JP6530114B1 - メンブランシートのブロッキング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】イムノクロマトグラフィーにおける偽陽性の発生を抑制し、さらにイムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートの黄変を抑制するメンブランシートのブロッキング方法の提供。【解決手段】イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートをブロッキングする方法であって、(a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシートを用意する工程、(b)固相化処理されたメンブランシートにブロッキング溶液を浸透させる浸透処理工程、および(c)浸透処理されたメンブランシートを乾燥させる乾燥工程を含んでなり、前記浸透処理工程(b)におけるブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、方法。【選択図】なし

Description

本発明はイムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートのブロッキング方法に関する。
イムノクロマトグラフィーは、毛細管現象により検体がメンブランシート上を移動する際、検体中の抗原、着色粒子に結合させた標識抗体、およびメンブランシートに固相化された捕捉抗体(テスト抗体)の三者により免疫複合体が形成され、その標識物の集積を目視で確認する免疫測定法である。インフルエンザウイルスなどの感染症検査や妊娠検査において、イムノクロマトグラフィーの原理を用いた簡易診断薬が広く用いられる。簡易診断薬はその用いられる目的の性質上、迅速かつ高感度で、正確な判定が求められている。
イムノクロマトグラフィー用キットを構成する試験片については、古くから試料中に混在する蛋白質等の非特異因子の吸着のため、被検物質が存在しない場合にも検出部位の発色が発生するという問題があった。この非特異的吸着(非特異的反応ともいう)は、検出時のS/Nを下げるばかりでなく、偽陽性の原因にもなりうるため、かかる非特異的吸着を抑えることが課題となっていた。これに対して、不溶性担体を牛血清アルブミンでブロッキングし、メンブランシートをカゼインでブロッキングすることにより非特異的吸着が抑制されることが報告されている(特許文献1)。
さらに、イムノクロマトグラフィー用キットを使用するにあたり、規定された反応時間を守らず、あるいは反応時間終了後も当該キットを放置することにより、吸収パッドにいったん吸収された試料液がクロマトグラフ媒体に逆流することがあった。この場合、標識物質と複合体を形成した被検物質が再度判定部を通過することで、余分な被検物質が追加で捕捉されるような現象が見られた。これは、本来ならば陰性と判定されるべき検査試料が陽性と判定されてしまうこととなり、判定を誤らせる原因となっていた。このため、試料液が吸収パッドからクロマトグラフ媒体に逆流することを抑えることが課題となっていた。これに対して、親水性繊維中に高吸水性ポリマー粒子を含有した構造を有する吸収パッドを用いることにより、当該逆流が抑制されることが報告されている(特許文献2)。
さらに、メンブランシートへのブロッキング工程を行う従来の手法においては、ブロッキング工程によりメンブランに固相化した抗体がブロッキング溶液中に流出する可能性があり、これに対処するために、ブロッキング工程を経ないメンブランシートを使用することが報告されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3では、シグナル強度および検出感度の低下が課題となっており、本来偽陽性を抑制する為にあるブロッキング工程において、その操作手法の如何によっては新たに偽陽性を発生させる原因があることについては、一切言及されていない。
特開2009−133740号公報 特開2012−189346号公報 特開2015−232467号公報
本発明は、イムノクロマトグラフィーにおける偽陽性の発生を抑制することを可能とするメンブランシートのブロッキング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、抗体固相化メンブランシートのブロッキング工程中に、固相化した抗体が遊離し、さらに他の検出部位まで流れて固着することで、偽陽性を発生させ、正確な判定が妨げられるという問題を新たに見出した。そして、本発明者らは、ブロッキング溶液をメンブランシートに浸透させる方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御することにより、偽陽性を防止できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートをブロッキングする方法であって、
(a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシートを用意する工程、
(b)固相化処理されたメンブランシートにブロッキング溶液を浸透させる浸透処理工程、および
(c)浸透処理されたメンブランシートを乾燥させる乾燥工程
を含んでなり、
前記浸透処理工程(b)におけるブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、方法。
[2]前記浸透処理工程(b)が、前記固相化処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端をブロッキング溶液に浸漬させて、ブロッキング溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させる操作によって行われる、[1]に記載の方法。
[3]前記浸透処理工程(b)が、前記固相化処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端をブロッキング溶液に浸漬し、かつ、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、ブロッキング溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させる操作によって行われる、[1]に記載の方法。
