以下、本発明の一実施形態を図1〜図23に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る複合機2000の概略構成が示されている。
この複合機2000は、複写機、プリンタ、及びファクシミリの機能を有し、本体装置1001、読取装置1002、及び自動原稿給紙装置1003などを備えている。
本体装置1001は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、中間転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
読取装置1002は、本体装置1001の上側に配置され、原稿を読み取る。すなわち、読取装置1002は、いわゆるスキャナ装置である。ここで読み取られた原稿の画像情報は、本体装置1001のプリンタ制御装置2090に送られる。
自動原稿給紙装置1003は、読取装置1002の上側に配置され、セットされた原稿を読取装置1002に向けて送り出す。この自動原稿給紙装置1003は、一般にADF(Auto Document Feeder)と呼ばれている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信、及び公衆回線を介した他の装置との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、読取装置1002からの画像情報あるいは通信制御装置2080を介した画像情報を光走査装置2010に送る。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光により、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。すなわち、ここでは、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面であり、各感光体ドラムが像担持体である。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
ところで、各感光体ドラムにおいて、光によって走査される領域は「走査領域」と呼ばれ、該走査領域のなかで画像情報が書き込まれる領域は、「有効走査領域」、「画像形成領域」、「有効画像領域」などと呼ばれている。また、各感光体ドラムにおける回転軸に平行な方向は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラムの回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジ(図示省略)からのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って中間転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで中間転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで中間転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、中間転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、2つの光源(2200A、2200B)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、8枚の折り返しミラー(2106A、2106B、2107a、2107b、2107c、2107d、2108a、2108d)、2つの同期検知センサ(2115A、2115B)、2つの同期光学系(2116A、2116B)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジングの所定位置に組み付けられている。
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、光偏向器2104の回転軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。また、以下では、便宜上、各光学部材において、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
光源2200Aと光源2200Bは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。各光源は、いずれも2つの発光部を有しており、少なくともZ軸方向に関して離間している2つの光束を射出する。
ここでは、光源2200Aから射出される2つの光束のうち、+Z側の光束を「光束La」といい、−Z側の光束を「光束Lb」という。また、光源2200Bから射出される2つの光束のうち、+Z側の光束を「光束Ld」といい、−Z側の光束を「光束Lc」という。
カップリングレンズ2201aは、光源2200Aから射出された光束Laの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。カップリングレンズ2201bは、光源2200Aから射出された光束Lbの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。カップリングレンズ2201cは、光源2200Bから射出された光束Lcの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。カップリングレンズ2201dは、光源2200Bから射出された光束Ldの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
シリンドリカルレンズ2204aは、カップリングレンズ2201aを介した光束Laの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。シリンドリカルレンズ2204bは、カップリングレンズ2201bを介した光束Lbの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。シリンドリカルレンズ2204cは、カップリングレンズ2201cを介した光束Lcの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。シリンドリカルレンズ2204dは、カップリングレンズ2201dを介した光束Ldの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。
