以下、本発明の一実施形態を図1〜図37に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせて多色のカラー画像を形成するタンデム方式のカラープリンタであり、4つの感光体ドラム(K1、C1、M1、Y1)、4つのドラム帯電装置(K2、C2、M2、Y2)、4つの現像装置(K4、C4、M4、Y4)、4つのドラムクリーニング装置(K5、C5、M5、Y5)、4つの転写装置(K6、C6、M6、Y6)、光走査装置2010、ベルト帯電装置2030、ベルト分離装置2031、ベルト除電装置2032、搬送ベルト2040、ベルトクリーニング装置2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報を光走査装置2010に通知する。
感光体ドラムK1、ドラム帯電装置K2、現像装置K4、ドラムクリーニング装置K5、及び転写装置K6は、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
感光体ドラムC1、ドラム帯電装置C2、現像装置C4、ドラムクリーニング装置C5、及び転写装置C6は、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
感光体ドラムM1、ドラム帯電装置M2、現像装置M4、ドラムクリーニング装置M5、及び転写装置M6は、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
感光体ドラムY1、ドラム帯電装置Y2、現像装置Y4、ドラムクリーニング装置Y5、及び転写装置Y6は、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。各感光体ドラムは、図1における面内で矢印方向に回転する。
各ドラム帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、マゼンタ画像情報、シアン画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、色毎に変調された光を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。また、各感光体ドラムがそれぞれ像担持体である。そこで、以下では、各感光体ドラムの表面を被走査面あるいは像面ともいう。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
ところで、各感光体ドラムにおいて、光によって走査される領域は「走査領域」と呼ばれ、該走査領域のなかで画像情報が書き込まれる領域は、「有効走査領域」、「画像形成領域」、「有効画像領域」などと呼ばれている。また、各感光体ドラムにおける回転軸に平行な方向は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラムの回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。
現像装置K4は、感光体ドラムK1の表面に形成された潜像にブラックのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置C4は、感光体ドラムC1の表面に形成された潜像にシアンのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置M4は、感光体ドラムM1の表面に形成された潜像にマゼンタのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置Y4は、感光体ドラムY1の表面に形成された潜像にイエローのトナーを付着させて顕像化させる。
各現像装置によってトナーが付着した像(以下では、便宜上「トナー画像」ともいう)は、感光体ドラムの回転に伴って対応する転写装置の方向に移動する。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を搬送ベルト2040に向けて送り出す。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで、対応する転写装置によって搬送ベルト2040上の記録紙に順次転写され、重ね合わされてカラー画像となる。そして、この記録紙は、定着装置2050に送られる。
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙に定着される。この記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイに送られ、排紙トレイ上に順次積み重ねられる。
各ドラムクリーニング装置は、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
ベルト帯電装置2030は、搬送ベルト2040の表面を帯電させる。これにより、記録紙が搬送ベルト2040の表面に静電吸着される。
ベルト分離装置2031は、搬送ベルト2040上に静電吸着されている記録紙の吸着を解除する。
ベルト除電装置2032は、搬送ベルト2040の表面を除電する。
ベルトクリーニング装置2042は、搬送ベルト2040の表面に付着している異物を除去する。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの第1走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、8枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2107a、2107b、2107c、2107d)、4つの第2走査レンズ(2108a、2108b、2108c、2108d)、4枚の防塵ガラス(2109a、2109b、2109c、2109d)、光制限部材2114、同期検知センサ2115、防音ガラス2120、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング2300の所定位置に組み付けられている。
なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、光偏向器2104における回転多面鏡の回転軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。また、以下では、便宜上、各光学部材において、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)は、4つの感光体ドラム(K1、C1、M1、Y1)に個別に対応している。ここでは、光源2200aは感光体ドラムK1に対応し、光源2200bは感光体ドラムC1に対応し、光源2200cは感光体ドラムM1に対応し、光源2200dは感光体ドラムY1に対応している。
そして、光源2200aから射出される光を「光La」ともいい、光源2200bから射出される光を「光Lb」ともいう。また、光源2200cから射出される光を「光Lc」ともいい、光源2200dから射出される光を「光Ld」ともいう。
光源と光偏向器2104との間に配置されている光学系は「偏向器前光学系」と呼ばれている。
カップリングレンズ2201a、開口板2202a、及びシリンドリカルレンズ2204aは、光Laに対する偏向器前光学系である。
カップリングレンズ2201b、開口板2202b、及びシリンドリカルレンズ2204bは、光Lbに対する偏向器前光学系である。
カップリングレンズ2201c、開口板2202c、及びシリンドリカルレンズ2204cは、光Lcに対する偏向器前光学系である。
カップリングレンズ2201d、開口板2202d、及びシリンドリカルレンズ2204dは、光Ldに対する偏向器前光学系である。
各カップリングレンズは、対応する光源から射出された光を略平行光とする。各開口板は、開口部を有し、対応するカップリングレンズを介した光を整形する。各シリンドリカルレンズは、対応する開口板の開口部を通過した光をZ軸方向に関して集光する。各シリンドリカルレンズを介した光は、光偏向器2104に向かう。
光偏向器2104は、2段構造の回転多面鏡を有している。各回転多面鏡には7面の鏡面がそれぞれ形成されており、以下では、各鏡面を「偏向反射面」ともいう。そして、1段目(下段)の回転多面鏡では、シリンドリカルレンズ2204aを介した光La及びシリンドリカルレンズ2204cを介した光Lcがそれぞれ偏向され、2段目(上段)の回転多面鏡では、シリンドリカルレンズ2204bを介した光Lb及びシリンドリカルレンズ2204dを介した光Ldがそれぞれ偏向されるように配置されている。
ここでは、光La及び光Lbは光偏向器2104の−X側に偏向され、光Lc及び光Ldは光偏向器2104の+X側に偏向される。また、各回転多面鏡は、図2における面内で矢印方向に回転する。
光偏向器2104は、防音のために密閉容器内に収容されている。この密閉容器は、各シリンドリカルレンズからの光、及び光偏向器2104で偏向された光が通過する窓を有し、該窓は防音ガラス2120で覆われている。
光偏向器2104と感光体ドラムとの間に配置されている光学系は「走査光学系」と呼ばれている。
第1走査レンズ2105a、折り返しミラー2106a、折り返しミラー2107a、及び第2走査レンズ2108aは、光Laに対する走査光学系である。
第1走査レンズ2105b、折り返しミラー2106b、折り返しミラー2107b、及び第2走査レンズ2108bは、光Lbに対する走査光学系である。
第1走査レンズ2105c、折り返しミラー2106c、折り返しミラー2107c、及び第2走査レンズ2108cは、光Lcに対する走査光学系である。
第1走査レンズ2105d、折り返しミラー2106d、折り返しミラー2107d、及び第2走査レンズ2108dは、光Ldに対する走査光学系である。
各第1走査レンズはfθレンズであり、各第2走査レンズは長尺トロイダルレンズである。各走査光学系における第1走査レンズと第2走査レンズとから構成される光学系は「走査結像光学系」とも呼ばれている。なお、走査結像光学系は、1つのレンズで構成することもできる。
光偏向器2104で偏向された光Laは、第1走査レンズ2105a、折り返しミラー2106a、折り返しミラー2107a、第2走査レンズ2108a、及び防塵ガラス2109aを介して、感光体ドラムK1に照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光Lbは、走査レンズ2105b、折り返しミラー2106b、折り返しミラー2107b、第2走査レンズ2108b、及び防塵ガラス2109bを介して、感光体ドラムC1に照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光Lcは、走査レンズ2105c、折り返しミラー2106c、折り返しミラー2107c、第2走査レンズ2108c、及び防塵ガラス2109cを介して、感光体ドラムM1に照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光Ldは、走査レンズ2105d、折り返しミラー2106d、折り返しミラー2107d、第2走査レンズ2108d、及び防塵ガラス2109dを介して、感光体ドラムY1に照射され、光スポットが形成される。
各感光体ドラム上の光スポットは、回転多面鏡の回転に伴って該感光体ドラムの長手方向(主走査方向)に移動する。感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bでは、−Y方向に光走査が行われ、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dでは、+Y方向に光走査が行われる(図6参照)。ここでは、主走査方向に関する走査領域の大きさは327mmである。すなわち、走査領域の像高は、−163.5mm〜+163.5mmである。
ここでは、感光体ドラムの走査領域における走査開始位置は、主走査方向に関する該走査領域の一側端部であり、感光体ドラムの走査領域における走査終了位置は、主走査方向に関する該走査領域の他側端部である。以下では、主走査方向に関して、走査領域の中央部を「中央像高」ともいい、走査領域の両端部を「周辺像高」ともいう。
ここで、図7に示されるように、回転多面鏡の回転軸に直交する面(ここでは、XY面)において、回転多面鏡の回転中心を通り、X軸に平行な軸を「基準軸」とする。また、XY面において、各偏光器前光学系の光軸と上記基準軸とのなす角をθinと表記する。さらに、図8及び図9に示されるように、XY面に正射影したときの、光偏向器2104に入射する光の幅をdinと表記する。ここでは、din=2.8mmである。
