JP6611338B2 - 成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法に関する。
飲料用アルミニウム缶の缶ボディには、JIS3004(AA3004)またはJIS3104合金などの、Al−Mn系合金硬質板が用いられている。同合金硬質板には、飲料用の容器として使用するために必要な強度や耐食性、美麗な外観、優れた成形性などが要求される。
前記合金硬質板は、一般的なアルミニウム合金板と同様に、溶解・鋳造・均質化・熱間圧延・冷間圧延等の工程を経て製造される。そして通常、缶ボディ各部の強度や成形性のバランスが最適な3/4硬質〜特硬質に調質されている。即ち、アルミニウム合金板を圧延途中に一旦再結晶させ、軟質状態とした後、圧下率50〜90%程度の冷間圧延を行い、主として加工硬化により適度な強度としている。
最近の工業的な冷間圧延機を用いてアルミニウム合金板を圧延した場合、圧延による発熱で材料温度が高くなるため、圧延のままでも十分な延性が得られる。従って、通常、アルミニウム合金板は圧延のままの調質(H16〜H19)で用いられている。アルミニウム合金板の圧延速度が遅い場合など十分な延性が得られない場合には、安定化焼鈍を施して、H3X調質でアルミニウム合金板を用いることも考えられる。
しかし、アルミニウム合金の圧延板の機械的性質に異方性があると、缶ボディを成形する際の成形性を阻害したり、成形後の缶ボディの対称性が低下したり、材料の使用歩留まりが低下するなどの問題がある。圧延板の異方性は、結晶粒の方位分布(集合組織)に依存する。そこで、冷間圧延による集合組織の変化を考慮し、冷間圧延前の再結晶で生じる集合組織を制御することにより、アルミニウム合金圧延板の異方性を低減することが可能になると考えられる。
上述の観点から、アルミニウム合金圧延板の異方性を制御するために、冷間圧延前の再結晶をどのように制御するかが技術的に重要であり、この観点から、薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法は、以下の3種に分類することができる。
(1)熱間圧延→再結晶→最終冷延
第1の方法は、熱間圧延で比較的薄肉の例えば3mm以下のアルミニウム合金板材に圧延し、熱間圧延後、コイルに巻取った状態でそのまま再結晶させ、あるいは、人工的に焼鈍を施して再結晶させた後、冷間圧延を行う方法である。
(2)熱間圧延→低圧下冷延→再結晶→最終冷延
第2の方法は、熱間圧延で比較的薄肉の例えば3mm以下のアルミニウム合金板材に圧延し、その後比較的低圧下の、例えば以下の特許文献1に記載のように、アルミニウム合金板材に6〜15%の冷間圧延を行った後、焼鈍を施し、再結晶させた後、最後に圧下率90%程度の最終冷間圧延を実施する方法である。
(3)熱間圧延→冷間圧延→連続焼鈍炉を用いた再結晶→比較的低圧下の最終冷延
第3の方法は、アルミニウム合金板材の熱間圧延後、第一冷間圧延を行い、その後、連続焼鈍炉を用いて、比較的高温に急速加熱し、その後急速冷却する焼鈍を行い、再結晶させた後、最後に比較的低圧下率の例えば60%程度の冷間圧延を行う方法である。
上述の製造方法の他に、アルミニウム合金のスラブに対し熱間粗圧延と熱間仕上げ圧延を行うに際し、熱間粗圧延の開始温度を規定し、厚み200mm〜150mmの各パスの圧下量と150mm〜15mmの各段階の温度制御により再結晶を促進し、熱間仕上げ圧延における最終パスまでの温度制御、上がり温度、上がり板厚を制御することでDI缶のDI加工時の成形性と塗装焼付け後の成形性に優れさせたアルミニウム合金板の製造方法が知られている(特許文献2参照)。
また、アルミニウム合金鋳塊に対し熱間圧延後に80%以上の圧延率で冷間圧延し、冷間圧延後の出側温度が140〜150℃の場合に110℃まで5℃/時間以下の冷却速度を選択し、出側温度が150〜180℃の場合に110℃まで30℃/時間以下の冷却速度で冷却する容器用アルミニウム合金板の製造方法が知られている(特許文献3参照)。
特許第3644819号公報 特許第3644818号公報 特許第3748438号公報
ところで、アルミニウム缶に対する低価格化の要求は厳しく、このため材料使用量を出来るだけ低減する試みが続けられている。しかし、素材板厚を薄くすると、成形性と異方性をバランスさせることが難しくなるので、成形性と異方性を良好にバランスさせるという要望が高くなっている。
例えば、アルミニウム合金板の異方性を制御するには、タンデム式の熱間仕上げ圧延機を用いることが有効であるが、シングルリバース式の熱間仕上げ圧延機では十分な立方晶方位を得ることが容易ではなく、異方性の制御が難しいという問題がある。
また、先に記載の(1)の方法と(2)の方法を比較すると、(2)に記載の方法では、(1)に記載の方法に比べて比較的低圧下の冷間圧延という処理が追加されるが、この冷間圧延処理により焼鈍時の立方体集合組織の発達を促進できる利点を有する。
本発明者らは、シングルリバース式の熱間仕上げ圧延機を用いて薄肉飲料缶用アルミニウム合金板を製造する条件について種々研究を重ねた結果、熱間圧延条件を制御し、さらに冷間圧延および中間焼鈍条件を制御することにより、成形性を確保しつつ異方性の制御も実現できる製造方法を見出し、本願発明に到達した。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法の提供を目的とする。
