JP5042914B2 - 高強度鋼およびその製造方法 - Google Patents

高強度鋼およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5042914B2
JP5042914B2 JP2008124520A JP2008124520A JP5042914B2 JP 5042914 B2 JP5042914 B2 JP 5042914B2 JP 2008124520 A JP2008124520 A JP 2008124520A JP 2008124520 A JP2008124520 A JP 2008124520A JP 5042914 B2 JP5042914 B2 JP 5042914B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ferrite
steel
bainite
hardness
cooling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008124520A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009275238A (ja
Inventor
由起子 山口
淳 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2008124520A priority Critical patent/JP5042914B2/ja
Publication of JP2009275238A publication Critical patent/JP2009275238A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5042914B2 publication Critical patent/JP5042914B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、フェライトを析出強化した複合組織を有する高強度鋼およびその製造方法に関するものである。
鋼の強度を高めるには、Cや、Si、Mnなどの元素の添加による固溶強化、Ti、Nbなどの析出物を利用した析出強化、金属組織を軟質のフェライトと硬質のマルテンサイトやベイナイトからなる複合組織とする組織強化が有効である。特に、自動車用部材は、軽量化や、安全性及び耐久性の向上が進められており、素材である鉄鋼材料の高強度化が要求されている。
しかし、固溶強化は、析出強化や組織強化に比べて効果が小さく、自動車用部材の素材に求められるような高強度化は困難である。そのため、ベイナイトやマルテンサイトなどの硬質相を組み合わせた複合組織鋼が開発されている。この複合組織鋼は、均一伸びにも優れるものの、フェライトと硬質相との硬度差に起因して、局部延性が低く、穴広げ性に劣る。
したがって、穴広げ性を高めるには、フェライトと硬質相との硬度差を減少させることが有効である。そのため、フェライトを析出強化し、伸び−穴拡げ率バランスの向上を図った高強度の鋼板が提案されている(例えば、特許文献1〜5)。
特開2004−225109号公報 特開2004−250749号公報 特開2004−339606号公報 特開2006−274318号公報 特開2007−009322号公報
しかし、従来の析出強化と組織強化を組み合わせた鋼は、フェライトの硬度がベイナイトなどの硬質相の硬度よりも小さい。
本発明は、フェライトのビッカース硬度(硬度ともいう。)をベイナイトと同等以上に高めた高強度鋼及びその製造方法の提供を課題とするものである。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.020〜0.150%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.2〜3.0%を含有し、さらに、Ti:0.03〜0.40%、Nb:0.01〜0.20%、V:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%の1種または2種以上を、
0.10≦56{(2(Ti/48)+2(Nb/93)+(7/4)×(V/51)+(3/2)×(Mo/96)}≦1.00
(なお、式中のTi、Nb、V、Moは、鋼中の各成分の含有量[質量%]である。)を満たす範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライトの体積分率が10〜60%であり、残部がベイナイトであり、該フェライトの結晶粒内に存在する炭化物の平均径が0.8〜3nmであり、個数密度が1×1017〜5×1018個/cmであり、前記フェライトのビッカース硬度Hvと前記ベイナイトのビッカース硬度Hvとの差(Hv−Hv)が0〜40Hvであることを特徴とする高強度鋼。
