“ヒドロキシルにより置換されている(C2−3)アルキル”という用語が、直鎖および分枝アルキル基の両方、例えば基(i)〜(xi)として以下に例示するものを包含することは、理解されるであろう:
先に定義した式(I)の化合物のいくつかが、1以上の不斉炭素原子に基づき光学活性形態またはラセミ形態で存在することができる場合、本発明は、PI3K−αおよび−δ阻害活性を持つあらゆる光学活性形態またはラセミ形態をその定義に包含することは、理解されるであろう。光学活性形態の合成は、当分野で周知の有機化学の標準的技術により、例えば、光学活性出発材料からの合成によるかラセミ形態の分割により、実施することができる。同様に、上記活性は、標準的な実験技術を用いて評価することができる。
本明細書中に記載する化合物の特定のエナンチオマーは、同化合物の他のエナンチオマーより活性であることができる。
本発明の他の観点に従って、≧95、≧98%または≧99%のエナンチオマー過剰率(%ee)にある単一エナンチオマーである式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。単一エナンチオマーは、≧99%のエナンチオマー過剰率(%ee)で存在すると好都合である。
本発明の他の観点に従って、≧95、≧98%または≧99%のエナンチオマー過剰率(%ee)にある単一エナンチオマーである式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、医薬組成物を提供する。単一エナンチオマーは、≧99%のエナンチオマー過剰率(%ee)で存在すると好都合である。
いくつかの式(I)の化合物は結晶質であることができ、1より多くの結晶形を有することができる。本発明は任意の結晶質もしくは非晶質形態またはその混合物を包含し、該形態はPI3K−αおよび−δ活性の阻害に有用な性質を持ち、PI3K−αおよび/または−δ活性の阻害に関する結晶質または非晶質形態の効力を以下に記載する標準試験により決定する方法は当分野で周知であることを、理解すべきである。
結晶質材料は、X線粉末回折(以下、XRPD)分析、示差走査熱量測定(以下、DSC)、熱重量分析(以下、TGA)、拡散反射フーリエ変換赤外(DRIFT)分光法、近赤外(NIR)分光法、溶液および/または固体状態核磁気共鳴分光法などの従来技術を用いて分析することができることが、一般に知られている。そのような結晶質材料の含水量は、カールフィッシャー分析により決定することができる。
一例として、実施例1の化合物は結晶度を示し、1つの結晶形が同定された。
したがって、本発明の他の観点は、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンのフォームAである。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=5.1°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=18.0°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=5.1および18.0°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=5.1、18.0、10.2、11.7、19.4、18.5、14.8、26.7、26.6、17.8°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、図1に示すX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する結晶形、フォームAを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=5.1°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=18.0°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=5.1および18.0°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明の他の観点に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=5.1、18.0、10.2、11.7、19.4、18.5、14.8、26.7、26.6、17.8°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
実施例3も結晶質であり、3つのフォーム(A、BおよびC)を本明細書中に記載する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=4.8°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=10.0°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=4.8°および10.0°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、約2シータ=4.8、10.0、14.6、5.2、19.9、10.4、25.4、23.6、24.4、16.2°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、図3に示すX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、2シータ=4.8°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、2シータ=10.0°