JP6531717B2 - 内装部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、表皮材の表面にステッチ模様が形成された内装部品の製造方法に関する。
例えば、自動車の内装部品においては、硬質の合成樹脂からなる基材表面を柔らかい表皮材で覆い、その表皮材の表面にシボ模様とステッチ模様とを施すことによって、デザイン上の見栄えを向上し、高級感やソフト感を醸す工夫がなされている。このステッチ模様を糸の縫製によって形成する方法として、例えば、表皮材を基材に接着した上で、表皮材の表面側から縫い付けた上糸を基材の裏面側に沿わした下糸に絡ませて縫製(通常のミシン縫い)する方法が、一般に知られている。
しかし、この通常のミシン縫いによる縫製方法では、縫う対象物である基材の裏面側に設け、ボビン等に収納した下糸を保持して上糸に絡ませる下糸供給装置が必要となる。ところが、自動車の内装部品においては、基材の裏面側に突設する補強リブや各種部品を取り付ける取付リブ等が形成されている場合が多い。そのため、ステッチ模様を形成する領域で、基材の裏面側に上記下糸供給装置を配置することは、補強リブや取付リブ等による形状的制約が大きく、必ずしも簡単なことではない。
この問題に対応するため、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成した装飾部材及びその製造方法が、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。すなわち、特許文献1には、図18(a)〜(e)に示すように、合成樹脂製の基材101に貫通形成された挿通孔102に、該基材の表面側から糸挿通手段103で糸104を挿通して(図18(a)、(b)を参照)、該基材101の裏面側に前記糸によるループ部分105を形成し、そのループ部分105に空気噴出手段106により空気を吹き付け(図18(c)を参照)、前記糸挿通手段103の該挿通孔102からの引き抜きに伴い、前記基材101の裏面における前記挿通孔102の周辺に突設された糸掛止部107に前記ループ部分105を引っ掛けて(図18(d)を参照)、前記基材101の表面にステッチ模様108を設ける方法(図18(e)を参照)が記載されている。
また、特許文献2には、図20(a)〜(c)に示すように、ステッチ模様形成領域としての薄肉部201が形成されたプラスチック製の基材202の上記薄肉部201に対し係合部204aを有するニードル204をその上方に面直に対応させて配置し(図20(a)を参照)、次いで、該ニードル204を前進させることにより、その係合部204aに糸206を係合せしめた状態で上記基材202の薄肉部201にステッチ模様の縫目に相当すべく所定間隔をあけて複数の細孔203を穿設するとともに、該各細孔203に上記糸206を基材裏側でループを形成するよう圧入し(図20(b)を参照)、その後、上記ニードル204を後退させることにより、上記糸の各圧入部(ループ部分)205を上記各細孔周りの樹脂で締付固定する(図20(c)を参照)ことを特徴とするステッチ模様を有する内装品200の製造方法が開示されている。
特開2011−98467号公報 特開昭63−199641号公報
しかしながら、特許文献1の技術には、以下のような問題があった。すなわち、特許文献1の技術は、基材101に貫通形成された挿通孔102に、該基材101の表面側から糸挿通手段103で糸104を挿通して、該基材101の裏面側に糸によるループ部分105を形成するので、基材101には、レーザー加工機等によって、予め挿通孔102を精度よく形成する必要がある。また、その挿通孔102に、糸挿通手段103を精度よく挿通する必要もある。そのため、高精度のレーザー加工機や糸挿通装置等が必要となり、それらの設備費や加工費が増加する問題があった。
また、糸のループ部分105は、糸挿通手段103を基材101の表面側へ引き抜くとき、挿通孔102の拘束力(摩擦力)によって糸104の戻りが拘束されるので、糸挿通手段103とともに挿通された糸104が、その挿通方向に対して左右方向へ湾曲することによって形成される。すなわち、糸のループ部分105は、糸挿通手段103の軸心を含む垂直平面上に左右へ広がる輪として形成される。
ところが、図19(a)〜(d)に示すように、糸挿通手段103に対して糸供給側に形成されたループ部分105が、糸係止部107に引っ掛かってしまうと(図19(a)、(b)を参照)、糸挿通手段103を基材101の表面側に引き抜いて、進行方向前方へ移動しようとするとき、糸挿通手段103へ糸の供給ができず、糸切れが生じやすい(図19(c)、(d)を参照)という問題があった。
この問題を解決するため、糸挿通手段103に対して糸供給側と反対側に形成されたループ部分105に空気噴出手段106により空気を吹き付け、当該ループ部分105を糸掛止部107側へ変形させようとしても、左右両側に広がるループ部分105が共に変形して、糸供給側と反対側に形成されたループ部分105のみを糸掛止部107に引っ掛けることは、容易ではなかった。
また、特許文献2の技術には、以下のような問題があった。すなわち、特許文献2の技術は、基材202の薄肉部201に対し係合部204aを有するニードル204を前進させることにより、その係合部204aに糸206を係合せしめた状態で基材202の薄肉部201に細孔203を穿設するとともに、該各細孔203に上記糸206を基材裏側でループを形成するよう圧入し、その後、ニードル204を後退させるので、図21(a)、(b)に示すように、細孔203とニードル204との間に挟まれた糸206は、ニードル204を後退させるとき、圧入部(ループ部分)205がニードル204の両側に形成され、圧入部(ループ部分)205は、ニードル204とともに基材202の上方へ引き上げられやすい(図21(a)を参照)。その結果、ニードル204を基材表面側へ後退させたときに、圧入部(ループ部分)205が細孔203から抜け、ステッチ模様を形成する糸206の抜け(糸ほつれ)が生じやすい(図21(b)を参照)という問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成した内装部品の製造方法であって、簡単な構造で、かつ安定して、ステッチ模様を構成する糸のループ部分を基材の裏側で縫い針に対して糸供給側と反対側のみに形成でき、糸ほつれ及び糸切れを有効に回避しつつ、当該ループ部分を基材の裏面側に固定できることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る内装部品の製造方法は、次のような構成を有している。
(1)基材を保持する受け治具と縫い針を有する糸縫製装置とを備え、前記基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、前記縫い針の先端部に形成された糸孔に係合された糸を前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで前記縫い針と共に挿通してから、前記縫い針を引き戻す際に、前記基材の裏面側に形成される前記糸のループ部分を前記基材の裏面側に固定して前記表皮材の表面にステッチ模様を形成する内装部品の製造方法であって、
前記縫い針の先端部が前記基材の裏面側における挿通終端の高さから引き戻されるとき、前記縫い針に供給する糸に前記糸縫製装置の糸供給元から引張荷重をかけて、前記縫い針に対して糸供給側に形成されるループ部分のみを消去させ、前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分を前記基材の裏面側に固定することを特徴とする。
本発明においては、縫い針の先端部が基材の裏面側における挿通終端の高さから引き戻されるとき、縫い針に供給する糸に糸縫製装置の糸供給元から引張荷重をかけて、縫い針に対して糸供給側に形成されるループ部分のみを消去させるので、縫い針の引き戻し途中において、糸供給側の糸は、基材の裏面側において縫い針の針軸方向に沿って直線状に伸展することによって、基材との摩擦抵抗が低減され、縫い針とともに引き抜かれやすくなる。一方、縫い針に対して糸供給側と反対側の糸は、基材の拘束力により縫い針の引き戻し途中に基材の裏面側で屈曲することによって、基材との摩擦抵抗が更に増大して、縫い針とともに引き抜かれにくくなり、ループ部分を形成する。その結果、ループ部分が基材の裏面側で糸供給側と反対側のみに所定の大きさで安定して形成され、糸ほつれが生じることなく、当該ループ部分を基材の裏面側に固定することができる。また、縫い針が次の縫目に移動する時、糸供給元から縫い針への糸の供給が阻害されないので、糸切れを回避することができる。
