I.定義
用語「Rスポンジン」および「RSPO」とは本明細書では、別段の指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物供給源由来の天然Rスポンジンのことである。前記用語は、「完全長」非処理Rスポンジンおよび細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のRスポンジンを包含する。前記用語は、Rスポンジンの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。Rスポンジンは4種のタンパク質、Rスポンジン1(RSPO1)、Rスポンジン2(RSPO2)、Rスポンジン3(RSPO3)、およびRスポンジン4(RSPO4)のファミリーである。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO1である。例となるヒトRSPO1核酸配列の配列は配列番号1であり、または例となるヒトRSPO1は配列番号2のアミノ酸配列である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO2である。例となるヒトRSPO2核酸配列の配列は配列番号3であり、または例となるヒトRSPO2は配列番号4のアミノ酸配列である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO3である。例となるヒトRSPO3核酸配列の配列は配列番号5であり、または例となるヒトRSPO3は配列番号6のアミノ酸配列である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO4である。例となるヒトRSPO4核酸配列の配列は配列番号7であり、または例となるヒトRSPO4は配列番号8のアミノ酸配列である。
「Rスポンジンバリアント」、「RSPOバリアント」、またはその変種は、本明細書で開示されるRスポンジンのいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有すると本明細書で定義される一般に活性RスポンジンポリペプチドであるまたはこれをコードするRスポンジンポリペプチドまたはポリヌクレオチドを意味する。そのようなRスポンジンバリアントには、例えば、1つまたは複数の核酸またはアミノ酸残基が付加されているまたは欠失しているRスポンジンが含まれる。通常、Rスポンジンバリアントは、本明細書で開示されるRスポンジンに対して少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有することになる。通常、Rスポンジンバリアントは少なくとも約10残基長である、または少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600長、もしくはそれよりも長い。場合により、Rスポンジンバリアントは、Rスポンジンと比べた場合、1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいはRスポンジンと比べた場合、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10以下の保存的アミノ酸置換を有する配列を有するまたはコードすることになる。
用語「Rスポンジン転位」および「RSPO転位」とは本明細書では、例えば、Rスポンジン、バリアント、もしくはその断片または第二の遺伝子、バリアント、もしくはその断片を含む切れた染色体の一部が異なる染色***置、例えば、Rスポンジン天然位置とは異なる染色***置または第二の遺伝子の天然位置とは異なるRスポンジン天然位置中および/もしくはその周囲の染色***置に再結合するRスポンジンのことである。Rスポンジン転位は、RSPO1転位、RSPO2転位、RSPO3転位、および/またはRSPO4転位であってもよい。
用語「Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチド」および「RSPO転位融合ポリヌクレオチド」とは本明細書では、Rスポンジン転位遺伝子産物または融合ポリヌクレオチドの核酸配列のことである。Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチドは、RSPO1転位融合ポリヌクレオチド、RSPO2転位融合ポリヌクレオチド、RSPO3転位融合ポリヌクレオチド、および/またはRSPO4転位融合ポリヌクレオチドであってもよい。用語「Rスポンジン転位融合ポリペプチド」および「RSPO転位融合ポリペプチド」とは本明細書では、Rスポンジン転位遺伝子産物または融合ポリヌクレオチドのアミノ酸配列のことである。Rスポンジン転位融合ポリペプチドは、RSPO1転位融合ポリペプチド、RSPO2転位融合ポリペプチド、RSPO3転位融合ポリペプチド、および/またはRSPO4転位融合ポリペプチドであってもよい。
本明細書で定義される用語「Rスポンジン転位アンタゴニスト」は、Rスポンジン転位融合ポリペプチドにより媒介される生物活性を部分的にもしくは完全に遮断する、阻害する、または中和する任意の分子である。いくつかの実施態様では、そのようなアンタゴニストはRスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する。一実施態様によれば、アンタゴニストはポリペプチドである。別の実施態様によれば、アンタゴニストは抗Rスポンジン転位抗体である。別の実施態様によれば、アンタゴニストは小分子アンタゴニストである。別の実施態様によれば、アンタゴニストはポリヌクレオチドアンタゴニストである。Rスポンジン転位アンタゴニストは、RSPO1転位アンタゴニスト、RSPO2転位アンタゴニスト、RSPO3転位アンタゴニスト、および/またはRSPO4転位アンタゴニストであってもよい。
本明細書で定義される用語「wnt経路アンタゴニスト」は、wnt経路(例えば、wnt経路ポリペプチド)により媒介される生物活性を部分的にもしくは完全に遮断する、阻害する、または中和する任意の分子である。いくつかの実施態様では、そのようなアンタゴニストはwnt経路ポリペプチドに結合する。一実施態様によれば、アンタゴニストはポリペプチドである。別の実施態様によれば、アンタゴニストは抗体アンタゴニストである。別の実施態様によれば、アンタゴニストは小分子アンタゴニストである。別の実施態様によれば、アンタゴニストはポリヌクレオチドアンタゴニストである。
「ポリヌクレオチド」、または「核酸」とは、本明細書では互換的に使用されるように、任意の長さのヌクレオチドのポリマーのことであり、DNAおよびRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはその類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、または合成反応によりポリマーに組み込むことができる任意の基質であることが可能である。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドおよびその類似体を含んでいてもよい。ヌクレオチドの配列に非ヌクレオチド成分が割り込んでいてもよい。ポリヌクレオチドは、合成後に標識へのコンジュゲーションなど(1つまたは複数の)改変を含んでもよい。他の種類の改変には、例えば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1つまたは複数の類似物での置換、例えば、無電荷連鎖(例えば、メチルホスホン酸、ホスホトリエステル、アミド亜リン酸エステル、カルバミン酸、等)および電荷連鎖(例えば、ホスホロチオエート、ジチオリン酸、等)を有する修飾、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リシン、等)などのペンダント部分を含有する修飾、介入物(例えば、アクリジン、ソラレン、等)を有する修飾、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属、等)を含有する修飾、アルキル化剤を含有する修飾、改変された連鎖(例えば、アルファアノマー核酸、等)を有する修飾などのヌクレオチド間修飾、ならびに非改変型の(1つまたは複数の)ポリヌクレオチドが含まれる。さらに、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれでも、例えば、ホスホン酸エステル基、リン酸基で置換される、標準保護基により保護される、または活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の連鎖を調製してもよいし、または固体もしくは半固体支持体にコンジュゲートされていてもよい。5’および3’末端OHはリン酸化するまたはアミンもしくは1から20炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルも標準保護基に誘導体化しうる。ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環式糖類似物、α−アノマー糖、アラビノーズ、キシロース、またはリキソースなどのエピメリック糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、およびメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当技術分野で一般に知られているリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態も含有することができる。1つまたは複数のホスホジエステル連鎖は代わりの連結基で置換してもよい。これらの代わりの連結基には、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ギ酸アセタール」)で置換されており、それぞれのRまたはR’は独立してHであるまたは場合によりエーテル(−O−)連鎖、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジルを含有する置換されたもしくは非置換アルキル(1〜20C)である実施態様が含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド内のすべての連鎖が同一である必要はない。先行する説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で言及されるすべてのポリヌクレオチドに当てはまる。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは、一般に約200ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない、一般的に一本鎖の合成ポリヌクレオチドのことである。用語「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」は相互排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記説明は、オリゴヌクレオチドに対して等しく、完全に適用可能である。
用語「プライマー」とは、核酸にハイブリダイズし、一般に遊離の3’−OH基を与えることにより続いて相補的核酸を重合化することができる一本鎖ポリヌクレオチドのことである。
用語「小分子」とは、分子量が約2000ダルトンまたはそれよりも少ない、好ましくは約500ダルトンまたはそれよりも少ない任意の分子のことである。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞系」、および「宿主細胞培養」は互換的に使用されており、そのような細胞の子孫を含む、外来性核酸が導入されている細胞のことである。宿主細胞には、原発性形質転換細胞および継代の数とは無関係にそれに由来する子孫を含む「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれる。子孫は核酸含有量が親細胞と完全に同一というわけではないことがあるが、変異を含有することがある。最初の形質転換細胞においてスクリーニングしてまたは選択して求めた機能または生物活性と同じ機能または生物活性を有する変異体子孫は本明細書に含まれる。
用語「ベクター」とは、本明細書で使用されるように、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸のことである。前記用語には、自己複製核酸構造体としてのベクターならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれているベクターが含まれる。ある種のベクターは、それが作動可能に連結した核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から分離されている抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)により決定される場合、95%よりも多いまたは99%純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法についての概説は、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B 848:79〜87(2007)を参照されたい。
「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離されている核酸分子のことである。単離された核酸には、通常その核酸分子を含有する細胞に含有される核酸分子が含まれるが、前記核酸分子は染色体外にまたはその天然の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在する。
用語「抗体」は本明細書では、その最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限りで抗体断片を含むがこれらに限定されない種々の抗体構造体を包含する。
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子のことである。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線形抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多重特異的抗体が含まれるが、これらに限定されない。
基準抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて基準抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする抗体のことであり、逆に基準抗体は競合アッセイにおいて抗体のその抗原への結合を50%以上ブロックする。例となる競合アッセイは本明細書に提供されている。
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」は本明細書では互換的に使用されて、天然の抗体構造に実質的に類似する構造を有するまたは本明細書で定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、例えば、天然に存在する変異を含有するまたはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能なバリアント抗体(そのようなバリアントは一般に少量存在する)を除いて、実質的に均一な抗体の集団(すなわち、その集団を構成する個々の抗体が同一であるおよび/または同じエピトープに結合する)から得られる抗体のことである。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して向けられている異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられている。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特長を指しており、いかなる特定の方法による抗体の産生も必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の技法により作製しうる(モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例となる方法は本明細書に記載されている)。
「天然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子のことである。例えば、天然IgG抗体は約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質であり、ジスルフィド結合している2本の同一の軽鎖と2本の同一の重鎖で構成されている。N末端からC末端に向かって、それぞれの重鎖は可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、それぞれの軽鎖は可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類のうちの1つに割り当てられることもある。
用語「キメラ」抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来しており、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる供給源または種に由来する抗体のことである。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生されるまたはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源由来の抗体のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体のことである。ある特定の実施態様では、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のHVRに一致しており、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のFRに一致している少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含むことがある。「ヒト化型の」抗体、例えば、非ヒト抗体とはヒト化を受けた抗体のことである。
抗体の「クラス」とは、定常領域またはその重鎖により所有される定常領域の種類のことである。抗体には5つの主要クラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらの抗体のいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域に起因し、抗体アイソタイプにより異なる生物活性のことである。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合と補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、およびB細胞活性化が含まれる。
本明細書の用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。用語は天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸びている。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在していることもあれば存在しないこともある。本明細書において別段に明記されなければ、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、EUインデックスとも呼ばれるEU付番方式に従っており、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されている。
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基のことである。可変ドメインのFRは一般に4つのFRドメイン、FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVRとFR配列は一般に以下の配列、VH(またはVL):FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4で現れる。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列のセレクションにおいて最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列のセレクションは可変ドメイン配列のサブグループに由来する。一般に、配列のサブグループは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication 91〜3242、Bethesda MD(1991)、1〜3巻におけるのと同じサブグループである。一実施態様では、VLでは、サブグループはKabatら、上記参照におけるのと同じサブグループカッパIである。一実施態様では、VHでは、サブグループはKabatら、上記参照におけるのと同じサブグループIIIである。
本明細書での目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク由来の軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含むことがあり、またはアミノ酸配列変化を含有することもある。いくつかの実施態様では、アミノ酸変化の数は10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
用語「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体重鎖または軽鎖のうち抗体を抗原に結合させることに関与しているドメインのことである。天然抗体の重鎖と軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHとVL)は一般に類似する構造を有しており、それぞれのドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindtら、Kuby Immunology、第6版、W.H.FreemanおよびCo.、91ページ(2007)を参照)。単一のVHまたはVLドメインで抗原結合特異性を与えるのに十分でありうる。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインを使用して単離し、それぞれ相補的VLまたはVHのライブラリーをスクリーニングすることができる。例えば、Portolanoら、J.Immunol.150:880〜887(1993);Clarksonら、Nature 352:624〜628(1991)を参照されたい。
本明細書で使用される用語「超可変領域」または「HVR」とは、抗体可変ドメインのうち配列が超可変であるおよび/または構造的に明確なループ(「超可変ループ」)を形成する領域のそれぞれのことである。一般には、天然の4つの鎖抗体は6つのHVR、すなわちVH(H1、H2、H3)に3つ、VL(L1、L2、L3)に3つを含む。HVRは一般に、超可変ループ由来のおよび/または「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は最も高度な配列可変性であるかつ/または抗原認識に関与している。例となる超可変ループはアミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)に存在する(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196:901〜917(1987))。例となるCDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2、およびCDR−H3)は、アミノ酸残基L1の24〜34、L2の50〜56、L3の89〜97、H1の31〜35B、H2の50〜65、およびH3の95〜102に存在する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)。VHにおけるCDR1という例外はあるが、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、CDRのうちの短縮型CDR、またはa−CDRと呼ばれる領域内に含有される。例となるa−CDR(a−CDR−L1、a−CDR−L2、a−CDR−L3、a−CDR−H1、a−CDR−H2、およびa−CDR−H3)は、アミノ酸残基L1の31〜34、L2の50〜55、L3の89〜96、H1の31〜35B、H2の50〜58、およびH3の95〜102に存在する(Almagro and Fransson、Front.Biosci.13:1619〜1633(2008)参照)。別段に示されなければ、可変ドメインにおけるHVR残基および他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書ではKabatら、上記参照に従って付番されている。
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の総和の強度のことである。他の方法で指示されていなければ、本明細書で使用されるように、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1対1の相互作用を反映する内因性結合親和性のことである。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般には解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で公知の一般的方法により測定することができる。結合親和性を測定するための特定の説明的で例となる実施態様は以下に記載されている。
「親和性成熟」抗体とは、変更により抗原に対する抗体の親和性が改善されるような変更がない親抗体と比べて、1つまたは複数の高頻度可変性領域(HVR)に1つまたは複数の変更がある抗体のことである。
用語「抗Rスポンジン転位抗体」および「Rスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する抗体」とは、抗体がRスポンジン転位を標的にする際に診断薬および/または治療薬として有用であるように、十分な親和性でRスポンジン転位融合ポリペプチドに結合することができる抗体のことである。一実施態様では、抗Rスポンジン転位抗体が無関係な非Rスポンジン転位融合ポリペプチド、および/または非転位Rスポンジンポリペプチドに結合する程度は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)により測定された場合、抗体のRスポンジン転位融合ポリペプチドへの結合の約10%未満である。ある種の実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する抗体は、1≦μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10−8M以下、例えば、10−8Mから10−13M、例えば、10−9Mから10−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある種の実施態様では、抗Rスポンジン転位抗体は、Rスポンジン転位の中で独特であるRスポンジン転位のエピトープに結合する。
「ブロッキング」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を阻害するまたは減少させる抗体である。好ましいブロッキング抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的にまたは完全に阻害する。
「ネイキッド抗体」とは、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識にコンジュゲートしない抗体のことである。ネイキッド抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
「免疫コンジュゲート」は、細胞傷害性薬剤を含むがこれに限定されない1つまたは複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体である。
基準ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要な場合はギャップを導入して最大パーセント配列同一性を達成した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なすことなく、基準ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一の候補配列中のアミノ酸残基のパーセントと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアライメントは、当分野の技術の範囲内である種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公表されているコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大アライメントを実現するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるのに適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書での目的のために、%アミノ酸配列同一性値は配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生み出される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.により生み出され、ソースコードは米国著作権局、Washington D.C.20559にユーザードキュメンテーションと一緒に提出され、そこに米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN−2プログラムはGenentech,Inc.、South San Francisco、Californiaから公表されており、またはソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上で使用するためにコンパイルすべきである。すべての配列比較パラメータはALIGN−2プログラムにより設定されており変動しない。
ALIGN−2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bにとっての、これとの、またはこれに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(代わりに、所与のアミノ酸配列Bにとって、これと、またはこれに対してある%のアミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aと言い表すことができる)は以下の通りに計算され、
100掛ける分数X/Y
XはAとBのそのプログラムアライメントにおいて配列アライメントプログラムALIGN−2により同一マッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、YはBにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性はAに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくならないことは認識されるであろう。他の方法で特に記述されていなければ、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用するすぐ前のパラグラフに記載されている通りに得られる。
用語「検出」は直接的検出と間接的検出を含む、いかなる検出手段でも含む。
本明細書で使用される用語「バイオマーカー」とは、試料中で検出することができる、例えば、予測的、診断的および/または予後的指標物質のことである。バイオマーカーは、ある種の分子的、病態的、組織学的、および/または臨床的特長に特徴のある疾患または障害(例えば、癌)の特定のサブタイプの指標物質としての働きをすることができる。いくつかの実施態様では、バイオマーカーは遺伝子である。いくつかの実施態様では、バイオマーカーは遺伝子のバリアント(例えば、変異および/または多型)である。いくつかの実施態様では、バイオマーカーは転位である。バイオマーカーには、ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)、ポリペプチド、ポリペプチドとポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、および/または糖脂質ベースの分子マーカーが含まれるが、これらに限定されない。
個体にとっての臨床的利益の増加と関連するバイオマーカーの「存在」、「量」、または「レベル」は、生体試料における検出可能なレベルである。これらは当業者に公知であり本明細書でも開示されている方法により測定することができる。評価されるバイオマーカーの発現レベルまたは量を使用して、治療に対する応答を判定することができる。
用語「発現のレベル」と「発現レベル」は一般に互換的に使用され、一般には生体試料中のバイオマーカーの量のことである。「発現」とは一般には、(例えば、遺伝子にコードされたおよび/またはエピジェネティックな)情報が細胞内に存在し作用する構造物に変換されるプロセスのことである。したがって、本明細書で使用されるように、「発現」とはポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)さえも指すことがある。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、選択的スプライシングにより生成された転写物または分解した転写物由来であれ、例えば、タンパク質分解によりポリペプチドの翻訳後プロセシング由来であれ、発現されたと見なすことにする。「発現された遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後ポリペプチドに翻訳される遺伝子、およびRNAに転写されるがポリペプチドには翻訳されない(例えば、トランスファーRNAおよびリボソームRNA)遺伝子も含まれる。
「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」とは、疾患または障害(例えば、癌)に罹っていない個体(単数または複数)などの対照、または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)と比べて個体におけるバイオマーカーの増加した発現または増加したレベルのことである。
「低下した発現」、「低下した発現レベル」、または「低下したレベル」とは、疾患または障害(例えば、癌)に罹っていない個体(単数または複数)などの対照、または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)と比べて個体におけるバイオマーカーの減少した発現または減少したレベルのことである。
用語「ハウスキーピングバイオマーカー」とは、典型的にはあらゆる細胞型に類似して存在するバイオマーカーまたはバイオマーカーの群(例えば、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)のことである。いくつかの実施態様では、ハウスキーピングバイオマーカーは「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」とは本明細書では、その活性が細胞機能の維持に不可欠なタンパク質をコードし、典型的にはあらゆる細胞型に類似して存在する遺伝子または遺伝子の群のことである。
本明細書で使用される「増幅」とは一般に、所望の配列の複数のコピーを産生するプロセスのことである。「複数のコピー」は少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は鋳型配列に対して必ずしも完全な配列相補性または同一性を意味するわけではない。例えば、コピーには、デオキシイノシンなどの類似物、意図的配列変化(例えば、鋳型にハイブリダイズすることが可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーを通じて導入される配列変化)、および/または増幅中に生じる配列エラーが含まれうる。
用語「多重PCR」とは、1回の反応で2つ以上のDNA配列を増幅する目的で1つよりも多いプライマーセットを使用して単一供給源(例えば、個体)から得られる核酸で実行される単一PCRのことである。