本発明の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法は、質量%で、Si:0.35%以下、Fe:0.35〜0.55%、Cu:0.15〜0.48%、Mn:0.8〜1.15%、Mg:0.60〜1.60%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を溶製し、半連続鋳造して得た鋳塊を均質化処理および均熱処理を経て出側材料温度を400〜460℃とする熱間粗圧延により熱間粗圧延板とした後、1パス目出側温度を380℃以下、2パス目出側温度を340℃以下、3パス目出側仕上げ温度を240〜300℃とする熱間仕上げ圧延により板厚2〜4mmの熱間仕上げ圧延板を得た後、圧下率30〜59%で第1冷間圧延を行い、次いで連続焼鈍装置を用いて保持温度300〜400℃、保持時間5〜30秒の条件で第1中間焼鈍を行い、次いで圧下率5〜20%の第2冷間圧延を行い、その後、保持温度320〜380℃、保持時間2〜6時間のバッチ焼鈍を行い、続いて圧下率70〜90%で板厚0.200〜0.280mmとなるまで最終冷間圧延を行って塗装焼付け後の耐力230〜320N/mmのアルミニウム合金板を得ることを特徴とする成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
本発明の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法において、前記組成に対し、更に、Cr:0.05%以下、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下のうち、少なくとも1種または2種以上を含有してなるアルミニウム合金を用いることができる。
本発明の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法において、前記均質化処理を555〜605℃の温度範囲で4〜10時間行い、前記均熱処理を500〜555℃の温度範囲で1時間以上行うことが好ましい。
本発明の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法において、前記冷間圧延後、保持温度120〜140℃、保持時間2〜4時間の条件で最終安定化焼鈍を行うことが好ましい。
本発明の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法は、SiとFeとCuとMnとMgを特定範囲含有した組成のアルミニウム合金を溶製し、熱間粗圧延により出側材料温度400〜460℃として圧延板を得た後、1〜3パスを規定の出側温度に制御する熱間仕上げ圧延を施し、特定条件の第1冷間圧延と連続焼鈍と第2冷間圧延とバッチ焼鈍と最終冷間圧延を施して板厚0.200〜0.280mmとすることにより、成形性と異方性の両方に優れた薄肉飲料缶用アルミニウム合金板を提供することができる。
また、最終冷間圧延後に保持温度、保持時間を制御した安定化焼鈍を行うことにより、成形性と異方性に更に優れた薄肉飲料缶用アルミニウム合金板を提供できる。
本発明に係る製造方法を実施する際に、熱間圧延工程において用いる装置と工程を示す説明図。 連続焼鈍装置の一例を示す構成図。 DI缶の製造方法の一例を示す工程図。 DI缶の一例を示す部分断面図。
以下、本発明に係る薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の各実施形態について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
初めに、本実施形態で用いる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の組成について説明する。
本実施形態の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板は、質量%で、Si:0.35%以下、Fe:0.35〜0.55%、Cu:0.15〜0.48%、Mn:0.80〜1.15%、Mg:0.60〜1.60%以下を含有し、残部不可避的不純物とAlからなる組成のアルミニウム合金からなる。また、前記組成比のアルミニウム合金に、更に、Cr:0.05%以下、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下のうち、1種または2種以上を含有させたアルミニウム合金を用いても良い。
以下、本実施形態で使用するアルミニウム合金の組成限定理由について説明する。
なお、本明細書において記載する各元素の含有量は、特に限定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。例えば0.35〜0.55%とする表記は0.35%以上0.55%以下を意味する。
「Si:0.35%以下」
Siは、同時に含有するMgと化合物を形成し易く、固溶硬化作用、分散硬化作用および析出硬化作用を有する他、Al、Mn、Feなどと化合物を形成し、成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Siの含有量は、0.35質量%を越えると加工性が劣化する傾向がある。
「Fe:0.35〜0.55%」