(2)上記(1)に記載の高強度鋼の製造方法であって、上記(1)に記載の成分からなる鋼片を、加熱温度≧1200℃、最終加工温度FT[℃]>920℃超の条件で熱間加工を行い、冷却速度10℃/s以上で580〜650℃の停止温度まで1次冷却し、該1次冷却の停止温度範囲内で3〜30s滞留させた後、冷却速度30℃/s以上で、400〜550℃の停止温度まで2次冷却することを特徴とする高強度鋼の製造方法。
本発明によれば、フェライトの硬度が、ベイナイトの硬度と同等以上である高強度鋼及びその製造方法を提供することができる。これにより、加工歪が導入された状態でのフェライトとベイナイトとの硬度差を低減し、加工性、特に導入される加工歪が極めて高い状態となる穴広げ性が、従来鋼以上に向上するという効果を奏する。
本発明は、フェライトの硬度をベイナイトの硬度と同等以上に高めたことを最大の特徴とする高強度鋼である。
従来の、金属組織がフェライトとベイナイトからなり、フェライトを析出強化した複合組織鋼は、硬質のベイナイトとフェライトの硬度差を小さくするものではあるが、フェライトの硬度はベイナイトの硬度よりも低い。このような従来鋼の応力−歪曲線を模式的に図1に示す。図1に示したように、ベイナイトは、析出強化されたフェライトに比べて、加工硬化し易く、降伏強度以上での応力−歪曲線の傾きが大きい。
また、ビッカース硬度は、図1の応力−歪曲線で、歪が8%程度の流動応力に対応している。図1に示したように、従来鋼では、フェライトの応力はベイナイトよりも小さく、歪が8%程度では、フェライトとベイナイトの応力の差(△Hv)は小さいものの、歪が大きくなるとベイナイトがフェライトよりも硬化するため、フェライトとベイナイトの応力の差が開いてしまう。したがって、加工時、硬質のベイナイトに起因して割れが発生し易くなる。特に、応力が最大値に達した後の延性、すなわち局部延性は、ベイナイトとフェライトの硬度差に起因して低下し、穴広げ性の向上の効果が小さいと考えられる。
これに対して、フェライトの硬度をベイナイトの硬度と同等以上に高くした、本発明の鋼の応力−歪曲線の一例を模式的に図2に示す。図1の従来鋼と同様に、ベイナイトの加工硬化により、歪が大きくなるとベイナイトがフェライトよりも硬化する。しかし、本発明の鋼は、ビッカース硬度に対応する8%の歪ではフェライトの応力が大きい(△Hvが正)ため、図1に示した従来鋼に比べると、ベイナイトとフェライトの応力の差(△Hv)は小さい。したがって、本発明の鋼は、従来鋼に比べると、穴広げ性の向上の効果が大きいと考えられる。
通常、フェライトは非常に軟質であり、ベイナイトと同等以上の硬度を得ることが難しい。そこで、本発明者らは、フェライトの硬度をベイナイトと同等以上に高めることを可能とする、析出物の形態について検討を行った。
炭化物生成元素であるTiを添加した鋼から、高さ12mm、直径8mmの試験片を採取した。試験片を、誘導加熱し、高さ方向に圧縮する熱間加工を施した後、Arガスを吹き付けて制御冷却を行った。制御冷却は、熱間加工後、1次冷却し、温度と時間を変化させて保持した後、2次冷却した。
試験後、フェライトとベイナイトのビッカース硬度を測定し、フェライトに生成した析出物を調査した。金属組織の観察は、試料を鏡面研磨し、ナイタールエッチングを施して、光学顕微鏡を用いて行った。フェライトおよびベイナイトの結晶粒内の硬度は、エッチング後の試料を用いて、マイクロビッカース試験機により荷重25gfを用い測定した。フェライト粒とベイナイト粒のそれぞれについて、20箇所以上の硬度を測定し、平均したものを各相の硬度とした。
フェライトの結晶粒内に析出した炭化物のサイズ及び個数密度の測定は、電解イオン顕微鏡(FIM)および三次元アトムプローブ測定法により、以下のようにして行った。
まず、測定対象の試料から、切断および電解研磨法により、必要に応じて電解研磨法とあわせて集束イオンビーム加工法を活用し、針状の試料を作製する。FIM観察により比較的広い視野で析出炭化物の有無を観察し、任意に30個の炭化物のサイズを測定し、その平均値を求める。なお、析出した炭化物のサイズは、炭化物の最大径の平均値(平均径)とした。析出した炭化物の最大径は、炭化物が球状の場合は直径、炭化物が板状の場合は対角長とした。
また、三次元アトムプローブ測定では、積算されたデータを再構築して実空間での実際の原子の分布像として求めることができる。析出炭化物の立体分布像の体積と析出炭化物の数から析出炭化物の個数密度(析出物密度)が求まる。
