JP6655544B2 - 偏光フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、耐湿熱性に優れた偏光フィルムに関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有しており、偏光板を構成する偏光フィルムとしては一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)にヨウ素系色素(I やI 等)が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、ヨウ素系色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時にヨウ素系色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後にヨウ素系色素を吸着させたりするなどして製造される。
LCDは、電卓および腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広範囲において用いられるようになっており、近年、従来品以上に耐久性、特に高温・高湿度下での耐湿熱性に優れた偏光フィルムが求められるようになってきた。
耐湿熱性に優れた偏光フィルムとして、例えばPVAと二色性色素と特定の有機酸とを含有するものが知られている(特許文献1参照)。
特開2011−237580号公報 国際公開第2014/065140号
しかしながら、特許文献1の偏光フィルムによっても、耐湿熱性の向上にはさらなる改善の余地があった。そこで本発明は、高温・高湿度下での偏光性能の低下が抑制された、耐湿熱性に優れる偏光フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。ところで、外観等に優れる偏光フィルムとしてヨウ素低減層を有するものが知られているが(特許文献2参照)、当該偏光フィルムによっても本発明において目的とする耐湿熱性の向上は達成することができない。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの表面に還元剤を特定の割合で含む処理液を接触させることにより、断面をラマン分光測定して得られるフィルムの厚み方向中央部と表面近傍とにおける各測定結果が特定の関係を満たす、耐湿熱性に優れる従来にない偏光フィルムが容易に得られることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち本発明は、[1]PVAフィルムにヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムであって、当該偏光フィルムの断面をラマン分光測定して得られる、フィルムの厚み方向中央部における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をLとし、フィルムの一方の面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をMとし、フィルムの他方の面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をNとした際に(但し、M≦Nである)、2×L/(M+N)が1.2以上である、偏光フィルム;[2]当該偏光フィルムに60℃、90%RHの条件で12時間放置する耐湿熱性試験を施したときに、試験前のクロスニコル状態における波長610nmでの吸光度(A)と試験後のクロスニコル状態における波長610nmでの吸光度(B)との比率(B/A)が0.12以上である、上記[1]の偏光フィルム;[3]厚みが30μm以下である、上記[1]または[2]の偏光フィルム;[4]単体透過率が40〜50%であり、偏光度が99%以上である、上記[1]〜[3]のいずれか1つの偏光フィルム;[5]ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの表面と還元剤を0.5〜10質量%含む処理液とを接触させる工程を含む、偏光フィルムの製造方法;[6]上記接触させる工程における接触時間が1分以下である、上記[5]の製造方法;[7]上記処理液の温度が5〜50℃である、上記[5]または[6]の製造方法;[8]前記還元剤が、アスコルビン酸またはその塩、エリソルビン酸またはその塩、チオ硫酸塩および亜硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種類である、上記[5]〜[7]のいずれか1つの製造方法;[9]上記[1]〜[4]のいずれか1つの偏光フィルムの製造方法である、上記[5]〜[8]のいずれか1つの製造方法;に関する。
本発明によれば、高温・高湿度下での偏光性能の低下が抑制された、耐湿熱性に優れる偏光フィルムが提供される。また、本発明によれば、当該偏光フィルムを容易に製造することのできる偏光フィルムの製造方法が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。(偏光フィルム)本発明の偏光フィルムは、PVAフィルム(典型的には一軸延伸されたPVAフィルム)にヨウ素系色素が吸着している。このような偏光フィルムは、ヨウ素系色素を予め含有させたPVAフィルムを延伸したり、PVAフィルムの延伸と同時にヨウ素系色素を吸着させたり、PVAフィルムを延伸してマトリックスを形成した後にヨウ素系色素を吸着させたりするなどして製造することができる。
本発明の偏光フィルムでは、当該偏光フィルムの断面をラマン分光測定して得られる、フィルムの厚み方向中央部における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をLとし、フィルムの一方の面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をMとし、フィルムの他方の面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をNとした際に(但し、M≦Nである)、2×L/(M+N)が1.2以上である。
