JP2024085402A - アルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

アルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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真一 山口
祥平 岩尾
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Maアルミニウム株式会社
アルテミラ製缶株式会社
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Abstract

Figure 2024085402000001
【課題】本発明は、アルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板とその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備するアルミニウム合金の素板からなり、前記素板の圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、0.5μm以下の微細析出物の占有面積率が1.0~2.5%、導電率が38~42%IACSであり、かつ、210℃で10分間熱処理を負荷する前後の耐力の差が30MPa以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保護の観点から、海洋プラスチックごみ問題が取り沙汰されるようになってきた。海洋プラスチックごみは世界中で年間800万トンに達し、その内約半数はペットボトルを含めたパッケージングによるものとされている。そのため、海洋プラスチックごみ削減に向けた取り組みが各国で進んでいる。日本においても循環型社会の形成に向けた法改正が進み、リサイクル性に優れたアルミ缶への注目が高まっている。そのような状況の中で、市場から回収された使用済みアルミニウム飲料缶(以下UBCと呼称)からなるアルミニウムスクラップを再利用して再び飲料缶用のアルミニウム合金板を製造するニーズは非常に高い状況にある。UBC配合率の高いアルミニウム合金板を製造すると、アルミニウム新地金を採用する場合に比べ、COの発生量を大幅に抑制し、環境負荷を低減できる。
しかし、一般的に飲料缶は缶ボデイ(缶胴)にAl-Mn系(3000系)合金、缶エンド(缶蓋)にAl-Mg系(5000系)合金を用いた2ピース缶の組み合わせであるため、UBCを再溶解して缶ボディに用いると缶蓋の分だけMg添加量が高くなる傾向にある。アルミニウム合金に含まれるMg量は缶の成形性に大きな影響を及ぼす。
Mg量が高いと材料強度が高くなり、アルミ缶のDI成形性、ネック部成形性が悪化する。一方でアルミ缶には内容物を充填・巻締する際に加わる荷重や内圧に耐えるようにするため、ある一定程度の強度も求められる。
例えば、以下の特許文献1には、飲料缶のボトム成形性やボトム強度を勘案してアルミニウム合金の組成を調整し、均質化条件や圧延条件などの製造条件を調整することで飲料缶ボディ用に優れたアルミニウム合金板を提供する技術が開示されている。
また、以下の特許文献2には、30%以上のリサイクル内容物を含む2000系~7000系の溶融アルミニウム合金から、第1熱間圧延ステップでホットバンドを鋳造し、次いで第2の熱間圧延により厚さを50%減少させたゲージを得る技術が開示されている。
特許第6850635号公報 特許第6964770号公報
従来、この種のアルミ缶ボディ用アルミニウム合金では、DI成形時には強度が高く、その後の印刷・乾燥で熱が加わり、強度が低下するという課題があった。
本発明者らは上記課題に鑑み、UBC配合率の高いアルミニウム合金板を缶ボディ材に適用することを目的に、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、熱処理などアルミニウム合金板の製造工程を最適化する事で優れた成形性と熱軟化による強度低下の少ない材料を開発することができた。
(1)本形態のアルミボトル缶用アルミニウム合金板は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備するアルミニウム合金の素板からなり、前記素板の圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、0.5μm以下の微細析出物の占有面積率が1~2.5%、導電率が38~42%IACSであり、かつ、210℃で10分間熱処理を負荷する前後の耐力の差が30MPa以下であることを特徴とする。
(2)本形態のアルミボトル缶用アルミニウム合金板において、前記素板の質量比でMg固溶度が0.9~1.31%、Si固溶度が0.10~0.30%であることが好ましい。
(3)本形態のアルミボトル缶用アルミニウム合金板では、前記素板をさらに板厚減少率40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が20~30%であり、かつ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が230~320MPa、伸びが3.0%以上であることが好ましい。