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、2シータ=4.8°および10.0°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有し、前記値がプラスまたはマイナス0.2°の2シータである可能性があるものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームAであって、2シータ=4.8、10.0、14.6、5.2、19.9、10.4、25.4、23.6、24.4、16.2°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有し、前記値がプラスまたはマイナス0.2°の2シータである可能性があるものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、約2シータ=5.8°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、約2シータ=10.9°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、約2シータ=5.8°および10.9°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、約2シータ=5.8、10.9、11.5、25.9、17.3、24.0、19.1、12.9、24.7、27.2°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、図5に示すX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、2シータ=5.8°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、2シータ=10.9°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、2シータ=5.8°および10.9°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有し、前記値がプラスまたはマイナス0.2°の2シータである可能性があるものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームBであって、2シータ=5.8、10.9、11.5、25.9、17.3、24.0、19.1、12.9、24.7、27.2°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有し、前記値がプラスまたはマイナス0.2°の2シータである可能性があるものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、約2シータ=6.9°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、約2シータ=12.3°に少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、約2シータ=6.9°および12.3°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、約2シータ=6.9、12.3、10.5、21.0、24.6、13.6、16.4、19.6、20.2、22.5°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、図7に示すX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、2シータ=6.9°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、2シータ=12.3°プラスまたはマイナス0.2°の2シータに少なくとも1つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有するものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、2シータ=6.9°および12.3°に少なくとも2つの特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有し、前記値がプラスまたはマイナス0.2°の2シータである可能性があるものを提供する。
本発明に従って、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンの結晶形、フォームCであって、2シータ=6.9、12.3、10.5、21.0、24.6、13.6、16.4、19.6、20.2、22.5°に特異的ピークを有するX線粉末回折パターンを有し、前記値がプラスまたはマイナス0.2°の2シータである可能性があるものを提供する。
本発明が実施例1または実施例3のような本発明の化合物の結晶形に関連すると記載している場合、結晶化度は、好都合には約60%を超え、より好都合には約80%を超え、好ましくは約90%を超え、より好ましくは約95%を超える。もっとも好ましくは、結晶化度は約98%を超える。
本発明が実施例1または実施例3のような本発明の化合物の結晶形に関連すると記載している場合、該結晶形は、同化合物の他の結晶形または非晶質形態を実質的に含まないことが好ましい。この文脈において、“実質的に含まない”は、純粋な単一結晶形が、好都合には約60%を超え、より好都合には約80%を超え、好ましくは約90%を超え、より好ましくは約95%を超え、さらにより好ましくは約98%を超え、さらにより好ましくは約99%を超えることを意味する。例えば、実施例3はフォームAの形態にあり、フォームBおよびCを実質的に含まないことができ;あるいは、実施例3はフォームBの形態にあり、フォームAおよびCを実質的に含まないことができ;あるいは、実施例3はフォームCの形態にあり、フォームAおよびBを実質的に含まないことができる。同様に、実施例3はフォームBの形態にあり、他の結晶質または非晶質形態を実質的に含まないことができる。
