以下、本発明の一実施形態を図1〜図37に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る複合機2000の概略構成が示されている。
この複合機2000は、複写機、プリンタ、及びファクシミリの機能を有し、本体装置1001、読取装置1002、及び自動原稿給紙装置1003などを備えている。
本体装置1001は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、中間転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
読取装置1002は、本体装置1001の上側に配置され、原稿を読み取る。すなわち、読取装置1002は、いわゆるスキャナ装置である。ここで読み取られた原稿の画像情報は、本体装置1001のプリンタ制御装置2090に送られる。
自動原稿給紙装置1003は、読取装置1002の上側に配置され、セットされた原稿を読取装置1002に向けて送り出す。この自動原稿給紙装置1003は、一般にADF(Auto Document Feeder)と呼ばれている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信、及び公衆回線を介した他の装置との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、読取装置1002からの画像情報あるいは通信制御装置2080を介した画像情報を光走査装置2010に送る。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光により、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。すなわち、ここでは、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面であり、各感光体ドラムが像担持体である。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
ところで、各感光体ドラムにおいて、光によって走査される領域は「走査領域」と呼ばれている。また、各感光体ドラムにおける回転軸に平行な方向は「主走査方向」と呼ばれ、各感光体ドラムの回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジ(図示省略)からのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って中間転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで中間転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで中間転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、中間転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、2つの光源(2200A、2200B)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、8枚の折り返しミラー(2106A、2106B、2107a、2107b、2107c、2107d、2108a、2108d)、2つの同期検知センサ(2115A、2115B)、2つの同期光学系(2116A、2116B)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング2300の所定位置に組み付けられている。
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、光偏向器2104の回転軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。また、以下では、便宜上、各光学部材において、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
光源2200Aと光源2200Bは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。各光源は、いずれも2つの発光部を有しており、少なくともZ軸方向に関して離間している2つの光束を射出する。
ここでは、光源2200Aから射出される2つの光束のうち、+Z側の光束を「光束La」といい、−Z側の光束を「光束Lb」という。また、光源2200Bから射出される2つの光束のうち、+Z側の光束を「光束Ld」といい、−Z側の光束を「光束Lc」という。
カップリングレンズ2201aは、光源2200Aから射出された光束Laの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。カップリングレンズ2201bは、光源2200Aから射出された光束Lbの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。カップリングレンズ2201cは、光源2200Bから射出された光束Lcの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。カップリングレンズ2201dは、光源2200Bから射出された光束Ldの光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
開口板2202aは、開口部を有し、カップリングレンズ2201aを介した光束Laの大きさを規制する。開口板2202bは、開口部を有し、カップリングレンズ2201bを介した光束Lbの大きさを規制する。開口板2202cは、開口部を有し、カップリングレンズ2201cを介した光束Lcの大きさを規制する。開口板2202dは、開口部を有し、カップリングレンズ2201dを介した光束Ldの大きさを規制する。