(4)本形態のアルミボトル缶用アルミニウム合金板の製造方法は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部Alと不可避的成分を含むアルミニウム合金の鋳塊を鋳造後、均質化処理を500~600℃で4~10時間加熱する条件で行ない、均熱処理を500~560℃で1時間以上加熱する条件で行ない、熱間粗圧延に続いてシングルスタンド圧延機を用いて、1パス目100~400m/minの圧延速度、350~450℃の巻き取り温度、2パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻き取り温度、3パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻き取り温度で熱間仕上げ圧延を行い、仕上板厚を2.0~3.6mmとし、その後、圧延率を76~95%に設定して冷間圧延を行い、最終冷間圧延後に昇温速度3℃/min以上、保持温度140~230℃、保持時間1~10時間で最終調質焼鈍を行い、板厚0.20~0.51mm、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であるアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板を製造することを特徴とする。
(5)本形態のアルミボトル缶用アルミニウム合金板の製造方法において、素板の質量比でMg固溶度が0.9~1.31%、Si固溶度が0.10~0.30%であることが好ましい。
(6)本形態のアルミボトル缶用アルミニウム合金板の製造方法において、前記アルミニウム合金の鋳造時に、アルミニウム合金鋳塊に対し使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上配合することが好ましい。
本発明によれば、DI成形時に強度が高く、優れた成形性を有し、かつ、印刷・乾燥工程での熱軟化を抑制することで高い缶体強度を維持できるアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板を提供することができる。
また、MgとSiの固溶元素量を制御すると、DI成形を模擬した冷間圧延を負荷した後の加工硬化性と、製缶工程における塗装乾燥のためのベーキング条件を模擬した場合の耐力値(熱軟化性)を一定の範囲に制御できるアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板を提供することができる。
本発明に係るアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板の第1実施形態を示す平面図である。 本発明に係る製造方法を実施する際に、熱間圧延工程において用いる装置と工程を示す説明図。 DI缶の製造方法の一例を示す工程図。 実施例において作製したアルミボトル缶を示す部分断面図。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
図1は、本発明に係るアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板の一実施形態を示す平面図である。
図1に示すアルミニウム合金板1は、後述する鋳造法により得られた鋳塊を熱間圧延し、更に冷間圧延して得られた素板からなり、図1では一定幅を有し長さ方向を左右に向けた帯状体の素板として描かれている。
このアルミニウム合金板1の圧延方向は図1に示す左右方向(アルミニウム合金板1の長さ方向)であり、便宜的に圧延方向に対し0°の方向は図1の左右方向を意味し、圧延方向に対し90°方向とはアルミニウム合金板1の幅方向を意味する。
次に、本実施形態に係るアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板1の組成について説明する。
本実施形態のアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板1は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避的成分(不可避不純物)とAlの組成を具備するアルミニウム合金の素板からなる。
以下、本実施形態で使用するアルミニウム合金板1の組成限定理由について説明する。 なお、本明細書において記載する各元素の含有量は、特に限定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。例えば0.90~1.10%とする表記は0.90%以上1.10%以下を意味する。また、温度や時間等の範囲を表記する場合も、特に明記しない限り、上限と下限を含むものとする。例えば、500~600℃は500℃以上600℃以下を意味し、1~2時間は1時間以上2時間以下を意味する。
「Mn:0.90~1.10%」
Mnは、Al-Mn-Fe系、Al-(Mn,Fe)-Si系金属間化合物等を形成し、晶出層及び分散層となることにより分散硬化作用を発揮し、これによりアルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Mn含有量が0.90質量%未満であると上記金属間化合物の分散状態が不十分となり、所望する硬化特性が得られなくなることから耐力が低下する。Mnの含有量が1.10質量%を超えると前記金属間化合物の割合が増加することにより耐ゴーリング性(DI加工時の耐焼き付き性)が低下する。
「Mg:1.20~1.50%」
Mgは、固溶硬化作用を有し、圧延加工時に加工硬化性を高めるとともに、SiやCuと共存することで分散硬化作用及び析出硬化作用を発揮して、アルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Mgの含有量が1.20質量%未満であると、十分な耐力が得られず、缶体強度が不足する。また、UBC(使用済アルミニウム飲料缶)溶湯中に含まれるMgの希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Mgの含有量が1.50質量%を超えると分散硬化作用及び析出硬化作用により耐力が高くなりすぎて、アルミニウム合金板1の伸びが低下する他、成形性も悪化する。
「Si:0.25~0.40%」
