JP6403516B2 - 高強度板状鋼材およびその製造方法並びに吐出弁部品 - Google Patents

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Description

本発明は、耐衝撃疲労特性に優れた高強度板状鋼材およびその製造方法に関する。また、その板状鋼材を用いた吐出弁部品に関する。
空調機、冷蔵庫などの熱交換機器には、冷媒を圧縮するために、吐出弁機構を有する圧縮機が搭載されることが多い。圧縮機の吐出弁において流路の開閉動作を担う金属部品(以下「吐出弁部品」という)は、開閉動作に伴って曲げ疲労負荷を受けるとともに、他の金属部材(弁押さえ)に繰返し打ち付けられることにより衝撃疲労負荷を受ける。
吐出弁部品には耐疲労特性の良好な高強度鋼材が適用される。具体的には炭素鋼や13Cr系ステンレス鋼などの板状鋼材を所定形状に打抜いた後、バレル研磨やショットピーニングなどの表面硬化処理を施すことによって耐衝撃疲労特性を付与するのが一般的である。
一方、ステンレス鋼板の金属組織をオーステナイト相とマルテンサイト相の複相組織とすることにより、強度と延性を高いレベル両立させる技術が知られている(特許文献1)。ただし、この種のステンレス鋼材は、比較的軟質なオーステナイト相を残留させることでマルテンサイト系ステンレス鋼よりも優れた強度−延性バランスを狙ったものである。このような複相組織鋼種を表面硬化処理が必要な耐衝撃疲労用途に適用した例は報告されていない。
特開2011−184780号公報
昨今、圧縮機の性能向上に伴い吐出弁部品に加わる応力は増大する傾向にある。本発明は、このようなニーズに応えるべく、従来材の13Cr系ステンレス鋼よりも耐衝撃疲労特性の高い板状鋼材を、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)よりも低廉な元素配合において実現しようというものである。
発明者らの研究によれば、上記目的はマルテンサイト変態後にオーステナイト相が残留する組成に調整されたステンレス鋼を用いた板状鋼材によって達成できることがわかった。特に、耐衝撃疲労特性を顕著に改善するためには、物理的な外力を付与する表面硬化処理により表層部と内部の硬度差を大きくすることが極めて効果的であることが確認された。この表層部と内部の硬度差を大きくするためには、表面硬化処理前に残留オーステナイト相が存在している組織状態となっていることが極めて有効である。その残留オーステナイト量は少量(例えば0.5体積%以上好ましくは0.8体積%以上)でも構わない。残留オーステナイト相が少しでも存在している状態で表面硬化処理を施すと、表層部の残留オーステナイト相が加工誘起マルテンサイト変態を起こして体積膨張を伴いながら硬化するので、100%マルテンサイト組織の状態で表面硬化処理を施す場合に比べ、表層部の硬化の度合いが顕著となる。さらに、鋼材自体の強度および疲労限界応力を高めるためには表面硬化処理の前に適正条件での時効処理を施しておくことが有効である。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜4.00%、B:0〜0.05%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有し、
JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)が350HV以上であり、表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を有する板状鋼材が提供される。その表面硬化層は、表面に加工歪を付与する表面硬化処理により形成されたものであることが好ましい。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。Mo、Cu、Bは任意含有元素である。
板厚中心部の断面硬さH0(HV30)は、JIS Z2244:2009に規定されるようにビッカース硬さ試験において試験力294.2Nで測定した値を意味する。また、表面硬さH1(HV0.01)は、同様にマイクロビッカース硬さ試験において試験力0.09807Nで測定した値を意味する。
上記板状鋼材の板厚は、例えば0.1〜4.0mmとすることができる。0.5mm以上、あるいは1.0mm以上といった板厚範囲に管理してもよい。前記表面硬化層は、例えば、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%、残部がマルテンサイト変態を経た磁性相で構成される金属組織を有する鋼材の表面に加工歪を付与する表面硬化処理により形成されたものである。表面硬化層は鋼材の表層部のみに形成されているため、表面硬化処理の前後において、板状鋼材全体におけるオーステナイト相と磁性相の比率はほとんど変わらないと見てよい。