ハイブリダイゼーション反応の「厳密性」は当業者であれば容易に決定可能であり、一般にプローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依拠する経験的計算である。一般に、プローブが長くなるほど適切なアニーリングには高い温度が必要であり、プローブが短いほど必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは一般に、相補鎖がその融解温度よりも低い環境中に存在する場合に変性DNAが再アニールする能力に依拠している。プローブとハイブリダイズすることが可能な配列の間の所望の相同性の程度が高いほど、使用することができる相対的温度も高くなる。その結果、相対的温度が高いほど反応条件はさらに厳密になる傾向にあり、温度が低いほど厳密性も低くなることになる。ハイブリダイゼーション反応の厳密性についての追加の詳細および説明は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience Publishers、(1995)を参照されたい。
本明細書で定義される「厳密な条件」または「高厳密性条件」は、(1)洗浄に低イオン強度および高温度、例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを用いる、(2)ハイブリダイゼーション中は、ホルムアミド、例えば、0.1%牛血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムのpH6.5の50mMリン酸ナトリウムバッファーを有する50%(v/v)ホルムアミドなどの変性剤を42℃で用いる条件により、または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理されたサケ***DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を42℃で用いる溶液中での一晩ハイブリダイゼーション、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃で10分間洗浄、続いてEDTAを含有する0.1×SSCからなる55℃での10分間の抗厳密性洗浄により確認することができる。
「中程度厳密条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989により記載されている通りに確認することができ、上記の条件よりも厳密性の低い洗浄液とハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用が含まれる。中程度厳密条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20mg/ml変性剪断サケ***DNAを含む溶液中での37℃、一晩の培養、続いて約37〜50℃、1×SSCでのフィルターの洗浄である。当業者であれば、プローブ長および同類のものなどの要因を収容するように温度、イオン強度、等を必要に応じて調整する方法を認識している。
用語「診断」は本明細書では、分子状態または病理学的状態、疾患または状態(例えば、癌)の同定または分類を指すのに使用される。例えば、「診断」は特定種類の癌の同定を指すことがある。「診断」は、例えば、組織病理学的基準による、または分子特長(例えば、バイオマーカー(例えば、特定の遺伝子または前記遺伝子によりコードされるタンパク質)のうちの1つまたは組合せの発現に特徴のあるサブタイプ)による癌の特定のサブタイプの分類を指すこともある。
用語「診断を支援する」は本明細書では、疾患または障害(例えば、癌)の特定種類の症状または状態の存在、または性質に関して臨床的決定を下すのを支援する方法を指すのに使用される。例えば、疾患または状態(例えば、癌)の診断を支援する方法は、個体由来の生体試料におけるある種のバイオマーカーを検出することを含むことができる。
用語「試料」は、本明細書で使用されるように、例えば、物理的、生化学的、化学的および/または生理学的特徴に基づいて特徴付けられるかつ/または同定されることになる細胞実体および/または他の分子実体を含有する対象および/または対象の個体から得られるまたはこれに由来する組成物のことである。例えば、語句「疾患試料」およびその変種とは、特徴付けられることになる細胞実体および/または分子実体を含有することが予測されるまたは分かっている関心の対象から得られる任意の試料のことである。試料には、一次細胞もしくは培養細胞または細胞系統、細胞上澄み、細胞可溶化物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、***、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、発汗、粘液、腫瘍可溶化物、および組織培養培地、均質化された組織などの組織抽出物、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにその組合せが含まれるがこれらに限定されない。
「組織試料」または「細胞試料」とは、対象または個体の組織から得られる類似の細胞の収集物を意味する。組織または細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結したかつ/もしくは保存された器官由来の固形組織、組織試料、生検ならびに/または吸引液;血液または血漿などの任意の血液成分;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液などの体液;対象の妊娠または発生における任意の時間に由来する細胞でもよい。組織試料は一次細胞もしくは培養細胞または細胞系統でもよい。場合により、組織または細胞試料は疾患組織/器官から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝血剤、バッファー、固定液、栄養剤、抗生物質または同類のものなどの、天然の組織と天然に混ざり合ってはいない化合物を含有していてもよい。
「基準試料」、「基準細胞」、「基準組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、本明細書で使用されるように、比較目的で使用される試料、細胞、組織、標準、またはレベルのことである。一実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体(例えば、組織または細胞)の健康なおよび/または非疾患部分から得られる。例えば、疾患細胞または組織に隣接する健康なおよび/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)である。別の実施態様では、基準試料は同じ対象または個体の身体の非治療組織および/または細胞から得られる。さらに別の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は対象でも個体でもない個体の身体(例えば、組織または細胞)の健康なおよび/または非疾患部分から得られる。さらに別の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は対象でも個体でもない個体の身体の非治療組織および/または細胞から得られる。
本明細書での目的のために、組織試料の「切片」とは、組織試料の単一部分または片、例えば、組織試料から切断される組織または細胞の薄切片を意味する。組織試料の同じ切片は形態的レベルでも分子レベルでも分析される、またはポリペプチドとポリヌクレオチドの両方に関して分析されると理解されているという条件で、組織試料の複数の切片が採取され分析にかけられてもよいと理解されている。
「相関させる(correlateまたはcorrelating)」とは、いかなる方法であれ、第一の分析またはプロトコールの成績および/または結果を第二の分析またはプロトコールの成績および/または結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコールを実行するのに第一の分析またはプロトコールの結果を使用してもよいし、第二の分析またはプロトコールを実施すべきかどうかを決定するために第一の分析またはプロトコールの結果を使用してもよい。ポリヌクレオチド分析またはプロトコールの実施態様に関して、特定の治療計画を実施すべきかどうかを決定するのにポリヌクレオチド発現分析またはプロトコールの結果を使用してもよい。
「個体の応答」または「応答」は、(1)減速および完全停止を含む疾患進行(例えば、癌進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの減少、(3)隣接する末梢器官および/もしくは組織への癌細胞浸潤の阻害(例えば、減少、減速または完全停止)、(4)転移の阻害(例えば、減少、減速または完全停止)、(5)疾患もしくは障害(例えば、癌)に関連する1つまたは複数の症状のある程度の軽減、(6)無増悪生存期間の長さの増加、ならびに/または(9)治療に続く所与の時点での死亡率の減少を含むが、これらに限定されない、個体に対する利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価することができる。
語句「実質的に類似する」は、本明細書で使用されるように、当業者であれば2つの値の差を、前記値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴という文脈内で統計的に有意ではないと見なすほど2つの数値(一般には、1つは分子に関連しもう1つは基準/コンパレーター分子に関連する)間の十分高度な類似性のことである。前記2つの値の差は、基準/コンパレーター値の関数として、例えば、約20%未満、約10%未満、および/または約5%未満であってもよい。語句「実質的に正常な」とは、基準(例えば、正常な基準)に実質的に類似していることである。
語句「実質的に異なる」とは、当業者であれば2つの値の差を、前記値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴という文脈内で統計的に有意であると見なすほど2つの数値(一般には、1つは分子に関連しもう1つは基準/コンパレーター分子に関連する)間の十分に高度な差のことである。前記2つの値の差は、基準/コンパレーター分子の値の関数として、例えば、約10%よりも大きい、約20%よりも大きい、約30%よりも大きい、約40%よりも大きい、および/または約50%よりも大きくてもよい。
本明細書で使用される場合の単語「標識」とは、検出可能な化合物または組成物のことである。標識は典型的には、ポリヌクレオチドプローブまたは抗体などの試薬に直接的にまたは間接的にコンジュゲートされるまたは融合され、前記標識がコンジュゲートされているまたは融合されている試薬の検出を促進する。標識はそれ自体が検出可能であってもよい(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)し、または酵素標識の場合は、基質化合物または組成物の化学的変化を触媒して、検出可能な産物を生じてもよい。
「有効量」の薬剤とは、必要な用量で必要な期間、所望の治療結果または予防結果を達成するのに有効な量のことである。
本発明の「治療的有効量」の物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストは、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの能力に応じて変化しうる。治療的有効量は、物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの毒作用または有害作用よりも治療的に有益な効果のほうが上回る量でもある。「予防的有効量」とは、必要な用量で必要な期間、所望の予防結果を達成するのに有効な量のことである。典型的にはしかし必ずしもではないが、予防用量は疾患に先立ってまたはその初期段階で対象において使用されるために、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないことになる。
用語「薬学的製剤」とは、そこに含有される活性成分の生物活性が効果的であることを可能にするような形態であり、前記製剤が投与されると考えられる対象にとって容認できないほど有毒である追加の成分を含有しない調製物のことである。
「薬学的に許容される担体」とは、活性成分以外の薬学的製剤中の、対象にとって無毒の成分のことである。薬学的に許容される担体には、バッファー、賦形剤、安定化剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、「治療」(および、「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」などのその文法的変形)とは、治療を受けている個体の自然経過を変える試みにおける臨床的介入のことであり、予防のためにまたは臨床病理の経過中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発を予防すること、症状の軽減、疾患のいかなる直接的または間接的病理学的結果も減少すること、転移を予防すること、疾患進行の速度を減少すること、疾患状態の寛解または緩和、および寛解または予後改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、本発明の抗体を使用して疾患の発症を遅らせるまたは疾患の進行を遅くする。
用語「癌」および「癌性の」は、典型的には調節されない細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態を指すまたは記述する。癌の例には、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。そのような癌のさらに特定の例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、白血病および他のリンパ増殖性障害、ならびに様々な種類の頭頸部癌が含まれる。
用語「抗癌療法」とは、癌を治療するのに有用な療法のことである。抗癌治療剤には、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害性薬剤、放射線療法に使用される薬剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、および癌を治療するための他の薬剤、抗CD20抗体、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、Gleevec(商標)(イマチニブメチル酸塩))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的、PDGFR−ベータ、BlyS、APRIL、(1つまたは複数の)BCMA受容体、TRAIL/Apo2のうちの1つまたは複数に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、ならびに他の生体活性剤および有機化学剤、等が含まれるが、これらに限定されない。それらの組合せも本発明に含まれる。
本明細書で使用される用語「細胞傷害剤」とは、細胞機能を阻害するもしくは妨害するかつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質のことである。細胞傷害剤には、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位元素);化学療法剤もしくは薬物(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンもしくは他の挿入剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;細菌、真菌、植物もしくは動物起源の小分子毒素もしくは酵素的に活性な毒素などの毒素、その断片および/もしくはバリアントも含む;ならびに下に開示される様々な抗腫瘍もしくは抗癌剤が含まれるがこれらに限定されない。
「化学療法剤」とは、癌の治療に有用な化学化合物のことである。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphoramide)、トリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン(bullatacinone));デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン、ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似物トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、および9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼルシンおよびビゼレシン合成類似物を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似物KW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン(novembichin);フェネステリン(phenesterine)、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例えば、Nicolaouら、Angew.Chem Intl.Ed.Engl.、33:183〜186(1994)参照);CDP323、経口アルファ−4インテグリン阻害剤;ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連色素タンパク質エネジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ(pyrrolino)−ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソームインジェクション(DOXIL(登録商標))、リポソーマルドキソルビシン(liposomal doxorubicin)TLC D−99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソーマルドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝剤;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどの葉酸類似物;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似物;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似物;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナル(anti−adrenals);フォリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトレキセート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム:エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)ポリサッカライド複合体(JHS天然物、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル(chloranbucil);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、およびカルボプラチンなどの白金薬剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合が微小管を形成するのを妨げるビンカ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロン酸;トポイソメラーゼ阻害剤RES 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイン酸などのレチノイド;クロドロン酸(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロン酸(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(SKELID(登録商標))、またはリセドロン酸(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似物);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC−アルファ、Raf、H−Ras、および上皮増殖因子受容体(EGF−R)などの、異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド;THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU−11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI−779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウムなどのBcl−2阻害剤(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFR阻害剤(下の定義参照);チロシンキナーゼ阻害剤(下の定義参照);ラパマイシンなどのセリン−スレオニンキナーゼ阻害剤(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ロナファーニブなどのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(SCH 6636、SARASAR(商標));ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法を表す略字);ならびにFOLFOX(オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を5−FUおよびロイコボリンと併用した治療レジメンを表す略字)などの上記のうちの2つ以上の薬剤の組合せが含まれる。
本明細書に定義される化学療法剤には、癌の増殖を促進することができるホルモンの効果を調節する、減少する、ブロックするまたは阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌療法」が含まれる。化学療法剤は、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4−ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン(trioxifene)、ケイキシフェン(keoxifene)、およびSERM3などの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)を含む、混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン;フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、およびEM800(そのような薬剤はエストロゲン受容体(ER)二量体化をブロックし、DNA結合を阻害し、ERターンオバーを増加させ、および/またはERレベルを抑制しうる)などのアゴニスト特性のない純粋な抗エストロゲン;ホルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))などのステロイドアロマターゼ阻害剤、ならびにアナストロゾール(anastrazole)(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアミノグルテチミドなどの非ステロイドアロマターゼ阻害剤を含むアロマターゼ阻害剤、ならびに他のアロマターゼ阻害剤にはボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、および4(5)−イミダゾールが含まれる;リュープロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプテレリンを含む、黄体ホルモン放出ホルモンアゴニスト;酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロンなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロールおよびプレマリンなどのエストロゲン、ならびにフルオキシメステロン、オールトランスレチオニン酸(all transretionic acid)およびフェンレチニドなどのアンドロゲン/レチノイドを含む、性ステロイド;オナプリストン(onapristone);抗プロゲステロン(anti−progesterones);エストロゲン受容体下方調節因子(ERD);フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミドなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組合せを含むが、これらに限定されず、ホルモンそれ自体でもよい。
本出願において使用される用語「プロドラッグ」とは、親ドラッグと比べて腫瘍細胞に対して細胞傷害性が少なく、酵素的に活性化されるまたはより活性な親形態に転換することができる薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態のことである。例えば、Wilman、「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」Biochemical Society Transactions、14、375〜382ページ、615th Meeting Belfast (1986)およびStellaら、「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery、Borchardtら、(編)、247〜267ページ、Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、より活性な無細胞傷害性ドラッグに転換することができるリン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、場合により置換フェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは場合により置換フェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよび他の5−フルオロウリジンプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。本発明において使用するためにプロドラッグ形態に誘導化することができる細胞傷害性薬物の例には、上記の化学療法剤が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書で使用される場合の「増殖阻害薬剤」とは、細胞(例えば、その増殖がインビトロまたはインビボのどちらかでwnt経路遺伝子および/またはRスポンジン転位発現に依拠している細胞)の増殖を阻害する化合物または組成物のことである。増殖阻害薬剤の例には、G1停止およびM期停止を誘導する薬剤などの細胞周期進行をブロックする(S期以外の場所で)薬剤が含まれる。古典的M期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1を停止させる薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、およびアラビノフラノシル−CなどのDNAアルキル化剤はS期停止にも波及する。追加の情報は、The Molecular Basis of Cancer、MendelsohnおよびIsrael、編、Chapter 1、entitled「Cell cycle regulation、oncogenes、and antineoplastic drugs」by Murakamiら、(WB Saunders:Philadelphia、1995)、特に13ページに見ることができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、両方ともイチイに由来する抗癌薬である。ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、ヨーロッパイチイに由来するが、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)の半合成類似物である。パクリタキセルおよびドセタキセルはチューブリン二量体からの微小管の構築を促進し、細胞において有糸***を阻害する脱重合を妨げることにより微小管を安定化する。
「放射線療法」は、正常に機能する細胞の能力を制限するまたは細胞を完全に破壊するように細胞に対する十分な損傷を誘導する有向のガンマ線またはベータ線を使用することを意味する。治療の投与用量および持続時間を決定する当技術分野で公知の方法が数多く存在することが認識される。典型的な治療は1回投与として与えられ、典型的な投与用量は1日当たり10から200単位(グレイ)に及ぶ。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。ある特定の実施態様では、個体または対象はヒトである。
用語「同時に」とは、投与の少なくとも一部が時間的に重なっている2つ以上の治療薬の投与を指すのに本明細書では使用される。したがって、同時投与には、1つまたは複数の他の薬剤の投与を中断した後に1つまたは複数の薬剤の投与が続く投与計画が含まれる。
「減少させる」または「阻害する」は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれよりも多い全体的減少を引き起こす能力を意味する。減少させるまたは阻害するは、治療されている障害の症状、転移の存在もしくは大きさ、または原発性腫瘍の大きさに言及することができる。
用語「添付文書」は、適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症および/またはそのような治療製品に関する警告についての情報を含む、治療製品のコマーシャルパッケージに通例含まれる使用説明書に言及するのに使用される。
「製造品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害(例えば、癌)の治療のための薬物、または本明細書に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む任意の製造品(例えば、パッケージまたは容器)またはキットである。ある種の実施態様では、製造品またはキットは、本明細書に記載される方法を実施するためのユニットとして販売促進され、流通され、または販売される。
「標的オーディエンス」は、特に特定の使用、治療、または効能のために市場に出すまたは宣伝することにより、特定の薬物が販売促進されているまたは販売促進されることが意図されている対象となる人の集団または施設であり、例えば、個体、全住民、新聞、医学文献、および雑誌の読者、テレビまたはインターネット視聴者、ラジオまたはインターネットの聴取者、医者、製薬会社、等である。
当業者により理解されているように、本明細書の値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータ自体に向けられている実施態様を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記述は「X」の記述を含む。
本明細書に記載される本発明の態様および実施態様には、態様および実施態様「からなる」および/または「基本的にからなる」が含まれることは理解されている。本明細書で使用されるように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」には他の方法で指示されていなければ複数の参照が含まれる。
II.方法および使用
本明細書ではwnt経路アンタゴニストを利用する方法が提供される。特に、本明細書ではRスポンジン転位アンタゴニストを利用する方法が提供される。例えば、本明細書では癌細胞の細胞増殖を阻害する方法であって、癌細胞を有効量のRスポンジン転位アンタゴニストに接触させることを含む方法が提供される。本明細書では個体において癌を治療する方法において、個体に有効量のRスポンジン転位アンタゴニストを投与することを含む方法も提供される。いくつかの実施態様では、癌または癌細胞はRスポンジン転位を含む。
本明細書では個体において癌の治療をする方法であって、個体に有効量の抗癌療法を投与することを含み、治療が1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌を有する個体に基づいている方法も提供される。いくつかの実施態様では、抗癌療法はwnt経路アンタゴニストを含む。例えば、個体において癌の治療をする方法であって、個体に有効量のwnt経路アンタゴニストを投与することを含み、治療がRスポンジン転位を含む癌を有する個体に基づいている方法が提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
個体が1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌を有することが分かっているという条件で、個体において癌の治療をする方法であって、治療が個体に有効量の抗癌療法を投与することを含む方法がさらに提供される。いくつかの実施態様では、抗癌療法はwnt経路アンタゴニストを含む。例えば、本明細書では、個体がRスポンジン転位を含む癌を有することが分かっているという条件で、個体において癌の治療をする方法であって、治療が個体に有効量のwnt経路アンタゴニストを投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
本明細書では、1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌細胞を治療する方法であって、有効量のwnt経路アンタゴニストを提供することを含む方法が提供される。例えば、本明細書では、Rスポンジン転位を含む癌細胞を治療する方法であって、有効量のwnt経路アンタゴニストを提供することを含む方法が提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
本明細書では、個体において癌を治療するための方法であって、個体から得られる試料が1つまたは複数のバイオマーカーを含むことを判定し、wnt経路アンタゴニストを含む有効量の抗癌療法を個体に投与し、それによって癌を治療することを含む方法が提供される。例えば、本明細書では、個体において癌を治療するための方法であって、個体から得られる試料がRスポンジン転位を含むことを判定し、wnt経路アンタゴニストを含む有効量の抗癌療法を個体に投与し、それによって癌を治療することを含む方法が提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
本明細書では、癌を治療する方法において、(a)1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌を有する個体を選択し、(b)こうして選択された個体に有効量のwnt経路アンタゴニストを投与し、それにより癌を治療することを含む方法も提供される。例えば、本明細書では、癌を治療する方法において、(a)Rスポンジン転位を含む癌を有する個体を選択し、(b)こうして選択された個体に有効量のwnt経路アンタゴニストを投与し、それにより癌を治療することを含む方法も提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
本明細書では、抗癌療法を用いた治療が有益である可能性が高いまたは低い癌に罹った個体を同定する方法であって、個体から得られる試料における1つまたは複数のバイオマーカーの存在または非存在を判定することを含み、試料における1つまたは複数のバイオマーカーの存在が、個体が抗癌療法を用いた治療が有益である利益を示す可能性が高いことを示し、または1つまたは複数のバイオマーカーの非存在が、個体が抗癌療法を用いた治療が有益である可能性が低いことを示す方法がさらに提供される。いくつかの実施態様では、抗癌療法はwnt経路アンタゴニストを含む。例えば、本明細書では、wnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法を用いた治療が有益である可能性が高いまたは低い癌に罹った個体を同定する方法であって、個体から得られる試料におけるRスポンジン転位の存在または非存在を判定することを含み、試料におけるRスポンジン転位の存在が、個体がwnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法を用いた治療が有益である可能性が高いことを示し、またはRスポンジン転位の非存在が、個体がwnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法を用いた治療が有益である可能性が低いことを示す方法が提供される。いくつかの実施態様では、方法は、有効量のwnt経路アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