[4]前記浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、該浸透処理されたメンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる吸収工程(A)をさらに含んでなり、
前記吸収工程(A)におけるブロッキング溶液の吸収方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記吸収工程(A)が、前記浸透処理されたメンブランシートの、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、ブロッキング溶液が浸透したメンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる操作によって行われる、[4]に記載の方法。
[6]前記浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、洗浄溶液により洗浄する洗浄工程をさらに含んでなる、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記洗浄工程が、前記浸透処理されたメンブランシートの全体を洗浄溶液に浸漬することによって行われる操作を含んでなる、[6]に記載の方法。
[8]前記洗浄工程が、前記浸透処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端を洗浄溶液に浸漬し、かつ、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、洗浄溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させることによって行われる操作を含んでなり、
前記洗浄工程の後に、得られたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、洗浄溶液が浸透したメンブランシート上の余分な洗浄溶液を吸収させる吸収工程(B)をさらに含んでなり、
前記吸収工程(B)における洗浄溶液の吸収方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、[6]または[7]に記載の方法。
[9]イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートを製造する方法であって、
(a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とを、メンブランシート上の互いに異なる位置に固相化する抗体固相化工程、並びに
(b)[1]〜[8]のいずれかに記載の方法により、該メンブランシートをブロッキングする工程
を含んでなる、方法。
[10][9]に記載の方法により製造される、メンブランシート。
[11]イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートであって、
被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、該メンブランシート上の互いに異なる位置に固相化されており、
遊離したリファレンス抗体が、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)と比較して、リファレンス抗体が固相化されている位置から前記テスト抗体側末端とは反対側の末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)の方により多く付着している、メンブランシート。
[12][10]または[11]に記載のメンブランシートを含んでなる、イムノクロマトグラフィー用試験片。
[13][12]に記載のイムノクロマトグラフィー用試験片を含んでなる、イムノクロマトグラフィー用試験キット。
本発明によれば、イムノクロマトグラフィーにおける偽陽性の発生を抑制できる点で有利である。また、本発明によれば、イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートの黄変を抑制することも可能である。
図1は、考えられる偽陽性が発生する機序を示したものである。濃色Y字形はR抗体、中間色Y字形はB抗体、中間色のY字と円の結合形は赤色粒子標識B型抗体、中間色の菱形はB型抗原、淡色Y字形はA抗体を表す。 図2は、考えられる本発明の機序を示したものである。濃色Y字形はR抗体、中間色Y字形はB抗体、中間色のY字と円の結合形は赤色粒子標識B型抗体、中間色の菱形はB型抗原、淡色Y字形はA抗体を表す。
発明の具体的説明
本発明は、イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートをブロッキングする方法に関するものであり、該方法は、(a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシートを用意する工程、(b)固相化処理されたメンブランシートにブロッキング溶液を浸透させる浸透処理工程、および(c)浸透処理されたメンブランシートを乾燥させる乾燥工程を含む。本発明の方法では、前記浸透処理工程(b)におけるブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される。このような特徴により、イムノクロマトグラフィーにおける偽陽性の発生を抑制することができる。
「ブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される」とは、浸透処理工程において、少なくともブロッキング溶液がリファレンス抗体側からテスト抗体側に浸透する(つまり、逆流する)ことを回避するような操作が行われることを意味し、それが達成される限り、いかなる手段を用いてもよい。
