JP6376056B2 - 内装部品の製造方法 - Google Patents
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Description
このステッチ模様を糸の縫製によって形成する方法として、例えば、表皮材を基材に接着した上で、表皮材の表面側から縫い付けた上糸を基材の裏側に沿わした下糸に絡ませて縫製(通常のミシン縫い)する方法が、一般に知られている。
しかし、この通常のミシン縫いによる縫製方法では、縫う対象物である基材の裏面側に設け、ボビン等に収納した下糸を保持して上糸に絡ませる下糸供給装置が必要となる。ところが、自動車の内装部品においては、基材の裏面側に突設する補強リブや各種部品を取り付ける取付リブ等が形成されている場合が多い。そのため、ステッチ模様を形成する領域で、基材の裏面側に上記下糸供給装置を配置することは、リブ等による形状的制約が大きく、必ずしも簡単なことではない。
すなわち、特許文献1には、合成樹脂製の基材101に貫通形成された挿通孔102に、該基材の表面側から糸挿通手段103で糸104を挿通して(図10及び図11の(a)、(b)を参照)、該基材101の裏面側に前記糸によるループ部分105を形成し(図10及び図11の(c)を参照)、前記糸挿通手段103の該挿通孔102からの引き抜きに伴い、前記基材101の裏面における前記挿通孔102の周辺に突設された糸掛止部106に前記ループ部分105を引っ掛けて(図10及び図11の(d)を参照)、前記基材101の表面にステッチ模様109を設けること(図10及び図11の(e)を参照)を特徴とする装飾部材の製造方法が記載されている。また、特許文献1には、より具体的な製造方法として、ループ部分105に糸引掛手段107を挿通させ(図10(c)を参照)、前記糸引掛手段107を糸掛止部106の突出端に当接させて、前記ループ部分105を糸掛止部106に引っ掛けるようにした方法(図10(d)を参照)と、ループ部分105に空気噴出手段108により空気を吹き付け(図11(c)を参照)、ループ部分105を前記糸掛止部106側へ変形させて該糸掛止部106に引っ掛けるようにした方法(図11(d)を参照)とが記載されている。
すなわち、特許文献1の技術は、基材101に貫通形成された挿通孔102に、該基材101の表面側から糸挿通手段103で糸104を挿通して、該基材101の裏面側に糸によるループ部分105を形成するので、基材101には、レーザー加工機やドリル加工機等によって、予め貫通孔102を形成する必要がある。そのため、レーザー加工機やドリル加工機等の設備費が増加するとともに、それらの加工費用が増大する問題があった。
また、糸のループ部分105は、糸挿通手段103を基材101の表面側へ引き抜くとき、貫通孔102の摩擦力によって糸104の戻りが拘束されるので、糸挿通手段103とともに挿通された糸104が、その挿通方向に対して左右方向へ湾曲することによって形成される。すなわち、糸のループ部分105は、糸挿通手段103の軸心を含む垂直平面上に広がる輪として形成される。したがって、糸のループ部分105は、挿通孔102に隣接した位置に、基材101の裏面から外方へ突出した糸掛止部106と交差する方向には、輪が形成されにくいので、ループ部分105を糸掛止部106に引っ掛けることは容易ではない。
また、ループ部分105に糸引掛手段107を挿通させ、糸引掛手段107を糸掛止部106の突出端に当接させて、ループ部分105を糸掛止部106に引っ掛ける方法においても、糸引掛手段107をループ部分105の輪の中を潜らせてから、糸掛止部106の突出端に当接させるためには、糸引掛手段107を複雑な方向に操作させる必要がある。そのため、基材101の裏側で糸引掛手段107を操作する専用装置(図示せず)を設けなければならず、その専用装置の設置スペース上の問題や、設備費上の問題があった。
また、ループ部分105に空気噴出手段108により空気を吹き付け、ループ部分105を糸掛止部106側へ変形させて該糸掛止部106に引っ掛ける方法においても、基材101の斜め下方から吹き付ける空気の流れが、基材101の裏面側に形成された補強リブ等に邪魔されて安定せず、ループ部分105を糸掛止部106に引っ掛けることは容易ではない。
(1)基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、糸を表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで挿通して、当該糸のループ部分を前記基材の裏面側に挿通した糸と隣接して形成した糸掛止部に引っ掛けて前記表皮材の表面にステッチ模様を形成する内装部品の製造方法であって、
前記糸を先端部に係合した縫い針を備え、前記ステッチ模様の縫目の位置で、前記縫い針の先端部を前記基材の裏面側であって前記糸掛止部の先端部を越える位置まで挿通させるとともに、前記縫い針をその軸中心に所定角度だけ回転させた後に、前記縫い針を前記表皮材の表面側へ引き抜くことを特徴とする。
