JP6464882B2 - インホイール型サスペンション装置 - Google Patents
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Description
このインホイール型サスペンション装置において、サスペンション部材の車輪支持部を、車輪支持部材に設けられた摺動機構に有する少なくとも1本以上の摺動軸に対し上下動可能に連結する。これとともに、車輪支持部材とサスペンション部材の間に少なくとも弾性要素と減衰要素のいずれか一方を配置する。
サスペンション部材の車輪支持部と摺動軸の連結部に、摺動軸と接する滑り軸受け部と、摺動軸のずれ変位を吸収する変位吸収機構と、を有する。
すなわち、摺動軸の傾きや複数の摺動軸の軸間距離の変化等のようなミスアライメントがあったとき、変位吸収機構が摺動軸のずれ変位を吸収し、サスペンション部材の車輪支持部と摺動軸の連結部における摺動抵抗の増加が抑えられる。
この結果、サスペンション上下運動に伴って摺動するとき、摺動抵抗の増加を抑えた摺動動作を維持することができる。
まず、構成を説明する。
実施例1におけるインホイール型サスペンション装置IWS1の構成を、「全体構成」、「サスペンション部材と摺動軸の連結部構成」に分けて説明する。
図1は実施例1のインホイール型サスペンション装置IWS1が適用された左後輪(従動輪)を車両内側の斜め前方から視た斜視図を示し、図2はサスペンション構成要素を示す。以下、図1及び図2に基づき、全体構成を説明する。なお、図1は、向かって右が車両進行方向となる。
ここで、単にサスペンション装置ではなく、「インホイール型サスペンション装置」という理由は、上記サスペンション構成要素の少なくとも一部がタイヤ4を装着するホイール9内に配置された構成であることによる。
図3は実施例1のインホイール型サスペンション装置IWS1においてサスペンション部材と副摺動軸の連結部構成を示し、図4は主摺動軸と副摺動軸の取り付けとタイヤとの位置関係を簡略に示す。以下、図3及び図4に基づき、実施例1のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
まず、実施例1の作用を説明するにあたり、本発明の背景技術と課題を説明する。
近年、エネルギー資源の効率的活用の観点から電気自動車に対する期待が高まっている。しかし、電気自動車は、航続距離がユーザーの期待に対して短く、満充電での航続距離を延長することが必要となっている。そして、航続距離を延長するためには、限られたスペースにできるだけ多くのバッテリを搭載することが一つの解決手段として有望視されており、サスペンション装置の省スペース化が重要な技術課題となっている。
このインホイール型サスペンション装置は、車輪を支持する車輪支持部材と、この車輪支持部材に連結されると共に車体に取り付けられるサスペンション部材と、を備え、サスペンション部材の少なくとも一部が、前記車輪のホイール内に配置されている。
さらに、このようなインホイール型サスペンション装置として、車輪を上下ストロークさせるため、摺動機構を介してサスペンション部材の車輪支持部を車輪支持部材に設けられた摺動軸に上下動可能に連結すると共に、車輪支持部材とサスペンション部材との間に弾性要素及び/又は減衰要素とを備えたものが考えられる。
一方、車輪支持部材とサスペンション部材の間に摺動機構を配置したインホイール型サスペンション装置では、車輪の上下ストロークは、摺動軸に沿った方向に限定されるため、車輪の姿勢変化を小さくすることができる。
然るに、サスペンション部品の加工精度や組み付け精度により、その平行度を保つことは容易ではない。また、接地荷重、タイヤ横力、制動力等が作用した場合には、車輪支持部にこじられるような外力が作用するため、それぞれの摺動軸にこじりモーメントが作用して二軸間の距離が変化する、或いは、摺動軸が曲げ変形して二軸間の傾斜角度にずれが生じる、といったことが発生する。
そして、このような車輪支持部に作用したこじりにより、上下ストローク時の摺動抵抗(フリクション)が増大する問題が発生する。なお、本発明では、上記二軸間距離の変化や傾斜角度変化をミスアライメントと呼ぶ。
例えば、特開2007−161195号公報に記載されるように、2本の摺動軸が設けられた摺動部材を、ブッシュを介して車体に取り付けた摺動機構を備えたインホイール型サスペンション装置を比較例とする。
インホイール型サスペンション装置は、摺動機構により上下ストロークするが、路面入力の大きさや方向により、複数摺動軸には初期状態の平行の関係性や摺動軸の間隔についてずれが発生する。これに対し、比較例では、2本の摺動軸が同時にずれ変化した場合には対応することができるが、それぞれの動作で発生するずれについては吸収しきれず、摺動抵抗が増加し、正常にストロークするのが困難になる。