Siは、同時に含有されるMg等とともに金属間化合物を形成し、固溶硬化作用、分散硬化作用及び析出硬化作用でアルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Siの含有量が0.25質量%未満であると十分な耐力が得られず、また、UBC溶湯の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Siの含有量が0.40質量%を超えると分散硬化作用及び析出硬化作用により耐力が高くなりすぎて、アルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板1の伸びが低下する他、成形性も悪化する。
「Fe:0.35~0.55%」
Feは、Al-Mn-Fe系金属間化合物の析出量を増加させ、結晶を細分化させることにより、アルミニウム合金板1の耐力、伸びを向上させる。
Feの含有量が0.35質量%未満であると結晶粒粗大化により十分な伸びが得られないとともにUBC溶湯の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Feの含有量が0.55質量%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成し、成形時のカール割れ等に繋がる。
「Cu:0.20~0.45%」
Cuは、固溶硬化等によりアルミニウム合金板1の耐力を向上させる。
Cuの含有量が0.20質量%未満であると十分な耐力が得られないとともにUBC溶湯の希釈が必要となり、アルミニウムスクラップの配合比率を高くすることができないため、アルミニウムスクラップの配合比率が低下する。
Cuの含有量が0.45%質量%を超えると耐力が高くなりすぎて、アルミニウム合金板1の成形性が悪化する他、耐食性が低下する。
本実施形態に係るアルミニウム合金板1は、圧延方向における耐力が220~320MPa、圧延方向(0゜方向)の伸びが5.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であることが好ましい。また、導電率が38~42%IACSであることが好ましい。更に、210℃で10分間加熱する熱処理前後の耐力差が30MPa以下であることが好ましい。ここで示す210℃で10分間加熱する熱処理とは、アルミ缶表面に印刷を施した後、印刷した層を乾燥させる際に施す加熱処理に相当する。
耐力はアルミニウム合金板1の成形性や缶の強度に影響を及ぼす。耐力が220MPa未満であると缶体強度が不足し、巻締成形時に座屈するおそれがある。耐力が320MPaを超える場合、DI成形時の胴切れ、底抜け、ネック成形不良、カール割れなどが発生し易くなり、成形性が悪化する。
伸びが5.0%未満の場合、DI成形時に胴切れや底抜け、ボトムしわといった不具合が発生するおそれがある。
「アルミニウム合金板1の平均結晶粒径」
アルミニウム合金板1の平均結晶粒径は200μm以下であることが好ましい。結晶粒径については、圧延方向平行断面を研磨し、水洗乾燥後に、バーカー氏液中で陽極酸化処理し、偏光顕微鏡により観察し、切断法により平均結晶粒径を算出できる。
アルミニウム合金板1の平均結晶粒径は、ネック成形性に影響を及ぼす。平均結晶粒径が200μmを超えるとネック成形性が悪化し、カール割れが多くなる。
「導電率」
アルミニウム合金板1の導電率は、第2相粒子の析出状態に影響し、第2相粒子の析出状態は析出硬化作用を発揮して、耐力を向上させる効果がある。導電率が38%IACS未満では第2相粒子の析出が少なくなり、耐力が低くなり、缶体強度が不足する。第2相粒子とは、前述した金属間化合物を意味する。また、導電率が42%を超えると耐力が過剰に高くなり、ネック成形性を悪化させ、カール割れが多くなる。
210℃で10分間加熱する熱処理前後の耐力差は、DI成形性と缶体強度に影響する。耐力差が、30MPaを超えるとDI成形性と缶体強度の両立が難しくなる。
「Mg固溶度、Si固溶度」
本実施形態のアルミニウム合金板1は、一例として、素板の質量比でMg固溶度が0.9~1.31%、Si固溶度が0.10~0.30%であることが好ましい。
Mg固溶度は固溶硬化を発揮し、アルミニウム合金板1の耐力および加工硬化性を高める作用がある。Mg固溶度が0.9%未満の場合、耐力が低くなり、缶体強度が不足するおそれがある。Mg固溶度が1.31%を超える場合、加工硬化性が過剰になり、成形性を悪化させる。
MgとSiの固溶度に関しては、熱フェノール溶液で溶解後、ろ液に溶け込んだ固溶体中についてICP発光分析法(誘導結合プラズマ発光分析)を用いて定量する方法、もしくは、各供試材を熱フェノール溶液で溶解し、析出した残渣を重量法により測定することで求めることができる。
「析出物」
本実施形態のアルミニウム合金板1は、Al-Mg-Mn系およびMg-Si系からなる0.5μm以下の微細な析出物が占有面積率で1.0%以上2.5%以下、析出されていることが好ましい。微細析出物は結晶粒界内に存在することで析出硬化を発揮し、耐力を高める作用がある。微細析出物の占有面積率が1%未満である場合、耐力が低くなり、缶体強度が不足する。また、微細析出物の占有面積率が2.5%を超える場合、析出硬化が過剰になり、成形性を悪化させる。
本実施形態のアルミニウム合金板1は、一例として、前述の組成の素板を板厚減少率が40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が20~30%、かつ、前述の冷間圧延後に210℃で10min熱処理を負荷した後の耐力が230~320MPaであることが好ましい。
板厚減少率40%の冷間圧延後の耐力増加割合は、DI加工性とネック成形性に影響がある。この耐力増加割合が20%未満の場合、耐力の増加割合が少ないので加工硬化性が過剰になり、ネック成形性を悪化させる。逆に、耐力の増加割合が30%を超えて大きいと、DI成形時の胴切れやネック成形時のカール割れを引き起こすおそれがある。
前述の冷間圧延後、210℃で10分間加熱後の耐力は、DI成形性と缶体強度に影響する。この耐力が230MPa未満である場合、缶体強度が不足し、巻締成形時に座屈するおそれがある。耐力が320MPaを超える場合、ネック成形性が悪化し、カール割れが増加するおそれがある。
