以下に本発明について詳細に説明する。
偏光フィルムの色斑を検査するための本発明の方法は、光源、第1の基準偏光フィルム、検査対象となる偏光フィルム(検査偏光フィルム)および第2の基準偏光フィルムをこの順に配置し、第2の基準偏光フィルムの側より検査偏光フィルムの色斑を検査する。そして本発明の方法では、第1の基準偏光フィルムと第2の基準偏光フィルムのうちのいずれか一方の基準偏光フィルムの吸収軸の、検査偏光フィルムの吸収軸に対する角度を75度±10度とし、且つ、他方の基準偏光フィルムの吸収軸の、検査偏光フィルムの吸収軸に対する角度を105度±10度とする。
従来の検査方法では、基準偏光フィルムと検査偏光フィルムとは、それぞれの吸収軸のなす角度が0度や90度になるように配置されており、そのためレベルの弱い色斑は検出されにくかった。また、染色斑等の実用上は問題となりにくい色斑が強く検出されやすくなるため検出すべき色斑の検出が困難であった。これに対して、本発明の方法では、検査対象となる検査偏光フィルムの吸収軸に対して、一方の基準偏光フィルムの吸収軸を75度±10度の範囲内で傾けた状態にし、他方の基準偏光フィルムの吸収軸を105度±10度の範囲内で傾けた状態にして検査偏光フィルムの色斑を検査する点で従来の検査方法と異なっている。このような本発明の方法を採用することによって、従来の検査方法では検出されにくかった偏光フィルムの色斑を容易に検出することができる。
偏光フィルムの色斑を検査するための本発明の方法では、上記のとおり、第1の基準偏光フィルムと第2の基準偏光フィルムのうちのいずれか一方の基準偏光フィルムの吸収軸の、検査偏光フィルムの吸収軸に対する角度を75度±10度とし、且つ、他方の基準偏光フィルムの吸収軸の、検査偏光フィルムの吸収軸に対する角度を105度±10度とする。ここで検査偏光フィルムの吸収軸に対する各基準偏光フィルムの吸収軸の角度は、検査偏光フィルムの吸収軸に対して同一の回転方向の角度とする。すなわち、光源側に向かって見た際に(第2の基準偏光フィルムから第1の基準偏光フィルムに向かって見た際に)、一方の基準偏光フィルムの吸収軸の角度を検査偏光フィルムの吸収軸に対して左回りに75度±10度とした場合には、他方の基準偏光フィルムの吸収軸の角度は、検査偏光フィルムの吸収軸に対して上記と同じ左回りに105度±10度となるようにする。なお、偏光フィルムの吸収軸とは、偏光フィルムが光を吸収する方向を意味し、当該吸収軸は通常、偏光フィルム製造時の延伸方向に対応する。
図1では、本発明の方法における各基準偏光フィルムと検査偏光フィルムの配置の仕方の例を模式的に示しており、(a)は光源の上に第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムをこの順に載置し、これらを上方斜め手前より見た図であり、(b)は光源の上に第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムをこの順に載置し、これらを上方から見た場合の各偏光フィルムの吸収軸の関係を示した図である。なお(a)では、便宜上、各偏光フィルムの間の間隔を十分にあけた形で示している。図1では、第1の基準偏光フィルム2の吸収軸d1の、検査偏光フィルム3の吸収軸d0に対する角度θ1を75度±10度とし、且つ、第2の基準偏光フィルム4の吸収軸d2の、検査偏光フィルム3の吸収軸d0に対する角度θ2を105度±10度としている。
本発明の方法では、第1の基準偏光フィルムと第2の基準偏光フィルムのうちのいずれか一方の基準偏光フィルムの吸収軸の、検査偏光フィルムの吸収軸に対する角度を75度±10度とし、且つ、他方の基準偏光フィルムの吸収軸の、検査偏光フィルムの吸収軸に対する角度を105度±10度とするが、75度±10度とする方の角度は、色斑をより検出しやすくなることから、75度±8度とすることが好ましく、75度±5度とすることがより好ましく、75度±3度とすることが更に好ましい。同様に105度±10度とする方の角度についても、色斑をより検出しやすくなることから、105度±8度とすることが好ましく、105度±5度とすることがより好ましく、105度±3度とすることが更に好ましい。
本発明の方法では、光源、第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムをこの順に配置し、第2の基準偏光フィルムの側より検査偏光フィルムの色斑を検査する。検査偏光フィルムと各基準偏光フィルムとは互いに空間的に離れて配置されてもよいが、第1の基準偏光フィルムと検査偏光フィルムとが接していてもよいし、第2の基準偏光フィルムと検査偏光フィルムとが接していてもよい。第1の基準偏光フィルムと第2の基準偏光フィルムとの距離は、例えば30cm以下、10cm以下、更には5cm以下とすることができる。第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムは、各面が互いに略平行(例えば、0度±20度の範囲内、更には0度±10度の範囲内)になるように配置することが好ましい。
本発明の方法において使用される光源における発光体の種類に特に制限はなく、蛍光灯、LED照明、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ等を用いることができ、蛍光灯、LED照明が好ましい。
上記光源としては、検査対象領域全体を照射可能である点からは面光源を用いるのが好ましい。面光源とは、光を面状に発光させることのできる光源のことであり、例えば、発光体の上面に光拡散板などを設置して面状に均一に発光させる構成の光源や、導光板のエッジにライトを設置し、導光を面発光に変換させる構成の光源等を挙げることができる。
