JP6403516B2 - 高強度板状鋼材およびその製造方法並びに吐出弁部品 - Google Patents
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JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)が350HV以上であり、表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を有する板状鋼材が提供される。その表面硬化層は、表面に加工歪を付与する表面硬化処理により形成されたものであることが好ましい。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。Mo、Cu、Bは任意含有元素である。
350〜550℃に加熱して下記(4)式を満たす条件で時効処理を行い、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上とする工程(時効処理工程)、
表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことにより、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を形成する工程(表面硬化処理工程)、
を上記の順に有する板状鋼材の製造方法が提供される。
13000<T(logt+20)<16000 …(4)
ここで、(4)式において、Tは時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。
圧延率40%以下の冷間圧延を施して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するように加工誘起マルテンサイト相を生成させる工程(冷間圧延工程)。
この場合、冷間圧延にて加工誘起マルテンサイト変態が生じることを考慮して、複相化処理工程ではオーステナイト相が10.0〜70.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させることが好ましい。
〔オーステナイト相の量の測定〕
振動試料型磁力計(VSM)に被測定材料から採取した試験片をセットし、磁気モーメントM(A・m2)を求める。この実測Mの値と、試料の質量W(kg)から下記(5)式により試料の飽和磁化I(A・m2/kg)を求める。
I=M/W …(5)
一方、上記組成範囲のステンレス鋼における磁性相の理論的な飽和磁化の値として、成分組成の回帰式である下記(6)式により定まるIS(A・m2/kg)を採用する。
IS=214.5−3.12(Cr+Mo+0.5Ni)−12C−1.9Mn−6N−3P−7S−2.6Si−2.3Cu …(6)
ここで、(6)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。
上記飽和磁化IおよびISを下記(7)式に代入することにより、磁性相の量VM(体積)を定める。
磁性相の量VM(体積%)=(I/IS)×100 …(7)
オーステナイト相の量VA(体積%)は下記(8)式により定まる。
オーステナイト相の量VA(体積%)=100−VM …(8)
本発明では、高温のオーステナイト安定温度域からの冷却でオーステナイト相の一部がマルテンサイトに変態し、残留オーステナイト相が存在するように組成調整された鋼種を適用する。以下、化学組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
(1)式、(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。無添加の元素についてはゼロが代入される。
本発明ではCr当量が13.0〜17.0、かつNi当量が7.0〜13.0に調整された鋼を採用する。この組成調整により、オーステナイト安定温度域からMs点未満の所定温度に冷却したときに残留オーステナイト相の量が0.5〜70.0体積%であるオーステナイト+マルテンサイト複相組織を得ることができる。
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。無添加の元素についてはゼロが代入される。
本発明では、(3)式のMs値が20.0〜130.0となる組成の鋼を適用する。50.0〜130.0であることがより好適である。このMs値はMs点(℃)に相当する値である。例えばMs値が80.0であれば、その鋼のMs点を80℃と見積もることができる。Ms値が高すぎると、オーステナイト安定温度域からMs点未満の温度まで冷却したときの冷却マルテンサイト相の生成量が多くなり、所定量の残留オーステナイト相を安定して存在させる制御が難しくなる。一方、Ms値が低すぎると、冷却マルテンサイト相を生成させるための冷却終了温度を常温より低温に設定しなければならない場合があり、生産性を損なう。
本発明に従う板状鋼材は表面硬化層を有している。この表面硬化層は表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことによって形成することができる。表面硬化処理により表層部のみを顕著に硬化させ、表層部と内部との硬度差を非常に大きくする。表面硬化層を除く内部の断面硬さはどの部分で測定しても概ね均等であるが、ここでは板厚中心部の断面硬さによって内部の硬さを評価する。断面硬さはJIS Z2244:2009に従うビッカース硬さ試験において、試験力294.2N(HV30)にて求めることができる。一方、表面硬化層の硬さは、板状鋼材の表層部に形成されている表面硬化層の表面から板厚方向にコーンを押し込む方法で測定する。表面硬化層は薄いため、JIS Z2244:2009に従うマイクロビッカース硬さ試験により、試験力0.09807N(HV0.01)にて求めることができる。本明細書では、前記板厚中心部の硬さを「断面硬さH0」、前記表面硬化層の硬さを「表面硬さH1」と呼んでいる。