偏光フィルムの断面をラマン分光測定するにあたっては、例えば、対象となる偏光フィルムをその厚み方向にスライスした試料を用いてラマン分光光度計によりラマン分光測定すればよく、具体的には、堀場製作所製 顕微レーザラマン分光測定装置「LabRAM ARAMIS VIS」等のレーザラマン分光測定装置を用いて、上記試料の測定対象部分に波長532nmのレーザー光を照射してラマン分光測定を行えばよい。そして、このようにして得られた、各測定対象部分それぞれにおける310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)とから、その部分における比率(Int310/Int210)が算出される。フィルムの各部分における比率(Int310/Int210)を求める際のより具体的な各測定手法ないし条件としては、実施例において後述するものをそれぞれ採用することができる。なお、偏光フィルムにおいて規定されるフィルムの各面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分について、例えば、厚みが10μmの偏光フィルムの場合には、当該部分は偏光フィルムの各面から厚み方向に内部に1μm(10μm×10%=1μm)進入した部分に該当する。本発明を何ら限定するものではないが、フィルムの各部分における比率(Int310/Int210)は、その部分におけるI の存在量に対するI の存在量の割合に依存するものと考えられる。
偏光フィルムは、上記した2×L/(M+N)が1.2以上である。2×L/(M+N)が1.2以上であることにより、耐湿熱性に優れる偏光フィルムとなる。耐湿熱性により優れる偏光フィルムとなることから、2×L/(M+N)は1.5以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましい。2×L/(M+N)の上限に特に制限はないが、偏光フィルムの製造の容易さなどの観点から、2×L/(M+N)は3.0以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましい。
上記のPVAとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。上記のビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。
上記のポリビニルエステルは、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記のビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステルに占める前記した他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下、さらには5モル%以下であってもよい。特に前記した他の単量体が、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸などのように、得られるPVAの水溶性を促進する可能性のある単量体である場合には、偏光フィルムの製造過程においてPVAが溶解するのを防止するために、ポリビニルエステルにおけるこれらの単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
上記のPVAは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。PVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位(グラフト変性部分における構造単位)の割合は、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
上記のPVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAは、その水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
上記のPVAの平均重合度は1,000〜9,500の範囲内であることが好ましく、当該平均重合度は、1,500以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、また、9,200以下であることがより好ましく、6,000以下であることがさらに好ましい。平均重合度が1,000以上であることにより、偏光フィルムの偏光性能が向上する。一方、平均重合度が9,500以下であることにより、PVAの生産性が向上する。なお、PVAの平均重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
上記のPVAのけん化度は、偏光フィルムの偏光性能などの観点から、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、98.5モル%以上であることがさらに好ましい。けん化度が95モル%未満であると、偏光フィルムの製造過程でPVAが溶出しやすくなり、溶出したPVAがフィルムに付着して偏光フィルムの偏光性能を低下させる場合がある。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
上記のヨウ素系色素としては、I やI 等が挙げられる。これらのカウンターカチオンとしては、例えば、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。ヨウ素系色素は、例えば、ヨウ素(I)とヨウ化カリウムとを接触させることにより得ることができる。
本発明の偏光フィルムの厚みに特に制限はなく、例えば100μm以下、さらには50μm以下とすることができるが、通常、より薄い偏光フィルムにおいて耐湿熱性が低下しやすく、このような偏光フィルムにおいて本発明の効果がより顕著に奏されることから、偏光フィルムの厚みは、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であってもよい。一方、厚みがあまりに薄い偏光フィルムは、その製造が困難であることから、偏光フィルムの厚みは、例えば1μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましい。