本明細書では、癌に罹っている個体が、wnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法を用いた治療に効果的に応答する可能性が高いかまたは低いかを予測するための方法であって、1つまたは複数のバイオマーカーを判定することを含み、それにより1つまたは複数のバイオマーカーの存在が、個体がwnt経路アンタゴニストを用いた治療に効果的に応答する可能性が高いことを示し、1つまたは複数のバイオマーカーの非存在が、個体がwnt経路アンタゴニストを用いた治療に効果的に応答する可能性が低いことを示す方法が提供される。例えば、本明細書では、癌に罹っている個体が、wnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法を用いた治療に効果的に応答する可能性が高いかまたは低いかを予測するための方法であって、Rスポンジン転位を判定することを含み、それによりRスポンジン転位の存在が、個体がwnt経路アンタゴニストを用いた治療に効果的に応答する可能性が高いことを示し、Rスポンジン転位の非存在が、個体がwnt経路アンタゴニストを用いた治療に効果的に応答する可能性が低いことを示す方法が提供される。いくつかの実施態様では、方法は有効量のwnt経路アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
本明細書では、wnt経路アンタゴニストを含む抗癌治療に対する癌に罹った個体の応答または応答の欠如を予測する方法であって、個体から得られる試料において1つまたは複数のバイオマーカーの存在または非存在を検出することを含み、1つまたは複数のバイオマーカーの存在がwnt経路アンタゴニストを含む抗癌治療に対する個体の応答を予測し、1つまたは複数のバイオマーカーの非存在がwnt経路アンタゴニストを含む抗癌治療に対する個体の応答の欠如を予測する方法が提供される。例えば、本明細書では、wnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法に対する癌に罹った個体の応答または応答の欠如を予測する方法であって、個体から得られる試料においてRスポンジン転位の存在または非存在を検出することを含み、Rスポンジン転位の存在がwnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法に対する個体の応答を予測し、Rスポンジン転位の非存在がwnt経路アンタゴニストを含む抗癌療法に対する個体の応答の欠如を予測する方法が提供される。いくつかの実施態様では、方法は有効量のwnt経路アンタゴニストを投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位アンタゴニストはRスポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)に結合する単離された抗体である。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは表2に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は表2に収載される1つまたは複数の遺伝子の変種(例えば、多型または変異)の存在を含む(例えば、表2における変種(例えば、多型または変異))。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは表3に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は表3に収載される1つまたは複数の遺伝子の変種(例えば、多型または変異)の存在を含む(例えば、表3における変種(例えば、多型または変異))。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは表4に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は表4に収載される1つまたは複数の遺伝子の変種(例えば、多型または変異)の存在を含む(例えば、表4における変種(例えば、多型または変異))。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは表5に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は表5に収載される1つまたは複数の遺伝子の変種(例えば、多型または変異)の存在を含む(例えば、表5における変種(例えば、多型または変異))。いくつかの実施態様では、変種(例えば、多型または変異)は体細胞変種(例えば、多型または変異)である。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、KRAS、TP53、APC、PIK3CA、SMAD4、FBXW7、CSMD1、NRXN1、DNAH5、MRVI1、TRPS1、DMD、KIF2B、ATM、FAM5C、EVC2、OR2W3、SIN3A、SMARCA5、NCOR1、JARID2、TCF12、TCF7L2、PHF2、SOS2、RASGRF2、ARHGAP10、ARHGEF33、Rab40c、TET2、TET3、EP400、MLL、TMPRSS11A、ERBB3、EPHB4、EFNB3、EPHA1、TYRO3、TIE1、FLT、RIOK3、PRKCB、MUSK、MAP2K7、MAP4K5、PTPRN2、GPR4、GPR98、TOPORS、およびSCN10Aからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、CSMD1、NRXN1、DNAH5、MRVI1、TRPS1、DMD、KIF2B、ATM、FAM5C、EVC2、OR2W3、TMPRSS11A、およびSCN10Aからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、RAB40C、TCF12、C20orf132、GRIN3A、および/またはSOS2を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、ETV4、GRIND2D、FOXQ1、および/またはCLDN1を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはMRPL33を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは1つまたは複数の転写調節因子(例えば、TCF12、TCF7L2および/またはPHF2)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、1つまたは複数のRas/Rho関連調節因子(例えば、SOS1(例えば、R547W、T614M R854*、G1129V)、SOS2(例えば、R225*、R854C、およびQ1296H)、RASGRF2、ARHGAP10、ARHGEF33および/またはRab40c(例えば、G251S))を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは1つまたは複数のクロマチン修飾酵素(例えば、TET1、TET2、TET3、EP400および/またはMLL)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のクロマチン修飾酵素はTET1および/またはTET3である。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のクロマチン修飾酵素は、TET1(例えば、R81H、E417A、K540T、K792T、S879L、S1012*、Q1322*、C1482Y、A1896V、およびA2129V)、TET2(例えば、K108T、T118I、S289L、F373L、K1056N、Y1169*、A1497V、およびV1857M)、および/またはTET3(例えば、T165M、A874T、M977V、G1398R、およびR1576Q/W)である。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、1つまたは複数の受容体チロシンキナーゼ(例えば、ERBB3、EPHB4、EFNB3、EPHA1、TYRO3、TIE1およびFLT4)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは1つまたは複数のキナーゼ(例えば、RIOK3、PRKCB、MUSK、MAP2K7およびMAP4K5)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、1つまたは複数のタンパク質ホスファターゼ(例えば、PTPRN2)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、1つまたは複数のGPRC(例えば、GPR4および/またはGPR98)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、1つまたは複数のE3−リガーゼ(例えば、TOPORS)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表2、3、4、および/または5に収載される1つまたは複数のバイオマーカーの変種(例えば、多型または変異)の存在を含む(例えば、表2、3、4、および/または5における変種(例えば、多型または変異))。いくつかの実施態様では、変種(例えば、多型または変異)は体細胞変種(例えば、多型または変異)を含む。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、1つまたは複数のRSPO(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、1つまたは複数のRSPO(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)の(例えば、基準と比べて)上昇した発現レベルの存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはRSPO1を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはRSPO4を含む。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、表6に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表6に収載される1つまたは複数の遺伝子の(例えば、基準と比べて)上昇した発現レベルの存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはFOXA1、CLND1、および/またはIGF2を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、FOXA1、CLND1、および/またはIGF2の(例えば、基準と比べて)上昇した発現レベルの存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、カルシウムシグナル伝達、cAMP媒介シグナル伝達、グルタミン酸受容体シグナル伝達、筋萎縮性側索硬化症シグナル伝達、窒素代謝、軸索誘導シグナル伝達、乾癬におけるIL−17Aの役割、セロトニン受容体シグナル伝達、慢性閉塞性肺疾患における気道病変、タンパク質キナーゼAシグナル伝達、膀胱癌シグナル伝達、HIF1αシグナル伝達、心臓βアドレナリンシグナル伝達、シナプス長期増強、アテローム動脈硬化症シグナル伝達、サーカディアンリズムシグナル伝達、神経におけるCREBシグナル伝達、Gタンパク質共役型受容体シグナル伝達、白血球管外遊出シグナル伝達、補体系、エイコサノイドシグナル伝達、チロシン代謝、システイン代謝、シナプス長期抑制、関節炎におけるIL−17Aの役割、シルデナフィル(バイアグラ)の細胞効果、脊髄後角ニューロンにおける神経障害性疼痛シグナル伝達、DアルギニンとDオルニチン代謝、アレルギー性炎症性気道疾患におけるIL−17Fの役割、甲状腺癌シグナル伝達、肝線維症/肝星細胞活性化、ドーパミン受容体シグナル伝達、哺乳動物胚幹細胞多能性におけるNANOGの役割、コンドロイチン硫酸生合成、エンドセリンー1シグナル伝達、ケラタン硫酸生合成、光伝達経路、Wnt/βカテニンシグナル伝達、ケモカインシグナル伝達、アラニンとアスパラギン酸代謝、スフィンゴ糖脂質生合成−ネオラクトシリーズ(Neolactoseries)、肝汁酸生合成、マクロファージの役割、関節リウマチにおける線維芽細胞と内皮細胞、αアドレナリンシグナル伝達、タウリンとヒポタウリン代謝、RXR機能のLPS/IL−1媒介阻害、結腸直腸癌転移シグナル伝達、好酸球におけるCCR3シグナル伝達、および/またはO−グリカン生合成を含むがこれらに限定されない差次的に発現されるシグナル伝達経路を含む。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、表7に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表7に収載される1つまたは複数の遺伝子の(例えば、基準と比べて)上昇した遺伝子コピー数の存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはIGF2、KRAS、および/またはMYCを含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、IGF2、KRAS、および/またはMYCの(例えば、基準と比べて)上昇した遺伝子コピー数の存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表7に収載される1つまたは複数の遺伝子の(例えば、基準と比べて)低下した遺伝子コピー数の存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはFHIT、APC、および/またはSMAD4を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、FHIT、APC、および/またはSMAD4の(例えば、基準と比べて)低下した遺伝子コピー数の存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、染色体20qの(例えば、基準と比べて)上昇したコピー数の存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、染色体18qの(例えば、基準と比べて)低下したコピー数の存在により示される。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、表9に収載される1つまたは複数の遺伝子を含む。いくつかの実施態様では、1つもしくは複数のバイオマーカーの存在は、表9に収載される1つもしくは複数の遺伝子の変種(例えば、多型または変異)(例えば、表9における変種(例えば、多型または変異))および/または表9に収載される1つもしくは複数の遺伝子の(例えば、基準と比べた)選択的スプライシングの存在により示される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはTP53、NOTCH2、MRPL33、および/またはEIF5Bを含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはMRPL33である。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、TP53、NOTCH2、MRPL33、および/もしくはEIF5Bの変種(例えば、多型または変異)(例えば、表9における変種(例えば、多型または変異))ならびに/またはTP53、NOTCH2、MRPL33、および/もしくはEIF5Bの(例えば、基準と比べた)選択的スプライシングの存在により示される。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは、表10に収載される1つまたは複数の遺伝子の転位(例えば、再配列および/または融合)を含む。いくつかの実施態様では、1つもしくは複数のバイオマーカーの存在は、表10に収載される1つまたは複数の遺伝子の転位(例えば、再配列および/または融合)の存在を含む(例えば、表10における転位(例えば、再配列および/または融合))。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)はPVT1転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、PVT1転位(例えば、再配列および/または融合)はPVT1およびMYCを含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はPVT1およびIncDNAを含む。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)はRスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO1転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)は、配列番号12、41、および/または42を含むプライマーにより検出可能である。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eプロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO2プロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号72および/または配列番号73を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号13、14、43、および/または44を含むプライマーにより検出可能である。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKプロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO3プロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRK分泌シグナル配列を含む(かつ/またはRSPO3分泌シグナル配列を含まない)。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO4転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)は、(例えば、Rスポンジン転位のない基準と比べて)Rスポンジンの上昇した発現レベルをもたらす。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)は、(例えば、Rスポンジン転位のない基準と比べて)Rスポンジンの上昇した活性および/または活性化をもたらす。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表10における転位(例えば、再配列および/または融合)ならびにKRASおよび/またはBRAFなどのRスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)を含む。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表10における転位(例えば、再配列および/または融合)、ならびに変種(例えば、多型または変異)KRASおよび/またはBRAFなどの、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)の存在である。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、表10における転位(例えば、再配列および/または融合)などの、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)の存在であり、1つまたは複数のバイオマーカーの非存在は、変種(例えば、多型または変異)CTNNB1および/またはAPCの非存在である。
転位(例えば、再配列および/または融合)のいずれかのいくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)は体細胞転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)は染色体内転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)は染色体間転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)は浸潤である。いくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)は欠失である。いくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)は、機能的転位融合ポリヌクレオチド(例えば、機能的Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチド)および/または機能的転位融合ポリペプチド(例えば、機能的Rスポンジン転位融合ポリペプチド)である。いくつかの実施態様では、機能的転位融合ポリペプチド(例えば、機能的Rスポンジン転位融合ポリペプチド)は、転位した遺伝子のうちの1つにより調節されることが分かっている経路(例えば、wntシグナル伝達経路)を活性化する。いくつかの実施態様では、経路はカノニカルwntシグナル伝達経路である。いくつかの実施態様では、経路は非カノニカルwntシグナル伝達経路である。いくつかの実施態様では、経路活性化を決定する方法は当技術分野では公知であり、本明細書に記載されるルシフェラーゼレポーターアッセイが含まれる。
癌および癌細胞の例には、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽腫および網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫および滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍、および膵島細胞癌を含む)、中皮腫、シュワン腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、および白血病またはリンパ系腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。そのような癌のさらに詳細な例には、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、ならびに頭頸部癌が含まれる。いくつかの実施態様では、癌は結腸直腸癌である。いくつかの実施態様では、癌は結腸癌である。いくつかの実施態様では、癌は直腸癌である。
バイオマーカー(例えば、Rスポンジン転位)の存在および/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片および/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の適切な判断基準に基づいて定性的におよび/または定量的に決定することができる。ある種の実施態様では、第一の試料中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、第二の試料中の存在/非存在および/または発現レベル/量と比べて増加している。ある種の実施態様では、第一の試料中のバイオマーカーの存在/非存在および/または発現レベル/量は、第二の試料中の存在および/または発現レベル/量と比べて減少している。ある種の実施態様では、第二の試料は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/非存在および/または発現レベル/量を決定するための追加の開示は本明細書に記載されている。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、上昇した発現とは、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比べた場合、本明細書に記載される方法などの公知の標準技術法により検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルにおける約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれよりも多いのいずれかである全増加のことである。ある種の実施態様では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の増加のことであり、増加は基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.5×、1.75×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、25×、50×、75×、または100×のうちのいずれかである。いくつかの実施態様では、上昇した発現とは、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部標準(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比べた場合、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍よりも多い全増加のことである。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、低下した発現とは、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比べた場合、本明細書に記載される方法などの公知の標準技術法により検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルにおける約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれよりも多いのいずれかである全低下のことである。ある種の実施態様では、低下した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の減少のことであり、減少は基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9×、0.8×、0.7×、0.6×、0.5×、0.4×、0.3×、0.2×、0.1×、0.05×、または0.01×のうちのいずれかである。
試料中の様々なバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、免疫組織化学的(「IHC」)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降法、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光標識細胞分取(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISAとして)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム塩基配列決定、定量的リアルタイムPCR(「qRT−PCR」)を含むポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)ならびに、例えば、分岐DNA、SISBA、TMAおよび同類のものなどの他の増幅型検出法、RNA−Seq、FISH、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、ならびに/または遺伝子発現のシリアル分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、および/もしくは組織アレイ分析により実施することができる多種多様なアッセイのうちのいずれか1つを含むがこれらに限定されない多くの方法により分析することができ、その多くが当技術分野では公知であり、当業者には理解されている。遺伝子および遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコールは、例えば、Ausubelら編、1995、Current Protocols In Molecular Biology、Units 2(Northern Blotting)、4(Southern Blotting)、15(Immunoblotting)and 18(PCR Analysis)に見られる。Rules Based Medicine or Meso Scale Discovery(「MSD」)から利用可能なアッセイなどの多重免疫アッセイも使用しうる。
いくつかの実施態様では、バイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、(a)遺伝子発現プロファイリング、PCR(例えば、rtPCR)、RNA−seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY法、または試料(例えば、対象癌試料)上でのFISHを実施し、(b)試料中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量を決定することを含む方法を使用して、決定される。いくつかの実施態様では、マイクロアレイ法は、厳密な条件下で上記の遺伝子をコードする核酸分子にハイブリダイズすることができる1つまたは複数の核酸分子を有するまたは上記の遺伝子にコードされるタンパク質のうちの1つまたは複数に結合することができる1つまたは複数のポリペプチド(例えば、ペプチドまたは抗体)を有するマイクロアレイチップの使用を含む。一実施態様では、PCR法はqRT−PCRである。一実施態様では、PCR法は多重PCRである。いくつかの実施態様では、遺伝子発現はマイクロアレイにより測定される。いくつかの実施態様では、遺伝子発現はqRT−PCRにより測定される。いくつかの実施態様では、発現は多重PCRにより測定される。
細胞中のmRNAを評価するための方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、1つまたは複数の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用するin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロットおよび関連技法)および様々な核酸増幅アッセイ(例えば、遺伝子の1つまたは複数に特異的な相補的プライマーを使用するRT−PCR、ならびに、例えば、分岐DNA、SISBA、TMAおよび同類のものなどの他の増幅型検出法)が含まれる。
哺乳動物由来の試料は、ノーザン、ドットブロットまたはPCR分析を使用してmRNAについて都合よくアッセイすることができる。さらに、そのような方法は、生体試料中の標的mRNAのレベルを決定することが可能になる1つまたは複数のステップを含むことができる(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することにより)。場合により、増幅された標的cDNAの配列を決定することができる。
本発明の随意の方法には、マイクロアレイ技術により組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを試験するまたは検出するプロトコールが含まれる。核酸マイクロアレイを使用して、試験および対照組織試料由来の試験および対照mRNA試料は逆転写され標識されて、cDNAプローブを生成する。次に、プローブは、固体支持体上に固定された核酸のアレイにハイブリダイズされる。アレイは、アレイのそれぞれのメンバーの配列と位置が分かるように配置される。例えば、その発現が抗血管新生療法の増大したまたは減少した臨床的有用性と相関している遺伝子のセレクションを固体支持体上に整列させてもよい。標識プローブが特定のアレイメンバーとハイブリダイズすれば、プローブが由来する試料はその遺伝子を発現していることが示される。
いくつかの実施態様によれば、存在および/または発現レベル/量は、前述の遺伝子のタンパク質発現レベルを観察することにより測定される。ある種の実施態様では、方法は、バイオマーカーの結合に許容的である条件下で本明細書に記載されるバイオマーカーに対する抗体(例えば、抗Rスポンジン転位抗体)に生体試料を接触させ、抗体とバイオマーカーの間で複合体が形成されるかどうかを検出することを含む。そのような方法はインビトロ法でもインビボ法であってもよい。一実施態様では、抗体を使用して、wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニスト、例えば、個体を選択するためのバイオマーカーを用いる療法に適格な対象を選択する。
ある種の実施態様では、試料中のバイオマーカータンパク質の存在および/または発現レベル/量はIHCと染色プロトコールを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を決定するまたは検出する信頼性の高い方法であることが明らかにされている。一態様では、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いて試料(例えば、対象癌試料)のIHC分析を実施し、(b)試料中のバイオマーカーの発現レベルを決定することを含む方法を使用して決定される。いくつかの実施態様では、IHC染色強度は、基準値と比べて決定される。
IHCは、形態染色および/または蛍光in situハイブリダイゼーションなどの追加の技法と組み合わせて実施してもよい。IHCの2つの一般的方法、直接的アッセイと間接的アッセイが利用可能である。第一のアッセイに従えば、標的抗原への抗体の結合は直接的に決定される。この直接的アッセイは、さらなる抗体相互作用なしで可視化することができる蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識試薬を使用する。典型的な間接的アッセイでは、非コンジュゲート一次抗体は抗原に結合し、次に標識二次抗体が一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートされる場合、発色性または蛍光発生基質が添加されて抗原を可視化する。いくつかの二次抗体は一次抗体上の異なるエピトープと反応することがあるために、シグナル増幅が起こる。
IHCのために使用される一次および/または二次抗体は検出可能な部分で標識されることになる。一般的には以下の範疇、(a)35S、14C、125I、3H、および131Iなどの放射性同位元素、(b)コロイド状金粒子、(c)希土キレート(ユーロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリテリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、またはSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販されているフルオロフォアならびに/または上記のうちのいずれか1つもしくは複数の誘導体を含むがこれらに限定されない蛍光標識、(d)様々な酵素−基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号はこれらのうちのいくつかの概説を提供している、に分類することができる多数の標識が利用可能である。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ、ならびに同類のものが含まれる。
酵素−基質組合せの例には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と基質としての過酸化水素、アルカリホスファターゼ(AP)と発色基質としてのパラニトロフェニルリン酸、およびβ−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と発色基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ)が含まれる。これらの概評は、米国特許第4,275,149号および米国特許第4,318,980号を参照されたい。