よって、本発明によれば、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成した内装部品の製造方法であって、簡単な構造で、かつ安定して、ステッチ模様を構成する糸のループ部分を基材の裏側で縫い針に対して糸供給側と反対側のみに形成でき、糸ほつれ及び糸切れを有効に回避しつつ、当該ループ部分を基材の裏面側に固定できる。
(2)(1)に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針の糸供給側の外周面には、前記糸孔から基端部に向けて針軸方向に沿って形成された凹溝を備え、当該凹溝には前記糸供給側の糸が案内されていることを特徴とする。
本発明においては、縫い針の糸供給側の外周面には、糸孔から基端部に向けて針軸方向に沿って形成された凹溝を備え、当該凹溝には糸供給側の糸が案内されているので、縫い針の先端部に形成された糸孔に係合された糸を表皮材の表面側から基材の裏面側まで縫い針と共に挿通したとき、凹溝に案内されている糸供給側の糸に対する基材からの拘束力(摩擦抵抗)を低減させることができる。そのため、縫い針に供給する糸に糸供給元から引張荷重をかけたとき、糸供給側の糸は凹溝に案内されて簡単に引き戻され、縫い針に対して糸供給側に形成されるループ部分のみを簡単に消去させ、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を確実に残したうえで基材の裏面側に固定することができる。
(3)(1)又は(2)に記載された内装部品の製造方法において、
前記受け治具には、前記基材の裏面側における挿通終端の高さまで挿通された前記縫い針の糸供給側の外周面と針軸方向に沿って略平行に近接して形成された糸規制手段を備え、前記縫い針を引き戻す際に、前記糸規制手段によって糸供給側の糸を前記糸孔を通して糸供給側と反対側へ押し出すことを特徴とする。
本発明においては、受け治具には、基材の裏面側における挿通終端の高さまで挿通された縫い針の糸供給側の外周面と針軸方向に沿って略平行に近接して形成された糸規制手段を備え、縫い針を引き戻す際に、糸規制手段によって糸供給側の糸を糸孔を通して糸供給側と反対側へ押し出すので、基材の裏面側には、糸のループ部分が、縫い針に対して糸供給側と反対側のみに、より一層安定して形成される。また、ループ部分が糸供給側と反対側のみに安定して形成されるので、基材の裏面側からループ部分が抜けるのを、より一層防止することができる。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記基材の裏面側には、前記縫い針に対して糸供給側と反対側に形成した糸掛止部を備え、前記縫い針の引き戻し途中で、前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分に対して、前記受け治具に装着した空気噴出手段から空気を前記糸掛止部に向けて吹き付けることによって、当該ループ部分を前記糸掛止部に引っ掛けて、当該ループ部分を前記基材の裏面側に固定することを特徴とする。
本発明においては、基材の裏面側には、縫い針に対して糸供給側と反対側に形成した糸掛止部を備え、縫い針の引き戻し途中で、糸供給側と反対側に形成されたループ部分に対して、受け治具に装着した空気噴出手段から空気を糸掛止部に向けて吹き付けることによって、当該ループ部分を糸掛止部に引っ掛けて、当該ループ部分を基材の裏面側に固定するので、縫い針に対して糸供給側と反対側に形成されたループ部分のみを糸掛止部に安定して引っ掛けることによって糸ほつれを回避しつつ、当該ループ部分を基材の裏面側に確実に固定することができる。また、縫い針に対して糸供給側と反対側に形成されたループ部分のみを糸掛止部に安定して引っ掛けるので、基材の表面側に引き抜かれた縫い針が進行方向前方へ移動しようとするとき、糸供給元から縫い針への糸の供給がスムーズにでき、糸切れを回避することができる。
(5)(4)に記載された内装部品の製造方法において、
前記受け治具には、前記糸掛止部を挟んで前記空気噴出手段と対向する位置に、前記空気噴出手段から前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分に吹き付けた空気を基材外方へ排出する空気排出流路を備えたことを特徴とする。
本発明においては、受け治具には、糸掛止部を挟んで空気噴出手段と対向する位置に、空気噴出手段から糸供給側と反対側に形成されたループ部分に吹き付けた空気を基材外方へ排出する空気排出流路を備えたので、空気噴出手段から糸供給側と反対側に形成されたループ部分に吹き付けた空気を糸掛止部に向けて整流させるとともに、その逆流を防止することができる。そして、糸掛止部に向けて整流された空気によって、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を糸掛止部の方向に倒して糸掛止部に引っ掛けやすくさせることができる。その結果、基材の受け治具に空気排出流路を備えるという簡単な構造で、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を糸掛止部に確実に引っ掛けて、ステッチ模様を安定して形成することができる。
(6)(4)又は(5)に記載された内装部品の製造方法において、
前記糸掛止部は、前記ステッチ模様の縫目間隔より狭い間隔で略均一に突設され、先端側に鉤型の係止部を備えていることを特徴とする。
本発明においては、糸掛止部は、ステッチ模様の縫目間隔より狭い間隔で略均一に突設され、先端側に鉤型の係止部を備えているので、空気噴出手段から糸供給側と反対側に形成されたループ部分に空気を吹き付けられたとき、空気の流れが多少乱れても、当該ループ部分は、略均一に突設された糸掛止部の内、いずれかの糸掛止部に引っ掛けられる。また、糸掛止部に引っ掛けられたループ部分を、鉤型の係止部によって糸掛止部の先端から外れにくくさせることができる。そのため、空気噴出手段から空気を吹き付けるときに、空気の流れが多少乱れても、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を糸掛止部に安定して引っ掛けることができる。
(7)(4)乃至(6)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記空気噴出手段の空気噴出方向は、前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分の内周側に向け、かつ、当該ループ部分の水平方向へ広がる向きに対する上面視の方位角を40〜50°とし、前記基材に対する側面視の仰角を40〜50°としたことを特徴とする。
本発明においては、空気噴出手段の空気噴出方向は、糸供給側と反対側に形成されたループ部分の内周側に向け、かつ、当該ループ部分の水平方向へ広がる向きに対する上面視の方位角を40〜50°とし、基材に対する側面視の仰角を40〜50°としたので、ループ部分を略楕円状に変形させながら糸掛止部の先端側から基端側へ向けて撓ませるように、空気噴出手段から吹き付ける空気の流れを制御させることができる。そのため、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を糸掛止部により一層安定的に引っ掛けることができる。
(8)(4)乃至(7)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記糸縫製装置は、前記縫い針を針軸心周りに任意の角度だけ回転可能に保持するとともに、前記空気噴出手段は、空気噴出方向を前記縫い針の針軸心周りに回転した回転角度と同一角度だけ回転させることを特徴とする。
本発明においては、糸縫製装置は、縫い針を針軸心周りに任意の角度だけ回転可能に保持するとともに、空気噴出手段は、空気噴出方向を縫い針の針軸心周りに回転した回転角度と同一角度だけ回転させるので、縫い針を針軸心周りに回転させることによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分の針軸心から広がる方向を変更させた場合においても、当該ループ部分に対する空気噴出手段の空気噴出方向を略一定に保持させることができる。例えば、基材の側端部側において空気噴出手段と基材の補強リブ等との干渉を回避させるため、縫い針を針軸心周りに回転させることによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分の針軸心から広がる方向を変更させると同時に、空気噴出手段のノズル部を縫い針の針軸心周りに回転した回転角度と同一角度だけ回転させる。これによって、空気噴出手段のノズル部と基材の補強リブとの干渉を回避しつつ、当該ループ部分に対する空気噴出手段の空気噴出方向を略一定に保持させることができ、当該ループ部分を糸掛止部に安定して引っ掛けることができる。その結果、空気噴出手段のノズル部と基材の補強リブ等との干渉に対する自由度を高めつつ、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を糸掛止部により一層安定的に引っ掛けることができる。
