いて、別の波源位置を算出することを繰り返してもよい。本実施の形態では、位置算出部12が波源位置を算出する方法として、TDoAによる算出方法と、DoAによる算出方法とについて説明するが、位置算出部12は、それ以外の方法によって波源3の位置を算出してもよい。なお、その位置は、例えば、緯度と経度であってもよく、または、ある位置を基点とした座標値であってもよい。他の位置についても同様である。
[TDoAによる算出方法]
この場合には、受信部11は、3個以上の第1の受信装置1からそれぞれ、第1の受信装置1が波源3から受信した受信信号を含む第1の観測情報を受信しているものとする。その複数の第1の観測情報に含まれる受信信号は、同期しているものとする。そして、位置算出部12は、その複数の第1の受信装置1に対応する受信信号と、複数の第1の受信装置1の各位置とを用いて、波源3の位置を算出する。その第1の受信装置1の位置は、例えば、第1の受信装置1から送信された位置を取得可能な情報を用いて取得された位置である。具体的には、位置算出部12は、まず、第1の受信装置1のペアについて、受信信号の相互相関を用いて、波源3からの電波の到来時間差を算出する。また、位置算出部12は、その到来時間差の算出を、第1の受信装置1の複数のペアについて行うものとする。また、位置算出部12は、その複数のペアに関する到来時間差の算出を、異なる受信信号について行う。その結果、複数の受信信号ごとに、複数のペアの到来時間差が取得されることになる(複数のペアごとに複数の到来時間差が取得されることになる、と考えることもできる)。なお、その到来時間差は、波源3からある第1の受信装置1までの電波の伝搬時間と、波源3から別の第1の受信装置1までの電波の伝搬時間との差である。具体的には、位置算出部12は、次のように到来時間差を算出してもよい。
まず、位置算出部12は、同期した3個以上の受信信号を用いて、i番目の第1の受信装置1と、j番目の第1の受信装置1とのペアに関する相互相関C
ij (q)(τ)を算出する。なお、i,jは、それぞれ1からN
aまでの整数であり、i≠jである。また、N
aは、第1の受信装置1の個数を示す3以上の整数である。また、qは、1からQまでの整数であり、同期した3個以上の受信信号の集合を識別するインデックスである。そのqは、波源位置の算出や、算出された波源位置を識別するインデックスであると考えることもできる。Qは、2以上の整数である。すなわち、本実施の形態では、Q個の異なる期間に応じた受信信号を用いて、Q個の波源位置が算出されることになる。その相互相関は、次式のように、i番目の第1の受信装置1の受信信号r
i (q)(n)と、j番目の第1の受信装置1のτだけずれた時間の受信信号r
j (q)(n−τ)との組み合わせについて算出されることになる。なお、r
i (q)(n)は、i番目の第1の受信装置1で取得されたq番目の受信信号におけるn番目のサンプルの値(IQデータや複素振幅値)である。また、サンプルとは、アナログの受信信号がデジタル化された際のサンプルである。
ここで、τは、−L
1≦τ≦L
1となる整数である。L
1は、あらかじめ決められた正の整数である。また、E[r
i (q)(n)r
j (q)*(n−τ)]は、次式の通りである。
なお、上式において、N
bは、相関を算出するサンプル数である。位置算出部12は、上述の相互相関C
ij (q)(τ)を用いて、次式のように、到来時間差|τ
ij (max)(q)|を算出する。すなわち、相互相関がピークとなる時間方向のずれτを、到来時間差としている。なお、厳密には、|τ
ij (max)(q)|にサンプリング周期δを掛けたδ|τ
ij (max)(q)|が、時間を単位とする到来時間差となる。
なお、位置算出部12は、波源3の位置の算出に用いられる3個以上の第1の受信装置1のすべてのペアについて、到来時間差の算出を行ってもよく、そのペアのうち、少なくとも2個のペアについて、好ましくは3個以上のペアについて、到来時間差の算出を行ってもよい。また、位置算出部12は、例えば、同期した3個以上の受信信号の集合をQ個用いて、第1の受信装置1の複数のペアに対応する到来時間差の集合をQ個算出するものとする。すなわち、q=1〜Qのそれぞれについて、δ|τij (max)(q)|が算出されることになる。
位置算出部12は、第1の受信装置1の位置と、上述のようにして取得した、複数のペアごとの到来時間差の集合とを用いて、波源3の位置である波源位置を算出することを、その到来時間差の集合ごとに繰り返す。位置算出部12は、例えば、Q個の到来時間差の集合を用いて、Q個の波源位置を算出してもよい。なお、その第1の受信装置1の位置は、到来時間差の算出された受信装置1の複数のペアを構成する第1の受信装置1の位置である。その第1の受信装置1の位置は、例えば、緯度・経度であってもよく、ある位置を基準点とした座標値であってもよい。具体的には、位置算出部12は、次のようにして波源3の位置を算出してもよい。
まず、位置算出部12は、q番目の試行(q番目の到来時間差の集合)について、到来時間差を用いて、波源3からi番目の第1の受信装置1までの距離と、波源3からj番目の第1の受信装置1までの距離との差である到来距離差Δd
ij (q)を算出する。その到来距離差Δd
ij (q)は、次式のようになる。なお、次式において、χは光速である。また、位置算出部12は、q=1〜Qの各qについて、到来距離差Δd
ij (q)を算出する処理を行う。
第1の受信装置1の複数のペアに関する到来距離差を用いて波源3の位置を特定することはすでに公知であるが、位置算出部12は、例えば、次のようにして波源位置S
q eを算出してもよい。
ここで、S
q eは、q番目の試行に対する推定波源位置座標(波源位置)であり、それが位置算出部12の算出対象となるものである。mは、ijの組み合わせ、すなわち、第1の受信装置1のペアを構成する第1の受信装置1のインデックスであり、Mは、第1の受信装置1のペアの総数である。また、S
qは、q番目の波源位置であり、|e
m(S
q)|
2は、次式の通りである。
なお、Δd
m (q)は、上述のようにして算出された、mで識別されるペアに関するq番目の到来距離差である。また、Δd
m(S
q)は、次式で示されるように、位置座標から算出される到来距離差である。なお、S
iは、i番目の第1の受信装置1の位置座標である。
位置算出部12は、波源位置Sq eを、例えば、非線形最小二乗法によって算出してもよく、または、他の方法によって算出してもよい。なお、その算出は、例えば、ニュートン(Newton)法や、レーベンバーグ・マーカート(Levenberg-Marquardt)法を用いて行われてもよい。また、位置算出部12は、q=1〜Qのそれぞれについて、波源位置Sq eを算出する処理を行うものとする。なお、q番目の到来時間差の集合に2個の到来時間差のみが含まれる場合に波源位置を算出する方法について簡単に説明する。その場合には、その到来時間差を到来距離差に変換する。2点からの到来距離差が一定である点の集合は双曲線となる。また、通常、そのような双曲線は2個存在するが、τij (max)(q)の正負に応じて、一方の双曲線を特定することができる。したがって、その特定された双曲線の交点である波源位置を算出することができる。
[DoAによる算出方法]
この場合には、受信部11は、2個以上の第1の受信装置1からそれぞれ、第1の受信装置1で取得された波源3の方向を含む第1の観測情報を受信しているものとする。その複数の第1の観測情報は、同時期に2以上の第1の受信装置1において受信された電波に関するものであることが好適である。そして、位置算出部12は、その複数の第1の受信装置1で取得された波源3の方向と、複数の第1の受信装置1の各位置とを用いて、波源3の位置を算出する。位置算出部12は、第1の受信装置1の位置をTDoAによる算出方法の場合と同様にして取得することができる。なお、ある第1の受信装置1の位置と、そこからの波源3の方向とが分かっている場合には、波源3は、その位置を通り、その方向に延びる直線上に存在することになる。したがって、位置算出部12は、2個の第1の受信装置1の位置と、各第1の受信装置1からの波源3の方向とを知ることによって、2個の直線を特定することができ、その直線の交点である波源3の位置を算出することができる。なお、この場合には、2個の第1の受信装置1と波源3とが同一直線上に存在しないことが好適である。また、この場合にも、3個以上の直線を特定し、波源位置と、その3個以上の直線との距離やその距離の二乗に関する和が最小となるように、波源位置を算出してもよい。また、位置算出部12は、そのDoAによる波源位置の算出を、異なる受信信号について行う。その結果、複数の受信信号ごとに、波源位置が算出されることになる。
ここで、位置算出部12は、TDoAまたはDoAにより、Q個の波源位置Sq eを算出したとする。なお、前述のように、qは、1からQまでの整数であり、Qは、2以上の整数である。また、その算出されたQ個の波源位置Sq eは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