本発明の偏光フィルムは、耐湿熱性により優れるものとなることから、それに含まれるPVAの質量に対してホウ素原子を1質量%以上含むことが好ましく、2質量%以上含むことがより好ましく、3質量%以上含むことがさらに好ましく、また、10質量%以下含むことが好ましく、5質量%以下含むことがより好ましく、4質量%以下含むことがさらに好ましい。偏光フィルムにおけるホウ素原子の含有量は後述する偏光フィルムの製造方法における架橋工程、延伸工程、洗浄工程等で使用される処理浴でのホウ素原子の含有量を変化させることによって調節することができる。
本発明の偏光フィルムは耐湿熱性に優れる。当該耐湿熱性は偏光フィルムに耐湿熱性試験を施すことにより評価することができ、具体的には偏光フィルムに対して、60℃、90%RHの条件で12時間放置する耐湿熱性試験を施すことにより評価することができる。本発明の偏光フィルムの耐湿熱性の程度としては、当該試験前のクロスニコル状態における波長610nmでの吸光度(A)と当該試験後のクロスニコル状態における波長610nmでの吸光度(B)との比率(B/A)が0.12以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.25以上であることがさらに好ましい。比率(B/A)の上限に特に制限はないが、偏光フィルムの製造の容易さ等から、比率(B/A)は例えば0.5以下である。なお、上記の耐湿熱性試験は、実施例において後述する方法により測定することができる。
本発明の偏光フィルムの単体透過率は、偏光性能の観点から、40〜50%の範囲内であることが好ましく、当該単体透過率は、41%以上であることがより好ましく、42%以上であることがさらに好ましく、また、45%以下であることがより好ましい。偏光フィルムの単体透過率は、実施例において後述する方法により測定することができる。
本発明の偏光フィルムの偏光度は、偏光性能の観点から、99%以上であることが好ましく、当該偏光度は、99.9%以上であることがより好ましく、99.95%以上であることがさらに好ましい。偏光フィルムの偏光度は、実施例において後述する方法により測定することができる。
(偏光フィルムの製造方法)
本発明の偏光フィルムを製造するための方法は特に制限されないが、以下の本発明の製造方法によれば、本発明の偏光フィルムを容易に製造することができることから好ましい。
すなわち、本発明の製造方法は、ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの表面と還元剤を0.5〜10質量%含む処理液とを接触させる工程を含む。
本発明の製造方法において使用される上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムは、PVAフィルムに対してヨウ素系色素による染色工程および延伸工程を施すことにより得ることができる。使用されるPVAフィルムは、単層のものであってもよいし、熱可塑性樹脂基材等の基材に積層されたものであってもよいが、単層のものが好ましい。
PVAフィルムを構成するPVAとしては、本発明の偏光フィルムの説明において、上記したのと同様のものとすることができるため、ここでは重複する記載を省略する。
PVAフィルムは、それを延伸する際の延伸性向上の観点から可塑剤を含むことが好ましい。当該可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどを挙げることができ、PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の観点からグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、それに含まれるPVA100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。当該含有量が1質量部以上であることにより、PVAフィルムの延伸性をより向上させることができる。一方、当該含有量が20質量部以下であることにより、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下するのを防止することができる。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量はPVA100質量部に対して2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましく、5質量部以上であることが特に好ましく、また、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることがさらに好ましい。なお、偏光フィルムの製造条件などにもよるが、PVAフィルムに含まれる可塑剤は偏光フィルムを製造する際に溶出するなどするため、その全量が偏光フィルムに残存するとは限らない。
PVAフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤、界面活性剤などの成分をさらに含んでいてもよい。
PVAフィルムにおけるPVAの含有率は、所望とする偏光フィルムの調製のしやすさなどから、50〜99質量%の範囲内であることが好ましく、当該含有率は、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、また、98質量%以下であることがより好ましく、96質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法において使用されるPVAフィルムの厚みに特に制限はなく、目的とする偏光フィルムの厚みに応じて適宜調節することができる。PVAフィルムの厚みは、例えば200μm以下、さらには100μm以下とすることができるが、通常、より薄い偏光フィルムにおいて耐湿熱性が低下しやすく、このような偏光フィルムおいて本発明の効果がより顕著に奏されることから、PVAフィルムの厚みは、60μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であってもよい。一方、厚みがあまりに薄いPVAフィルムは、その取り扱い性が困難であることから、PVAフィルムの厚みは、例えば2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。