(9)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記基材の裏面側には、前記縫い針によって前記糸が挿通されたゴム系部材を備え、当該ゴム系部材に前記縫い針にて形成された糸挿通孔が縮径することによって前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分の根元部を固定することを特徴とする。
本発明においては、基材の裏面側には、縫い針によって糸が挿通されたゴム系部材を備え、当該ゴム系部材に縫い針にて形成された糸挿通孔が縮径することによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分の根元部を固定するので、ステッチ模様を形成する糸の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針を使用してゴム系部材に糸を挿通しても、当該ゴム系部材に縫い針にて形成された糸挿通孔が縮径する締付力によって、当該ループ部分の根元部を確実に拘束することができる。また、糸の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針を使用できるので、縫い針の折損や変形等が生じにくく、ステッチ模様形成領域で薄肉部を設ける等のステッチ模様に対する意匠上の制約条件を課する必要がない。その結果、ステッチ模様に対する意匠上の制約条件を課することなく、縫い針の折損や変形等を防止し、基材の裏面側に糸が挿通されたゴム系部材を備えるという簡単な構造で、ステッチ模様を形成する糸のループ部分をゴム系部材を介して基材に確実に固定できる。なお、ゴム系部材の裏面側には、下方に突出する突起部を備え、当該突起部に糸供給側と反対側に形成されたループ部分を係合させることもできる。突起部に当該ループ部分を係合させることによって、糸ほつれをより一層防止することができる。
(10)(9)に記載された内装部品の製造方法において、
前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分を、前記ゴム系部材の裏面側に接着剤によって固定することを特徴とする。
本発明においては、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を、ゴム系部材の裏面側に接着剤によって固定するので、糸挿通孔による糸の締付力を接着剤の接着力によって補完することができる。そのため、ゴム系部材における材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、ステッチ模様を形成する糸の糸ほつれをより長期的に阻止することができる。その結果、ステッチ模様の糸のループ部分を、ゴム系部材と接着剤とを介してより一層確実に基材に固定できる。
(11)(1)乃至(10)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記糸縫製装置には、前記縫い針の外周側で前記表皮材を押圧する表皮押圧部材を備え、当該表皮押圧部材が、縫目の位置で縫い針周囲の前記表皮材を所定量だけ圧縮するとともに、当該縫目と次の縫目との間で前記表皮材の圧縮量を徐々に増減させることを特徴とする。
本発明においては、糸縫製装置には、縫い針の外周側で表皮材を押圧する表皮押圧部材を備え、当該表皮押圧部材が、縫目の位置で縫い針周囲の表皮材を所定量だけ圧縮するとともに、当該縫目と次の縫目との間で表皮材の圧縮量を徐々に増減させるので、ステッチ模様を形成する糸が、縫目の周辺では表皮材内方に食い込み状に形成され、縫目と縫目の中間では表皮材外方に突出状に形成される。そのため、ステッチ模様の糸が縫製された周辺の表皮材は、縫製された糸に沿って凹凸状に形成され、縫製の立体感(質感)を向上させることができる。その結果、ステッチ模様に対する見栄えを向上させつつ、糸供給側と反対側に形成されたループ部分を確実に基材に固定できる。
本発明によれば、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成した内装部品の製造方法であって、簡単な構造で、かつ安定して、ステッチ模様を構成する糸のループ部分を基材の裏側で縫い針に対して糸供給側と反対側のみに形成でき、糸ほつれ及び糸切れを有効に回避しつつ、当該ループ部分を基材の裏面側に固定できる。
本発明に係る実施形態である内装部品の製造方法によって製造した内装部品の斜視図である。 図1に示す内装部品の第1実施形態に係るステッチ模様を表すA―A断面図である。 図1に示す内装部品の第1実施形態に係るステッチ模様を加工するステッチ加工装置のB−B断面図である。 図3に示すループ部分を形成するときの詳細断面図である。 図4に示すC−C断面図である。 図3に示すステッチ加工装置を側方から見た断面図である。 図3に示すステッチ加工装置における縫い針進行方向とノズルの噴出方向との関係を表す上面図である。 第1実施形態の製造方法を表す工程断面図である。図8(a)は、縫い針を挿通終端まで挿通したときの状態を示し、図8(b)は、縫い針の先端を挿通終端の高さから糸掛止部の先端の高さまで引き戻す途中に、縫い針に供給する糸に糸供給元から引張荷重を掛け、糸供給側のループ部分を消去させた状態を示し、図8(c)は、糸供給側と反対側のループ部分に空気噴出手段から空気を噴出させて糸掛止部に向けてループ部分を倒した状態を示し、図8(d)は、縫い針を基材の表面側に引き抜いた状態を示し、図8(e)は、縫い針を次の縫い位置に移動させて基材に差し込む状態を示す。 図1に示す内装部品の第2実施形態に係るステッチ模様を表すA―A断面図である。 図9に示すD―D断面図である。 図9に示すゴム系部材の糸拘束力に対してショアA硬度及び厚さの好適範囲を表す試験結果グラフである。 図10に示すステッチ模様を形成する縫い針の引き戻し途中の断面図である。 図12に示すE−E断面図である。 図12に示す表皮押圧部材の動作説明図である。図14(a)は、縫目の位置で縫い針周囲の表皮材を所定量だけ圧縮する状態を示し、図14(b)は、縫目と縫目との中間位置で表皮材の圧縮量を零に戻す状態を示し、図14(c)は、次の縫目の位置で縫い針周囲の表皮材を再度所定量だけ圧縮する状態を示す。 第2実施形態の製造方法を表す工程断面図である。図15(a)は、縫い針を挿通終端まで挿通したときの状態を示し、図15(b)は、縫い針の先端を挿通終端の高さから引き戻す際、糸規制手段によって糸供給側の糸を糸孔を通して糸供給側と反対側へ押出して、糸供給側と反対側にループ部分を形成する状態を示し、図15(c)は、縫い針がゴム系部材から抜けると、糸挿通孔が縮径する状態を示し、図15(d)は、縫い針を基材の表面側に引き抜いた状態を示す。 図3に示すステッチ加工装置の変形例の断面図である。 図16に示すステッチ加工装置における基材の受け治具の斜視図である。 特許文献1に記載された装飾部品のステッチ模様を形成する手順を表す工程断面図である。 図18に示す手順において、糸供給側に形成されたループ部分が、糸係止部に引っ掛かってしまう場合、糸切れが発生するメカニズムを説明する断面図である。 特許文献2に記載された内装部品のステッチ模様を形成する手順を表す工程断面図である。 図20に示す手順において、基材裏面側に形成されたループ部分が、ニードルとともに基材表面側に引き抜かれ、糸ほつれが発生するメカニズムを説明する断面図である。
次に、本発明に係る第1実施形態及び第2実施形態である内装部品の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、第1実施形態に係るステッチ模様を備えた内装部品の構造について簡単に説明し、次に、そのステッチ模様を形成するステッチ加工装置とその加工手順を詳細に説明する。次に、第2実施形態に係るステッチ模様を備えた内装部品の構造について簡単に説明し、次に、そのステッチ模様を形成するステッチ加工装置とその加工手順を詳細に説明する。また、第1実施形態に係るステッチ加工装置の変形例について説明する。
<第1実施形態に係るステッチ模様を備えた内装部品の構造>
まず、第1実施形態に係る製造方法によって形成するステッチ模様を備えた内装部品の構造を、図1、図2を用いて簡単に説明する。図1に、本発明に係る実施形態である内装部品の製造方法によって製造した内装部品の斜視図を示す。図2に、図1に示す内装部品の第1実施形態に係るステッチ模様を表すA―A断面図を示す。