X線粉末回折パターンの2シータ値は、機械または試料によってわずかに変動する可能性があるので、引用する値を絶対的なものと解釈すべきではない。
X線粉末回折パターンは、測定条件(用いる機器または機械など)に応じて1以上の測定誤差を有するものが得られる可能性があることが公知である。とりわけ、X線粉末回折パターンの強度が測定条件により変動する可能性があることは、一般に公知である。したがって、上記本発明の結晶形は、特記しない限り、図1、3、5に示すX線粉末回折パターンと同一のX線粉末回折パターンを提供する結晶に限定されず、これらの図に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンを提供する結晶は、本発明の範囲内にあることを、理解すべきである。X線粉末回折の分野の技術者なら、X線粉末回折パターンの実質的同一性を判断することができる。
X線粉末回折の分野の技術者なら、ピークの相対強度が、例えば、30ミクロンより大きいサイズの粒子や試料の分析に影響を及ぼしうる非ユニタリーな (non-unitary) アスペクト比により影響を受ける可能性があることも、理解するであろう。当業者は、反射位置が、回折計の中で試料が置かれる位置の正確な高さと回折計のゼロ較正により影響を受ける可能性があることも、理解するであろう。試料表面の平面性もわずかな影響を有する可能性がある。したがって、提示する回折パターンデータは、絶対的な値とみなすべきではない(Jenkins,R & Snyder,R.L.‘Introduction to X−Ray Powder Diffractometry’John Wiley & Sons 1996;Bunn,C.W.(1948)、Chemical Crystallography,Clarendon Press,ロンドン;Klug,H.P. & Alexander,L.E.(1974),X−Ray Diffraction Procedures参照)。
一般に、X線粉末ディフトグラムにおける回折角の測定誤差は、2シータのおよそプラスまたはマイナス0.2°であり、そのような程度の測定誤差を、X線粉末回折データを検討する際は考慮すべきである。さらに、強度は、実験条件および試料調製(選択配向(preferred orientation))に応じて変動しうることを理解すべきである。
本発明の特定の化合物は各実施例であり、各実施例はさらに、本発明の独立した観点を提供する。本発明の他の特定の化合物は、各実施例の薬学的に許容しうる塩(1以上)であり、各実施例はさらに、本発明の独立した観点を提供する。
本発明の他の観点に従って、本明細書中に開示する実施例のいずれかに従って得ることができる式(I)の化合物を提供する。
他の特徴は、実施例1、3、4など具体的実施例を個別に放棄するという条件で、本明細書中で定義する範囲のいずれかである。
当業者なら、式(I)の特定の化合物は非対象に置換された炭素原子を含有し、したがって、光学活性形態およびラセミ形態で存在することができ、そのような形態で単離することができることを、理解するであろう。式(I)のいくつかの化合物は、多形性を示す可能性がある。本発明は任意のラセミ形態、光学活性形態、多形形態もしくは立体異性形態、またはそれらの混合物を包含し、該形態がPI3K−αおよび−δ活性の阻害に有用な性質を持ち、光学活性形態の調製法(例えば、再結晶化技術によるラセミ形態の分割によるか、光学活性出発材料からの合成によるか、キラル合成によるか、酵素的分割によるか、生体内変換によるか、キラル固定相を用いるクロマトグラフ分離による)および以下に記載する標準試験によりPI3K−αおよび−δ活性の阻害に関する効力を決定する方法が当分野で周知であることを、理解すべきである。
先に定義した式(I)の特定の化合物は互変異性現象を示す可能性があることを、理解すべきである。本発明は、その定義にPI3K阻害活性を持つそのような互変異性形態またはその混合物を包含し、化学式の図内で利用されているか実施例で名前を挙げられている任意の1つの互変異性形態のみに限定されるものではないことを、理解すべきである。一般に、任意のそのような互変異性形態の1つだけを、以下に続く実施例で名前を挙げてあり、または、以下に続く任意の関連する化学式の図に提示している。
本発明は、本化合物で生じる原子のすべての同位体を包含するものとする。同位体が、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を包含することは、理解されるであろう。例えば、水素の同位体として、トリチウムおよびジュウテリウムが挙げられる。炭素の同位体としてはC13およびC14が挙げられる。
式(I)の化合物の適した薬学的に許容しうる塩は、例えば、式(I)の化合物の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはトリフルオロ酢酸などの強い無機酸または有機酸との酸付加塩である。式(I)の化合物の他の適した薬学的に許容しうる塩は、例えば、式(I)の化合物の投与後にヒトまたは動物の体内で形成される塩である。
さらに、式(I)の化合物の適した薬学的に許容しうる溶媒和物も本発明の観点を構成することを、理解すべきである。適した薬学的に許容しうる溶媒和物は、例えば、半水和物、一水和物、二水和物もしくは三水和物または他の量の水和物などの水和物である。