その結果、析出炭化物サイズ(炭化物の平均径)3nm以下の極微細な炭化物が、フェライトの硬度の上昇に有効であることがわかった。さらに、フェライトの硬度をベイナイトの硬度と同等以上に高めるには、個数密度を1×1017〜5×1018個/cmとすることが必要であることがわかった。
このような析出物を生成させると、フェライトのビッカース硬度Hvとベイナイトのビッカース硬度Hvとの差(Hv−Hv)が0〜40Hvになる。
以下、本発明について詳細に説明する。
Cは、本発明では、微細な炭化物を生じて析出強化に寄与する重要な元素であり、0.020%以上の添加が必要である。一方、C量が0.150%を超えると、セメンタイトが生じ、延性、特に、局部延性が低下する。
Siは、脱酸元素であり、0.01%以上を添加する。また、Siは固溶強化に寄与する元素であるが、含有量が1.50%を超えると加工性が劣化するため、Si量の上限を1.50%以下とする。
Mnは脱酸、脱硫に有効な元素であり、固溶強化にも寄与するため、0.2%以上を添加する。一方、Mn量が3.0%を超えると、偏析が生じやすくなり延性、特に、局部延性が低下する。
Ti、V、Nb、Moは、フェライトの粒内に微細な炭化物を析出し、析出強化に寄与する極めて重要な元素であり、Ti、V、Nb、Moのうちの1種または2種以上を添加する。
Tiは、フェライトの硬度を上昇させるため、0.03%以上を添加することが好ましい。一方、0.40%を超えるTiを添加すると炭化物が粗大化し、硬度の上昇の効果が小さくなり、延性が低下することがある。
V、Nb、MoもTiと同様にフェライト結晶粒内に炭化物を析出する元素であり、それぞれ、0.01%以上の添加が好ましい。一方、V、Nb、Moのそれぞれの含有量が0.20%を超えると、炭化物が粗大化し、硬度の上昇の効果が小さくなり、延性が低下することがある。
本発明では、上記Ti、Nb、V、Moを以下の式を満足するように含有することが必要である。
0.10≦56{(2(Ti/48)+2(Nb/93)+(7/4)×(V/51)+(3/2)×(Mo/96)}≦1.00
ここで、Ti、Nb、V、Moは鋼中の各成分の含有量[質量%]であり、意図的に添加しない場合は、0として計算する。また、
56{(2(Ti/48)+2(Nb/93)+(7/4)×(V/51)+(3/2)×(Mo/96)} ・・・ (式1)
は、Ti、Nb、V、Moが、鋼中で、それぞれ、TiC、NbC、V、MoCを形成した際の、析出物を構成する合金成分の原子数を析出硬化の指標としたものである。(式1)の値が0.10より小さいと、析出物を構成する合金成分が少ないため、熱延後の冷却時に析出処理を施しても充分な析出強化量が得られない。一方、(式1)の値が1.00よりも大きくなると、析出物を構成する合金成分が過剰になり、冷却中の析出物生成の制御が難しく、析出物は粗大化しやすくなり、延性や穴拡げ性の劣化を招くことがある。
残部は、Feと不可避的不純物であり、特に、N、P、Sの含有量の上限は、以下のように制限することが好ましい。
Nは、TiNを形成し、鋼の加工性を低下させるため、0.009%以下に制限することが好ましい。Pは、鋼の加工性や溶接性を低下させるため、0.1%以下に制限することが好ましい。Sは、熱間加工性を低下させる元素であり、0.005%以下に制限することが好ましい。
Alは、炉材から混入する可能性があり、脱酸剤として含有させても良いが、過剰に添加すると窒化物を形成し、鋼の延性を低下させるため、0.5%以下に制限することが好ましい。
また、本発明において、上記基本成分の他に、鋼板の強度の向上する目的で 固溶強化元素として、Cr、Wの添加も有効であり、これらの一方または双方を添加してもよい。
次に、本発明の高強度鋼の金属組織について説明する。
本発明の鋼の金属組織は、フェライトとベイナイトからなる複合組織である。フェライトの体積分率が10%以上であると、ベイナイト単相の場合に比べて延性が向上する。ベイナイトに比べて加工硬化係数が小さいフェライトの体積分率を20%にすると、特に均一伸びを増加させることができる。一方、フェライトの体積分率を60%以下にすることにより、加工硬化係数が大きいベイナイトの体積分率が増加するため、加工後の強度を高めることができる。また、フェライトの体積分率を50%超にすると、析出物の総量を増加させることになり、特に、局部延性が低下する。
析出強化量は、析出物1個あたりの強化量(転位をピンニングする力)と、析出物の個数密度で決まると考えることができる。フェライトの結晶粒内に析出した炭化物の平均径は、0.8nm未満では、析出物1個当たりのピンニング力が弱く、析出強化への寄与が小さい。一方、炭化物の平均径が3nmを超えると、総じて析出物の個数密度が小さくなり、析出強化量が低下するので、フェライトの硬度をベイナイトの硬度と同等以上に高めることが困難になる。