図1、図2に示すように、第1実施形態に係る内装部品10は、例えば、車両の運転席及び助手席の前方に配置するインストルメントパネルであって、所要の形状に形成された硬質の合成樹脂からなる基材1と、基材表面に接着された軟質の合成樹脂からなる表皮材2とから構成されている。基材1は、例えば、射出成形されたポリプロピレン(PP)製である。また、表皮材2は、表面側の延性に優れた表皮21と基材側の発泡層22とで構成されている。表皮21には、高級感やソフト感を醸すため、革調のシボ模様が形成されている。表皮21は、例えば、0.5〜0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)製である。発泡層22は、例えば、3〜4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)製である。また、表皮材2の表面には、車両左右方向に延びるステッチ模様3が形成されている。
ステッチ模様3は、糸31を表皮材2の表面側から基材1の裏面側まで縫い針と共に挿通して、縫い針を引き戻す際に縫い針に対して糸供給側と反対側に形成される糸のループ部分32を、基材1の裏面側に挿通した糸31の周辺に突設された糸掛止部4に引っ掛けて縫製されている。基材1には、縫い針が挿通することによって、糸挿通孔11が形成されている。糸31は、例えば、外径が0.5〜0.8mm程度の合成繊維製である。糸31の外径は、基材1の糸挿通孔11の内径より小さい。糸掛止部4は、基材1の裏面から所定の高さまで鉛直状に突設された複数の支柱部41と、支柱部41の先端側に形成された鉤型の係止部42と、支柱部41の基端側を保持する帯状体43とを備え、帯状体43が基材1の裏面に接合されている。鉤型の係止部42は、略半球状に形成しても略L字状等に形成してもよい。ループ部分32は、支柱部41に周方向から巻回され、ループ部分32が支柱部41から外れようとするのを、係止部42によって防止されている。また、糸掛止部4は、複数列の支柱部41がステッチ模様3に沿って帯状に配設されている。支柱部41同士の間隔P2が、糸31の外径より大きくステッチ模様3の縫目間隔P3より狭い間隔で略均一に突設されている。なお、糸掛止部4は、支柱部41が基材1の裏面から直接突設するように形成してもよい。また、ループ部分32を糸掛止部4に引っ掛けた状態で、ループ部分32と糸掛止部4とを接着剤9等によって固定してもよい。
<第1実施形態に係るステッチ加工装置の構造>
次に、第1実施形態に係るステッチ模様を形成するステッチ加工装置の構造を、図3〜図7を用いて詳細に説明する。図3に、図1に示す内装部品の第1実施形態に係るステッチ模様を加工するステッチ加工装置のB−B断面図を示す。図4に、図3に示すループ部分を形成するときの詳細断面図を示す。図5に、図4に示すC−C断面図を示す。図6に、図3に示すステッチ加工装置を側方から見た断面図を示す。図7に、図3に示すステッチ加工装置における縫い針進行方向とノズルの噴出方向との関係を表す上面図を示す。
図3〜図7に示すように、本ステッチ加工装置20には、表皮材2の上方に配置された糸縫製装置5と、基材1の裏面に当接し基材1を所定の姿勢で保持する受け治具6と、受け治具6に装着され基材1の下方に配置された空気噴出手段7とを備えている。
糸縫製装置5は、先端部51Tに糸31を挿通(係合)する糸孔511が形成された縫い針51を有し、糸孔511に挿通された糸31を表皮材2の表面側から基材1の裏面側まで縫い針51と共に挿通してから表皮材2の表面側まで引き戻し、ステッチ模様3の縫目間隔P3だけ縫い針51を移動させる装置である。縫い針51は、基材1に対して略面直方向(矢印Hの方向)に進退させる。縫い針51の糸供給側の外周面には、糸孔511から基端部に向けて針軸方向に沿って形成された凹溝512を備え、当該凹溝512には糸供給側の糸31Aが案内されている。凹溝512の深さは、糸の外径寸法と同程度である。一方、糸供給側と反対側の糸31Bは、縫い針51の外周面と基材1の糸挿通孔11との間で狭圧され、その動きが拘束されている。また、糸縫製装置5には、縫い針51に供給する糸31に対して糸供給元から引張荷重T2を掛けて、糸を糸供給元に引き戻す糸引き戻し機構を備えている。また、糸縫製装置5には、保持する縫い針51を針軸心周り(矢印Rの方向)に任意の角度だけ回転させる針回転機構も備えている。針回転機構を作動させ、縫い針51を針軸心周りに回転させることによって、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の針軸心から広がる方向を変更させることができる。
また、受け治具6には、基材1の裏面側における挿通終端の高さまで挿通された縫い針51の糸供給側の外周面51Sと針軸方向に沿って略平行に近接して形成された糸規制手段62を備えている。糸規制手段62は、縫い針51の進行方向Fと平行な平壁面として形成されている。受け治具6の縫い針51に対して糸供給側と反対側には、糸31Bのループ部分32が形成できる空間を備えている。糸規制手段62は、縫い針51を引き戻す際に、糸供給側の糸31Aを糸孔51を通して糸供給側と反対側(矢印T1の方向)へ押し出すので、基材1の裏面側には、糸31Bのループ部分32が、縫い針51に対して糸供給側と反対側のみに安定して形成される。縫い針51の糸供給側の外周面51Sと糸規制手段62との間隔は、互いに干渉しない程度で、糸31の外径以下の狭い距離が好ましく、糸31の外径に対して1〜0.7倍程度の距離が更に好ましい。
また、基材1の受け治具6には、空気噴出手段7から縫い針51に対して糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の内周側に向けて吹き付けた空気Q1を整流して基材外方へ排出する空気排出流路61を備えている。空気排出流路61は、糸掛止部4を挟んで空気噴出手段7と対向する位置に配設されている。空気排出流路61は、受け治具6における基材1との当接部に略U字状の溝部61Mが形成され、当該溝部61Mを基材1が蓋することによって略矩形状断面に形成される。空気排出流路61を通過する空気Q2の流入口611は、溝側壁612を挟んで連続的に配置されている。流入口611における溝側壁612は、糸掛止部4に隣接した基材裏面に向けて傾斜状に延設されている。
また、空気噴出手段7には、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の内周側に向けて空気Q1を噴出するノズル部71と、ノズル部71を保持し縫い針51の針軸心と同軸上に配置されノズル部71の空気噴出方向を縫い針51の針軸心周り(矢印Rの方向)に回転した回転角度と同一角度だけ回転させる本体部72とを備えている。本体部72の回転中心は、糸縫製装置5の縫い針51の針軸心と略同一線上に配置されている。空気噴出手段7の本体部72は、糸縫製装置5が縫い針51の進行方向(矢印Fの方向)に移動する時、これに追従して糸縫製装置5と同一方向に移動する。また、縫い針51の先端部51Tが基材1の裏面側における挿通終端の高さD1から糸掛止部先端の高さD2まで引き抜かれる途中で、縫い針51に供給する糸31Aに糸供給元から引張荷重T2をかけて、縫い針51に対して糸供給側に形成されたループ部分のみを消去させると同時に又はその後に、空気噴出手段7は、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に対して、ノズル部71から空気Q1を糸掛止部4に向けて吹き付けるように形成されている(図3、図6を参照)。
より具体的には、図6、図7に示すように、ノズル部71から噴出させる空気Q1の焦点位置P1は、基材下面からの高さD3を、縫い針51に対して糸供給側に形成されたループ部分のみを消去させたときの縫い針51の先端P0高さと略同一とし、ノズル部71の空気噴出方向を特定する仰角θ1を40〜50°とし、かつ、方位角θ2を40〜50°として設定することが好ましい。また、図6に示す側面視において、上記焦点位置P1と縫い針51との水平距離L1は、縫い針51とノズル部71との水平距離L2と略同一であることが好ましい。ここで、仰角θ1とは、ノズル部71を側面から見たときにノズル部71と焦点位置P1とを結ぶ直線が基材裏面と交差する点の内角を意味する(図6を参照)。また、方位角θ2とは、ノズル部71を基材1の上面から見たときノズル部71と焦点位置P1とを結ぶ直線が糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の水平方向へ広がる向き(縫い針の進行方向F)の直線と交差する点の内角を意味する(図7を参照)。
<第1実施形態に係るステッチ模様の加工手順>