シリンドリカルレンズ2204aは、開口板2202aの開口部を通過した光束Laの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。シリンドリカルレンズ2204bは、開口板2202bの開口部を通過した光束Lbの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。シリンドリカルレンズ2204cは、開口板2202cの開口部を通過した光束Lcの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。シリンドリカルレンズ2204dは、開口板2202dの開口部を通過した光束Ldの光路上に配置され、該光束をZ軸方向に関して集光する。
各シリンドリカルレンズを介した光束は、光偏向器2104に入射する。
各光源と光偏向器2104との間の光路上に配置されている光学系は、「偏向器前光学系」とも呼ばれている。
光偏向器2104は、2段構造の回転多面鏡を有している。各回転多面鏡には7つの鏡面がそれぞれ形成されており、各鏡面が偏向反射面である。そして、1段目(下段)の回転多面鏡では、光束Lb及び光束Lcがそれぞれ偏向され、2段目(上段)の回転多面鏡では、光束La及び光束Ldがそれぞれ偏向されるように配置されている。各回転多面鏡は、図2における面内で矢印方向に回転する。
ここでは、光束La及び光束Lbは光偏向器2104の+X側に偏向され、光束Lc及び光束Ldは光偏向器2104の−X側に偏向される。
走査レンズ2105a及び走査レンズ2105bは、光偏向器2104の+X側に配置され、走査レンズ2105c及び走査レンズ2105dは、光偏向器2104の−X側に配置されている。
そして、走査レンズ2105aと走査レンズ2105bはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105aは2段目の回転多面鏡に対向し、走査レンズ2105bは1段目の回転多面鏡に対向している。また、走査レンズ2105cと走査レンズ2105dはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105cは1段目の回転多面鏡に対向し、走査レンズ2105dは2段目の回転多面鏡に対向している。
光偏向器2104で偏向された光束Laは、走査レンズ2105a、折り返しミラー2106A、折り返しミラー2107a、及び折り返しミラー2108aを介して、感光体ドラム2030aに照射される。
光偏向器2104で偏向された光束Lbは、走査レンズ2105b、折り返しミラー2106A、及び折り返しミラー2107bを介して、感光体ドラム2030bに照射される。
光偏向器2104で偏向された光束Lcは、走査レンズ2105c、折り返しミラー2106B、及び折り返しミラー2107cを介して、感光体ドラム2030cに照射される。
光偏向器2104で偏向された光束Ldは、走査レンズ2105d、折り返しミラー2106B、折り返しミラー2107d、及び折り返しミラー2108dを介して、感光体ドラム2030dに照射される。
各感光体ドラム上の光スポットは、回転多面鏡の回転に伴って主走査方向に沿って移動する。感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bでは、−Y方向に光走査が行われ、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dでは、+Y方向に光走査が行われる(図6参照)。
感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bの走査領域における走査開始位置は、主走査方向に関する該走査領域の+Y側端部であり、走査終了位置は、主走査方向に関する該走査領域の−Y側端部である。
感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dの走査領域における走査開始位置は、主走査方向に関する該走査領域の−Y側端部であり、走査終了位置は、主走査方向に関する該走査領域の+Y側端部である。
被走査面上の走査領域における主走査方向の位置は像高と呼ばれている。そして、以下では、主走査方向に関して、走査領域の中央位置を「中央像高」ともいい、走査領域の両端部を「周辺像高」ともいう。なお、一般的に、像高は、中央像高を0とする座標で表現される。例えば、主走査方向に関する走査領域の長さが340mmの場合、中央像高が0mm、一側の周辺像高が+170mm、他側の周辺像高が−170mmである。
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置されている光学系は、「走査光学系」とも呼ばれている。
同期検知センサ2115Aは、光偏向器2104で偏向された光束Laであって、感光体ドラム2030aへの書き込み開始前の光束が入射する位置に配置されている。なお、以下では、同期検知センサ2115Aに入射する上記光束を「同期光束La」ともいう。
同期光学系2116Aは、光偏向器2104と同期検知センサ2115Aとの間の同期光束Laの光路上に配置され、同期光束Laを集光する。
同期検知センサ2115Bは、光偏向器2104で偏向された光束Ldであって、感光体ドラム2030dへの書き込み開始前の光束が入射する位置に配置されている。なお、以下では、同期検知センサ2115Bに入射する上記光束を「同期光束Ld」ともいう。
同期光学系2116Bは、光偏向器2104と同期検知センサ2115Bとの間の同期光束Ldの光路上に配置され、同期光束Ldを集光する。