フェライトの結晶粒内に析出した炭化物の個数密度は、フェライトの硬度をベイナイトの硬度と同等以上に高めるために、1×1017個/cm以上にすることが必要である。一方、炭化物の個数密度が5×1018個/cmを超えると、析出物の平均径が非常に小さくなり、また析出強化量が小さくなる。
また、本発明において上記析出炭化物とは、炭化物だけでなく、炭化物中に窒素が若干混入した炭窒化物も含むものを意味する。
フェライトのビッカース硬度Hvとベイナイトのビッカース硬度Hvとの差(Hv−Hv)は0〜40Hvにする。(フェライトの硬度Hv−ベイナイトの硬度Hv)を0以上にすると、加工後のベイナイトの硬度とフェライトの硬度の差が小さくなり、延性、特に穴拡げ性が高くなる。一方、(フェライトの硬度Hv−ベイナイトの硬度Hv)を40Hv超にすると、フェライトの硬度が高すぎるため、加工硬化してもベイナイトの硬度がフェライトの硬度と同等にならず、穴拡げ性向上の効果が少ない。特に、導入される加工歪の大きい穴広げ性を向上させるためには、(フェライトの硬度Hv−ベイナイトの硬度Hv)を10Hv以上にすることが好ましい。また、フェライトを析出強化すると、ボイドの発生の起点となる析出物が増加するため、局部延性を向上させるには、(フェライトの硬度Hv−ベイナイトの硬度Hv)を30Hv以下にすることが好ましい。
次に、本発明の高強度鋼の製造方法について説明する。
本発明の高強度鋼は、熱間加工、例えば、熱間圧延や熱間鍛造によって製造される鋼材である。熱間加工後、冷却速度の制御が重要であることから、熱間圧延が好ましい。特に、自動車や建材に使用される、板厚が比較的薄い、鋼板や鋼帯を製造する熱間圧延が好適である。
鋼は、常法によって溶製、鋳造し、鋼片を製造する。生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。
熱間加工の加熱温度は、炭化物形成元素と炭素を十分に鋼材中に分解溶解させるため、1200℃以上とする。なお、鋳造後の鋼片を、そのまま1200℃以上の温度に保持して、熱間加工を開始しても良い。鋼片を1200℃以上に加熱する場合は、1時間以上の保持行うことが好ましい。
熱間加工の終了温度(最終加工温度FT)は、920℃超とする。これは、高温での炭化物の粗大化を抑制するためであり、熱間加工後は速やかに冷却を開始することが必要である。
熱間加工後は、1次冷却後、保持(滞留)して、更に2次冷却を行う。
1次冷却の冷却速度は、10℃/s以上とする。これは、高温での炭化物の析出、成長や、冷却中のフェライト変態を抑制するためである。1次冷却の冷却速度の上限は規定しないが、100℃/s超にすると、1次冷却の停止温度の制御が困難になる。
1次冷却の停止温度は、650℃を超えると炭化物が粗大化し、フェライトの硬度が低下する。一方、1次冷却の停止温度が580℃未満になると、炭化物の析出が不十分になる。
1次冷却の停止後、580〜650℃の1次冷却の停止温度範囲内で3〜30s滞留させる。これは、滞留時間が3s未満では炭化物の析出が不十分になり、30sを超えると炭化物が粗大化し、フェライトの硬度が低下するためである。なお、滞留時間は鋼の温度を580〜650℃の温度範囲内とする時間であり、緩冷却しても良く、加熱炉や誘導加熱などの加熱手段を用いてもよい。
更に、2次冷却を行う。2次冷却の冷却速度は、フェライトの体積率の増加やパーライトの生成を抑制するため、30℃/s以上とする。2次冷却の冷却速度の上限は特に規定しないが、100℃/s超にすると、停止温度の制御が困難になる。
2次冷却の停止温度は、フェライトの体積率の増加や、パーライトの生成を抑制するため、550℃以下とする。また、硬質なマルテンサイトの生成を抑制するため、2次冷却の停止温度の下限を400℃以上とする。
表1に示した成分組成を有する鋼を実験室で溶解し、鋼片とした。得られた鋼片から、高さ12mm、直径8mmの試験片を採取し、試験片を誘導加熱し、高さ方向に圧縮する熱間加工を施し、Arガスを吹き付けて制御冷却を行った。熱間加工(加熱温度、最終加工温度FT(終了温度))、制御冷却((1次冷却:冷却速度、停止温度)(1次冷却の停止後の滞留時間)(2次冷却:冷却速度、停止温度))の条件を表2に示す。
Figure 0005042914
Figure 0005042914
試験片を鏡面研磨し、ナイタールエッチングを施して、光学顕微鏡により、金属組織を観察し、ポイントカウント法により、フェライトの面積率を測定し、体積分率とした。フェライトおよびベイナイトの結晶粒内の硬度は、エッチング後の試料を用いて、マイクロビッカース試験機により荷重25gfを用い測定した。フェライト粒とベイナイト粒のそれぞれについて、20箇所以上の硬度を測定し、平均したものを各相の硬度とした。