本明細書でいう「マルテンサイト変態を経た磁性相」は、(a)複相化処理の冷却過程で生成した「冷却マルテンサイト相」に由来する磁性相、(b)冷間圧延で生じた「加工誘起マルテンサイト相」に由来する磁性相、および(c)表面硬化処理によって生成した「加工誘起マルテンサイト相」、を意味する。複相化処理後に冷間圧延を行わない場合は(b)の磁性相は存在しない。上記(a)、(b)の磁性相は時効処理によっていわゆる焼戻しマルテンサイト相あるいはそれに近い構造の相になっていると考えられる。時効処理によってマルテンサイト相中から析出した炭化物相(セメンタイト)も「マルテンサイト変態を経た磁性相」の構成要素となる。この磁性相の量(体積%)は後述の磁気測定によって求めることができる。オーステナイト相は非磁性相であるから、オーステナイト相の量(体積%)は、100体積%から磁性相の量を差し引いた値として定まる。
鋳造時に少量のδフェライト相が生成することがある。δフェライト相は最終製品の金属組織中にもわずかに残留する場合があると考えられるが、その量は多くても2.0体積%である。δフェライト相は、マルテンサイト相や炭化物相(セメンタイト)と同様に磁性相であるから、δフェライト相が存在する場合は、後述の磁気測定により定まる磁性相の量には、2.0体積%以下のδフェライト相の量が含まれることになる。しかし、そのような少量のδフェライト相の存在は本発明の効果を阻害しないので、無視することができる。そこで、本明細書では便宜上、0〜2.0体積%のδフェライト相を含めた磁性相を「マルテンサイト変態を経た磁性相」として扱う。
また、本発明では上記板状鋼材を用いた、圧縮機の吐出弁部品が提供される。
上記板状鋼材の製造方法として、上記化学組成を有する鋼板を、オーステナイト安定温度域で溶体化処理したのち前記Ms値で表される温度(℃)より低温に冷却して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させる工程(複相化処理工程)、
350〜550℃に加熱して下記(4)式を満たす条件で時効処理を行い、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上とする工程(時効処理工程)、
表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことにより、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を形成する工程(表面硬化処理工程)、
を上記の順に有する板状鋼材の製造方法が提供される。
13000<T(logt+20)<16000 …(4)
ここで、(4)式において、Tは時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。
必要に応じて、上記複相化処理工程と時効処理工程の間に、以下の冷間圧延工程を挿入することができる。
圧延率40%以下の冷間圧延を施して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するように加工誘起マルテンサイト相を生成させる工程(冷間圧延工程)。
この場合、冷間圧延にて加工誘起マルテンサイト変態が生じることを考慮して、複相化処理工程ではオーステナイト相が10.0〜70.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させることが好ましい。
オーステナイト相の量(体積%)は磁気測定によって定めることができる。具体的には以下の手法に従う。
〔オーステナイト相の量の測定〕
振動試料型磁力計(VSM)に被測定材料から採取した試験片をセットし、磁気モーメントM(A・m2)を求める。この実測Mの値と、試料の質量W(kg)から下記(5)式により試料の飽和磁化I(A・m2/kg)を求める。
I=M/W …(5)
一方、上記組成範囲のステンレス鋼における磁性相の理論的な飽和磁化の値として、成分組成の回帰式である下記(6)式により定まるIS(A・m2/kg)を採用する。
S=214.5−3.12(Cr+Mo+0.5Ni)−12C−1.9Mn−6N−3P−7S−2.6Si−2.3Cu …(6)
ここで、(6)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。