そして、回転多面鏡に内接する円(図10参照)の直径をDとする。ここでは、D=13mmである。そこで、XY面に正射影すると、光偏向器2104に入射する光の幅は、主走査対応方向に関する偏向反射面の長さより小さい。また、7つの偏向反射面を区別する必要があるときは、反時計まわりに面1、面2、面3、面4、面5、面6、面7とする。
光制限部材2114は、開口部を有し、光偏向器2104で偏向された光Ldであって、走査開始前の光が入射される。この光制限部材2114の詳細については後述する。同期検知センサ2115は、光制限部材2114の開口部を通過した光を受光し、受光光量に応じた信号を走査制御装置に出力する。以下では、同期検知センサ2115から出力される信号を「同期検知信号」ともいう。また、光偏向器2104で偏向され、同期検知センサ2115に向かう光を「同期光」ともいう。
走査制御装置は、同期検知センサ2115からの同期検知信号に基づいて、4つの感光体ドラムでの書き込み開始タイミングを決定する。
図11には、光源が1つの発光部からなるシングルLDを有する場合の、同期検知信号と光源駆動信号のタイミングチャートが示されている。回転多面鏡は等角速度で回転しているため、同期検知信号は一定時間ごとにローレベルからハイレベルに変化する。走査制御装置は、同期検知信号の立ち上がりタイミングから一定時間t1の経過後に、書き込み情報に応じた光源駆動信号を出力する。
そこで、各走査ラインでは、一例として図12に示されるように、主走査方向に関して常に同じ位置から書き込みが開始されることになる。
ここでは、走査制御装置は、一例として図13に示されるように、同期検知信号の信号レベルがある一定の閾値v0以上のときに同期光を受光しているとみなす。そこで、走査制御装置は、同期検知信号の信号レベルが閾値v0になるタイミングを、同期検知信号の立ち上がりタイミングと判断する。なお、以下では、走査制御装置が同期検知信号の立ち上がりを検知することを「同期検知」ともいう。
ところで、同期検知センサ2115が同期光を受光したときの出力波形が異なると、一例として図14に示されるように、同期検知信号の立ち上がりタイミングが異なることになる。そこで、走査ライン毎に同期検知信号の立ち上がりタイミングが異なると、走査ライン毎に同期検知のタイミングが異なり、一例として図15に示されるように、走査ライン毎に書き込みが開始される主走査方向に関する位置が異なることとなる。すなわち、主走査方向に関して印字位置のずれが生じる。
次に、光源2200dから射出され、光偏向器2104に入射する光と、光偏向器2104で偏向された光について図16〜図20を用いて説明する。ここでは、回転多面鏡の面1で反射された光が、同期検知センサ2115及び対応する感光体ドラムの走査領域に向かうものとする。
図16には、光偏向器2104で偏向された光が、同期検知センサ2115に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光(同期光)とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面2で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、同期検知センサ2115に向かう光(同期光)の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、dout=1.4mmである。
図17には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が−163.5mmの位置(すなわち、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置)に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面2で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査開始位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光の進行方向と基準軸とのなす角をθsとする。
図18には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が−150mmの位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムにおける像高が−150mmの位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の「けられ」はない。
図19には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が0mmの位置(すなわち、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置)に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の「けられ」はない。
図20には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が+150mmの位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムにおける像高が+150mmの位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の「けられ」はない。
図21には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が+163.5mmの位置(すなわち、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置)に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面7で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査終了位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光の進行方向と基準軸とのなす角をθeとする。「θs+θe」は、いわゆる走査画角に対応する角度である。また、θs及びθeは、「走査半画角」とも呼ばれている。