実施例1では、摺動軸として、入力が異なる2本の主摺動軸3aと副摺動軸3bを有する。そして、2本の摺動軸3a,3bのうち、入力が小さい方の副摺動軸3bに変位吸収機構としての弾性体ブッシュ12を設ける構成とした。
このように、入力が小さい方の副摺動軸3bにおいて変位吸収機能を実現させることで、摺動動作を支配するのは入力の大きい主摺動軸3aであり、軸の傾きや変形に対しては入力が小さい副摺動軸3bが追従する構造となる。そうすることにより、サスペンション装置として必要以上に剛性の低下を招くことなく、両摺動軸3a,3b間の傾きや軸間距離の変化を吸収することができる。
その結果、常用走行中、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持し、正常な摺動動作を可能にする。
このように、摺動軸として、主摺動軸3aと副摺動軸3bを有する場合、主摺動軸3aに対して副摺動軸3bの位置を規定することは、摺動動作を支配するのは入力の大きい主摺動軸3aであることを特定することになる。このため、主摺動軸3aが摺動動作を支配する軸であると特定されることで、タイヤ4の上下ストローク等の挙動を安定させることができる。
その結果、常用走行中、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持し、正常な摺動動作を可能にする。
このように、変位吸収機構として、弾性変形する弾性体ブッシュ12を使用することにより、常用走行中のサスペンション上下運動に伴い、ミスアライメント等による軽微な副摺動軸3bの傾きや主摺動軸3aとの軸間距離の変化を吸収することができる。その結果、常用走行中のサスペンション上下運動に伴う摺動方向の作動を維持する効果があり、正常な摺動動作を可能にする。
このように、副摺動軸3bの軸表面との滑りを促進させる滑りブッシュ11と、その周囲にゴム等弾性体の材料より構成される弾性体ブッシュ12を設ける二層構造としている。このため、常用走行中のサスペンション上下運動に伴って軽微な軸傾きや軸間距離の変化がある際、ずれ変位を吸収しながら、副摺動軸3bとの摩擦力を軽減することができる。つまり、弾性体ブッシュ12が軽微な軸傾きや軸間距離の変化を吸収する機能を果たし、この吸収機能による片当たりでの接触圧力増加に伴う摩擦力の増加に対して、滑りブッシュ11が摩擦力を軽減する機能を果たす。
その結果、常用走行中のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な摺動動作を可能にする。
実施例1のインホイール型サスペンション装置IWS1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
サスペンション部材2の車輪支持部を、車輪支持部材1に設けられた摺動機構3に有する少なくとも1本以上の摺動軸3a,3bに対し上下動可能に連結するとともに、車輪支持部材1とサスペンション部材2の間に少なくとも弾性要素5と減衰要素のいずれか一方を配置し、
サスペンション部材2の車輪支持部と摺動軸(副摺動軸3b)の連結部に、摺動軸(副摺動軸3b)と接する滑り軸受け部(滑りブッシュ11)と、摺動軸(副摺動軸3b)のずれ変位を吸収する変位吸収機構(弾性体ブッシュ12)と、を有する(図3)。
このため、サスペンション部材2と摺動軸(副摺動軸3b)の連結部に変位吸収機構(弾性体ブッシュ12)を有することで、サスペンション上下運動に伴って摺動するとき、摺動抵抗の増加を抑えた摺動動作を維持することができる。
2本以上の摺動軸(主摺動軸3a、副摺動軸3b)のうち、少なくとも入力が小さい方の摺動軸(副摺動軸3b)に変位吸収機構(弾性体ブッシュ12)を設けた(図4)。
このため、(1)の効果に加え、サスペンション装置として必要以上に剛性の低下を招くことなく、2本以上の摺動軸(主摺動軸3a、副摺動軸3b)間の傾き差異や軸間距離のずれ変化を吸収することができる。
副摺動軸3bは、主摺動軸3aよりもタイヤ4から遠い位置に設定した(図4)。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、摺動動作を支配する軸を主摺動軸3aに特定することで、常用走行中、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う安定した摺動動作を維持することができる。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、常用走行中のサスペンション上下運動に伴う軽微な軸傾きのずれや軸間距離のずれ変化を、弾性体ブッシュ12による弾性変形により吸収することができる。
サスペンション部材2と摺動軸(副摺動軸3b)の連結部に、摺動軸(副摺動軸3b)の軸中心CLから順に、滑りブッシュ11→弾性体ブッシュ12→摺動軸受けパイプ(副摺動軸受けパイプ2e)を同軸配置で設けた(図3)。