上述の特徴を有するアルミニウム合金板1は、DI成形性とボトム成形性、ネック成形性のいずれにも優れ、印刷・乾燥工程での熱軟化を抑制し、印刷・乾燥後も高い缶体強度を有する特長を有する。
「アルミニウム合金板の製造方法」
図1に示すアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板1を製造するには、上述の組成を満足するアルミニウム合金溶湯を作製し、このアルミニウム合金溶湯を用いる鋳造法によりアルミニウム合金鋳造材を得、この鋳造材の面削を行う。アルミニウム合金鋳塊においては使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上配合した合金溶湯から鋳造することが好ましい。
次に、面削後のアルミニウム合金鋳造材に対し均質化処理、均熱処理を施した後、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延による熱間圧延を行い、後に冷間圧延を行い、目的の板厚とした後、最終調質焼鈍を行う。
以上の工程により、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下、導電率38~42%IACS、かつ、210℃で10分間の熱処理を負荷した前後の耐力差が30MPa以下であるアルミニウム合金板1を得ることができる。
このアルミニウム合金板1は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備し、質量%で80%以上のアルミニウムリサイクル材を含むアルミニウム合金溶湯からの鋳造材であるアルミニウム合金の素板からなるとも説明できる。
上述の鋳造材の厚さは、例えば500~600mm程度とすることができる。次に、鋳造材の面削を行い、鋳造材の表面を1~25mm程度切削し、面削体を作製する。なお、面削は後述する均質化処理の後に行っても良い。
「均質化処理」
上述のように作製した面削体に均質化処理を施す。均質化処理は一般に、溶湯の凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、凝固によって形成された準安定相の平衡相への転移などのために行われる。
均質化処理において、均質化温度を500~600℃の範囲内にすることができる。均質化温度が500℃未満では後述の焼鈍の効果が得られず、後述の熱間圧延工程や冷間圧延工程においてクラックが発生し易くなる。また、均質化温度が600℃を超えると、鋳塊が溶融するおそれがある。
均質化処理において、均質化温度に保持する時間(均質化時間)は4時間以上10時間以下とすることが好ましい。均質化時間が4時間未満では、均質化が充分に進行しない場合がある。しかし、均質化時間が長すぎても効果はなく生産効率が低下する。以上の観点から、好ましい均質化時間は4~10時間の範囲内である。この均質化処理は、均質化時間が比較的長いので、通常、バッチ方式の炉中に設置することで行われる。
「均熱処理」
本実施形態において、均質化処理後の面削体を500~560℃まで冷却し、所定時間保持する均熱処理後、熱間圧延を開始する。500~560℃の温度範囲での保持時間(均熱時間)は、1時間以上行うことが望ましい。
「熱間圧延」
熱間圧延は、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延からなり、本実施形態においては、例えばシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機を使用して熱間仕上圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延工程においては、図2に示すように、熱間粗圧延機20を用いて板厚20mm程度まで熱間粗圧延した後、熱間仕上圧延機30を用いて板厚2.0~3.6mmまで熱間圧延する。
図2に示す熱間粗圧延機20は、例えば上下のワークロール21、22、およびバックアップロール23、24と、複数の搬送ローラが配列された搬送路4、6を備え、搬送されてきたアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22の間に通して目的の厚さに圧延する装置である。
図2において、ワークロール21、22の前後両側の搬送路4、6から繰り返しアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22の間に供給して順次粗圧延することにより、熱間粗圧延機20は板材5を必要な厚さまで圧延して板材7とすることができる。
図2に示す熱間仕上圧延機30は、シングルミルのリバース式熱間仕上圧延機であり、例えば上下のワークロール31、32およびバックアップロール33、34と、これらロールの入り側に設置されたリール型の送出巻取装置35と、出側に設置されたリール型の送出巻取装置36とを具備している。
熱間仕上圧延機30は、送出巻取装置35から送り出してワークロール31、32間を通過させて熱間圧延した板材を送出巻取装置36で巻き取る操作と、送出巻取装置36から再度ワークロール31、32間を通過させて熱間圧延した板材を送出巻取装置35で巻き取る操作を繰り返し必要回数行う。圧延操作の度に徐々にワークロール31、32間の間隔を調節することにより、アルミニウム合金の板材を目的の板厚まで熱間圧延することができる。
均熱処理後、均熱炉から取り出した鋳造材は通常直ちに熱間粗圧延を開始するが、鋳造材の温度が500℃未満にならなければ、熱間粗圧延開始を遅延してもよい。熱間粗圧延のパス数は、鋳塊(スラブ)厚さ、仕上げ厚さ、スラブ幅、合金組成などに依存するが、十数パス~二十数パスの範囲が一般的である。