従来一般的な加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼の場合、SUS304では500HV以上の高強度を得ることは困難であり、SUS301でも60%以上の高い圧延率で冷間圧延しなければ500HV以上を安定して得ることは難しい。また、SUS420J2に代表される焼入れ強化型ステンレス鋼では炭素含有量の調整により高強度化は可能であるが、靱性を確保するため必須である焼戻し処理によってCr炭化物が多量に析出し、耐食性の低下を招く。本発明に従う鋼種では例えば圧延率10〜40%程度の冷間圧延と時効処理によって容易に500HV以上の強度レベルが得られ、時効処理でのCr炭化物の多量析出も回避されるので高耐食性が維持される。
本発明に従う板状鋼材は、表面硬化層が形成されている表層部を除き、オーステナイト相が0.50〜60.0体積%、残部がマルテンサイト変態を経た磁性相である金属組織を有する。上記の相比は磁気測定により磁性相の量を測定することで求めることができる(前述)。表面硬化処理によって形成される表面硬化層は薄いので、表面硬化処理後の板状鋼材について磁気測定により測定した相比は、表面硬化層を除く内部の組織状態を反映していると見てよい。残留オーステナイト相が存在しないか、あるいはその量が少なすぎると、表面硬化処理による表面硬さH1の増大効果が低減して耐衝撃疲労特性の改善が不十分となる。オーステナイト相の量は0.50体積%以上であることを要し、0.80体積%以上であることがより好ましい。特にH1とH0の差H1−H0を150HV以上とするためにはオーステナイト相の量が10.0体積%以上であることが望ましい。ただし、オーステナイト相があまり多くなると強度不足を招きやすい。種々検討の結果、オーステナイト量は60.0体積%以下であることが望ましく、45.0体積%以下であることがより好ましい。
上記のオーステナイト相は、いわゆる「残留オーステナイト相」である。オーステナイト相以外の残部組織は前述の「マルテンサイト変態を経た磁性相」である。
上述の化学組成を有する素材鋼板(熱延鋼板、冷延鋼板など)を、オーステナイト安定温度域に加熱して溶体化処理する。溶体化処理条件は例えば950〜1100℃、均熱0.3〜3minの範囲で設定すればよい。その後、Ms点より低温まで冷却する。溶体化処理後の冷却開始温度からMs点より低温の冷却終了温度までの平均冷却速度は2℃/sec以上とすることが好ましい。Ms点(℃)は上述(3)式で定義されるMs値を採用することができる。本発明に従う化学組成の鋼は、オーステナイト安定温度域からMs点未満の温度へ冷却することによりオーステナイト母相の一部がマルテンサイトに変態し、残留オーステナイト相+冷却マルテンサイト相の複相組織が得られる。従ってこの熱処理を複相化処理と呼んでいる。
複相化処理後の鋼板に対して、必要に応じて冷間圧延を施す。冷間圧延を行う場合は、冷間圧延後にオーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するように加工誘起マルテンサイト相を生成させる。冷間圧延率は40%以下の範囲で調整すればよい。35%以下の範囲に管理してもよい。この冷間圧延によって加工誘起マルテンサイト相が生成するとともに、加工硬化が加わって強度が増大する。例えば、時効処理後の硬さH0を500HV以上に調整する場合には冷間圧延率を10%以上とすることが効果的であり、15%以上とすることが一層効果的である。
次いで、Ac1点未満の温度域に加熱することにより時効処理を施す。吐出弁部品の用途では時効処理に供する段階で板厚が例えば0.1〜4.0mmに調整されていることが好ましい。0.5〜4.0mmあるいは1.0〜4.0mmといった板厚範囲に管理してもよい。この時効処理ではマルテンサイト相中に過飽和に存在する炭素原子の一部をオーステナイト相中へと拡散させるとともに、いわゆる焼戻しと同様の構造変化を与えて靱性向上効果を得る。さらに、固溶炭素による「ひずみ時効」によって主としてマルテンサイト変態を経た磁性相のマトリックスを強化し、高強度化を図る。時効処理の温度範囲は350〜550℃とすることが望ましく、400〜500℃とすることがより好ましい。時効処理温度が低過ぎると上記の靱性向上効果やひずみ時効の効果が十分に得られない。時効処理温度が高すぎると炭化物の過度な析出などにより強度や耐食性の劣化を引き起こす。また、Ac1点を超えた場合には逆変態オーステナイト相が生成して強度が著しく低下する。上記の靱性向上効果とひずみ時効の効果は、時効処理温度とともに、時効処理時間の影響を大きく受ける。種々検討の結果、下記(4)式を満たす時効処理条件範囲において、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上に調整することが好ましい。
13000<T(logt+20)<16000 …(4)
ここで、Tは絶対温度で表される時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。
時効処理後の鋼板に対して、必要に応じてプレス打抜きなどの手段を用いて所定の部品形状に加工したのち、表面硬化処理を施す。この表面硬化処理は、板状鋼材の表面に加工歪を付与する手法で行う。例えば、乾式または湿式研磨、ショットピーニングなどが挙げられる。通常、このような物理的に外力を付与する手法で表面硬化処理を施すと、表層部が加工硬化するとともに、表層部のみが塑性変形することにより表面に圧縮残留応力が付与される。このような表面硬化層は疲労特性の向上に有効である。しかし、耐衝撃疲労特性という、繰り返しの表面打撃に耐え得る疲労特性に関しては、単に表面硬化層を形成するだけでは十分に満足できる改善効果は得られない。
このようにして、吐出弁部品等の用途において極めて有用な高強度板状鋼材を得ることができる。
VSMを用いて上述の手法により磁気測定を行い、前記(8)式によりオーステナイト相の量(体積%)を定めた。
断面硬さH0(HV30)および表面硬さH1(HV0.01)は上述の方法にてJIS Z2244:2009に従うビッカース硬さ測定にて求めた。その際、断面硬さH0は、圧延方向と板厚方向に平行な断面(L断面)について、板厚中心部から無作為に選んだ10点の測定点における測定値の平均値を採用した。表面硬さH1は、後述の衝撃疲労試験において治具1に打ち付けられる側の表面について、無作為に選んだ10点の測定点における測定値の平均値を採用した。
残留応力は、X線を用いて以下の方法で求めた。Ψ角毎の回折角を縦軸2θ、横軸sin2Ψのグラフにプロットし、各点の座標から最小二乗法により直線を定め、その直線の勾配Mを算出する。表層部の残留応力σ(N/mm2)は下記(9)式により表される。残留応力値において、負の値は圧縮応力、正の値は引張応力を意味する。