Feは、結晶粒の微細化および成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Feの含有量は、0.35質量%未満では所望の効果が得られず、0.55質量%を越えると加工性を劣化させる。
「Cu:0.15〜0.48%」
Cuは、Mgと化合物を形成し易く、固溶硬化、分散硬化および析出硬化に寄与する。
Cuの含有量は、0.15質量%未満では所望の効果が得られず、0.48質量%を越えると加工性を劣化させる。
「Mn:0.8〜1.15%」
Mnは、Fe、Si、Alなどと化合物を形成し易く、晶出相および分散相となって分散硬化作用を現すと共に成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Mnの含有量は、0.8質量%未満では所望の硬化特性が得られず、1.15質量%を越えると加工性が劣化する。
「Mg:0.60〜1.60%」
Mgは、固溶体強化作用を有し、圧延による加工硬化性を高めるとともに、前記Siや前記Cuと共存することによって分散硬化と析出硬化作用を現す。Mgの含有量は、0.60質量%未満では所望の効果が得られず、1.60質量%を越えると加工性を劣化させるようになる。
本実施形態で用いるアルミニウム合金において、前記Si、Fe、Cu、Mn、Mgの主要成分に加え、以下のCr、Zn、Tiのいずれか1種または2種以上を含有しても良い。
「Cr:0.05%以下」
Crは結晶の微細化と成形加工時にダイスに対する焼き付きを防止する効果を発揮する。Crの含有量は、0.05質量%を越えると加工性が劣化する。
「Zn:0.25%以下」
ZnはMg、Si、Cuの析出物を微細化する作用を有する。Znの含有量は、0.25質量%を越えると加工性と耐食性を劣化させる。
「Ti:0.10%以下」
Tiは、結晶粒を微細化して加工性を改善する効果がある。ただし、Tiの含有量は0.10質量%を越えると粗大な化合物を生成し、逆に加工性を劣化させる。
<缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法>
次に、本実施形態に係る成形性と異方性に優れた薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
本実施形態の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法においては、前記組成のアルミニウム合金を溶製し、鋳造して得た鋳塊に対して均質化処理、均熱処理を施した後、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延による熱間圧延を行い、第1冷間圧延と連続焼鈍と第2冷間圧延とバッチ焼鈍を施し、さらに圧下率70〜90%の最終冷間圧延を行うことにより所望の板厚の薄肉飲料缶用アルミニウム合金板を得る。
更に、前記の工程に加え、最終冷間圧延後に保持温度120〜140℃、保持時間2〜4時間の条件で安定化焼鈍を行うこともできる。
以下、本実施形態の成形性と異方性に優れた薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法について工程順に説明する。
「鋳造」
前記組成のアルミニウム合金を溶解後、常法に従ってアルミニウム合金溶湯から鋳塊を鋳造するが、鋳造に先立ち、アルミニウム合金を溶製した際に、水素ガスや酸化物などの介在物を除去し、半連続鋳造法により鋳塊を得る。
このときの凝固速度は通常、5〜20℃/秒とされる。鋳造された鋳塊の厚さは、例えば500〜600mm程度とすることができる。
次に、面削を行い、鋳塊の表面を1〜25mm程度切削し、面削体を作製する。なお面削は後述する均質化処理の後に行っても良い。
「均質化処理」
次に、作製した面削体に均質化処理を施す。均質化処理は一般に、溶湯の凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、凝固によって形成された準安定相の平衡相への転移などのために行われる。
均質化処理においては、均質化温度を555〜605℃の範囲内とすることが重要である。均質化温度が555℃未満では後述の連続焼鈍の効果が得られず、後述の熱間圧延工程や第1冷間圧延工程においてクラックが発生し易く、最終板材の耳率が高くなる。また、均質化温度が605℃を超えると、鋳塊が溶融するおそれがある。
均質化処理において、面削体は100℃/時以下の加熱速度で均質化温度まで加熱することが好ましい。加熱速度が100℃/時を超えると、部分的に溶融を生じるおそれがある。
また、均質化処理において、均質化温度に保持する時間(均質化時間)は4時間以上10時間以下とすることが好ましい。均質化時間が4時間未満では、均質化が充分に進行しない場合がある。しかし、均質化時間が長すぎても効果はなく生産効率が低下する。以上の観点から、好ましい均質化時間は4〜10時間の範囲内である。この均質化処理は、均質化時間が比較的長いので、通常、バッチ方式の炉中に置くことで行われる。
本実施形態において、均質化処理の後さらに面削体を500〜555℃まで冷却し、所定時間保持する均熱処理後、熱間圧延を開始する。500〜555℃の温度範囲での保持時間(均熱時間)は、1時間以上、例えば1〜10時間程度行うことができる。
「熱間圧延」