PVAフィルムの形状は特に制限されないが、偏光フィルムを製造する際に連続して使用することができることから長尺のPVAフィルムであることが好ましい。長尺のPVAフィルムの長さ(長尺方向の長さ)は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜20,000mの範囲内とすることができる。
PVAフィルムの幅は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができるが、近年、液晶テレビや液晶モニターの大画面化が進行している
点から、PVAフィルムの幅を0.5m以上、より好ましくは1.0m以上にしておくと、これらの用途に好適である。一方、PVAフィルムの幅があまりに広すぎると実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
本発明において使用される上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムは、上記の通り、PVAフィルムに対してヨウ素系色素による染色工程および延伸工程を施すことにより得ることができ、当該染色工程および延伸工程の他に、膨潤工程、架橋工程などを必要に応じてさらに含むことができる。各工程の順番は必要に応じて適宜変更してもよく、各工程を2回以上実施してもよく、異なる工程を同時に実施してもよい。
本発明において使用される上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの製造方法の一例としては、まずPVAフィルムを、膨潤工程に供し、次いでヨウ素系色素による染色工程に供し、必要に応じてさらに架橋工程に供し、その後延伸工程に供する方法が挙げられる。
膨潤工程は、PVAフィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水に浸漬する際の水の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、当該温度は、22℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましく、また、38℃以下であることがより好ましく、35℃以下であることがさらに好ましい。当該温度を20〜40℃の範囲内にすることでPVAフィルムを効率良く膨潤させることができる。また、水に浸漬する時間としては、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。0.1〜5分間の範囲内にすることでPVAフィルムを効率良く膨潤させることができる。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
ヨウ素系色素による染色工程は、PVAフィルムをヨウ素(I)およびヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬することにより行うことができる。ヨウ素およびヨウ化カリウムを水と混合することで、I およびI といったヨウ素系色素を発生させることができる。染色浴におけるヨウ素およびヨウ化カリウムの濃度に特に制限はないが、ヨウ素の濃度としては、得られる染色浴の質量に対する使用されるヨウ素の質量の割合として、0.01〜2質量%の範囲内であることが好ましく、0.02〜0.5質量%の範囲内であることがより好ましく、また、ヨウ化カリウムの濃度としては、上記使用されるヨウ素の質量に対する使用されるヨウ化カリウムの質量の割合として、10〜200質量倍の範囲内であることが好ましく、15〜150質量倍の範囲内であることがより好ましい。染色浴には、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物を含んでいてもよい。染色浴の温度としては、20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。
PVAフィルムに対して架橋工程を行うことで、比較的高い温度で湿式延伸する際にPVAが水へ溶出するのをより効果的に防止することができる。この観点から架橋工程は染色工程の後であって延伸工程の前に行うのが好ましい。架橋工程は、架橋浴として架橋剤を含む水溶液にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。当該架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋浴における架橋剤の濃度は1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、また、7質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。架橋剤の濃度が1〜15質量%の範囲内にあることで十分な延伸性を維持することができる。架橋浴はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋浴の温度は、20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。当該温度を20〜50℃の範囲内にすることで効率良く架橋することができる。