面光源の輝度は、色斑をより検出しやすくするなどの観点から、10,000cd/m2以上であることが好ましく、12,000cd/m2以上であることがより好ましく、15,000cd/m2以上であることが更に好ましい。当該輝度の上限に特に制限はないが、当該輝度は例えば100,000cd/m2以下、更には50,000cd/m2以下とすることができる。
本発明の方法によって検査偏光フィルムの色斑の有無や色斑の程度などを検査することができる。当該色斑の検査は、光源から第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムの順に透過した透過光を目視で観察することにより行うこともできるが、当該透過光を撮影手段によって撮影すれば、得られる検査偏光フィルム面内の各位置における透過光の輝度データを定量的に解析したり記録したりすることができ好ましい。当該輝度データの解析は、例えばコンピュータによる画像処理システムなどを用いて行うことができる。当該輝度データは、必要によって解析処理をした後に、各種ディスプレイやプロジェクタ等の表示手段によって表示した上で、色斑の有無や程度などを検査することができる。
また本発明の方法において、光源としてライン状のものを用いた上で、検査偏光フィルムを当該検査偏光フィルムの面に対して平行な方向に移動させることも好ましい。ここで、検査偏光フィルムの移動方向は、検査偏光フィルムの吸収軸方向に対して略垂直(例えば、90度±20度の範囲内、更には90度±10度の範囲内)な方向とするのが好ましい。偏光フィルムはその吸収軸方向に平行な線状の色斑を有することが多いが、上記のような移動方向を採用すればこのような線状の色斑をより検出しやすくなる。ライン状の光源はその長手方向が偏光フィルムの移動方向に対して略垂直(例えば、90度±20度の範囲内、更には90度±10度の範囲内)になるように配置することが好ましい。
ライン状の光源を用いる上記の場合において、第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムを介して、当該ライン状の光源に対向するようにライン状の撮影手段(ラインカメラ等)を配置し、当該ライン状の光源から第1の基準偏光フィルム、検査偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムの順に透過した透過光を、当該ライン状の撮影手段によって好ましくは連続的に撮影すれば、得られる検査偏光フィルム面内の各位置における透過光の2次元的な輝度データを定量的に解析したり記録したりすることができ好ましい。得られた輝度データは、例えばコンピュータによる画像処理システムなどを用いて解析を行うことができる。
ライン状の光源を用いる上記の方法を採用すると、検査偏光フィルムの移動方向での光源の輝度が一定となるため、ライン状の光源の長手方向における光源由来の一次元的な輝度分布のみを考慮すれば済むようになる。そのため、通常の面光源を使用した場合などにおける光源に起因する2次元的な輝度むらを除外することができ、本来得るべき検査偏光フィルムの色斑に基づく輝度データを容易に取得することができる。
具体的には、ライン状の撮影手段によって撮影することにより得られた検査偏光フィルム面内の各位置における輝度データから、ライン状の光源の長手方向における光源由来の輝度分布を差し引くことにより、本来得るべき検査偏光フィルムの色斑に基づく輝度データを容易に得ることができる。ここで当該光源由来の輝度分布は、例えば以下のようにして得ることができる。
すなわち、検査偏光フィルムの移動方向に連続する特定区間(例えば0.1〜5mの長さの区間)を定め、検査偏光フィルムの移動方向に対して垂直な方向のそれぞれの位置で、上記特定区間での輝度データの平均値を求めることで、ライン状の光源の長手方向における光源由来の一次元的な輝度分布を得ることができる。
ライン状の撮影手段によって撮影することにより得られた検査偏光フィルム面内の各位置における輝度データより、上記のようにして得られた光源由来の輝度分布を差し引いた後、さらにノイズ除去を行うのが好ましい。当該ノイズ除去の方法としては、例えば、検査偏光フィルムの移動方向で近似曲線を作成し、当該近似曲線との差(輝度偏差)を求める方法、検査偏光フィルムの移動方向に連続する特定個数(例えば5〜30個)のデータを平均して当該連続する特定個数のデータのうちの1つのデータとする方法(移動平均化)などが挙げられ、これらのうちの1つまたは2つ以上を採用することができる。ノイズ除去を行う前には、検査偏光フィルムの移動方向に対して垂直な方向における連続する特定区間(例えば1〜10cmの長さの区間)で平均化し、検査偏光フィルムの移動方向を横軸に、当該平均化した値を縦軸にしたグラフを作成し、当該グラフについて、上記のノイズ除去を行うのが好ましい。
上記のようにしてノイズ除去を行った後、得られるピーク間距離や輝度偏差などを用いて色斑指数を定義するなどすれば、検査偏光フィルムの色斑を定量的に評価することができる。
本発明において検査対象となる検査偏光フィルムとしては、例えば、PVAフィルムを一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素や二色性有機染料等の二色性色素が吸着しているものが挙げられる。また、本発明において使用される第1の基準偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムのうちのいずれか一方、好ましくはその両方についても、PVAフィルムを一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素や二色性有機染料等の二色性色素が吸着しているものを用いることができる。