各同期検知センサは、受光光量に応じた信号を走査制御装置に出力する。走査制御装置は、同期検知センサ2115Aの出力信号に基づいて、感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bへの書き込み開始タイミングを求める。また、走査制御装置は、同期検知センサ2115Bの出力信号に基づいて、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dへの書き込み開始タイミングを求める。
図7に示されるように、Z軸方向に直交する平面に正射影したとき、光源から射出され、光偏向器2104に入射する光束の進行方向(入射方向)と基準軸方向とのなす角をθinと表記する。ここでは、θin=62°となるように設定されている。なお、基準軸は、各回転多面鏡の回転中心を通り主走査方向に直交する方向に平行な軸である。そこで、基準軸方向はX軸方向と同じである。
また、図8に示されるように、Z軸方向に直交する平面に正射影したとき、各開口板の開口部を通過した光束の幅をdinと表記する。ここでは、din=3.6mmとなるように設定されている。dinは、1つの偏向反射面の主走査対応方向に関する長さ(以下では、「偏向反射面の幅」ともいう)よりも小さい。すなわち、本実施形態では、従来のUFタイプと同様に、Z軸方向に直交する平面に正射影したとき、光偏向器2104に入射する光束の幅dinは、1つの偏向反射面の幅よりも小さい。
各回転多面鏡に内接する円(図9参照)の直径は26mmである。そこで、各回転多面鏡では、回転中心から各偏向反射面に下ろした垂線の長さは13mmである。また、各回転多面鏡において、7つの偏向反射面を区別する必要があるときは、回転方向と逆まわりに面1、面2、面3、面4、面5、面6、面7とする(図9参照)。
次に、光源2200Aから射出され、光偏向器2104に入射する光束(以下では、単に「入射光束」ともいう)と、光偏向器2104で偏向された光束について図10〜図13を用いて説明する。ここでは、回転多面鏡の面1で反射された光束が、同期検知センサ2115A及び対応する感光体ドラムの走査領域に向かうものとする。
図10には、光源2200Aから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、同期検知センサ2115Aに向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と同期光束Laとが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面7に入射するように設定されている。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。
図11には、光源2200Aから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面7に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査開始位置に向かう光束の幅dsは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、dsは3.3mmである。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸方向とのなす角をθsと表示する。ここでは、|θs|は37°である。
図12には、光源2200Aから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かう光束の幅dcは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の「けられ」はない。
図13には、光源2200Aから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光束と反射光束とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光束の全てが回転多面鏡の面1に入射するのではなく、光偏向器2104に入射する光束の一部は面2に入射するように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査終了位置に向かう光束の幅deは、光偏向器2104に入射する光束の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光束の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、deは3.3mmである。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光束の進行方向と基準軸方向とのなす角をθeと表示する。ここでは、|θe|は37°である。
|θs|+|θe|は、いわゆる走査画角に対応する角度であり(図14参照)、ここでは74°である。また、|θs|及び|θe|は、「走査半画角」とも呼ばれている。
また、光源2200Bから射出され、光偏向器2104に入射する光束についても、上記光源2200Aから射出された光束の場合と同様に設定されている。
すなわち、光源2200Bから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、同期検知センサ2115Bに向かうタイミングでは、入射光束の一部が光偏向器2104で「けられ」る。
また、光源2200Bから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置に向かうタイミングでは、入射光束の一部が光偏向器2104で「けられ」る。
また、光源2200Bから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かうタイミングでは、入射光束の光偏向器2104での「けられ」はない。