そのため、搬送テーブルで保持するには、板厚が十数mm以上必要である。したがって、粗圧延機から仕上圧延機に板を送る際の最低板厚は、コイル重量や板幅に依存するが、工業的に用いられている重量・幅の場合、16mm程度以上であることが好ましい。
また、粗圧延機から仕上圧延機に送る際の板厚が厚すぎる場合には、仕上圧延機での圧延パス回数の増加を招き、生産性を低下させる。したがって、仕上圧延機に送る際の板厚の上限は40mm以下であることが好ましい。上述の厚さ上限から下限の範囲内までアルミニウム合金の板材が薄くなった場合に、図2に示す構成のシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機30で熱間仕上圧延を行うことができる。
圧延機の前後両側に巻取装置があるシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(図2に示す熱間仕上圧延機30)を使用することにより、熱間仕上板厚を小さくすることができる。
従って、以降の冷間圧延の圧下率を小さくできるので、冷間圧延のパス回数を削減でき、生産性を向上させることができる。これに対し、例えば、巻取装置が片方にだけ設置された熱間仕上圧延機を用いた場合、搬送テーブル上で保持できる板厚に最小値が存在するために、熱間圧延で圧延可能な最小板厚が増加することになる。このため、熱間圧延後の冷間圧下率が増加する。
前述の如く、熱間圧延の仕上板厚の薄肉化は、冷間圧延パス回数の削減による生産性の向上に寄与する。そのため、本実施形態において、熱間仕上圧延の仕上板厚は、2.0~3.6mmの範囲内とすることが好ましい。
熱間仕上圧延機30により、例えば、1パス目100~400m/minの圧延速度、350~450℃の巻き取り温度、2パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻き取り温度、3パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻き取り温度で熱間仕上圧延を行うことができる。
「冷間圧延」
次に、熱間圧延後の板材に対し、最終冷間圧下率76~95%の範囲内となるように冷間圧延を施す。最終冷間圧延の圧下率を76~95%の範囲内とすることにより、必要な機械的性質、特に塗装焼付け処理後の耐力が好適な範囲となるとともに、缶成形において異方性、ネック成形性がバランスよく得られるという効果がある。
最終冷間圧延の圧下率を76%未満にすると、缶成形による加工硬化が進み、ネック成形性が悪化する。
冷間圧延の圧下率について95%を超えると、加工率が過剰となって異方性が悪化するとともに、板材の強度が高くなり過ぎて後述するDI成形性が損なわれるおそれがある。 冷間圧延により、板厚0.20~0.51mmのアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板を得ることができる。
本実施形態において冷間圧延では中間焼鈍を施すことなく冷間圧延し、最終冷間圧延後に後述する最終調質焼鈍を施す。
「最終冷間圧延後の最終調質焼鈍」
最終調質焼鈍は、前記冷間圧延材に対し、昇温速度3℃/min以上、保持温度140~230℃、保持時間1~10時間の条件で行い、冷却速度10℃/min以上の条件とすることが望ましい。
昇温速度3℃/min未満では粒界に微量元素が析出するおそれがあり、アルミニウム合金板が局部的に加工不良となるおそれがある。
保持温度が140℃未満では十分な効果が得られずアルミニウム合金板の成形性が不良となるおそれがあり、保持温度が230℃を超える場合は析出が過剰となりアルミニウム合金板の成形性が不良となるおそれがある。
保持時間1時間未満ではアルミニウム合金板の成形性不良となるおそれがあり、保持時間10時間を超えるようでは生産性が低下する問題がある。
冷却速度が10℃/min未満ではアルミニウム合金板の結晶粒界に微量元素が析出するおそれがあり、局部的に加工不良となるおそれがある。
最終調質焼鈍を行うことで圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下のアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板1を得ることが可能となる。
以上説明の製造方法に従い、前述の組成のアルミニウム合金板からアルミボトル缶ボディを製造すると、前述のアルミニウム合金板はDI成形性とボトム成形性、ネック、カール成形性のいずれにも優れるので、シワやクラックなどの欠陥の無い、缶体強度も高いアルミボトル缶ボディを製造できる特長を有する。
なお、前述の組成のアルミニウム合金板からアルミボトル缶ボディを製造する場合、アルミニウム合金を溶製するための合金溶湯について、得られるアルミニウム合金鋳塊に対し80%以上の割合(質量比)となるように使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を投入しても製造可能となる。
「DI缶」
以下に、上述のアルミニウム合金板を用いてDI(Drawing and Ironing)缶を製造する工程とDI缶の概要について説明する。
図3はDI缶の製造方法の工程図を示し、図4はアルミボトル缶を示す部分断面図である。
DI缶10は、アルミニウム合金製の有底筒状のDI缶であって、アルミニウム合金板に、適切なしごき率の絞りしごき加工を施して成形されており、例えば、缶軸方向の大きさ、すなわち高さが166.0mm、外径が65mm以上67mm以下とされる。
「ボトル缶」
以下に、前記DI缶からアルミボトル缶を製造する工程の概要を説明する。
図4はボトル缶の断面形状を示している。図3に示すDI缶10の開口部に缶胴よりも小径の口金部を形成し、次いで口金部の周囲に雄ねじを図4に示すように形成する。
その後、口金部の開口端部を折り返してカール部55Eを形成することで図4に示すボトル缶55を製造することができる。成形されたボトル缶55の縮径率は、例えば42.0~53.0%である。(縮径率(%)=(缶胴外径-カール外径)/缶胴外径×100)