上記PVAフィルムを構成するPVAとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。上記のビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手の容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(H2C=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
上記のポリビニルエステルは、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたものがより好ましいが、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記のビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸またはその塩などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステルに占める上記他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。
上記のPVAとしてはグラフト共重合がされていないものを好ましく使用することができるが、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、PVAは1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合は、ポリビニルエステルおよびそれをけん化することにより得られるPVAのうちの少なくとも一方に対して行うことができる。上記グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリビニルエステルまたはPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルまたはPVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
上記のPVAはその水酸基の一部が架橋されていてもよいし、架橋されていなくてもよい。また上記のPVAはその水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
上記のPVAの重合度は特に制限されないが、1,000以上であることが好ましい。PVAの重合度が1,000以上であることにより、得られる偏光フィルムの偏光性能をより一層向上させることができる。PVAの重合度はあまりに高すぎるとPVAの製造コストの上昇や製膜時における工程通過性の不良につながる傾向があるので、PVAの重合度は1,000〜10,000の範囲内であることがより好ましく、1,500〜8,000の範囲内であることが更に好ましく、2,000〜5,000の範囲内であることが特に好ましい。なお本明細書でいうPVAの重合度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
PVAのけん化度は得られる偏光フィルムの耐湿熱性が良好になることから、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、99.3モル%以上であることが特に好ましい。なお本明細書におけるPVAのけん化度とはPVAが有するけん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
PVAフィルムは上記したPVAと共に可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性の向上等を図ることができる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく用いられ、具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらのうちでもPVAフィルムの延伸性がより良好になることからグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましく、3〜17質量部であることがより好ましく、4〜14質量部であることが更に好ましい。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して2質量部以上であることによりPVAフィルムの延伸性が向上する。一方、PVAフィルムにおける可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して20質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に可塑剤がブリードアウトしてPVAフィルムの取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
また、PVAフィルムを後述するPVAフィルムを製造するための製膜原液を用いて製造する場合には、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に金属ロールやベルトを使用した際、これらの金属ロールやベルトからのPVAフィルムの剥離が容易になることから、当該製膜原液中に界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤が配合された製膜原液からPVAフィルムを製造した場合には、当該PVAフィルム中には界面活性剤が含有され得る。PVAフィルムを製造するための製膜原液に配合される界面活性剤、ひいてはPVAフィルム中に含有される界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点から、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが好適である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが好適である。