熱間圧延は、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延からなり、本実施形態においては、シングルリバース式熱間仕上圧延機を使用して熱間仕上げ圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延工程においては、図1に示すように、熱間粗圧延機20を用いて板厚20〜16mm程度まで熱間粗圧延した後、熱間仕上圧延機30を用いて板厚2〜4mmまで熱間圧延する。
図1に示す熱間粗圧延機20は、例えば上下のワークロール21、22、およびバックアップロール23、24と、複数の搬送ローラが配列された搬送路4、6を備え、搬送されてきたアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22間のギャップに通して目的の厚さに圧延する装置である。
図1において、ワークロール21、22の前後両側の搬送路4、6から繰り返しアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22に供給して順次粗圧延することにより、熱間粗圧延機20は板材5を必要な厚さまで圧延して板材7とすることができる。
図1に示す熱間仕上圧延機30は、シングルリバース式熱間仕上圧延機であり、例えば上下のワークロール31、32およびバックアップロール33、34と、これらロールの入り側に設置されたリール型の送出巻取装置35と、出側に設置されたリール型の送出巻取装置36とを具備してなる。この熱間仕上圧延機30は、送出巻取装置35から送り出してワークロール31、32間を通過させて熱間圧延した板材を送出巻取装置36で巻き取る操作と、送出巻取装置36から再度ワークロール31、32間を通過させて熱間圧延した板材を送出巻取装置35で巻き取る操作を繰り返し必要回数行うとともに、圧延操作の度に徐々にワークロール31、32間の間隔を調節することにより、アルミニウム合金の板材を目的の板厚まで熱間仕上げ圧延する装置である。
前記均熱処理後、均熱炉から取り出したスラブは通常直ちに熱間粗圧延を開始するが、スラブ温度が500℃未満にならなければ、熱間粗圧延開始を遅延してもよい。熱間粗圧延のパス数は、鋳塊(スラブ)厚さ、仕上げ厚さ、スラブ幅、合金組成などに依存するが、十数パス〜二十数パスの範囲が一般的である。
熱間粗圧延は、圧延材が厚い間は、通常圧延機の前後に搬送テーブルが設置された1スタンド式粗圧延機(図1に示す熱間粗圧延機20)を用いて圧延する。しかし、板が薄くなると、必要な搬送テーブル長が長くなり、板の自重によるたるみも大きくなり、板の冷却も生じ易くなる。
そのため、搬送テーブルで保持するには、板厚が十数mm以上必要である。したがって、粗圧延機から仕上圧延機に板を送る際の最低板厚は、コイル重量や板幅に依存するが、工業的に用いられている重量・幅の場合、16mm程度以上であることが好ましい。また、粗圧延機から仕上圧延機に送る際の板厚が厚すぎる場合には、仕上圧延機での圧延パス回数の増加を招き、生産性を低下させる。したがって、仕上圧延機に送る際の板厚の上限は20mm以下であることが好ましい。上述の厚さ上限から下限の範囲内までアルミニウム合金の板材が薄くなった場合に、図1に示す構成のシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機で熱間仕上圧延を行う。
熱間仕上圧延は、シングルリバース式熱間仕上圧延機を使用して行う。
圧延機の両側に巻取装置があるシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(図1に示す熱間仕上圧延機30)を使用することにより、熱間仕上げ板厚を小さくすることができる。
従って、以降の冷間圧延の圧下率を小さくできるので、冷間圧延のパス回数を削減でき、生産性を向上させることができる。これに対し、例えば、巻取装置が片方にだけ設置された熱間仕上圧延機を用いた場合、搬送テーブル上で保持できる板厚に最小値が存在するために、熱間圧延で圧延可能な最小板厚が増加することになる。このため、熱間圧延後の冷間圧下率が増加する。
前述の如く、熱間圧延の仕上り板厚の薄肉化は、冷間圧延パス回数の削減による生産性の向上に寄与する。そのため、本実施形態において、熱間仕上圧延の仕上板厚は、2〜4mmの範囲内とすることが好ましい。仕上板厚が2mm未満では第1冷間圧延の圧下率が不足し、低い耳率が得られない。仕上板厚が4mmを超えると第1冷間圧延のパス回数が増加して生産性が低下する。
熱間仕上圧延時の条件として、1パス目の出側温度を380℃以下に設定し、2パス目の出側温度を340℃以下に設定し、3パス目の出側温度(仕上温度)を240〜300℃の範囲とすることが好ましい。
1パス目の出側温度について380℃を超える温度に設定すると、圧延加工時の局部歪みが駆動力となって部分的に再結晶が進行し、機械的性質が劣化するとともに、ランダム方位の再結晶粒が多くなり異方性が悪化する恐れがある。
2パス目の出側温度について340℃を超える温度に設定すると、前記1パス目と同様の現象により同様の問題が生じる。
3パス目の出側温度について、300℃を超える温度では前記1パス目と同様の現象により同様の問題が生じ、240℃未満の温度では立方体方位の再結晶粒の核が生じにくく、続くバッチ焼鈍を行っても十分な立方体方位が成長せず、異方性が悪化する。
「第1冷間圧延」
第1冷間圧延工程においては、前記の熱間圧延を施した後に冷却した板材を、圧下率30〜59%の範囲となるように冷間圧延する。第1冷間圧延の圧下率が59%を超えると、冷間圧延パス回数が増加して生産性が低下する問題がある。一方、第1冷間圧延の圧下率が30%未満では十分な圧延加工による局部歪が得られない。