開口板2202aは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204aを介した光束Laを整形する。開口板2202bは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204bを介した光束Lbを整形する。開口板2202cは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204cを介した光束Lcを整形する。開口板2202dは、開口部を有し、シリンドリカルレンズ2204dを介した光束Ldを整形する。
各開口板の開口部を通過した光束は、光偏向器2104に入射する。
各光源と光偏向器2104との間の光路上に配置されている光学系は、「偏向器前光学系」とも呼ばれている。
光偏向器2104は、2段構造の回転多面鏡を有している。各回転多面鏡には6つの鏡面がそれぞれ形成されており、各鏡面が偏向反射面である。そして、1段目(下段)の回転多面鏡では、光束Lb及び光束Lcがそれぞれ偏向され、2段目(上段)の回転多面鏡では、光束La及び光束Ldがそれぞれ偏向されるように配置されている。各回転多面鏡は、図2における面内で矢印方向に回転する。
ここでは、光束La及び光束Lbは光偏向器2104の+X側に偏向され、光束Lc及び光束Ldは光偏向器2104の−X側に偏向される。
走査レンズ2105a及び走査レンズ2105bは、光偏向器2104の+X側に配置され、走査レンズ2105c及び走査レンズ2105dは、光偏向器2104の−X側に配置されている。
そして、走査レンズ2105aと走査レンズ2105bはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105aは2段目の回転多面鏡に対向し、走査レンズ2105bは1段目の回転多面鏡に対向している。また、走査レンズ2105cと走査レンズ2105dはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105cは1段目の回転多面鏡に対向し、走査レンズ2105dは2段目の回転多面鏡に対向している。
光偏向器2104で偏向された光束Laは、走査レンズ2105a、折り返しミラー2106A、折り返しミラー2107a、及び折り返しミラー2108aを介して、感光体ドラム2030aに照射される。
光偏向器2104で偏向された光束Lbは、走査レンズ2105b、折り返しミラー2106A、及び折り返しミラー2107bを介して、感光体ドラム2030bに照射される。
光偏向器2104で偏向された光束Lcは、走査レンズ2105c、折り返しミラー2106B、及び折り返しミラー2107cを介して、感光体ドラム2030cに照射される。
光偏向器2104で偏向された光束Ldは、走査レンズ2105d、折り返しミラー2106B、折り返しミラー2107d、及び折り返しミラー2108dを介して、感光体ドラム2030dに照射される。
各感光体ドラム上の光スポットは、回転多面鏡の回転に伴って主走査方向に沿って移動する。感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bでは、−Y方向に光走査が行われ、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dでは、+Y方向に光走査が行われる(図6参照)。
そこで、Z軸に直交する平面に正射影したとき、光偏向器2104で偏向され同期検知センサ2115Aに向かう光束の進行方向と光偏向器2104に入射する光束の入射方向とのなす角度は、光偏向器2104で偏向され走査領域に向かう光束の進行方向と光偏向器2104に入射する光束の入射方向とのなす角度よりも小さい。
一方、Z軸に直交する平面に正射影したとき、光偏向器2104で偏向され同期検知センサ2115Bに向かう光束の進行方向と光偏向器2104に入射する光束の入射方向とのなす角度は、光偏向器2104で偏向され走査領域に向かう光束の進行方向と光偏向器2104に入射する光束の入射方向とのなす角度よりも大きい。
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置されている光学系は、「走査光学系」とも呼ばれている。
同期検知センサ2115Aは、光偏向器2104で偏向された光束Laであって、感光体ドラム2030aへの書き込み開始前の光束が入射する位置に配置されている。なお、以下では、同期検知センサ2115Aに入射する上記光束を「同期光束La」ともいう。
同期光学系2116Aは、光偏向器2104と同期検知センサ2115Aとの間の同期光束Laの光路上に配置され、同期光束Laを集光する。
同期検知センサ2115Bは、光偏向器2104で偏向された光束Ldであって、感光体ドラム2030dへの書き込み開始前の光束が入射する位置に配置されている。なお、以下では、同期検知センサ2115Bに入射する上記光束を「同期光束Ld」ともいう。
同期光学系2116Bは、光偏向器2104と同期検知センサ2115Bとの間の同期光束Ldの光路上に配置され、同期光束Ldを集光する。
各同期検知センサは、受光光量に応じた信号を走査制御装置に出力する。走査制御装置は、同期検知センサ2115Aの出力信号に基づいて、感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bへの書き込み開始タイミングを求める。また、走査制御装置は、同期検知センサ2115Bの出力信号に基づいて、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dへの書き込み開始タイミングを求める。
図7に示されるように、Z軸方向に直交する平面に正射影したとき、光源から射出され、光偏向器2104に入射する光束の進行方向(入射方向)と基準軸方向とのなす角をθinと表記する。なお、基準軸は、各回転多面鏡の回転中心を通り主走査方向に直交する方向に平行な軸である。そこで、ここでは、基準軸方向はX軸方向と同じである。