上記飽和磁化IおよびISを下記(7)式に代入することにより、磁性相の量VM(体積)を定める。
磁性相の量VM(体積%)=(I/IS)×100 …(7)
オーステナイト相の量VA(体積%)は下記(8)式により定まる。
オーステナイト相の量VA(体積%)=100−VM …(8)
本発明によれば、強度レベルが高く、曲げ疲労特性にも優れる高強度ステンレス鋼において、耐衝撃疲労特性を顕著に改善した板状鋼材が提供可能となった。この鋼材は強度レベルが高く、曲げ疲労特性にも優れるので、耐久性レベルの要求が高くなりつつある圧縮機の吐出弁部品として好適である。
衝撃疲労試験機に試験片をセットした状態を模式的に示す断面図。
〔化学組成〕
本発明では、高温のオーステナイト安定温度域からの冷却でオーステナイト相の一部がマルテンサイトに変態し、残留オーステナイト相が存在するように組成調整された鋼種を適用する。以下、化学組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強度を確保する上で重要な元素である。また、Ms点に対して影響力の大きい元素である。C含有量は、特に低C化していない一般的なステンレス鋼種と同等以上とすればよい。具体的には0.010%以上のC含有量を確保することが望ましく、0.030%以上とすることがより好ましい。一方、C含有量が多くなりすぎるとマルテンサイト相が硬質化し靭性を損なう要因となる。また、耐食性が低下して問題となる場合がある。C含有量は0.200%以下とする。
Siは、脱酸作用や、炭化物形成の抑制作用を有する。Si含有量は0.05%以上とすることが望ましい。ただし、過剰のSiはSi酸化物を主体とする硬質な介在物の生成を促し、強度、疲労特性の低下要因となる。種々検討の結果、Si含有量は1.00%以下とする。
Mnは、Ms点の制御や、適正溶体化温度の範囲拡大に有効な元素である。ただし、過剰のMn含有はMn系介在物による加工割れを招く要因となる。Mn含有量は0.05〜5.00%の範囲で調整することが望ましく、0.10〜3.50%の範囲に管理してもよい。
Niは、靭性向上に有効である。また、Ms点の制御にも有効である。ただし、Niは高価な元素であるため、添加効果と経済性を考慮してNi含有量は1.00〜6.00%の範囲で調整することが望ましく、2.00〜5.00%の範囲に管理してもよい。
Crは、耐食性の観点から10.0%以上の含有量を確保する必要がある。ただし、Cr含有量が増大すると鋳造時にδフェライトが生成しやすくなり、過剰のδフェライトの存在は強度低下を招く要因となる。発明者らの検討によれば、Cr含有量を18.0%以下に管理することにより、最終的な鋼板中のδフェライトの存在量が2.0体積%以下に抑えられ、δフェライト生成による悪影響を回避することができる。したがって、ここではCr含有量を18.0%以下に規定する。
Nは、鋼の強度を高め、かつMs点に対しCと同等の影響力を有する。N含有量は0.010%以上とすることが望ましく、0.050%以上とすることがより好ましい。だだし、過剰のN含有は、熱間圧延時に表面欠陥の増大を招く場合があるので、N含有量は0.200%以下とすることが好ましく、0.150%以下とすることがより好ましい。
Moは、耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。Moを添加する場合、0.01%以上の含有量を確保することがより効果的である。だだし、Moは高価な元素であるため、2.00%以下の含有量とすることが望ましい。通常、Mo含有量は1.00%以下の範囲とすればよい。
Cuは、Ms点の制御や、適正溶体化温度の範囲拡大に有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。Cuを添加する場合、0.01%以上の含有量を確保することがより効果的である。だだし、過剰のCu含有は耐食性低下や熱間加工性低下の要因となる。Cu含有量は4.00%まで許容されるが、通常、3.50%以下の範囲とすればよい。
Bは、オーステナイト結晶粒の成長抑制や熱間加工性の改善に有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。Bを添加する場合、0.005%以上の含有量を確保することがより効果的である。だだし、多量のB添加は延性に悪影響を及ぼすことがあるため、B含有量は0.05%以下の範囲とすることが望ましい。
下記(1)式のCr当量および(2)式のNi当量は、オーステナイト安定度に関する指標である。
Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