よって、本発明によれば、簡単な構造で、かつ安定して、糸のループ部を糸掛止部に引っ掛けることができる内装部品の製造方法を提供することができる。
前記糸を先端部に係合した縫い針を備え、前記ステッチ模様の縫目の位置で、前記縫い針の先端部が前記基材の裏面側であって前記糸掛止部の先端部を越える位置まで挿通させた後に、前記縫い針をその軸中心に所定角度だけ回転させながら前記表皮材の表面側へ引き抜くことを特徴とする。
よって、本発明によれば、簡単な構造で、かつ安定して、糸のループ部を糸掛止部に引っ掛けることができる内装部品の製造方法を提供することができる。
前記縫い針を軸中心に回転させる所定角度は、90°〜180°の範囲内であることを特徴とする。
前記基材には、前記ステッチ模様の縫目の位置で前記表皮材側に向けて拡幅された略円錐状の凹案内部を備え、前記縫い針の先端部が前記凹案内部に案内されて、その底中心部を挿通することを特徴とする。
なお、略円錐状の凹案内部は、基材の法線方向に対して、対称に形成しても、非対称に形成してもよい。略円錐状の凹案内部を非対称に形成することによって、ステッチ模様の風合いを変更することができる。
前記縫い針は、当該縫い針を前記基材に挿通するとき又は前記基材から引き抜くときに、前記基材から前記縫い針に作用する摩擦力を前記縫い針をその軸中心に回転させる回転力に変換する回転機構を備えていることを特徴とする。
まず、本実施形態に係る内装部品の製造方法によって形成するステッチ模様を備えた内装部品の構造を、図1〜図4を用いて説明する。図1に、本発明に係る実施形態である内装部品の製造方法によって製造した内装部品の部分斜視図を示す。図2に、図1に示すA―A断面図を示す。図3に、図1に示すB―B断面図を示す。図4に、図1に示す基材を射出成形する成形型の部分断面図を示す。
次に、本実施形態に係る内装部品の製造方法において、ステッチ模様を形成する方法を、図5〜図9を用いて説明する。図5に、本発明に係る実施形態である内装部品のステッチ模様を形成する方法(第1実施例)を表す断面図を示す。ここで、(a)は、縫い針を挿通する前の状態を示し、(b)は、縫い針を軸中心に所定角度回転させながら基材に挿通した状態を示し、(c)は、縫い針を表皮材の表面側へ引き抜く途中の状態を示し、(e)は、縫い針を引き抜き、糸のループ部分を糸掛止部に引っ掛けた状態を示す。図6に、本発明に係る実施形態である内装部品のステッチ模様を形成する方法(第2実施例)を表す断面図を示す。ここで、(a)は、縫い針を挿通する前の状態を示し、(b)は、縫い針をそのまま基材に挿通した状態を示し、(c)は、縫い針を軸中心に所定角度回転させながら表皮材の表面側へ引き抜く途中の状態を示し、(e)は、縫い針を引き抜き、糸のループ部分を糸掛止部に引っ掛けた状態を示す。
図5に示すように、本内装部品のステッチ模様を形成する方法(第1実施例)は、以下の手順で飾り糸3Sを表皮材2及び基材1に縫製する。
まず、図5(a)に示すように、縫製前の飾り糸3Sを先端部51に係合した縫い針5を、ステッチ模様の縫目の位置で、表皮材2の上方に配置する。縫い針5は、基材1に対して垂直状に起立させる。また、縫い針5の先端部51は、基材1に形成された凹案内部13の底中心部14に対向させる。
図6に示すように、本内装部品のステッチ模様を形成する方法(第2実施例)は、以下の手順で飾り糸3Sを表皮材2及び基材1に縫製する。
第2実施例の手順は、図6(b)に示すように、縫い針5の先端部51を基材1の裏面側であって糸掛止部16の先端部161を越える位置まで挿通させた後に、図6(c)に示すように、縫い針5をその軸中心に所定角度だけ回転させながら表皮材2の表面側へ引き抜くことが、前述した第1実施例の手順と異なる。ここでは、相違点のみを詳述する。図6(a)及び図6(d)の手順は、図5(a)及び図5(d)の手順と同様であるので、詳細な説明は割愛する。
次に、縫い針の回転角度を、図7を用いて詳細に説明する。図7に、図5及び図6において糸を先端部に係合した縫い針を基材の裏面側に挿通した状態を表す平面図を示す。ここで、(a)は、縫い針を挿通した状態を示し、(b)は、縫い針を軸中心に所定角度だけ回転させて基材裏面まで引き抜き、糸のループ部分を形成した状態を示す。
その結果、縫い針5を軸中心に回転させる所定角度α2は、90°〜180°の範囲内であることが好ましい。
以上の手順によれば、本内装部品10の表皮材2の表面に、上糸(飾り糸3S)のみによって、ステッチ模様3を形成することができる。
次に、本内装部品のステッチ模様を形成する方法(第1実施例、第2実施例)に使用可能な縫い針5の回転機構について、図8、図9を用いて説明する。図8に、図5に示す第1実施例に使用可能な縫い針を軸中心に所定角度だけ回転させる回転機構の正面図を示す。(a)は、縫い針が回転前の状態を示し、(b)は、縫い針が回転後の状態を示す。図9に、図6に示す第2実施例で使用可能な縫い針を軸中心に回転させる回転機構を備の正面図である。(a)は、縫い針が回転前の状態を示し、(b)は、縫い針が回転後の状態を示す。