受付部13は、波源3からの電波の複数の受信位置における受信信号強度を受け付ける。この受信信号強度の受け付けは、例えば、複数の第2の受信装置2から送信された複数の受信位置における受信信号強度の受信によって行われてもよく、または、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)からの入力によって行われてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)からの読み出しによって行われてもよい。本実施の形態では、受付部13が複数の第2の受信装置2からそれぞれ複数の受信信号強度を受信する場合について主に説明する。また、受付部13は、第2の受信装置2の位置、すなわち受信位置を取得可能な情報をも受け付けてもよい。その受信位置を取得可能な情報は、例えば、受信位置そのものであってもよく、または、第2の受信装置2の識別子である第2の識別子であってもよい。受付部13は、受信位置を取得可能な情報を、複数の第2の受信装置2からそれぞれ受信してもよい。位置を取得可能な情報が第2の識別子である場合には、波源位置選択装置10の図示しない記録媒体において、第2の識別子と、その第2の識別子で識別される第2の受信装置2の位置とが対応付けられていてもよい。そして、その第2の識別子に対応する位置が、波源位置選択装置10において取得されてもよい。また、受付部13は、受信位置で受信された電波の周波数をも受け付けてもよい。i番目の受信位置における受信信号強度を、Piとする。また、その受信位置の座標を、(Xi,Yi)とする。また、i番目の受信位置で受信された電波の周波数(MHz)をfiとする。なお、iは、1からNまでの整数であり、Nは、受信位置の全個数を示す2以上の整数であるとする。受付部13が、複数の受信位置における受信信号強度を受け付けることにより、1からNまでの各iについて、受信信号強度Piと、受信位置(Xi,Yi)とを知ることができるようになるものとする。なお、さらに周波数fiも知ることができるようになってもよい。ここで、fiは、K個の周波数のいずれかである。ここで、KはN以下の正の整数である。K=2である場合には、例えば、f1=f2=…、f3=f4=…となってもよい。
なお、受付部13は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受付部13は、ハードウェアによって実現されてもよく、または所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
距離算出部14は、複数の受信位置と、位置算出部12によって算出された波源位置とを用いて、受信位置ごとに、波源3からの距離及び方位角を算出する。また、距離算出部14は、その受信位置ごとの距離及び方位角の算出を、複数の波源位置について行う。具体的には、距離算出部14は、N個の受信位置(Xi,Yi)と、Q個の波源位置Sq eとを用いて、各波源位置から受信位置までの距離と、波源位置を中心とする受信位置の方向の方位角とを算出する。波源位置から受信位置までの距離は、通常、波源位置と受信位置との直線距離である。また、波源位置から受信位置までの方位角は、例えば、波源位置を中心として、北を0度とし、東を90度とするものであってもよく、その他の方向を基準とするものであってもよい。なお、i番目の受信位置に関するq番目の波源位置からの距離及び方位角と、そのi番目の受信位置で受信された電波の受信信号強度とを含む情報を、q番目の波源位置に対応するi番目の第2の観測情報と呼ぶことにする。すなわち、
q番目の波源位置に対応するi番目の第2の観測情報=(xi (q),θi (q),Pi)
であってもよい。ここで、q番目の波源位置Sq eと受信位置(Xi,Yi)との距離(km)をxi (q)とし、q番目の波源位置Sq eを中心とする受信位置(Xi,Yi)の方向の方位角(deg)をθi (q)としている。また、Piは、xi (q)、θi (q)の受信位置で受信された電波の受信信号強度(dBm)である。上式から分かるように、i番目の第2の観測情報は、波源位置ごとにQ個存在することになる。また、iは、1からNまでの整数であるため、第2の観測情報は、Q×N個存在することになる。また、第2の観測情報には、周波数も含まれていてもよい。その場合には、
q番目の波源位置に対応するi番目の第2の観測情報=(xi (q),θi (q),Pi,fi)
となる。
推定部15は、受信位置の受信信号強度と、その受信位置に関する波源3からの距離及び方位角とを含む複数の第2の観測情報を用いて、波源3からの特定の方位角に関する減衰特性関数を、特定の方位角から離れた方位角を含む観測情報ほど小さな影響となる回帰分析によって推定する。また、推定部15は、その特定の方位角の方向の減衰特性関数の推定を、波源3からの複数の方位角について行う。そのような減衰特性関数の推定方法については、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:堀端研志、菅野一生、長谷川晃朗、前山利幸、武内良男、「重み付け最小二乗法による方位角変数を用いた伝搬損失推定手法」、電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集、p.403、2014年9月
また、推定部15は、その複数の特定の方位角ごとの減衰特性関数の推定を、複数の波源位置について行う。その結果、複数の波源位置について、複数の方位角ごとの減衰特性関数が推定されることになる。なお、減衰特性関数は、波源3からの電波の減衰特性に関する関数であり、波源3からの距離に依存する関数である。その減衰特性関数は、例えば、電波の伝搬損失(パスロス)等を示すものであってもよく、または、受信信号強度等を示すものであってもよい。なお、後述するように、パスロスと受信信号強度とを加算したものが、通常、一定値である送信電力となるため、両者は互いに関係する値となっている。なお、その複数の方位角は、例えば、あらかじめ決められた角度間隔(例えば、5度や10度など)ごとの全方位角(360度)であってもよく、または、その角度間隔ごとのある方位角の範囲(例えば、90度から270度までなど)であってもよい。なお、その角度間隔は均等でなくてもよい。本実施の形態では、推定部15が、あらかじめ決められた角度間隔ごとの全方位角について減衰係数の推定を行う場合について主に説明する。そのあらかじめ決められた角度間隔ごとの全方位角にわたる特定方位角θは、例えば、θ=0°,ε,2×ε,3×ε,…,B×εであってもよい。なお、εは、特定方位角の間隔(deg)であり、Bは、ε×(B+1)≧360°となる最小の整数である。なお、εは、360度の約数であってもよく、またはそうでなくてもよい。その回帰分析による減衰特性関数の推定は、例えば、最小二乗法を用いて行われてもよく、または、最小絶対値法を用いて行われてもよい。すなわち、推定部15は、減衰特性関数を、特定の方位角の方向から離れるほど小さくなる重みを用いた重み付き最小二乗法や最小絶対値法により算出してもよい。その場合には、観測情報にフィッティングする減衰特性関数が重みを考慮して特定されることになる。したがって、推定部15は、特定の方位角に関する減衰特性関数を、特定の方位角から離れるほど減少する重みの関数であり、その減少に関する1以上のパラメータを含む関数である重み関数を用いて推定することになる。重み関数に含まれるパラメータの個数は、1個であってもよく、または、2個以上であってもよい。その重み関数は、例えば、観測情報に含まれる方位角と、特定の方位角との差の絶対値が小さいほど大きな値となり、その差の絶対値が大きいほど小さな値となる関数であってもよい。その関数の具体例については後述する。なお、例えば、その重みの最大値は1であり、最小値は0であってもよく、または、その他の値であってもよい。また、推定部15は、異なる周波数を有する観測情報を用いて回帰分析を行ってもよい。その場合には、減衰特性関数は、電波の周波数にも依存する関数となる。また、推定部15が行う回帰分析は、最小二乗法や最小絶対値法等の線形回帰分析であってもよく、または、非線形回帰分析であってもよい。後者の場合には、例えば、反復最小二乗推定法などによって、反復計算で近似解を改良していくことによって減衰特性関数を推定してもよい。
ここで、受信信号強度と、送信電力との関係は、
受信信号強度=送信電力−パスロス
となる。推定部15が推定する減衰特性関数は、前述のように、上式における「パスロス」を示すものであってもよく、「送信電力−パスロス」(=受信信号強度)を示すものであってもよい。両者共に、少なくとも電波の減衰特性に関連していると考えることができるからである。本実施の形態では、減衰特性関数が「送信電力−パスロス」を示すものである場合、すなわち、波源3からの距離に応じた受信信号強度を示す関数である場合について主に説明する。なお、上式における「送信電力」は、厳密には、送信アンテナの利得の影響を含む空中線電力である。ここで、その送信電力は、通常、変化しないと考えている。次に、減衰特性関数の推定について、周波数を用いない場合と、用いる場合とに分けて説明する。
[周波数を用いない減衰特性関数の推定]
この場合には、q番目の波源位置に対応する複数の第2の観測情報は、次のようになる。
q番目の波源位置に対応する第2の観測情報の集合={(x1 (q),θ1 (q),P1),(x2 (q),θ2 (q),P2),…,(xN (q),θN (q),PN)}
次に、特定の方向に対応する方位角である特定方位角をθとする。そして、q番目の波源位置を採用した場合の特定方位角θの減衰特性関数Pθ (q)(dBm)を次式のように定義する。なお、xθ (q)は、q番目の波源位置を中心とする特定方位角θの方向に関するq番目の波源位置からの距離(km)である。また、その減衰特性関数は、受信信号強度を示すものであるとする。
Pθ (q)=gθ (q)(xθ (q),θ)