第1冷間圧延の圧下率を30〜59%の範囲内とすることにより、成形性および異方性に優れるアルミニウム合金の板材を、良好な生産性で製造できる。
「連続焼鈍」
連続焼鈍(第1中間焼鈍)は、前記第1冷間圧延後の板材に対し、図2に基本構成を示す連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒の範囲(10℃/秒以上、200℃/秒以下の範囲)で加熱し、保持温度300〜400℃の範囲(300℃以上、400℃以下の範囲)に5〜30秒(5秒以上、30秒以下)保持し、冷却速度10〜200℃/秒の範囲(10℃/秒以上、200℃/秒以下の範囲)で冷却を行う。
この焼鈍工程は、アルミニウム合金の板材を適度な軟化状態にもたらすものであって、焼鈍後の耐力;YS(Yield Strength)を好適な範囲とすることが好ましい。
焼鈍温度が300℃未満では十分な軟化が得られず結果的に耳率が高くなる。焼鈍温度が400℃を越えまたは保持時間が30秒を越えると軟化が過剰となって耳率が高くなる。
図2に連続焼鈍装置(Continuous Annealing Line:略称CAL)の基本構成例を示すが、この例の連続焼鈍装置40は、供給ロール41から長尺のアルミニウム合金の板材42を引き出して緩衝装置43を介して数10m〜100m程度の長い炉本体44に供給し、この炉本体44内で移動中に前記の条件で焼鈍し、焼鈍後に炉本体44から引き出し、緩衝装置46を介して巻取ロール47に巻き取ることができる装置である。この連続焼鈍装置40によれば、炉本体44を通過するアルミニウム合金の板材42を連続単体処理できるために、バッチ式の焼鈍炉よりもより正確な加熱条件と冷却条件で焼鈍処理を行うことができる。
そして、連続焼鈍装置40ならば、アルミニウム合金の板材42を供給ロール41に巻き付けた状態のコイルの幅や径が異なっても、換言するとアルミニウム合金の板材42の幅や厚さ、処理するべき長さが異なっていても、製造したい順番に焼鈍処理できるために、同一の大きさのコイルのみを焼鈍炉に搬入して焼鈍していたバッチ式の焼鈍炉の場合に比べて中間在庫の増加を抑えることができる。
「第2冷間圧延」
次に、連続焼鈍後の板材に対し、圧下率5〜20%の範囲内となるように冷間圧延を施す。第2冷間圧延の圧下率を5〜20%の範囲内とすることにより、第1中間焼鈍で得た適度な軟化状態に加え圧延加工による適正な局部歪を導入することができるので、結果的に、後述する最終冷延工程において、最終冷延率が70%以上の条件でも低耳率の板材を得ることができる。
第2冷間圧延の圧下率が5%未満では板性状の平滑性が得られにくい他、工程全体として圧延パス数が増大して生産効率が低下する可能性があり好ましくない。第2冷間圧延の圧下率が20%を越えると、耳率が高くなる。
「バッチ焼鈍」
バッチ焼鈍工程は、前記第2冷間圧延後の板材に対し、焼鈍炉を用いて保持温度320〜380℃の範囲(320℃以上、380℃以下の範囲)に2〜6時間保持した後、冷却することで行う。
バッチ焼鈍工程において、加熱速度20〜150℃/時間の範囲(20℃/時間以上、150℃/時間以下の範囲)で加熱することが好ましく、冷却速度20〜200℃/時間の範囲20℃/時間以上、200℃/時間以下の範囲)で冷却を行うことが好ましい。
バッチ焼鈍の温度が320℃未満であるかバッチ焼鈍の保持時間が2時間未満では十分な再結晶組織が得られず立方体方位の成長が不十分となり異方性が悪化する。バッチ焼鈍温度が380℃を越えるか、または、保持時間が6時間を越えると再結晶粒が粗大化して最終冷間圧延した板をカップ、DI成形した際に肌荒れが生じ、またそれにともなうシワの発生によりネック成形時に割れを生じる問題がある。
「最終冷間圧延」
次に、バッチ焼鈍後の板材に対し、圧下率70〜90%の範囲内となるように最終冷間圧延を施す。最終冷間圧延の圧下率を70〜90%の範囲内とすることにより、必要な機械的性質、特に塗装焼付け処理後の耐力が好適な範囲となるとともに、缶成形において成形性と異方性がバランスよく得られるという効果がある。
最終冷間圧延の圧下率を70%未満にすると、加工率が不足となり、必要な強度が得られず、前述のバッチ焼鈍により得られる立方体方位に比べて圧延集合組織の発達が小さくなり異方性のバランスが悪化する。
冷間圧延の圧下率について90%を超えると、加工率が過剰となって板材の強度が高くなり過ぎてDI成形性が損なわれ、また前述のバッチ焼鈍により得られる立方体方位に比べて圧延集合組織の発達が大きくなり過ぎて異方性のバランスも悪化する。
冷間圧延により、板厚0.200〜0.280mmの薄肉飲料缶用アルミニウム合金板を得る。また、このアルミニウム合金板は、塗装焼付け後の耐力が230〜320N/mmの範囲であることが好ましい。
「安定化焼鈍」
以上の製造方法によれば、成形性と異方性に優れた飲料缶用アルミニウム合金板を得ることができるが、当該合金板のDI成形において、缶底部の形状および成形条件によっては、底部抜けなどの成形不良やボトムしわなどの問題を生じる場合がある。
このため、当該合金板に対し、保持温度120〜140℃、保持時間2時間〜4時間の条件で安定化焼鈍を行うことによって缶底部などの局部成形性を改善することができ、成形不良および異常を有効に抑制することが可能である。