以上のように、縫い針5を基材1に挿通するとき又は基材1から引き抜くときに、基材1から縫い針5に作用する摩擦力f1、f2を縫い針5をその軸中心に回転させる回転力に変換する回転機構6(6A、6B)を備えることによって、専用の回転駆動装置を不要とすることができる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態の第1実施例に係る内装部品の製造方法によれば、飾り糸3Sを先端部51に係合した縫い針5を備え、ステッチ模様3の縫目3A1、3B1の位置で、縫い針5の先端部51を基材1の裏面12側であって糸掛止部16の先端部161を越える位置まで挿通させるとともに、縫い針5をその軸中心に所定角度α2だけ回転させるので、基材1の裏面側に挿通された飾り糸3Sは、縫い針5の先端部51に係合する位置から基材裏面12に挿入する位置に向けて、縫い針5の軸部52に沿って略螺旋状に巻回された螺旋部3SRを形成することができる。また、その後に、縫い針5を表皮材2の表面側へ引き抜くので、縫い針5の軸部52に沿って略螺旋状に巻回された螺旋部3SRが、縫い針5の外周方向へ水平状に膨出された飾り糸3Sのループ部分3Tを形成することができる。そのため、飾り糸3Sのループ部分3Tが、基材1の裏面側で糸掛止部16を外周側から包囲して、飾り糸3Sのループ部分3Tを糸掛止部16に安定して引っ掛けることができる。その結果、縫い針5を軸中心に回転させる簡単な構造で、飾り糸3Sのループ部分3Tを糸掛止部16に確実に引っ掛けて、ステッチ模様3が形成された内装部品10を製造することができる。
2 表皮材
3 ステッチ模様
3A、3B アウターステッチ部
3C インナーステッチ部
3A1、3B1 縫目
3A2、3B2 飾り糸(糸)
3S 飾り糸(糸)
3SR 螺旋部
3T ループ部分
5 縫い針
6、6A、6B 回転機構
10 内装部品
11 基材表面
12 基材裏面
13 凹案内部
14 底中心部
15 挿通孔
16 糸掛止部
51 先端部
52 軸部
61A、61B 保持器
161 先端部
α2 所定角度
Claims (5)
- 基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、糸を表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで挿通して、当該糸のループ部分を前記基材の裏面側に挿通した糸と隣接して形成した糸掛止部に引っ掛けて前記表皮材の表面にステッチ模様を形成する内装部品の製造方法であって、
前記糸を先端部に係合した縫い針を備え、前記ステッチ模様の縫目の位置で、前記縫い針の先端部を前記基材の裏面側であって前記糸掛止部の先端部を越える位置まで挿通させるとともに、前記縫い針をその軸中心に所定角度だけ回転させた後に、前記縫い針を前記表皮材の表面側へ引き抜くことを特徴とする内装部品の製造方法。 - 基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、糸を表皮材の表面側から前記基材の裏面側に挿通して、当該糸のループ部分を前記基材の裏面側に挿通した糸と隣接して形成した糸掛止部に引っ掛けてステッチ模様が形成される内装部品の製造方法であって、
前記糸を先端部に係合した縫い針を備え、前記ステッチ模様の縫目の位置で、前記縫い針の先端部が前記基材の裏面側であって前記糸掛止部の先端部を越える位置まで挿通させた後に、前記縫い針をその軸中心に所定角度だけ回転させながら前記表皮材の表面側へ引き抜くことを特徴とする内装部品の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針を軸中心に回転させる所定角度は、90°〜180°の範囲内であることを特徴とする内装部品の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
前記基材には、前記ステッチ模様の縫目の位置で前記表皮材側に向けて拡幅された略円錐状の凹案内部を備え、前記縫い針の先端部が前記凹案内部に案内されて、その底中心部を挿通することを特徴とする内装部品の製造方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針は、当該縫い針を前記基材に挿通するとき又は前記基材から引き抜くときに、前記基材から前記縫い針に作用する摩擦力を前記縫い針をその軸中心に回転させる回転力に変換する回転機構を備えていることを特徴とする内装部品の製造方法。
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