ここで、q番目の波源位置に対応するi番目の第2の観測情報(xi (q),θi (q),Pi)の受信信号強度Piに対して、Pθ (q)との残差をδi (q)とする。
δi (q)=Pi−gθ (q)(xi (q),θ)
そして、推定部15は、q番目の波源位置に対応するすべての第2の観測情報について、次のq番目の波源位置に対応する目的関数E
θ (q)を最適化する最適解であるg
θ (q)を算出する。なお、その最適化は、目的関数を最小化することである。目的関数を最小化するg
θ (q)の算出は、例えば、最急降下法等を用いて行ってもよく、その他の方法を用いて行ってもよい。なお、F(θ
i (q))は、θ
i (q)が特定方位角θから離れるほど小さくなり、θ
i (q)が特定方位角θに近づくほど大きくなる重みである。また、Nは、前述のように、q番目の波源位置に対応する第2の観測情報の全個数である。
次に、gθ (q)(xθ (q),θ)について説明する。gθ (q)(xθ (q),θ)は、例えば、次式で示されるものであってもよい。なお、a(q)(θ)、c(q)(θ)は、減衰係数である。a(q)(θ)は、距離減衰係数と呼ばれることもあり、c(q)(θ)は、定数項と呼ばれることもある。減衰係数a(q)(θ),c(q)(θ)は共にθによって決まるθの関数である。
Pθ (q)=gθ (q)(xθ (q),θ)=a(q)(θ)×logxθ (q)+c(q)(θ)
この場合には、上述の目的関数を最適化する最適解の算出は、減衰係数a
(q)(θ),c
(q)(θ)の算出となる。なお、減衰係数c
(q)(θ)に送信電力を含めると、P
θ (q)は、受信信号強度を示すものとなり、減衰係数c
(q)(θ)に送信電力を含めないと、P
θ (q)は、パスロスを示すものとなる。また、P
θ (q)が上式で示される場合には、δ
i (q),E
θ (q)は、次式で示されるようになる。
δ
i (q)=P
i−a
(q)(θ)×logx
i (q)−c
(q)(θ)
なお、そのようなEθ (q)を最小化する減衰係数a(q)(θ),c(q)(θ)を算出することによって、関数gθ (q)の減衰係数a(q)(θ),c(q)(θ)を、重み付きの最小二乗法によって推定することになる。したがって、推定部15は、特定方位角θから離れるほど小さくなる重みF(θi (q))を含む目的関数を最適化する最適解を算出することによって、重み付き最小二乗法や、重み付き最小絶対値法などの回帰分析を用いたa(q)(θ),c(q)(θ)の算出を行ってもよい。それらの減衰係数を算出することによって、減衰特性関数Pθ (q)が算出されたことになる。すなわち、推定部15は、特定の方位角θから離れるほど小さくなる重みの関数である重み関数F(θi (q))、及び、受付部13によって受け付けられた受信信号強度Piと、推定対象の減衰特性関数によって算出される受信信号強度「a(q)(θ)×logxi (q)+c(q)(θ)」との差δi (q)を含む目的関数Eθ (q)が最小となるように減衰特性関数を推定することになる。
次に、その重み関数F(θ
i (q))について説明する。その重み関数は、前述のように、特定方位角θから離れるほど小さくなるものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、次式のF
1(θ
i (q))やF
2(θ
i (q))を用いてもよい。なお、その重み関数は、前述のように、減少に関する1以上のパラメータを含む関数である。減少に関するパラメータとは、減少の程度を規定するパラメータである。例えば、特定方位角θの方向から離れた場合に、急激に減少するのか、緩やかに減少するのかなどがパラメータによって決められることになる。F
1(θ
i (q))において、α,βは、θ
i (q)が特定方位角θから離れた際に、F
1(θ
i (q))がどれぐらい小さくなるかを特徴付けるパラメータである。そのパラメータα,βは、0<α<1、β>0の範囲の値である。また、パラメータβの値が大きくなるほど、特定方位角θからより離れた方位角の観測情報も用いられるようになるため、例えば、β≦180(度)などの上限を設けてもよい。また、F
2(θ
i (q))は、バタワースフィルタの通過特性に基づいた重みであり、パラメータηは遮断角であり、パラメータγは遮断率に関係する係数であり、パラメータMは次数である。そのパラメータη,γ,Mは、η>0、γ>0、M>0の範囲の値である。また、η≦180(度)としてもよく、M≧1としてもよい。また、|θ−θ
i (q)|は、例えば、0≦|θ−θ
i (q)|≦180(度)となるようにしてもよい。
なお、F1(θi (q))のパラメータα,βの値、F2(θi (q))のパラメータη,γ,Mの値を調整することによって、減衰特性関数の推定に影響を与える方位角の範囲が変化することになり、結果として、減衰特性関数の推定結果が異なることになる。したがって、減衰特性関数を適切に推定できるように、パラメータの値を設定することが求められる。なお、F2(θi (q))の方が遮断率等をより細かく設定できるため、より自由度の高い重みの設定が可能となる。
また、特定方位角θの減衰特性関数Pθ (q)は、その特定方位角θに近い方位角を有する観測情報に含まれる受信信号強度によりフィッティングするようになっている。一方、減衰特性関数Pθ (q)は、その特定方位角θから離れた方位角を有する観測情報に含まれる受信信号強度の影響も受けるため、例えば、特定方位角θに近い方位角の観測情報が少数しか存在しなかったとしても、不適切な減衰特性関数が推定されることを回避することができうる。
なお、上述のように、gθ (q)(xθ (q),θ)=a(q)(θ)×logxθ (q)+c(q)(θ)とした場合には、線形回帰モデルとなり、解析的な最小二乗法や最小絶対値法を用いて最適解を算出することができるが、非線形回帰モデルとなる場合には、例えば、反復計算で近似解を改良していくことによって、減衰特性関数を推定してもよい。
[周波数を用いる減衰特性関数の推定]
この場合には、q番目の波源位置に対応する複数の第2の観測情報は、次のようになる。
q番目の波源位置に対応する第2の観測情報の集合={(x1 (q),θ1 (q),P1,f1),(x2 (q),θ2 (q),P2,f2),…,(xN (q),θN (q),PN,fN)}
周波数を用いない場合と同様に特定方位角θを設定すると、q番目の波源位置を採用した場合の特定方位角θの減衰特性関数Pθ (q)(dBm)は、次式のようになる。なお、fは、波源3からの電波の周波数(MHz)である。
Pθ (q)=gθ (q)(xθ (q),f,θ)
したがって、q番目の波源位置に対応するi番目の第2の観測情報(xi (q),θi (q),Pi,fi)の受信信号強度Piに対するPθ (q)との残差δi (q)は次式のようになる。
δi (q)=Pi−gθ (q)(xi (q),fi,θ)
なお、推定部15が、q番目の波源位置に対応するすべての第2の観測情報について、q番目の波源位置に対応する目的関数Eθ (q)を最適化する最適解であるgθ (q)を算出することは、周波数を用いない場合と同様である。また、周波数を用いる場合には、gθ (q)(xθ (q),f,θ)は、例えば、次式で示されるものとなる。
Pθ (q)=gθ (q)(xθ (q),f,θ)=a(q)(θ)×logxθ (q)+b×logf+c(q)(θ)
ここで、減衰係数bは周波数係数であり、例えば、波源3から受信装置1までの電波の伝搬モデルを自由空間モデルとする場合には、b=20としてもよく、波源3から受信装置1までの電波の伝搬モデルを奥村−秦モデル(市街地モデル)とする場合には、b=26.16−1.1×hm+1.56としてもよい。ただし、このモデルを適用できるのは、次の条件が満たされる場合に限定される。
30<hb<200
1<hm<10
150<f<2200
1<xi (q)<20
なお、hbは、送信アンテナ高(m)であり、hmは、受信アンテナ高(m)であり、fは、電波の周波数(MHz)であり、xi (q)は、波源3から受信装置1までの距離(km)である。この場合には、受信アンテナ高hmを取得する必要がある。その受信アンテナ高hmは、例えば、観測情報に含まれていてもよく、または、波源位置選択装置10において、受信装置識別子と、その受信装置識別子で識別される受信装置1のアンテナの高さとが対応付けられて図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。なお、受信アンテナ高と、送信アンテナ高とは、逆であってもよい。すなわち、hbが、受信アンテナ高(m)であり、hmが、送信アンテナ高(m)であってもよい。また、通常、送信アンテナ高は不明であるため、送信アンテナ高に関する条件は満たされていると仮定して奥村−秦モデルを適用してもよい。
したがって、この場合にも、目的関数を最適化する最適解の算出は、減衰係数a
(q)(θ),c
(q)(θ)の算出となる。また、P
θ (q)が上式で示される場合には、δ
i (q),E
θ (q)は、次式で示されるようになる。
δ
i (q)=P
i−a
(q)(θ)×logx
i (q)−b×logf
i−c
(q)(θ)
なお、重みF(θi (q))は、周波数を用いない場合と同様であり、例えば、F1(θi (q))やF2(θi (q))を用いてもよい。このようにして、周波数を用いる場合にも、目的関数Eθ (q)を最適化する減衰係数a(q)(θ),c(q)(θ)を算出することによって、減衰特性関数を推定することができる。なお、周波数も用いる場合には、異なる周波数の電波をも用いて関数のフィッティングを行うことができるため、サンプル数が増えることになる。したがって、例えば、受信装置1の数が少なくても、より精度の高い減衰特性関数の推定が可能になる。