これらの界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
PVAフィルムを製造するための製膜原液中に界面活性剤を配合する場合、製膜原液中における界面活性剤の含有量、ひいてはPVAフィルム中における界面活性剤の含有量は製膜原液またはPVAフィルムに含まれるPVA100質量部に対して0.01〜0.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.02〜0.3質量部の範囲内であることがより好ましい。界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.01質量部以上であることにより製膜性および剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.5質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
PVAフィルムはPVAのみからなっていても、あるいはPVAと上記した可塑剤および/または界面活性剤のみからなっていてもよいが、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤など、上記したPVA、可塑剤および界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。
PVAフィルムにおける、PVAの含有率は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、85〜100質量%の範囲内であることが更に好ましい。
PVAフィルムの厚みは特に制限されないが、あまりに厚すぎると偏光フィルムを製造する際の乾燥が速やかに行われにくくなり、一方、あまりに薄すぎると偏光フィルムを製造する際の一軸延伸時にフィルムの破断が生じやすくなることから、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、12μm以上であることが特に好ましく、また、150μm以下であることが好ましく、120μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
PVAフィルムの形状に特に制限はないが、偏光フィルムを生産性良く連続的に製造することができることから、長尺のフィルムであることが好ましい。当該長尺のフィルムの長さは特に制限されないが、より均一なPVAフィルムを連続して円滑に製造することができると共に、それを用いて偏光フィルムを製造する場合においても連続して使用することができることから、5〜50,000mの範囲内であることが好ましく、100〜20,000mの範囲内であることがより好ましい。当該長尺のフィルムの幅は特に制限されず、例えば50cm以上とすることができるが、近年、液晶テレビやモニターが大画面化しているので、それらに有効に用い得るようにするために、1m以上であることが好ましく、2m以上であることがより好ましく、4m以上であることが更に好ましい。また、現実的な生産機で偏光フィルムを製造する場合に、フィルムの幅があまりに広すぎると均一な一軸延伸が困難になることがあるため、PVAフィルムの幅は8m以下であることが好ましい。
PVAフィルムの形態に特に制限はなく、単層の形態であっても、あるいは、例えば熱可塑性樹脂フィルム上にコート法などによって形成されたPVAフィルムのように積層体の形態であっても、どちらでもよいが、積層(コート等)作業の煩雑さ・熱可塑性樹脂フィルムのコストなどの観点から単層の形態が好ましい。
PVAフィルムの製造方法は特に限定されず、製膜後のフィルムの厚みおよび幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができ、例えば、PVAフィルムを構成する上記したPVA、ならびに必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤および他の成分のうちの1種または2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、ならびに必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、他の成分および液体媒体のうちの1種または2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、界面活性剤および他の成分のうちの少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によっても異なるが、50〜95質量%の範囲内であることが好ましく、55〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、60〜85質量%の範囲内であることが更に好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。
上記した製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられ、キャスト製膜法、押出製膜法が好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でも押出製膜法が、厚みおよび幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることからより好ましい。PVAフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