このように、本実施形態では、光偏向器2104で偏向された光が、同期検知センサ2115に向かうタイミング、対応する感光体ドラムにおける像高が−163.5mmの位置から−150mm未満の位置の範囲に向かうタイミング、及び対応する感光体ドラムにおける像高が+150mmを超える位置から+163.5mmの位置の範囲に向かうタイミングでは、入射光の一部が光偏向器2104で「けられ」、対応する感光体ドラムにおける像高が−150mmの位置から+150mmの位置の範囲に向かうタイミングでは、入射光は光偏向器2104で「けられ」ないように設定されている。
ところで、回転多面鏡に光を入射させる方式として、アンダーフィルドタイプとオーバーフィルドタイプとがある。以下では、便宜上、アンダーフィルドタイプを「UFタイプ」、オーバーフィルドタイプを「OFタイプ」ともいう。
UFタイプでは、主走査対応方向に関して、偏向反射面の長さよりも入射光の幅が小さい(例えば、特開2005−92129号公報参照)。この場合、入射光のすべてが感光体ドラムに導光される。
OFタイプでは、主走査対応方向に関して、偏向反射面の長さよりも入射光の幅が大きい(例えば、特開平10−206778号公報、特開2003−279877号公報参照)。この場合、入射光における周辺の光は感光体ドラムに導光されない。
従来のUFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、主走査対応方向に関して、偏向反射面の長さを大きくする必要があるため、回転多面鏡における面数を少なくするか、回転多面鏡における内接円を大きくする必要があった。
しかしながら、上記面数を少なくすると、回転多面鏡の回転数を大きくしなければならないという不都合があった。一方、上記内接円を大きくすると、回転多面鏡の風損が増加し、消費電力が増加するという不都合があった。
また、従来のOFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、10面以上の回転多面鏡を用いる必要があるため、走査画角が小さくなり、光走査装置の大型化を招くという不都合があった。また、光の周辺部が使用されないため、光利用効率が低いという不都合もあった。
本実施形態における光走査装置2010では、従来のUFタイプの光走査装置よりも、回転多面鏡を小型化することができるとともに、従来のOFタイプの光走査装置よりも、走査画角を大きくすることができる。
以下では、本実施形態における光走査装置2010のように、回転多面鏡で反射された光が走査領域の中央部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光の全てを一の偏向反射面で反射させ、回転多面鏡で反射された光が走査領域の両端部のうちの少なくとも一側の端部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光を複数の偏向反射面で反射させるようなタイプを、「走査端OFタイプ」ともいう。
なお、光源2200d以外の光源から射出され対応する走査領域に向かう光についても、上記光源2200dから射出された光と同様に「走査端OFタイプ」となるように設定されている。
図22には、偏向反射面に対しS偏光のみの光を光偏向器に入射させた場合、及び、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合の各々について、光偏向器での「けられ」がないときに、走査光学系を介して被走査面に照射された光の中央像高に対する各像高での光量比の例が示されている。偏向反射面に対しS偏光のみの光を光偏向器に入射させた場合は、中央像高で光量が最も高く、周辺像高で光量が最も低くなる。一方、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合は、周辺像高で光量が最も高く、中央像高で光量が最も低くなる。
図23には、偏向反射面に対しS偏光のみの光を光偏向器に入射させた場合であって、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」があるとき、走査光学系を介して被走査面に照射された光の光量分布が模式図的に示されている。
図24には、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合であって、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」があるとき、走査光学系を介して被走査面に照射された光の光量分布が模式図的に示されている。
図23では、光偏向器での「けられ」により、被走査面上での光量の像高間偏差が大きくなっている。一方、図24では、光偏向器での「けられ」により、被走査面上での光量の像高間偏差が小さくなっている。すなわち、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合の方が、被走査面上での光量の像高間偏差が小さい。なお、いずれの光についても、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」による周辺像高での光量低下は同じである。
そこで、本実施形態では、光源が1つの発光部からなるシングルLD(Laser Diode)を有する場合は、光偏向器2104に入射する光が、偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分のほうが強い光となるように、光源における光の射出方向を回転軸とし、該回転軸まわりに光源を回転させている。
なお、従来の光走査装置では、シングルLDを有する光源は、射出される光が偏向反射面に対しS偏光になるように配置されていた。このとき、光源から射出される光の発散角は、主走査対応方向に関して大きく、副走査対応方向に関して小さい。
このように、光源がシングルLDを有する場合、光の射出方向を回転軸として光源を回転させて、偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分を強くし、走査光学系を介することにより生じる主走査対応方向に関する光量むらを、中央よりも周辺部で光量が高くなるように設定すると、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」により、被走査面上での光量の像高間偏差を小さくすることができる。