また、上記説明では、周波数係数bがモデルから与えられるとしたが、そうでなくてもよい。周波数係数bがモデルから与えられるのでない場合には、減衰特性関数Pθ (q)、残差δi (q)を、次式のようにしてもよい。
Pθ (q)=gθ (q)(xθ (q),f,θ)=a(q)(θ)×logxθ (q)+b(q)(θ)×logf+c(q)(θ)
δi (q)=Pi−a(q)(θ)×logxi (q)−b(q)(θ)×logfi−c(q)(θ)
そして、目的関数Eθ (q)を最小化する最適解である減衰係数a(q)(θ),b(q)(θ),c(q)(θ)を算出するようにしてもよい。すなわち、周波数係数である減衰係数b(q)(θ)をも算出するようにしてもよい。このように、減衰特性関数の減衰係数を推定するとは、すべての減衰係数a(q)(θ),b(q)(θ),c(q)(θ)を推定することであってもよく、または、一部の減衰係数a(q)(θ),c(q)(θ)を推定することであってもよい。なお、以下の説明では、周波数を用いない減衰特性関数の推定を行う場合について主に説明する。
また、上記説明では、減衰特性関数が、受信信号強度である場合について説明したが、波源3の送信電力を知ることができる場合には、その送信電力を用いて、パスロスを示す減衰特性関数を推定してもよいことは言うまでもない。その場合には、パスロスである減衰特性関数は、「送信電力−Pθ (q)」となる。周波数を用いる推定方法では、同じ波源3が異なる周波数の電波を同じ送信電力で送信している場合や、近接した位置に存在する異なる複数の波源3が、それぞれ異なる周波数の電波を同じ送信電力で同じアンテナゲインの送信アンテナを介して送信している場合には、上述のようにして、受信信号強度を示す減衰特性関数を算出することができる。一方、そうでない場合には、推定部15は、送信電力を用いて、パスロスを示す減衰特性関数を推定することになる。そのように、減衰特性関数の推定に送信電力が必要な場合に、その送信電力は、例えば、受信電力や受信信号強度から推定されてもよく、波源3や他の装置等から事前登録されている値が取得されてもよい。なお、送信電力を推定する場合には、推定部15は、複数の第2の受信装置2のすべての受信電力またはあらかじめ決められた閾値以上の受信電力を用いて、送信電力を推定してもよい。そして、推定部15は、その推定した送信電力と、第2の受信装置2の受信信号強度とを用いて、パスロスを示す減衰特性関数を推定してもよい。なお、送信電力を推定する際には、波源3と第2の受信装置2との間の伝搬経路に応じたモデル(例えば、自由空間モデルや、大地反射の2波モデル、奥村−秦モデル等)の係数a,b,cを用いたパスロスの関数G(x,f)=a×log(x)+b×log(f)+cを用いてもよい。ここで、xは、波源3から第2の受信装置2までの距離であり、fは周波数である。また、モデルの選択は、例えば、第2の受信装置2が取得した遅延プロファイル等を用いて行ってもよい。例えば、遅延プロファイルによって見通しであることが示される場合には、自由空間モデルや大地反射の2波モデルを選択し、遅延プロファイルによって見通しでないことが示される場合には、奥村−秦モデルを選択してもよい。また、そのようにして算出された複数の送信電力のうち、最大値を、波源3の送信電力としてもよく、または、平均+3×(標準偏差)を、波源3の送信電力としてもよい。なお、標準偏差は、算出された送信電力の標準偏差である。前者は、理想的な見通しである伝搬経路を介して受信された受信電力から算出された送信電力が最大値となると考えられることから、最大の送信電力が実際の送信電力であると見なすものである。後者は、統計的なばらつきを考慮すれば、平均+3×(標準偏差)が最大値に近い値となるため、その値を実際の送信電力と見なすものである。なお、第1の受信装置1においても受信電力が取得されている場合には、その第1の受信装置1において取得された受信電力を用いて、送信電力の推定が行われてもよい。
なお、推定部15は、q=1〜Qの各波源位置Sq eについて、上述のようにして、複数の特定方位角θごとの減衰特性関数を推定する。その推定された減衰特性関数、すなわち、減衰係数a(q)(θ),c(q)(θ)等は、図示しない記録媒体で波源位置ごとに記憶されてもよい。また、後述する波源位置の選択において、特定方位角θごとの目的関数の最小値をも用いる場合には、複数の波源位置について、複数の特定方位角θごとの目的関数Eθ (q)の最小値が図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
波源位置選択部16は、推定部15による推定に関する情報を用いて、複数の波源位置から一の波源位置を選択する。なお、推定に関する情報は、例えば、推定された距離減衰係数であってもよく、推定時に最小化された目的関数の値(最小値)であってもよく、その他の情報であってもよい。波源位置選択部16は、例えば、推定された距離減衰係数を用いて波源位置の選択を行ってもよく、または、目的関数の最小値を用いて波源位置の選択を行ってもよい。次に、波源位置の選択について、推定された距離減衰係数を用いる場合と、目的関数の最小値を用いる場合とに分けて説明する。
[距離減衰係数を用いた波源位置の選択]
波源位置選択部16は、推定部15によって推定された、q番目の波源位置に対応する減衰特性関数Pθ (q)の距離減衰係数a(q)(θ)があらかじめ決められた範囲に含まれるかどうかを複数の方位角ごとに判断する。その範囲は、少なくとも上限を含むものである。また、その範囲は、下限を含んでいてもよく、または、そうでなくてもよい。例えば、その範囲は、
a(q)(θ)≦AUB
であってもよく、または、
ALB≦a(q)(θ)≦AUB
であってもよい。本実施の形態では、その範囲が上限のみを含む場合について主に説明する。その範囲は、距離減衰係数の適切な値の範囲であることが好適である。なお、その上限AUBは、特に限定されるものではないが、例えば、「−20」であってもよい。自由空間では、電波の電力は、波源からの距離の二乗に反比例するため、距離減衰係数は、−20となる。自由空間以外では、それよりも減衰が大きいと考えられるため、a(q)(θ)は、通常、−20以下になると考えられるため、上述のように上限AUBを設定してもよい。また、下限ALBは、特に限定されるものではないが、例えば、−60や、−70であってもよい。通常、距離減衰係数がその下限ALBよりも小さい値になることは考えにくいからである。また、波源位置選択部16は、その判断を、複数の波源位置Sq eごとに行う。なお、波源位置選択部16は、例えば、波源位置ごとに、a(q)(θ)があらかじめ決められた範囲に含まれる特定方位角θの数である範囲内方位角数N(q)をカウントしてもよい。そして、波源位置選択部16は、距離減衰係数a(q)(θ)がその範囲に含まれる方位角が最も多い波源位置を選択する。なお、範囲内方位角数N(q)が最大であるqをqbとすると、波源位置Sqb eが選択されることになる。正確な波源位置を用いて算出された距離減衰係数は、適切な範囲内に含まれると考えられる。したがって、範囲内方位角数N(q)の大きい波源位置を選択することによって、より適切な波源位置を選択することができると考えられる。
[目的関数の最小値を用いた波源位置の選択]
波源位置選択部16は、推定部15によって推定された、q番目の波源位置の減衰特性関数Pθ (q)に対応する目的関数Eθ (q)の最小値を複数の方位角ごとに加算した値である合計値Esum (q)を、複数の波源位置ごとに取得する。なお、その合計値Esum (q)は、目的関数Eθ (q)の最小値を特定方位角θごとに加算したものであってもよい。そして、波源位置選択部16は、その合計値Esum (q)が最小である波源位置を選択してもよい。なお、目的関数Eθ (q)の最小値とは、推定部15が推定した最適解(減衰係数)の代入された目的関数の値である。目的関数の最小値が小さいほど、より誤差の小さいフィッティングが行われていると考えることができるため、合計値Esum (q)が最小である場合に、最も誤差の小さいフィッティング、すなわち、適切なフィッティングが行われており、その場合に対応する波源位置は、より正確な波源の位置であると考えることができる。なお、合計値Esum (q)が最小であるqをqbとすると、波源位置Sqb eが選択されることになる。
なお、推定部15は、波源位置ごとに減衰特性関数を推定しているため、波源位置を選択することは、結果として、その選択された波源位置に対応する減衰特性関数を選択したことになる。したがって、波源位置選択部16は、結果として、適切な波源位置に対応する減衰特性関数を選択したことになると考えてもよい。