このため、(4)の効果に加え、常用走行中のサスペンション上下運動に伴うずれ変位を吸収しながら、摺動軸3a,3bとの摩擦力を軽減することができる。
実施例2は、実施例1の変位吸収機構に、路面入力による軸変形を許容する軸変形許容構造を加えた例である。
図5は実施例2のインホイール型サスペンション装置IWS2においてサスペンション部材と副摺動軸の連結部構成を示し、図6は変形例(a),(b),(c)によるサスペンション部材と副摺動軸の連結部構成を示す。以下、図5及び図6に基づき、実施例2のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
このように、両端を相対的に柔らかいゴムとし、中央部に相対的に硬いゴムを配置することで、サスペンション上下ストロークによって、副摺動軸3bが正常に摺動し、サスペンションの上下ストロークを妨げることがない。
したがって、サスペンション上下ストロークによって、副摺動軸3bが正常に摺動し、サスペンションの上下ストロークを妨げることがない、という上記効果を期待することができる。
このように、拡開形状とするとともに面取り部13を設けることで、軸変形量がより大きい場合もこれに対応して許容することができる。
実施例2のインホイール型サスペンション装置IWS2にあっては、下記の効果を得ることができる。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、タイヤ4から離れた位置の副摺動軸3bが、路面入力により軸変形したとき、軸変形を許容しつつ、取付け剛性の低下を抑えることができる。
このため、(6)の効果に加え、弾性体ブッシュ12のうち一部のゴム素材を変更するだけで、路面入力により軸変形があったときにサスペンションの上下ストロークを確保することができる。
このため、(6)の効果に加え、滑りブッシュ11に面取り部13を設けるだけで、路面入力により軸変形があったときにサスペンションの上下ストロークを確保することができる。
このため、(6)の効果に加え、拡開形状とするとともに面取り部13を設けることで、路面入力により軸変形があったとき、軸変形量がより大きい場合もこれを許容することができる。
実施例3は、変位吸収機構として、摺動軸のずれ変位方向へのスライド動作を許容するスライドガイド構造を設けた例である。
図9は実施例3のインホイール型サスペンション装置IWS3においてサスペンション部材と副摺動軸の連結部の構成(スライドガイド構造)を示し、図10はスライドガイド構造を示す斜視図である。以下、図9及び図10に基づき、実施例3のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
なお、副摺動軸3bのスライド方向(図10の矢印B方向)は、条件や要求に応じて自由に決めることができるが、実施例3では、ほぼ車幅方向に一致させた方向としている。
実施例3では、変位吸収機構を、サスペンション部材2の車輪支持部と副摺動軸3bとの間に介装され、副摺動軸3bに対しておよそ直角方向に作動するスライド構造とする構成とした。
突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合、2本の摺動軸3a,3bの軸傾きの方向が異なるし、軸間距離が変化する。これに対し、副摺動軸3bのスライド動作によりこれを吸収しながら、サスペンション上下運動に伴う摺動軸3a,3bの摺動作動を滑らかに行うことができる。
その結果、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。
このようにスライド方向について規定する構造であることにより、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合、図11に示すように、可動するスライド方向(B方向)と拘束するスライド阻止方向(C方向)を分離できる。すなわち、必要とされる条件で両摺動軸3a,3b間の傾き差異や軸間距離の変化等がある場合は、可動するスライド方向で吸収し、そうでない場合は、スライド阻止方向で剛性を確保することができる。
その結果、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。
実施例3のインホイール型サスペンション装置IWS3にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、摺動軸(副摺動軸3b)のずれ変位に対しスライド動作によりこれを吸収することで、サスペンション上下運動に伴う摺動軸3a,3bの摺動作動を滑らかに行うことができる。
スライド構造を、スライドプレート14とスライドガイド15を用い、副摺動軸3bのずれ変位の吸収方向を規定したスライドガイド構造とした(図10)。