また、図8に示されるように、Z軸方向に直交する平面に正射影したとき、各開口板の開口部を通過した光束の幅をdinと表記する。この光束が光偏向器2104に入射する。ここでは、din=3.8mmとなるように設定されている。dinは、1つの偏向反射面の幅(主走査対応方向に関する長さ)よりも小さい。
各回転多面鏡に内接する円(図9参照)の直径は18mmである。そこで、各回転多面鏡では、回転中心から各偏向反射面に下ろした垂線の長さは9mmである。また、各回転多面鏡において、6つの偏向反射面を区別する必要があるときは、回転方向と逆まわりに面1、面2、面3、面4、面5、面6とする(図9参照)。
次に、光源2200Bから射出され、光偏向器2104に入射する光束と、光偏向器2104で偏向された光束について図10〜図13を用いて説明する。ここでは、回転多面鏡の面1で反射された光束が、同期検知センサ2115B及び対応する感光体ドラムの走査領域に向かうものとする。
図10には、光偏向器2104で偏向された光束が、同期検知センサ2115Bに向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と同期光束Ldとが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面6に入射するように設定されている。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸方向とのなす角をθBDと表記する。
図11には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面6に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査開始位置に向かう光束の幅dsは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸方向とのなす角をθsと表記する。
図12には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かう光束の幅dcは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の「けられ」はない。
図13には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面2に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査終了位置に向かう光束の幅deは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸方向とのなす角をθeと表記する。
|θs|+|θe|は、いわゆる走査画角に対応する角度である(図14参照)。また、|θs|及び|θe|は、「走査半画角」と呼ばれている。
ここでは、感光体ドラムの走査領域における走査開始位置は、主走査方向に関する該走査領域の−Y側端部であり、感光体ドラムの走査領域における走査終了位置は、主走査方向に関する該走査領域の+Y側端部である。
ここで、図15に示されるように、1つの内角がαの回転多面鏡の第1の偏向反射面と第2の偏向反射面とに光源2200Bからの光束が入射し、第2の偏向反射面で反射された光束が同期光束Ldとなり、光源2200Bからの光束の入射方向が第2の偏向反射面に直交する場合を考える。このとき、第2の偏向反射面で反射された光束は光源2200Bへの戻り光となる。なお、便宜的に、|θin|+|θBD|をAとする。
この場合、次の(1)式が成立する。
α+β+A+90=360 ……(1)
図15における角度βは、次の(2)式で示される。
β=(180−A)/2 ……(2)
また、回転多面鏡がN個の偏向反射面を有すると、図15における角度αは、次の(3)式で示される。
α=(180×(N−2))/N ……(3)
上記(2)式及び(3)式を上記(1)式に代入すると、次の(4)式が得られる。
A=720/N ……(4)
すなわち、|θin|+|θBD|の値が720/Nとなるときは、光偏向器2104で「けられ」た光束が光源2200Bに戻ることとなる。そこで、|θin|+|θBD|≠720/N、であることが必要である。
また、走査画角を大きくするには、|θin|及び|θBD|が大きいのが好ましい。そこで、本実施形態では、次の(5)式が満足されるように設定されている。このとき、光偏向器2104で「けられ」た光束の進行方向と基準軸方向とのなす角度は、θinよりも小さい。
|θin|+|θBD|>720/N ……(5)
さらに、光偏向器2104で「けられ」た光束が走査領域に向かわないように、本実施形態では、次の(6)式が満足されるように設定されている。このとき、光偏向器2104で「けられ」た光束の進行方向と基準軸方向とのなす角度は、θeよりも大きい。
|θBD|+|θe|<720/N ……(6)
図16(A)〜図16(C)には、具体例1が示されている。この具体例1では、|θin|=70°、|θBD|=60°、|θs|=50°、|θe|=50°である。
このとき、720/N=120、|θin|+|θBD|=130°、|θBD|+|θe|=110°であり、上記(5)式及び(6)式が満足されている。
また、光偏向器2104で偏向された光束が同期検知センサ2115Bに向かうタイミングで、光偏向器2104で「けられ」た光、すなわち、隣接する偏向反射面で反射された不要な光(以下では、「隣接面ゴースト光」ともいう)の進行方向と基準軸方向とのなす角θgは60°である。すなわち、θe<θg<θinの関係があり、隣接面ゴースト光が、光源に対する戻り光となったり、走査領域に向かうことはない。
ところで、次の(7)式が満足されるように同期検知センサ2115Bを配置することにより、上記(5)式及び(6)式を満足させることができる。
720/N−|θin|<|θBD|<720/N−|θe| ……(7)
図17(A)〜図17(C)には、比較例1が示されている。この比較例1では、|θin|=55°、|θBD|=50°、|θs|=40°、|θe|=40°である。