範囲推定部17は、波源位置選択部16によって選択された波源位置に対応する減衰特性関数を用いて、波源3からの電波が到達する範囲を推定する。例えば、波源位置Sqb eが選択された場合には、範囲推定部17は、推定部15によって推定された減衰特性関数Pθ (qb)を用いて、波源3からの電波が到達する範囲を推定してもよい。その減衰特性関数Pθ (qb)は、複数の特定方位角ごとの減衰特性関数である。その範囲は、例えば、波源3からの電波を利用できる範囲であってもよく、波源3からの電波の影響がある範囲であってもよい。波源3が携帯電話の基地局である場合には、例えば、前者の範囲は、携帯電話による通話を行うことができる範囲であり、後者の範囲は、携帯電話の通話はできないこともあるが、同一周波数の電波を、他の用途に利用することはできない範囲であってもよい。なお、この範囲以外の領域がホワイトスペースであると考えることができる場合には、範囲推定部17は、実質的にホワイトスペースを推定していると考えることもできる。そのホワイトスペースは、波源3からの電波の到達しない地域的な領域である。範囲推定部17は、推定部15が推定した減衰特性関数を用いて、その減衰特性関数の推定された特定の方位角ごとに、受信信号電力があらかじめ決められた閾値となる波源3からの距離を算出し、その距離に応じた地点である電波の到達端を結ぶ領域を、電波の到達する範囲としてもよい。具体的には、特定方位角θに関する減衰特性関数が推定された場合には、受信信号強度が閾値PTHとなる距離dの位置を、電波の到達端としてもよい。そのようにして、特定方位角θと、電波の到達端までの距離dとの複数の組を取得することができる。なお、減衰特性関数が受信信号電力を示すものでない場合には、範囲推定部17は、波源3の送信電力をも用いて、その範囲の推定を行ってもよい。
図5A,図5Bは、電波の到達範囲の一例を示す図である。電波の到達範囲の境界は、図5Aのように、電波の到達端のそれぞれを通過してもよく、または、図5Bのように、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、範囲推定部17は、横軸を方位角とし、縦軸を電波の到達距離とする座標系において、取得された特定方位角θと距離dとの組(θ,d)をプロットする。そして、そのプロットされた点と、曲線との距離が最も近くなるように特定した曲線に対応するものが、電波の到達範囲の境界線であってもよい。なお、電波の到達距離とは、波源3から電波の到達端までの距離である。また、波源3が複数の周波数の電波を送信する場合には、範囲推定部17は、その周波数ごとに電波の到達範囲の推定を行ってもよい。また、範囲推定部17は、ホワイトスペースを特定する処理を別途、行ってもよい。波源3が1個である場合には、上述したように、電波の到達範囲を特定することによって、結果としてホワイトスペースを特定したことになりうるが、複数の波源3が存在する場合には、いずれの波源3からの電波も到達しない範囲がホワイトスペースとなる。したがって、範囲推定部17は、いずれの電波の到達範囲にも含まれない領域であるホワイトスペースの特定を行ってもよい。なお、結果として、電波の到達範囲やホワイトスペースと、それ以外とを区別できるようになるのであれば、電波の到達範囲やホワイトスペースを特定する方法は問わない。範囲推定部17は、例えば、電波の到達範囲等の領域の輪郭を示す情報を取得してもよい。
出力部18は、範囲推定部17が推定した範囲に関する出力を行う。その出力は、例えば、電波の到達範囲やホワイトスペースを示す情報を出力することであってもよく、または、ある位置が電波の到達範囲もしくはホワイトスペースに含まれるかどうかの判断結果を出力することであってもよい。判断結果を出力する場合には、例えば、出力部18が範囲推定部17による推定結果を用いた判断を行ってもよく、または、その他の構成要素がその判断を行ってもよい。なお、その判断対象となる位置は、例えば、受付部13によって受け付けられてもよい。
ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部18は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスや送信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部18は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
次に、波源位置選択装置10の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受信部11は、複数の第1の受信装置1から、第1の観測情報をそれぞれ受信する。なお、その第1の観測情報の送信は、例えば、波源位置選択装置10から各第1の受信装置1に、第1の観測情報を送信する旨の送信要求が送信されることによってなされてもよい。その受信された複数の第1の観測情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS102)位置算出部12は、ステップS101で受信された複数の第1の観測情報を用いて、波源位置を取得する。その波源位置は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS103)位置算出部12は、Q回以上、ステップS102における波源位置の取得を行ったかどうか判断する。そして、Q回以上、波源位置の取得を行った場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。
(ステップS104)受付部13は、複数の受信位置における受信信号強度を受け付ける。また、受付部13は、その受信信号強度と共に、受信位置や周波数を受け付けてもよい。また、受付部13は、その受信信号強度等を、第2の受信装置2から受信してもよい。その受け付けられた複数の受信信号強度等は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS105)距離算出部14は、ステップS104で受け付けられた各受信信号強度に対応する受信位置ごとに、波源3からの距離及び方位角を算出する。また、距離算出部14は、その算出を、複数の波源位置ごとに行う。その波源位置ごとに算出された、各受信位置に対応する距離及び方位角は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS106)推定部15は、受信位置の受信信号強度と、その受信位置に関する波源3からの距離及び方位角とを含む複数の第2の観測情報を用いて、複数の特定方位角ごとに減衰特性関数を取得する。その取得された減衰特性関数は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。また、推定部15は、その複数の特定方位角ごとの減衰特性関数の取得を、各波源位置について行う。なお、この処理の詳細については、図4Aのフローチャートを用いて後述する。
(ステップS107)波源位置選択部16は、ステップS106における減衰特性関数の推定に関する情報を用いて、複数の波源位置から、1個の波源位置を選択する。なお、この処理の詳細については、図4B、図4Cのフローチャートを用いて後述する。
(ステップS108)範囲推定部17は、波源位置選択部16によって選択された波源位置に対応する、複数の方位角ごとの減衰特性関数を用いて、電波の到達範囲を推定する。その推定結果である電波の到達範囲は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS109)出力部18は、範囲推定部17による範囲の推定結果に関する出力を行う。そして、電波の到達範囲の推定に関する一連の処理は終了となる。
なお、図3のフローチャートのステップS108おいて、ホワイトスペースの検出を行ってもよい。また、図3のフローチャートの処理を繰り返して実行することにより、時間方向についても、電波の到達範囲やホワイトスペースを検出できるようになる。その場合には、波源位置を選択する処理を含めて繰り返してもよく、または、波源位置の選択の処理は繰り返さず、減衰特性関数の推定、及び電波の到達範囲の推定や出力のみを繰り返してもよい。
図4Aは、図3のフローチャートにおける減衰特性関数の推定の処理(ステップS106)の詳細を示すフローチャートである。
(ステップS201)推定部15は、カウンタqを1に設定する。
(ステップS202)推定部15は、特定の方向を示す方位角である特定方位角θを0度に設定する。
(ステップS203)推定部15は、複数の第2の観測情報を用いて、特定方位角θに関する減衰特性関数を推定する。この推定は、周波数を用いたものであってもよく、または、そうでなくてもよい。
(ステップS204)推定部15は、特定方位角θをεだけインクリメントする。なお、εは、360度の約数であってもよく、またはそうでなくてもよい。
(ステップS205)推定部15は、特定方位角θが360度以上であるかどうか判断する。そして、360度以上である場合には、ステップS206に進み、そうでない場合には、ステップS203に戻る。
(ステップS206)推定部15は、カウンタqが、あらかじめ設定されているQ以上であるかどうか判断する。そして、カウンタqがQ以上である場合には、図3のフローチャートに戻り、そうでない場合には、ステップS207に進む。
(ステップS207)推定部15は、カウンタqを1だけインクリメントする。そして、ステップS202に戻る。
図4Bは、図3のフローチャートにおける波源位置の選択の処理(ステップS107)の詳細を示すフローチャートである。なお、図4Bのフローチャートでは、距離減衰係数を用いて選択を行う場合について説明する。
(ステップS301)波源位置選択部16は、カウンタqを1に設定する。
(ステップS302)波源位置選択部16は、a(q)(θ)≦AUBとなる範囲内方位角数N(q)をカウントする。波源位置選択部16は、例えば、N(q)を初期値の0に設定し、その後、特定方位角θ=0°,ε,2×ε,3×ε,…,B×εのそれぞれについて、a(q)(θ)≦AUBが満たされる場合にN(q)を1だけカウントアップしてもよい。