上記した製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられ、キャスト製膜法、押出製膜法が好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でも押出製膜法が、厚みおよび幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることからより好ましい。PVAフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
上記のPVAフィルムを原反として用いて製造される偏光フィルムを本発明における検査対象とすることができる。また、上記のPVAフィルムを原反として用いて本発明において使用される第1の基準偏光フィルムおよび/または第2の基準偏光フィルムを製造することができる。上記のPVAフィルムを原反として用いて偏光フィルムを製造するには、例えば、上記のPVAフィルムを用いて、膨潤処理、染色処理、延伸処理、および必要に応じて更に、架橋処理、固定処理、乾燥処理、熱処理などを施すことにより偏光フィルムを製造することができる。この場合、膨潤処理、染色処理、延伸処理、固定処理などの各処理の順序は特に制限されず、1つまたは2つ以上の処理を同時に行うこともできる。また、各処理の1つまたは2つ以上を2回またはそれ以上行うこともできる。
膨潤処理は、PVAフィルムを水中に浸漬することにより行うことができる。水中に浸漬する際の水の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、22〜38℃の範囲内であることがより好ましく、25〜35℃の範囲内であることが更に好ましい。また、水中に浸漬する時間としては、例えば、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。なお、水中に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
染色処理は、ヨウ素系色素を二色性色素として用いて行うのがよく、染色の時期としては、延伸処理前、延伸処理時、延伸処理後のいずれの段階であってもよい。染色はPVAフィルムを染色浴としてヨウ素−ヨウ化カリウムを含有する溶液(特に水溶液)中に浸漬させることにより行うのが一般的であり、本発明においてもこのような染色方法が好適に採用される。染色浴におけるヨウ素の濃度は0.01〜0.5質量%の範囲内であることが好ましく、ヨウ化カリウムの濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、染色浴の温度は20〜50℃、特に25〜40℃とすることが好ましい。
なお、染色に用いる二色性色素として二色性有機染料(例えば、DirectBlack 17、19、154;DirectBrown 44、106、195、210、223;DirectRed 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;DirectBlue 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;DirectViolet 9、12、51、98;DirectGreen 1、85;DirectYellow 8、12、44、86、87;DirectOrange 26、39、106、107などの二色性染料)を用いてもよい。二色性色素は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
架橋処理は、PVAフィルムを架橋剤を含む水溶液中に浸漬することにより行うことができる。架橋処理を行うと、PVAフィルムに架橋が導入され、比較的高い温度かつ湿式で延伸処理を行う際にPVAが水へ溶出するのを効果的に防止することができる。このような観点などから、架橋処理は染色処理の後に行うのが好ましい。使用される架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度は1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2〜7質量%の範囲内であることがより好ましい。架橋剤を含む水溶液はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋剤を含む水溶液の温度は、20〜50℃の範囲内であることが好ましく、25〜40℃の範囲内であることがより好ましい。
延伸処理は、湿式延伸法または乾熱延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した染色浴中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。これらの中でも、湿式延伸法が好ましく、ホウ酸を含む水溶液中で一軸延伸するのがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5〜6.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5〜4.0質量%の範囲内であることが特に好ましい。また、ホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01〜10質量%の範囲内にすることが好ましい。
延伸処理における延伸温度は特に限定されないが、湿式延伸法の場合は、30〜90℃の範囲内であることが好ましく、40〜70℃の範囲内であることがより好ましく、45〜65℃の範囲内であることが更に好ましく、乾熱延伸法の場合は、50〜180℃の範囲内であることが好ましい。
