JP6350971B2 - プリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
更に最近においては、益々、プリント配線板の高密度化、高性能化が要求されるようになってきている。
このような高密度化、高性能化の要求を満たすプリント配線板用基板として、有機物接着剤層がなく、しかも導電層(銅箔層)が十分に薄肉とされたプリント配線板用基板が求められている。
プリント配線板用基板に対する上記の要求に対して、例えば特開平9−136378号公報には、耐熱性高分子フィルムに接着剤を介することなく銅薄層を積層した銅薄膜基板が開示されている。この銅薄膜基板では、耐熱性絶縁基材の表面にスパッタリング法を用いて銅薄膜層を第1層として形成し、その上に電気めっき法を用いて銅厚膜層を第2層として形成している。
その一方、スパッタリング法を用いて第1層を形成するようにしているため、真空設備を必要とし、設備の建設、維持、運転等、設備コストが高くなる。また使用する基材の供給、薄膜形成、基材の収納等の全てを真空中で取り扱わなければならない。また設備面において、基板のサイズを大きくすることに限界がある等の問題がある。
また本発明のプリント配線板用基板は、上記第1の特徴に加えて、前記第2導電層を構成するめっき層は、電気銅めっき層であることを第2の特徴としている。
また本発明のプリント配線板用基板は、上記第1又は第2の特徴に加えて、前記第1導電層を構成する無電解めっき層は、無電解銅めっき層であることを第3の特徴としている。
また本発明のプリント配線板用基板は、上記第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、前記絶縁性の基材は、ポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材のうち少なくとも何れか一つで構成されていることを第4の特徴としている。
また本発明のプリント配線板用基板の製造方法は、フィルム若しくはシートからなる絶縁性の基材の上に、Ni、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を形成する工程と、前記介在層の上に、30nm〜100nmの平均粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布する工程、
熱処理を行うことにより前記塗布された導電性インクに含まれる有機物を除去すると共に前記金属粒子を金属層として前記絶縁性の基材上に固着させる工程、及び
前記基材上に固着された金属粒子間に生じる表面連通の空隙部を無電解金属めっきで充填して無電解金属めっき層を形成する無電解金属めっき工程を備える第1導電層を構成する工程と、
電気めっきを行うことにより前記第1導電層の上にめっき層を積層させて第2導電層を構成する工程と、
を少なくとも有すると共に、前記第1導電層を構成する工程では、前記無電解金属めっき工程において、基材上に固着された金属粒子間に生じる表面連通の空隙部に、第1導電層の表面が面一となるように無電解金属めっきを充填すると共に、第1導電層の総厚みを0.05μm〜2μmに形成し、且つ前記第2導電層を構成する工程では、第2導電層の総厚みを前記第1導電層の総厚みよりも大きく形成することを第5の特徴としている。
また本発明のプリント配線板用基板の製造方法は、上記第5の特徴に加えて、導電性インクの熱処理を、250℃〜400℃の温度で、非酸化性雰囲気若しくは還元性雰囲気で行うことを第6の特徴としている。
また介在層上に積層される導電層が、導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm〜100nmである金属粒子が、介在層の上に熱処理物として固着形成された金属層と、無電解金属めっきによって金属層の表面連通の空隙部に、第1導電層の表面が面一となる状態に充填された無電解金属めっき層とで構成される第1導電層と、その上に積層されるめっき層からなる第2導電層との三層の組み合わせで構成されているので、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。よってプリント配線板用基板の大きさが真空設備により制限されることがない。
また有機物接着剤を使用することなく導電層を介在層上に形成することができる。
また第2導電層の下地層として組み合わされる第1導電層が導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm〜100nmである金属粒子が、介在層の上に熱処理物として固着形成された金属層と、無電解金属めっきによって金属層の表面連通の空隙部に、第1導電層の表面が面一となる状態に充填された無電解金属めっき層とで構成されているので、基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いたプリント配線板用基板を提供することができる。