また、光源2200Bから射出され、光偏向器2104で偏向された光束が、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置に向かうタイミングでは、入射光束の一部が光偏向器2104で「けられ」る。
ところで、従来のUFタイプの光走査装置では、光源数を増加させて、いわゆるマルチビーム書込方式を用いることにより、回転多面鏡の回転数を上げることなく、画像形成の高速化及び画素密度の高密度化を図ることが可能である。しかしながら、光源数の増加は、その駆動回路の大型化を招き、光源部のコストが大幅に高くなる。光走査装置において、光源部のコスト比率は高く、光走査装置を安価で提供するためには大きな弊害となる。特に、フルカラー機に対応する光走査装置では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの異なる色に対応した複数の光源が必要であり、光源数は更に増加する。
また、従来のOFタイプの光走査装置では、回転多面鏡の内接円直径を大きくしないで偏向反射面の幅を小さくし、偏向反射面の数を増加させることにより、回転多面鏡の回転数を上げることなく、画像形成の高速化及び画素密度の高密度化を図ることができる。しかしながら、この場合は、偏向反射面で偏向できる角度が狭いため、被走査面上で所望の主走査方向の書込み幅を確保するには、偏向反射面から被走査面までの光路長が長くなり、光走査装置が大型化してしまう。また、光偏向器に入射する光束を切り出して走査するため、中心像高から周辺像高に向かい光量が低下する。
これまで、画像形成の高速化及び画素密度の高密度化を図る技術は種々開示されているが、画像形成の高速化及び画素密度の高密度化とともに、小型化、低コスト化、光学特性の維持の全てを満足させることは困難であった。
また、画像形成の高速化及び画素密度の高密度化には、回転多面鏡の小型化が有効である。しかしながら、通常、偏向反射面の面数を変えないで回転多面鏡の内接円直径を小さくすると、偏向反射面の幅が小さくなり、偏向可能な角度が狭くなる。つまり、走査画角が狭くなる。
本実施形態では、光偏向器2104による偏向範囲内の周辺部(図15参照)でのみ、入射光束の一部が光偏向器2104で「けられ」た光束が反射光束となるような構成とし、偏向反射面の幅が小さくても、走査画角が狭くならないようにしている。なお、以下では、煩雑さを避けるため、光偏向器2104による偏向範囲内において、入射光束の一部が光偏向器2104で「けられ」た光束が反射光束となる範囲を単に「けられ範囲」ともいう。図15では、周辺部が「けられ範囲」である。
そして、従来は内接円直径が32mm〜36mmであった回転多面鏡に代えて、内接円直径が26mmの回転多面鏡を用いることができる。すなわち、走査画角を狭くすることなく回転多面鏡の小型化が可能である。これにより、風損を低減することができる。更に、回転多面鏡の重量低減により、軸受けの小径化が可能となり、摩擦力を低下させることができる。
そのため、本実施形態の光走査装置2010では、消費電力を増加させることなく、回転多面鏡を高速で回転させることが可能となる。そして、光源数を増加させることなく、すなわち、高コスト化を招くことなく、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応することができる。また、大型化を招くことなく、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応することができる。
ところで、本実施形態では、上記「けられ範囲」が、走査領域の内側に向かって大きくなるほど、偏向反射面の幅をより小さくすることができる。しかしながら、「けられ範囲」が大きいと、走査領域の端部での光量低下が無視できないレベルとなる。
そこで、本実施形態では、偏向器前光学系に含まれている開口板によって、ビームスポット径深度を大きく損なうことなく、光偏向器2104での「けられ」による光量低下の傾きを小さく抑えている。
図16には、本実施形態で用いることができる開口板の一例が示されている。この開口板の開口部は、2つの特徴を有している。第1の特徴は、主走査対応方向における端部で副走査対応方向に関する開口幅が狭くなる形状をしていることである。なお、以下では、煩雑さを避けるため、副走査対応方向に関する開口幅を、単に「開口幅」ともいう。第2の特徴は、主走査対応方向において、中央部と端部との間に変曲部(図17参照)があることである。この変曲部は、端部に向かって開口幅が狭くなりはじめる位置であり、該変曲部の開口幅は、中央部における開口幅と等しいか、あるいは大きくなるように設定されている。すなわち、変曲部と端部との間の領域は、開口幅が狭くなる領域である。以下では、この領域を「幅減少領域」ともいう。
ここで、主走査対応方向に関して、中央部から端部までの長さをD、中央部から変曲部までの長さをL、変曲部から端部までの長さをdとする。また、副走査対応方向に関して、中央部での開口幅をa、変曲部での開口幅をc、端部での開口幅をbとする。
図18(A)〜図18(C)には、開口部が上記2つの特徴を有している開口板の他の例が示されている。
入射光束の一部が光偏向器2104で「けられ」る場合、光偏向器2104で「けられ」る光束は、一例として図19に示されるように、開口板の開口部における主走査対応方向の一側端部近傍を通過する光束である。そして、回転多面鏡が回転すると、開口板において光偏向器2104で「けられ」る光束が通過する領域が変化する。
開口板の開口部を通過する光束の主走査対応方向に関する光量分布が正規分布であり、光束の端部近傍における光量が一様であれば、光偏向器2104で「けられ」る光束の断面積と被走査面での光量の低下量とは略比例する。そして、それぞれの微分量も同様の関係を有する。上記断面積の変化量は、開口部の開口幅と関係している。そこで、一例として図20に示されるように、開口部の開口幅と光量低下の傾きも略比例する。