(ステップS303)波源位置選択部16は、カウンタqが、あらかじめ設定されているQ以上であるかどうか判断する。そして、カウンタqがQ以上である場合には、ステップS304に進み、そうでない場合には、ステップS305に進む。
(ステップS304)波源位置選択部16は、範囲内方位角数N(q)が最大であるqに対応する波源位置を選択する。なお、そのようなqが複数存在する場合には、波源位置選択部16は、例えば、そのような複数のqから、ランダムに1個のqを選択してもよく、または、その複数のqに対応する目的関数Eθ (q)の最小値の合計値Esum (q)が最小であるqに対応する波源位置を選択してもよい。そして、図3のフローチャートに戻る。
(ステップS305)波源位置選択部16は、カウンタqを1だけインクリメントする。そして、ステップS302に戻る。
図4Cは、図3のフローチャートにおける波源位置の選択の処理(ステップS107)の詳細を示すフローチャートである。なお、図4Cのフローチャートでは、目的関数の最小値を用いて選択を行う場合について説明する。
(ステップS401)波源位置選択部16は、カウンタqを1に設定する。
(ステップS402)波源位置選択部16は、目的関数Eθ (q)の最小値の合計値Esum (q)を算出する。波源位置選択部16は、例えば、特定方位角θ=0°,ε,2×ε,3×ε,…,B×εのそれぞれについて、目的関数Eθ (q)の最小値を加算することによって合計値Esum (q)を算出してもよい。
(ステップS403)波源位置選択部16は、カウンタqが、あらかじめ設定されているQ以上であるかどうか判断する。そして、カウンタqがQ以上である場合には、ステップS404に進み、そうでない場合には、ステップS405に進む。
(ステップS404)波源位置選択部16は、合計値Esum (q)が最小であるqに対応する波源位置を選択する。なお、そのようなqが複数存在する場合には、波源位置選択部16は、例えば、そのような複数のqから、ランダムに1個のqを選択してもよく、または、その複数のqに対応する範囲内方位角数N(q)が最大であるqに対応する波源位置を選択してもよい。そして、図3のフローチャートに戻る。
以上のように、本実施の形態による波源位置選択装置10によれば、マルチパスなどの伝搬環境の特性に時間的な変動があった場合でも、より正確な波源位置を選択することができる。また、そのようにして選択された波源位置を用いて電波の到達範囲等を推定することにより、電波の到達範囲やホワイトスペース等をより精度高く推定することができるようになる。
なお、本実施の形態では、波源位置選択装置10において電波の到達範囲をも推定する場合について説明したが、そうでなくてもよい。電波の到達範囲を推定しない場合には、波源位置選択装置10は、範囲推定部17を備えていなくてもよい。また、出力部18は、例えば、選択された波源位置や、選択された波源位置に対応する減衰特性関数を出力してもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による波源位置算出装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による波源位置算出装置は、TDoAによる波源位置の算出において、到来時間差の算出を繰り返して行い、その算出した複数の到来時間差から適切な値を取得し、その取得した到来時間差を用いて波源位置を算出するものである。
なお、本実施の形態による波源位置算出装置20を含む情報通信システムの構成は、図1において、波源位置選択装置10が波源位置算出装置20となった以外、実施の形態1の説明と同様であり、その詳細な説明を省略する。なお、本実施の形態では、波源位置算出装置20が、TDoAによって波源位置を算出するため、第1の受信装置1は、3個以上存在するものとする。また、第1の観測情報には、第1の受信装置1で受信された波源3からの電波に対応する受信信号が含まれているものとする。
図6は、本実施の形態による波源位置算出装置20の構成を示すブロック図である。本実施の形態による波源位置算出装置20は、受信部21と、到来時間差算出部22と、到来時間差取得部23と、波源位置算出部24と、受付部25と、距離算出部26と、推定部27と、範囲推定部17と、出力部18とを備える。なお、範囲推定部17及び出力部18の構成及び動作は、範囲推定部17が、推定部15に代えて推定部27によって推定された減衰特性関数を用いて、波源3からの電波の到達範囲を推定する以外は、実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。
受信部21は、3個以上の第1の受信装置1から第1の観測情報を受信する。その第1の観測情報には、第1の受信装置1で受信された波源3からの電波の受信信号が含まれているものとする。その受信信号は、波源3の位置の算出のために用いられるものであり、例えば、ベースバンド信号のIQデータや複素振幅値等であってもよい。また、その3個以上の第1の観測情報に含まれる受信信号は、後述するように、電波の到来時間差の算出に用いられるため、同期していることが好適である。また、第1の観測情報には、第1の受信装置1の位置を取得可能な情報が含まれていてもよい。なお、受信部21は、TDoAによる波源位置の算出のため、複数の第1の観測情報を受信する受信部11と同様のものである。
また、受信部21は、複数の第1の観測情報を、複数回、受信してもよい。すなわち、波源3から送信された電波の異なる期間ごとの複数の第1の観測情報が、受信部21によって受信されてもよい。その受信された複数の第1の観測情報ごとに、到来時間差の算出が行われることになる。なお、その異なる期間は、例えば、連続した期間であってもよく、不連続な期間であってもよい。また、その異なる期間の一部は、重複していてもよく、または、そうでなくてもよい。また、受信部21は、例えば、その複数回分の複数の第1の観測情報を一括して受信してもよい。また、受信部21は、例えば、連続した長い受信信号を含む複数の第1の観測情報を受信してもよい。そして、波源位置算出装置20において、その長い受信信号が適宜、分割されることにより、異なる期間ごとの複数の第1の観測情報が取得されてもよい。
なお、受信部21は、第1の観測情報を、第1の受信装置1から直接受信してもよく、または、他のサーバ等を経由して受信してもよい。また、受信部21は、受信を行うための有線または無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受信部21は、ハードウェアによって実現されてもよく、または受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
到来時間差算出部22は、第1の受信装置1のペアについて、受信信号の相互相関を用いて、波源3からの電波の到来時間差を算出する。また、到来時間差算出部22は、その到来時間差の算出を、第1の受信装置1の複数のペアについて行うものとする。また、到来時間差算出部22は、その複数のペアに関する到来時間差の算出を、異なる受信信号について行う。その結果、複数のペアごとに複数の到来時間差が取得されることになる。なお、その到来時間差は、波源3からある第1の受信装置1までの電波の伝搬時間と、波源3から別の第1の受信装置1までの電波の伝搬時間との差である。具体的には、到来時間差算出部22は、次のように到来時間差を算出してもよい。
まず、到来時間差算出部22は、同期した3個以上の受信信号を用いて、i番目の第1の受信装置1と、j番目の第1の受信装置1とのペアに関する相互相関Cij (q)(τ)を算出する。その相互相関の算出方法は、実施の形態1の説明と同様であり、その詳細な説明を省略する。到来時間差算出部22は、算出した相互相関Cij (q)(τ)を用いて、到来時間差|τij (max)(q)|を算出する。なお、厳密には、|τij (max)(q)|にサンプリング周期δを掛けたδ|τij (max)(q)|が、時間を単位とする到来時間差となる。その到来時間差の算出方法についても、実施の形態1の説明と同様であり、その詳細な説明を省略する。
なお、到来時間差算出部22は、波源3の位置の算出に用いられる3個以上の第1の受信装置1のすべてのペアについて、到来時間差の算出を行ってもよく、そのペアのうち、少なくとも2個のペアについて、好ましくは3個以上のペアについて、到来時間差の算出を行ってもよい。また、到来時間差算出部22は、同期した3個以上の受信信号の集合をQ個用いて、第1の受信装置1の複数のペアに対応する到来時間差の集合をQ個算出するものとする。その結果、複数のペアごとにQ個の到来時間差が取得されることになる。
到来時間差取得部23は、第1の受信装置1のペアごとに、複数の到来時間差から代表値である到来時間差を取得する。例えば、i番目の第1の受信装置1と、j番目の第1の受信装置1とのペアについて、Q個の到来時間差が到来時間差算出部22によって算出されているため、到来時間差取得部23は、そのQ個の到来時間差から、代表値である到来時間差を取得する。その代表値は、例えば、中央値であってもよく、または、平均値であってもよい。例えば、1≦q≦Qに対応するδ|τij (max)(q)|の中央値が、到来時間差取得部23によって選択されてもよく、1≦q≦Qに対応するδ|τij (max)(q)|の平均値が、到来時間差取得部23によって算出されてもよい。本実施の形態では、代表値が中央値である場合について主に説明する。到来時間差取得部23は、到来時間差の算出されたijのすべての組について、その到来時間差の代表値を取得する処理を行う。例えば、δ|τij (max)(q)|の中央値に対応するqをqb(ij)とすると、到来時間差取得部23は、i番目の第1の受信装置1と、j番目の第1の受信装置1とのペアについて、到来時間差δ|τij (max)(qb(ij))|を選択することになる。