本発明における「イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシート」は、捕捉抗体を固相化でき、かつ、毛細管現象により試料検体溶液を吸収し流動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、メンブランシートの素材としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリエチレン、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、またはこれらの混合繊維からなる人工ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ニトロセルロース、ニトロセルロースと酢酸セルロースの混合繊維からなる人工ポリマーが好ましく、ニトロセルロースが特に好ましい。
本発明における「ブロッキング」とは、イムノクロマトグラフィーにおける標識抗体のメンブランシート上への非特異的な吸着を防止するために、タンパク質および/またはポリマーの水溶液を用いてメンブランシートをコーティングすることをいう。ここで使用されるタンパク質としては、ゼラチン、カゼイン、BSA(ウシ血清アルブミン)、スキムミルク等が挙げられる。使用されるポリマーとしては、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)等が挙げられる。これらのうち、カゼイン、BSA、スキムミルクが好ましく、スキムミルクが特に好ましい。
本発明における「被検物質」とは、イムノクロマトグラフィー用キットにおいて検出の対象となる物質をいい、例えば、抗体、抗原、核酸、生理活性物質、細菌、ウイルス、ペプチド、治療薬剤(血中薬剤)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。なお、抗体も被検物質となり得る。「抗体」としては、抗原に対する抗体、抗体に対する抗体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。「抗原」としては、核酸、生理活性物質、細菌、ウイルス、ペプチドなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明における「被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシート」は、当業者に公知の方法により製造することができる。例えば、固相化処理されたメンブランシートは、「ラテラルフローテストストリップ開発ガイド」(日本ミリポア、2002年)に記載された手法に従って製造することができる。
本発明における浸透処理されたメンブランシートの乾燥は、当業者に公知の方法によって行うことができる。乾燥方法には、凍結乾燥によるもの、オーブンによる加熱乾燥によるもの等が挙げられるが、凍結乾燥によるものが好ましい。乾燥工程における温度、時間等の条件については、乾燥させるメンブレンの性状、保水量、面積(重量)、状態に応じて、適宜決定することができる。
本発明の好ましい実施態様においては、浸透処理工程(b)は、固相化処理されたメンブランシートのテスト抗体側末端をブロッキング溶液に浸漬させて、ブロッキング溶液をリファレンス抗体側末端まで浸透させる操作によって行うことができる。かかる操作は、そのように作動するものである限りいかなる具体的手法によって行ってもよいが、例えば、当該メンブランシートのテスト抗体側末端を下に向け、リファレンス抗体側を把持して懸垂し、その下方に、開放容器にブロッキング溶液を満たしたものを設置し、当該メンブランシートの下端の2〜10mm、好ましくは3〜8mm、さらに好ましくは4〜6mmを当該ブロッキング溶液中に浸漬することにより、行うことができる。当該メンブランシートのブロッキング溶液における浸透状態はメンブランシートの湿潤状態により目視で確認することができ、ブロッキング溶液がメンブランシートの上端(リファレンス抗体側末端)まで浸透したら、かかる操作を終了させることが望ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、浸透処理工程(b)は、固相化処理されたメンブランシートのテスト抗体側末端をブロッキング溶液に浸漬し、かつ、リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、ブロッキング溶液をリファレンス抗体側末端まで浸透させる操作によって行うことができる。かかる操作は、そのように作動するものである限りいかなる具体的手法によって行ってもよいが、例えば、当該メンブランシートのテスト抗体側末端を下に向け、リファレンス抗体側を吸水性素材の間に把持して懸垂し、その下方に、開放容器にブロッキング溶液を満たしたものを設置し、当該メンブランシートの下端の2〜10mm、好ましくは3〜8mm、さらに好ましくは4〜6mmを当該ブロッキング溶液中に浸漬することにより、行うことができる。当該メンブランシートのブロッキング溶液における浸透状態はメンブランシートの湿潤状態により目視で確認することができ、ブロッキング溶液がメンブランシートの上端(リファレンス抗体側末端)まで浸透し、さらに、当該ブロッキング溶液が一定量吸水性素材に吸収されるのを目視にて確認した後、かかる操作を終了させることが望ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、該浸透処理されたメンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる吸収工程(A)を行うことができる。この場合、吸収工程(A)におけるブロッキング溶液の吸収方向は、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される。さらに、吸収工程(A)では、前記浸透処理されたメンブランシートの前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、ブロッキング溶液が浸透したメンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる操作を行うことが好ましい。これらの操作は、そのように作動するものである限りいかなる具体的手法によって行ってもよいが、例えば、当該メンブランシートのリファレンス抗体末端を下に向け、リファレンス抗体側末端を吸水性素材に10秒〜60分間、好ましくは20秒〜40分間、より好ましくは30秒〜20分間、より好ましくは40秒〜10分間、より好ましくは50秒〜5分間、さらにより好ましくは1分間接触させて(好ましくは押しつけて)、ブロッキング溶液を吸収する(好ましくは当該メンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる、さらに好ましくは当該メンブランシート上の余分なブロッキング溶液をふるい落とす)ことにより、行うことができる。