(1)式、(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。無添加の元素についてはゼロが代入される。
本発明ではCr当量が13.0〜17.0、かつNi当量が7.0〜13.0に調整された鋼を採用する。この組成調整により、オーステナイト安定温度域からMs点未満の所定温度に冷却したときに残留オーステナイト相の量が0.5〜70.0体積%であるオーステナイト+マルテンサイト複相組織を得ることができる。
下記(3)式のMs値は、鋼のMs点(℃)を推定する指標である。
Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。無添加の元素についてはゼロが代入される。
本発明では、(3)式のMs値が20.0〜130.0となる組成の鋼を適用する。50.0〜130.0であることがより好適である。このMs値はMs点(℃)に相当する値である。例えばMs値が80.0であれば、その鋼のMs点を80℃と見積もることができる。Ms値が高すぎると、オーステナイト安定温度域からMs点未満の温度まで冷却したときの冷却マルテンサイト相の生成量が多くなり、所定量の残留オーステナイト相を安定して存在させる制御が難しくなる。一方、Ms値が低すぎると、冷却マルテンサイト相を生成させるための冷却終了温度を常温より低温に設定しなければならない場合があり、生産性を損なう。
〔硬さ〕
本発明に従う板状鋼材は表面硬化層を有している。この表面硬化層は表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことによって形成することができる。表面硬化処理により表層部のみを顕著に硬化させ、表層部と内部との硬度差を非常に大きくする。表面硬化層を除く内部の断面硬さはどの部分で測定しても概ね均等であるが、ここでは板厚中心部の断面硬さによって内部の硬さを評価する。断面硬さはJIS Z2244:2009に従うビッカース硬さ試験において、試験力294.2N(HV30)にて求めることができる。一方、表面硬化層の硬さは、板状鋼材の表層部に形成されている表面硬化層の表面から板厚方向にコーンを押し込む方法で測定する。表面硬化層は薄いため、JIS Z2244:2009に従うマイクロビッカース硬さ試験により、試験力0.09807N(HV0.01)にて求めることができる。本明細書では、前記板厚中心部の硬さを「断面硬さH0」、前記表面硬化層の硬さを「表面硬さH1」と呼んでいる。
断面硬さH0は冷間圧延や時効処理によって調整することができる。ここではH0(HV30)が350HV以上である板状鋼材を対象とする。それより軟質であると圧縮機の吐出弁部品等の用途において強度不足となる場合がある。複相化処理後に時効処理を施すことによりH0が350HVの高強度が得られる。特に、複相化処理後に冷間圧延および時効処理を施すことにより500HV以上の高強度を容易に得ることができる。H0は350〜580HVで調整されていることが好ましい。
従来一般的な加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼の場合、SUS304では500HV以上の高強度を得ることは困難であり、SUS301でも60%以上の高い圧延率で冷間圧延しなければ500HV以上を安定して得ることは難しい。また、SUS420J2に代表される焼入れ強化型ステンレス鋼では炭素含有量の調整により高強度化は可能であるが、靱性を確保するため必須である焼戻し処理によってCr炭化物が多量に析出し、耐食性の低下を招く。本発明に従う鋼種では例えば圧延率10〜40%程度の冷間圧延と時効処理によって容易に500HV以上の強度レベルが得られ、時効処理でのCr炭化物の多量析出も回避されるので高耐食性が維持される。
表面硬さH1は物理的な外力を付与する表面硬化処理によって増大させることができる。発明者らの詳細な検討の結果、表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が非常に大きいとき、耐衝撃疲労特性は顕著に改善される。圧縮機の吐出弁部品に好適な耐衝撃疲労特性を付与するためには、表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差H1−H0を70HV以上とすることが好ましく、150HV以上とすることがより好ましい。残留オーステナイト相が存在する状態で表面硬化処理を施すことによって、表面硬さH1を大幅に増大させることができる。
〔金属組織〕