残留応力σ=応力定数×M …(9)
詳細な測定条件は以下の通りである。解析方法:並傾法、コリメータサイズ:4mmφ、係数時間:200sec、ステップ:0.03°、測定角度:147.59〜167.78°、2θ:158°、振動幅:2°、Ψ角度:0〜45°(5°ピッチ)、管球:Cr、特性X線:Kα、管球電圧:30kV、管球電流:10mA、応力定数:−219MPa、ピークサーチ法:半価幅中点法。
平面曲げ疲労試験機を用いてJIS Z2275に従い疲労限界応力を測定した。試験片は長手方向を圧延平行方向とし、幅30mm、長さ90mm、幅方向両端にR=42.5mmのR部を有し、R部の最小板幅20mmのものを使用した。
直径10mmの円板状試験片を衝撃疲労試験に供した。図1に衝撃疲労試験機に試験片をセットした状態を模式的に示す。中央に内径4.0mmの貫通孔10を有する鋼製治具1と、中央にシリンダ状空洞20、その内部にばね21を有する鋼製治具2を用意し、図のように円板状試験片3をセットする。ばね21のばね定数は1.896である。矢印の方向に空気圧を付与して試験片3を押し上げたのち、空気圧を解除してばね21の復元力により試験片3を元の位置に押し戻すという動作を繰り返す。試験片3が元の位置に戻る際に、その表面が治具1の表面に打ち付けられる。この押し上げ−押し戻しの動作を107回繰り返したのち、試験片3を治具から取り出してマイクロスコープで表面観察を行った。表面に割れや欠けなどの表面損傷が観測されたものを×評価(耐衝撃疲労特性;不良)、観測されなかったものを○評価(耐衝撃疲労特性;良好)とし、○評価を合格と判定した。これらの結果を表2に示す。
2 鋼製治具
3 円板状試験片
10 貫通孔
20 シリンダ状空洞
21 ばね
Claims (7)
- 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有し、
JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)が350HV以上であり、表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を有する板状鋼材。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。 - 更に、Mo:2.00%以下、Cu:4.00%以下、B:0.05%以下の1種以上を含有する化学組成を有する請求項1に記載の板状鋼材。
- 板厚が0.1〜4.0mmである請求項1または2に記載の板状鋼材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の板状鋼材を用いた、圧縮機の吐出弁部品。
- 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有する鋼板を、オーステナイト安定温度域で溶体化処理したのち前記Ms値で表される温度(℃)より低温に冷却して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させる工程(複相化処理工程)、
350〜550℃に加熱して下記(4)式を満たす条件で時効処理を行い、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上とする工程(時効処理工程)、
表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことにより、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を形成する工程(表面硬化処理工程)、
を上記の順に有する板状鋼材の製造方法。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
13000<T(logt+20)<16000 …(4)
ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。(4)式において、Tは時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。 - 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有する鋼板を、オーステナイト安定温度域で溶体化処理したのち前記Ms値で表される温度(℃)より低温に冷却して、オーステナイト相が10.0〜70.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させる工程(複相化処理工程)、
圧延率40%以下の冷間圧延を施して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するように加工誘起マルテンサイト相を生成させる工程(冷間圧延工程)、
350〜550℃に加熱して下記(4)式を満たす条件で時効処理を行い、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上とする工程(時効処理工程)、
表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことにより、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を形成する工程(表面硬化処理工程)、
を上記の順に有する板状鋼材の製造方法。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
13000<T(logt+20)<16000 …(4)
ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。(4)式において、Tは時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。 - 前記複相化処理に供する鋼板が、更に、Mo:2.00%以下、Cu:4.00%以下、B:0.05%以下の1種以上を含有する化学組成を有するものである請求項5または6に記載の板状鋼材の製造方法。
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