図21には、開口部の形状が六角形の開口板(図16参照)を用いたとき、及び従来例として開口部の形状が矩形の開口板を用いたときの、走査領域の端部での光量低下の様子が示されている。なお、図21における縦軸は、像高0mmでの光量を100%としたときの光量であり、これを光量比(%)という。
開口部の形状が六角形の開口板が用いられた場合、例えば、光偏向器2104で偏向された光束が向かう方向が、像高151mmから像高151+δmmに微小変化したとき、光偏向器2104で「けられ」る光束のうち増加した光束が通過する部分の開口幅が1.0mmであれば(図22(A)参照)、像高151mmにおける光量低下傾き(図21における矢印Aの傾き)は−0.29(%/mm)である。
また、開口部の形状が六角形の開口板が用いられた場合、例えば、光偏向器で偏向された光束が向かう方向が、像高160mmから像高160+δmmに微小変化したとき、光偏向器で「けられ」る光束のうち増加した光束が通過する部分の開口幅が1.6mmであれば(図22(B)参照)、像高160mmにおける光量低下傾き(図21における矢印Bの傾き)は−0.43(%/mm)である。
一方、開口部の形状が矩形の開口板が用いられた場合、例えば、光偏向器で偏向された光束が向かう方向が、像高151mmから像高151+δmmに微小変化したとき、光偏向器で「けられ」る光束のうち増加した光束が通過する部分の開口幅が1.6mmであれば(図23(A)参照)、像高151mmにおける光量低下傾き(図21における矢印Cの傾き)は−0.43(%/mm)である。
また、開口部の形状が矩形の開口板が用いられた場合、例えば、光偏向器で偏向された光束が向かう方向が、像高160mmから像高160+δmmに微小変化したとき、光偏向器で「けられ」る光束のうち増加した光束が通過する部分の開口幅も1.6mmであり(図23(B)参照)、像高160mmにおける光量低下傾き(図21における矢印Dの傾き)は−0.43(%/mm)である。すなわち、開口部の形状が矩形の開口板が用いられた場合、光量低下の傾きは略一定であり、比較的急な傾斜で光量が低下する。
以上より、開口部における主走査対応方向の端部の開口幅を小さくすると、光量低下の傾きは小さくなり、「けられ」による影響を緩和することができる。
図24には、被走査面での平均光量低下傾きとd/Dとの関係が示されている。d/Dが0の場合は、開口部は矩形形状(図25(A)参照)であり、d/Dが1.0の場合は、開口部は菱形形状(図25(B)参照)である。また、平均光量低下傾きとは、一例として図26に示されるように、走査領域内で「けられ」が起こる領域を平均化の範囲とし、「けられ」が始まる像高での光量比と周辺像高での光量比とから算出される。例えば、「けられ」が始まる像高をM1、該像高M1での光量比をp1、周辺像高をM2、該周辺像高M2での光量比をp2とすると、(p2−p1)/(M2−M1)で算出される値を平均光量低下傾きとする。図24によると、d/Dの値が大きくなると平均光量低下傾きが大幅に小さくなることがわかる。
図27には、被走査面でのビームスポット径深度とd/Dとの関係が示されている。d/Dの値が大きいほどビームスポット径深度は浅くなる。これは、同じビームスポット径を目標値とした場合、d/Dの値を大きくすると開口部の主走査対応方向に関する寸法が大きくなり、開口部を通過した光束が主走査方向に関して長くなり、走査光学系で光束がより強く収束されるためである。
ここで、平均光量低下傾きの絶対値を求め、最大値を1とする数値変換(単位はa.u.)を行った。その結果が図28に示されている。また、ビームスポット径深度についても、最大値を1とする数値変換(単位はa.u.)を行った。その結果が図29に示されている。
そして、平均光量低下傾き(a.u.)及びビームスポット径深度(a.u.)とd/Dとの関係が図30に示されている。
図30によると、d/Dの値を調整することで、開口部の形状が矩形の開口板が用いられた場合に対して、ビームスポット径深度を大きく低下させることなく光量低下傾きを小さくすることが可能である。また、開口部の形状が菱形の開口板が用いられた場合に対して、光量低下傾きを小さく保ったまま、ビームスポット径深度を深くすることが可能である。
すなわち、開口部が上記2つの特徴を有する開口板を用いることで、ビームスポット径深度の確保及び光量低下傾きの低減を同時に満足させることが可能となる。
ところで、上記「けられ範囲」は物理的に決定されることから、「けられ範囲」での光量やビームスポット径の変動を小さくすることが必要である。そこで、光偏向器2104での「けられ」の影響を良好に低減するには、入射光束における光偏向器2104で「けられ」る光束が、開口部における幅減少領域内を通過することが好ましい。
例えば、開口部において、dの値がLの値よりも0.5mm小さいと、ビームスポット径深度は、開口部が矩形形状のときよりも約0.9mm浅くなるが、逆にdの値がLの値よりも0.5mm大きいと、ビームスポット径深度は、開口部が矩形形状のときよりも約3.0mm浅くなる。これは、dの値がLの値よりも大きくなることで、相対的にd/Dの値が大きくなることに起因する。従って、開口部が矩形形状のときと比べてビームスポット径深度を大きく低下させないことを前提にすれば、d<Lの範囲で構成された開口部を有する開口板を用いることが好ましい。
光量低下傾きが小さいほど光偏向器2104での「けられ」の影響を抑えることができ、ビームスポット径深度が大きいほど被走査面上に結像した際のピントずれを低減することができる。そこで、ビームスポット径深度(a.u.)と平均光量低下傾き(a.u.)との差をとり、最大値が100となるように規格化したものを「両立性指数」として定義する(図31参照)。