このため、(10)の効果に加え、路面入力があったとき、大きなずれ変位吸収が可能であるとともに、可動するスライド方向と、拘束するスライド阻止方向と、を分離できることで、ずれ変位吸収と剛性確保の両立を図ることができる。
実施例4は、変位吸収機構として、摺動軸のずれ変位方向へのスライド動作を許容するスライド径差構造を設けた例である。
図12及び図13は実施例4のインホイール型サスペンション装置IWS4においてサスペンション部材と副摺動軸の連結部の構成(スライド径差構造)を示す。以下、図9及び図10に基づき、実施例3のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
実施例4では、スライド構造を、長円ブラケット18と真円ブラケット19を用い、副摺動軸3bのずれ変位の吸収方向を規定したスライド径差構造による構成としている。
このようにスライド方向について規定する構造であることにより、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合、図12に示すように、可動するスライド方向(D方向)と拘束するスライド阻止方向(E方向)を分離できる。すなわち、必要とされる条件で両摺動軸3a,3b間の傾き差異や軸間距離の変化等がある場合は、可動するスライド方向で吸収し、そうでない場合は、スライド阻止方向で剛性を確保することができる。
加えて、スライド径差構造を、副摺動軸受けパイプ2eと別体にすることなく成立させることにより、コンパクトなスペースで、摺動軸傾き、摺動軸間傾き差異、摺動軸間距離の変化等を吸収することができる。
その結果、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。
実施例4のインホイール型サスペンション装置IWS4にあっては、下記の効果を得ることができる。
スライド構造を、長円ブラケット18と真円ブラケット19を用い、径差δによる可動範囲で許容する副摺動軸3bのスライド方向をずれ変位吸収方向に規定したスライド径差構造とした(図12)。
このため、(10)の効果に加え、路面入力があったとき、コンパクトに構成することが可能であるとともに、可動するスライド方向と、拘束するスライド阻止方向と、を分離できることで、ずれ変位吸収と剛性確保の両立を図ることができる。
実施例5は、変位吸収機構として、弾性体ブッシュとスライド構造の併用機構を用いた例である。
図14は実施例5のインホイール型サスペンション装置IWS5においてサスペンション部材と副摺動軸の連結部構成(弾性体ブッシュ+スライドガイド構造)を示す。以下、図14に基づき、実施例5のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
実施例5では、変位吸収機構として、サスペンション部材2と副摺動軸3bの連結部に有する弾性体ブッシュ12とスライド構造(スライドガイド構造)を併せ持つ構造を用いた構成としている。
このように、2種類の変位吸収構造を併用する構造としたことにより、突起乗り越し等での路面からの入力が進行方向から斜めにずれて発生した場合、2本の摺動軸3a,3bの軸傾きや軸間距離の変化の増加が見込まれる。しかし、弾性体ブッシュ12の弾性変形によるずれ変位の吸収作用と、スライド構造(スライドガイド構造)のスライド動作によるずれ変位の吸収作用と、によって、ずれ変位量が大きくても充分にこれを吸収することができる。
その結果、突起乗り越し等での進行方向から斜めにずれた路面入力に対して、サスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。
実施例5のインホイール型サスペンション装置IWS5にあっては、下記の効果を得ることができる。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、吸収したいずれ方向が斜め方向を含むとき、或いは、特定方向のずれ変位量が大きいとき、弾性変形とスライド動作によるずれ変位吸収作用によって、充分にこれを吸収することができる。
実施例6は、変位吸収機構として、摺動軸の傾斜方向への傾き動作を許容する相対回転構造を設けた例である。
図15は、実施例6のインホイール型サスペンション装置のサスペンション構成要素を模式的に示し、図16は、実施例6のインホイール型サスペンション装置IWS6においてサスペンション部材と摺動機構との連結部構成(相対回転構造)を示す。以下、図15及び図16に基づき、実施例6のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
そして、図15に示すように、ホイールセンタ7よりも車体前方位置に配置した摺動軸である副摺動軸3bに、変位吸収機構である相対回転構造30を設けている。