また総厚みが0.05μm〜2μmである十分に薄層の第1導電層とめっきにより必要な厚みに調整された第2導電層とからなる三層構造の導電層を備えた、十分に薄い導電層を有する高密度、高性能プリント配線の形成に適した基板を提供することができる。
また第2導電層は、電気めっきによるめっき層として構成されているので、厚みの調整が容易で正確に行うことができ、また比較的短時間で所望の肉厚を得ることができるメリットがある。また第1導電層が下層に形成されているので、第1導電層の総厚みよりも大きい厚みを備える第2導電層を電気めっき法で容易に形成することができる。
また金属層は、導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm〜100nmである金属粒子が、介在層の上に熱処理物として固着形成されたものであることから、基材上に強固に固着された金属層とすることができる。
更に金属粒子の平均粒子径が、30nm〜100nmであることから、絶縁性の基材上に、ムラなく緻密で均一な薄層を安定して形成することができる。これにより第2導電層のめっき層の形成を、やはり緻密で均一なものとすることができる。よって微細なプリント配線を得るのに適した薄層で且つ欠陥のない導電層を備えたプリント配線板用基板を提供することができる。
加えて、介在層を備えることで、基材と第1導電層との密着性を上げることができる。
また金属粒子間に生じる表面連通の空隙部を、第1導電層の表面が面一となるように無電解金属めっきで充填して無電解金属めっき層を形成することで、導電性のない空隙部を少なくすることができる。このため、第1導電層の塗装厚を厚くする必要がなくなる。また電気めっきにより、総厚みが0.05μm〜2μmである第1導電層の上にめっき層を積層させて第1導電層の総厚みよりも厚みが大きい第2導電層を構成するので、厚み調整を正確に行うことができると共に、比較的短時間で所定の厚みとなるよう調整することが可能となる。よって以上により、十分に薄い導電層を有する高密度、高性能のプリント配線の形成に適した基板を製造することができる。
加えて、介在層を形成する工程を備えることで、基材と第1導電層との密着性を上げることができる。
また本発明のプリント配線板用基板の製造方法によれば、高価な真空設備を不要とし、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を用いることなく、基材の材質に制限されることなく、高密度、高性能プリント配線の形成に適した、薄くて緻密で均質な導電層を有するプリント配線板用基板を製造することができる。
実施形態に係るプリント配線板用基板1は、フィルム若しくはシートからなる絶縁性の基材11と、該絶縁性の基材11の上に積層される第1導電層12と、該第1導電層12の上に積層される第2導電層13とを有し、前記第1導電層12が導電性インクの塗布層として構成され、第2導電層13がめっき層として構成されるものである。
また絶縁性の基材11の材料としては、例えばポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材を用いることが可能である。
本実施形態では、絶縁性の基材11としてポリイミドフィルムを用いている。
第1導電層12を構成する導電性インクの塗布層は、導電性インクの塗布後に、乾燥或いは焼成等の熱処理を施したものを含むものとする。
導電性インクは、要するに、それを絶縁性の基材11上の表面に塗布することで、導電性物質を積層できるものであればよい。
本実施形態では、導電性インクとして、導電性をもたらす導電性物質としての金属粒子と、その金属粒子を分散させる分散剤と、分散媒とを含むものを用いる。このような導電性インクを用いて塗布することで、微細な金属粒子による塗布層が絶縁性の基材11上に積層される。
本実施形態では、第1導電層12の塗布層としてCuを用いている。
電気めっき法によるめっき層の場合、厚みの調整が容易で正確に行うことができ、また比較的短時間で所望の肉厚を得ることができるメリットがある。まためっき層とすることで、欠陥の少ない緻密な層を得やすい。
本発明の場合、第1導電層12として予め導電層が下層に形成されているので、第2層を電気めっき法で容易に形成することができる。
第2導電層13によるめっき層は、Cu、Ag、Au等の導電性のよい金属で行うことができる。
第2導電層13は第1導電層12に比べて、その厚みが十分に厚い。第1導電層12は絶縁性の基材11の表面を導電性にすることで、第2導電層13の形成に必要な下地形成の役割をなすもので、絶縁性の基材11表面を確実に被覆する限りにおいて、その厚みは薄くても十分である。これに対して第2導電層13は、プリント配線を形成するのに必要な厚みを要する。
本実施形態では、プリント配線板用基板の導電層として、Cuで第2層を構成している。第2導電層13をCuで構成した場合、第1導電層12としては、Cuとするのがよいが、それ以外のCuとの密着性のよい金属を採用することも可能である。勿論、コスト等を考慮しない場合は、第1導電層12、第2導電層13を必ずしもCuとする必要はなく、第1導電層12は絶縁性の基材11と第2導電層13とに対して密着性のよい金属を用い、第2導電層13は導電性に優れた金属を用いることができる。