なお、前述のように、到来時間差に光速χを掛けたものが到来距離差となる。したがって、到来時間差算出部22は、実質的に到来距離差を算出しており、到来時間差取得部23は、実質的に複数の到来距離差から代表値である到来距離差を取得していると考えることもできる。
波源位置算出部24は、第1の受信装置1の位置と、到来時間差取得部23によって取得された、複数のペアごとの到来時間差とを用いて、波源3の位置である波源位置を算出する。なお、その第1の受信装置1の位置は、到来時間差の算出された受信装置1の複数のペアを構成する第1の受信装置1の位置である。具体的には、波源位置算出部24は、次のようにして波源3の位置を算出してもよい。
まず、波源位置算出部24は、到来時間差を用いて、波源3からi番目の第1の受信装置1までの距離と、波源3からj番目の第1の受信装置1までの距離との差である到来距離差Δd
ij (qb(ij))を算出する。その到来距離差Δd
ij (qb(ij))は、次式のようになる。なお、次式において、χは光速である。
第1の受信装置1の複数のペアに関する到来距離差を用いて波源3の位置を特定することはすでに公知であるが、波源位置算出部24は、例えば、次のようにして波源位置S
qb eを算出してもよい。
ここで、S
qb eは、推定波源位置座標(波源位置)であり、それが波源位置算出部24の算出対象となるものである。mは、ijの組み合わせ、すなわち、第1の受信装置1のペアを構成する第1の受信装置1のインデックスであり、Mは、第1の受信装置1のペアの総数である。また、S
qb eは、波源位置であり、|e
m(S
qb e)|
2は、次式の通りである。
ここで、Δd
m (qb(m))は、上述のようにして選択された到来距離差である。また、Δd
m(S
qb)は、次式で示されるように、位置座標から算出される到来距離差である。なお、S
iは、i番目の第1の受信装置1の位置座標である。
波源位置算出部24は、推定波源位置座標Sqb eを、例えば、非線形最小二乗法によって算出してもよく、または、他の方法によって算出してもよい。なお、その算出は、例えば、ニュートン(Newton)法や、レーベンバーグ・マーカート(Levenberg-Marquardt)法を用いて行われてもよい。なお、代表値が平均値である場合には、上式において、中間値の到来距離差Δdij (qb(ij))に代えて、平均値の到来時間差に光速χを掛けた到来距離差が用いられるものとする。
受付部25は、波源3からの電波の複数の受信位置における受信信号強度を受け付ける。この受付部25は、実施の形態1の受付部13と同様のものであり、その詳細な説明を省略する。
距離算出部26は、複数の受信位置と、波源位置算出部24によって算出された波源位置とを用いて、受信位置ごとに、波源3からの距離及び方位角を算出する。具体的には、距離算出部26は、受信位置(Xi,Yi)と、波源位置Sqb eとを用いて、波源位置から受信位置までの距離と、波源位置を中心とする受信位置の方向の方位角とを算出する。波源3から受信位置までの距離は、通常、波源3と受信位置との直線距離である。また、波源3から受信位置までの方位角は、例えば、波源3を中心として、北を0度とし、東を90度とするものであってもよく、その他の方向を基準とするものであってもよい。なお、i番目の受信位置に関する波源3からの距離及び方位角と、そのi番目の受信位置で受信された電波の受信信号強度とを含む情報を、i番目の第2の観測情報と呼ぶことにする。すなわち、
i番目の第2の観測情報=(xi,θi,Pi)
であってもよい。ここで、波源位置Sqb eと受信位置(Xi,Yi)との距離(km)をxiとし、波源位置Sqb eを中心とする受信位置(Xi,Yi)の方向の方位角(deg)をθiとしている。また、Piは、xi、θiの受信位置で受信された電波の受信信号強度(dBm)である。なお、iは、1からNまでの整数であるため、本実施の形態では、第2の観測情報はN個存在することになる。また、第2の観測情報には、周波数も含まれていてもよい。その場合には、
i番目の第2の観測情報=(xi,θi,Pi,fi)
となる。その周波数fiは、実施の形態1と同様のものである。
推定部27は、波源位置算出部24によって算出された波源位置と、受付部25で受け付けられた複数の受信位置における受信信号強度とを用いて、波源3からの電波の減衰特性関数を推定する。その推定は、距離算出部26によって算出された、受信位置ごとの、波源3からの距離及び方位角を用いて行われてもよい。本実施の形態では、その場合について主に説明する。また、推定部27による減衰特性関数の推定の処理は、複数の特定方位角ごとの減衰特性関数の推定を、Q個の波源位置に対して行う代わりに、複数の特定方位角ごとの減衰特性関数の推定を、波源位置算出部24によって算出された1個の波源位置に対して行う以外は、実施の形態1の推定部15による減衰特性関数の推定の処理と同様であってもよい。本実施の形態では、その場合について主に説明し、その詳細な説明を省略する。
次に、波源位置算出装置20の動作について図7のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS501)受信部21は、3個以上の第1の受信装置1から、第1の観測情報をそれぞれ受信する。なお、その第1の観測情報の送信は、例えば、波源位置算出装置20から各第1の受信装置1に、第1の観測情報を送信する旨の送信要求が送信されることによってなされてもよい。その受信された複数の第1の観測情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。なお、その第1の観測情報には、複数の第1の受信装置1間において同期した受信信号が含まれている。
(ステップS502)到来時間差取得部23は、第1の観測情報を送信した第1の受信装置1の複数ペアについて、到来時間差を算出する。その到来時間差は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS503)到来時間差取得部23は、Q回以上、ステップS502における複数のペアに関する到来時間差の算出を行ったかどうか判断する。そして、Q回以上、複数のペアに関する到来時間差の算出を行った場合には、ステップS504に進み、そうでない場合には、ステップS501に戻る。
(ステップS504)到来時間差取得部23は、各ペアについて、複数の到来時間差の代表値を取得する。この代表値の取得は、ペアごとに独立して行われる。
(ステップS505)波源位置算出部24は、各ペアについてステップS504で取得された到来時間差の代表値を用いて、波源位置を算出する。その波源位置は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS506)受付部25は、複数の受信位置における受信信号強度を受け付ける。また、受付部25は、その受信信号強度と共に、受信位置や周波数を受け付けてもよい。また、受付部25は、その受信信号強度等を、第2の受信装置2から受信してもよい。その受け付けられた複数の受信信号強度等は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS507)距離算出部26は、ステップS506で受け付けられた各受信信号強度に対応する受信位置ごとに、波源3からの距離及び方位角を算出する。その各受信位置に対応する距離及び方位角は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS508)推定部27は、受信位置の受信信号強度と、その受信位置に関する波源3からの距離及び方位角とを含む複数の第2の観測情報を用いて、複数の特定方位角ごとに減衰特性関数を取得する。その取得された減衰特性関数は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。なお、この処理の詳細については、図8のフローチャートを用いて後述する。
(ステップS509)範囲推定部17は、推定部27によって推定された複数の方位角ごとの減衰特性関数を用いて、電波の到達範囲を推定する。その推定結果である電波の到達範囲は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
(ステップS510)出力部18は、範囲推定部17による範囲の推定結果に関する出力を行う。そして、電波の到達範囲の推定に関する一連の処理は終了となる。
なお、図7のフローチャートのステップS509おいて、ホワイトスペースの検出を行ってもよい。また、図7のフローチャートの処理を繰り返して実行することにより、時間方向についても、電波の到達範囲やホワイトスペースを検出できるようになる。その場合には、波源位置を算出する処理を含めて繰り返してもよく、または、波源位置の算出の処理は繰り返さず、減衰特性関数の推定、及び電波の到達範囲の推定や出力のみを繰り返してもよい。
図8は、図7のフローチャートにおける減衰特性関数の推定の処理(ステップS508)の詳細を示すフローチャートである。
(ステップS601)推定部27は、特定の方向を示す方位角である特定方位角θを0度に設定する。