次に、第1実施形態に係るステッチ模様を、上述したステッチ加工装置を用いて形成する加工手順を、図8を用いて説明する。図8に、第1実施形態の製造方法を表す工程断面図を示す。図8(a)は、縫い針を挿通終端まで挿通したときの状態を示し、図8(b)は、縫い針の先端を挿通終端の高さから糸掛止部の先端の高さまで引き戻す途中に、縫い針に供給する糸に糸供給元から引張荷重を掛け、糸供給側のループ部分を消去させた状態を示し、図8(c)は、糸供給側と反対側のループ部分に空気噴出手段から空気を噴出させて糸掛止部に向けてループ部分を倒した状態を示し、図8(d)は、縫い針を基材の表面側に引き抜いた状態を示し、図8(e)は、縫い針を次の縫い位置に移動させて基材に差し込む状態を示す。
まず、図8(a)に示すように、糸31を糸孔511に挿通(係合)した縫い針51を挿通終端まで挿通する。このとき、糸孔511は、縫い針51の進行方向Fと直交する方向に向いている。また、基材裏面に対する挿通終端における針先端高さD1は、糸掛止部4の先端高さを大幅に越えている。次に、図8(b)に示すように、縫い針51の先端部51Tが挿通終端の高さと糸掛止部先端の高さとの中間付近に来る位置(D1−H1)まで縫い針51を引き抜きながら、縫い針51に供給する糸31に糸供給元から引張荷重T2をかけて、縫い針51に対して糸供給側に形成されたループ部分のみを消去させる。したがって、縫い針51の進行方向後側に形成され、糸供給側と反対側に形成されるループ部分32のみが残る。
次に、図8(c)に示すように、縫い針51を所定量(H2)だけ引き抜きながら、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に対して、ノズル部71から空気Q1を糸掛止部4に向けて吹き付ける。縫い針51の先端部に形成した糸孔511の高さが、糸掛止部4の係止部42より低くなる位置まで、ノズル部71から空気Q1を吹き付ける。ノズル部71からの空気Q1によって、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32が、糸掛止部4の支柱部41に絡むように倒される。
次に、図8(d)に示すように、縫い針51の先端部51Tを基材1の表面側に所定量(H3)だけ引き抜き、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32のみを糸掛止部4に引っ掛ける。次に、図8(e)に示すように、縫い針51の先端部51Tを次の縫目の位置に縫い針51の進行方向Fに沿って移動させて、基材1に挿通させる。
以上のように、下糸を使用せず、上糸31だけでステッチ模様3を形成する上で、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32のみを糸掛止部4に引っ掛けることができ、糸ほつれ及び糸切れを有効に回避できる。
なお、基材1の側端部付近で、ステッチ模様3を形成する場合には、縫い針51を針軸心周りに、例えば、約90°回転させるとともに、空気噴出手段7の空気噴出方向を縫い針51の回転角度と同一角度だけ回転させる。これによって、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に対する空気噴出手段7の空気噴出方向を略一定に保持させつつ、ノズル部71の位置を縫い針51の進行方向後側へ移動させることができる。そのため、基材1の側端部において空気噴出手段7のノズル部71と基材1のリブ等との干渉を回避させることができる。以上のように、縫い針51を針軸心周りに回転させることによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の針軸心から広がる方向を変更させ、当該ループ部分32に対する空気噴出手段7の空気噴出方向を略一定に保持させることによって、ノズル部71と基材1のリブ等との干渉を回避させると同時に、当該ループ部分32を糸掛止部4に安定して引っ掛けることができる。
<第2実施形態に係るステッチ模様を備えた内装部品の構造>
次に、第2実施形態に係る製造方法によって形成するステッチ模様を備えた内装部品の構造を、図9〜図11を用いて簡単に説明する。図9に、図1に示す内装部品の第2実施形態に係るステッチ模様を表すA―A断面図を示す。図10に、図9に示すD―D断面図を示す。図11に、図9に示すゴム系部材の糸拘束力に対してショアA硬度及び厚さの好適範囲を表す試験結果グラフを示す。
図9、図10に示すように、第2実施形態に係る内装部品10Bは、第1実施形態に係る内装部品10と同様に、所要の形状に形成された硬質の合成樹脂からなる基材1と、基材表面に接着された軟質の合成樹脂からなる表皮材2とから構成されている。基材1は、例えば、射出成形されたポリプロピレン(PP)製である。また、表皮材2は、表面側の延性に優れた表皮21と基材側の発泡層22とで構成されている。表皮21には、高級感やソフト感を醸すため、革調のシボ模様が形成されている。表皮21は、例えば、0.5〜0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)製である。発泡層22は、例えば、3〜4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)製である。また、表皮材2の表面には、車両左右方向に延びるステッチ模様3が形成されている。
また、ステッチ模様3は、糸31を表皮材2の表面側から基材1の裏面側まで縫い針と共に挿通して、縫い針を引き戻す際に糸供給側と反対側に形成されたループ部分32(図12を参照)を基材1の裏面側に備えたゴム系部材8が拘束することによって、基材1に固定されている。すなわち、基材1の裏面側には、縫い針によって糸31が挿通されたゴム系部材8を備え、当該ゴム系部材8に縫い針にて形成された糸挿通孔81が縮径することによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束され、その結果、ステッチ模様3の糸31が基材1に固定されている。なお、糸31は、例えば、外径が0.5〜0.8mm程度の合成繊維製であり、糸31の外径は、基材1に縫い針によって形成された糸挿通孔11の内径(例えば、1.5〜2.0mm)より小さい。
ゴム系部材8は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の材質からなる帯状に形成された板状ゴム体であって、ショアA硬度(JIS K 6253)がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることが好ましい。ゴム系部材8は、上記所定の硬度及び厚さを有する平坦な板状ゴム体であって、予め基材1の裏面形状に沿わせて形成する必要はない。また、ゴム系部材8は、基材1の裏面に当接させるだけであるので、ゴム系部材8を基材1の裏面に接着させる必要もない。なお、エチレンプロピレンゴム(EPDM)製の板状ゴム板では、ショアA硬度(JIS K 6253)がA70〜80の範囲内で、厚さが1.0〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。上記好適範囲は、図11に示す試験結果から求めたものである。
図11に示す試験は、ゴム系部材8の材質をニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)の3水準に、硬度(ショアA)を50、60、70、80、90の5水準に、板厚(厚さmm)を1.0、2.0、3.0の3水準に選定して、後述する加工手順に従いステッチ模様3を形成したとき、その縫製結果を表(表皮材側)と裏(ゴム系部材側)で評価した。縫製結果は、○が表で糸31の浮き上がりがなく裏でループ部分32の大きさが均等である場合を示し、△が表で糸31の浮き上がりが一部にあり、裏でループ部分32の不揃いが一部にある場合を示す。
図11に示すように、縫製結果が○となった好適範囲Qは、ショアA硬度がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることが判明した。この場合、材質は、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)のいずれでも良い。また、ゴム系部材8の材質をエチレンプロピレンゴム(EPDM)とした場合には、好適範囲Qは、ショアA硬度(JIS K 6253)がA60〜80の範囲内で、厚さが1.0〜2.0mmの範囲内であることが判明した。