このようにして調製された検体はマウントされ、カバースリップを載せてもよい。次に、スライド評価は、例えば、顕微鏡を使用して決定され、当技術分野で常用される染色強度基準を用いてもよい。いくつかの実施態様では、約1+またはそれよりも高い染色パターンスコアは診断に用いるおよび/または予後に用いる。ある種の実施態様では、IHCアッセイにおける約2+またはそれよりも高い染色パターンスコアは診断に用いるおよび/または予後に用いる。他の実施態様では、約3またはそれよりも高い染色パターンスコアは診断に用いるおよび/または予後に用いる。一実施態様では、腫瘍または結腸腺腫由来の細胞および/または組織がIHCを使用して試験される場合、染色は一般に(試料中に存在することがある間質または周辺組織と対照的に)腫瘍細胞および/または組織において決定されるまたは評価されると理解されている。
別の方法では、試料を、抗体−バイオマーカー複合体が形成されるのに十分な条件下で前記バイオマーカーに特異的な抗体(例えば、抗Rスポンジン転位抗体)に接触させ、次に前記複合体を検出することができる。バイオマーカーの存在は、血漿または血清を含む多種多様な組織および試料をアッセイするためのウエスタンブロッティングおよびELISA手順によりなどの多くの方法で検出しうる。そのようなアッセイフォーマットを使用する広範囲の免疫アッセイ法が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、米国特許第4,424,279号および米国特許第4,018,653号を参照されたい。これには、単一部位と二部位の両方のアッセイまたは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、および従来の競合結合アッセイが含まれる。これらのアッセイは、標的バイオマーカーへの標識抗体の直接的結合も含まれる。
組織または細胞試料中の選択されたバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、機能的または活性ベースのアッセイにより試験してもよい。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、当技術分野で公知のアッセイを行って、組織または細胞試料中の所与の酵素活性の存在を決定するまたは検出してもよい。
ある種の実施態様では、試料はアッセイされるバイオマーカーの量の違いと使用される試料の質のばらつきの両方、およびアッセイ実行のばらつきについて正規化される。そのような正規化は、ACTBなどの周知のハウスキーピング遺伝子を含むある種の正規化バイオマーカーの発現を検出し組み入れることにより実現することができる。代わりに、正規化は、アッセイされた遺伝子のすべてまたはその大きなサブセットの平均または中央値シグナルに基づかせることができる(グローバル正規化アプローチ)。遺伝子単位で、測定され正規化された量の対象腫瘍mRNAまたはタンパク質は基準セットに見られる量と比較される。対象あたりの試験された腫瘍あたりのmRNAまたはタンパク質ごとの正規化発現レベルは、基準セットにおいて測定された発現レベルの百分率として表すことができる。分析される特定の対象試料において測定される存在および/または発現レベル/量は、当技術分野で周知の方法により決定することができるこの範囲内のあるパーセンタイルに入ることになる。
ある種の実施態様では、遺伝子の相対的発現レベルは以下のように決定される。
相対的発現遺伝子1試料1=2exp(Ctハウスキーピング遺伝子−Ct遺伝子1)、Ctは試料において決定される。
相対的発現遺伝子1基準RAN=2exp(Ctハウスキーピング遺伝子−Ct遺伝子1)、Ctは基準試料において決定される。
正規化相対的発現遺伝子1試料1=(相対的発現遺伝子1試料1/相対的発現遺伝子1基準RNA)×100
Ctは閾値サイクルである。Ctは、反応内で生成される蛍光が閾値線を横切るサイクル数である。
すべての実験は、様々な組織供給源由来のRNAの網羅的混合物である基準RNAに正規化される(例えば、Clontech、Mountain View、CA製の基準RNA #636538)。同一の基準RNAはそれぞれのqRT−PCR実行に含まれ、異なる実験実行間の結果の比較が可能になる。
一実施態様では、試料は臨床試料である。別の実施態様では、試料は診断アッセイにおいて使用される。いくつかの実施態様では、試料は原発または転移腫瘍から得られる。組織検体は腫瘍組織の代表的小片を得るのに使用されることが多い。代わりに、腫瘍細胞は、対象の腫瘍細胞を含有すると分かっているまたは考えられる組織または体液の形態で間接的に得ることができる。例えば、肺癌病巣の試料は、切除、気管支鏡検査、穿刺吸引、気管支擦過法により、または痰、胸膜液もしくは血液から得ることができる。遺伝子または遺伝子産物は癌もしくは腫瘍組織からまたは尿、痰、血清もしくは血漿などの他の身体試料から検出することが可能である。癌試料中の標的遺伝子または遺伝子産物の検出のための上記の同じ技法は、他の身体試料に適用することができる。癌細胞は癌病巣から剥がれ落ちてそのような身体試料に現れることがある。そのような身体試料をスクリーニングすることにより、これらの癌について簡単な早期診断を達成することができる。さらに、療法の進行は、標的遺伝子または遺伝子産物についてそのような身体試料を検査することによりさらに容易にモニターすることができる。
ある種の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるときとは異なる1つまたは複数の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一試料または混合した複数の試料である。例えば、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるときより早期の時点で同じ対象または個体から得られる。そのような基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、基準試料が癌の初期診断中に得られるのであれば有用であることがあり、試験試料は後の癌が転移性になったときに得られる。
ある種の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象でも個体でもない1つまたは複数の健康な個体由来の混合した複数の試料である。ある種の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象でも個体でもない疾患または障害(例えば、癌)に罹った1つまたは複数の健康な個体由来の混合した複数の試料である。ある種の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象でも個体でもない1つまたは複数の個体由来の正常組織からプールされたRNA試料またはプールされた血漿もしくは血清試料である。ある種の実施態様では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象でも個体でもない疾患または障害(例えば、癌)に罹った1つまたは複数の個体由来の腫瘍組織からプールされたRNA試料またはプールされた血漿もしくは血清試料である。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニスト(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4アンタゴニスト)である。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストは、抗体、結合ポリペプチド、結合小分子、またはポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は抗体断片であり、抗体断片は、wnt経路ポリペプチド、特にRスポンジンアンタゴニストおよび/またはRスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、上の実施態様のいずれかに従った個体はヒトであってよい。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、方法は、そのような癌を有する個体に有効量のwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストを投与することを含む。そのような一実施態様では、下に記載されるように、方法は個人に有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を投与することを含む。いくつかの実施態様では、個体はヒトであってよい。
本明細書に記載されるwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストは、療法において単独でもまたは他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。例えば、本明細書に記載されるwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストは、別のwnt経路アンタゴニストを含む少なくとも1つの追加の治療薬と同時投与してもよい。ある特定の実施態様では、追加の治療剤は化学療法剤である。
上記のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別々の製剤に含まれている)、および別々の投与を包含しており、後者の場合、wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストの投与は追加の治療剤および/またはアジュバンドの投与に先立って、同時におよび/または続いて行うことができる。wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニストは、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
本明細書に記載されるwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジン転位アンタゴニスト(例えば、抗体、結合ポリペプチド、および/または小分子)(および任意の追加の治療薬)は、非経口、肺内、および鼻腔内、ならびに局所治療が望ましい場合には病巣内投与を含むいかなる適切な手段によっても投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投与は、いかなる適切な経路によっても、例えば、一部、投与が短期か長期かにより、静脈注射または皮下注射などの注射によっても可能である。様々な時点にわたる単回または複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投与スケジュールが本明細書では想定されている。
本明細書に記載のwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニスト(例えば、抗体、結合ポリペプチド、および/または小分子)は、良好な医療行為と一致する様式で処方されうる、服用されうる、および投与されうる。この文脈で考慮する要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個人の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医師に知られている他の要因が含まれる。wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストは、問題の障害を予防するまたは治療するのに現在使用されている1つまたは複数の薬剤と一緒に処方される必要はないが、場合によりそのように処方される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストの量、障害または治療の種類、および上で考察された他の要因に依拠する。これらの薬剤は一般に、本明細書に記載されるのと同じ投与量で投与経路を用いて、または本明細書に記載される投与量の約1〜99%、または経験的に/臨床的に適切であると判定されているいかなる投与量でもおよびいかなる経路でも使用される。
疾患の予防または治療では、本明細書に記載のwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストの適切な投与量(単独でまたは1つもしくは複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストが予防目的でまたは治療目的で投与されるのかどうか、前の療法、wnt経路アンタゴニストに対する対象の臨床歴および応答、ならびに主治医の慎重さに依拠することになる。wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストは1回または一連の治療にわたって個人に適切に投与される。1つの典型的な一日投与量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれよりも多いに及んでいてもよい。数日またはそれよりも長い期間にわたる繰り返し投与では、状態に応じて、治療は一般に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続されることになる。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間ごとに(例えば、個人がwnt経路アンタゴニストの約2〜約20、または、例えば、6容量を受けるように)投与してもよい。もっと多い初回負荷量とそれに続くもっと低い1または複数回の用量を投与してもよい。例となる投与計画は投与することを含む。しかし、他の投与量計画が有用である場合もある。この療法の進行は、従来の技法およびアッセイにより容易にモニターされる。
上記製剤または治療方法のいずれも、wnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストの代わりにまたはwnt経路アンタゴニスト、特にRスポンジンアンタゴニストに加えて本発明の免疫コンジュゲートを使用して実施しうることは理解される。
III.治療組成物
本明細書に記載される方法において有用なwnt経路アンタゴニストが本明細書で提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは、抗体、結合ポリペプチド、結合小分子、および/またはポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはカノニカルwnt経路アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは非カノニカルwnt経路アンタゴニストである。
いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニストである。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはRスポンジン転位アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはLPR6媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとLPR6の相互作用を阻害するおよび/または遮断する。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストLGR5媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとLGR5の相互作用を阻害するかつ/または遮断する。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはKRM媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとKRMの相互作用を阻害するかつ/または遮断する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストはシンデカン(例えば、シンデカン4)媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、Rスポンジンとシンデカン(例えば、シンデカン4)の相互作用を阻害するかつ/または遮断する。Rスポンジンアンタゴニストの例には、WO2008/046649、WO2008/020942、WO2007/013666、WO2005/040418、WO2009/005809、US8,088,374、US7,541,431、WO2011/076932、および/またはUS2009/0074782に記載されているアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されない。前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
wntシグナル伝達経路成分またはwnt経路ポリペプチドは、Wntタンパク質とFz受容体の間の相互作用から生じるシグナルを伝達する成分である。wntシグナル伝達経路は複雑であり、広範なフィードバック調節を伴う。wntシグナル伝達経路成分の例には、Wnt(例えば、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16)、フリズルド(Frizzled)(例えば、Frz1−10)、RSPO(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、および/またはRSPO4)、LGR(例えば、LGR5)、WTX、WISP、(例えば、WISP1、WISP2、および/またはWISP3)、βTrCp、STRA6、膜結合タンパク質であるLRP(例えば、LRP5および/またはLRP6)、アキシン、およびディシブルド(Dishevelled)、細胞外Wnt相互作用タンパク質であるsFRP、WIF−1、LRP不活化タンパク質であるDkkおよびKrn、細胞質タンパク質βカテニン、βカテニン「分解複合体」のメンバーであるAPC、GSK3β、CKIαおよびPP2A、核輸送タンパク質であるAPC、ピゴパス(pygopus)およびbcl9/レグレス(legless)、ならびに、転写因子TCF/LEF、グルーチョ(Groucho)およびCBP/p300とBrg−1などの様々なヒストンアセチラーゼが含まれる。
A.抗体
一態様では、wnt経路ポリペプチドに結合する単離された抗体が本明細書で提供される。上記実施態様のいずれにおいても、抗体はヒト化されている。本発明の追加の態様では、上記実施態様のいずれかに従った抗wnt経路抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一実施態様では、抗wnt経路抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。別の実施態様では、抗体は完全長抗体、例えば、インタクトなIgG1’’抗体または本明細書で定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
抗体のいずれかのいくつかの実施態様では、抗wnt経路抗体は抗LRP6抗体である。抗LRP6抗体の例には、米国特許出願公開第2011/0256127号に記載される抗LRP6抗体が含まれるがこれに限定されない。前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。いくつかの実施態様では、抗LRP6抗体は、第一のWntアイソフォームにより誘導されるシグナル伝達を阻害し、第二のWntアイソフォームにより誘導されるシグナル伝達を増強する。いくつかの実施態様では、第一のWntアイソフォームはWnt3およびWnt3aからなる群から選択され、第二のWntアイソフォームはWnt1、2、2b、4、6、7a、7b、8a、9a、9b、10a、および10bからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、第一のWntアイソフォームはWnt1、2、2b、6、8a、9a、9b、および10bからなる群から選択され、第二のWntアイソフォームはWnt3およびWnt3aからなる群から選択される。
抗体のいずれかのいくつかの実施態様では、抗wnt経路抗体は抗フリズルド抗体である。抗フリズルド抗体の例には、米国特許第7,947,277号に記載される抗フリズルド抗体が含まれるがこれに限定されない。前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
抗体のいずれかのいくつかの実施態様では、抗wnt経路抗体は抗STRA6抗体である。抗STRA6抗体の例には、米国特許第7,173,115号、米国特許第7,741,439号、および/または米国特許第7,855,278号に記載される抗STRA6抗体が含まれるがこれに限定されない。前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
抗体のいずれかのいくつかの実施態様では、抗wnt経路抗体は抗S100様サイトカインポリペプチド抗体である。いくつかの実施態様では、抗S100様サイトカインポリペプチド抗体は抗S100−A14抗体である。抗S100様サイトカインポリペプチド抗体の例には、米国特許第7,566,536号、および/または米国特許第7,005,499号に記載される抗S100様サイトカインポリペプチド抗体が含まれるがこれに限定されない。前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
抗体のいずれかのいくつかの実施態様では、抗wnt経路抗体は抗Rスポンジン抗体である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO1である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO2である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO3である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO4である。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはLRP6媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとLRP6の相互作用を阻害するかつ/または遮断する。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはLGR5媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとLGR5の相互作用を阻害するおよび/または遮断する。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはLGR4媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとLGR4の相互作用を阻害するかつ/または遮断する。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはZNRF3および/またはRNF43媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとZNRF3および/またはRNF43の相互作用を阻害するかつ/または遮断する。いくつかの実施態様では、RスポンジンアンタゴニストはKRM媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、RスポンジンとKRMの相互作用を阻害するかつ/または遮断する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストはシンデカン(例えば、シンデカン4)媒介wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、Rスポンジンアンタゴニストは、Rスポンジンとシンデカン(例えば、シンデカン4)の相互作用を阻害するかつ/または遮断する。Rスポンジン抗体の例には、US2009/0074782、US8088374、US8,158,757、US8,158,758および/またはUS Biological R9417−50Cに開示される任意の抗体を含むがこれらに限定されない。前記文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
いくつかの実施態様では、抗Rスポンジン抗体はRスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する抗体はRスポンジン転位融合ポリペプチドに特異的に結合するが、野生型のRスポンジンおよび/または転位の第二の遺伝子には実質的に結合しない。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO1転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO2転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO3転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO4転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドは配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドは配列番号72および/または配列番号73を含む。
追加の態様では、上記実施態様のいずれかに従った、抗wnt経路抗体、特に抗Rスポンジン転位抗体は、下のセクションに記載されるように、特長のいずれでも、単独でまたは組み合わせて組み込んでもよい。
1.抗体親和性
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体は解離定数(Kd)≦1μMを有する。一実施態様では、Kdは、以下のアッセイにより説明される対象の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される放射標識された抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定シリーズの存在下でFabを最小濃度の(125I)−標識抗原で平衡にし、次に結合抗原を抗Fab被覆プレートで捕捉することにより測定される(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865〜881(1999)参照)。前記アッセイの条件を確立するため、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)は、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩被覆され、それに続いて室温(およそ23℃)で2から5時間、PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンでブロックされる。非吸着性プレート(Nunc#269620)では、100pMまたは26pMの(125I)−抗原は対象のFabの段階希釈を用いて混合される(例えば、Prestaら、Cancer Res.57:4593〜4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致する)。次に、対象のFabは一晩インキュベートされるが、インキュベーションは平衡に達していることを確実にするためにさらに長い期間(例えば、約65時間)続いてもよい。その後、前記混合物は室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移される。次に、溶液は取り除かれ、プレートはPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))で8回洗浄される。プレートが乾燥すると、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT−20(商標);Packard)が添加され、プレートは10分間TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)上で計測される。最大結合の20%以下を与えるそれぞれのFabの濃度が、競合結合アッセイにおいて使用するために選択される。
別の実施態様に従えば、Kdは約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて25℃でBIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。手短に言えば、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給業者の使用説明書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)で活性化される。抗原は、流量5μl/分での注入前に10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(約0.2μM)まで希釈されて、およそ10応答単位(RU)の連結タンパク質を達成する。抗原の注入に続いて、1Mのエタノールアミンが注入されて、未反応基をブロックする。動態測定では、Fabの2倍の段階希釈液(0.78nMから500nM)が、25℃、流量およそ25μl/分で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))界面活性剤(PBST)と一緒にPBSに注入される。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時に適合させることにより、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して計算される。平衡解離定数(Kd)は比koff/konとして計算される。例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865〜881(1999)を参照されたい。上記のオンレート(on−rate)が表面プラズモン共鳴アッセイにより106M−1s−1を超える場合、オンレートは、流れ停止装備スペクトロフォメーター(spectrophometer)(Aviv Instruments)または撹拌されたキュベット付の800シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計において測定される場合、増加する濃度の抗原の存在下、25℃でPBS中20nMの抗−抗原抗体(Fab形態)、pH7.2の蛍光放出強度の増加または減少を測定する(励起=295nm;放出=340nm、16nmバンドパス)蛍光消光技法を使用することにより決定することができる。
2.抗体断片
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体は抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、FvおよびscFv断片ならびに下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある種の抗体断片の概説については、Hudsonら、Nat.Med.9:129〜134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、(Springer−Verlag、New York)、269〜315ページ(1994)を参照されたい。WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および米国特許第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ半減期が増大しているFabおよびF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
ダイアボディは、二価または二重特異性のこともある2つの抗原結合部位のある抗体断片である。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら、Nat.Med.9:129〜134(2003);およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448(1993)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディもHudsonら、Nat.Med.9:129〜134(2003)に記載されている。
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照)。
抗体断片は、本明細書に記載されているように、インタクトな抗体のタンパク質消化および組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生を含むがこれらに限定されない種々の技法により作製することができる。
3.キメラおよびヒト化抗体
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体はキメラ抗体である。ある種のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類由来の可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変えられている「クラス転換された」抗体である。キメラ抗体にはその抗原結合断片が含まれる。
ある特定の実施態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトへの免疫原性を抑えるために親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持したままヒト化される。一般的には、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその部分)が非ヒト抗体由来でFR(またはその部分)がヒト抗体配列由来である1つまたは複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、場合によって、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
ヒト化抗体およびそれを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619〜1633(2008)で概説されており、例えば、Riechmannら、Nature 332:323〜329(1988);Queenら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029〜10033(1989);米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号、および米国特許第7,087,409号;Kashmiriら、Methods 36:25〜34(2005)(SDR(a−CDR)移植法を記載している);Padlan、Mol.Immunol.28:489〜498(1991)(「リサーフェイシング」を記載している);Dall’Acquaら、Methods 36:43〜60(2005)(「FRシャフリング」を記載している);ならびにOsbournら、Methods 36:61〜68(2005)およびKlimkaら、Br.J.Cancer、83:252〜260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチを記載している)にさらに記載されている。
ヒト化のために使用されうるヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(Simsら、J.Immunol.151:2296(1993));軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列由来のフレームワーク領域(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);およびPrestaら、J.Immunol.、151:2623(1993));ヒト成熟(体細胞的に変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619〜1633(2008));およびFRライブラリーをスクリーニングすることに由来するフレームワーク領域(Bacaら、J.Biol.Chem.272:10678〜10684(1997)およびRosokら、J.Biol.Chem.271:22611〜22618(1996))が含まれるが、これらに限定されない。