保持温度を120℃未満にすると、前記の改善効果がほぼ得られないという面で問題があり、140℃を超える保持温度とすると、成形性は改善できるが強度が低下する問題が生じる。
保持時間を2時間未満にすると、上記の改善効果が不足するため好ましくなく、4時間を超える保持時間とすると、生産性が低下するという問題がある。
安定化焼鈍処理を上述の条件で施すことにより、缶成形における異常や生産性低下の問題を生じることなくDI成形できる特徴がある。
以下に、上述のアルミニウム合金板を用いてDI缶を製造する工程とDI缶の概要について説明する。
図3は、DI缶の製造方法の工程図を、図4はDI缶を示す部分断面図であり、これらの図において符号10は、DI缶を示している。
DI缶10は、アルミニウム合金製の有底筒状のDI缶であって、板厚が0.200mm以上0.280mm以下とされるアルミニウム合金の板材に、しごき率が54.2%以上64.8%以下とされる絞りしごき加工を施して成形されており、211径350cc缶で例えれば、缶軸方向の大きさ、すなわち高さが約122.5mm、外径が65mm以上67mm以下とされている。胴部は、肉厚が0.095mm以上0.110mm以下とされるとともに引張り強さが、340MPa以上410MPa以下とされ、かつこの場合の缶体重量が11.6g以下とされる。
また、DI缶の底部12は、図4に示すように、胴部11の缶軸方向における内側に向けて凹むドーム部12aを備えるとともに、このドーム部12aの外周縁部が胴部11の缶軸方向における外側に向けて突出する環状凸部12cとされている。この環状凸部12cの缶軸方向における頂部が、DI缶10が正立姿勢となるように、このDI缶10を接地面L上に配置したときに接地面Lに接する接地部12bが形成されている。
また、DI缶10は、塗料を使用して、文字情報等の印刷部分も含め、胴部11の外面を印刷、塗装し、加熱乾燥した後に、DI缶10の内面に塗装し、加熱乾燥することにより塗膜を形成させた外面印刷、外面塗装及び内面塗装がなされている。
このDI缶は、例えば、以下の工程により製造される。
前述の工程で得られたアルミニウム合金板を打ち抜いて直径が約150mmとされた図3に示す円板状の板材(ブランク)Wを成形する。
次に、この板材Wをカッピングプレスによって絞り加工することによりカップ状体W1に成形する。
次いで、DI加工装置によって、カップ状体W1に再絞りしごき加工を施して有底筒状体W2を形成する。この際の、しごき率は、例えば、60.4%で胴部11の最薄部における肉厚が0.100mmになるまで絞りしごき加工が施される。
再絞りしごき加工に用いるDI加工装置は、再絞り加工するための円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される円形の貫通孔を有する複数枚(例えば、3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、上記それぞれのアイアニング・ダイの各貫通孔の内部に嵌合可能とされ、軸方向に移動自在とされる円筒状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合された円筒状のカップホルダースリーブとを備えている。
DI加工装置による再絞り加工は、カップ状体W1をパンチスリーブと再絞りダイとの間に配置して、カップホルダースリーブ及びパンチスリーブを前進させてカップホルダースリーブが、再絞りダイの端面にカップ状体W1の底面を押し付けてカップ押し付け動作を行ないながら、パンチスリーブがカップ状体W1を再絞りダイの貫通孔内に押し込むことにより行われる。その結果、所定の内径を有する再絞り加工されたカップが成形される。引き続き、再絞り加工されたカップを複数のアイアニング・ダイを順次通過させて徐々にしごき加工をして、カップ状体の側壁をしごいて側壁を延伸させて側壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして有底筒状体W2を形成する。
しごき加工が終了した有底筒状体W2は、パンチスリーブをさらに前方に押し出して底部をボトム成形金型に押圧することにより、底部が、例えばドーム形状に形成される。その後、成形された缶はDI加工装置より取り出される。
この有底筒状体W2は、側壁がしごかれることで冷間加工硬化されて強度が高くなる。
次に、有底筒状体W2の開口端部W2aをトリミングする。
DI加工装置によって形成された有底筒状体W2の開口端部W2aは、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされ不均一であるため、有底筒状体W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより缶軸方向における側壁の高さを全周に亙って均一にする。
このようにして、図3に示すように胴部11と底部12とを有する横断面円形のDI缶10を形成することができる。
前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、上述のDI缶の製造方法においてしごき加工を受けた場合であってもネック成形性に優れさせることができ、傷や成形不良などの問題を生じないアルミニウム缶を得ることができる。
また、前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、飲料ボトル缶ボディ用のアルミニウム合金板として異方性とボトルネック成形性に優れさせることができ、傷や成形不良などの問題を生じないアルミニウム合金製ボトル缶を得ることができる。