特定の理論に拘泥するものではないが、後述する実施例1においてリファレンス抗体側末端を吸水性素材に30分間接触させると、「偽陽性なし」ではあるもののわずかながら染色ラインが出現してしまうのは、メンブランシート中の余分な溶液が吸収紙に排出されたのち、長時間その状態が維持されることで、メンブランシートの乾燥が進み、ブロッキング溶液を含んだ吸収紙から乾燥したメンブランシートへの吸い上げが生じたこと、それによりブロッキング溶液が逆方向に展開(逆流)してリファレンス抗体が逆方向に移動したことによるものと考えられる。このため、リファレンス抗体側末端の吸水性素材への接触は、メンブランシートが乾燥する前に終了させることが好ましく、メンブレンシートの性状、保水量、面積(重量)、状態によって異なるが、メンブレンシート上の水滴の存在状態等を目視観察することにより、適宜決定することができる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、洗浄溶液により洗浄する洗浄工程をさらに含む操作をおこなうことができる。ここで、洗浄溶液とは、ブロッキング溶液の成分が過剰にメンブランシート上に残留することにより、テスト抗体、被検物質および標識抗体の免疫複合体の形成を阻害することを防止するため(つまり、感度が低下することを防止するため)に、ブロッキング溶液の成分の残留量を低減化させる役割がある。洗浄溶液の組成やその濃度はブロッキング溶液のそれらと異なっていることが好ましい。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、洗浄工程は、浸透処理されたメンブランシートの全体を洗浄溶液に浸漬することにより行われる。かかる操作の浸漬時間および洗浄液量とメンブランシートの重量(面積)との比は、メンブレンシートの性状、保水量、面積(重量)、状態によって異なるが、上述の免疫複合体の形成阻害の程度をみながら適宜決定することができる。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、洗浄工程は、浸透処理されたメンブランシートのテスト抗体側末端を洗浄溶液に浸漬し、かつ、リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、洗浄溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させ、さらに、得られたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、洗浄溶液が浸透したメンブランシート上の余分な洗浄溶液を吸収させること(吸収工程(B))により行われる。この場合、吸収工程(B)における洗浄溶液の吸収方向は、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される。これらの操作は、そのように作動するものである限りいかなる具体的手法によって行ってもよいが、例えば、(i)当該メンブランシートのテスト抗体側末端を下に向け、リファレンス抗体側を吸水性素材の間に把持して懸垂し、その下方に開放容器に洗浄溶液を満たしたものを設置し、当該メンブランシートの下端の2〜10mm、好ましくは3〜8mm、さらに好ましくは4〜6mmを洗浄溶液中に浸漬し、その後、(ii)当該メンブランシートのリファレンス抗体末端を下に向け、リファレンス抗体側末端を吸水性素材に10秒〜60分間、好ましくは20秒〜40分間、より好ましくは30秒〜20分間、より好ましくは40秒〜10分間、より好ましくは50秒〜5分間、さらにより好ましくは1分間接触させて(好ましくは押しつけて)、ブロッキング溶液を吸収する(好ましくは当該メンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる、さらに好ましくは当該メンブランシート上の余分なブロッキング溶液をふるい落とす)ことにより、行うことができる。そして、(i)の操作時間は、メンブレンシートの性状、保水量、面積(重量)、状態によって異なるが、同様の操作を行うブロッキング溶液の浸透処理工程における浸透速度を勘案して適宜決定することができる。また、(ii)の操作時間は、メンブレンシートの性状、保水量、面積(重量)、状態、さらには、(i)の操作による洗浄溶液の浸透状況によって異なるが、メンブレンシート上の水滴の存在状態等を目視観察することにより適宜決定することができる。
本発明の別の態様によれば、イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートを製造する方法が提供され、該方法は、(a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とを、メンブランシート上の互いに異なる位置に固相化する抗体固相化工程、ならびに(b)本発明のメンブランシートをブロッキングする方法により該メンブランシートをブロッキングする工程を含む。かかる方法における各操作については、上述した通りである。
本発明の別の態様によれば、上述のメンブランシートを製造する方法により製造される、メンブランシートが提供される。