さらに、式(I)の化合物の適した薬学的に許容しうるプロドラッグも本発明の観点を構成することを、理解すべきである。したがって、本発明の化合物は、ヒトまたは動物の体内で分解して本発明の化合物を放出する化合物であるプロドラッグの形態で投与することができる。プロドラッグは、本発明の化合物の物理的特性および/または薬物動態学的特性を変更するために用いることができる。本発明の化合物が、改質基が付着することができる適した基または置換基を含有する場合、プロドラッグを形成することができる。プロドラッグの例としては、式(I)の化合物中のヒドロキシ基において形成することができるin−vivo開裂性エステル誘導体、および式(I)の化合物中のアミノ基において形成することができるin−vivo開裂性アミド誘導体が挙げられる。
したがって、本発明は、有機合成により利用可能になる場合、およびプロドラッグの開列によりヒトまたは動物の体内で利用可能になる場合の、先に定義した式(I)の化合物を包含する。したがって、本発明は、有機合成手段により生じる式(I)の化合物のほか、前駆体化合物の代謝によりヒトまたは動物の体内で生じる化合物を包含する、すなわち、式(I)の化合物は、合成的に生成される化合物または代謝的に生成される化合物であることができる。
式(I)の化合物の適した薬学的に許容しうるプロドラッグは、望ましくない薬理学的活性および不適切な毒性がなく、ヒトまたは動物の体に投与するのに適しているという、合理的な医学的判断に基づいたものである。
さまざまな形態のプロドラッグが、例えば以下の文書に記載されている:−
a) Methods in Enzymology,Vol.42,p309−396、K.Widder,et al.編集(Academic Press,1985);
b) Design of Pro−drugs、H.Bundgaard編集(Elsevier,1985);
c) A Textbook of Drug Design and Development、Krogsgaard−LarsenおよびH.Bundgaard編集、H.Bundgaardによる第5章“Design and Application of Pro−drugs”、p113−191(1991);
d) H.Bundgaard,Advanced Drug Delivery Reviews,8,1−38(1992);
e) H.Bundgaard,et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,77,285(1988);
f) N.Kakeya,et al.,Chem.Pharm.Bull.,32,692(1984);
g) T.HiguchiおよびV.Stella,“Pro−Drugs as Novel Delivery Systems”,A.C.S.Symposium Series,Volume 14;および
h) E.Roche(編者)、“Bioreversible Carriers in Drug Design”、Pergamon Press、1987。
ヒドロキシ基を持つ式(I)の化合物の適した薬学的に許容しうるプロドラッグは、例えば、そのin vivo開裂性エステルまたはエーテルである。ヒドロキシ基を含有する式(I)の化合物のin vivo開裂性エステルまたはエーテルは、例えば、ヒトまたは動物の体内で開裂して親ヒドロキシ化合物を生じる薬学的に許容しうるエステルまたはエーテルである。ヒドロキシ基に適した薬学的に許容しうるエステル形成基は、リン酸エステル(ホスホルアミド環状エステルを含む)などの無機エステルを包含する。ヒドロキシ基に適した他の薬学的に許容しうるエステル形成基としては、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、置換ベンゾイル基および置換フェニルアセチル基などの(1−10C)アルカノイル基、ならびに、エトキシカルボニル基、N,N−[ジ−(1−4C)アルキル]カルバモイル基、2−ジアルキルアミノアセチル基および2−カルボキシアセチル基などの(1−10C)アルコキシカルボニル基が挙げられる。フェニルアセチル基およびベンゾイル基上の環置換基の例としては、アミノメチル、N−アルキルアミノメチル、N,N−ジアルキルアミノメチル、モルホリノメチル、ピペラジン−1−イルメチルおよび4−(1−4C)アルキルピペラジン−1−イルメチルが挙げられる。ヒドロキシ基に適した薬学的に許容しうるエーテル形成基としては、アセトキシメチル基およびピバロイルオキシメチル基などのα−アシルオキシアルキル基が挙げられる。
アミノ基を持つ式(I)の化合物の適した薬学的に許容しうるプロドラッグは、例えば、そのin vivo開裂性アミド誘導体である。アミノ基からの適した薬学的に許容しうるアミドとしては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、置換ベンゾイル基および置換フェニルアセチル基などの(1−10C)アルカノイル基と形成されるアミドが挙げられる。フェニルアセチル基およびベンゾイル基上の環置換基の例としては、アミノメチル、N−アルキルアミノメチル、N,N−ジアルキルアミノメチル、モルホリノメチル、ピペラジン−1−イルメチルおよび4−(1−4C)アルキルピペラジン−1−イルメチルが挙げられる。
式(I)の化合物のin vivo作用は、式(I)の化合物の投与後にヒトまたは動物の体内で形成される1以上の代謝産物により部分的に影響を受ける可能性がある。先に記載したように、式(I)の化合物のin vivo作用は、前駆体化合物(プロドラッグ)の代謝によって影響を受ける可能性もある。
式(I)の化合物は、−C(O)R2[式中、R2は、ヒドロキシルにより置換されている(C2−3)アルキルである]により置換されているピペリジンサブユニットを含有する。これらの化合物の考えうる代謝経路の1つは、この基のヒドロキシル置換基の酸化による。一般に、これらの酸化化合物は、多少のPI3K−αおよび−δ阻害活性を保持している。