また、DI缶10からボトル缶55を製造する途中において缶の底部55Fは、図4に示すように、缶胴部55Aの缶軸方向における内側に向けて凹むドーム部55aを形成するとともに、このドーム部55aの外周縁部に缶胴部55Aの缶軸方向における外側に向けて突出する環状凸部55cを形成する。この環状凸部55cの缶軸方向における頂部は、ボトル缶55を正立姿勢となるように、このボトル缶55を接地面上に配置したときに接地面に接する設置部55bとなる。
また、ボトル缶55は、ポリエステル系塗料を使用して、文字情報等の印刷部分も含め、胴部51の外面を印刷、塗装し、この外面印刷及び外面塗装がされたボトル缶55を180℃×30秒間加熱することにより塗膜を形成するとともに、ボトル缶55の内面にエポキシ系塗料を使用して塗装し、200℃×60秒間加熱することにより定着させた内面塗装がなされる。
前述のDI缶は、例えば、以下の工程により製造される。
前述の工程で得られたアルミニウム合金板を打ち抜いて直径が約150mmとされた図3に示す円板状の板材(0ブランク)Wを成形する。
次に、この板材Wをカッピングプレスによって絞り加工することによりカップ状体W1に成形する。
次いで、DI加工装置によって、カップ状体W1に再絞りしごき加工を施して有底筒状体W2を形成する。
再絞りしごき加工に用いるDI加工装置は、再絞り加工するための円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される円形の貫通孔を有する複数枚(例えば、3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、上記それぞれのアイアニング・ダイの各貫通孔の内部に嵌合可能とされ、軸方向に移動自在とされる円筒状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合された円筒状のカップホルダースリーブとを備えている。
DI加工装置による再絞り加工は、カップ状体W1をパンチスリーブと再絞りダイとの間に配置して、カップホルダースリーブ及びパンチスリーブを前進させてカップホルダースリーブが、再絞りダイの端面にカップ状体W1の底面を押し付けてカップ押し付け動作を行ないながら、パンチスリーブがカップ状体W1を再絞りダイの貫通孔内に押し込むことにより行われる。その結果、所定の内径を有する再絞り加工されたカップが成形される。引き続き、再絞り加工されたカップを複数のアイアニング・ダイを順次通過させて徐々にしごき加工をして、カップ状体の側壁をしごいて側壁を延伸させて側壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして有底筒状体W2を形成する。
しごき加工が終了した有底筒状体W2は、パンチスリーブがさらに前方に押し出して底部をボトム成形金型に押圧することにより、底部が、例えばドーム形状に形成される。 この有底筒状体W2は、側壁がしごかれることで冷間加工硬化されて強度が高くなる。
次に、有底筒状体W2の開口端部W2aをトリミングする。
DI加工装置によって形成された有底筒状体W2の開口端部W2aは、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされ不均一であるため、有底筒状体W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより缶軸方向における側壁の高さを全周に亙って均一にする。 このようにして、胴部11と底部12とを有する横断面円形のDI缶10を形成することができる。
前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、上述のDI缶の製造方法においてしごき加工を受けた場合であってもネック、カール成形性に優れさせることができ、傷や成形不良などの問題を生じないアルミ缶ボディを得ることができる。
また、前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、缶体強度の優れたアルミ缶ボディを得ることができる。
以下、実施例を示して、本発明に係る飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法について更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、脱ガスおよび溶湯ろ過後、半連続鋳造により厚さ600mm、幅1100mm、長さ4.5mのスラブに鋳造した。
次に、前記スラブを面削後、均質化・均熱兼用炉を用いて、それぞれ表2に示す条件で均質化処理と均熱処理を実施した。
続いて、図2に示す構成の熱間粗圧延機を使用して板厚20mmまで熱間粗圧延した後、図2に示す構成のシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(シングルスタンド圧延機)を使用して、以下の表3に示す圧延3パス条件にて板厚2.5mmまで圧延を実施した。
次に、熱間仕上圧延後のアルミニウム合金板材に対し表4に示す圧延率で冷間圧延を施し、表4に示す温度で最終調質焼鈍を施し、板厚0.370mmのアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板を得た。
得られたアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板に対し、以下に説明の条件にて0.2%耐力の測定、伸びの測定、熱処理前後の耐力差の測定、導電率の測定、析出物面積率の測定、平均結晶粒径の測定、固溶度(Si、Mg)の測定、素材40%圧延後の耐力増加割合の測定、素材40%圧延後210℃で熱処理した試料の耐力、DI成形性の評価、ネック、カール成形性の評価、缶体強度の測定をそれぞれ実施した。
各測定結果と評価結果を後述する表4、表5にまとめて記載する。