図25には、光源2200dがシングルLDを有する場合に、該光源から射出され、光制限部材2114に入射する光の様子が示されている。図26には、光源2200dが2つの発光部からなる2ch−LDアレイを有する場合に、該光源から射出され、光制限部材2114に入射する光の様子が示されている。ここでは、光源2200dから射出された光は、カップリングレンズ2201dによって平行光に変換されるものとする。以後、特に断りがなければ、同期検知センサ2115に向かう光は、平行光として扱う。
光源2200dから射出された光は、焦点距離に近い位置に配置されたカップリングレンズ2201dによって平行光に変換される。カップリングレンズ2201dの焦点距離は、シングルLDを有する場合の方が2ch−LDアレイを有する場合よりも短い。本実施形態では、一例として、光源2200dがシングルLDを有する場合のカップリングレンズ2201dの焦点距離fsを15mm、光源2200dが2ch−LDアレイを有する場合のカップリングレンズ2201dの焦点距離fmを27mmとした。
カップリングレンズ2201dから射出される光は、開口板2202dによって光の一部が遮光された後にシリンドリカルレンズ2204dに入射し、シリンドリカルレンズ2204dにより副走査対応方向にのみ集光した状態、すなわち主走査対応方向に長い線像の状態で、防音ガラス2120を通過して、光偏向器2104に入射する。
各開口板の開口部は、一例として図27に示されるように、主走査対応方向に関する長さがb、副走査対応方向に関する長さがaである矩形形状の開口部である。なお、開口部の長さa、長さb、及び形状は、対応する感光体ドラム表面におけるビームスポット径が狙いの値となるように設定される。
偏向反射面で反射されて同期検知センサ2115に向かう光は、XY面に正射影したとき、光偏向器2104での「けられ」によって、その幅が入射光に対して狭くなった状態で、第1走査レンズ2105dの主走査対応方向の端部近傍を通過し、光制限部材2114で一部が遮光されて、同期検知センサ2115に到達する。
ここで、仮に、光制限部材2114の開口部の形状を、従来と同様に矩形形状としてみる。例えば、図28に示されるように、主走査対応方向に関する長さがb’、副走査対応方向に関する長さがaである矩形形状の開口部とする。なお、主走査対応方向に関する長さb’は、光走査装置を構成する各光学素子における組付誤差や形状誤差などを考慮して決定される。例えば、開口板2202dの中心を通る主光線に着目し、光制限部材2114を配置する場所における主光線の主走査対応方向に関する位置ずれの公差積み上げ計算結果を基にして決定される。
また、光制限部材2114は、該光制限部材2114を通過後の主走査対応方向に関する光の幅を常に揃えることを目的として配置されている。そのため、副走査対応方向に関しては、光を制限する必要はない。そこで、開口部の副走査対応方向に関する長さは十分に広いものとしても良いが、ここでは、開口板の開口部に合わせて、副走査対応方向に関する長さをaとした。
図29には、光源がシングルLDを有し、該光源から射出される光が偏向反射面に対しS偏光になるように、光源が配置されている場合の、開口板2202dに入射する光の光強度分布が示されている。このとき、光源における光の発散角は、主走査対応方向に関して最も大きく、副走査対応方向に関して最も小さくなる。なお、このときの主走査対応方向に関する発散角を「θ⊥」と表記し、副走査対応方向に関する発散角を「θ//」と表記する。なお、発散角は通常は半値全角で表される。
図30には、光源がシングルLDを有し、該光源から射出される光が偏向反射面に対しS偏光になるように該光源が配置されている場合の、開口板2202dの開口部を通過した光(実線で囲まれている部分)の光強度分布が示されている。
シングルLDの発散角は主走査対応方向に関して大きく、開口板2202dの開口部の大きさも主走査対応方向に関して大きいため、開口板2202dの開口部を通過した光は、主走査対応方向における広い発光強度分布のうち、長さbで規定される光強度の高い領域の一部が切り出されたものとなる。
図31には、シングルLDを有する光源を、光の射出方向を回転軸として角度γだけ回転させた場合の、開口板2202dの開口部を通過した光(実線で囲まれている部分)の光強度分布が示されている。ここでは、角度γは、一例として82.806°である。シングルLDを有する光源は、該光源を角度γだけ回転させたことで、主走査対応方向に関する発散角は上記θ⊥よりも小さくなり、副走査対応方向に関する発散角は上記θ//よりも大きくなる。このときの、主走査対応方向及び副走査対応方向に関する発散角は、θ//、θ⊥、角度γの3つで規定される。仮に角度γが90°である場合、主走査対応方向に関する発散角はθ//、副走査対応方向に関する発散角はθ⊥となる。
このように、シングルLDを有する光源では、主走査対応方向に関する発散角が、光源の回転によって小さくなるが、開口板2202dの開口部の主走査対応方向に関する長さは変化しないため、開口板2202dの開口部を通過した光は、主走査対応方向における狭い発光強度分布のうち長さbで規定される領域の一部が切り出されたものとなる。
そのため、光源を回転配置させない場合に比べて、光強度の弱い部分も開口板2202dの開口部を通過する。この場合、光制限部材2114に入射する光に主走査対応方向の位置ずれがあると、光制限部材2114を通過した光の光強度は大きく変化する。
図32には、2ch−LDアレイを有する光源を、光の射出方向を回転軸として角度γだけ回転させた場合の、開口板2202dの開口部を通過した光の光強度分布が示されている。ここでは、角度γは、一例として82.806°である。
図32と図31を比較すると、2ch−LDアレイを有する光源を用いた方が、開口板2202dの開口部を通過する前の光の光強度分布に対する、図中の実線で囲まれた部分の割合は小さい。そのため、光制限部材2114に入射する光に主走査対応方向に関する位置ずれがあると、光制限部材2114の開口部を通過した光の光強度変化は、シングルLDを有する光源を用いた場合に比べて小さくなる。
これは、2ch−LDアレイを有する光源に対応するカップリングレンズの焦点距離が、シングルLDを有する光源に対応するカップリングレンズの焦点距離よりも長いため、開口板2202dの開口部の主走査対応方向に関する長さbとカップリングレンズの焦点距離で規定されるF値が、2ch−LDアレイを有する光源を用いた方が小さくなることによる。