実施形態に係るプリント配線板用基板1の製造方法は、絶縁性の基材11の上に、1〜500nmの粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を行うことにより、前記塗布させた導電性インク中の金属粒子を金属層として絶縁性の基材11上に固着させて第1導電層12を構成する工程と、めっきを行うことにより第1導電層12の上に金属層を積層させて第2導電層13を構成する工程からなる。
絶縁性の基材11として用いる材料は、ポリイミドの他、絶縁性のリジッド材料、フレキシブル材料等、既に上述した通りである。
導電性インクとしては、導電性物質として微細な金属粒子を含み、またその金属粒子を分散させる分散剤、及び分散媒とを含むものを用いる。
また金属粒子の製造方法は、既述したチタンレドックス法を含み、次のような製造方法が可能である。
金属粒子は、含浸法と呼ばれる高温処理法や、液相還元法、気相法等の従来公知の方法で製造することができる。
液相還元法によって金属粒子を製造するためには、例えば水に、金属粒子を形成する金属のイオンのもとになる水溶性の金属化合物と分散剤とを溶解すると共に、還元剤を加えて、好ましくは、攪拌下、一定時間、金属イオンを還元反応させればよい。勿論、合金からなる金属粒子を液相還元法で製造する場合は、2種以上の水溶性の金属化合物を用いることになる。
液相還元法の場合、製造される金属粒子は、形状が球状乃至粒状で揃っており、粒度分布がシャープで、しかも微細な粒子とすることができる。
前記金属イオンのもとになる水溶性の金属化合物として、例えばCuの場合は、硝酸銅(II)[Cu(NO3)2]、硫酸銅(II)五水和物[CuSO4・5H2O]を挙げることができる。またAgの場合は硝酸銀(I)[AgNO3]、メタンスルホン酸銀[CH3SO3Ag]、Auの場合はテトラクロロ金(III)酸四水和物[HAuCl4・4H2O]、Niの場合は塩化ニッケル(II)六水和物[NiCl2・6H2O]、硝酸ニッケル(II)六水和物[Ni(NO3)2・6H2O]を挙げることができる。他の金属粒子についても、塩化物、硝酸化合物、硫酸化合物等の水溶性の化合物を用いることができる。
酸化還元法のよって金属粒子を製造する場合の還元剤としては、液相(水溶液)の反応系において、金属イオンを還元、析出させることができる種々の還元剤を用いることができる。例えば水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、3価のチタンイオンや2価のコバルトイオン等の遷移金属のイオン、アスコルビン酸、グルコースやフルクトース等の還元性糖類、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールを挙げることができる。このうち、3価のチタンイオンが4価に酸化する際の酸化還元作用によって金属イオンを還元し、析出させる方法が既述したチタンレドックス法である。
導電性インクに含まれる分散剤としては、分子量が2000〜30000で、分散媒中で析出した金属粒子を良好に分散させることができる種々の分散剤を用いることができる。分子量が2000〜30000の分散剤を用いることで、金属粒子を分散媒中に良好に分散させることができ、得られる第1導電層12の膜質を緻密で且つ欠陥のないものにすることができる。分散剤の分子量が2000未満では、金属粒子の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがあり、結果として絶縁性の基材11の上に積層される導電層を緻密で欠陥の少ないものにできないおそれがある。また分子量が30000を超える場合は、嵩が大きすぎ、導電性インクの塗布後に行う熱処理において、金属粒子同士の焼結を阻害してボイドを生じさせたり、第1導電層11の膜質の緻密さを低下させたり、また分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
なお分散剤は、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン、アルカリを含まないものが、部品劣化の防止から好ましい。
好ましい分散剤としては、分子量が2000〜30000の範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、またポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、或いは1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤、を挙げることができる。
分散剤は水、又は水溶性有機溶媒に溶解した溶液の状態で、反応系に添加することもできる。