「0.2%耐力の測定」
0.2%耐力の測定については、JISZ2241に準ずる方法により実施した。具体的には、得られた各試料から圧延方向と平行(0°)にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作成し、常温で引張試験を実施し、耐力(MPa)を測定した。なお、引張速度は、5mm/分とした。
「伸びの測定」
伸びの測定については、JISZ2241に準ずる方法により測定した。具体的には、得られた各試料から圧延方向と平行にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作成し、常温で引張試験を実施し、伸びを測定した。なお、ここでいう伸びとは、JISZ2241に基づく破断後の永久伸びを原標点距離に対する百分率で表したものである。「熱処理後の耐力差」
熱処理後の耐力差については、素材に対し210℃×10分で熱処理を行ったのち、前記の方法にて0.2%耐力を測定し、素材耐力と熱処理後耐力の差として算出した。
「結晶粒径」
金属組織を露出させる方法として、アルミニウム合金板の圧延方向に対し平行に切断した断面をエメリー紙にて研磨し、荒バフ研磨、仕上げ研磨を施した後、水洗、乾燥を実施し、更に、バーカー氏液中で、浴温:25℃、印加電圧:30V、印加時間:120秒の条件で陽極酸化処理を施す方法を適用した。処理後の試料について、偏光をかけた光学顕微鏡を用いて撮影し、切断法により平均結晶粒径を算出した。
「固溶度」
Mg、Siの固溶度に関しては、各供試材を熱フェノール溶液で溶解し、析出した残渣を重量法により測定し、固溶度として算出した。
「析出物面積率」
アルミニウム合金板の圧延方向に対し平行に切り出しした断面をCP(クロスセクションポリッシャー)加工し、FE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)により5000倍で3箇所観察し、析出物の平均の面積率を算出した。
「導電率」
渦電流式導電率計(Auto Sigma 3000:日本ITeS株式会社商品名)を用いて、材料表面の任意箇所5点の導電率を室温環境下で測定しその平均値を評価した。
「素材40%圧延後の0.2%耐力増加割合」
表1に示す組成のアルミニウム合金からなる素材板を冷間圧延で圧延率40%(圧延率=(素板厚-圧延後板厚)/素板厚×100)で圧延を行い、上記した方法で引張試験を行い、(圧延後0.2%耐力-素材0.2%耐力)/素材0.2%耐力×100として0.2%耐力増加割合として算出した。
「素材40%圧延熱処理後の耐力、伸び」
表1に示す組成のアルミニウム合金からなる素材板を冷間圧延で圧延率40%で圧延し、さらに210℃×10分の条件で熱処理した材料について、上記した方法で0.2%耐力と伸びを測定した。
「DI缶の製造方法」
以下に、上述の板厚0.370mmのアルミニウム合金板を用いてDI(Draw and Ironing)缶を製造する工程とボトル缶の製造方法について説明する。
図3は先に説明したDI缶10の製造方法の工程図を示している。
DI缶10はアルミニウム合金製の有底筒状のDI缶であって、絞り加工、次いで行われる絞りしごき加工により、缶軸方向の高さ164.0mm~168.0mm、缶胴の外径65mm~67mm、最薄部を含むウォール厚0.115mm~0.140mm、ネック予定部であるフランジ部のフランジ厚0.200mm~0.230mmのDI缶を製造した。
「DI成形性の評価」
DI成形性は、DIプレスにより、10000缶の連続製缶時に缶胴切れが全く発生しなかったものを「○」、1~5缶発生したものを「△」、6缶以上発生したものを「×」と評価した。
「ボトル缶の製造方法」
以下に前述のDI缶10から図4に示すボトル缶55を製造する概要を説明する。
前記DI缶10の開口部にネッキング加工(縮径加工)を15~30回繰り返し行い、缶胴部55Aの径よりも小径の口金部55Bを形成する。次いで、口金部55Bに雄ねじ55dを形成し、そして、前記雄ねじ55dの上方の開口端部を折り返して、カール部55Eを成形し、図4に示すボトル缶55を製造した。
このボトル缶55のカール部55Eの外径は、32mm~36mmである。また、このボトル缶55の満中容量は、440ml~446mlであった。
このボトル缶55の縮径率は、「縮径率=(缶胴外径-カール外径)÷缶胴外径×100%」で計算でき、具体的な縮径率は、44.6%~52.2%であった。
なお、ボトル缶55の底部側にはDI缶~アルミボトル缶製造の途中段階で形成された底部52と同じ形状のドーム部55aと設置部55bと環状凸部55cを備えた底部55Fが形成されている。
「ネック、カール成形性」
ネック成形性の評価は、10000缶の連続製缶時に胴の座屈、カール割れが全く発生しなかったものを「〇」、1~5缶発生したものを「△」、6缶以上発生したものを「×」と評価した。
「缶体強度」
成形したアルミボトル缶(サンプル数=10)に軸方向の圧縮荷重を負荷し、ネジ部またはボトム部が座屈したときの荷重を測定して、その平均値を座屈強度とした。この座屈強度は、1500N以上であるものを良好「○」、1500未満であるものを不良「×」とした。
Figure 2024085402000002
Figure 2024085402000003
Figure 2024085402000004
Figure 2024085402000005
Figure 2024085402000006
表4に示す実施例No.1~20の試料は、質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備するアルミニウム合金からなるアルミニウム合金板である。このアルミニウム合金板は、表2に示す条件a~dの均質化処理条件と均熱処理条件を選択し、表3に示す圧延条件a~dの熱間仕上げ1パス目条件と熱間仕上げ2パス目条件と熱間仕上げ3パス目条件を選択し、これらの条件を表4に示すように組み合わせて作製している。