本発明に従う板状鋼材は、表面硬化層が形成されている表層部を除き、オーステナイト相が0.50〜60.0体積%、残部がマルテンサイト変態を経た磁性相である金属組織を有する。上記の相比は磁気測定により磁性相の量を測定することで求めることができる(前述)。表面硬化処理によって形成される表面硬化層は薄いので、表面硬化処理後の板状鋼材について磁気測定により測定した相比は、表面硬化層を除く内部の組織状態を反映していると見てよい。残留オーステナイト相が存在しないか、あるいはその量が少なすぎると、表面硬化処理による表面硬さH1の増大効果が低減して耐衝撃疲労特性の改善が不十分となる。オーステナイト相の量は0.50体積%以上であることを要し、0.80体積%以上であることがより好ましい。特にH1とH0の差H1−H0を150HV以上とするためにはオーステナイト相の量が10.0体積%以上であることが望ましい。ただし、オーステナイト相があまり多くなると強度不足を招きやすい。種々検討の結果、オーステナイト量は60.0体積%以下であることが望ましく、45.0体積%以下であることがより好ましい。
上記のオーステナイト相は、いわゆる「残留オーステナイト相」である。オーステナイト相以外の残部組織は前述の「マルテンサイト変態を経た磁性相」である。
本発明に従う板状鋼材は、以下の各工程を経ることによって製造することができる。
〔複相化処理工程〕
上述の化学組成を有する素材鋼板(熱延鋼板、冷延鋼板など)を、オーステナイト安定温度域に加熱して溶体化処理する。溶体化処理条件は例えば950〜1100℃、均熱0.3〜3minの範囲で設定すればよい。その後、Ms点より低温まで冷却する。溶体化処理後の冷却開始温度からMs点より低温の冷却終了温度までの平均冷却速度は2℃/sec以上とすることが好ましい。Ms点(℃)は上述(3)式で定義されるMs値を採用することができる。本発明に従う化学組成の鋼は、オーステナイト安定温度域からMs点未満の温度へ冷却することによりオーステナイト母相の一部がマルテンサイトに変態し、残留オーステナイト相+冷却マルテンサイト相の複相組織が得られる。従ってこの熱処理を複相化処理と呼んでいる。
複相化処理後に冷間圧延を省略して直接時効処理を施す場合には、この複相化処理によってオーステナイト相が0.5〜60.0体積%、より好ましくは0.8〜60.0体積%の範囲で残留するように冷却マルテンサイト相を生成させておくことが好ましい。後工程の時効処理でも、時効処理温度が比較的高い場合や時効処理時間が比較的長い場合には残留オーステナイト相の量が若干減少することがある。そのため、必要に応じて、この時効処理後の段階で残留オーステナイト相の量が例えば5.0体積%以上、あるいは10.0体積%以上確保されるように冷却マルテンサイト相の生成量を管理してもよい。
一方、次工程で冷間圧延を行う場合には、冷間圧延での加工誘起マルテンサイト変態によって残留オーステナイト相が減少することを考慮して、複相化処理後によってオーステナイト相が10.0〜70.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させておくことが好ましい。
複相化処理後の残留オーステナイト相の量は、前記(3)式のMs値の調整および冷却終了温度によってコントロールすることができる。
〔冷間圧延工程〕
複相化処理後の鋼板に対して、必要に応じて冷間圧延を施す。冷間圧延を行う場合は、冷間圧延後にオーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するように加工誘起マルテンサイト相を生成させる。冷間圧延率は40%以下の範囲で調整すればよい。35%以下の範囲に管理してもよい。この冷間圧延によって加工誘起マルテンサイト相が生成するとともに、加工硬化が加わって強度が増大する。例えば、時効処理後の硬さH0を500HV以上に調整する場合には冷間圧延率を10%以上とすることが効果的であり、15%以上とすることが一層効果的である。
〔時効処理工程〕
次いで、Ac1点未満の温度域に加熱することにより時効処理を施す。吐出弁部品の用途では時効処理に供する段階で板厚が例えば0.1〜4.0mmに調整されていることが好ましい。0.5〜4.0mmあるいは1.0〜4.0mmといった板厚範囲に管理してもよい。この時効処理ではマルテンサイト相中に過飽和に存在する炭素原子の一部をオーステナイト相中へと拡散させるとともに、いわゆる焼戻しと同様の構造変化を与えて靱性向上効果を得る。さらに、固溶炭素による「ひずみ時効」によって主としてマルテンサイト変態を経た磁性相のマトリックスを強化し、高強度化を図る。時効処理の温度範囲は350〜550℃とすることが望ましく、400〜500℃とすることがより好ましい。時効処理温度が低過ぎると上記の靱性向上効果やひずみ時効の効果が十分に得られない。時効処理温度が高すぎると炭化物の過度な析出などにより強度や耐食性の劣化を引き起こす。また、Ac1点を超えた場合には逆変態オーステナイト相が生成して強度が著しく低下する。上記の靱性向上効果とひずみ時効の効果は、時効処理温度とともに、時効処理時間の影響を大きく受ける。種々検討の結果、下記(4)式を満たす時効処理条件範囲において、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上に調整することが好ましい。