このとき、720/N=120、|θin|+|θBD|=105°、|θBD|+|θe|=90°であり、上記(6)式は満足されているが、上記(5)式は満足されていない。
また、光偏向器2104で偏向された光束が同期検知センサ2115Bに向かうタイミングで、隣接する偏向反射面で反射された不要な光(隣接面ゴースト光)の進行方向とX軸とのなす角θgは70°である。すなわち、θg>θinである。
上記具体例1は、上記比較例1に比べて、|θs|及び|θe|を大きくし、光偏向器2104から感光体ドラムまでの光路長を短くすることができる。その結果、光走査装置を小型化することができる。
隣接面ゴースト光が光源への戻り光になると、光源の光量制御が不安定になる。また、隣接面ゴースト光が入射角より大きい角度で反射されると、走査画角が小さくなり、光偏向器2104から感光体ドラムまでの光路長が長くなる。
図18には、本実施形態において、光源2200Bから射出され光偏向器2104で偏向された走査開始前の光束が同期検知センサ2115Bで受光されるタイミングでの、隣接面ゴースト光の進行方向と光偏向器2104に入射する光束の入射方向と走査領域との関係が示されている。
次に、光源2200Aから射出され、光偏向器2104に入射する光束と、光偏向器2104で偏向された光束について図19〜図22を用いて説明する。ここでは、回転多面鏡の面1で反射された光束が、同期検知センサ2115A及び対応する感光体ドラムの走査領域に向かうものとする。
図19には、光偏向器2104で偏向された光束が、同期検知センサ2115Aに向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と同期光束Laとが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面6に入射するように設定されている。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
図20には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面6に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査開始位置に向かう光束の幅dsは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
図21には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かう光束の幅dcは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の「けられ」はない。
図22には、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面2に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査終了位置に向かう光束の幅deは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
光源2200Aから射出され光偏向器2104に入射する光束の入射角|θin|は、光源2200Bから射出され光偏向器2104に入射する光束の入射角|θin|と同じである。そこで、上記具体例1の場合は、光源2200Aから射出され光偏向器2104に入射する光束の入射角|θin|も70°である。そして、|θs|=50°、|θe|=50°である。
図23には、本実施形態において、光源2200Aから射出され光偏向器2104で偏向された走査開始前の光束が同期検知センサ2115Aで受光されるタイミングでの、隣接面ゴースト光の進行方向と光偏向器2104に入射する光束の入射方向と走査領域との関係が示されている。
ところで、従来のUFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、主走査方向に対応する方向に関して、偏向反射面の長さを大きくする必要があるため、回転多面鏡における面数を少なくするか、回転多面鏡における内接円の直径を大きくする必要があった。
しかしながら、上記面数を少なくすると、回転多面鏡の回転数を大きくしなければならない不都合があった。一方、上記内接円の直径を大きくした場合は、回転多面鏡の風損が増加し、消費電力が増加するという不都合があった。なお、光源数を増やし1つの偏向反射面で偏向されるビーム数を多くすることが考えられるが、光源数の増加とともに光源の駆動回路も大型化し、高コスト化を招く。
また、従来のOFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、10面以上の回転多面鏡を用いる必要があるため、走査画角が小さくなり、光走査装置の大型化を招くという不都合があった。また、光束の周辺部が使用されないため、光利用効率が低いという不都合があった。
本実施形態における光走査装置2010では、(1)従来のUFタイプの光走査装置よりも、回転多面鏡を小型化することができる。そのため、消費電力を増加させることなく、回転多面鏡を高速で回転させることが可能となる。そして、光源数を増加させることなく、すなわち、高コスト化を招くことなく、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応することができる。
また、本実施形態における光走査装置2010では、(2)従来のOFタイプの光走査装置よりも、走査画角を大きくすることができる。そのため、大型化を招くことなく、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010は、2つの光源(2200A、2200B)、偏向器前光学系、回転多面鏡を有する光偏向器2104、2つの同期検知センサ(2115A、2115B)、及び走査光学系などを備えている。
そして、回転多面鏡で反射され同期検知センサ2115Bに向かう光束の進行方向と光源2200Bから射出され回転多面鏡に入射する光束の入射方向とのなす角度は、回転多面鏡で反射され走査領域に向かう光束の進行方向と光源2200Bから射出され回転多面鏡に入射する光束の入射方向とのなす角度よりも大きい。