実施例No.1~20の試料は、表4に示すように、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、熱処理前後の耐力差が30MPa以下、導電率が38~42%IACS、平均結晶粒径が200μm以下を示した。これらの試料はDI成形性、ネック、カール成形性に優れ、缶体強度も充分であった。
より具体的には、圧延方向における耐力が221~312MPa、伸びが5.3~6.7%、熱処理前後の耐力差が1~27MPa、導電率が38.2~41.1%IACS、平均結晶粒径が133~191μmであった。
実施例No.1~20の試料は、Mg固溶度が0.9~1.31質量%の範囲、Si固溶度が0.10~0.30質量%の範囲を示す。より具体的には、Mg固溶度0.93~1.31質量%の範囲、Si固溶度0.11~0.29質量%であった。
また、実施例No.1~20の試料は、DI成形性、ネック、カール成形性、缶体強度のいずれにおいても優れていた。
実施例No.1~20の試料は、使用済みアルミニウム缶の配合率を81~98%としているが、いずれの試料においても特性上問題は無く、優れた特性を有するとともに、上述の耐力、伸びなどを有する優れたDI缶、アルミボトル缶を得ることができた。
比較例No.1の試料は最終調質焼鈍を行っていない試料であるが、熱処理後の耐力差が大きく、平均結晶粒径も大きいため、DI成形性とネック、カール成形性に問題を生じた。
比較例No.2、3の試料は最終調質焼鈍温度が高く、耐力も低いため、缶体強度不足となった。
比較例No.4の試料は、導電率が低く、耐力も低いため、缶体強度不足となった。
比較例No.5の試料は、析出物面積率が高く、耐力が高すぎるため、DI成形性とネック、カール成形性に問題を生じた。
比較例No.6の試料は、熱処理後の耐力差が大きく、平均結晶粒径が大きいため、ネック、カール成形性に問題を生じた。
比較例No.7、8の試料は、析出物面積率が高くなりすぎ、DI成形性とネック、カール成形性に問題を生じた。
比較例No.4~8の試料はいずれも耐力増加割合が低くなった。
1…アルミ缶ボディ用アルミニウム合金板、10…DI缶、11…胴部、12…底部、20…熱間粗圧延機、30…熱間仕上げ圧延機。

Claims (6)

  1. 質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部不可避不純物とAlの組成を具備するアルミニウム合金の素板からなり、
    前記素板の圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、0.5μm以下の微細析出物の占有面積率が1.0~2.5%、導電率が38~42%IACSであり、かつ、210℃で10分間熱処理を負荷する前後の耐力の差が30MPa以下であることを特徴とするアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板。
  2. 前記素板の質量比でMg固溶度が0.9~1.31%、Si固溶度が0.10~0.30%であることを特徴とする請求項1に記載のアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板。
  3. 前記素板をさらに板厚減少率40%となる冷間圧延を行った場合の耐力の増加割合が20~30%であり、かつ、冷間圧延後に210℃で10minの熱処理を負荷した後の耐力が230~320MPa、伸びが3.0%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板。
  4. 質量%で、Mn:0.90~1.10%、Mg:1.20~1.50%、Si:0.25~0.40%、Fe:0.35~0.55%、Cu:0.20~0.45%を含有し、残部Alと不可避的成分を含むアルミニウム合金の鋳塊を鋳造後、均質化処理を500~600℃で4~10時間加熱する条件で行ない、均熱処理を500~560℃で1時間以上加熱する条件で行い、
    熱間粗圧延に続いてシングルスタンド圧延機を用いて、1パス目100~400m/minの圧延速度、350~450℃の巻き取り温度、2パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻き取り温度、3パス目100~400m/minの圧延速度、320~420℃の巻き取り温度で熱間仕上げ圧延を行い、仕上板厚を2.0~3.6mmとし、
    その後、圧延率を76~95%に設定して冷間圧延を行い、最終冷間圧延後に昇温速度3℃/min以上、保持温度140~230℃、保持時間1~10時間で最終調質焼鈍を行い、板厚0.20~0.51mm、圧延方向における耐力が220~320MPa、伸びが5.0%以上、平均結晶粒径が200μm以下であるアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板を製造することを特徴とするアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 素板の質量比でMg固溶度が0.9~1.31%、Si固溶度が0.10~0.30%であることを特徴とする請求項4に記載のアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
  6. 前記アルミニウム合金の鋳造時に、アルミニウム合金鋳塊に対し使用済みアルミ缶あるいは使用済みアルミ缶と工程端材からなるアルミニウムリサイクル材を質量比80%以上配合することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のアルミボトル缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
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