4.ヒト抗体
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は当技術分野で公知の種々の技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は一般的には、van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.5:368〜74(2001)ならびにLonberg、Curr.Opin.Immunol.20:450〜459(2008)に記載されている。
ヒト抗体は、抗原投与に応答してヒト可変領域を有するインタクトなヒト抗体またはインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製しうる。そのような動物は典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含有しており、その遺伝子座は内在性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わる、または染色体外に存在するもしくは動物の染色体中に無作為に取り込まれる。そのようなトランスジェニックマウスでは、内在性免疫グロブリン遺伝子座は一般的には不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg、Nat.Biotech.23:1117〜1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSETM(商標)技術を記載している米国特許第6,075,181号および米国特許第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号;K−M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7,041,870号およびVelociMouse(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。そのような動物により産生されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに改変しうる。
ヒト抗体はハイブリドーマベースの方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系は記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.、133:3001(1984);およびBoernerら、J.Immunol.、147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して産生されるヒト抗体も、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557〜3562(2006)に記載されている。追加の方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞系からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)およびNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265〜268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載している)に記載されている方法が含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ(Trioma)技術)も、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927〜937(2005)ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clin.Pharma.、27(3):185〜91(2005)に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても産生しうる。次に、そのような可変ドメイン配列は所望のヒト定常ドメインと組み合わせうる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択する技法は下に記載されている。
5.ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、1種または複数の所望の活性を有する抗体を求めてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離しうる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し所望の結合特徴を有する抗体を求めてそのようなライブラリーをスクリーニングするための種々の方法は当技術分野では公知である。そのような方法は、Hoogenboomら、METHODS IN MOL.BIOL.178:1〜37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001)で概説されており、例えば、McCaffertyら、Nature 348:552〜554;Clacksonら、Nature 352:624〜628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1992);MarksおよびBradbury、METHODS IN MOL.BIOL.248:161〜175(Lo編 Human Press、Totowa、NJ、2003);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299〜310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073〜1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467〜12472(2004);ならびにLeeら、J.Immunol.Methods 284(1−2):119〜132(2004)にさらに記載されている。
ある種のファージディスプレイ法では、Winterら、Ann.Rev.Immunol.、12:433〜455(1994)に記載されているように、VHおよびVL遺伝子のレパートリーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリーにおいて無作為に組み換えられ、これは次に抗原結合ファージを求めてスクリーニングすることができる。ファージは典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片としてまたはFab断片としてのいずれかで抗体断片を提示する。免疫源由来のライブラリーは、ハイブリドーマの構築を要することなく免疫原に対して高親和性の抗体を提供する。代わりに、Griffithsら、EMBO J、12:725〜734(1993)により記載されているように、未処置のレパートリーをクローニングして(例えば、ヒトから)いかなる免疫化もせずに広範な非自己抗原および自己抗原にも単一源の抗体を提供することができる。最後に、HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381〜388(1992)により記載されているように、幹細胞から再配列されていないV−遺伝子セグメントをクローニングし、高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロで再配列を実現するランダム配列を含有するPCRプライマーを使用することにより、未処置のライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、米国特許出願公開第2005/0119455号、米国特許出願公開第2005/0266000号、米国特許出願公開第2007/0117126号、米国特許出願公開第2007/0160598号、米国特許出願公開第2007/0237764号、米国特許出願公開第2007/0292936号、および米国特許出願公開第2009/0002360号が含まれる。
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
6.多特異的抗体
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体は多特異的抗体、例えば、二重特異的抗体である。多特異的抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある種の実施態様では、結合特異性の1つは、Rスポンジン転位融合ポリペプチドなどのwnt経路ポリペプチドを目標とし、残りの1つは他の任意の抗原を目標とする。ある特定の実施態様では、二重特異的抗体はRスポンジン転位融合ポリペプチドなどのwnt経路ポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合しうる。二重特異的抗体を使用して、細胞傷害性薬剤をRスポンジン転位融合ポリペプチドなどのwnt経路ポリペプチドを発現する細胞に局在化させてもよい。二重特異的抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製することができる。
多特異的抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え同時発現(MilsteinおよびCuello、Nature 305:537(1983)、WO93/08829およびTrauneckerら、EMBO J.10:3655(1991)参照)、および「ノブインホール」工学(例えば、米国特許第5,731,168号参照)が含まれるが、これらに限定されない。抗体Fcヘテロダイマー分子を作製するために静電気的ステアリング効果を操作する(WO2009/089004A1);2つまたはそれよりも多い抗体または断片を架橋する(例えば、米国特許第4,676,980号およびBrennanら、Science、229:81(1985)参照);ロイシンジッパーを使用して二重特異的抗体を産生する(例えば、Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547〜1553(1992)参照);二重特異的抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用する(例えば、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993)参照);および一本鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する(例えば、Gruberら、J.Immunol.、152:5368(1994)参照);ならびにTuttら、J.Immunol.147:60(1991)に記載されている三重特異的抗体を調製することにより、多特異的抗体を作製してもよい。
「オクタパス抗体」を含む、3つまたはそれよりも多い機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576参照)。
本明細書の抗体または断片には、Rスポンジン転位融合ポリペプチドなどのwnt経路ポリペプチドおよび別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含まれる(例えば、US2008/0069820参照)。
7.抗体バリアント
a)グリコシル化バリアント
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加するまたは減少するように変化させる。抗体へのグリコシル化部位の付加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作り出されるまたは取り除かれるようにアミノ酸配列を変化させることにより都合よく実現しうる。
抗体がFc領域を含む場合、それに結合している炭水化物を変化させうる。哺乳動物細胞により産生された未処置の抗体は典型的には、一般的にはFc領域のCH2ドメインのAsn297へのN連結により結合している分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら、TIBTECH 15:26〜32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は種々の炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造体の「幹」においてGlcNAcに結合しているフコースを含むことがある。いくつかの実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の改変は、ある種の改善された特性を有する抗体バリアントを生み出すためになされうる。
一実施態様では、Fc領域に結合している(直接的にまたは間接的に)フコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%または20%〜40%まででもよい。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されているように、MALDI−TOF質量分析により測定された場合、Asn297に結合しているすべてのグリコ構造体(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造体)の合計と比べたAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297とは、Fc領域のおおよそ297位(Fc残基のEu番号付け)に位置しているアスパラギン残基のことであるが、Asn297は、抗体中の小さな配列変動のせいで、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位〜300位までの間に位置していることもある。そのようなフコシル化バリアントは改善されたADCC機能を有することがある。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「デフコシル化(defucosylated)」または「フコース欠損」抗体バリアントに関係する出版物の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazakiら、J.Mol.Biol.336:1239〜1249(2004);Yamane−Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。デフコシル化抗体を産生することができる細胞系の例には、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripkaら、Arch.Biochem.Biophys.249:533〜545(1986);US2003/0157108、Presta,L;およびWO2004/056312、Adamsら、特に実施例11);およびアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞系(例えば、Yamane−Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614ページ(2004);Kanda,Y.ら、Biotechnol.Bioeng.、94(4):680〜688(2006);およびWO2003/085107)が含まれる。
二分されたオリゴ糖を有する、すなわち、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている抗体バリアントがさらに提供される。そのような抗体バリアントは減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有しうる。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878(Jean−Mairetら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);およびUS2005/0123546(Umanaら)に記載されている。Fc領域に結合しているオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patelら);WO1998/58964(Raju,S.);およびWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
b)Fc領域バリアント
ある特定の実施態様では、1つまたは複数のアミノ酸改変を本明細書に提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域バリアントを産生しうる。前記Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4Fc領域)を含みうる。
ある特定の実施態様では、本発明は、いくつかのしかしすべてではないエフェクター機能を有する抗体バリアントであって、そのエフェクター機能のおかげで、インビボでの抗体の半減期は重要であるがある種のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)は必要ではないまたは有害である適用のための望ましい候補になる抗体バリアントを想定している。インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行えば、CDCおよび/またはADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行えば、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、おそらくADCC活性を欠く)が、FcRn結合力は保持していることを確認することができる。ADCCを媒介するための一次細胞、すなわちNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457〜492(1991)の464ページ表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.ら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059〜7063(1986)参照)およびHellstrom,Iら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499〜1502(1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.ら、J.Exp.Med.166:1351〜1361(1987)参照)に記載されている。代わりに、非放射アッセイ法を用いることもある(例えば、ACTI(商標)non−radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry(CellTechnology,Inc. Mountain View、CA);およびCytoTox 96(登録商標)non−radioactive cytotoxicity assay(Promega、Madison、WI)参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代わりに、またはさらに、対象の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynesら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652〜656(1998)に開示されている動物モデルなどの動物モデルで評価しうる。C1q結合アッセイも実施して、抗体がC1qに結合することができずしたがってCDC活性を欠くことを確認しうる。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するため、CDCアッセイを実施しうる(例えば、Gazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.ら、Blood 101:1045〜1052(2003);ならびにCragg,M.S.およびM.J.Glennie、Blood 103:2738〜2743(2004)参照)。FcRn結合およびインビボ排除/半減期決定も、当技術分野で公知の方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova,S.B.ら、Int’l.Immunol.18(12):1759〜1769(2006)参照)。
エフェクター機能が減少した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329のうちの1つまたは複数の置換がある抗体が含まれる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体には、残基265および297のアラニンへの置換があるいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位および327位のうちの2つまたはそれよりも多い位での置換のあるFc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
FcRsへの結合が改善されているまたは減少しているある種の抗体バリアントは記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591〜6604(2001)参照)。ある特定の実施態様では、抗体バリアントはADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、および/または334位での置換のあるFc領域を含む(残基のEU番号付け)。いくつかの実施態様では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、およびIdusogieら、J.Immunol.164:4178〜4184(2000)に記載されているように、変化した(すなわち、改善されたまたは減少した)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす変化がFc領域においてなされる。
半減期が増加し、母性IgGの胎児への移行の原因となる(Guyerら、J.Immunol.117:587(1976)およびKimら、J.Immunol.24:249(1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体はUS2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つまたは複数の置換がその中にあるFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つまたは複数に置換、例えば、Fc領域残基434の置換のあるFcバリアントが含まれる(米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan & Winter、Nature 322:738〜40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照されたい。
c)システイン操作抗体バリアント
ある特定の実施態様では、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば、「チオMAb」を作り出すのが望ましいことがある。特定の実施態様では、置換される残基は抗体の接触可能部位に存在する。さらに本明細書で説明されるように、それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基はそれにより抗体の接触可能部位に置かれ、この基を使用して抗体を、薬物部分またはリンカー薬物部分などの他の部分にコンジュゲートさせて、免疫コンジュゲートを作り出しうる。ある特定の実施態様では、以下の残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちの任意の1つまたは複数をシステインで置換しうる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載される通りに産生しうる。
B.免疫コンジュゲート
化学療法剤もしくは薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素またはその断片)または放射性同位体などの1つまたは複数の細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされた本明細書のRスポンジン転位融合ポリペプチドなどの抗wnt経路抗体を含む免疫コンジュゲートが本明細書でさらに提供される。
一実施態様では、免疫コンジュゲートは、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、米国特許第5,416,064号および欧州特許EP0 425 235B1参照);モノメチルオーリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号および米国特許第5,780,588号および米国特許第7,498,298号参照);ドラスタチン;カリチアマイシンもしくはその誘導体(米国特許第5,712,374号、米国特許第5,714,586号、米国特許第5,739,116号、米国特許第5,767,285号、米国特許第5,770,701号、米国特許第5,770,710号、米国特許第5,773,001号、および米国特許第5,877,296号;Hinmanら、Cancer Res.53:3336〜3342(1993);およびLodeら、Cancer Res.58:2925〜2928(1998)参照);ダウノマイシンもしくはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratzら、Current Med.Chem.13:477〜523(2006);Jeffreyら、Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358〜362(2006);Torgovら、Bioconj.Chem.16:717〜721(2005);Nagyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829〜834(2000);Dubowchikら、Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529〜1532(2002);Kingら、J.Med.Chem.45:4336〜4343(2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキセート;ビンデシン;ドセタキシル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の薬物に抗体がコンジュゲートされている抗体−薬物コンジュゲート(ADC)である。
別の実施態様では、免疫コンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセン(tricothecenes)を含むがこれらの限定されない酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載される抗体を含む。
別の実施態様では、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成する本明細書に記載される抗体を含む。放射性コンジュゲートの産生には種々の放射性同位元素が利用可能である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体が含まれる。放射性コンジュゲートが検出に使用される場合、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えば、Tc99もしくはI123、または再びヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素19、炭素13、窒素15、酸素17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄などの核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)用のスピン標識を含むことがある。
抗体と細胞傷害性薬剤のコンジュゲートは、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、サクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジサクシニミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアン酸(例えば、トルエン2,6−ジイソシアン酸)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)などの種々の二機能的タンパク質カップリング剤を使用して作製しうる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載される通りに調製することができる。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための例となるキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。前記リンカーは、細胞中での細胞傷害性薬の放出を促進する「切断可能リンカー」でありうる。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chariら、Cancer Res.52:127〜131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
本明細書の免疫コンジュゲートまたはADCは、市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、およびスルホ−SMPB、ならびにSVSB(サクシニミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Rockford、IL.、U.S.Aから)を含むがこれらの限定されない架橋剤試薬で調製されたそのようなコンジュゲートを明確に想定しているが、これらに限定されない。
C.結合ポリペプチド
本明細書に記載される方法のいずれかにおいてwnt経路アンタゴニストとして使用するためのwnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストが本明細書では提供される。wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストは、wnt経路ポリペプチドに好ましくは特異的に結合するポリペプチドである。
wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストはキメラポリペプチドである。いくつかの実施態様では、wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストは、(a)フリズルドドメイン成分、および(b)Fcドメインを含む。例えば、米国特許第7,947,277号に記載される任意のwnt経路アンタゴニストであり、前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストはDvl PDZに特異的に結合するポリペプチドであり、前記ポリペプチドは−2位にGly、−1位にTrpまたはTyr、0位にPheまたはLeu、および−3位に疎水性または芳香族残基のある配列を含むC末端領域を含み、アミノ酸付番はC末端残基が0位にあることに基づいている。いくつかの実施態様では、−6位はTrpである。いくつかの実施態様では、−1位はTrpである。wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストは、結合親和性IC50=1.5μM以上でDvl PDZに特異的に結合するポリペプチドである。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはその内在性結合パートナーとのDvl PDZ相互作用を阻害する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは内在性Dvl媒介Wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはKWYGWL(配列番号80)からなるC末端を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはアミノ酸配列X1−X2−W−X3−D−X4−Pを含み、X1はLまたはV、X2はL、X3はSまたはT、およびX4はI、FまたはLである。いくつかの実施態様では、ポリペプチドはアミノ酸配列GEIVLWSDIPG(配列番号81)を含む。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、米国特許第7,977,064号および/または米国特許第7,695,928号に記載される任意のポリペプチドであり、前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、結合ポリペプチドはWISPに結合する。いくつかの実施態様では、WISPはWISP1、WISP2、および/またはWISP3である。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、米国特許第6,387,657号、米国特許第7,455,834号、米国特許第7,732,567号、米国特許第7,687,460号、および/もしくは米国特許第7,101,850号、ならびに/または米国特許出願第2006/0292150号に記載される任意のポリペプチドであり、前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、結合ポリペプチドはS100様サイトカインポリペプチドに結合する。いくつかの実施態様では、S100様サイトカインポリペプチドはS100−A14ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは米国特許第7,566,536号および/または米国特許第7,005,499号に記載される任意のポリペプチドであり、前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストは、STRA6に特異的に結合するポリペプチドである。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは米国特許第7,173,115号、米国特許第7,741,439号および/または米国特許第7,855,278号に記載される任意のポリペプチドであり、前記特許文献は出典明示によりその全体を組み込まれる。
wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストのいずれかのいくつかの実施態様では、結合ポリペプチドはRスポンジンポリペプチドに結合する。いくつかの実施態様では、RスポンジンポリペプチドはRSPO1ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、RスポンジンポリペプチドはRSPO2ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、RスポンジンポリペプチドはRSPO3ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、RスポンジンポリペプチドはRSPO4ポリペプチドである。
結合ポリペプチドのいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路結合ポリペプチドアンタゴニストはRスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する。いくつかの実施態様では、結合ポリペプチドはRスポンジン転位融合ポリペプチドに特異的に結合するが、野生型のRスポンジンおよび/または転位の第二の遺伝子には実質的に結合しない。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO1転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO2転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO3転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO4転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドは配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドは配列番号72および/または配列番号73を含む。