また、延伸処理における延伸倍率(多段で一軸延伸を行う場合は各延伸倍率を掛け合わせた合計の延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点からフィルムが切断する直前までできるだけ延伸することが好ましく、具体的には4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、5.5倍以上であることが更に好ましい。延伸倍率の上限はフィルムが破断しない限り特に制限はないが、均一な延伸を行うためには8倍以下であることが好ましい。なお、本明細書における延伸倍率は延伸前のフィルムの長さに基づくものであり、延伸をしていない状態が延伸倍率1倍に相当する。
延伸後のフィルム(偏光フィルム)の厚みは、3〜35μm、特に5〜30μmであることが好ましい。
長尺のPVAフィルムを延伸する場合における延伸方向に特に制限はなく、長さ方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られることから長さ方向への一軸延伸が好ましい。長さ方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
偏光フィルムの製造に当たっては、フィルムへの二色性色素の吸着を強固にするために固定処理を行うことが好ましい。固定処理は、ホウ酸、硼砂等のホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を固定処理浴に用いて、これにフィルムを浸漬することにより行うことができる。固定処理浴中には、必要に応じてヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴におけるホウ素化合物の濃度は、一般に2〜15質量%、特に3〜10質量%程度であることが好ましい。固定処理浴の温度は、15〜60℃、特に25〜40℃であることが好ましい。
乾燥処理(熱処理)は、30〜150℃の範囲内、特に50〜140℃の範囲内で行うことが好ましい。上記範囲内の温度で乾燥処理(熱処理)を行うことで、寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすく、また偏光性能の低下を効果的に抑制できる。
以上のようにして得られた偏光フィルムをそのまま本発明における検査対象とすることができるが、当該偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムが貼り合わされた偏光板の形態のものを本発明における検査対象とすることが好ましい。また、以上のようにして得られた偏光フィルムをそのまま本発明における第1の基準偏光フィルムおよび/または第2の基準偏光フィルムとして使用することができるが、当該偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムが貼り合わされた偏光板の形態のものを本発明における第1の基準偏光フィルムおよび/または第2の基準偏光フィルムとして使用することが好ましい。第1の基準偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムはいずれも偏光板の形態であることがより好ましい。
上記の保護フィルムとしては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、保護フィルムを貼り合わせるための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などが挙げられ、そのうちでもPVA系接着剤が好ましい。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
[製造例]検査偏光フィルムの製造
ポリ酢酸ビニルをけん化して得られたPVAとグリセリンとを含むPVAフィルム原反(PVAの重合度2,400、PVAのけん化度99.9モル%、グリセリンの含有量12質量%、厚み60μm、幅65cm、ロール形状(長さ1,000m))に、膨潤、染色、架橋、延伸、固定、乾燥の各処理を施して偏光フィルムを作製した。
なお、膨潤処理として、PVAフィルムを蒸留水(温度:30℃)中に1分間浸漬し、その間に延伸倍率2倍で延伸した。また染色処理として、ヨウ素系色素を含有する水溶液(使用されるヨウ素の濃度:0.05質量%、使用されるヨウ化カリウムの濃度:1.2質量%、温度:30℃)中に2分間浸漬し、その間に延伸倍率1.2倍で延伸した。更に架橋処理として、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.6質量%、温度:30℃)中に2分間浸漬し、その間に延伸倍率1.1倍で延伸した。続いて、延伸処理として、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.8質量%、ヨウ化カリウム濃度:5質量%、温度:57℃)中で延伸倍率2.4倍に一軸延伸した(全延伸倍率は6.3倍)。更に固定処理として、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:1.5%、ヨウ化カリウム濃度:5%、温度:22℃)中に10秒間浸漬した。最後に乾燥処理として、延伸されたPVAフィルムを60℃で1分間乾燥して偏光フィルムを得た。
次に、得られた偏光フィルムの両面にTACフィルム(厚み80μm)をPVA水溶液を接着剤として貼り合わせ、70℃で3分間乾燥させ、偏光板の形態の検査偏光フィルムを得た。
[実施例1、2および比較例1〜3]
(1)目視による色斑の検査(視認性)
暗室内で、図1に示したように、面光源(電通産業株式会社製、DSK−7040HF45W18−LC50K−FF−KU)の上に第1の基準偏光フィルム(偏光板の形態のもの;単体透過率43%)、製造例で製造した検査偏光フィルム、および、第2の基準偏光フィルム(偏光板の形態のもの;単体透過率43%)をこの順に載置した。そして、検査偏光フィルムの吸収軸に対する第1の基準偏光フィルムの吸収軸の角度(θ1)および検査偏光フィルムの吸収軸に対する第2の基準偏光フィルムの吸収軸の角度(θ2)がそれぞれ表1に示した値になるように、第1の基準偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムの角度をそれぞれ調整した。