したがって、本発明の他の観点に従って、式(A)の化合物:
[式中:
R1Aは、メチルまたはエチルであり;そして
R2Aは、カルボキシにより置換されている(C1−2)アルキルである];
または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
式(A)の化合物の例としては、実施例1の同定されている代謝産物である実施例8
および実施例3の同定されている代謝産物である実施例9:
が挙げられる。
実施例3の他の考えうる代謝産物は、以下に示し、実施例10および11でさらに記載する、別の2つの酸化生成物である:
式(A)の化合物の適した薬学的に許容しうる塩としては、例えば、カルシウムもしくはマグネシウム塩などのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩、またはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンもしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
誤解を避けるために、本明細書中で、基が‘先に定義した’または‘上記で定義した’により修飾されている場合、前記基は、その基に関し最初に現れたもっとも広範囲の定義およびそれぞれすべての詳細な定義を包含することを、理解すべきである。
本発明の特定の新規化合物としては、例えば、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩であって、特記しない限り、R1およびR2のそれぞれが、先に定義した意味または以下に記載する意味のいずれかを有するものが挙げられる:
R1はメチルである。
R1はエチルである。
R2は、先に定義した基(i)〜(xi)のいずれかである。
R2は、先に定義した基(i)〜(vi)である。
R2は基(i)である。
本発明の化合物の特定の群は、上記式(I)の化合物
[式中:−
R1は、メチルまたはエチルであり;
R2は、基(i):
である]
または薬学的に許容しうるその塩である。
本発明の特定の化合物は、例えば、以下に提示する実施例中に開示する式(I)の化合物である。
例えば、本発明の特定の化合物は、以下のいずれか1つから選択される式(I)の化合物である:−
1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−プロパン−1−オン(実施例1および2);
1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−エチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−プロパン−1−オン(実施例3);
(3R)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−ブタン−1−オン(実施例4);
(3S)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−ブタン−1−オン(実施例5);
(2R)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(実施例6);
1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(実施例7)。
本発明の他の観点は、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の調製プロセスを提供する。適したプロセスを、以下の代表的変形プロセスにより例示する。該プロセスにおいて、特記しない限り、R1、R2は、先に定義した意味のいずれかを有する。必要な出発材料は、有機化学の標準的手順により得ることができる。そのような出発材料の調製法は、以下の代表的変形プロセスと併せて、添付の実施例に記載する。あるいは、必要な出発材料は、有機化学者の一般的技術の範囲内にあり、例示する手順と類似の手順により、得ることができる。
適した変形プロセスとしては、例えば、以下が挙げられる:
(a)好都合には適した活性化試薬の存在下で、式IIの化合物
[式中、R1は、先に定義した意味のいずれかを有する]を、必要に応じて任意の官能基が保護されている点を除きカルボン酸R2−COOHと、適した塩基の存在下で反応させた後、存在する任意の保護基を除去する。この反応に適したカップリング剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−ピリジンN−オキシド存在下での1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、またはTBTU(2−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボレート)が挙げられる。
反応は、適した塩基の存在下で行うと好都合である。適した塩基は、例えば有機アミン塩基、例えば、ピリジン、2,6−ルチジン、コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、ジイソプロピルエチルアミンなど、あるいは、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩または水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり;好ましくはN−エチル−N,N−ジイソプロピルアミンである。