分散剤の含有割合は、金属粒子100重量部あたり1〜60重量部であるのが好ましい。分散剤の含有割合が前記範囲未満では、水を含む導電性インク中において、分散剤が金属粒子を取り囲むことで凝集を防止して良好に分散させる効果が不十分となるおそれがある。また前記範囲を超える場合には、導電性インクの塗装後の焼成熱処理時に、過剰の分散剤が金属粒子の焼結を含む焼成を阻害してボイドを生じさせたり、膜質の緻密さを低下させたりするおそれがあると共に、高分子分散剤の分解残渣が不純物として導電層中に残存して、プリント配線の導電性を低下させるおそれがある。
金属粒子の粒径を調整するには、金属化合物、分散剤、還元剤の種類と配合割合を調整すると共に、金属化合物を還元反応させる際に、攪拌速度、温度、時間、pH等を調整すればよい。
例えば反応系のpHは、本発明の如き微小な粒径の粒子を得るには、pHを7〜13とするのが好ましい。
反応系のpHを7〜13に調整するためには、pH調整剤を用いることができる。このpH調整剤としては、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど、一般的な酸、アルカリが使用されるが、特に周辺部材の劣化を防止するために、アルカリ金属やアルカリ土類金属、塩素等のハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まない、硝酸やアンモニアが好ましい。
本発明の実施形態においては、金属粒子の粒子径は30〜100nmの範囲にあるものを用いるが、許容範囲として粒子径が1〜500nmの範囲にあるものを用いることが可能である。
ここで粒子径は分散液中の粒度分布の中心径D50で表され、日機装社製マイクロトラック粒度分布計(UPA−150EX)を用いて測定した。
液相の反応系において析出させた金属粒子は、ロ別、洗浄、乾燥、解砕等の工程を経て、一旦、粉末状としたものを用いて導電性インクを調整することができる。この場合は、粉末状の金属粒子と、分散媒である水と、分散剤と、必要に応じて水溶性の有機溶媒とを、所定の割合で配合して、金属粒子を含む導電性インクとすることができる。
好ましくは、金属粒子を析出させた液相(水溶液)の反応系を出発原料として、導電性インクを調整する。
即ち、析出した金属粒子を含む反応系の液相(水溶液)を、限外ろ過、遠心分離、水洗、電気透析等の処理に供して不純物を除去し、必要に応じて濃縮して水を除去するか、逆に水を加えて金属粒子の濃度を調整した後、更に必要に応じて、水溶性の有機溶媒を所定の割合で配合することによって、金属粒子を含む導電性インクを調整する。この方法では、金属粒子の乾燥時の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止することができ、緻密で均一な第1導電層12を得ることが可能となる。
導電性インクにおける分散媒となる水の割合は、金属粒子100重量部あたり20〜1900重量部であるのが好ましい。水の含有割合が前記範囲未満では、水による分散剤を十分に膨潤させて、分散剤で囲まれた金属粒子を良好に分散させる効果が不十分となるおそれがある。また水の含有割合が前記範囲を超える場合は、導電性インク中の金属粒子割合が少なくなり、絶縁性の基材11の表面に必要な厚みと密度とを有する良好な塗布層を形成できないおそれがある。
水溶性の有機溶媒の含有割合は、金属粒子100重量部あたり30〜900重量部であるのが好ましい。水溶性の有機溶媒の含有割合が、前記範囲未満では、前記有機溶媒を含有させたことによる分散液の粘度や蒸気圧を調整する効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、水により分散剤を十分に膨潤させて、分散剤により導電性インク中に金属粒子を、凝集を生じることなく良好に分散させる効果が阻害されるおそれがある。
金属粒子を分散させた導電性インクを絶縁性の基材11上に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布法を用いることが可能である。またスクリーン印刷、ディスペンサ等により絶縁性の基材11上の一部のみに塗布するようにしてもよい。
塗布後には乾燥を行う。その後、後述する熱処理に移行する。
絶縁性の基材11上に塗布された導電性インクを熱処理することで、焼成された塗布層として基材上に固着された第1導電層12を得る。導電層の厚みは0.05〜2μmが好ましい。
熱処理により、塗布された導電性インクに含まれる分散剤やその他の有機物を、熱により揮発、分解させて塗布層から除去すると共に、残る金属粒子を焼結状態或いは焼結に至る前段階にあって相互に密着して固体接合したような状態として絶縁性の基材11上に強固に固着させる。
なおここで、「除去」とは、金属粒子同士が相互に密着し固体接合できるレベルでの除去で良く、金属粒子に対して1重量%以下であれば良く、好ましくは0.2重量%以下が好ましい。
熱処理は、大気中で行ってもよい。また金属粒子の酸化を防止するために、大気中で焼成後に、還元雰囲気中で更に焼成してもよい。焼成の温度は、前記焼成によって形成される第1導電層12の金属の結晶粒径が大きくなりすぎたり、ボイドが発生したりするのを抑制する観点から700度以下とすることができる。