さらに、一般に、メンブランシート上に固相化された抗体の一部は、ブロッキング工程や洗浄工程などを行う間に遊離して他の位置に付着することがあるが、本発明によって得られるメンブランシートでは、遊離したリファレンス抗体が、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端までの間と比較して、リファレンス抗体が固相化されている位置からリファレンス抗体側末端までの間の方により多く付着している、という特徴が見られる。従って、本発明の別の態様によれば、イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートであって、被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、このメンブランシート上の互いに異なる位置に固相化されており、遊離したリファレンス抗体が、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)と比較して、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端とは反対側の末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)の方により多く付着しているメンブランシートが提供される。「遊離したリファレンス抗体が、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)と比較して、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端とは反対側の末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)の方により多く付着している」とは、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)に付着しているリファレンス抗体の総量と比較して、リファレンス抗体が固相化されている位置からテスト抗体側末端とは反対側の末端までの間(ただし、リファレンス抗体が固相化されている位置は除く)に付着しているリファレンス抗体の総量の方が大きいことを意味する。このようなメンブランシートは、上述のメンブランシートのブロッキング方法、または上述のメンブランシートの製造方法により、製造することができる。
本発明の別の態様によれば、上述のメンブランシートを含んでなるイムノクロマトグラフィー用試験片、および該イムノクロマトグラフィー用試験片を含んでなるイムノクロマトグラフィー用試験キットが提供される。これらは、上述のメンブランシートを用いて、当業者であれば適宜調製することができる。
イムノクロマトグラフィーの基本的な原理、構成、調製方法および使用方法等については、「ラテラルフローテストストリップ開発ガイド」(日本ミリポア、2002年)に詳しく記載されている。
本発明について、実施例を用いて詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.調製例
以下の手法を用いて、着色粒子標識抗体、コンジュケートパッドおよび抗体固相化メンブランシートを調製した。
(1)着色粒子標識抗体の調製
青色カルボキシルラテックス粒子(ポリスチレン、粒径400nm)の10(w/v)%水分散液30μLと50mMMES緩衝液(pH6.0)270μLを混合し、次にEDC(水溶性カルボジイミド)を最終濃度1%になるように添加し室温で3時間活性化した。その後、遠心分離し、洗浄した後、1mg/mLに濃度調整したマウス抗インフルエンザウイルスA型抗体100μLを添加し、室温で一晩反応させた。次に遠心分離し、洗浄した後、10(w/v)%BSA/PBS溶液でブロッキングした。次に遠心分離し、10(w/v)%スクロース、1(w/v)%BSAを含むPBS溶液10mL中に懸濁した後、超音波分散装置にかけ、青色粒子標識抗A型抗体分散液を得た。
赤色カルボキシルラテックス粒子(ポリスチレン、粒径400nm)の10(w/v)%水分散液30μLと50mMMES緩衝液(pH6.0)270μLを混合し、次にEDC(水溶性カルボジイミド)を最終濃度1%になるように添加し室温で3時間活性化した。その後、遠心分離し、洗浄した後、1mg/mLに濃度調整したマウス抗インフルエンザウイルスB型抗体100μLを添加し、室温で一晩反応させた。次に遠心分離し、洗浄した後、10(w/v)%BSA/PBS溶液でブロッキングした。次に遠心分離し、10(w/v)%スクロース、1(w/v)%BSAを含むPBS溶液10mL中に懸濁した後、超音波分散装置にかけ、赤色粒子標識抗B型抗体分散液を得た。
(2)コンジュゲートパッドの調製
青色粒子標識抗A型抗体分散液と赤色粒子標識抗B型抗体分散液を混合することで着色粒子混合分散液を得た。網の上に並べたガラス不織布パッド(メルクミリポア社)に、着色粒子混合分散液を45μL/cmの割合で塗布し、均一に塗り広げた後、オーブンで一晩乾燥し、コンジュゲートパッドを得た。
(3)抗体固相化メンブランシートの調製
ニトロセルロースメンブランシート(メルクミリポア社、縦3.0cm、横45cm)に、リン酸緩衝液で1.0mg/mLに濃度調整した上記の着色粒子標識抗インフルエンザA型抗体とはエピトープが異なるマウス抗インフルエンザウイルスA型抗体、リン酸緩衝液で1.0mg/mLに濃度調整した上記の着色粒子標識抗インフルエンザB型抗体とはエピトープが異なるマウス抗インフルエンザウイルスB型抗体、およびリン酸緩衝液で1.0mg/mLに調整したヤギ抗マウスIgG抗体を幅1mmのライン状に塗布した。マウス抗インフルエンザウイルスA型抗体を塗布したラインをAライン、マウス抗インフルエンザウイルスB型抗体を塗布したラインをBライン、ヤギ抗マウスIgG抗体を塗布したラインをR(リファレンス)ラインとした。塗布する位置はメンブランシートの下端(上流側)から11mmの位置にAライン、14.5mmの位置にBライン、18.0mmの位置にRラインが来るように設定した。塗布は、イムノクロマトグラフィー用ディスペンサーXYZ3050(バイオドット社)を用い、1μL/cmとなるように設定した。ライン塗布後のニトロセルロースメンブランシートを30℃で一晩乾燥した。
2.実施例
(1)抗体固相化メンブランシートのブロッキング液の浸透処理および洗浄処理
調製例(3)で調製された抗体固相化メンブランシートを、以下の表1に記載された操作に従い、ブロッキングの浸透処理を行い、その後洗浄処理を行った(実施例1〜16および比較例1〜3)。
表1に記載された各操作の詳細は以下の通りである。
工程1−a:ブロッキング溶液の吸い上げのみ
ブロッキング溶液(100mM Tris−HCl pH=8.0、1.0(w/v)%TritonX−100、1.0(w/v)%スクロース、0.10(w/v)%スキムミルク、10.0mM EDTA−2Na、0.090(w/v)%アジ化ナトリウム)で充たした容器に対して、メンブランシートの下端(テスト抗体側)から5mmだけ液面下に浸し、ブロッキング溶液がメンブランシートの上端(リファレンス抗体側)にくるまで吸い上げた。