従って、シングルLDを有する光源を用い、光偏向器2104に入射する光が、偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分のほうが強い光となるように、光源を光の射出方向を回転軸として、該回転軸まわりに回転させた場合、光制限部材2114に入射する光に主走査対応方向に関する位置ずれがあると、光制限部材2114の開口部を通過した後の光の光強度変化が大きくなる。そのため、同期検知センサ2115の出力変化も大きくなり、走査線における書き込み開始位置のずれに起因する画像劣化が懸念される。
図33には、光制限部材2114に入射する光に主走査対応方向に関する位置ずれがない場合の、光制限部材2114を通過する前後の光の様子が示されている。光偏向器2104での「けられ」によって、偏向反射面で反射されて同期検知センサ2115に向かう光の主走査対応方向に関する幅は、開口板2202dの開口部の主走査対応方向に関する長さbよりも小さくなった状態で光制限部材2114に入射する。
光制限部材2114の開口部を通過した光は、主走査対応方向に関する幅が、光制限部材2114の開口部の主走査対応方向に関する長さb’に狭まって、同期検知センサ2115に向かう。
図34(A)〜図34(C)には、光制限部材2114の開口部を通過する前後の光の様子と、光制限部材2114に入射する光における主走査対応方向に関する位置ずれとの関係が示されている。光制限部材2114の開口部を通過した光の主走査対応方向に関する幅は、主走査対応方向に関する位置ずれがあっても常に一定である。
主走査対応方向に関する位置ずれがない図34(A)の場合は、光制限部材2114の開口部によって主走査対応方向に関して切り出される部分(図中の実線で囲まれている部分)は、入射光の光強度分布のうち光強度の高い部分である。一方、主走査対応方向に関する位置ずれがある図34(B)及び図34(C)の場合は、光制限部材2114の開口部によって主走査対応方向に関して切り出される部分(図中の実線で囲まれている部分)は、入射光の光強度分布のうち強度の弱い部分も含んでしまう。
そのため、開口部の形状が矩形形状である従来の光制限部材では、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあると、該光制限部材の開口部を通過した光の光強度変化を低減するのが困難であった。なお、従来の光制限部材の開口部の主走査対応方向に関する長さb’を小さくしても、主走査対応方向に関して切り出される部分が小さくなり、入射光の主走査対応方向に関する位置ずれの影響をより強く受けてしまう。
そこで、本実施形態では、光制限部材2114の開口部の形状を、副走査対応方向に関する開口径が、主走査対応方向の中心部から周辺部に向かって連続的に大きくなる領域を有するように規定することで、入射光の主走査対応方向に関する位置ずれによる光制限部材2114の開口部の通過前後の光の強度変化を抑制し、走査線の書き込み開始位置のずれに起因する画像劣化を低減させた。
光制限部材2114の開口部の形状の具体例について図35〜図37を用いて説明する。なお、ここでは、a=1.64mm、b=2.82mm、b’=1.78mm、γ=82.806°とした。また、光源から射出される光が偏向反射面に対しS偏光となるように配置されたシングルLDを有する光源の、主走査対応方向に関する発散角θ⊥は半値全角で21°、副走査対応方向に関する発散角θ//は半値全角で7°である。
また、光制限部材2114に入射する光の主走査対応方向における最大移動量は、開口板2202dの中心を通る主光線に着目し、光制限部材2114を配置する場所における主光線の主走査対応方向における位置ずれの公差積み上げ計算結果を基にして0.518mmとした。なお、図35〜図37では、便宜上、光制限部材2114における主走査対応方向をM軸方向としている。
ところで、光制限部材の開口部を通過した光について、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがない場合の光強度と、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがある場合の光強度との比率を計算すると、開口部の形状が矩形形状である従来の光制限部材では、0.883であった。換言すれば、従来の光制限部材では、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあることで、光制限部材の開口部を通過した光の光強度は、最大で0.117だけ変化する。
図35には、光制限部材2114の開口部の例1が示されている。この例1では、矩形から、直線A(Z=AM+B)と直線B(Z=−AM+B)と+Z側の長辺とで囲まれる部分、及び直線C(Z=AM−B)と直線D(Z=−AM−B)と−Z側の長辺とで囲まれる部分を除いた領域のみ光を通過させるように、副走査対応方向に関する開口部の長さが、主走査対応方向の中心部((M、Z)=(0、0)の位置)から周辺部に向かって連続的に大きくなっている。
一例として、直線の傾きである係数Aは0.9、切片である係数Bは0.03である。この場合、光制限部材の開口部を通過した光について、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがない場合の光強度と、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがある場合の光強度との比率は、0.909であった。換言すれば、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあることで、光制限部材の開口部を通過した光の光強度は、最大で0.091だけ変化する。
図36には、光制限部材2114の開口部の例2が示されている。この例2では、矩形から、曲線A(Z=AM2+B)と+Z側長辺とで囲まれる部分、及び曲線B(Z=−AM2+B)と−Z側の長辺とで囲まれる部分を除いた領域のみ光を通過させるように、副走査対応方向に関する開口部の長さが、主走査対応方向の中心部((M、Z)=(0、0)の位置)から周辺部に向かって連続的に大きくなっている。