PVAフィルムを延伸する際の延伸方法に特に制限はなく、湿式延伸法および乾式延伸法のうちのいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した染色浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温のまま延伸を行ってもよいし、熱をかけながら延伸してもよいし、吸水後に延伸してもよい。これらの中でも、得られる偏光フィルムにおける幅方向の厚みの均一性の点から湿式延伸法が好ましく、ホウ酸水溶液中で延伸することがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5〜8.0質量%の範囲内であることが好ましく、当該濃度は、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましく、また、7.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましい。ホウ酸の濃度が0.5〜6.0質量%の範囲内にあることで幅方向の厚みの均一性に優れる偏光フィルムが得られる。上記したホウ素化合物を含む水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。ヨウ化カリウムの濃度が0.01〜10質量%の範囲内にあることで偏光性能がより良好な偏光フィルムが得られる。
PVAフィルムを延伸する際の温度は、5〜90℃の範囲内であることが好ましく、当該温度は、10℃以上であることがより好ましく、また、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。当該温度が5〜90℃の範囲内であることで幅方向の厚みの均一性に優れる偏光フィルムが得られる。
PVAフィルムを延伸する際の延伸倍率は4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましい。PVAフィルムの延伸倍率を上記の範囲内にすることで、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られる。PVAフィルムの延伸倍率の上限は特に制限されないが、8倍以下であることが好ましい。PVAフィルムの延伸は一度に行っても、複数回に分けて行ってもどちらでもよいが、複数回に分けて行う場合には各延伸の延伸倍率を掛け合わせた総延伸倍率が上記範囲内にあればよい。なお、本明細書における延伸倍率は延伸前のPVAフィルムの長さに基づくものであり、延伸をしていない状態が延伸倍率1倍に相当する。
PVAフィルムの延伸は、得られる偏光フィルムの性能の観点から一軸延伸が好ましい。長尺のPVAフィルムを延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られることから長尺方向への一軸延伸が好ましい。長尺方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
本発明の製造方法では、上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの表面と還元剤を0.5〜10質量%含む処理液とを接触させる工程を含む。当該接触させる工程における接触方法に特に制限はなく、例えば上記処理液を処理浴(還元剤浴)として用いてこれに上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムを浸漬する方法や、上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの表面に上記処理液を塗布する方法などが挙げられ、本発明の偏光フィルムをより容易に得ることができることから、上記処理液を処理浴として用いてこれに上記ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムを浸漬する方法が好ましい。上記処理浴は水溶液であることが好ましい。
処理液における還元剤の濃度は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、また、8質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。当該処理液における還元剤の濃度が上記下限以下であると目的とする偏光フィルムを得ることが困難になる。一方、処理液における還元剤の濃度が上記上限以上であると偏光性能に優れた偏光フィルムを得るのが困難になる。
上記還元剤の種類に特に制限はなく、還元性を有する化合物を用いることができ、PVAとの親和性に優れることなどから、当該還元剤は水溶性酸化防止剤であることが好ましく、本発明の偏光フィルムをより容易に得ることができることから、当該還元剤はアスコルビン酸またはその塩、エリソルビン酸またはその塩、チオ硫酸塩および亜硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種類であることがより好ましく、チオ硫酸塩であることがさらに好ましい。還元剤が塩である場合において、塩の種類としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
上記接触させる工程における接触時間は、本発明の偏光フィルムをより容易に得ることができることから、1分以下であることが好ましく、40秒以下であることがより好ましく、15秒以下、さらには5秒以下であってもよい。当該接触時間はより短いほうが目的とする偏光フィルムが得られやすいが、あまりに短すぎるとその操作が困難になる場合があることから、当該接触時間は0.1秒以上であることが好ましい。
上記処理液の温度は、本発明の偏光フィルムをより容易に得ることができることから、5〜50℃の範囲内であることが好ましく、当該温度は10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがより好ましく、また、40℃以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法では、上記接触させる工程の後に、さらに固定処理工程、洗浄工程、乾燥工程等を含むことが好ましい。