以下、実施例を示して、本発明に係る薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法について更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。
表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、脱ガスおよび溶湯ろ過後、半連続鋳造により厚さ600mm、幅1100mm、長さ4.5mのスラブに鋳造した。なお、Cr、Zn、Tiについて各0.01と表記した試料はいずれもCr、Zn、Tiをそれぞれ0.01質量%含む試料である。
次に、前記スラブを面削後、均質化・均熱兼用炉を用いて、保持温度565℃かつ保持時間8時間の均質化処理を施した後、保持温度520℃まで炉中で冷却し、当該保持温度にて保持時間1時間以上の均熱処理を施した。
続いて、図1に示す構成の熱間粗圧延機20を使用して出側材料温度430℃として熱間粗圧延した後、図1に示すシングルリバース式熱間仕上圧延機30を使用して、熱間仕上げ圧延により仕上板厚2mmの板材を得た。
熱間仕上げ圧延の1パス目の出側温度は、表1、表2に示すように375℃、385℃に調節し、2パス目の出側温度は、330℃、345℃に調節し、3パス目の出側温度は、表3、表4に示すように240〜305℃に調節した。
次に、熱間圧延後の板材に表3、表4に示すように28〜62%の圧下率で第1冷間圧延し、次いで図2に示す構成の連続焼鈍装置を用いて表3、表4に示す条件で第1焼鈍処理(CALと略記)を施し、続いて表3、表4に示すように5〜25%の圧下率で第2冷間圧延した。
次いで、バッチ式焼鈍炉を用いて表3、表4に記載の保持温度で、常温から保持温度までの平均加熱速度20℃/時間、保持した時間を2時間〜6時間に調整し、最高到達温度から100℃までの平均冷却速度10℃/時間の条件で冷却し、バッチ焼鈍を行った。
次いで、バッチ焼鈍後の板材に表3、表4に示す圧下率で第3冷間圧延(最終冷間圧延)を施し、表3、表4に示す板厚(0.23mm)の飲料缶用アルミニウム合金板を得た。
また、得られた飲料缶用アルミニウム合金板の一部について、更に、バッチ式焼鈍炉を用いて、表3、表4記載の保持温度で、保持した時間、3時間の条件で安定化焼鈍を行った。
得られた飲料缶用アルミニウム合金板に210℃×10分の条件で塗装焼き付け相当の熱処理を行い、ベーキング後の耐力(ABYS(AB耐力)、0.2%耐力)を測定した。
なお、上記物性値は、コイルの幅方向及び長手方向各3点以上の位置から採取したサンプルについて計測した。
「耳率」
得られた薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の異方性評価として、カップ成形における耳率を測定した。
耳率は、素材をエリクセン試験機で深絞り加工したカップの側壁高さから計算した。加工条件はポンチ径;33mm(平頭ポンチ)、絞り比;1.75、しわ押さえ力;3kNとした。このカップの側壁高さをデジタルマイクロメーターで測定し、次式により耳率を算出した。
(山平均高さ−谷平均高さ)÷谷平均高さ×100=耳率(%)
なお、0°および180°の山の平均高さと45°、135°、225°、315°の山の平均高さをそれぞれ求め、いずれか高い方の山を上式の山平均高さとした。また、90°および270°の谷平均高さを求め、上式の谷平均高さとした。
「異方性の評価」
耳率による異方性の評価としてはn=3の平均値で、1.5%未満を「◎」、1.5%以上2.5%未満を「○」、2.5%以上3.5%未満を「△」、3.5%以上を「×」とした。「◎」および「○」を合格レベルと判断した。
得られた薄肉飲料缶用アルミニウム合金板のブランク材を用いて、容量350cc飲料缶に成形してネック成形性の評価を実施した。DI成形後の缶の口端部をトリムにより除去し、洗浄乾燥後、缶内外面に塗装印刷を施し、ダイネック成形およびスピンフロー成形を行い、内径およそ55mmの350cc飲料缶のネック形状とした。なお、DI成形の際に、ネック成形加工を受ける部位の肉厚を薄くすることにより、ネック成形加工におけるフランジ先端のしわ発生を促進評価した。24缶の製缶を行い、フランジ先端のしわの程度を目視評価し、しわが認められないものを◎、極軽微なしわが認められるものを○、極軽微なしわが複数認められるものを△、しわが明瞭に認められるものを×とした。また、ネック部で割れが発生した場合も×とした。
各試料におけるベーキング後の耐力、異方性の評価、ネック成形性の評価について以下の表2にまとめて示す。
Figure 0006611338
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表1に示すNo.1〜18の試料は本願で望ましい組成範囲のアルミニウム合金を用い、均質化処理条件(温度、時間)、均熱条件(温度、時間)、熱間粗圧延温度、熱間圧延(HOT仕上)の1パス、2パス、3パスの温度条件、仕上板厚、第1冷間圧延加工率(%)、連続焼鈍(CAL)条件(温度、時間)、第2冷間圧延加工率(%)、バッチ焼鈍(バッチIA)条件(温度、時間)、第3冷間圧延加工率(%)、最終板厚をいずれも望ましい範囲とした試料であるが、望ましいAB耐力(240〜315MPa)、良好な耳率(異方性)と良好なネック成形性を有するアルミニウム合金板であることがわかった。