13000<T(logt+20)<16000 …(4)
ここで、Tは絶対温度で表される時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。
〔表面硬化処理工程〕
時効処理後の鋼板に対して、必要に応じてプレス打抜きなどの手段を用いて所定の部品形状に加工したのち、表面硬化処理を施す。この表面硬化処理は、板状鋼材の表面に加工歪を付与する手法で行う。例えば、乾式または湿式研磨、ショットピーニングなどが挙げられる。通常、このような物理的に外力を付与する手法で表面硬化処理を施すと、表層部が加工硬化するとともに、表層部のみが塑性変形することにより表面に圧縮残留応力が付与される。このような表面硬化層は疲労特性の向上に有効である。しかし、耐衝撃疲労特性という、繰り返しの表面打撃に耐え得る疲労特性に関しては、単に表面硬化層を形成するだけでは十分に満足できる改善効果は得られない。
発明者らは、表面硬化層自体の硬さと鋼材内部(すなわち表面硬化層の下地)の硬さの差が大きい場合に、耐衝撃疲労特性が顕著に向上することを見出した。上述のように、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差H1−H0が70HV以上である表面硬化層を形成することが、耐衝撃疲労特性の改善に有効であり、H1−H0が150HV以上であることが更に効果的である。詳細な検討の結果、上述の工程に従って時効処理を終えた複相組織鋼材に対して加工歪を付与する表面効果処理を施したとき、表面と内部の硬さの差H1−H0を顕著に増大させることが可能となる。そのメカニズムについては十分に解明されていないが、マルテンサイト変態を経た磁性相とともにマトリックスを構成する「残留オーステナイト相」の存在が有効に機能しているものと考えられる。すなわち、表層部の残留オーステナイト相は研磨等の物理的な外力によって一部が加工誘起マルテンサイト相に変態し、その変態に伴う体積膨張とマルテンサイト相の加工硬化が表層部の顕著な硬度上昇に寄与しているのではないかと推察される。この表層部の硬度上昇をもたらす歪場は、表面残留圧縮応力の増大にも有効となる。表面硬化処理に供する前に必要となる残留オーステナイト相の量は前述のように少量でもよく、例えば0.5体積%でも有効である。0.8体積%以上であることがより効果的である。
研磨、ショットピーニングなどによる表面への加工歪の付与量が増大するほど、表面硬さH1も上昇する。従って、表面と内部の硬度差H1−H0が上記所定の値以上となるように表面硬化処理での加工歪付与量を調整する。
このようにして、吐出弁部品等の用途において極めて有用な高強度板状鋼材を得ることができる。
表1に示す鋼を溶製し、熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延の工程により板厚1.5mmの冷延鋼板を得た。この冷延鋼板に対し、オーステナイト安定温度域にある1000℃で均熱1minの溶体化処理を施した後、常温まで冷却した。溶体化処理温度から常温までの平均冷却速度は2℃/sec以上である。この複相化処理後に、一部の鋼板については冷間圧延を施した。その後、時効処理を施した。表2中に冷間圧延率および時効処理条件を示してある。冷間圧延率が0%のものは複相化処理後の組織状態のまま時効処理に供したことを意味する。
時効処理後の鋼板の板厚方向両側の表面について、湿式研磨する方法にて表面硬化処理を施した。湿式研磨は、使用する研磨紙の粒度をJIS R6010に従う粒度においてP120、P240、P400、P600の順で細かくしていく方法で行った。各鋼板とも同じ条件で表面硬化処理を施した。一部の比較例では表面硬化処理を省略した。このようにして得られた板状鋼材から採取した試験片を用いて、オーステナイト量、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)、表面硬さH1(HV0.01)、残留応力、疲労限界応力、耐衝撃疲労特性を以下の方法で調べた。