また、図16に示すように、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c(車輪支持部)と主摺動軸3aの連結部には、滑りブッシュ11のみが介装されて連結している。
すなわち、副摺動軸受けパイプ2eは、弾性要素支持ブラケット2dに固定されているが、この弾性要素支持ブラケット2dは、弾性要素5によって弾性支持されている。そのため、この弾性要素5が自然長の状態のとき、副摺動軸受けパイプ2eが主摺動軸受けパイプ2cの上端2αと下端2βとの間の位置に配置されるように、弾性要素5の長さが調整される。
ここで、ボール部31は、滑りブッシュ11の外側に嵌着した円筒部31aと、円筒部31aの外周面から半球状に膨出した球面部31bと、を有する。ボール支持部32は、副摺動軸受けパイプ2eの内側に嵌着した支持部本体32aと、支持部本体の内側に形成された球内面32bと、有する。そして、ボール部31の球面部31bがボール支持部32の球内面32bに対して球面接触することで、副摺動軸3bは副摺動軸受けパイプ2eに対し、360°方向に傾斜可能となっている。
まず、実施例6の作用を説明するにあたり、タイヤ4からの入力と摺動軸3a,3bの変形形態について図17〜図20を用いて説明する。
一方、サスペンション部材2は、車体取付け部材8に支持されており、接地荷重反力の影響を受けることはない。そのため、各摺動軸3a,3bは、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c又は副摺動軸受けパイプ2eによって変位が規制されて「S字」に曲げられた状態になる。
一方、サスペンション部材2はタイヤ横力の影響を受けることはない。このため、各摺動軸3a,3bは、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c又は副摺動軸受けパイプ2eによって変位が規制されて「S字」に曲げられた状態になる。
一方、サスペンション部材2は制動力の影響を受けることはない。このため、各摺動軸3a,3bは、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c又は副摺動軸受けパイプ2eによって変位が規制されて「S字」に曲げられた状態になる。
一方、図21Bには、摺動軸の上下端部が同じ方向に変位して「くの字」に曲げられた状態、つまり図20に示す状態を拡大して模式的に示す。このような変形は他方の摺動軸(主摺動軸)との軸間距離にずれ(軸間距離ずれ)を生じる要因となっている。
つまり、サスペンション装置には、接地反力やタイヤ横力が作用してもタイヤ4の姿勢が大きく変化しないように一定の剛性を確保した上で、ショックを吸収する構成が必要である。
これにより、車体に対する剛性を主摺動軸3aで確保し、軸傾斜ずれ(ミスアライメント)を副摺動軸3bで対策することができる。なお、主摺動軸3a及び副摺動軸3bのいずれにも変位吸収機構を設けた場合では、車輪支持部材1とサスペンション部材2との剛性が低下しすぎてしまう。
そのため、主摺動軸3aで確保されている上下ストローク量を維持することができ、サスペンション部材2の十分なストロークを確保することができる。
すなわち、車両が旋回する際、タイヤ横力の着力位置Xは、ホイールセンタ7の直下の位置Yよりも進行方向後方にある。また、タイヤ横力は、摺動軸Zのまわりにモーメントを生じさせ、これによりタイヤ4がステアする。
このとき、摺動軸Zがホイールセンタ7よりも車両前方位置(進行方向側)に配置されると、タイヤ4は旋回外側に向かうトーアウト方向にステアされ、タイヤ横力が減少してしまう。これに対し、摺動軸Zがホイールセンタ7よりも車両後方位置(後退方向側)に配置すれば、タイヤ4は旋回内側に向かうトーイン方向にステアされるか、又はほとんどステアしない。
さらに、相対回転構造30により、副摺動軸3bにこじりモーメントが作用しても、摺動抵抗(フリクション)の増大を抑制することが可能となり、タイヤ4のスムーズな上下ストロークを実現することができる。
実施例6のインホイール型サスペンション装置IWS6にあっては、下記の効果を得ることができる。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、軸傾斜角度がずれた場合に、副摺動軸3bの周囲の面圧が部分的に高くなることを回避し、摩擦抵抗の増大を防止してサスペンションとしての摺動抵抗(フリクション)が増大を抑えることができる。
変位吸収機構(相対回転構造30)を、第1摺動軸(主摺動軸3a)に連結したサスペンション部材2の車輪支持部(主摺動軸受けパイプ2c)の上端2αと下端2βとの間の高さ領域Hに配置した(図16)。
このため、(1)〜(14)の効果に加え、サスペンションとしての摺動抵抗(フリクション)が増大を抑えつつ、サスペンションストロークを確保することができる。