曲線A及び曲線Bは2次の多項式で表され、一例として、係数Aは2.5、係数Bは0.03である。この場合、光制限部材の開口部を通過した光について、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがない場合の光強度と、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがある場合の光強度の比率は、0.913であった。換言すれば、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあることで、光制限部材の開口部を通過した光の光強度は、最大で0.087だけ変化する。
図37には、光制限部材2114の開口部の例3が示されている。この例3では、矩形から、曲線A(Z=AM2+BM4+C)と+Z側の長辺とで囲まれる部分、及び曲線B(Z=−(AM2+BM4+C))と−Z側の長辺とで囲まれる部分を除いた領域のみ光を通過させるように、副走査対応方向に関する開口部の長さが、主走査対応方向の中心部((M、Z)=(0、0)の位置)から周辺部に向かって連続的に大きくなっている。
曲線Aと曲線Bは4次の多項式で表され、一例として、係数Aは2.0、係数Bは2.4、係数Cは0.03である。この場合、光制限部材の開口部を通過した光について、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがない場合の光強度と、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがある場合の光強度の比率は、0.914であった。換言すれば、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあることで、光制限部材の開口部を通過した光の光強度は、最大で0.086だけ変化する。
ここで、0.117と0.086との差分を取ると0.031となり、これを0.117で割ると、0.265となる。つまり、開口部が例3の光制限部材を用いると、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあることによる、光制限部材の開口部を通過した光の光強度の変化は、従来の光制限部材に対して26.5%改善されることとなる。
このように、本実施形態の光制限部材2114は、光制限部材を通過する前後の光について、入射光に主走査対応方向に関する位置ずれがあることによる、光強度の変化を抑制することができる。そこで、同期検知センサ2115の出力変化を低減し、走査線の書き込み開始位置のずれに起因する画像劣化を低減させることができる。
光源が複数の発光部を有するマルチビームの場合、発光部毎に同期検知信号を取得するのではなく、任意の一の発光部についてのみ同期検知信号を取得し、該取得した同期検知信号を基に全ての発光部における書き込み開始タイミングを決定する。このときは、前記任意の一の発光部から射出される光の主走査対応方向に関する位置ずれの結果のみを用いて、光制限部材2114の主走査対応方向に関する開口径を設定すれば良いことになる。
この場合は、各発光部から射出される光の主走査対応方向に関する位置ずれの結果を基に光制限部材2114の主走査対応方向に関する開口部の長さを決定する場合に比べて、光制限部材2114で光を遮光する範囲を狭くすることができる。そのため、同期検知センサ2115の出力低下を抑制でき、SN比の低下に起因する同期検知精度の劣化を防ぐことができる。
仮に、光源が2ch−LDアレイを有する場合について説明する。2ch−LDアレイの一方の発光部をch1、他方の発光部をch2とする。光源は、被走査面上で所望の書込密度が実現されるように、一般的に光の進行方向を回転軸として、該軸周りに回転させた状態で取り付けられている。そのため、ch1及びch2から射出された光は、光偏向器によって同期検知センサ2115に向けて偏向され、異なるタイミングで同期検知センサに到達する。
また、ch2から射出された光の方が、ch1から射出された光よりも早く同期検知センサ2115に到達し、ch1から射出された光は、ch2から射出された光が到達してから時間Δt経過後に同期検知センサ2115に到達するものとする。該時間Δtは、設計段階で知り得る情報である。
ここで、同期検知信号を取得する対象の発光部としてch2を選択する。回転多面鏡は等角速度で回転しているため、同期検知信号では一定時間毎に立ち上がりが発生する。走査制御装置は、同期検知信号における立ち上がりを検知すると、一定時間t1の経過後にch2に対する光源駆動信号を送出する。
ch1から射出された光はch2から射出された光が到達してから時間Δt経過後に同期検知センサ2115に到達することが予めわかっているため、走査制御装置は、ch2に対する光源駆動信号を送出してから時間Δt経過後に、ch1に対する光源駆動信号を送出する。このように、ch1で同期検知信号を取得しなくてもch2における同期検知信号の情報だけで、各走査ラインの書き出しタイミングを適切に設定することができる。
また、本実施形態では、光制限部材2114は光学ハウジング2300と一体に形成されている。この場合は、光制限部材2114の位置精度を向上させることができる。そして、光制限部材2114では光を遮光する範囲を狭くすることができるため、同期検知センサ2115の出力低下を抑制でき、SN比の低下に起因する同期検出精度の低下を防ぐことができる。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置では、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、該4つの光源に個別に対応した4つの偏向器前光学系、光偏向器2104、4つの光源に個別に対応した4つの走査光学系、開口部を有する光制限部材2114、同期光を受光する同期検知センサ2115などを備えている。
各光源は、少なくとも1つの発光部を有し、光偏向器2104の偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分が強い光を射出する。そして、光源2200dから射出され、光偏向器2104で偏向された同期光は、光制限部材2114の開口部を通過して同期検知センサ2115で受光される。この同期光は、光偏向器2104で偏向される際に一部が「けられ」るように設定されている。また、光制限部材2114の開口部は、副走査対応方向に関する長さが、主走査対応方向における中心部から周辺部に向かって連続的に大きくなる部分を有している。