結合ポリペプチドは、既知のポリペプチド合成法を使用して化学的に合成してもよいし、または組換え技術を使用して調製し精製してもよい。結合ポリペプチドは通常、少なくとも約5アミノ酸長、または少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100アミノ酸長もしくはそれよりも長く、そのような結合ポリペプチドは、本明細書に記載される標的、wnt経路ポリペプチドに好ましくは特異的に結合することができる。結合ポリペプチドは、周知の技法を使用する必要以上の実験をせずに同定しうる。この点に関して、ポリペプチド標的に特異的に結合することができる結合ポリペプチドを求めてポリペプチドライブラリーをスクリーニングするための技法は当技術分野では周知であることは知られている(例えば、米国特許第5,556,762号、米国特許第5,750,373号、米国特許第4,708,871号、米国特許第4,833,092号、米国特許第5,223,409号、米国特許第5,403,484号、米国特許第5,571,689号、米国特許第5,663,143号;PCT出願番号WO84/03506およびWO84/03564;Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81:3998〜4002(1984);Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、82:178〜182(1985);Geysenら、in Synthetic Peptides as Antigens、130〜149(1986);Geysenら、J.Immunol.Meth.、102:259〜274(1987);Schoofsら、J.Immunol.、140:611〜616(1988)、Cwirla,S.E.ら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6378;Lowman,H.B.ら、(1991)Biochemistry、30:10832;Clackson,T.ら、(1991)Nature、352:624;Marks,J.D.ら、(1991)、J.Mol.Biol.、222:581;Kang,A.S.ら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:8363、およびSmith,G.P.(1991)Current Opin.Biotechnol.、2:668参照)。
この点に関して、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、大量のポリペプチドライブラリーをスクリーニングして、標的ポリペプチド、wnt経路ポリペプチドに特異的に結合することができるライブラリーの1つまたは複数のメンバーを同定することができる1つの周知の技法である。ファージディスプレイは、バリアントポリペプチドがバクテリオファージ粒子の表面上のコートタンパク質への融合タンパク質として提示される技法である(Scott,J.K.およびSmith,G.P.(1990)Science、249:386)。ファージディスプレイの有用性は、選択的に無作為化されたタンパク質バリアント(または無作為にクローニングされたcDNA)の大きなライブラリーを、標的分子に高親和性で結合する配列について迅速かつ効率的に分類することができることにある。ファージ上へのペプチド(Cwirla,S.E.ら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6378)またはタンパク質(Lowman,H.B.ら、(1991)Biochemistry、30:10832;Clackson,T.ら、(1991)Nature、352:624;Marks J.D.ら、(1991)、J.Mol.Biol.、222:581;Kang,A.S.ら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:8363)ライブラリーの提示は、特異的結合特性を有するものを求めて何百万のポリペプチドまたはオリゴペプチドをスクリーニングするために使用されてきた(Smith,G.P.(1991)Current Opin.Biotechnol.、2:668)。ランダム変異体のファージライブラリーを分類するには、多数のバリアントを構築し増殖させるための戦略、標的受容体を使用する親和性精製のための手順、および結合濃縮の結果を評価する手段が必要である。米国特許第5,223,409号、米国特許第5,403,484号、米国特許第5,571,689号、および米国特許第5,663,143号。
大半のファージディスプレイ法は繊維状ファージを使用してきたが、ラムダ状ファージディスプレイシステム(WO95/34683;U.S.5,627,024)、T4ファージディスプレイシステム(Renら、Gene、215:439(1998);Zhuら、Cancer Research、58(15):3209〜3214(1998);Jiangら、Infection&Immunity、65(11):4770〜4777(1997);Renら、Gene、195(2):303〜311(1997);Ren、Protein Sci.、5:1833(1996);Efimovら、Virus Genes、10:173(1995))およびT7ファージディスプレイシステム(SmithおよびScott、Methods in Enzymology、217:228〜257(1993);U.S.5,766,905)も知られている。
追加の改良により、選択された標的分子への結合についてペプチドライブラリーをスクリーニングし、所望の特性を求めてこれらのタンパク質をスクリーニングする可能性のある機能的タンパク質を提示するディスプレイシステムの能力は増強されている。ファージディスプレイ反応のためのコンビナトリアル反応装置が開発され(WO98/14277)、ファージディスプレイライブラリーを使用して、二分子相互作用(WO98/20169;WO98/20159)および束縛されたヘリックスペプチドの特性(WO98/20036)を解析し制御してきた。WO97/35196は、ファージディスプレイライブラリーを、リガンドが標的分子に結合する1つの溶液とアフィニティーリガンドが標的分子に結合しない第2の溶液に接触させて、結合リガンドを選択的に単離する、アフィニティーリガンドを単離する方法を記載している。WO97/46251は、ランダムファージディスプレイライブラリーを親和性精製された抗体でバイオパンし、次に結合ファージを単離し、続いて高親和性結合ファージを単離するためのマイクロプレートウェルを使用するマイクロパンニングプロセスの方法を記載している。親和性タグとしての黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)タンパク質Aの使用も報告されている(Liら、(1998)Mol Biotech.、9:187)。WO97/47314は、ファージディスプレイライブラリーであることもあるコンビナトリアルライブラリーを使用して酵素特異性を区別するための基質サブストラクションライブラリーの使用を記載している。ファージディスプレイを使用する洗剤中で使用するのに適した酵素を選択するための方法はWO97/09446に記載されている。特異的結合タンパク質を選択する追加の方法は、米国特許第5,498,538号、米国特許第5,432,018号、およびWO98/15833に記載されている。
ペプチドライブラリーを作製しこれらのライブラリーをスクリーニングする方法も、米国特許第5,723,286号、米国特許第5,432,018号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,427,908号、米国特許第5,498,530号、米国特許第5,770,434号、米国特許第5,734,018号、米国特許第5,698,426号、米国特許第5,763,192号、および米国特許第5,723,323号に開示されている。
D.結合小分子
本明細書に記載される方法のいずれかにおいてwnt経路アンタゴニストとして使用するためのwnt経路小分子アンタゴニストが本明細書では提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはコニカルwnt経路アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは非コニカルwnt経路アンタゴニストである。
小分子のいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路小分子アンタゴニストはRスポンジン小分子アンタゴニスト(例えば、RSPO1、2、3、および/または4小分子アンタゴニスト)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン小分子アンタゴニストはRSPO1転位小分子アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン小分子アンタゴニストはRSPO2転位小分子アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン小分子アンタゴニストはRSPO3転位小分子アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン小分子アンタゴニストはRSPO4転位小分子アンタゴニストである。
小分子のいずれかのいくつかの実施態様では、小分子はRスポンジン転位融合ポリペプチドに結合する。いくつかの実施態様では、小分子はRスポンジン転位融合ポリペプチドに特異的に結合するが、野生型のRスポンジンおよび/または転位の第二の遺伝子には実質的に結合しない。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO1転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO2転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO3転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリペプチドはRSPO4転位融合ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリペプチドは配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドはPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリペプチドは配列番号72および/または配列番号73を含む。
小分子は好ましくは、本明細書に記載されるwnt経路ポリペプチドに好ましくは特異的に結合する本明細書で定義される結合ポリペプチドまたは抗体以外の有機分子である。有機小分子は公知の方法を使用して同定され化学的に合成されうる(例えば、PCT出願番号WO00/00823およびWO00/39585参照)。有機小分子は通常大きさは約2000ダルトン未満である、または大きさは約1500、750、500、250もしくは200ダルトン未満であり、本明細書に記載されるポリペプチドに好ましくは特異的に結合することができるそのような有機小分子は、周知の技法を使用する不必要な実験なしで同定しうる。この点に関して、ポリペプチド標的に結合することができる分子を求めて有機小分子ライブラリーをスクリーニングするための技法は当技術分野では周知であることが知られている(例えば、PCT出願番号WO00/00823およびWO00/39585参照)。有機小分子は、例えば、アルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N−置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、ウレア、カルバミン酸、炭酸、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、ハロゲン化アリール、アリールスルホン酸、ハロゲン化アルキル、アルキルスルホン酸、芳香族化合物、複素環式化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン(oxazolidine)、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアン酸、スルホニルクロリド、ジアゾ化合物、酸クロリド、または同類のものでありうる。
E.アンタゴニストポリヌクレオチド
本明細書に記載される方法のいずれかにおいてwnt経路アンタゴニストとして使用するためのwnt経路ポリヌクレオチドアンタゴニストが本明細書では提供される。ポリヌクレオチドはアンチセンス核酸および/またはリボザイムでもよい。アンチセンス核酸は、wnt経路遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的な配列を含む。しかし、絶対的な相補性は、好ましいけれども、必要ではない。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはカノニカルwnt経路アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは非カノニカルwnt経路アンタゴニストである。いくつかの実施態様では、wnt経路ポリヌクレオチドはRスポンジンである。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO1である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO2である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO3である。いくつかの実施態様では、RスポンジンはRSPO4である。ポリヌクレオチドアンタゴニストの例には、TCCCATTTGCAAGGGTTGT(配列番号82)および/またはAGCTGACTGTGATACCTGT(配列番号83)などのWO2005/040418に記載されているポリヌクレオチドアンタゴニストが含まれる。
ポリヌクレオチドのいずれかのいくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドはRスポンジン転位融合ポリヌクレオチドに結合する。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドはRスポンジン転位融合ポリヌクレオチドに特異的に結合するが、野生型のRスポンジンおよび/または転位の第二の遺伝子には実質的に結合しない。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチドはRSPO1転位融合ポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチドはRSPO2転位融合ポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチドはRSPO3転位融合ポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位融合ポリヌクレオチドはRSPO4転位融合ポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリヌクレオチドはEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリヌクレオチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリヌクレオチドはEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位融合ポリヌクレオチドは配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリヌクレオチドはPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリヌクレオチドはPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリヌクレオチドはPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位融合ポリヌクレオチドは配列番号72および/または配列番号73を含む。
本明細書で言及される「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、前記RNAとハイブリダイズして、安定な二重鎖を形成することができるのに十分な相補性を有する配列を意味し、二本鎖wnt経路アンチセンス核酸の場合、したがって、二重鎖DNAの一本鎖を試験することができ、または三重鎖形成をアッセイしうる。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度と長さの両方に依拠することになる。一般に、ハイブリダイズしている核酸が大きいほど、核酸はwnt経路RNAとそれだけ多くの塩基ミスマッチを含有するが、それでも安定な二重鎖(または、場合によっては、三重鎖)を形成しうる。当業者であれば、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準法の使用によりミスマッチの許容可能な程度を確認することができる。
メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンまでの5’非翻訳配列、およびAUG開始コドンを含む5’非翻訳配列に相補的であるポリヌクレオチドは翻訳の阻害に最も効率よく機能するはずである。しかし、mRNAの3’非翻訳配列に相補的な配列も同様にmRNAの翻訳を阻害するのに効果的であることが明らかにされている。一般的には、Wagner,R.、1994、Nature 372:333〜335を参照されたい。したがって、wnt経路遺伝子の5’−または3’−非翻訳、非コード領域のどちらかに相補的であるオリゴヌクレオチドであれば、内在性wnt経路mRNAの翻訳を阻害するのにアンチセンスアプローチを使用することができる。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なポリヌクレオチドであればAUG開始コドンの相補体を含むはずである。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは翻訳を阻害する効率は低くなるが、本発明に従えば使用することができる。wnt経路mRNAの5’−、3’−またはコード領域にハイブリダイズするように設計されていようと、アンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチド長であるべきであり、好ましくは6〜約50ヌクレオチド長に及ぶオリゴヌクレオチドである。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチドまたは少なくとも50ヌクレオチドである。
一実施態様では、本発明のwnt経路アンチセンス核酸は、外来性配列の転写により細胞内で産生される。例えば、ベクターまたはその一部は転写されて、wnt経路遺伝子のアンチセンス核酸(RNA)を産生する。そのようなベクターであれば、wnt経路アンチセンス核酸をコードする配列を含有していると考えられる。そのようなベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生することができさえすれば、エピソームのままであるまたは染色体に組み込まれることも可能である。そのようなベクターは、当技術分野で標準的方法である組換えDNA技術により構築することができる。ベクターは、脊椎動物細胞における複製および発現のために使用されるプラスミド、ウイルス、または当技術分野で公知の他のものであることが可能である。wnt経路をコードする配列またはその断片の発現は、脊椎動物、好ましくはヒト細胞において作用する当技術分野で公知のいかなるプロモーターによっても可能である。そのようなプロモーターは誘導性でも構成的でも可能である。そのようなプロモーターは、SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、Nature 29:304〜310(1981))、ラウス(Rous)肉腫ウイルスの3’長末端リピートに含有されるプロモーター(Yamamotoら、Cell 22:787〜797(1980))、ヘルペスチミジンプロモーター(Wagnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441〜1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、Nature 296:39〜42(1982))、等が含まれるが、これらに限定されない。
F.抗体および結合ポリペプチドバリアント
ある特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントが想定されている。例えば、抗体および/または結合ポリペプチドの結合親和性および/または他の生物学的特性を改善するのが望ましいことがある。抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、適切な改変を抗体および/または結合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列中に導入することにより、またはペプチド合成により調製しうる。そのような改変には、例えば、抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列からの残基の欠失、および/または内への残基の挿入および/または残基の置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば、標的結合性を有するのであれば、欠失、挿入、および置換のどんな組合せでも行って最終構築物に到達することができる。
ある特定に実施態様では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントおよび/または結合ポリペプチドバリアントが提供される。置換的変異誘発のための対象の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は表1の「保存的置換」の項目の下に示されている。さらに多くの実質的変化は表1の「例となる置換」の項目の下に提供されており、アミノ酸側鎖クラスに関しては下にさらに記載されている通りである。アミノ酸置換は対象の抗体および/または結合ポリペプチドに導入され、生成物は、所望の活性、例えば、保持された/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされうる。
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ化されうる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを必要とする。
置換的バリアントの一種は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の高頻度可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される1つまたは複数のこうして得られるバリアントは、親抗体と比べてある種の生物学的特性(例えば、増加した親和性、減少した免疫原性)に改変(例えば、改善)を有することになるおよび/または親抗体のある種の生物学的特性を実質的に保持していることになる。例となる置換的バリアントは親和性成熟抗体であり、この抗体は、例えば、本明細書に記載されている技法などのファージディスプレイベースの親和性成熟技法を使用して都合よく産生しうる。手短に言えば、1つまたは複数のHVR残基は変異され、バリアント抗体はファージ上に提示され、特定の生物活性(例えば、結合親和性)を求めてスクリーニングされる。
例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて変更(例えば、置換)を加えることもできる。そのような変更はHVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で変異を受けるコドンによりコードされている残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179〜196(2008)参照)、および/またはSDR(a−CDR)において加えることができ、こうして得られるバリアントVHまたはVLは結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築しそこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboomra、in METHODS IN MOL.BIOL.178:1〜37(O’Brienら、編、Human Press、Totowa、NJ(2001))に記載された。親和性成熟のいくつかの実施態様では、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、チェインシャフッリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異)のうちのいずれかにより成熟のために選択された可変遺伝子に多様性が導入される。次に、二次ライブラリーが作製される。次に、前記ライブラリーはスクリーニングされて、所望の親和性を有る任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR領域(例えば、1度に4〜6残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に同定しうる。CDR−H3およびCDR−L3は特に標的にされることが多い。
ある特定の実施態様では、置換、挿入、または欠失は、そのような変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で起こってもよい。例えば、結合親和性を実質的に減少させない保存的変更(例えば、本明細書で提供される保存的置換)をHVRにおいて加えうる。そのような変更はHVR「ホットスポット」またはSDRの外側であってよい。上に提供されるバリアントVHおよびVL配列のある特定の実施態様では、それぞれのHVRは変更されない、または1つ以下、2つ以下または3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
変異誘発のために標的にされうる抗体および/または結合ポリペプチドの残基または領域の同定のための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989)Science、244:1081〜1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または残基のグループ(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)は中性または負電荷を帯びたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により同定され置き換えられて、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。追加の置換が前記アミノ酸位に導入されて、最初の置換に対する機能的感受性を実証してもよい。その代わりに、またはそれに加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定する抗原−抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基および隣接する残基は置換の候補として標的されても取り除かれてもよい。バリアントはスクリーニングされて、所望の特性を含有するかどうかを決定してもよい。
アミノ酸配列挿入には、1残基から100またはそれよりも多い残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ−および/またはカルボキシル末端融合物、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのため)またはポリペプチドへの抗体のN−またはC−末端の融合が含まれる。
G.抗体および結合ポリペプチド誘導体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体および/または結合ポリペプチドは、当技術分野では公知であり容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに改変することができる。抗体および/または結合ポリペプチドの誘導化に適した部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、デキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物。エチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のおかげで製造に有利でありうる。前記ポリマーはいかなる分子量でもよく、分岐していることも分岐していないこともある。抗体および/または結合ポリペプチドに結合しているポリマーの数は変動してもよく、1つよりも多いポリマーが結合している場合、前記ポリマーは同じまたは異なる分子であることが可能である。一般に、誘導化のために使用されるポリマーの数および/または種類は、改善される抗体および/または結合ポリペプチドの特定の特性または機能、抗体誘導体および/または結合ポリペプチド誘導体が限定された条件下の治療において使用されるのかどうか、等を含むが、これらに限定されない検討事項に基づいて決定することができる。
別の実施態様では、放射線に曝露されることにより選択的に加熱されうる非タンパク質性部分への抗体および/または結合ポリペプチドのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kamら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600〜11605(2005))。放射線はどんな波長でもよく、普通の細胞を損傷しないが、抗体および/または結合ポリペプチド−非タンパク質性部分の近位の細胞を死滅させる温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これに限定されない。
H.組換え法および組成物
抗体および/または結合ポリペプチドは、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されている組換え法および組成物を使用して産生しうる。一実施態様では、抗wnt経路抗体)をコードする単離された核酸。そのような核酸は抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしうる。追加の実施態様では、抗体および/または結合ポリペプチドをコードするそのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。追加の実施態様では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。一そのような実施態様では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターおよび抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、これらのベクターで形質転換されている)。一実施態様では、宿主細胞は真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様では、抗wnt経路抗体などの抗体および/または結合ポリペプチドを作製する方法であって、抗体および/または結合ポリペプチドの発現に適した条件下で、上に提供される抗体および/または結合ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、場合により、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から抗体および/またはポリペプチドを回収することを含む方法が提供される。
抗wnt経路抗体および/または結合ポリペプチドの組換え産生では、例えば、上に記載される抗体および/または結合ポリペプチドをコードする核酸は単離され宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために1つまたは複数のベクター内に挿入される。そのような核酸は従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離され塩基配列決定される。
ベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞には、本明細書に記載される原核または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要ではない場合は細菌において産生しうる。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号、および米国特許第5,840,523号を参照されたい(大腸菌における抗体断片の発現を記載しているCharlton、METHODS IN MOL.BIOL.、248巻(B.K.C.Lo,編、Humana Press、Totowa、NJ、2003)、245〜254ページも参照)。発現後、抗体は可溶画分中の細菌細胞ペーストから単離しうる。
原核生物に加えて、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的にまたは完全にヒトグリコシル化パターンで抗体が産生される真菌および酵母株を含む、繊維状真菌または酵母などの真核微生物はベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。Gerngross、Nat.Biotech.22:1409〜1414(2004)、およびLiら、Nat.Biotech.24:210〜215(2006)を参照されたい。
グリコシル化抗体および/またはグリコシル化結合ポリペプチドの発現に適した宿主細胞も多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例には植物および昆虫細胞が含まれる。特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用しうる多数のバキュロウイルス株が同定されている。
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号、および米国特許第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIESTM(商標)技術を記載している)を参照されたい。
脊椎動物細胞も宿主として使用しうる。例えば、懸濁液で増殖するように適合されている哺乳動物細胞系統は有用でありうる。有用な哺乳動物細胞系統の他の例は、SV40で形質転換されているサル腎臓CV1系統、ヒト胚性腎臓系統(例えば、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されている293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(TM4 cells as described, e.g., in Mather、Biol.Reprod.23:243〜251(1980)に記載されているTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス***腫瘍(MMT060562)、例えば、Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44〜68(1982)に記載されているTRI細胞、MRC 5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞系統には、DHFR−CHO細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞系が含まれる。抗体産生および/または結合ポリペプチド産生に適したある種の哺乳動物宿主細胞系の概説については、例えば、YazakiおよびWu、METHODS IN MOL.BIOL.、248巻(B.K.C.Lo、編、Humana Press、Totowa、NJ)、255〜268ページ(2003)を参照されたい。