なお、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32は、ステッチ模様3の縫製後にゴム系部材8の裏面側に付着された接着剤9によって、当該ゴム系部材8と接着されていることが好ましい。ゴム系部材8における材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、糸挿通孔81の伸縮による糸31の締付力を接着剤9の接着力によって補完することができるからである。ステッチ模様3の縫製後に、接着剤9によってループ部分32をゴム系部材8の裏面側に接着させる理由は、ステッチ模様3の縫製前では、接着剤9が縫い針51に付着して縫い針51の基材1への挿通抵抗が大幅に増加するからである。ここでは、接着剤9として、例えば、塗布型の接着剤を用いたが、それ以外に、接着剤9として、例えば、接着テープを用いてもよい。また、ゴム系部材8の裏面側には、下方に突出する突起部(図示せず)を備え、当該突起部に糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を係合させることもできる。突起部に当該ループ部分32を係合させることによって、糸挿通孔81が縮径する締付力を補完することができる。この場合、突起部に当該ループ部分32を係合させた状態で、接着剤9によって当該ループ部分32をゴム系部材8の裏面側に接着させてもよい。
<第2実施形態に係るステッチ加工装置の構造>
次に、第2実施形態に係るステッチ加工装置の構造を、図12〜図14を用いて詳細に説明する。図12に、図10に示すステッチ模様を形成する縫い針の引き戻し途中の断面図を示す。図13に、図12に示すE−E断面図を示す。図14に、図12に示す表皮押圧部材の動作説明図を示す。図14(a)は、縫目の位置で縫い針周囲の表皮材を所定量だけ圧縮する状態を示し、図14(b)は、縫目と縫目との中間位置で表皮材の圧縮量を零に戻す状態を示し、図14(c)は、次の縫目の位置で縫い針周囲の表皮材を再度所定量だけ圧縮する状態を示す。
図12〜図14に示すように、本ステッチ加工装置20Bには、表皮材2の上方に配置された糸縫製装置5と、基材1及びゴム系部材8の裏面に当接し基材1及びゴム系部材8を所定の姿勢で保持する受け治具6Bとを備えている。
糸縫製装置5は、先端部51Tに糸31を挿通(係合)する糸孔511が形成された縫い針51を有し、糸孔511に挿通された糸31を表皮材2の表面側から基材1の裏面側まで縫い針51と共に挿通してから表皮材2の表面側まで引き戻し、ステッチ模様3の縫目間隔だけ縫い針51を移動させる装置である。縫い針51の糸供給側の外周面には、糸孔511から基端部に向けて針軸方向に沿って形成された凹溝512を備え、当該凹溝512には糸供給側の糸31Aが案内されている。凹溝512の深さは、糸の外径寸法と同程度である。また、糸縫製装置5には、縫い針51に供給する糸31Aに対して糸供給元から引張荷重を掛けて、糸31Aを糸供給元に引き戻す糸引き戻し機構を備えている。
また、糸縫製装置5には、縫い針51の外周側で表皮材2を押圧する表皮押圧部材92を備え、表皮押圧部材92は、装置本体に装着された支持部921と、支持部921の先端側に略円錐状に形成された押え部922とを備えている。表皮押圧部材92の押え部922が、縫目の位置で縫い針周囲の表皮材2を所定量だけ略円錐状に圧縮するとともに、当該縫目と次の縫目との間で表皮材2の圧縮量を徐々に増減させるように上下動する。
具体的には、図14(a)に示すように、縫目の位置で縫い針51周囲の表皮材2を表皮押圧部材92の押え部922が、所定量だけ圧縮した状態で、縫い針51を進退させる。次に、図14(b)に示すように、表皮押圧部材92の押え部922を斜め上方へ移動させながら、縫目と縫目との中間位置で表皮材2の圧縮量を零に戻し、次の縫目の位置に向けて斜め下方に移動させる。そして、図14(c)に示すように、次の縫目の位置で縫い針周囲の表皮材2を再度所定量だけ圧縮した状態で、縫い針51を進退させる。上記方法によって、ステッチ模様3を形成する糸31が、縫目の周辺では略円錐状に圧縮された表皮材内方に食い込み状に形成され、縫目と縫目の中間では表皮材外方に突出状に形成される。その結果、ステッチ模様3の糸31が縫製された周辺の表皮材2は、縫目に沿って凹凸状に形成され、縫製の立体感(質感)を向上させることができる。
また、受け治具6には、基材1の裏面側における挿通終端の高さまで挿通された縫い針51の糸供給側の外周面51Sと針軸方向に沿って略平行に近接して形成された糸規制手段62Bを備えている。糸規制手段62Bは、縫い針51の進行方向Fと平行な平壁面として形成されている。縫い針51に対して糸供給側と反対側には、糸31のループ部分32が形成できる空間を隔てた逃げ壁面64を備えている。逃げ壁面64の上方には、ゴム系部材8の受け座63を支持する傾斜壁面65が形成されている。糸規制手段62Bは、縫い針51を引き戻す際に、糸供給側の糸31を糸孔511を通して糸供給側と反対側(矢印T1の方向)へ押し出すので、基材1の裏面側には、糸31のループ部分32が、縫い針51に対して糸供給側と反対側のみに安定して形成される。縫い針51の糸供給側の外周面51Sと糸規制手段62との間隔は、互いに干渉しない程度で、糸31の外径以下の距離が好ましく、糸31の外径に対して1〜0.7倍程度の距離が更に好ましい。
<第2実施形態に係るステッチ模様の加工手順>
次に、第2実施形態に係るステッチ模様を、上述したステッチ加工装置を用いて形成する加工手順を、図15を用いて説明する。図15に、第2実施形態の製造方法を表す工程断面図を示す。図15(a)に、縫い針を挿通終端まで挿通したときの状態を示し、図15(b)に、縫い針の先端を挿通終端の高さから引き戻す際、糸規制手段によって糸供給側の糸を糸孔を通して糸供給側と反対側へ押出して、糸供給側と反対側にループ部分を形成する状態を示し、図15(c)に、縫い針がゴム系部材から抜けると、糸挿通孔が縮径する状態を示し、図15(d)に、縫い針を基材の表面側に引き抜いた状態を示す。
まず、図15(a)に示すように、糸31を糸孔511に挿通(係合)した縫い針51を表皮材2の表面側からゴム系部材8の裏面側まで貫通させ、その先端部51Tを挿通終端位置まで挿通させる。このとき、糸孔511は、縫い針51の進行方向(紙面と面直方向)と直交する方向に向いている。なお、縫い針51の先端部51Tの挿通終端位置は、縫い針51を引き戻した際にゴム系部材8の裏面側に形成される糸31のループ部分32の周長が、10〜30mm程度となるように設定する。次に、図15(b)に示すように、縫い針51を挿通終端位置から引き抜きながら、縫い針51に供給する糸31に糸供給元から引張荷重T2を掛けるとともに、糸規制手段62Bが糸供給側の糸31を糸孔511を通して糸供給側と反対側(矢印T1の方向)へ押し出すので、ゴム系部材8の裏面側には、糸31のループ部分32が、縫い針51に対して糸供給側と反対側のみに安定して形成される。
次に、図15(c)に示すように、縫い針51がゴム系部材8から抜けると、ゴム系部材8に縫い針51によって穿設された糸挿通孔81が弾性力で縮径しながら、ループ部分32の根元部321を拘束しようとする。次に、図15(d)に示すように、縫い針51の先端部51Tを表皮材2の表面側に引き抜いたときには、ゴム系部材8の糸挿通孔81が糸31の外径以下に縮径して、ループ部分32の根元部321を拘束する。以上のように、下糸を使用せず、上糸(糸)31だけでステッチ模様3を形成する内装部品の製造方法において、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32のみを基材1の裏面側に当接するゴム系部材8によって固定でき、糸ほつれ及び糸切れを有効に回避できる。
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る内装部品の製造方法によれば、縫い針51の先端部51Tが基材1の裏面側における挿通終端の高さから引き戻されるとき、縫い針51に供給する糸31に糸縫製装置5の糸供給元から引張荷重T2をかけて、縫い針51に対して糸供給側に形成されるループ部分のみを消去させるので、縫い針51の引き戻し途中において、糸供給側の糸31Aは、基材1の裏面側において縫い針51の針軸方向に沿って直線状に伸展することによって、基材1との摩擦抵抗が低減され、縫い針51とともに引き抜かれやすくなる。一方、縫い針51に対して糸供給側と反対側の糸31Bは、基材1の拘束力により縫い針51の引き戻し途中に基材1の裏面側で屈曲することによって、基材1との摩擦抵抗が更に増大して、縫い針51とともに引き抜かれにくくなり、ループ部分32を形成する。その結果、ループ部分32が基材1の裏面側で糸供給側と反対側のみに所定の大きさで安定して形成され、糸ほつれが生じることなく、当該ループ部分32を基材1の裏面側に固定することができる。また、縫い針51が次の縫目に移動する時、糸供給元から縫い針51への糸31の供給が阻害されないので、糸切れを回避することができる。