工程1−b:ブロッキング溶液を吸い上げながら水切り
メンブランシートの上端(リファレンス抗体側)全体に吸収紙(大王製紙社製キッチンペーパー超吸収キッチンタオル)を接触させながら、ブロッキング溶液で充たした容器に対して、メンブランシートの下端(テスト抗体側)から5mmだけ液面下に浸し、ブロッキング溶液を吸い上げた。
工程1−c:ブロッキング溶液への浸漬
メンブランシート全体を、ブロッキング溶液で充たした容器の中に浸漬させた。
工程1−d:順方向の水切り(1分)
吸収紙を敷き、ブロッキング溶液が浸潤したメンブランシートを逆さまにして、敷いた吸収紙に上端(リファレンス抗体側)を1分間押し付けて、浸潤したブロッキング溶液を吸収させた。
工程1−e:順方向の水切り(30分)
吸収紙を敷き、ブロッキング溶液が浸潤したメンブランシートを逆さまにして、敷いた吸収紙に上端(リファレンス抗体側)を30分間押し付けて、浸潤したブロッキング溶液を吸収させた。
工程1−f:逆方向の水切り
吸収紙を敷き、ブロッキング溶液が浸潤したメンブランシートの下端(テスト抗体側)を1分間押し付けて、浸潤したブロッキング溶液を吸収させた。
工程2−a:洗浄溶液の吸い上げのみ
洗浄溶液(20mM Tris−HCl pH=7.0、0.01(w/v)%TritonX−100、1.0(w/v)%スクロース)で充たした容器に対して、メンブランシートの下端(テスト抗体側)から5mmだけ液面下に浸し、洗浄溶液がメンブランシートの上端(リファレンス抗体側)にくるまで吸い上げた。
工程2−b:洗浄溶液を吸い上げながら水切り
メンブランシートの上端(リファレンス抗体側)全体に吸収紙(大王製紙社製キッチンペーパー超吸収キッチンタオル)を接触させながら、洗浄溶液で充たした容器に対して、メンブランシートの下端(テスト抗体側)から5mmだけ液面下に浸し、洗浄溶液を吸い上げた。
工程2−c:洗浄溶液への浸漬
メンブランシート全体を、洗浄溶液で充たした容器の中に浸漬させた。
工程2−d:順方向の水切り(1分)
吸収紙を敷き、洗浄溶液が浸潤したメンブランシートを逆さまにして、敷いた吸収紙に上端(リファレンス抗体側)を1分間押し付けて、浸潤した洗浄溶液を吸収させた。
工程2−e:順方向の水切り(30分)
吸収紙を敷き、洗浄溶液が浸潤したメンブランシートを逆さまにして、敷いた吸収紙に上端(リファレンス抗体側)を30分間押し付けて、浸潤した洗浄溶液を吸収させた。
工程2−f:逆方向の水切り
吸収紙を敷き、洗浄溶液が浸潤したメンブランシートの下端(テスト抗体側)を1分間押し付けて、浸潤した洗浄溶液を吸収させた。
工程3:乾燥
工程1のいずれかの操作および工程2のいずれかの操作により得られたメンブランシートを、凍結真空乾燥機を用いて一晩乾燥させた。
(2)テストプレートの組み立て
支持材となるバッキングシート(Adhesives Research,Inc)に対して、実施例(1)により調製されたメンブランシートを貼り合わせた後、同じく作製したコンジュゲートパッドを当該メンブランシートと数ミリ重なり合うように貼り合わせた。さらに、展開方向の上流側には、サンプルパッドとして、コンジュゲートパッドに数ミリ重なるようにしてガラス不織布(メルクミリポア社)を貼り合わせた。そして、当該メンブランシートの下流側には、過剰な試薬を受け止めるための吸収パッド(メルクミリポア社)を当該メンブランシートと数ミリ重なるように配置した後、4mm幅に裁断してイムノクロマトグラフィー用試験片を得た。イムノクロマトグラフィー用試験片をハウジングに収納しテストプレートを作製した。
(3)B型陽性時の偽陽性確認試験
実施例1〜16および比較例1〜3の操作により得られた各イムノクロマトグラフィー用試験片を収納した各テストプレートを用いて、B型ウイルス抗原が試料中に存在する条件下(B型陽性試料)でAライン上にラインが出現しA型への偽陽性を示すかを確認した。
力価が104.0〜106.5[TCID50(Median tissue culture infectious dose)/0.1mL]となるインフルエンザB型ウイルス培養上清を用意した。抽出液(150mMリン酸緩衝液、0.5(w/v)%TritonX−100、0.1(w/v)%BSA、0.09(w/v)%アジ化ナトリウム)で25倍に希釈した後、テストプレートの検体滴下部に50μL滴下し反応させた。滴下から10分後、検出部分であるAライン上の様子を目視観察した。
以下に、偽陽性目視観察の具体的な評価基準を示す:
−:Aライン上にラインが認められない;
±:Aライン上にラインが認められるか否か、はっきりしない;
+:Aライン上にわずかに染色ラインが認められるものの、その色度や鮮明度が低いため真の陽性ラインと区別がつく;
++:Aライン上に染色ラインがはっきりと認められ、真の陽性ラインと区別がつかない;本明細書においては、++を偽陽性あり(不合格)、−〜+は偽陽性なし(合格)とする。
その結果、実施例1〜16において、偽陽性目視観察の評価結果は−〜+であり、全て偽陽性なし(合格)となった。その一方、比較例1〜3においては、偽陽性目視観察の評価結果は全て偽陽性あり(不合格)となった。
(4)黄変確認試験
実施例1〜16および比較例1〜3の操作により得られた各イムノクロマトグラフィー用試験片を用いて黄変の目視観察を行った。以下に、黄変目視観察の具体的な評価基準を示す:
−:イムノクロマトグラフィー用試験片が黄変していない;
+:イムノクロマトグラフィー用試験片が黄変している;本明細書においては、+を黄変あり(不合格)、−を黄変なし(合格)とする。
その結果、実施例1、3、5、6および9〜16において、黄変目視観察の評価結果は黄変なし(合格)となった。その一方、実施例2、4、7および8においては、黄変目視観察の評価結果は黄変あり(不合格)となった。
(5)考察