〔オーステナイト量〕
VSMを用いて上述の手法により磁気測定を行い、前記(8)式によりオーステナイト相の量(体積%)を定めた。
〔硬さ〕
断面硬さH0(HV30)および表面硬さH1(HV0.01)は上述の方法にてJIS Z2244:2009に従うビッカース硬さ測定にて求めた。その際、断面硬さH0は、圧延方向と板厚方向に平行な断面(L断面)について、板厚中心部から無作為に選んだ10点の測定点における測定値の平均値を採用した。表面硬さH1は、後述の衝撃疲労試験において治具1に打ち付けられる側の表面について、無作為に選んだ10点の測定点における測定値の平均値を採用した。
〔残留応力〕
残留応力は、X線を用いて以下の方法で求めた。Ψ角毎の回折角を縦軸2θ、横軸sin2Ψのグラフにプロットし、各点の座標から最小二乗法により直線を定め、その直線の勾配Mを算出する。表層部の残留応力σ(N/mm2)は下記(9)式により表される。残留応力値において、負の値は圧縮応力、正の値は引張応力を意味する。
残留応力σ=応力定数×M …(9)
詳細な測定条件は以下の通りである。解析方法:並傾法、コリメータサイズ:4mmφ、係数時間:200sec、ステップ:0.03°、測定角度:147.59〜167.78°、2θ:158°、振動幅:2°、Ψ角度:0〜45°(5°ピッチ)、管球:Cr、特性X線:Kα、管球電圧:30kV、管球電流:10mA、応力定数:−219MPa、ピークサーチ法:半価幅中点法。
〔疲労限界応力〕
平面曲げ疲労試験機を用いてJIS Z2275に従い疲労限界応力を測定した。試験片は長手方向を圧延平行方向とし、幅30mm、長さ90mm、幅方向両端にR=42.5mmのR部を有し、R部の最小板幅20mmのものを使用した。
〔耐衝撃疲労特性〕
直径10mmの円板状試験片を衝撃疲労試験に供した。図1に衝撃疲労試験機に試験片をセットした状態を模式的に示す。中央に内径4.0mmの貫通孔10を有する鋼製治具1と、中央にシリンダ状空洞20、その内部にばね21を有する鋼製治具2を用意し、図のように円板状試験片3をセットする。ばね21のばね定数は1.896である。矢印の方向に空気圧を付与して試験片3を押し上げたのち、空気圧を解除してばね21の復元力により試験片3を元の位置に押し戻すという動作を繰り返す。試験片3が元の位置に戻る際に、その表面が治具1の表面に打ち付けられる。この押し上げ−押し戻しの動作を107回繰り返したのち、試験片3を治具から取り出してマイクロスコープで表面観察を行った。表面に割れや欠けなどの表面損傷が観測されたものを×評価(耐衝撃疲労特性;不良)、観測されなかったものを○評価(耐衝撃疲労特性;良好)とし、○評価を合格と判定した。これらの結果を表2に示す。
Figure 0006403516
Figure 0006403516
本発明例の板状鋼材はいずれも板厚中心部の断面硬さH0が高く、高強度である。疲労限界応力も高い。また、硬度差H1−H0が大きく、高い表面残留応力を有し、耐衝撃疲労特性に優れる。
比較例bは表面硬化処理を省略したものであり、耐衝撃疲労特性が改善されていない。比較例cは時効処理条件が(4)式を外れて過剰であったものであり、高強度化が不十分となり、疲労限界応力も低い。比較例m、n、oは本発明の規定を外れる鋼種を適用したものであり、残留オーステナイト相が存在しない。これらは硬度差H1−H0が小さく、耐衝撃疲労特性に劣る。
1 鋼製治具
2 鋼製治具
3 円板状試験片
10 貫通孔
20 シリンダ状空洞
21 ばね

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有し、
    JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて、板厚中心部の断面硬さH0(HV30)が350HV以上であり、表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を有する板状鋼材。
    Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
    Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
    Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
    ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
  2. 更に、Mo:2.00%以下、Cu:4.00%以下、B:0.05%以下の1種以上を含有する化学組成を有する請求項1に記載の板状鋼材。