よって、本実施形態によれば、下糸を使用せず、上糸(糸)31だけでステッチ模様3を形成した内装部品10、10Bの製造方法であって、簡単な構造で、かつ安定して、ステッチ模様3を構成する糸31のループ部分32を基材1の裏側で縫い針51に対して糸供給側と反対側のみに形成でき、糸ほつれ及び糸切れを有効に回避しつつ、当該ループ部分32を基材1の裏面側に固定できる。
また、本実施形態によれば、縫い針51の糸供給側の外周面51Sには、糸孔511から基端部に向けて針軸方向に沿って形成された凹溝512を備え、当該凹溝512には糸供給側の糸31Aが案内されているので、縫い針51の先端部51Tに形成された糸孔511に係合された糸31を表皮材2の表面側から基材1の裏面側まで縫い針51と共に挿通したとき、凹溝512に案内されている糸供給側の糸31Aに対する基材1からの拘束力(摩擦抵抗)を低減させることができる。そのため、縫い針51に供給する糸31Aに糸供給元から引張荷重T2をかけたとき、糸供給側の糸31Aは凹溝に案内されて簡単に引き戻され、縫い針51に対して糸供給側に形成されるループ部分のみを簡単に消去させ、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を確実に残したうえで基材1の裏面側に固定することができる。
また、本実施形態によれば、受け治具6、6Bには、基材1の裏面側における挿通終端の高さまで挿通された縫い針51の糸供給側の外周面51Sと針軸方向に沿って略平行に近接して形成された糸規制手段62、62Bを備え、縫い針51を引き戻す際に、糸規制手段62、62Bによって糸供給側の糸31Aを糸孔511を通して糸供給側と反対側へ押し出すので、基材1の裏面側には、糸31のループ部分32が、縫い針51に対して糸供給側と反対側のみに、より一層安定して形成される。また、ループ部分32が糸供給側と反対側のみに安定して形成されるので、基材1の裏面側からループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。
また、本実施形態によれば、基材1の裏面側には、縫い針51に対して糸供給側と反対側に形成した糸掛止部4を備え、縫い針51の引き戻し途中で、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に対して、受け治具6に装着した空気噴出手段7から空気を糸掛止部4に向けて吹き付けることによって、当該ループ部分32を糸掛止部4に引っ掛けて、当該ループ部分32を基材1の裏面側に固定するので、縫い針51に対して糸供給側と反対側に形成されたループ部分32のみを糸掛止部4に安定して引っ掛けることによって糸ほつれを回避しつつ、当該ループ部分32を基材1の裏面側に確実に固定することができる。また、縫い針51に対して糸供給側と反対側に形成されたループ部分32のみを糸掛止部4に安定して引っ掛けるので、基材1の表面側に引き抜かれた縫い針51が進行方向前方へ移動しようとするとき、糸供給元から縫い針51への糸31の供給がスムーズにでき、糸切れを回避することができる。
また、本実施形態によれば、受け治具6には、糸掛止部4を挟んで空気噴出手段7と対向する位置に、空気噴出手段7から糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に吹き付けた空気Q1を基材外方へ排出する空気排出流路61を備えたので、空気噴出手段7から糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に吹き付けた空気Q1を糸掛止部4に向けて整流させるとともに、その逆流を防止することができる。そして、糸掛止部4に向けて整流された空気Q1によって、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を糸掛止部4の方向に倒して糸掛止部4に引っ掛けやすくさせることができる。その結果、基材1の受け治具6に空気排出流路61を備えるという簡単な構造で、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を糸掛止部4に確実に引っ掛けて、ステッチ模様3を安定して形成することができる。
また、本実施形態によれば、糸掛止部4は、ステッチ模様3の縫目間隔より狭い間隔で略均一に突設され、先端側に鉤型の係止部42を備えているので、空気噴出手段7から糸供給側と反対側に形成されたループ部分32に空気を吹き付けられたとき、空気Q1の流れが多少乱れても、当該ループ部分32は、略均一に突設された糸掛止部4の内、いずれかの糸掛止部4に引っ掛けられる。また、糸掛止部4に引っ掛けられたループ部分32を、鉤型の係止部42によって糸掛止部4の先端から外れにくくさせることができる。そのため、空気噴出手段7から空気Q1を吹き付けるときに、空気Q1の流れが多少乱れても、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を糸掛止部4に安定して引っ掛けることができる。
また、本実施形態によれば、空気噴出手段7の空気噴出方向は、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の内周側に向け、かつ、当該ループ部分32の水平方向へ広がる向きに対する上面視の方位角θ2を40〜50°とし、基材1に対する側面視の仰角θ1を40〜50°としたので、ループ部分32を略楕円状に変形させながら糸掛止部4の先端側から基端側へ向けて撓ませるように、空気噴出手段7から吹き付ける空気Q1の流れを制御させることができる。そのため、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を糸掛止部4により一層安定的に引っ掛けることができる。
また、本実施形態によれば、糸縫製装置5は、縫い針51を針軸心周りに任意の角度だけ回転可能に保持するとともに、空気噴出手段7は、空気噴出方向を縫い針51の針軸心周りに回転した回転角度と同一角度だけ回転させるので、縫い針51を針軸心周りに回転させることによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の針軸心から広がる方向を変更させた場合においても、当該ループ部分32に対する空気噴出手段7の空気噴出方向を略一定に保持させることができる。例えば、基材1の側端部側において空気噴出手段7と基材1の補強リブ等との干渉を回避させるため、縫い針51を針軸心周りに回転させることによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の針軸心から広がる方向を変更させると同時に、空気噴出手段7のノズル部71を縫い針51の針軸心周りに回転した回転角度と同一角度だけ回転させる。これによって、空気噴出手段7のノズル部71と基材1の補強リブとの干渉を回避しつつ、当該ループ部分32に対する空気噴出手段7の空気噴出方向を略一定に保持させることができ、当該ループ部分32を糸掛止部4に安定して引っ掛けることができる。その結果、空気噴出手段7のノズル部71と基材1の補強リブ等との干渉に対する自由度を高めつつ、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を糸掛止部4により一層安定的に引っ掛けることができる。
また、本実施形態によれば、基材1の裏面側には、縫い針51によって糸31が挿通されたゴム系部材8を備え、当該ゴム系部材8に縫い針51にて形成された糸挿通孔81が縮径することによって糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の根元部321を固定するので、ステッチ模様3を形成する糸31の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針51を使用してゴム系部材8に糸31を挿通しても、当該ゴム系部材8に縫い針51にて形成された糸挿通孔81が縮径する締付力によって、当該ループ部分32の根元部321を確実に拘束することができる。また、糸31の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針51を使用できるので、縫い針51の折損や変形等が生じにくく、ステッチ模様形成領域で薄肉部を設ける等のステッチ模様3に対する意匠上の制約条件を課する必要がない。その結果、ステッチ模様3に対する意匠上の制約条件を課することなく、縫い針51の折損や変形等を防止し、基材1の裏面側に糸31が挿通されたゴム系部材8を備えるという簡単な構造で、ステッチ模様3を形成する糸31のループ部分32をゴム系部材8を介して基材1に確実に固定できる。なお、ゴム系部材8の裏面側には、下方に突出する突起部を備え、当該突起部に糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を係合させることもできる。突起部に当該ループ部分32を係合させることによって、糸ほつれをより一層防止することができる。