図32は、図31をグラフ化したものである。これによると、開口部に幅減少領域を設けることにより、両立性指数は、開口部の形状が矩形のときよりも大きくなる。
両立性指数が大きい領域では、ビームスポット径深度の大きな低下を抑えつつ平均光量低下傾きを小さく抑えることが可能である。従って、図32に示されるように、両立性指数が高い領域である0.2<d/D<0.4の範囲にある開口部を有する開口板は、光学特性の維持の面でバランスがとれ、本発明の優位性を最も効果的に引き出すことができる。
このように、開口部に幅減少領域を設けることにより、矩形形状の開口部に比べビームスポット径深度の低下を抑えつつ、入射光束が光偏向器で「けられ」ることによる光量低下の影響を小さく抑えることができる。
また、開口部の形状が長円(図18(A)参照)の場合の、平均光量低下傾きの上記数値変換(単位はa.u.)結果が図33示されている。また、ビームスポット径深度についての上記数値変換(単位はa.u.)結果が図34に示されている。この場合、d/D=0となる開口部は、矩形形状の開口部であり、d/D=1となる開口部は、楕円形状の開口部である。
そして、平均光量低下傾き(a.u.)及びビームスポット径深度(a.u.)とd/Dとの関係が図35に示されている。また、開口部の形状が長円の場合の、両立性指数の計算結果が図36に示されている。図37には、両立性指数とd/Dとの関係が示されている。この場合も、両立性指数が高い領域である0.2<d/D<0.4の範囲にある開口部を有する開口板は、光学特性の維持の面でバランスがとれ、本発明の優位性を最も効果的に引き出すことができる。
さらに、図18(B)及び図18(C)に示されるように、変曲部における開口幅を中央部の開口幅より大きくすることにより、開口部の主走査対応方向における全長をより小さくすることができ、ビームスポット径深度をさらに深くすることも可能である。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、2つの光源(2200A、2200B)、偏向器前光学系、回転多面鏡を有する光偏向器2104、及び走査光学系などを備えている。
回転多面鏡の回転軸に直交する平面に正射影したとき、回転多面鏡に入射する光束の幅は、偏向反射面の幅よりも小さい。そして、回転多面鏡で反射された光束が走査領域の中央部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光束の全てが一の偏向反射面で反射され、回転多面鏡で反射された光束が走査領域の両端部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光束の一部が一の偏向反射面で反射され、その残りが該一の偏向反射面に隣接する他の反射面で反射される。
また、偏向器前光学系は、光源から射出された光束の大きさを規制する開口部を有する開口部材を備え、該開口部は、主走査対応方向(第1方向)に関して、中央部(第1位置)と端部(第2位置)との間に設けられた変曲部(第3位置)から端部に向かって、副走査対応方向(第2方向)の開口幅が徐々に小さくなり、中央部での開口幅aと、端部での開口幅bと、変曲部での開口幅cとの間に、b<a≦c、の関係を有している。
この場合、光走査装置では、各感光体ドラムに形成される潜像の品質を低下させることなく、回転多面鏡を小型化するとともに、走査画角を大きくすることができる。そこで、光走査装置は、高コスト化及び画像(潜像)の品質低下を招くことなく更なる小型化及び高速化を図ることができる。
そして、複合機2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、高コスト化及び出力画像の品質低下を招くことなく、更なる小型化及び高速化を図ることができる。
なお、上記実施形態では、光偏向器2104で偏向された光束が走査領域における走査開始位置に向かうタイミング及び走査終了位置に向かうタイミングの両方において、入射光束が光偏向器2104で「けられ」る場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光偏向器2104で偏向された光束が走査領域における走査開始位置に向かうタイミング及び走査終了位置に向かうタイミングのいずれかにおいて、入射光束が光偏向器2104で「けられ」ても良い。
また、上記実施形態では、回転多面鏡の内接円の直径が26mmの場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に7つの鏡面が形成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、dinが3.6mmの場合について説明したがこれに限定されるものではなく、dinが偏向反射面の幅より小さければ良い。
また、上記実施形態において、光源にモノリシックな端面発光レーザアレイや面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、それぞれ2つの発光部を有する2つの光源が用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、それぞれ1つの発光部を有する4つの光源を用いても良い。また、それぞれ1つの発光部を有する2つの光源を用い、各光源から射出される光束を2分割しても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置として複合機の場合について説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置が、単独の複写機、プリンタ、及びファクシミリ装置であっても良い。
また、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。