変位吸収機構(相対回転構造30)を、サスペンション部材2と第2摺動軸(副摺動軸3b)との連結部に設けた(図15)。
このため、(1)〜(15)の効果に加え、旋回中にタイヤ横力が発生したときのステア変化を抑制しつつ、サスペンションとしての摺動抵抗(フリクション)が増大を抑えることができる。
実施例7は、変位吸収機構として、相対回転構造とスライド構造の併用機構を用いた例である。
図26は、実施例7のインホイール型サスペンション装置IWS7においてサスペンション部材と副摺動軸の連結部構造(相対回転構造+スライドガイド構造)を示す。以下、図26に基づき、実施例7のサスペンション部材と摺動軸の連結部構成を説明する。
実施例7では、変位吸収機構として、サスペンション部材2と副摺動軸3bの連結部に有する相対回転構造30とスライド構造(スライドガイド構造)を併せ持つ構造を用いた構成としている。
このように、2種類の変位吸収機構を併用する構造としたことにより、突起乗り越し等での路面からの入力が進行方向から斜めにずれて発生した場合、2本の摺動軸3a,3bの軸傾きや軸間距離の変化の増加が見込まれる。しかし、相対回転構造30の回転動作による傾斜変位の吸収作用と、スライド構造(スライドガイド構造)のスライド動作によるずれ変位の吸収作用と、によって、ずれ変位量が大きくても十分にこれを吸収することができる。
その結果、突起乗り越し等での進行方向から斜めにずれた路面入力に対して、サスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。
実施例7のインホイール型サスペンション装置IWS7にあっては、下記の効果を得ることができる。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、吸収したい摺動軸のずれ方向が斜め方向を含むとき、或いは、特定のずれ変位量が大きいとき、回転動作とスライド動作によるずれ変位吸収作用によって、充分にこれを吸収することができる。
1 車輪支持部材
2 サスペンション部材
2a 前側車体支持ブラケット
2b 後側車体支持ブラケット
2c 主摺動軸受けパイプ(摺動軸受けパイプ)
2d 弾性要素支持ブラケット
2e 副摺動軸受けパイプ(摺動軸受けパイプ)
3 摺動機構
3a 主摺動軸(摺動軸)
3b 副摺動軸(摺動軸)
4 タイヤ
5 弾性要素
6 弾性ブッシュ
7 ホイールセンタ
8 車体取付け部材
9 ホイール
10 減衰要素
11 滑りブッシュ(摺動軸と接する滑り軸受け部)
12 弾性体ブッシュ(変位吸収機構)
12a 硬質ゴムブッシュ
12b 軟質ゴムブッシュ(軸変形許容構造)
13,13’ 面取り部(軸変形許容構造)
14 スライドプレート(変位吸収機構)
15 スライドガイド(変位吸収機構)
18 長円ブラケット(変位吸収機構)
19 真円ブラケット(変位吸収機構)
30 相対回転構造(変位吸収機構)
Claims (15)
- 一端が車輪支持部材に連結され、他端が車体に弾性支持されるサスペンション部材を備え、サスペンション構成要素の少なくとも一部がタイヤを装着するホイール内に配置されたインホイール型サスペンション装置において、
前記サスペンション部材の車輪支持部を、前記車輪支持部材に設けられた摺動機構に有する複数の摺動軸に対し上下動可能に連結するとともに、前記車輪支持部材と前記サスペンション部材の間に少なくとも弾性要素と減衰要素のいずれか一方を配置し、
前記複数の摺動軸として、路面からの入力が大きい主摺動軸と、前記主摺動軸よりも路面からの入力が小さい副摺動軸と、を少なくとも有し、
前記サスペンション部材の車輪支持部と前記副摺動軸の連結部に、前記副摺動軸と接する滑り軸受け部と、前記副摺動軸のずれ変位を吸収する変位吸収機構と、を有し、
前記副摺動軸は、前記主摺動軸よりもタイヤから遠い位置に設定した
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は、前記車輪支持部と、前記滑り軸受け部との間に介装された弾性体ブッシュである
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項2に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記車輪支持部が摺動軸受けパイプであり、前記滑り軸受け部が滑りブッシュであり、
前記サスペンション部材と前記副摺動軸の連結部に、前記副摺動軸の軸中心から順に、前記滑りブッシュ→前記弾性体ブッシュ→前記摺動軸受けパイプを同軸配置で設けた
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1から請求項3までの何れか一項に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記サスペンション部材と前記副摺動軸の連結部のうち、上下位置の連結境界部分に、路面入力による前記副摺動軸の軸変形を許容する軸変形許容構造を有する