また、本実施形態によれば、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を、ゴム系部材8の裏面側に接着剤9によって固定するので、糸挿通孔81による糸31の締付力を接着剤9の接着力によって補完することができる。そのため、ゴム系部材8における材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、ステッチ模様3を形成する糸31の糸ほつれをより長期的に阻止することができる。その結果、ステッチ模様3の糸31のループ部分32を、ゴム系部材8と接着剤9とを介してより一層確実に基材1に固定できる。
また、本実施形態によれば、糸縫製装置5には、縫い針51の外周側で表皮材2を押圧する表皮押圧部材92を備え、当該表皮押圧部材92が、縫目の位置で縫い針周囲の表皮材2を所定量だけ圧縮するとともに、当該縫目と次の縫目との間で表皮材2の圧縮量を徐々に増減させるので、ステッチ模様3を形成する糸31が、縫目の周辺では表皮材内方に食い込み状に形成され、縫目と縫目の中間では表皮材外方に突出状に形成される。そのため、ステッチ模様3の糸31が縫製された周辺の表皮材2は、縫製された糸31に沿って凹凸状に形成され、縫製の立体感(質感)を向上させることができる。その結果、ステッチ模様3に対する見栄えを向上させつつ、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32を確実に基材1に固定できる。
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することができる。例えば、上記第1実施形態では、空気噴出手段7には、糸供給側と反対側に形成されたループ部分32の内周側に向けて空気Q1を噴出するノズル部71と、ノズル部71を保持し縫い針51の針軸心と同軸上に配置されノズル部71の空気噴出方向を縫い針51の針軸心周りに回転した回転角度に追従して同一角度だけ回転させる本体部72とを備えているが、必ずしもこれに限らない。例えば、図16、図17に示すように、空気噴出手段のノズル部71Cを基材1の受け治具6Cに一体的に形成してもよい。この場合、ノズル部71Cを、例えば、ステッチ模様3の縫目間隔と略同一に設定すると良い。また、基材1の受け治具6Cには、空気排出流路61Cを構成する溝部61MCを、ノズル部71Cと対向する位置にノズル部71Cと略同一の間隔で形成すると良い。
本発明は、基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、表皮材の表面にステッチ模様が形成された内装部品の製造方法として利用できる。
1 基材
2 表皮材
3 ステッチ模様
4 糸掛止部
5 糸縫製装置
6、6B 受け治具
7 空気噴出手段
8 ゴム系部材
9 接着剤
10、10B 内装部品
31、31A 糸(上糸)
31B 糸(上糸)
32 ループ部分
42 係止部
51 縫い針
51T 先端部
51S 外周面
61、61C 空気排出流路
62、62B 糸規制手段
71、71C ノズル部
92 表皮押圧部材
511 糸孔
512 凹溝
P3 縫目間隔
P2 間隔
Q1 空気
T2 引張荷重
θ1 仰角
θ2 方位角

Claims (11)

  1. 基材を保持する受け治具と縫い針を有する糸縫製装置とを備え、前記基材と当該基材表面に接着された表皮材とからなり、前記縫い針の先端部に形成された糸孔に係合された糸を前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで前記縫い針と共に挿通してから、前記縫い針を引き戻す際に、前記基材の裏面側に形成される前記糸のループ部分を前記基材の裏面側に固定して前記表皮材の表面にステッチ模様を形成する内装部品の製造方法であって、
    前記縫い針の先端部が前記基材の裏面側における挿通終端の高さから引き戻されるとき、前記縫い針に供給する糸に前記糸縫製装置の糸供給元から引張荷重をかけて、前記縫い針に対して糸供給側に形成されるループ部分のみを消去させ、前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分を前記基材の裏面側に固定することを特徴とする内装部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載された内装部品の製造方法において、
    前記縫い針の糸供給側の外周面には、前記糸孔から基端部に向けて針軸方向に沿って形成された凹溝を備え、当該凹溝には前記糸供給側の糸が案内されていることを特徴とする内装部品の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された内装部品の製造方法において、
    前記受け治具には、前記基材の裏面側における挿通終端の高さまで挿通された前記縫い針の糸供給側外周面と針軸方向に沿って略平行に近接して形成された糸規制手段を備え、前記縫い針を引き戻す際に、前記糸規制手段によって糸供給側の糸を前記糸孔を通して糸供給側と反対側へ押し出すことを特徴とする内装部品の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
    前記基材の裏面側には、前記縫い針に対して糸供給側と反対側に形成した糸掛止部を備え、前記縫い針の引き戻し途中で、前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分に対して、前記受け治具に装着した空気噴出手段から空気を前記糸掛止部に向けて吹き付けることによって、当該ループ部分を前記糸掛止部に引っ掛けて、当該ループ部分を前記基材の裏面側に固定することを特徴とする内装部品の製造方法。
  5. 請求項4に記載された内装部品の製造方法において、
    前記受け治具には、前記糸掛止部を挟んで前記空気噴出手段と対向する位置に、前記空気噴出手段から前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分に吹き付けた空気を基材外方へ排出する空気排出流路を備えたことを特徴とする内装部品の製造方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載された内装部品の製造方法において、
    前記糸掛止部は、前記ステッチ模様の縫目間隔より狭い間隔で略均一に突設され、先端側に鉤型の係止部を備えていることを特徴とする内装部品の製造方法。
  7. 請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
    前記空気噴出手段の空気噴出方向は、前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分の内周側に向け、かつ、当該ループ部分の水平方向へ広がる向きに対する上面視の方位角を40〜50°とし、前記基材に対する側面視の仰角を40〜50°としたことを特徴とする内装部品の製造方法。
  8. 請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
    前記糸縫製装置は、前記縫い針を針軸心周りに任意の角度だけ回転可能に保持するとともに、前記空気噴出手段は、空気噴出方向を前記縫い針の針軸心周りに回転した回転角度と同一角度だけ回転させることを特徴とする内装部品の製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
    前記基材の裏面側には、前記縫い針によって前記糸が挿通されたゴム系部材を備え、当該ゴム系部材に前記縫い針にて形成された糸挿通孔が縮径することによって前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分の根元部を固定することを特徴とする内装部品の製造方法。
  10. 請求項9に記載された内装部品の製造方法において、
    前記糸供給側と反対側に形成されたループ部分を、前記ゴム系部材の裏面側に接着剤によって固定することを特徴とする内装部品の製造方法。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
    前記糸縫製装置には、前記縫い針の外周側で前記表皮材を押圧する表皮押圧部材を備え、当該表皮押圧部材が、縫目の位置で縫い針周囲の前記表皮材を所定量だけ圧縮するとともに、当該縫目と次の縫目との間で前記表皮材の圧縮量を徐々に増減させることを特徴とする内装部品の製造方法。
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