また、同期検知センサ2115Bによる同期検知の際には、光源2200Bから射出された走査開始前の光束が回転多面鏡の面1(第1反射面)と該面1に隣接する面6(第2反射面)とに同時に入射し、面1で反射された光束が同期検知センサ2115Bで受光されるように設定されている。
さらに、同期検知センサ2115Bによる同期検知の際に、Z軸に直交する平面に正射影したとき、面6で反射された光束である隣接面ゴースト光の進行方向と基準軸方向とのなす角度は、光源2200Bから射出され回転多面鏡に入射する光束の入射方向と基準軸方向とのなす角度よりも小さくなるように設定されている。
そして、光源2200Bから射出され光偏向器2104に入射する光束の入射方向と基準軸方向とのなす角|θin|、及び回転多面鏡で反射され同期検知センサ2115Bに向かう光束の進行方向と基準軸方向とのなす角|θBD|は、上記(5)式が満足されるように設定されている。このとき、|θBD|は、回転多面鏡で反射され走査終了位置に向かう光束の進行方向と基準軸方向とのなす角|θe|に対して上記(6)式が満足されるように設定されている。
この場合は、同期検知センサ2115Bによる同期検知の際に、回転多面鏡で反射された光束の一部が光源2200Bに戻るのを抑制することができる。また、同期検知センサ2115Bによる同期検知の際に、回転多面鏡で反射された光束の一部が対応する感光体ドラムに向かうのを抑制することができる。さらに、走査画角を大きくすることができる。そこで、光走査装置2010によると、画像品質の低下を招くことなく更なる小型化及び高速化を図ることができる。
また、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光束の全てが、一の偏向反射面で反射され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の各端部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光束が、前記一の偏向反射面と前記一の偏向反射面に隣接する他の偏向反射面とで反射されるように設定されている。
この場合は、回転多面鏡を小型化するとともに、走査画角を更に大きくすることができる。
そして、複合機2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、画像品質を低下させることなく、小型化及び高速化を図ることができる。
なお、上記実施形態では、走査領域における走査開始位置に向かうタイミング及び走査終了位置に向かうタイミングの両方において、入射光束が光偏向器2104で「けられ」る場合について説明したが、これに限定されるものではなく、走査領域における走査開始位置に向かうタイミング及び走査終了位置に向かうタイミングのいずれかにおいて、入射光束が光偏向器2104で「けられ」ても良い。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に内接する円の直径が18mmの場合について説明したがこれに限定されるものではない。必要とされる走査半画角に応じて、回転多面鏡に内接する円の直径を設定することができる。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に6面の鏡面が形成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、回転多面鏡に7面の鏡面が形成されていても良い。
図24(A)〜図24(C)には、回転多面鏡に7面の鏡面が形成されている場合の具体例2が示されている。この具体例2では、|θin|=60°、|θBD|=50°、|θs|=40°、|θe|=40°である。
このとき、720/N≒102.9、|θin|+|θBD|=110°、|θBD|+|θe|=90°であり、上記(5)式及び(6)式が満足されている。
また、光偏向器2104で偏向された光束が同期検知センサ2115Bに向かうタイミングで、隣接する偏向反射面で反射された不要な光(隣接面ゴースト光)の進行方向とX軸とのなす角θgは52.9°である。すなわち、θe<θg<θinの関係があり、隣接面ゴースト光が、光源2200Bに対する戻り光となったり、走査領域に向かうことはない。
図25(A)〜図25(C)には、回転多面鏡に7面の鏡面が形成されている場合の比較例2が示されている。この比較例2では、|θin|=55°、|θBD|=40°、|θs|=30°、|θe|=30°である。
このとき、720/N≒102.9、|θin|+|θBD|=95°、|θBD|+|θe|=70°であり、上記(6)式は満足されているが、上記(5)式は満足されていない。
また、光偏向器2104で偏向された光束が同期検知センサ2115Bに向かうタイミングで、隣接する偏向反射面で反射された不要な光(隣接面ゴースト光)の進行方向と基準軸方向とのなす角θgは92.9°である。すなわち、θg>θinである。
上記具体例2は、上記比較例2に比べて、|θs|及び|θe|を大きくし、光偏向器2104から感光体ドラムまでの光路長を短くすることができる。その結果、光走査装置を小型化することができる。
また、上記実施形態において、光源にモノリシックな端面発光レーザアレイや面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、それぞれ2つの発光部を有する2つの光源が用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、それぞれ1つの発光部を有する4つの光源を用いても良い。また、それぞれ1つの発光部を有する2つの光源を用い、各光源から射出される光束を2分割しても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置として複合機の場合について説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置が、単独の複写機、プリンタ、及びファクシミリ装置であっても良い。
また、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。