表1、表3に示すNo.19の試料は熱間仕上圧延の1パス目の出側温度を高くしすぎた試料、No.20の試料は2パス目の出側温度を高くしすぎた試料であり、いずれの試料もネック成形性に問題を生じた。No.21の試料は3パス目の出側温度を高くしすぎた試料であり、異方性とネック成形性の両方に問題を生じた。No.22の試料は3パス目の出側温度を低くしすぎた試料であり、ネック成形性には問題を生じなかったが、異方性の悪化と第1冷間圧延時の生産性に問題が生じた。
No.23の試料は第1冷間圧延の圧下率を低くしすぎた試料、No.24の試料は第1冷間圧延の圧下率を高くしすぎるとともに第3冷間圧延の圧下率を低くしすぎた試料であるが、いずれも異方性とネック成形性の両方に問題を生じた。
No.25の試料は第2冷間圧延の圧下率を高くしすぎた試料、No.26の試料は連続焼鈍の温度を低くしすぎた試料、No.27の試料は連続焼鈍の温度を高くしすぎた試料であるが、いずれも異方性とネック成形性の両方に問題を生じた。
No.28の試料はバッチ焼鈍の温度を低くしすぎた試料であるが、異方性とネック成形性の両方に問題を生じ、No.29の試料はバッチ焼鈍の温度を高くしすぎた試料であるが、異方性に問題は生じなかったが、ネック成形性に問題を生じた。
No.30の試料はSi含有量が多すぎる試料、No.31の試料はFe含有量が少なすぎる試料、No.32の試料はFe含有量が多すぎる試料であるが、いずれの試料もネック成形性に問題を生じた。また、No.31の試料はネック成形時にダイスに対し焼き付きを生じた。
No.33の試料はCu含有量が少なすぎる試料、No.34の試料はCu含有量が多すぎる試料、No.35の試料はMn含有量が少なすぎる試料であるがネック成形性に問題が生じ、No.36の試料はMn含有量が多すぎる試料であるが、異方性、ネック成形性に問題を生じた。
No.37の試料はMg含有量が少なすぎる試料であるが、ネック成形性に問題を生じ、No.38の試料はMg含有量が多すぎる試料であるが、異方性とネック成形性の両方に問題を生じた。
No.39の試料は安定化焼鈍の温度を高くしすぎた試料であるが各種合金成分が範囲内であっても低い場合、AB耐力が下限以下となった。
4、6…搬送路、5、7…板材、10…DI缶、11…胴部、12…底部、12a…ドーム部、12b…接地部、12c…環状凸部、13…頸部、14…フランジ部、20…熱間粗圧延機、21、22…ワークロール、23、24…バックアップロール、30…熱間仕上圧延機、31、32…ワークロール、33、34…バックアップロール、35、36…送出巻取装置、40…連続焼鈍装置、41…供給ロール、42…アルミニウム合金の板材、43、46…緩衝装置、44…炉本体、47…巻取ロール、W…板材(ブランク)、W1…カップ状体、W2…有底筒状体


Claims (4)

  1. 質量%で、Si:0.35%以下、Fe:0.35〜0.55%、Cu:0.15〜0.48%、Mn:0.8〜1.15%、Mg:0.60〜1.60%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を溶製し、半連続鋳造して得た鋳塊を均質化処理および均熱処理を経て出側材料温度を400〜460℃とする熱間粗圧延により熱間粗圧延板とした後、1パス目出側温度を380℃以下、2パス目出側温度を340℃以下、3パス目出側仕上げ温度を240〜300℃とする熱間仕上げ圧延により板厚2〜4mmの熱間仕上げ圧延板を得た後、
    圧下率30〜59%で第1冷間圧延を行い、次いで連続焼鈍装置を用いて保持温度300〜400℃、保持時間5〜30秒の条件で第1中間焼鈍を行い、次いで圧下率5〜20%の第2冷間圧延を行い、その後、保持温度320〜380℃、保持時間2〜6時間のバッチ焼鈍を行い、続いて圧下率70〜90%で板厚0.200〜0.280mmとなるまで最終冷間圧延を行って塗装焼付け後の耐力230〜320N/mmのアルミニウム合金板を得ることを特徴とする成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 前記均質化処理を555〜605℃の温度範囲で4〜10時間行い、前記均熱処理を500〜555℃の温度範囲で1時間以上行うことを特徴とする請求項1に記載の成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
  3. 前記組成に対し、更に、Cr:0.05%以下、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下のうち、少なくとも1種または2種以上を含有してなるアルミニウム合金を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
  4. 最終冷間圧延後、保持温度120〜140℃、保持時間2〜4時間の条件で安定化焼鈍を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の成形性および異方性に優れる薄肉飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
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