次に、面光源から光(輝度20,000cd/m2)を照射し、検査偏光フィルムの真上(検査偏光フィルムより1mの高さ)から目視によって観察し、検査偏光フィルムの色斑の視認性を以下の基準に基づいて官能評価した。結果を表1に示した。
◎:目立つ色斑が視認される。
○:色斑が視認されるが、目立ちにくい。
×:色斑が視認されにくい。
(2)ラインカメラを用いた色斑の検査(色斑指数)
図2に示したように、ライン状の光源(株式会社住田光学ガラス製、伝送ライト:TF−750CL、メタルハライド光源:LS−M210)をその長手方向が水平で光が水平方向手前側に照射されるように設定し、当該ライン状の光源から手前側に向かって、第1の基準偏光フィルム(偏光板の形態のもの;単体透過率43%)、第2の基準偏光フィルム(偏光板の形態のもの;単体透過率43%)、および、ラインカメラ(コアテック株式会社製、CLC−3M575CL−TC54)をこの順に配置した。なお、各基準偏光フィルムは一方の面が水平方向手前側に向くように垂直に配置した。また、ラインカメラはその長手方向がライン状の光源の長手方向に対応し、且つ、ライン状の光源に対向するように配置した。
また、巻き出しロールから巻き出された検査偏光フィルムが第1の基準偏光フィルムと第2の基準偏光フィルムの間を移動して巻き取りロールに巻き取ることができるように、上方側に巻き出しロールおよび下方側に巻き取りロールをそれぞれ配置した。ここで、移動する検査偏光フィルムの面と両方の基準偏光フィルムの面とが平行になり、且つ、検査偏光フィルムの移動方向がライン状の光源およびラインカメラの長手方向に対して垂直になるように(検査偏光フィルムが下方に移動するように)した。
次いで、上記の巻き出しロールに幅50cm、長さ3mにカットしたダミーフィルム(PETフィルム)の一方の短辺(50cmの辺)を貼り付けた。巻き取りロールにも同様に、幅50cm、長さ3mにカットした別のダミーフィルム(PETフィルム)の一方の短辺(50cmの辺)を貼り付けた。そして、これらのダミーフィルムの間に製造例で製造した検査偏光フィルム(吸収軸方向に50cmにカットした全幅の検査偏光フィルム)が配置されるように、各ダミーフィルムにおけるロールに貼り付けていない方の短辺に検査偏光フィルムの50cmの辺を貼り付けた。その後、巻き出しロールにダミーフィルム、検査偏光フィルムおよびダミーフィルムをこの順に手動で巻き取った。
次に、検査偏光フィルムの吸収軸に対する第1の基準偏光フィルムの吸収軸の角度(θ1)および検査偏光フィルムの吸収軸に対する第2の基準偏光フィルムの吸収軸の角度(θ2)がそれぞれ表1に示した値になるように、第1の基準偏光フィルムおよび第2の基準偏光フィルムの角度をそれぞれ調整した。
そして、ライン状の光源から光が照射された状態で、巻き出しロールから巻き取りロールに向かって、ダミーフィルム、検査偏光フィルムおよびダミーフィルムをこの順番で5m/分の速度で移動させ、検査偏光フィルムがライン状の光源とラインカメラの間を通過している際にラインカメラで画像撮影した。
得られた画像を検査偏光フィルム面内の位置に対応する2次元の輝度データに変換し、検査偏光フィルムの吸収軸方向および幅方向のそれぞれに対して0.5mmピッチで輝度データを得た。次に得られた輝度データからラインカメラの長手方向におけるラインカメラ由来の一次元的な輝度分布を求め、これを上記の輝度データから差し引くことにより、2次元的な輝度偏差データ(1)を得た。ここでラインカメラ由来の輝度分布は次のようにして求めた。すなわち、輝度データの移動方向に連続する25cmの区間を定め、検査偏光フィルムの移動方向に対して垂直な方向(ラインカメラの長手方向)のそれぞれの位置で上記連続する25cmの区間での輝度データの平均値を求めることで、ラインカメラ由来の一次元的な輝度分布を得た。
上記で得られた2次元的な輝度偏差データ(1)より、検査偏光フィルムの移動方向に対して垂直な方向に20mmの長尺の区間(検査偏光フィルムの移動方向の長さは上記ラインカメラ由来の一次元的な輝度分布を求める際に定めた25cm)を選定し、検査偏光フィルムの移動方向のそれぞれの位置で検査偏光フィルムの移動方向に対して垂直な方向に20mm分の輝度偏差データを平均し、検査偏光フィルムの移動方向を横軸に、平均化した値を縦軸にした、一次元的な輝度偏差データ(2)のグラフを得た。このグラフから3次の多項式近似曲線を求め、その差分を輝度偏差データ(3)のグラフとした。次に、当該輝度偏差データ(3)のグラフから10点移動平均化した輝度偏差データ(4)のグラフを得た。ここで10点移動平均化は、検査偏光フィルムの移動方向(グラフの横軸方向)に連続する各10点の輝度偏差データ(3)を対象とし、一方の端より5点目を10点移動平均化するための基準点として10点の平均値を当該5点目の輝度偏差データとすることにより行った。
上記で得られた輝度偏差データ(4)のグラフにおいて、検査偏光フィルムの移動方向(グラフの横軸方向)に5mmピッチで5点(合計2cmの区間)を抽出して、当該5点における輝度偏差データ(4)を一方の端よりa1、a2、a3、a4およびa5とした際に、a1<a2<a3>a4>a5となるような当該a3を与える検査偏光フィルムの移動方向(グラフの横軸方向)の位置を明ピーク地点とし、a1>a2>a3<a4<a5となるような当該a3を与える検査偏光フィルムの移動方向(グラフの横軸方向)の位置を暗ピーク地点とし、当該明ピークおよび暗ピークを含め隣接するピーク間の距離が40mm以下であるピークにおける両輝度偏差データ(4)の差の最大値を、その検査偏光フィルムの色斑指数とした。結果を表1に示した。