この場合は、同期光に主走査方向に関する位置ずれがあっても、同期検知精度を維持することができる。
そして、回転多面鏡の回転軸に直交する面(ここでは、XY面)に正射影すると、回転多面鏡に入射する光の幅は、偏向反射面の主走査対応方向に関する長さよりも小さい。また、回転多面鏡で反射された光が走査領域の中央部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光の全てが一の偏向反射面で反射され、回転多面鏡で反射された光が走査領域の端部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光が前記一の偏向反射面を含む複数の偏向反射面で反射される。
この場合は、大型化や高コスト化を招くことなく、被走査面を高速で、精度良く光走査することができる。
そして、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、大型化や高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することができる。
なお、上記実施形態において、一例として図38に示されるように、第1走査レンズ2105dと同期検知センサ2115との間に、光を主走査対応方向に関して収束させる機能を有する同期光学系2116を配置しても良い。この場合、主走査対応方向に関して光が同期検知センサ2115からはみ出すことを抑制することができる。そこで、同期検知センサ2115の出力が増大し、SN比の低下に起因する同期検知精度の低下を抑制することができる。また、同期検知センサ2115の主走査対応方向に関する大きさを小さくすることが可能となり、同期検知センサ2115の応答性を向上させることができる。
このとき、同期光学系2116に面倒れ補正機能を持たせると、一例として図39に示されるように、回転多面鏡にある程度の面倒れがあっても、同期検知センサ2115に光を導くことが可能となり、面倒れによる同期検知センサ2115の出力低下を抑制することができる。そこで、SN比の低下に起因する同期検知精度の低下を更に抑制することができる。
同期光学系2116は、一例として図40に示されるように、光制限部材2114と同期検知センサ2115との間の光路上に配置されても良いし、一例として図41に示されるように、第1走査レンズ2105dと光制限部材2114との間の光路上に配置されても良い。
特に、光制限部材2114と同期検知センサ2115との間の光路上に同期光学系2116を配置すると、光制限部材2114が同期光学系2116と光偏向器2104との間に配置されることとなり、光を所望の量だけ確実に遮光することができる。この場合、不必要に光を遮ることによる同期検知センサ2115の出力低下を抑制することができる。また、光制限部材2114の取り付け誤差や形状誤差に起因する同期検知センサ2115の出力ばらつきを小さくすることができる。
また、上記実施形態では、同期光学系2116の焦点距離を、第1走査レンズ2105dの焦点距離よりも短くしている。この場合は、同期検知センサ2115の受光面上での光の走査速度が遅くなるため、同期検知センサ2115の受光光量を大きくすることが可能となる。そのため、同期検知センサ2115の出力が増大してSN比が向上し、同期検知精度を向上させることができる。
そして、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、大型化や高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することができる。
なお、上記実施形態において、一例として図42に示されるように、同期検知センサ2115が、走査領域に対して光源側に配置されていても良い。
図43には、この場合に、光偏向器2104で偏向された光が、同期検知センサ2115に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面7で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、同期検知センサ2115に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、dout=1.4mmである。
この場合、偏向反射面に対して、光が鋭角に入射するため、光走査装置を構成する任意の一の光学素子に組付誤差や形状誤差があっても、主走査対応方向に関する光の位置ずれ量を低減することができ、光制限部材2114の開口部を拡大することが可能となる。そこで、同期検知センサ2115の出力が増大してSN比が向上し、同期検知精度を向上させることができる。
また、上記実施形態では、光偏向器2104で偏向されて走査領域の両端部に向かう光が光偏向器2104で「けられ」る場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光偏向器2104で偏向されて走査領域のいずれかの端部に向かう光が光偏向器2104で「けられ」ても良い。この場合であっても、従来のアンダーフィルドタイプの光走査装置よりも、回転多面鏡を小型化することができる。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に7面の鏡面が形成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態における具体例の各種数値は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、光源にモノリシックな端面発光レーザアレイや面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてタンデム方式のカラープリンタの場合について説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置がモノクロのプリンタであっても良い。また、画像形成装置が複写機及びファクシミリ装置であっても良い。
また、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。