実施例1と比較例3、実施例6と比較例2、並びに実施例15と比較例1の比較から、調製例(3)で調製された抗体固相化メンブランシートを、いきなりブロッキング溶液へ浸漬(1−c)するよりも、ブロッキング溶液の吸い上げのみ(1−a)またはブロッキング溶液を吸い上げながら水切り(1−b)をする方が偽陽性の出現を抑制できることがわかった。また、実施例9と実施例16との比較から、ブロッキング溶液を吸い上げ(1−a)とブロッキング溶液への浸漬(1−c)を行ったメンブランシートを逆方向に水切り(1−f)した場合は、偽陽性なしではあるものの、Aライン上にわずかながらラインが認められ、逆方向の水切りはそれをしなかった場合と比較して偽陽性の出現を促進させる傾向にあることがわかった。以上により、ブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御することが、偽陽性の出現を抑制することに寄与しているものと考えられた。
次に、実施例1と実施例6の比較から、順方向の水切りを30分間行った場合は、偽陽性なしではあるものの、Aライン上にわずかながらラインが認められ、順方向の水切りを30分間行うことは、順方向の水切りを1分間行うことと比較して、偽陽性の出現を促進させる傾向にあることがわかった。特定の理論に拘泥するものではないが、順方向で長時間の水切りをするとわずかながら染色ラインの出現を許してしまうのは、メンブランシート中の余分な溶液が吸収紙に排出されたのち、長時間その状態が維持されることで、メンブランシートの乾燥が進み、ブロッキング溶液を含んだ吸収紙から乾燥したメンブランシートへの吸い上げが生じ、そのためブロッキング溶液が逆方向に展開(逆流)したため、それによりリファレンス抗体が逆方向に移動することによるものと考えられる。
さらに、実施例5と実施例2、7および8との比較から、洗浄溶液の吸い上げのみ(2−a)より洗浄溶液を吸い上げながら水切り(2−b)する方が、さらに順方向の水切りを1分に抑える方が、黄変なしとなることがわかった。また、実施例15と実施例4の比較から、洗浄溶液を吸い上げながら水切り(2−b)するのみでは黄変ありとなるのに対し洗浄溶液へのメンブランシート全体の浸漬(2−c)では黄変なしとなることがわかった。以上により、黄変の出現頻度を抑えることに寄与している操作としては、第1にメンブランシート全体を洗浄溶液に浸漬することが挙げられるが、仮に洗浄溶液を吸い上げる操作を行う場合は、洗浄溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御することが重要であると考えられた。
以上により、特定の理論に拘泥するものではないが、本発明の作用機序は以下のようなものであると考えられる。
まず、従来の、浸透処理工程中のブロッキング溶液の流れをテスト抗体側からリファレンス抗体側へ向かう方向(つまり、順方向)に制御しないブロッキング方法では、浸透処理工程中にブロッキング溶液が逆流することで、試験実施時(テスト抗体が結合する抗原が試料中に存在する場合)に偽陽性が生じる場合があると考えられる。かかる偽陽性は以下の機序で発生すると考えられる(図1)。
(i)ブロッキング工程では、まずブロッキング溶液を抗体固相化メンブランシートに浸潤させ、最後の乾燥前には余分なブロッキング溶液を抗体固相化メンブランシートから吸い出す(水切りする)必要がある
(ii)この際にリファレンス抗体(本明細書ではR抗体と呼称することもある)が遊離するが(特開2015−232467号公報)、ブロッキング溶液が、テスト抗体側からリファレンス抗体側へ向かう方向と逆方向に流れていると遊離したR抗体がテスト抗体の一つであるB抗体が固相化されたBライン、テスト抗体の一つであるA抗体が固相化されたAラインの方向に流れることになる。
(iii)その過程でR抗体がB抗体を捕捉し、更にAライン上まで展開すると、B抗体を捕捉したR抗体がA抗体も捕捉することでAライン上に固着される。
(iv)ブロッキング溶液を浸透処理させる工程が終了し、そのまま抗体固相化メンブランシートを乾燥すると、Aライン上に固着したR抗体(ここで、R抗体はB抗体を捕捉している)がそのまま残ることになる。
(v)その結果、B型抗原を含む試料を用いて試験を実施すると、Aライン上にR抗体を介してB抗体が存在しているため、これがB型抗原および赤色粒子標識B型抗体の免疫複合体を形成し、Aライン上に偽陽性が発生することになる。
一方、本発明の方法では浸透処理工程中のブロッキング溶液の流れをテスト抗体側からリファレンス抗体側へ向かう方向(つまり、順方向)に保つことで、R抗体が遊離しても、R抗体が他の検出部分に固着することがなく、試験実施時に偽陽性が発生することを防いでいると考えられる。考えられる本発明の機序を以下に示す(図2)。
(i)浸透処理工程において、ブロッキング溶液を抗体固相化メンブランシートに浸潤させ、最後の乾燥前には余分なブロッキング溶液を抗体固相化メンブランシートから吸い出す(水切りする)際に、ブロッキング溶液が順方向だけに流れるようにする
(ii)この際にR抗体が遊離するが、ブロッキング溶液が順方向に流れているので、遊離したR抗体がBライン、Aラインの方向に流れない。
(iii)よって浸透処理工程が終了し、そのまま抗体固相化メンブランシートを乾燥しても、Aライン上に固着するのはA抗体だけになる。
(iv)その結果、B型抗原を含む試料を用いて試験を実施すると、Aライン上にはA抗体しかないため、偽陽性が発生しない。

Claims (8)

  1. イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートをブロッキングする方法であって、
    (a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシートを用意する工程、
    (b)固相化処理されたメンブランシートにブロッキング溶液を浸透させる浸透処理工程、および
    (c)浸透処理されたメンブランシートを乾燥させる乾燥工程
    を含んでなり、
    前記浸透処理工程(b)におけるブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御され、
    前記浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、洗浄溶液により洗浄する洗浄工程をさらに含んでなり、
    前記洗浄工程が、前記浸透処理されたメンブランシートの全体を洗浄溶液に浸漬することによって行われる操作を含んでなるものである、方法。
  2. イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートをブロッキングする方法であって、