本説明は主に抗体および結合ポリペプチドコード核酸を含有するベクターで形質転換されたまたはトランスフェクトされた細胞を培養することによる抗体および/または結合ポリペプチドの産生に関係するが、当然のことながら、当技術分野で周知の代替の方法を用いて抗体および/または結合ポリペプチドを調製しうることを想定している。例えば、適切なアミノ酸配列、またはその一部は固相技法[例えば、Stewartら、Solid−Phase Peptide Synthesis、W.H.Freeman Co.、San Francisco、CA(1969);Merrifield,J.Am.Chem.Soc.、85:2149〜2154(1963)参照]を使用する直接ペプチド合成により産生しうる。インビトロタンパク質合成は手作業技法を使用してまたは自動化により実施しうる。自動化合成は、例えば、製造業者の使用説明書を使用してApplied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City、CA)を用いて実現しうる。抗体および/または結合ポリペプチドの種々の部分は、別々に化学的に合成され、化学的または酵素的方法を使用して組み合わせて所望の抗体および/または結合ポリペプチドを産生してもよい。
IV.所望の機能のあるWnt経路アンタゴニストをスクリーニングするおよび/または同定する方法
抗体、結合ポリペプチド、および/または小分子などのwnt経路アンタゴニストを作製するための技法は上に記載されている。本明細書に提供される抗wnt経路抗体、結合ポリペプチド、小分子、および/またはポリヌクレオチドなどの追加のwnt経路アンタゴニストは、当技術分野で公知の様々なアッセイにより同定し、それを求めてスクリーニングし、その物理的/化学的特性および/または生物活性について特徴付けることができる。
本明細書では、wnt経路シグナル伝達を阻害する、癌細胞周期停止を誘導する、癌細胞増殖を阻害する、および/または癌細胞死を促進するwnt経路アンタゴニストを求めてスクリーニングするおよび/または同定する方法であって、(a)(i)1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌細胞、癌組織、および/または癌試料、ならびに(ii)基準癌細胞、基準癌組織、および/または基準癌試料をwnt経路候補アンタゴニストに接触させ、(b)wnt経路シグナル伝達のレベル、細胞周期段階の分布、細胞増殖のレベル、および/または癌細胞死のレベルを決定し、それにより1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌細胞、癌組織、および/または癌試料と基準癌細胞、基準癌組織、および/または基準癌試料の間のwnt経路シグナル伝達の減少したレベル、細胞周期段階の分布の差異、細胞増殖の減少したレベル、および/または癌細胞死の増加したレベルが、wnt経路シグナル伝達を阻害する、癌細胞周期停止を誘導する、癌細胞増殖を阻害する、かつ/または癌細胞死を促進するwnt経路アンタゴニストとしてwnt経路候補アンタゴニストを同定することを含む前記方法が提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニストである。
本明細書では、wnt経路シグナル伝達を阻害する、癌細胞周期停止を誘導する、癌細胞増殖を阻害する、かつ/または癌細胞死を促進するwnt経路アンタゴニストを求めてスクリーニングするかつ/または同定する方法であって、(a)1つまたは複数のバイオマーカーを含む癌細胞、癌組織、および/または癌試料をwnt経路候補アンタゴニストに接触させ、(b)wnt経路候補アンタゴニストの非存在下での癌細胞、癌組織、および/または癌試料にとってのwnt経路シグナル伝達のレベル、細胞周期段階の分布、細胞増殖のレベル、および/または癌細胞死のレベルを決定し、それによってwnt経路候補アンタゴニストの存在下での癌細胞、癌組織、および/または癌試料とwnt経路候補アンタゴニストの非存在下での癌細胞、癌組織、および/または癌試料の間のwnt経路シグナル伝達の減少したレベル、細胞周期段階の分布の差異、細胞増殖の減少したレベル、および/または癌細胞死の増加したレベルが、wnt経路シグナル伝達を阻害する、癌細胞周期停止を誘導する、癌細胞増殖を阻害する、かつ/または癌細胞死を促進するwnt経路アンタゴニストとしてwnt経路候補アンタゴニストを同定することを含む前記方法がさらに提供される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストはRスポンジンアンタゴニストである。
方法のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは表9に収載される1つまたは複数の遺伝子の転位(例えば、再配列および/または融合)である。方法のいずれかのいくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)はRスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO1転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)は、配列番号12、41、および/または42を含むプライマーにより検出可能である。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eプロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO2プロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号72および/または配列番号73を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)は、配列番号13、14、43、および/または44を含むプライマーにより検出可能である。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKプロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO3プロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRK分泌シグナル配列を含む(かつ/またはRSPO3分泌シグナル配列は含まない)。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO4転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)は、(例えば、Rスポンジン転位なしの基準と比べて)Rスポンジンの上昇した発現レベルをもたらす。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはRスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)ならびにKRASおよび/またはBRAFである。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)ならびに変種(例えば、多型または変異)KRASおよび/またはBRAFの存在である。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)の存在であるならびに1つまたは複数のバイオマーカーの非存在は変種(例えば、多型または変異)CTNNB1および/またはAPCの非存在である。
wnt経路シグナル伝達のレベルを決定する方法は当技術分野では公知であり本明細書の実施例に記載されている。いくつかの実施態様では、wnt経路シグナル伝達のレベルは、実施例に記載されているルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して決定される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは、wnt経路シグナル伝達のレベルを約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%のいずれか減少させることによりwnt経路シグナル伝達を阻害する。
本明細書に記載されるwnt経路アンタゴニストの増殖阻害効果は、当技術分野で公知の方法、例えば、内在的にまたはそれぞれの遺伝子(複数可)でのトランスフェクションに続いてwnt経路を発現する細胞を使用して評価することができる。例えば、適切な腫瘍細胞系、およびwnt経路ポリペプチドトランスフェクト細胞を、本明細書に記載のwnt経路アンタゴニストで数(例えば、2〜7)日間、様々な濃度で処理し、クリスタルバイオレットもしくはMTTで染色し、または何か他の比色アッセイにより分析してもよい。増殖を測定する別の方法は、本発明の抗体、結合ポリペプチド、小分子および/またはポリヌクレオチドの存在または非存在下で処理された細胞による3H−チミジン取り込みを比較することによる方法になるであろう。処理後、細胞は収穫され、DNAに取り込まれた放射線の量がシンチレーション計測器において定量される。適切な陽性対照には、選択された細胞系をその細胞系の増殖を阻害することが分かっている増殖阻害抗体で処理することが含まれる。インビボでの腫瘍細胞の増殖阻害は、当技術分野で公知の様々なやり方で決定することができる。
細胞周期段階の分布、細胞増殖のレベル、および/または細胞死のレベルを決定する方法は当技術分野では公知である。いくつかの実施態様では、癌細胞周期停止はG1での停止である。
いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは、インビトロまたはインビボで癌細胞、癌組織、または癌試料の癌細胞増殖を、未処置の癌細胞、癌組織、または癌試料と比べて約25〜100%、さらに好ましくは、約30〜100%、さらに好ましくは約50〜100%または約70〜100%阻害することになる。例えば、増殖阻害は、細胞培養中約0.5から約30μg/mlまたは約0.5nMから約200nMのwnt経路アンタゴニスト濃度で測定することができ、増殖阻害はwnt経路候補アンタゴニストへの腫瘍細胞の曝露の1〜10日後に決定される。wnt経路候補アンタゴニストの約1μg/kg〜約100mg/kg体重での投与により、wnt経路候補アンタゴニストの最初の投与から約5日〜3か月以内に、好ましくは約5〜30日以内に腫瘍サイズが減少するまたは腫瘍細胞増殖が減少すれば、wnt経路アンタゴニストはインビボで増殖阻害性である。
癌細胞死を誘導するwnt経路アンタゴニストを求めて選択するため、例えば、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルーまたは7AAD取り込みにより示される膜統合性の消失は基準と比べて評価しうる。PI取り込みアッセイは補体および免疫エフェクター細胞の非存在下で実施することができる。wnt経路発現腫瘍細胞は、培地単独とまたは適切なwnt経路アンタゴニストを含有する培地と一緒にインキュベートされる。細胞は3日の期間インキュベートされる。それぞれの処理に続いて、細胞は洗浄され、細胞集塊を取り除くために35mmストレーナーキャップ付き12×75チューブ(チューブあたり1ml、処理群あたり3チューブ)にアリコートされる。次に、チューブはPI(10μg/ml)を受ける。試料はFACSCAN(登録商標)フローサイトメーターおよびFACSCONVERT(登録商標)CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して解析しうる。PI取り込みにより決定される場合、統計的に有意なレベルでの細胞死を誘導するwnt経路アンタゴニストは細胞死誘導抗体、結合ポリペプチド、小分子、および/またはポリヌクレオチドとして選択することができる。
対象の抗体が結合しているポリペプチド上のエピトープに結合する、またはポリペプチドと相互作用するwnt経路アンタゴニストを求めてスクリーニングするため、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、編 Harlow and David Lane(1988)に記載されているアッセイなどの常用のクロスブロッキングアッセイを実施することができる。このアッセイを使用すれば、候補wnt経路アンタゴニストが既知の抗体と同じ部位またはエピトープに結合するかどうかを決定することができる。その代わりに、またはそれに加えて、当技術分野で公知の方法によりエピトープマッピングを実施することができる。例えば、抗体および/または結合ポリペプチド配列はアラニンスキャニングなどにより変異誘発させて接触残基を同定することができる。変異抗体は最初、ポリクローナル抗体および/または結合ポリペプチドとの結合について試験されて適切なフォールディングを確認する。異なる方法では、ポリペプチドの異なる領域に対応するペプチドは、候補抗体および/またはポリペプチドとのまたは候補抗体および/または結合ポリペプチドと特徴付けられたもしくは既知のエピトープを有する抗体との競合アッセイに使用することができる。
スクリーニングするかつ/または同定する方法のいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路候補アンタゴニストは抗体、結合ポリペプチド、小分子、またはポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、wnt経路候補アンタゴニストは抗体である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニスト(例えば、Rスポンジン転位アンタゴニスト)は小分子である。
一態様では、wnt経路アンタゴニストは、例えば、ELISA、ウエスタンブロットなどの公知の方法によりその抗原結合活性について試験される。
V.薬学的製剤
本明細書に記載されるwnt経路アンタゴニストの薬学的製剤は、所望の純度を有するそのような抗体を1つまたは複数の随意の薬学的に許容される担体(REMINGTON’S PHARMA.SCI.第16版 Osol,A.編(1980))と混合することにより、凍結乾燥剤または水溶液の形態で調製される。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニストは小分子、抗体、結合ポリペプチド、および/またはポリヌクレオチドである。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投与量および濃度ではレシピエントには無毒であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。例となる薬学的に許容される担体は、本明細書ではさらに、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などの可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質性薬分散剤が含まれる。rHuPH20を含む、ある種の例となるsHASEGPおよび使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および米国特許出願公開第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
例となる凍結乾燥製剤は米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載されている製剤が含まれ、後者の製剤にはヒスチジン−アセテートバッファーが含まれる。
本明細書の製剤は治療されている特定の適応症に必要な1つよりも多い、好ましくは互いに悪影響を与えない補完的活性を有する活性成分も含有しうる。そのような活性成分は、意図している目的に有効である量で組み合わせて適切に存在している。
活性成分は、コロイド薬送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)においてまたはマクロエマルションにおいて、例えば、コアセルベーション技法によりまたは界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに封入してもよい。そのような技法はREMINGTON’S PHARMA.SCI.第16版 Osol,A.編(1980)に開示されている。
徐放性製剤を調製しうる。徐放性製剤の適切な例には、wnt経路アンタゴニストを含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、前記マトリックスは造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形状をしている。
インビボ投与のために使用される製剤は一般に無菌である。無菌性は、例えば、除菌膜を通す濾過により容易に実現しうる。
VI.製造品
本発明の別の態様では、上記障害の治療、予防および/または診断に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は、容器および容器上のまたはこれに付属するラベルもしくは添付文書を含む。適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、注射器、IV溶液袋、等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成しうる。容器には、状態を治療する、予防するおよび/または診断するのに単独で効果的なまたはこれに効果的な別の組成物と組み合わされる組成物が入っており、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は静脈注射液袋または皮下注射針により突き刺し可能な栓付のバイアルでもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書に記載されるwnt経路アンタゴニスト(例えば、Rスポンジンアンタゴニスト、例えば、Rスポンジン転位アンタゴニスト)である。ラベルまたは添付文書は、組成物が最適の状態を治療するのに使用されることを表示している。さらに、製造品は、(a)wnt経路アンタゴニスト(例えば、Rスポンジンアンタゴニスト、例えば、Rスポンジン転位アンタゴニスト)を含む組成物がそこに含有されている第1の容器、ならびに(b)追加の細胞傷害性または他の方法での治療薬を含む組成物がそこに含有されている第2の容器を含んでいてもよい。
いくつかの実施態様では、製造品は容器、前記容器上のラベル、および前記容器内に含有される組成物を含み、組成物には1つまたは複数の試薬(例えば、1つもしくは複数のバイオマーカーに結合する一次抗体または本明細書に記載されるバイオマーカーのうちの1つもしくは複数に対するプローブおよび/もしくはプライマー)が含まれ、容器上のラベルは、組成物を使用して試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの存在を評価できること、および試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの存在を評価するための試薬を使用するための説明書を表示している。製造品は試料を調製し試薬を利用するための説明書および材料のセットをさらに含むことができる。いくつかの実施態様では、製造品は一次と二次抗体の両方などの試薬を含んでいることもあり、二次抗体は標識、例えば、酵素標識にコンジュゲートされている。いくつかの実施態様では、製造品は本明細書に記載されるバイオマーカーのうちの1つまたは複数に対する1つまたは複数のプローブおよび/またはプライマーを含む。
製造品のいずれかのいくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーは表9に収載される1つまたは複数の遺伝子の転位(例えば、再配列および/または融合)を含む。製造品のいずれかのいくつかの実施態様では、転位(例えば、再配列および/または融合)はRスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO1転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3EおよびRSPO2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eエクソン1およびRSPO2エクソン3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号71を含む。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)は、配列番号12、41、および/または42を含むプライマーにより検出可能である。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はEIF3Eプロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO2転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO2プロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKおよびRSPO3を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKエクソン1およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKエクソン7およびRSPO3エクソン2を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)は配列番号72および/または配列番号73を含む。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)は、配列番号13、14、43、および/または44を含むプライマーにより検出可能である。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRKプロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO3プロモーターにより推進される。いくつかの実施態様では、RSPO3転位(例えば、再配列および/または融合)はPTPRK分泌シグナル配列を含む(かつ/またはRSPO3分泌シグナル配列を含まない)。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)はRSPO4転位(例えば、再配列および/または融合)である。いくつかの実施態様では、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)は、(例えば、Rスポンジン転位なしの基準と比べて)Rスポンジンの上昇した発現レベルをもたらす。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーはRスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)ならびにKRASおよび/またはBRAFである。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)ならびに変種(例えば、多型または変異)KRASおよび/またはBRAFの存在である。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、Rスポンジン転位(例えば、再配列および/または融合)の存在であるならびに1つまたは複数のバイオマーカーの非存在は変種(例えば、多型または変異)CTNNB1および/またはAPCの非存在である。
製造品のいずれかのいくつかの実施態様では、製造品はプライマーを含む。いくつかの実施態様では、プライマーは配列番号12、13、14、42、43、および/または44のいずれかである。
製造品のいずれかのいくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニスト(例えば、Rスポンジン転位アンタゴニスト)は抗体、結合ペプチド、小分子、またはポリヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニスト(例えば、Rスポンジン転位アンタゴニスト)は小分子である。いくつかの実施態様では、wnt経路アンタゴニスト(例えば、Rスポンジン転位アンタゴニスト)は抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は抗体断片であり、抗体断片はwnt経路ポリペプチド(例えば、Rスポンジン転位融合ポリペプチド)に結合する。
本発明のこの実施態様における製造品は、組成物を使用して特定の状態を治療することができることを表示する添付文書をさらに含んでいてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、製造品は、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容されるバッファーを含む第2(または第3)の容器をさらに含んでいてもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、充填剤、針、および注射器を含む、商業的および使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
製造品中の他の随意の構成要素には、1つまたは複数のバッファー(例えば、遮断バッファー、洗浄バッファー、基質バッファー、等)、酵素標識により化学的に変化される基質(例えば、色素原)などの他の試薬、エピトープ検索溶液、対照試料(正および/または負の対照)、対照スライド(複数可)、等が含まれる。
上記製造品のいずれも、wnt経路アンタゴニストに代わってまたはこれに加えて本明細書に記載の免疫コンジュゲートを含んでいてもよいことは理解される。
以下は本発明の方法および組成物の例である。上で提供される概要を考慮すれば、様々な他の実施態様を実行しうることは理解される。
実施例のための材料および方法
試料、DNAおよびRNAの調製ならびにMSI試験
患者に対応する新鮮な凍結原発性結腸腫瘍および正常な組織試料を、市販の供給源から得、下記のゲノム解析に供した。すべての腫瘍および正常組織を、病理学的に見直した。90の試料のセットから、74の腫瘍ペアを、さらなる解析のために同定した。腫瘍のDNAおよびRNAを、Qiagen AllPrep DNA/RNA kit(Qiagen、CA)を使用して抽出した。腫瘍試料を、マイクロサテライト不安定性に関して、MSI検出キット(Promega、WI)を使用して評価した。
エキソームのキャプチャーおよびシーケンシング
72の腫瘍試料および対応する正常組織を、エキソームシーケンシングにより解析した。エキソームキャプチャーを、SeqCap EZヒトエキソームライブラリーv2.0(Nimblegen、WI)を使用して実施し、このライブラリーは、約30,000のコード遺伝子(約300,000のエクソン、全サイズ36.5Mb)を標的とする、210万の経験的に最適化された長鎖オリゴヌクレオチドからなった。該ライブラリーは、RefSeq(2010年1月)、CCDS(2009年9月)およびmiRBase(v.14、2009年9月)に提示された遺伝子およびエクソンを含む、総計44.1Mbのゲノムをキャプチャーすることが可能であった。作製されたエキソームキャプチャーライブラリーを、HiSeq2000(Illumina、CA)でシーケンシングした。2×75bpのペアエンドデータの1レーンを、各試料に関して収集した。
RNA−seq
68の結腸腫瘍と対応する正常試料とのペア由来のRNAを使用して、RNA−seqライブラリーを、TruSeq RNA Sample Preparation kit(Illumina、CA)を使用して作製した。RNA−seqライブラリーは、マルチプレックス(2/レーン)であり、HiSeq2000で、製造業者(Illumina、CA)の推奨によりシーケンシングした。約3000万の2×75bpペアエンドシーケンスリード/試料を作製した。
配列データ処理
すべての短いリードデータを、品質管理に関してBioconductor ShortRead packageを使用して評価した。Morgan,M.ら、Bioinformatics 25、2607−2608(2009)。すべての試料が正確に同定されたことを確認するために、Illuman2.5Mアレイデータとオーバーラップする、すべてのエキソームおよびRNA−seqデータのバリアントを比較して、一貫性をチェックした。網羅的(all by all)生殖細胞バリアントの比較もまたすべての試料の間で実施し、すべてペアが腫瘍と正常の間で正確に対応し、それに応じて、カットオフである90%を超えて、任意の他の患者のペアと対応しなかったことをチェックした。
バリアントコール
シーケンシングリードを、UCSCヒトゲノム(GRCh37/hg19)に、BWAソフトウェアをデフォルトパラメータにセットして使用し、マッピングした。Li,H.&Durbin,R.Bioinformatics 25、1754−1760(2009)。ローカルリアライメント、重複のマークおよび粗バリアントコールを、前記のように実施した。DePristo,M.A.ら、Nat.Genet.43、491−498(2011)。dbSNP Build 131(Sherry,S.T.ら、Nucleic Acids Res 29、308−311(2001))において表されたが、COSMIC(Forbes,S.A.ら、Nucleic Acids Res.38、D652−657(2010))では表されない公知の生殖細胞変異を、さらにフィルタリングした。加えて、腫瘍および正常試料の両方において提示されたバリアントを、生殖細胞変異として除去した。腫瘍細胞に存在するが、対応する正常試料には不在である残りの変異は、体細胞であることが予測された。予測された体細胞変異を、腫瘍および対応する正常試料の両方において最低10xのカバレッジで、対応する正常試料において観察されたバリアント対立遺伝子頻度が<3%ならびにFisherの正確確率検定を使用してバリアント対立遺伝子のカウントに有意差を有する位置だけを含むようにさらにフィルタリングした。このアルゴリズムの性能を評価するために、807のタンパク質改変バリアントをランダムに選択し、前記のSequenom(San Diego、CA)核酸技術を使用して、これらのバリアントを検証した。Kan,Z.ら、Nature 466、869−873(2010)。これらのバリアントのうち、93%(753)が、癌特異的であることが検証され、無効であるバリアントは、腫瘍においてみられないものと、隣接する正常組織においても見出されるもの(生殖細胞)との間で、同じ程度に分かれた。挿入欠失を、GATK Indel Genotyper Version 2を使用してコールし、GATK Indel Genotyper Version 2は、所与のペアに関する腫瘍および正常試料の両方のBAMファイルを読み込む。DePristo,M.A.ら、Nat.Genet.43、491−498(2011)。
二項仮定を大きく外れたバリアントまたは特定のマッパーにより影響を受けたバリアントコールを特定するために、Sequenomにより検証されたバリアントが、下記のアルゴリズムを使用してさらに含まれた。リードを、UCSCヒトゲノム(GRCh37/hg19)にGSNAPを使用してマッピングした。Wu,T.D. & Nacu,S.Bioinformatics 26、873−881(2010)。所与の位置に少なくとも2回見られ、対立遺伝子頻度が10%を超えるバリアントを選択した。これらのバリアントを、鎖および位置において有意なバイアスに関して、Fisherの正確確率検定を使用してさらにフィルタリングした。加えて、隣接する正常試料において十分なカバレッジを有さず、ベータ二項分布を使用して、正常対立遺伝子頻度12.5%において見落とす可能性が少なくとも1%であると決定されたバリアントを排除した。第2のアルゴリズムに含まれるすべての新規なタンパク質改変バリアントは、Sequenomにより検証され、合計515の追加のバリアントが得られた。すべての非同義体細胞変異の遺伝子機能に対する効果を、SIFT(Ng,P.C. & Henikoff,S.Genome Res 12、436−446(2002))およびPolyPhen(Ramensky,V.,Bork,P. & Sunyaev,S.Nucleic Acids Res 30、3894−3900(2002))を使用して予測した。すべてのバリアントを、Ensembl(リリース59、www.ensembl.org)を使用してアノテーションした。
体細胞変異および挿入欠失の検証
一塩基対伸長法、それに続いて核酸の質量分析(Sequenom、CA)を前記のように使用し、予測体細胞変異を検証した。腫瘍および対応する正常DNAを、REPLI−g Whole Genome Amplification Midi Kit(Qiagen、CA)を使用して全ゲノム増幅し、製造業者の推奨によりクリーンアップし、使用した。腫瘍において期待通り見出されたが正常試料には不在であるバリアントを、体細胞に指定した。腫瘍および正常試料の両方に存在したバリアントは、生殖細胞として分類した。腫瘍または正常試料において検証できなかったバリアントは、無効とした。挿入欠失の検証のために、PCRのためのプライマーを、挿入欠失領域を含有する約300bpのアンプリコンを生じるように設計した。該領域を、腫瘍および対応する正常試料において、Phusion(NEB、MA)を製造業者の取扱説明書により使用して、PCR増幅した。PCR断片を、続いてゲルにより精製し、関連するバンドを単離し、このバンドをSanger法でシーケンシングした。シーケンシング・トレース・ファイルを、Mutation Surveyor(SoftGenetics、PA)を使用して解析した。腫瘍に存在し、正常試料に不在であった挿入欠失を体細胞に指定し、表3に報告する。
変異の有意性
遺伝子の変異の有意性を、前記の方法を使用して評価した。簡潔に言うと、この方法は、計算されたバックグラウンドの変異率に基づき期待されるものより、統計的に有意に多いタンパク質改変変異を有する遺伝子を同定可能である。バックグラウンドの変異率は、6つの異なるヌクレオチド変異カテゴリー(A、C、G、T、CG1、CG2)に関して計算され、このカテゴリーにおいて、腫瘍および対応する正常試料の両方において、十分なカバレッジがあった(≧10×)。非同義対同義の比率、ri、を、すべてのタンパク質コードヌクレオチドの変異および得られた変化が同義または非同義の変化をもたらすかどうかの探索のシミュレーションを使用して計算した。バックグラウンドの変異率、fi,を、同義体細胞バリアントの数にriを掛け、タンパク質コードヌクレオチドの総数により正規化することによって決定した。所与の遺伝子に関して期待される変異の数を、タンパク質コード塩基の数×fiとして決定し、すべての変異カテゴリーにわたって統合した。P値を、各遺伝子に関する変異の期待数および観察数を所与として、ポアソン確率関数を使用して計算した。P値を、Benjamini Hochberg法を使用して多重検定に関して補正し、得られたq値を、q値の負のlog10を取ることによりqスコアに変換した。異なる変異率が、MSIおよびMSS試料に存在することを考え、qスコアはそれぞれ別々に計算し、2つの超変異試料を完全に除去した。バックグラウンドの変異率を過小評価しないために、腫瘍含有量が50%未満である7つの試料を、解析から排除した。経路の変異有意性もまた、MSigDB(Subramanian A.ら、Proc.of the Natl Acad.Of Sci.USA 102、15545−15550(2005))の一部としてダウンロードした、BioCara Pathwayを使用したことを除き、前記のように計算した。
全ゲノムのシーケンシングおよび解析
ペアエンドDNA−Seqのリードを、BWAを使用してGRCh37にアライメントした。変異コールを得るためのアライメントのさらなる処理は、GATKパイプラインを使用するエキソームシーケンシング解析と同様であった。コピー数を、10kbの非オーバーラップビン中のリード数を計算し、これらのカウントの腫瘍/正常比を取ることによって計算した。染色体切断点を、ブレイクダンサーを使用して予測した。Chen,K.ら、Nat.Methods 6、677−681(2009)。ゲノムプロットを、Circos(Krzywinski,M.ら、Genome Res.19、1639−1459(2009))を使用して作成した。
RNA−seqのデータ解析