勿論、前記熱処理は、絶縁性の基材11がポリイミド等の有機樹脂の場合は、絶縁性の基材11の耐熱性を考慮して500℃以下の温度で行う。熱処理温度の下限は、導電性インクに含有される金属粒子以外の有機物を塗布層から除去する目的を考慮して、150℃以上が好ましい。
また熱処理雰囲気としては、特に積層される金属粒子が極微細であることを考慮して、その酸化を良好に防止するため、例えばO2濃度を1000ppm以下とするなど、O2濃度を減少させた非酸化性の雰囲気とすることができる。更に、例えば水素を爆発下限濃度(3%)未満で含有させる等により還元性雰囲気とすることができる。
以上で、導電性インクによる絶縁性の基材11上への塗布と、塗布層の熱処理によって第1導電層12を構成する工程が完了する。
第1導電層12上に積層する第2導電層13の金属層はめっき法により積層を行う。実際には電気めっき法を用いて行う。本発明では第2導電層13を電気めっきで積層するために、第1導電層12を予め絶縁性の基材11の上に形成したのである。
電気めっき法を用いることで、所定の積層厚まで速やかに積層することができる。また厚みを正確に調整して積層することができるメリットがある。また得られる第2導電層13を欠陥のない均質な層とすることができる。
第2導電層13の厚みは、どのようなプリント回路を作製するかによって設定されるもので、その厚みが特に限定されるものではない。しかし高密度、高性能のプリント配線の形成を目的にする限りにおいて、そのような高密度配線の形成を可能とする厚みとして、例えば1〜数十ミクロンの導電層とすることができる。
第1導電層12と第2導電層13との厚みの関係は、通常は第1導電層12の厚みが薄く、それに比べて第2導電層13の厚みが十分に厚くなるので、実質的には第2導電層13の厚みが導電層全体としての厚みと考えることができる。
電気めっき法は、例えばCu、Ag、Au等のめっきする金属に応じた従来公知の電気めっき浴を用いて、且つ適切な条件を選んで、所定厚の電気めっき層が欠陥なく速やかに形成されるように行うことができる。
なお、第2導電層13を無電解めっき法により積層することも可能である。
次に本発明に係るプリント配線板用基板を用いて製造したプリント配線板の実施形態を説明する。説明はプリント配線板の製造方法を説明しながら行う。
図2は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明する図である。ここで説明される実施形態のプリント配線板2は、本発明のプリント配線板用基板1を用いて、サブトラクティブ法により形成されている。
即ち図2において、先ず所定の大きさに調整されたプリント配線板用基板1を用意する(A)。次にプリント配線板用基板1の上に感光性のレジスト2aを被覆形成する(B)。そして露光、現像等により配線パターン2bのパターニングを行う(C)。そしてエッチングにより配線パターン2b以外の第2導電層13、第1導電層12を除去する(D)。残ったレジスト2aを除去する(E)。
以上により本発明のプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板2を得ることができる。
勿論、本発明のプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板2は、上記したサブトラクティブ法に限定されるものではない。他の種々のサブトラクティブ法、その他の製法によるものを含み、要するに本発明のプリント配線板用基板1を用いたものは本発明のプリント配線板2に属する。
ここでは、上記した本発明のプリント配線板用基板1を用いて形成したプリント配線板2とは異なるタイプのプリント配線板、即ち本発明のプリント配線板用基板を必ずしも必要とすることなく、しかも導電性インクの塗布層としての第1導電層とめっき層による第2導電層との対を備えたプリント配線板を説明する。
即ち、本発明に係る他のプリント配線板は、プリント配線層を構成する複数層の一部に、導電性インクの塗布層として構成された第1導電層と、該第1導電層の上にめっき層として構成された第2導電層とを、対として有するものである。別の言い方をすると、プリント配線板は絶縁性の基材を介して対向する導電層を有する多層板であって、前記導電層が第1の導電層と第2の導電層を有し、第1の導電層が導電性インクの塗布層として構成され、第2の導電層が第1の導電層の上にめっき層として構成されたものである。
この第1の例では、絶縁性の基材31を下層として、図3の(A)〜(F)の順序で、セミアディティブ法によりプリント配線板3を製造している。
即ち、先ず絶縁性の基材31を用意する(A)。絶縁性の基材31は、ポリイミド等の既述した絶縁性の基材11と同様の材料を用いることができる。