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項4に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は、弾性体ブッシュであり、
前記軸変形許容構造は、硬いゴム素材による硬質ゴムブッシュの上下部分に柔らかいゴム素材による軟質ゴムブッシュを設けて前記弾性体ブッシュとすることで構成した
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項4に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記滑り軸受け部は、滑りブッシュであり、
前記軸変形許容構造は、前記滑りブッシュの上下部分に、連結境界に近づくほど前記副摺動軸から離間する面取り部を設けることで構成した
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項4に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は弾性体ブッシュであり、前記車輪支持部は摺動軸受けパイプであり、前記滑り軸受け部は滑りブッシュであり、
前記軸変形許容構造は、前記滑りブッシュと前記弾性体ブッシュと前記摺動軸受けパイプの上下部分を、連結境界に近づくほど前記副摺動軸から離間する拡開形状にし、拡開形状部分に面取り部を設けることで構成した
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は、前記車輪支持部と前記副摺動軸との間に介装され、前記副摺動軸に対しておよそ直角方向に作動するスライド構造である
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項8に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記スライド構造を、スライドプレートとスライドガイドを用い、前記副摺動軸のスライド方向をずれ変位の吸収方向に規定したスライドガイド構造とした
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項8に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記スライド構造を、長円ブラケットと真円ブラケットを用い、径差による可動範囲で許容する前記副摺動軸のスライド方向をずれ変位の吸収方向に規定したスライド径差構造とした
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は、前記サスペンション部材と前記副摺動軸の連結部に有する弾性体ブッシュとスライド構造を併せ持つ構造である
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は、前記車輪支持部と、前記滑り軸受け部との間に介装された相対回転構造である
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記変位吸収機構は、前記サスペンション部材と前記副摺動軸の連結部に有する相対回転構造とスライド構造を併せ持つ構造である
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1から請求項13までの何れか一項に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記複数の摺動軸として、前記サスペンション部材との連結部に前記変位吸収機構を有さない主摺動軸と、前記サスペンション部材との連結部に前記変位吸収機構を有する副摺動軸と、を備え、
前記変位吸収機構を、前記主摺動軸に連結した車輪支持部の上端と下端との間の高さ領域に配置した
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。 - 請求項1から請求項14までの何れか一項に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
前記複数の摺動軸として、ホイールセンタよりも車体後方位置に配置した主摺動軸と、前記ホイールセンタよりも車体前方位置に配置した副摺動軸と、を備え、
前記変位吸収機構を、前記サスペンション部材と前記副摺動軸との連結部に設けた
ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
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