析出炭化物サイズの測定には、測定対象の試料から、切断および電解研磨法により針状の試料を作製し、FIM観察により比較的広い視野で析出炭化物の有無を観察し、任意に30個の析出炭化物のサイズを測定し、その平均値を求めた。また三次元アトムプローブ測定で、測定体積と析出炭化物の数から析出炭化物の個数密度(析出物密度)を求めた。
結果を表3に示す。
Figure 0005042914
成分および製造条件が本発明の範囲内であれば、フェライトのビッカース硬度(Hv)が、ベイナイトのビッカース硬度(Hv)と同等以上になることがわかる。
一方、鋼No.Hは、Tiの添加量が少なく、(式1)の値も小さいため、析出物の密度が低下し、フェライトの硬度(Hv)が低い。また、鋼No.Iは、Tiの添加量が多く、(式1)の値も大きいため、析出物のサイズが大きくなり、フェライトの硬度(Hv)が低い。
鋼No.JはC量が少ないためフェライトの体積分率が大きく、析出物の密度が低下しており、鋼No.KはC量が多いためパーライトが生成している。
試験No.2および6は、1次冷却後の滞留時間が長く、試験No.2はフェライト単相となり、試験No.6はフェライトの体積分率が高くなっている。試験No.5は1次冷却後の滞留時間が短く、析出物のサイズが小さいため、フェライトの硬度が低い。
試験No.8は1次冷却の停止温度が高く、析出物のサイズが大きいため、フェライトの硬度が低い。試験No.9は、1次冷却の停止温度が低くベイナイト単相となっている。
試験No.12は2次冷却の冷却速度が遅くパーライトが生成し、試験No15は2次冷却の停止温度が低くマルテンサイトが生成している。
試験No17は1次冷却の冷却速度が遅く、析出物のサイズが大きいため、フェライトの硬度が低い。
本発明の高強度鋼は、フェライトの硬度が硬質相よりも高いことから、強度と延性、特に局部延性に優れ、バーリング加工性や伸びフランジ性が要求される、自動車などの強度部材の素材である熱延鋼板として利用することができる。
従来の析出強化型複合組織鋼の各相の応力−歪曲線の模式図である。 本発明の高強度鋼の各相の応力−歪曲線の模式図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.020〜0.150%、
    Si:0.01〜1.50%、
    Mn:0.2〜3.0%
    を含有し、さらに、
    Ti:0.03〜0.40%、
    Nb:0.01〜0.20%、
    V:0.01〜0.20%、
    Mo:0.01〜0.20%
    の1種または2種以上を、
    0.10≦56{(2(Ti/48)+2(Nb/93)+(7/4)×(V/51)+(3/2)×(Mo/96)}≦1.00
    (なお、式中のTi、Nb、V、Moは、鋼中の各成分の含有量[質量%]である。)を満たす範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    フェライトの体積分率が10〜60%であり、残部がベイナイトであり、
    該フェライトの結晶粒内に存在する炭化物の平均径が0.8〜3nmであり、個数密度が1×1017〜5×1018個/cmであり、
    前記フェライトのビッカース硬度Hvと前記ベイナイトのビッカース硬度Hvとの差(Hv−Hv)が0〜40Hvであることを特徴とする高強度鋼。
  2. 請求項1に記載の高強度鋼の製造方法であって、
    請求項1に記載の成分からなる鋼片を、加熱温度≧1200℃、最終加工温度FT[℃]>920℃超の条件で熱間加工を行い、
    冷却速度10℃/s以上で580〜650℃の停止温度まで1次冷却し、該1次冷却の停止温度範囲内で3〜30s滞留させた後、
    冷却速度30℃/s以上で、400〜550℃の停止温度まで2次冷却することを特徴とする高強度鋼の製造方法。
JP2008124520A 2008-05-12 2008-05-12 高強度鋼およびその製造方法 Active JP5042914B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008124520A JP5042914B2 (ja) 2008-05-12 2008-05-12 高強度鋼およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008124520A JP5042914B2 (ja) 2008-05-12 2008-05-12 高強度鋼およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009275238A JP2009275238A (ja) 2009-11-26
JP5042914B2 true JP5042914B2 (ja) 2012-10-03