次に前記絶縁性の基材31を下層として、絶縁性の基材31の上に1〜500nmの粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施して、第1導電層32を塗布層として積層する(B)。金属粒子は、典型的にはチタンレドックス法により得られたCu粒子の他、既述した種々の金属粒子を用いることができる。また導電性インクについても既述したものを用いることができる。更に熱処理についても既述した熱処理条件を用いることができる。
次に第1導電層32の上にレジスト3aにより、配線パターン3bとなるべき部分以外を被覆する(C)。
次に電気めっき法により、レジスト3a以外の配線パターン3bとなるべき部分に第2導電層33を積層する(D)。
次に、レジスト3aを除去する(E)。
次にエッチングを施して、レジスト3aがあった部分の第1導電層32を除去する(F)。
以上によりプリント配線板3が得られる。
得られたプリント配線板3は、複数層からなり、その一部にプリント配線層を構成している。また複数層の一部に、第1導電層32と第2導電層33とを対として有している。
この第2の例では、既に形成されたプリント配線層41を下層として、図4の(A)〜(F)の順序で、セミアディティブ法によりプリント配線板4を製造している。
即ち、先ず下層として、プリント配線層41を形成したものを用意する(A)。このプリント配線層41は、実際には絶縁性の基材41aと導電層41bとを有するプリント配線板である。なお、下層については回路形成前の状態のものも使用できる。このプリント配線層41の構成、製造方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の構成、製造方法を採用することができる。
次に、下層であるプリント配線層41のうち、絶縁性の基材41a側の上に、1〜500nmの粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布し、熱処理を施すことにより、第1導電層42を塗布層として積層する(B)。金属粒子は、既述したチタンレドックス法により得られたCu粒子、その他の金属粒子を用いることができる。また導電性インク、熱処理についても既述した導電性インク、熱処理条件を用いることができる。
次に、第1導電層42の上にレジスト4aにより、配線パターン4bとなるべき部分以外を被覆する(C)。
次に電気めっき法により、レジスト4a以外の配線パターン4bとなるべき部分に第2導電層43を積層する(D)。
次にレジスト4aを除去する(E)。
次にエッチングを施して、レジスト4aがあった部分の第1導電層42を除去する(F)。
以上によりプリント配線板4が得られる。
得られたプリント配線板4は、複数層からなり、その一部にプリント配線層41を構成している。また複数層の一部に、第1導電層42と第2導電層43とを対にして有している。また図4から明らかなように、第2導電層43の少なくとも1部は、下層であるプリント配線層41の導電層41bと電気接続した状態に構成することができる。このように塗布層からなる第1導電層42と第2導電層43を用いることで、上下のプリント配線層が電気接続された状態で多層化された高密度のプリント配線板4の提供が容易に行える。
無電解金属めっきはCu、Ag、Niなどが考えられるが、第1導電層12(32、42)、第2導電層13(33、43)をCuとする場合は、密着性、コストを考慮して、Cu、Niとするのがよい。
前記無電解金属めっき部12a(32a、42a)は、第1導電層12(32、42)の後述する空隙部V、より正しくは第1導電層12(32、42)の表面と連通する空隙部Vに充填される。ここで「充填」とは、少なくとも表面と連通する空隙部Vの底に基材11(31、41)が露出することなく、基材11(31、41)が無電解金属めっき部12a(32a、42a)で覆われているという意味である。よって無電解金属めっき部12a(32a、42a)は、第1導電層12(32、42)の空隙部Vを第1導電層12(32、42)の丁度表面まで面一状態に充填する他、表面には面一に満たない状態で充填される場合や、面一を超えて充填される場合も含む。面一を超えて充填される場合は、第1導電層12(32、42)の面上に多少の無電解金属めっき層が積層された状態となる。このような場合も前記「充填」に含まれるものとする。
無電解金属めっき部12a(32a、42a)を施すことによって、第1導電層12の表面全面が金属、即ち導電性物質からなる表面となり、その後に第2導電層13(33、43)を電気めっき法で積層した際に緻密な層を得ることができる。
図6(A)は無電解金属めっきを施さない場合の状態を説明する模式図である。この場合には、導電性インクの塗布層である第1導電層12(32、42)内に、空隙Vがそのまま残留するため、これが破壊起点となって、第1導電層12(32、42)の剥離の原因になりやすい。
また無電解金属めっきを施さない場合には、空隙Vによる非導通部を少なくするために、第1導電層12(32、42)の塗装厚を厚くする必要があるため、コスト高となる。
なお図6(A)、(B)において、Mは塗布による第1導電層12(32、42)の金属粒子を示す。