(ステップS602)推定部27は、複数の第2の観測情報を用いて、特定方位角θに関する減衰特性関数を推定する。この推定は、周波数を用いたものであってもよく、または、そうでなくてもよい。
(ステップS603)推定部27は、特定方位角θをεだけインクリメントする。なお、εは、360度の約数であってもよく、またはそうでなくてもよい。
(ステップS604)推定部27は、特定方位角θが360度以上であるかどうか判断する。そして、360度以上である場合には、図7のフローチャートに戻り、そうでない場合には、ステップS602に戻る。
以上のように、本実施の形態による波源位置算出装置20によれば、複数の到来時間差の代表値を用いて、波源位置を算出することになる。したがって、マルチパスなどの伝搬環境の特性に時間的な変動があった場合でも、マルチパスなどの影響の少ない到来時間差を用いて波源位置の算出を行うことができるようになる。その結果、波源位置の算出精度を向上させることができる。また、そのような精度の高い波源位置を用いることによって、電波の到達範囲やホワイトスペース等をより精度高く推定することができるようになる。
なお、本実施の形態では、波源位置算出装置20において電波の到達範囲をも推定する場合について説明したが、そうでなくてもよい。電波の到達範囲を推定しない場合には、波源位置算出装置20は、範囲推定部17を備えていなくてもよい。また、出力部18は、例えば、推定された減衰特性関数を出力してもよい。
また、本実施の形態では、波源位置算出装置20において減衰特性関数をも推定する場合について説明したが、そうでなくてもよい。減衰特性関数を推定しない場合には、波源位置算出装置20は、受付部25や距離算出部26、推定部27、範囲推定部17を備えていなくてもよい。また、出力部18は、例えば、算出された波源位置を出力してもよい。
また、本実施の形態では、波源3からの特定方位角に関する減衰特性関数を、特定方位角から離れた方位角の第2の観測情報ほど小さな影響となる回帰分析によって推定する場合について説明したが、そうでなくてもよい。そのような推定を行わない場合には、推定部27は、例えば、波源3と、受信位置とを通る直線の方向について、減衰特性関数を算出する処理を、各受信位置について行ってもよい。その場合には、推定部27は、受信位置に対応する受信信号強度を用いて、減衰特性関数に含まれる1個の係数のみを推定することになる。したがって、例えば、推定部27は、距離減衰係数(a)のみを推定し、その他の係数(b,c)については、モデルから与えられる値を用いるようにしてもよい。そのようにする場合には、定数項cに送信電力の影響が含まれることは適切でないため、波源3から送信される電波の送信電力は別途、取得されることが好適である。すなわち、上述の減衰特性関数は、パスロスを示すものとなることが好適である。その送信電力は、例えば、あらかじめ分かっていてもよく、または、受信された電波の受信電力から算出されてもよい。ここで、周波数係数b,定数項cを決定する方法について簡単に説明する。推定部27は、例えば、波源3から各第2の受信装置2までがすべて自由空間モデルであると設定して、自由空間モデルの係数b,cを用いてもよい。一方、推定部27は、受信信号強度の時間変動量や遅延プロファイルを用いて波源3から第2の受信装置2までが見通しであるかどうか判断し、見通しである場合には自由空間モデルまたは大地反射の2波モデルの係数b,cを用い、見通しでない場合には奥村−秦モデルの係数b,cを用いてもよい。その判断で用いられる遅延プロファイルは、第2の受信装置2から波源位置算出装置20に送信されてもよい。なお、自由空間モデルと、大地反射の2波モデルとのどちらを選択するのかについて簡単に説明する。第2の受信装置2の受信アンテナ高が十分高く、周波数が高い場合には、第一フレネルゾーンが大地で遮蔽され始めるブレークポイントまでの距離が大きいため、自由空間モデルを用いても問題ない。そうでない場合には、第一フレネルゾーンが遮蔽される影響を無視できないため、大地反射の2波モデルを用いることが好適である。したがって、例えば、推定部27は、第2の受信装置2の受信アンテナ高が、アンテナ高に関する閾値以上であり、周波数fも、周波数に関する閾値以上である場合に、自由空間モデルを採用し、そうでない場合に、大地反射の2波モデルを採用するようにしてもよい。なお、この係数b,cの決定は、通常、第2の受信装置2ごとに行われる。このようにして、係数b,cを決定し、距離減衰係数aを算出することによって、各第2の受信装置2について、パスロスである減衰特性関数を推定できる。そのように、特定方位角ごとの減衰特性関数の算出を行わない場合には、距離算出部26は、例えば、波源3の位置と、受信位置との間の距離を算出するものであってもよい。なお、本実施の形態では、算出された波源位置と、各受信位置における受信信号強度とを用いて、減衰特性関数を推定する2つの方法について説明したが、推定部27は、それら以外の方法によって減衰特性関数を推定してもよいことは言うまでもない。
また、上記各実施の形態では、波源位置選択装置10や波源位置算出装置20が、通信回線100を介して受信信号強度等を受信する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、波源位置選択装置10や波源位置算出装置20が、受信信号強度等を記録媒体等を介して受け付ける場合には、第2の受信装置2は、通信回線100に接続されていなくてもよい。
また、上記各実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
また、上記各実施の形態において、波源位置選択装置10や波源位置算出装置20に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態における波源位置選択装置10を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、複数の受信装置が受信した波源からの電波を用いて波源の位置である波源位置を算出する処理を複数回行うことにより、複数の波源位置を取得する位置算出部、波源からの電波の複数の受信位置における受信信号強度を受け付ける受付部、複数の受信位置と、位置算出部によって算出された波源位置とを用いて、受信位置ごとに、波源からの距離及び方位角を算出することを、複数の波源位置について行う距離算出部、受信位置の受信信号強度と、受信位置に関する波源からの距離及び方位角とを含む複数の観測情報を用いて、波源からの特定の方位角に関する、波源からの電波の減衰特性関数を、特定の方位角から離れた方位角を含む観測情報ほど小さな影響となる回帰分析によって、波源からの複数の方位角について推定することを、複数の波源位置について行う推定部、推定部による推定に関する情報を用いて、複数の波源位置から一の波源位置を選択する波源位置選択部として機能させるためのプログラムである。
また、上記実施の形態における波源位置算出装置20を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、3個以上の受信装置が受信した波源からの電波の受信信号を、3個以上の受信装置から受信する受信部、受信装置の複数のペアについて、受信信号の相互相関を用いて、波源からの電波の到来時間差をそれぞれ算出する処理を異なる受信信号について行うことにより、ペアごとに複数の到来時間差を取得する到来時間差算出部、ペアごとに、複数の到来時間差から代表値である到来時間差を取得する到来時間差取得部、受信装置の位置と、到来時間差取得部によって取得された、複数のペアごとの到来時間差とを用いて、波源の位置である波源位置を算出する波源位置算出部として機能させるためのプログラムである。
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を受け付ける受付部や情報を受信する受信部、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
図9は、上記プログラムを実行して、上記各実施の形態による波源位置選択装置10、波源位置算出装置20を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記各実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図9において、コンピュータシステム900は、CD−ROMドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
図10は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図10において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
コンピュータシステム900に、上記各実施の形態による波源位置選択装置10、波源位置算出装置20の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921に記憶されて、CD−ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。また、CD−ROM921に代えて他の記録媒体(例えば、DVD等)を介して、プログラムがコンピュータシステム900に読み込まれてもよい。
プログラムは、コンピュータ901に、上記各実施の形態による波源位置選択装置10、波源位置算出装置20の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。