    (a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシートを用意する工程、
    (b)固相化処理されたメンブランシートにブロッキング溶液を浸透させる浸透処理工程、および
    (c)浸透処理されたメンブランシートを乾燥させる乾燥工程
    を含んでなり、
    前記浸透処理工程(b)におけるブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御され、
    前記浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、洗浄溶液により洗浄する洗浄工程をさらに含んでなり、
    前記洗浄工程が、前記浸透処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端を洗浄溶液に浸漬し、かつ、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、洗浄溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させることによって行われる操作を含んでなるものであり、
    ここで、前記洗浄工程の後に、得られたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、洗浄溶液が浸透したメンブランシート上の余分な洗浄溶液を吸収させる吸収工程(B)をさらに含んでなり、前記吸収工程(B)における洗浄溶液の吸収方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、方法。
  3. イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートをブロッキングする方法であって、
    (a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とが、互いに異なる位置に固相化されている固相化処理されたメンブランシートを用意する工程、
    (b)固相化処理されたメンブランシートにブロッキング溶液を浸透させる浸透処理工程、および
    (c)浸透処理されたメンブランシートを乾燥させる乾燥工程
    を含んでなり、
    前記浸透処理工程(b)におけるブロッキング溶液の浸透方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御され、
    前記浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、洗浄溶液により洗浄する洗浄工程をさらに含んでなり、
    (i)前記洗浄工程が、前記浸透処理されたメンブランシートの全体を洗浄溶液に浸漬することによって行われる操作を含んでなるものであり、および
    (ii)前記洗浄工程が、前記浸透処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端を洗浄溶液に浸漬し、かつ、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、洗浄溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させることによって行われる操作を含んでなるものであり、
    ここで、前記洗浄工程の後に、得られたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、洗浄溶液が浸透したメンブランシート上の余分な洗浄溶液を吸収させる吸収工程(B)をさらに含んでなり、前記吸収工程(B)における洗浄溶液の吸収方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、方法。
  4. 前記浸透処理工程(b)が、前記固相化処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端をブロッキング溶液に浸漬させて、ブロッキング溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させる操作によって行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記浸透処理工程(b)が、前記固相化処理されたメンブランシートの前記テスト抗体側末端をブロッキング溶液に浸漬し、かつ、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、ブロッキング溶液を前記リファレンス抗体側末端まで浸透させる操作によって行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記浸透処理工程(b)の後に、該浸透処理されたメンブランシートを、吸水性素材に接触させて、該浸透処理されたメンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる吸収工程(A)をさらに含んでなり、
    前記吸収工程(A)におけるブロッキング溶液の吸収方向が、テスト抗体側末端からリファレンス抗体側末端へ向かう方向に対して順方向となるように制御される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記吸収工程(A)が、前記浸透処理されたメンブランシートの、前記リファレンス抗体側末端を吸水性素材に接触させて、ブロッキング溶液が浸透したメンブランシート上の余分なブロッキング溶液を吸収させる操作によって行われる、請求項6に記載の方法。
  8. イムノクロマトグラフィー用試験片を構成するメンブランシートを製造する方法であって、
    (a)被検物質に特異的に結合する少なくとも1種のテスト抗体と、リファレンス抗体とを、メンブランシート上の互いに異なる位置に固相化する抗体固相化工程、並びに
    (b)請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により、該メンブランシートをブロッキングする工程
    を含んでなる、方法。
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