Family

ID=41440937

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008124520A Active JP5042914B2 (ja) 2008-05-12 2008-05-12 高強度鋼およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5042914B2 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5636346B2 (ja) * 2011-08-17 2014-12-03 株式会社神戸製鋼所 成形性と母材および溶接熱影響部の疲労特性とを兼備した高強度熱延鋼板
US9689060B2 (en) 2011-08-17 2017-06-27 Kobe Steel, Ltd. High-strength hot-rolled steel sheet
JP5679452B2 (ja) * 2011-08-17 2015-03-04 株式会社神戸製鋼所 成形性と母材および溶接熱影響部の疲労特性とを兼備した高強度熱延鋼板
KR101638715B1 (ko) 2012-01-31 2016-07-11 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 발전기 림용 열연 강판 및 그 제조 방법
JP5637225B2 (ja) * 2013-01-31 2014-12-10 Jfeスチール株式会社 バーリング加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP6468001B2 (ja) * 2014-03-12 2019-02-13 新日鐵住金株式会社 鋼板および鋼板の製造方法
CN107208209B (zh) 2015-02-20 2019-04-16 新日铁住金株式会社 热轧钢板
WO2016132549A1 (ja) 2015-02-20 2016-08-25 新日鐵住金株式会社 熱延鋼板
CN107406929B (zh) 2015-02-25 2019-01-04 新日铁住金株式会社 热轧钢板
WO2016135898A1 (ja) * 2015-02-25 2016-09-01 新日鐵住金株式会社 熱延鋼板
KR102186320B1 (ko) 2016-08-05 2020-12-03 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 강판 및 도금 강판
CN109563586B (zh) 2016-08-05 2021-02-09 日本制铁株式会社 钢板及镀覆钢板
EP3604583A4 (en) * 2017-03-31 2020-09-02 Nippon Steel Corporation HOT ROLLED SHEET, FORGED STEEL PART AND RELATED PRODUCTION PROCESSES

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009275238A (ja) 2009-11-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5042914B2 (ja) 高強度鋼およびその製造方法
JP4528275B2 (ja) 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板
JP5858174B2 (ja) 低降伏比高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP4062118B2 (ja) 伸び特性および伸びフランジ特性に優れた高張力熱延鋼板とその製造方法
EP3859040A1 (en) Wear resistant steel having excellent hardness and impact toughness and method of manufacturing the same
JP4712838B2 (ja) 耐水素脆化特性および加工性に優れた高強度冷延鋼板
JP5457840B2 (ja) 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板
JP2004339606A (ja) 高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5487682B2 (ja) 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板およびその製造方法
KR20130037226A (ko) 인성이 우수한 고강도 열연 강판 및 그 제조 방법
JP5487683B2 (ja) 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板およびその製造方法
JP6945628B2 (ja) 低温域におけるバーリング性に優れた高強度複合組織鋼及びその製造方法
JP5363922B2 (ja) 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板
JP5521444B2 (ja) 加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP2005336526A (ja) 加工性に優れた高強度鋼板及びその製造方法
JP2009084637A (ja) 疲労特性及び伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板
JP6492862B2 (ja) 低温用厚鋼板及びその製造方法
JP4324226B1 (ja) 降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板
JP5302840B2 (ja) 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板
WO2019088104A1 (ja) 熱延鋼板及びその製造方法
JP4687122B2 (ja) 板厚方向の強度均一性および耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JP5741426B2 (ja) 高強度熱延鋼板及びその製造方法
JP2011026690A (ja) 省合金型高強度熱延鋼板及びその製造方法
JP2009001909A (ja) 高強度冷延鋼板の製造方法
JP2010159453A (ja) コイル内での強度ばらつきの小さい高強度冷延鋼板コイルおよびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100810

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120612

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120619

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120711

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5042914

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150720

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150720

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150720

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350