なお第1導電層12(32、42)の剥離要因は、例えば図3で示す実施形態の製造方法において、図3(C)の工程ではレジスト溶剤のしみ込み、図3(D)の工程ではめっき応力による剥離、図3(E)の工程ではレジスト除去溶剤のしみ込み、図3(F)の工程では第1導電層除去液のしみ込みがある。
また空隙Vを無電解金属めっき部12a(32a、42a)で充填して非導通部をなくするので、第1導電層12(32、42)そのものは厚くすることなく薄肉とすることができる。第2導電層13(33、43)を電気めっき法で形成するためには、第1導電層12(32、42)の如何なる2点間でも導通していることが必要となる。仮に第1導電層12(32、42)内に導通の無い部分が生じると、電気めっきの際にその非導通部分でめっきが形成できず、回路不良となる。第1導電層12(32、42)を確実に導通させるために第1導電層12(32、42)を厚塗りすると、コスト高、空隙Vの増加による破壊起点の増加につながる。第2導電層13(33、43)を無電解めっきで形成する方法も考えられるが、1〜数10μmといった厚みをめっきすると、電気めっきに比べコスト高となる。
11 絶縁性の基材
12 第1導電層
12a 無電解金属めっき部
13 第2導電層
2 プリント配線板
2a レジスト
2b 配線パターン
3 プリント配線板
3a レジスト
3b 配線パターン
31 絶縁性の基材
32 第1導電層
32a 無電解金属めっき部
33 第2導電層
4 プリント配線板
4a レジスト
4b 配線パターン
41 プリント配線層
41a 絶縁性の基材
41b 導電層
42 第1導電層
42a 無電解金属めっき部
43 第2導電層
M 金属粒子
V 空隙
Claims (6)
- 絶縁性の基材と、該絶縁性の基材の上に積層されるNi、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層と、該介在層の上に積層される第1導電層と、該第1導電層の上に積層される第2導電層とを有し、前記第1導電層は、導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm〜100nmである金属粒子が、前記介在層の上に熱処理物として固着形成された金属層と、無電解金属めっきによって前記金属層の表面連通の空隙部に、前記第1導電層の表面が面一となる状態に充填された無電解金属めっき層とで構成されていると共に、前記第2導電層は、電気めっきによるめっき層として構成されており、且つ前記第1導電層の総厚みが0.05μm〜2μmであると共に、前記第2導電層の総厚みが前記第1導電層の総厚みよりも大きいことを特徴とするプリント配線板用基板。
- 前記第2導電層を構成するめっき層は、電気銅めっき層であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用基板。
- 前記第1導電層を構成する無電解めっき層は、無電解銅めっき層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント配線板用基板。
- 前記絶縁性の基材は、ポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材のうち少なくとも何れか一つで構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のプリント配線板用基板。
- フィルム若しくはシートからなる絶縁性の基材の上に、Ni、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を形成する工程と、前記介在層の上に、30nm〜100nmの平均粒子径をもつ金属粒子を分散させた導電性インクを塗布する工程、
熱処理を行うことにより前記塗布された導電性インクに含まれる有機物を除去すると共に前記金属粒子を金属層として前記絶縁性の基材上に固着させる工程、及び
前記基材上に固着された金属粒子間に生じる表面連通の空隙部を無電解金属めっきで充填して無電解金属めっき層を形成する無電解金属めっき工程を備える第1導電層を構成する工程と、
電気めっきを行うことにより前記第1導電層の上にめっき層を積層させて第2導電層を構成する工程と、
を少なくとも有すると共に、前記第1導電層を構成する工程では、前記無電解金属めっき工程において、基材上に固着された金属粒子間に生じる表面連通の空隙部に、第1導電層の表面が面一となるように無電解金属めっきを充填すると共に、第1導電層の総厚みを0.05μm〜2μmに形成し、且つ前記第2導電層を構成する工程では、第2導電層の総厚みを前記第1導電層の総厚みよりも大きく形成することを特徴とするプリント配線板用基板の製造方法。 - 導電性インクの熱処理を、250℃〜400℃の温度で、非酸化性雰囲気若しくは還元性雰囲気で行うことを特徴とする請求項5に記載のプリント配線板用基板の製造方法。
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