固定処理工程は、主として、偏光フィルムへのヨウ素系色素の吸着を強固にするために行われる。固定処理工程は、偏光フィルムを固定処理浴に浸漬することにより行うことができる。固定処理浴としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。また、必要に応じて、固定処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴として使用されるホウ素化合物を含む水溶液中におけるホウ素化合物の濃度は、一般に0.1〜15質量%の範囲内、特に1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。当該濃度を0.1〜15質量%の範囲内にすることでヨウ素系色素の吸着をより強固にすることができる。固定処理浴の温度は、10〜60℃の範囲内、特に15〜40℃の範囲内であることが好ましい。当該温度を10〜60℃の範囲内にすることでヨウ素系色素の吸着をより強固にすることができる。
洗浄工程は、フィルム表面の不要な薬品類や異物を除去したり、最終的に得られる偏光フィルムの光学的性能を調節したりするために行われることが多い。洗浄工程は、偏光フィルムを洗浄浴に浸漬させたり、偏光フィルムに洗浄液を散布したりすることによって行うことができる。洗浄浴や洗浄液としては水を使用することができ、これらにヨウ化カリウムを含有させてもよい。
乾燥工程における乾燥の条件は特に制限されないが、30〜150℃の範囲内、特に50〜130℃の範囲内の温度で乾燥を行うのが好ましい。30〜150℃の範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
(使用形態)
偏光フィルムは、通常、その両面または片面に保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用される。保護膜としては、光学的に透明でかつ機械的強度を有するものが挙げられ、具体的には例えば、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを使用することができる。
また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを挙げることができるが、PVA系接着剤が好適である。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された、偏光フィルムの2×L/(M+N)、ホウ素原子の含有量、単体透過率、偏光度および耐湿熱性の各測定ないし評価方法を以下に示す。
[偏光フィルムの2×L/(M+N)]以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムについて、その長さ方向(MD)の任意の位置で、幅方向(TD)における中央部からMD×TD=2mm×10mmの大きさの細片を切り出し、その細片の両面を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム2枚で挟んでミクロトームに取り付けた。当該細片をポリエチレンテレフタレートフィルムの上から、MDと平行に20μm間隔でスライスし、サイズがMD×TD=2mm×20μmである試料を採取した。当該試料について、堀場製作所製 顕微レーザラマン分光測定装置「LabRAM ARAMIS VIS」を用いて、ミクロトームによるスライスで生じた断面上の測定対象部分に対して、波長532nmのレーザー光を照射してラマン分光測定を行い、そのときに観測されたシグナルのうち、310cm−1でのシグナルの強度(Int310)と210cm−1でのシグナルの強度(Int210)とから、その部分における比率(Int310/Int210)を算出した。なお上記の測定対象部分は、偏光フィルムの厚み方向中央部、および、偏光フィルムの各面からフィルムの厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分とし、偏光フィルムの厚み方向中央部より得られた比率(Int310/Int210)をLとし、また、偏光フィルムの各面からフィルムの厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分より得られた2つの比率(Int310/Int210)について、M≦Nを満たすようにそれぞれの値をMまたはNとし、これらのL、MおよびNを用いて2×L/(M+N)を算出した。
[偏光フィルムに含まれるホウ素原子の含有量]ICP−MS測定により、PVAの質量に対する割合として求めた。
[偏光フィルムの単体透過率および偏光度]以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向(TD)の中央部から、偏光フィルムの長さ方向(MD)に2cmの長方形のサンプルを採取し、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行い、当該サンプルについて、長さ方向に対して45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値(%)をその偏光フィルムの単体透過率とした。また、当該サンプルについてパラレルニコル状態での光の透過率T‖(%)、クロスニコル状態での光の透過率T⊥(%)を上記と同様に測定し、下記式(1)により偏光度を求めた。
偏光度 = {(T‖−T⊥)/(T‖+T⊥)}1/2×100 (1)
[偏光フィルムの耐湿熱性]上記の単体透過率および偏光度の測定で用いたのと同じサンプルおよび分光光度計を用いて、このサンプルを当該分光光度計の偏光板に対してクロスニコル状態に設置し、波長610nmでの吸光度(A)を測定した。また、このサンプルを60℃、90%RHの恒温恒湿器に入れて、12時間の耐湿熱性試験を行い、試験後に上記と同様にして波長610nmでの吸光度(B)を測定し、これらから比率(B/A)を算出し、これを偏光フィルムの耐湿熱性の指標とした。