  3. 板厚が0.1〜4.0mmである請求項1または2に記載の板状鋼材。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の板状鋼材を用いた、圧縮機の吐出弁部品。
  5. 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有する鋼板を、オーステナイト安定温度域で溶体化処理したのち前記Ms値で表される温度(℃)より低温に冷却して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させる工程(複相化処理工程)、
    350〜550℃に加熱して下記(4)式を満たす条件で時効処理を行い、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上とする工程(時効処理工程)、
    表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことにより、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を形成する工程(表面硬化処理工程)、
    を上記の順に有する板状鋼材の製造方法。
    Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
    Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
    Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
    13000<T(logt+20)<16000 …(4)
    ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。(4)式において、Tは時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。
  6. 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜5.00%、Ni:1.00〜6.00%、Cr:10.0〜18.0%、N:0.010〜0.200%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定まるCr当量が13.0〜17.0、下記(2)式で定まるNi当量が7.0〜13.0、下記(3)式で定まるMs値が20.0〜130.0である化学組成を有する鋼板を、オーステナイト安定温度域で溶体化処理したのち前記Ms値で表される温度(℃)より低温に冷却して、オーステナイト相が10.0〜70.0体積%残留するようにマルテンサイト相を生成させる工程(複相化処理工程)、
    圧延率40%以下の冷間圧延を施して、オーステナイト相が0.5〜60.0体積%残留するように加工誘起マルテンサイト相を生成させる工程(冷間圧延工程)、
    350〜550℃に加熱して下記(4)式を満たす条件で時効処理を行い、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて板厚中心部の断面硬さH0(HV30)を350HV以上とする工程(時効処理工程)、
    表面に加工歪を付与する表面硬化処理を施すことにより、JIS Z2244:2009に従うビッカース硬さにおいて表面硬さH1(HV0.01)と前記H0の差が70HV以上である表面硬化層を形成する工程(表面硬化処理工程)、
    を上記の順に有する板状鋼材の製造方法。
    Cr当量=Cr+Mo+1.5Si …(1)
    Ni当量=Ni+30(C+N)+0.5Mn+0.3Cu …(2)
    Ms値={3000[0.068−(C+N)]+50[0.47−Si]+60[1.33−Mn]+110[8.9−(Ni+Cu)]+75[14.6−Cr]−32}×5/9 …(3)
    13000<T(logt+20)<16000 …(4)
    ここで、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。(4)式において、Tは時効処理温度(K)、tは時効処理均熱時間(h)である。
  7. 前記複相化処理に供する鋼板が、更に、Mo:2.00%以下、Cu:4.00%以下、B:0.05%以下の1種以上を含有する化学組成を有するものである請求項またはに記載の板状鋼材の製造方法。
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