RNA−Seqのリードを、GSNAP(Wu,T.D. & Nacu,S.Bioinformatics 26、873−881(2010))を使用して、ヒトゲノム・バージョンGRCh37にアライメントした。発現カウント/遺伝子を、アライメントが一致し、CCDSにより定義された各遺伝子座に対してユニークであるリードの数をカウントすることによって得た。遺伝子カウントを、続いてライブラリーサイズに対して正規化し、次いでDESeq Bioconductorソフトウェアパッケージを使用して、分散を安定化させた。Anders,S. & Huber,W.Genome Biology 11、R106(2010)。差次的遺伝子発現を、分散安定化カウントについてのペアワイズt検定、続く、Benjamini & Hochberg法を使用する多重検定に関する補正により、計算した。
SNPアレイデータの作成および解析
Illumina HumanOmni2.5_4v1アレイを使用して、74の結腸腫瘍および対応する正常試料を、遺伝子型、DNAコピーおよびLOHに関して、約250万のSNP位置においてアッセイした。これらの試料は、試料の同定およびデータの品質のための本発明者らの品質管理基準をすべて通過した(下記を参照されたい)。2295239の高品質のSNPのサブセットを、すべての解析のために選択した。
Illuminaアレイデータを使用可能にするための修正後、PICNIC(Greenman,C.D.ら、Biostatistics 11、164−175(2010))アルゴリズムを適用し、総コピー数および対立遺伝子特異的コピー数/LOHを推定した。修正は、セグメント初期化コンポーネントとCBSアルゴリズム(Venkatraman,E.S. & Olshen,A.B. Bioinformatics 23、657−663(2007))との置き換え、ならびにバックグラウンドの生コピー数シグナルに関する事前分布の調整(調整平均が0.7393および平均偏差が0.05)を含んだ。PICNICの隠れマルコフモデル(HMM)により要求される前処理のために、ベイズモデルにより各SNPのクラスターの重心を推定した。SNP kおよび表現型gに関して、正常試料において観察されたデータを、2変数ガウス分布に従ってモデル化した。3つの2倍体遺伝子型のクラスター中心を、6次元ガウス分布と、ハイパーパラメータとして処理された平均および156の正常試料のトレーニングセットに経験的に基づくセットとを合わせてモデル化した。クラスター中心および遺伝子型内の共分散マトリックスを、逆ウィシャートでモデル化し、スケールマトリックスのハイパーパラメータをさらに経験的に設定し、自由度を手作業で調整して、広範囲のプローブ挙動および低い対立遺伝子頻度のための満足のいく結果を提供した。最終的に、SNP k(AおよびBの対立遺伝子に対して別々に)に関するシグナルを、非線形関数:
を用いて変換し、上で計算した事後分布に基づいて選択した。
試料の同一性を、すべての試料の間の遺伝子型一致を使用して検証した。同じ患者由来の腫瘍のペアは、>90%の一致であることが期待され、他のすべてのペアは<80%の一致であることが期待された。それらの基準を満たさなかった試料は、すべての解析から排除した。PICNICの修正後、HMMにフィットした全部の品質を、各SNPの生の値と、HMMにフィットした値との間の2乗平均平方根誤差(RMSE)を測定することによって評価した。RMSE>1.5の試料を、すべての解析から排除した。最終的に、共通して観察された2つの人為的結果を説明するために、フィットしたコピー数が0である単集合に関して、またはコピー数の増加が推測された領域に対して、観察され、フィットした平均が2を上回り異なる場合、フィットしたコピー数値を「NA」に設定した。
DNAコピー数の再発増減
DNAコピー数の増減が再発されるゲノム領域を、GISTIC、バージョン2.0. Mermel,C.H.ら、Genome Biology 12、R41(2011)を使用して同定した。PICNICにより得られた、セグメント化された整数の総コピー数値cを、log2比の値、yに変換し、y=log2(c+0.1)−1であった。+/−0.2のカットオフを、それぞれlog2比値の増減の分類に使用した。最小セグメント長20SNPおよびlog2比「cap」値3を使用した。
融合の検出および検証
推定融合を、GSTRUCT−融合と呼ばれる、開発された計算パイプラインを使用して、同定した。このパイプラインは、リードスルー融合を見出すための、今までに報告された方法論と基本的に同様の生成・試験戦略に基づく。Nacu,S.ら、BMC Med Genomics 4、11(2011)。ペアエンドリードを、本発明者らのアライメントプログラムGSNAPを使用して、アライメントした。Nacu,S.ら、BMC Med Genomics 4、11(2011)。GSNAPは、スプライシング表示転位、逆位および単一リードエンド内の他の遠位融合を検出する能力を有する。
これらの遠位スプライシングは、次の試験段階のための1セットの融合候補を提供した。融合候補の他のセットは、ペアエンドのリードの各エンドを、異なる染色体に対してユニークにアライメントした、ペアでないユニークなアライメント、およびペアエンドに由来するが、各エンドを、同じ染色体であるが、200,000bpを超える見かけのゲノム距離または逆位もしくはスクランブリング事象を示唆するゲノムの配向を有する染色体に対してユニークにアライメントした、不一致のユニークなアライメントに由来する。
融合候補を、続いて、RefSeqに由来する公知の転写物に対してフィルタリングし、GMAPを使用してゲノムにアライメントした。Wu,T.D. & Watanabe,C.K. Bioinformatics 21、1859−1875(2005)。遠位スプライシングに隣接する両方の断片またはペアでないもしくは不一致のペアエンドアライメントの両方のエンドを、公知のエクソン領域にマッピングすることが必要であった。このフィルタリングステップは、候補のおよそ90%を除去した。同じ遺伝子の再配列およびゲノム中の隣接遺伝子を伴う見かけのリードスルー融合事象を示唆する逆位および欠失の候補をさらに排除し、これらは、本発明者らの今までの調査により、転写起源であってゲノム起源ではない可能性が高かった。
残りの融合事象候補に関して、担持されたドナーエクソンから遠位のエクソンおよび担持されたアクセプターエクソンから近位のエクソンからなる人工のエクソン−エクソンジャンクションを構築した。近位および遠位の計算に含まれるエクソンは、各遺伝子に沿った累積長が、推定最大インサート長が200bp以内であるように限定された。対照として、同じ遺伝子内のエクソンの組合せからなるすべてのエクソン−エクソンジャンクションを、融合事象候補に寄与するすべての遺伝子に関して構築した。
本発明者らのパイプラインの試験段階において、本発明者らは、人工のエクソン−エクソンジャンクションおよび対照から、GMAPおよびGSNAPパッケージの一部として含まれたGMAP_BUILDプログラムを使用して、ゲノムインデックスを構築した。このゲノムインデックスおよびスプライシングの検出を停止したGSNAPプログラムを使用して、ゲノムに一致しなかった元々のリードエンドを再アライメントした。融合候補に対応する遺伝子間ジャンクションにアライメントされたが、対象の遺伝子内ジャンクションにはアライメントされなかったリードを抽出した。
リアライメントの結果をフィルタリングし、各融合候補が、20bpのオーバーハングを含む少なくとも1つのリードを有するように要求した。さらに、各融合候補が、少なくとも10の支持リードを有するように要求した。残りの各融合候補に関して、2つのコンポーネント遺伝子を、GMAPを使用して、互いにアライメントし、アライメントが75bpのウインドウ中に60のマッチを含有する任意の領域を有する場合、この融合を排除した。エクソン−エクソンジャンクションを、GMAPを使用してコンポーネント遺伝子のそれぞれに対してさらにアライメントし、アライメントが、ジャンクションの90%を上回るカバーを有し、95%を上回る同一性を有した場合、この融合を排除した。
遺伝子融合の検証を、逆転写(RT)−PCR法を使用し、結腸腫瘍および対応する正常試料を使用して実施した。500ngの全RNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription kit(Life Technologies、CA)を用いて、製造業者の取扱説明書に従って、cDNAに逆転写した。50ngのcDNAを、400pMの各プライマー、300μMのデオキシヌクレオシド三リン酸および2.5単位のLongAmp Taq DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、MA)を含有する、25μlの反応液中で増幅した。PCRを、初期変性が95℃で3分間、続いて、95℃において10秒間、56℃において1分間および68℃において30秒間を35サイクルならびに最終伸長ステップが68℃において10分間で実施した。3μlのPCR産物を、1.2%のアガロースゲルにおいて泳動させ、遺伝子融合を含有する試料を同定した。特異的PCR産物を、QIAquick PCR Purification kitまたはGel Extraction kit(Qiagen、CA)のいずれかを用いて精製した。精製したDNAを、各融合に特異的なPCRプライマーを用いた直接シーケンシング、またはTOPOクローニングベクターpCR2.1(Life Technologies、CA)内にクローニングおよびその後のSanger法によるシーケンシングのいずれかを行った。クローンを、Sanger法によるシーケンシングを使用して、ABI3730xl(Life Technologies、CA)で製造業者の取扱説明書によりシーケンシングした。Sanger法によるシーケンシングのトレースファイルを、Sequencher(Gene Cordes Corp、MI)を使用して解析した。
RSPO融合活性試験
c末端FLAGタグEIF3E、PTPKR(アミノ酸1〜387)、RSPO2、RSPO3、EIF3E(e1)−RSPO2(e2)、PTPRK(e1)−RSPO3(e2)、PTPRK(e7)−RSPO3(e2)の発現を駆動する真核性発現プラスミドpRK5Eを、標準的PCRおよびクローニング戦略を使用して作製した。
細胞、馴化培地、免疫沈降およびウエスタンブロット
HEK293T、ヒト胚腎臓細胞を、10%FBSを添加したDMEMにおいて維持した。発現解析および馴化培地の作製のために、3×105のHEK29T細胞を、6ウェルプレートの10%FBSを含有する1.5ml DMEMに播種した。細胞に、1μgのDNAを、図6(Roche)を使用して、製造業者の取扱説明書に従ってトランスフェクトした。培地を48時間馴化し、回収し、遠心分離にかけ、ルシフェラーゼレポーターアッセイを刺激するために使用した(最終濃度0.1〜0.4倍)。発現解析のために、培地を回収し、遠心分離にかけ、残屑を除去し、免疫沈降に使用した。
ルシフェラーゼレポーターアッセイ
HEK293T細胞を、50,000細胞/mlの密度で、96ウェルプレートに90μlの2.5%FBS含有培地/ウェルで播種した。24時間後、細胞に、図6を使用して、製造業者の取扱説明書(Roche、CA)に従って、以下のDNA/ウェルをトランスフェクトした:0.04μgのTOPbriteホタルレポーター(Nature Chem.Biol.5、217−219(2009))、0.02μgのpRL SV40−Renilla(Promega、WI)および0.01μgの適切なRスポンジンまたは対照構築物。細胞を、25μlの、10%FBSを含有し、rmWnt3a(20〜100ng/ml(最終)、R&D Systems、MN)を含むか、または含まない、新鮮な培地または馴化培地のいずれかにより刺激した。24時間の刺激後、50μlの培地を除去し、Dual−Gloルシフェラーゼ検出試薬(Promega、WI)で、製造業者の取扱説明書に従って置き換えた。Envision Luminometer (Perkin−Elmer、MA)を使用して、発光を検出した。トランスフェクションの効率を調節するために、ホタルルシフェラーゼレベルを、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼレベルに対して正規化し、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)の尺度を作製した。実験データを、3つの独立したウェルの平均±SDとして表した。
免疫沈降およびウエスタンブロット
RSPO野生型およびRSPO融合タンパク質が分泌されていることを確認するために、FLAGタグ付したタンパク質を、抗FLAG−M2抗体をカップリングさせたビーズ(Sigma、MO)を使用して、培地から免疫沈降させ、SDS−PAGEローディングバッファー中で煮沸し、4〜20%のSDS−PAGE(Invitrogen、Carlsbad、CA)において分離し、ニトロセルロース膜に転写した。細胞中で発現したRSPOおよび他のFLAGタグ付タンパク質を、細胞溶解物から、前記(Bijay p85 paper)のようにウエスタンブロットにより検出した。簡潔に言うと、免疫沈降させたタンパク質および細胞溶解物由来のタンパク質を、FLAG−HRP−コンジュゲート抗体および化学発光Super signal West Dura化学発光検出基質(Thermo Fisher Scientific、IL)を使用して、ウエスタンブロットにより検出した。
実施例1−CRC変異プロファイル
癌ゲノムの変化を同定および理解することは、標的治療薬の開発にとって必須である。これらの実施例において、70ペアを超えるヒト原発性結腸癌の系統的解析を、次世代シーケンシングを適用し、これらのエキソーム、トランスクリプトームおよびコピー数変化を特徴付けることにより着手した。36,303のタンパク質改変体細胞変化を同定し、この変化は、いくつかの新しい再発変異を、Wnt経路遺伝子であるTCF12およびTCF7L2など、クロマチンリモデリングタンパク質、例えばTET2およびTET3ならびにERBB3を含む受容体型チロシンキナーゼに含んだ。有意な癌遺伝子に関する解析により、細胞周期チェックポイントキナーゼATMを含む、18の候補を同定した。コピー数およびRNA−seqデータの解析により、結腸腫瘍のサブセットにおいて、IGF2の増幅および対応する過剰発現を同定した。さらに、RNA−seqデータを使用して多重融合転写物を同定し、この中には、試料の10%において起こる、Rスポンジン遺伝子であるRSPO2およびRSPO3の再発遺伝子融合が含まれた。RSPO融合タンパク質は、生物学的に活性であり、Wntシグナル伝達を増強することが実証された。RSPO融合とAPCの変異は相互に排他的であり、RSPO融合が、Wntシグナル伝達の活性化および腫瘍形成において役割を果たしている可能性が高いことを示している。これらの実施例において同定されたRスポンジン遺伝子融合およびいくつかの他の遺伝子の変異は、結腸癌における治療的介入の新しい可能性を提供する。
74の原発性結腸腫瘍およびそれらの対応する隣接正常試料を特徴付けた。74の結腸腫瘍および隣接正常試料のペアのうちの72(15がMSIおよび57がMSS)に関する全エキソームシーケンシングを実施し、変異スペクトルを評価した。これらの74の腫瘍/正常ペアを、Illumina2.5Mアレイにおいてさらに解析し、染色体コピー数の変化を評価した。68の腫瘍/正常ペアに関するRNA−seqデータもまた得た。最終的に、試料のこのセットから30×のカバレッジで、MSIおよびMSSの腫瘍/正常ペアのゲノムをシーケンシングおよび解析した。
エクソンを、Nimblegen SeqCap EZヒトエキソームライブラリーv2.0を使用してキャプチャーし、HiSeq 2000(Illumina、CA)でシーケンシングし、75bpのペアエンドシーケンシングリードを作製した。標的化領域は、平均カバレッジ179xを有し、97.4%の塩基が≧10倍でカバーされた。分析した72の結腸腫瘍試料において95,075の体細胞変異が同定され、そのうち36,303がタンパク質改変性であった。2つのMSS試料は、異常な多数の変異(それぞれ24,830および5,780の変異のうち9,479および2,332がタンパク質改変変異であった)を示した。これらは超変異として指定され、バックグラウンドの変異率の計算には考慮されなかった。研究した15のMSI試料中の52,312の体細胞変異(18,436がミスセンス、929がナンセンス、22が終止喪失、436が基本的スプライシング部位、363がタンパク質改変挿入欠失、8,065が同義、16,675がイントロンおよび7,386がその他)および55のMSS試料中12,153の体細胞変異(3,922がミスセンス、289がナンセンス、6が終止喪失、69が基本的スプライシング部位、20がタンパク質改変挿入欠失、1,584が同義、4,375がイントロンおよび1,888がその他)を見出した(表2および3)。これらの実施例において報告された、約98%(35,524/36,303)のタンパク質改変単一ヌクレオチドバリアントは新規であり、COSMIC v54(Forbes、S.A.ら、Nucleic Acids Res.38:D652−657(2010))において報告されていなかった。報告された体細胞変異の37%を、RNA−seqデータまたは質量分析遺伝子型判定を使用して、93%の検証率で検証した(表2)。報告されたすべての挿入欠失が、Sanger法によるシーケンシングを使用して体細胞と確認された(表3−体細胞挿入欠失)。MSS試料中2.8/Mb(55試料中31〜149のコード領域変異)およびMSI試料中40/Mb(15試料中764〜3113のコード領域変異)の平均非同義変異率が観察され、後のMMR検出と一致した。
変異部位における塩基レベルの移行およびトランスバージョンの解析により、MMRの状態と関係なく、全エキソームおよび全ゲノム解析の両方で、CRCにおいてCからTへの移行が優勢であることが明らかにされた。これは、今までの変異レポート(Wood,L.D.ら、Science 318:1108−1113(2007);Sjoblom,T.ら、Science 314:268−274(2006);Bass,A.J.ら、Nat.Genet.43:964−968(2011))と一致する。検査した2つの超変異腫瘍試料もまた、CからAおよびTからGへのトランスバージョンを高い割合で示し、これらの試料に観察された非常に高い変異率と一致した。
エキソーム変異データと一致して、解析したMSS全ゲノムは、17,651の変異を示し、それと比較してMSI全ゲノムにおいて97,968の変異が観察された。平均全ゲノム変異率は、それぞれMSSおよびMSIゲノムに関して6.2/Mbおよび34.5/Mbであった。4.0〜9.8/Mbの変異率が、MSS CRCゲノム(Bass,A.J.ら、Nat.Genet.43:964−968(2011))に関して以前に報告されていた。
実施例2−変異遺伝子の解析
変異解析により、MSS試料中3,257、MSI試料中9,851および2つの超変異試料中6,891を含む12,956の遺伝子において、タンパク質改変体細胞の単一ヌクレオチドバリアントを同定した。タンパク質の頻繁に変異を起こすクラスの1つが、RTK、Gタンパク質共役受容体および核ホルモン受容体を含むヒトキナーゼである。変異が遺伝子機能に与える影響を理解する取り組みにおいて、SIFT(Ng,P.C. & Henikoff,S.,Genome Res 12:436−446(2002))、Polyphen(Ramensky,V.ら、Nucleic Acids Res 30:3894−3900(2002))およびmCluster(Yue,P.ら、Hum. Mutat. 31:264−271(2010))を適用し、3つの方法の少なくとも2つに基づき、36.7%の変異がおそらく機能的結果を有する可能性が高いことが見出され、それとは対照的に、正常試料由来の生殖細胞バリアントに関しては12%であった(表2)。
変異遺伝子の関連をさらに理解するために、前記qスコア計量を適用して、有意に変異した癌遺伝子を、順位付けした(Kan,Z.ら、Nature 466:869−873(2010))。MSS試料において、18の有意な癌遺伝子(qスコア≧1;≦10%偽発見率)を同定した(KRAS、TP53、APC、PIK3CA、SMAD4、FBXW7、CSMD1、NRXN1、DNAH5、MRVI1、TRPS1、DMD、KIF2B、ATM、FAM5C、EVC2、OR2W3、TMPRSS11A,およびSCN10A)。有意に変異したMSS結腸癌遺伝子は、KRAS、APC、TP53、SMAD4、FBXW7およびPIK3CAを含む先に報告した遺伝子ならびに細胞周期チェックポイント遺伝子ATMを含むいくつかの新しい遺伝子を含んだ。KRASおよびTP53などの遺伝子は、最も変異したMSI結腸癌遺伝子の中に入るが、解析したMSI試料の数が限られたので、統計的有意を達成した遺伝子はなかった。
変異遺伝子の関連性を確立する取り組みにおいて、変異遺伝子を、癌のマウスモデルを伴うスクリーニングにおいて同定された、399の結腸癌遺伝子候補に対して比較した(Starr,T.K.ら、Science 323、1747−1750(2009);March,H.N.ら、Nat.Genet.43、1202−1209(2011))。399の遺伝子のうち、327において変異が見出された。データセットを、別の方法により解析した場合、432の遺伝子のうち、356において変異が見出された。マウス結腸癌モデルとオーバーラップする、データセット中の高頻度の変異遺伝子がヒットし、KRAS、APC、SMAD4、FBXW7およびEP400を含んだ。さらに、マウスCRCスクリーニングにおいて見出された、SIN3A、SMARCA5およびNCOR1などのクロマチンリモデリングならびにヒストン修飾酵素JARID2に関与する遺伝子(Starr,T.K.ら、Science 323,1747−1750(2009);March,H.N.ら、Nat.Genet.43,1202−1209(2011))もまた、本発明者らのエキソームスクリーニングにおいて変異していた。さらに、マウス結腸癌モデルスクリーニングにおいて同定されたTCF12は、本発明者らの試料の5つ(Q179*、G444*およびR603W/Q)(7%)において変異し、R603においてホットスポット変異を含有した(5の変異のうちの3;R603W/Q)。TCF12ヘリックス−ループ−ヘリックスドメイン内のこのホットスポット変異は、DNAと結合するその能力を破棄する可能性が高いと思われ、機能喪失変異を示唆する。興味深いことに、TCF12変異のすべてが、MSI試料において同定された。TCF12転写因子は、以前は結腸癌の転移に関係があるとされていた(Lee,C.C.ら、J.of Biol.Chem.287:2798−2809(2011))。この遺伝子におけるホットスポットの存在およびマウスCRCモデルスクリーニングにおけるその同定は、この遺伝子が、CRCドライバー遺伝子として機能する可能性が高いことを示している。
遺伝子の同じ位置が独立した試料にわたって変異した、変異ホットスポットは、機能的に関連するドライバー癌遺伝子を表示している。この研究において、270の遺伝子にホットスポット変異があることを同定した(表4)。これらの遺伝子の70は、COSMICにおいてまだ報告されていなかった。本発明者らの変異とCOSMICにおいて報告された変異との比較により、追加の245のホットスポット変異を166の遺伝子において同定した(表5)。別のデータ解析方法を利用して、ホットスポット変異を有する274の遺伝子を同定し、これらの遺伝子のうち40がまだCOSMIに存在せず、追加の435ホットスポット変異が361の遺伝子に存在した。新規なホットスポット変異を有する遺伝子は、転写制御因子(TCF12、TCF7L2およびPHF2)、Ras/Rho関連制御因子(SOS1(例えば、R547W、T614M R854
*、G1129V)、SOS2(例えば、R225
*、R854CおよびQ1296H)、RASGRF2、ARHGAP10、ARHGEF33およびRab40c(例えばG251S))、クロマチン修飾酵素(TET2、TET3、EP400およびMLL)、グルタミン酸受容体(GRIN3AおよびGRM8)、受容体型チロシンキナーゼ(ERBB3、EPHB4、EFNB3、EPHA1、TYRO3、TIE1およびFLT4)、他のキナーゼ(RIOK3、PRKCB、MUSK、MAP2K7およびMAP4K5)、タンパク質ホスファターゼ(PTPRN2)、GPRCs(GPR4およびGPR98)およびE3−リガーゼ(TOPORS)を含む。この遺伝子セットのさらに興味深いものは、TET2およびTET3であり、これらは両方とも、DNAのメチル化に関与するメチルシトシンジオキシゲナーゼをコードする(Mohr,F.ら、Exp.Hematol.39:272−281(2011))。TET2の変異は骨髄の癌において報告されているが、今までのところ、TET3またはTET1における変異は、固形腫瘍、特にCRCでは報告されていない(Mohr,F.ら、Exp.Hematol.39:272−281(2011))。3つすべてのファミリーメンバー、TET1(例えば、R81H、E417A、K540T、K792T、S879L、S1012
*、Q1322
*、C1482Y、A1896VおよびA2129V)、TET2(例えば、K108T、T118I、S289L、F373L、K1056N、Y1169
*、A1497VおよびV1857M)およびTET3(例えば、T165M、A874T、M977V、G1398RおよびR1576Q/W)は、これらの実施例において変異される。
74の腫瘍/正常ペアにおけるコピー数変化を、GISTICをPICNICのセグメント化コピー数データに適用することによって評価した。IGF2の増幅に加えて、KRAS(13%;10/74)およびMYC(31%;23/74)を伴う公知の増幅が、染色体8q上の広いアンプリコンに位置することが見出された(表7)。腫瘍抑制因子であるFHITを伴う局所的欠失が、試料の21%(16/74)に観察された(表8)。プリンの代謝に関与するジアデノシン5’,5’’’−P1,P3−トリホスファターゼ加水分解酵素をコードするFHITは、他の癌において喪失されていることが既に報告されている(Pichiorri,F.ら、Future Oncol.4:815−824(2008))。APC(18%;14/74)およびSMAD4(29%;22/74)の欠失もまた観察された。最終的に、染色体20qが高頻度で増加し、対照的に18qが喪失されていることが見出された。
コピー数変化を、PICNICのプローブ−レベルのコピー数コール、コピー数の腫瘍/正常試料比のCBSセグメント化およびこれらの腫瘍/正常試料比におけるGISTICを使用して解析した場合、最もコピー数が変化した遺伝子のセットは同様であるが、パーセントの変化はわずかであった。KRAS(13%;10/74)およびMYC(23%;17/74)を伴う公知の増幅は、染色体8q上の広いアンプリコンに位置した。腫瘍抑制因子であるFHITの欠失は、試料の30%(22/74)において観察された。APC(8%;6/74)、PTEN(4%、3/74)およびSMAD3(9%、10/74)の欠失が観察された。SMAD4およびSMAD2は、両方とも、試料の27%(20/74)において変化し、頻繁に喪失される18qにおいて互いに3Mb以内に位置する。
発現の評価の他に、RNA−seqデータを、スプライシングパターンの検査に活用できる。変異遺伝子の中に、それらのスプライシングに影響を与える可能性が高い、標準的なスプライシング部位に体細胞変異を担持する変異遺伝子がいくつか存在する。112の遺伝子が、正統なスプライシング部位の変異を有することが見出されたが、これらは、RNA−seqデータに基づく、スプライシングの欠陥に関する証拠を示している。影響を受けた遺伝子は、TP53、NOTCH2およびEIF5Bを含む(表9)。RNA−seqデータをさらに使用して、遺伝子コード領域におけるある特定のエクソンの腫瘍特異的発現を解析した。ミトコンドリアの大型サブユニットMRPL33遺伝子のアノテーションされたエクソンの最初の5’の上流に、2つの新規な腫瘍特異的エクソンを同定した(図1)。このゲノム領域の解析により、これらの新規なエクソンの転写因子結合部位5’が同定され、本発明者らの観察をさらに裏付けた。
実施例4−Rスポンジンの再発融合がWnt経路シグナル伝達を活性化する。
RNA−seqデータを使用して、次に、染色体内および染色体間の再配列、例えば癌ゲノムにおいて起こる遺伝子融合を同定した(Ozsolak,F. & Milos,P.M.Nature Rev Genet.12:87−98(2011))。マッピングにおいて、ペアエンドRNA−seqデータ、2つの再発遺伝子融合を含む36の体細胞遺伝子融合を、解析したCRCトランスクリプトームにおいて同定した。融合の体細胞特性を、腫瘍中のその存在および対応する正常試料中の不在を、RT−PCRを使用して確認することによって確立した。さらに、これらの実施例において報告されたすべての融合を、Sanger法によりシーケンシングし、検証した(表10)。同定された予測体細胞融合の大部分(89%;32/36)は、染色体内であった。
これらの実施例において同定された再発融合は、MSS CRC試料中に見出されたRスポンジンファミリーのメンバーであるRSPO2(3%;2/68)およびRSPO3(8%;5/68;図2A)を伴う。Rスポンジンは分泌タンパク質であり、正統なWntシグナル伝達を増強することが公知であり(Yoon,J.K. & Lee,J.S. Cell Signal.24(2):369−77(2012))、これは、おそらくGPCRのLGRファミリーに結合することによるものである(Carmon,K.S.ら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 108:11452−11457(2011);de Lau,W.ら、Nature 476:293−297(2011);Glinka,A.ら、EMBO Reports 12:1055−1061(2011))。2つの腫瘍試料において同定された再発RSPO2融合は、EIF3E(真核細胞翻訳開始因子3)のエクソン1およびRSPO2のエクソン2を伴う(図2B)。この融合転写物は、EIF3Eプロモーターにより駆動される機能性RSPO2タンパク質を生成することが期待された(図2D)。同じ試料において検出された第2のRSPO2融合は、EIF3Eのエクソン1およびRSPO2のエクソン3を伴う(表10)。しかし、このEIF3E(e1)−RSPO2(e3)は、機能性タンパク質を生成することが期待されない。ゲノムレベルで変化の特性を確認するために、RSPO2融合を含有する、腫瘍の全ゲノムシーケンシング(WGS)を実施した。ジャンクションにまたがるリード(junction spanning reads)、メイトペアリードおよびWGSデータに由来するコピー数データの解析により、1試料中に158kbの欠失および第2の試料中に113kbの欠失が同定され、これらは両方ともRSPO2の5’末端にごく接近したEIF3Eのエクソン1に位置した。
RSPO3の転位が、68の腫瘍のうち5つにおいて観察され、この転位は、PTPRK(タンパク質チロシンキナーゼ受容体カッパ)をその5’パートナーとして伴う。RSPO3融合を発現する5つの腫瘍に由来するWGSリードは、単一(3試料)または複合(2試料)の逆位を伴う再配列を示し、この逆位は、染色体6q上のPTPRKと同じ鎖のPTPRKに近接したRSPO3に位置する。PTPRKのエクソン1(e1)またはエクソン7(e7)およびRSPO3のエクソン2(e2)からなる、2つの異なるRSPO3融合バリアントを同定した(図3および図4)。通常PTPRKおよびRSPO3は、染色体6q上の対向する鎖において850Kb離れているので、RSPO3融合は、染色体レベルで欠失−逆位事象により起こる可能性が高い。4試料において見出されるPTPRK(e1)−RSPO3(e2)は、RSPO3の全コード配列を保存するインフレーム融合であり、その分泌シグナル配列とPTPRKの分泌シグナル配列とが置き換わっている(図3C)。1試料において検出されたPTPRK(e7)−RSPO3(e2)もまたインフレーム融合であり、その分泌シグナル配列を含むPTPRKの最初の387のアミノ酸および天然のシグナルペプチドを欠いた、RSPO3のアミノ酸34〜272からなる約70KDaのタンパク質をコードする(図4C)。興味深いことに、PTPRKは、RSPO3と比較して非常により強力な分泌シグナル配列を含有し、同定された融合バリアントのより効率的な分泌をもたらす可能性がある。さらに、RNA−seqデータは、融合を含有する結腸腫瘍試料におけるRSPO2およびRSPO3のmRNAの発現が、それらの対応する正常試料およびRスポンジン融合を欠いた腫瘍試料と比較して上昇していた(図2E)。さらに、すべてのRSPO陽性融合腫瘍は潜在的Rスポンジン受容体LGR4/5/623−25を発現していたが、LGR6の発現は、LGR4/5と比較して低かった。
予測Rスポンジン融合タンパク質が機能性であるかどうかを決定するために、C−末端flagタグを含有する発現構築物を作製し、哺乳動物293T細胞にトランスフェクトした後に、それらの発現を試験した。馴化培地のウエスタンブロット分析は、融合タンパク質が発現され、分泌されたことを示した(図5A)。Rスポンジン融合産物は、Wntルシフェラーゼレポーターを使用して、Wntシグナル伝達を増強するそれらの能力により決定したところ、生物学的に活性であった。野生型RSPO2/3で観察した場合、RSPO融合の発現構築物をトランスフェクトした細胞の馴化培地を用いた刺激は、対照をトランスフェクトした細胞と比較して、Wntルシフェラーゼレポーターの活性化をもたらした(図5B)。観察された活性化は、外因性WNTの不在下でも明らかであるが、組換えWNTの存在下でさらに増強され、Wntシグナル伝達におけるRスポンジンの公知の役割と一致した(Carmon,K.S.ら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 108:11452−11457(2011);de Lau,W.ら、Nature 476:293−297(2011);Glinka,A.ら、EMBO Reports 12:1055−1061(2011))。
RSPO遺伝子融合をさらに特徴付けるために、RSPO遺伝子融合を、変異およびWntシグナル伝達カスケードを含む細胞内シグナル伝達経路のコンポーネントにおいて起こる他の変化に関連して解析した(図6B)。RSPO2およびRSPO3の融合は、APC変異と相互排他的であること(図5E)の他に、APCコード領域に単一コピーの欠失を有する1試料を除き(図5E)、それら自体の間で相互排他的である。さらに、RSPO遺伝子融合は、CRCにおいて変異した別のWnt経路遺伝子であるCTNNB1と、相互に排他的であった。さらに、RSPO遺伝子融合を有する試料のすべてが、KRASまたはBRAFに変異を担持していた(図6A)。APC変異体試料の大部分は、RAS経路遺伝子変異を有し、結腸腫瘍発生に際してWntシグナル伝達を促進することによって、APC変異と同じ役割を果たしている可能性が高いことを示していた。非掲載のデータにおいて、RSPO遺伝子融合を有する腫瘍は、APC変異体腫瘍と同様のWNT発現サインを表すことが示されたが、これは、Rスポンジンが、下流のWNT変異が不在下で、結腸腫瘍においてWNT経路を活性化できることを示している。これらの発見は、Rスポンジンが、ヒトCRCにおいてドライバーとして機能する可能性が高いことを示している。
これらの実施例において、ヒト原発性結腸腫瘍の詳細な広範囲のゲノム解析を報告した。ヒトCRCのエキソームおよびトランスクリプトームのシーケンシングおよび解析において、多数の新しい再発体細胞変異が見出された。これらの実施例において、有意に変異した遺伝子の多く(APC、KRAS、PIK3CA、SMAD4、FBXW7、TP53、TCF7L2)は、以前の発見と一致する。加えて、140遺伝子のうちの111における多数の変異を研究において強調し、報告した。さらに、ATMおよびTMPRSS11Aを含む11の、今まで報告されていなかった追加の有意な結腸癌遺伝子が同定された。この実施例は、TCF12およびERBB3を含む遺伝子を含有する、多数のホットスポットを同定した。本明細書において同定されたERBB3腫瘍形成性変異体は、CRCにおいて治療的介入の新しい可能性を提供する可能性がある。発現およびコピー数データの組合せ解析は、本発明者らのヒトCRC試料のサブセットにおいて、IGF2の過剰発現を同定した。
最終的に、RNA−seqデータを使用して、Rスポンジンを伴う新しい再発融合は、およそ10%の頻度で起こることが同定されている。この融合は、Wntシグナル伝達を増強する機能性Rスポンジンタンパク質をもたらす。Rスポンジンは、Rスポンジンを担持する結腸癌患者において、抗体に基づく療法の魅力的な標的を提供する。Rスポンジンの直接標的化の他に、Wntシグナル伝達を遮断する他の治療戦略が、Rスポンジン融合が陽性の腫瘍に対して効果的である可能性が高いであろう。
上述の発明は、理解の明確さを目的に図解と実施例によりある程度詳細に説明されてきたが、説明と実施例を発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。本明細書に引用されるすべての特許および科学文献は出典明示によりその全体が明示的に援用される。