[実施例1]PVA(酢酸ビニルとエチレンとの共重合体のけん化物、平均重合度2,400、けん化度99.4モル%、エチレン単位の含有率2.5モル%)100質量部、可塑剤としてグリセリン10質量部、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.1質量部および水からなる製膜原液を用いてキャスト製膜することにより得られた、厚み30μmのPVAフィルムに対して、膨潤工程、ヨウ素系色素による染色工程、架橋工程、延伸工程を行うことによりヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムを得て、これを還元剤を含む処理液と接触させ、さらに洗浄工程および乾燥工程を行うことにより目的とする偏光フィルムを製造した。すなわち、上記のPVAフィルムを、温度30℃の水中に1分間浸漬している間に元の長さの1.6倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(1段目延伸)した後、使用量としてヨウ素を0.053質量%およびヨウ化カリウムを5.3質量%の濃度で水に混合してなる温度30℃の染色浴に1分間浸漬している間に元の長さの2.7倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(2段目延伸)し、次いでホウ酸を3質量%およびヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有する温度30℃の架橋浴に2分間浸漬している間に元の長さの3倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(3段目延伸)し、さらにホウ酸を4.5質量%およびヨウ化カリウムを6質量%の濃度で含有する温度62.0℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液(延伸浴)中に浸漬している間に元の長さの6倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(4段目延伸)し、その後、チオ硫酸ナトリウムを4質量%の濃度で含有する温度30℃のチオ硫酸ナトリウム水溶液(還元剤浴)に1秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有する温度30℃のヨウ化カリウム水溶液(洗浄浴)中に5秒間浸漬し、続いて60℃の乾燥機で240秒間乾燥することにより、厚み13μmの偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムを用いて、上記した方法により、2×L/(M+N)、ホウ素原子の含有量、単体透過率、偏光度および耐湿熱性を測定ないし評価した。結果を表1に示した。
[実施例2]延伸浴におけるホウ酸濃度および温度、還元剤浴におけるチオ硫酸ナトリウムの濃度、並びに、還元剤浴への浸漬時間を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムを用いて、上記した方法により、2×L/(M+N)、ホウ素原子の含有量、単体透過率、偏光度および耐湿熱性を測定ないし評価した。結果を表1に示した。
[比較例1]還元剤浴への浸漬(還元剤を含む処理液と接触させる工程)を省略し、かつ、得られる偏光フィルムにおけるホウ素原子の含有量および単体透過率が概ね実施例1と同様になるように、染色浴におけるヨウ素濃度およびヨウ化カリウム濃度、並びに、延伸浴におけるホウ酸濃度および温度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムを用いて、上記した方法により、2×L/(M+N)、ホウ素原子の含有量、単体透過率、偏光度および耐湿熱性を測定ないし評価した。結果を表1に示した。
[比較例2]還元剤浴におけるチオ硫酸ナトリウムの濃度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムを用いて、上記した方法により、2×L/(M+N)、ホウ素原子の含有量、単体透過率、偏光度および耐湿熱性を測定ないし評価した。結果を表1に示した。
Figure 0006655544

Claims (7)

  1. ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムであって、当該偏光フィルムの断面をラマン分光測定して得られる、フィルムの厚み方向中央部における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をLとし、フィルムの一方の面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をMとし、フィルムの他方の面から厚み方向に内部に厚みに対して10%進入した部分における310cm−1でのシグナル強度(Int310)と210cm−1でのシグナル強度(Int210)との比率(Int310/Int210)をNとした際に(但し、M≦Nである)、2×L/(M+N)が1.2以上である、偏光フィルム。
  2. 当該偏光フィルムに60℃、90%RHの条件で12時間放置する耐湿熱性試験を施したときに、試験前のクロスニコル状態における波長610nmでの吸光度(A)と試験後のクロスニコル状態における波長610nmでの吸光度(B)との比率(B/A)が0.12以上である、請求項1に記載の偏光フィルム。
  3. 厚みが30μm以下である、請求項1または2に記載の偏光フィルム。
  4. 単体透過率が40〜50%であり、偏光度が99%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
  5. ヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムの表面と還元剤を〜10質量%含む温度5〜50℃の処理液とを、0.1〜15秒間接触させる工程を含む、偏光フィルムの製造方法。
  6. 前記還元剤が、アスコルビン酸またはその塩、エリソルビン酸またはその塩、チオ硫酸塩および亜硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種類である、請求項5に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法である、請求項5または6に記載の製造方法。
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