この反応は、適した不活性溶媒、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、または、ジクロロメタン、クロロホルムもしくは四塩化炭素などのハロゲン化溶媒などの存在下、例えば−50℃〜100℃の範囲、好ましくは0℃〜30℃の範囲の温度で行うと好都合である。
あるいは、カルボン酸R2−COOHを活性化種に変換することができ、その後、これを、当分野で周知の条件下で式IIの化合物と反応させることができる。
ヒドロキシル基に適した保護基は、実施例2および3に記載するようなテトラヒドロピラン保護基である。この基を除去するのに適した条件としては、溶媒としてのアルコール、例えばメタノールまたはエタノールの存在下、20〜70℃の温度における弱酸性条件が挙げられる。用いられる典型的な弱酸は、p−トルエンスルホン酸ピリジンである。
式IIの化合物は、適した塩基の存在下で、式IIIの化合物:
[式中、Pはtert−ブトキシカルボニルなどの保護基である]を、式R1−Lの化合物[式中、Lは、適した脱離基、例えば、ブロモ、ヨード基などのハロゲノ基(ヨードが好都合である)などである]と反応させた後、存在する任意の保護基を除去することにより、得ることができる。
適した塩基は、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンなどの有機アミン塩基である。
反応は、例えば2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど適した不活性溶媒の存在下、例えば−50℃〜60℃の範囲、好ましくは−10℃〜0℃の範囲の温度で実行すると、好都合である。
tert−ブトキシカルボニルの脱保護に適した条件としては、ほぼ室温(20〜25℃)におけるジクロロメタンなどの不活性溶媒中のトリフルオロ酢酸といった酸性条件が挙げられる。
化合物IIIは、適した活性化試薬の存在下で、式IVの化合物
を、式Vの化合物
と、好ましくは適した塩基の存在下でカップリング反応させた後、弱酸の存在下で環化反応させることにより、得ることができる。
カップリング反応は、例えば、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートまたはTBTU(2−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボレート)などの適したカップリング剤の存在下で行うことができる。
カップリング反応は、適した塩基の存在下で行うと好都合である。適した塩基は、例えば有機アミン塩基、例えば、ピリジン、2,6−ルチジン、コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、ジイソプロピルエチルアミンなど、あるいは、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩または水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり;好ましくはN−エチル−N,N−ジイソプロピルアミンである。
カップリング反応は、適した不活性溶媒、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、または、ジクロロメタン、クロロホルムもしくは四塩化炭素などのハロゲン化溶媒などの存在下、例えば−50℃〜100℃の範囲、好ましくは0℃〜30℃の範囲の温度で行うと好都合である。
環化条件は、弱酸、典型的には酢酸の存在下で実施する。反応は、適した不活性溶媒、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの存在下、例えば50℃〜150℃の範囲、好ましくは80℃〜100℃の範囲の温度で行うと好都合である。
化合物IVは、式VIの化合物とヒドラジンの反応から得ることができる。
この反応は、適した不活性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはエタノールもしくはイソプロパノールなどのアルコールの存在下、例えば20℃〜70℃の範囲、好ましくは約50℃の温度で行うと好都合である。
化合物VIは、式VIIの化合物と二シアン化亜鉛(II)などのシアン化物源との金属触媒反応から得ることができる。
該反応に適した触媒としては、例えば、パラジウム(0)などの金属触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0);またはパラジウム(II)塩からin−situで形成される触媒、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、もしくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、およびホスフィンリガンド、例えばジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル)ホスフィンが挙げられる。該反応は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなど適した溶媒中、例えば20℃〜150℃の範囲、好ましくは60℃〜120℃の範囲の温度で行うと好都合である。該反応は、亜鉛など追加的な金属の存在下で行うことも好都合である。
このタイプの適した反応は、‘Metal−Catalyzed Cross−Coupling Reactions’、第2版、Armin Meijere、Francois Diederich編集、Wiley−VCH、2004に記載されている。
化合物VIIの合成は、実施例1および2に記載している。
あるいは、式IIの化合物は、化合物VIII[式中、Rは小さなアルキルである]と化合物IX[式中、Pは、tert−ブトキシカルボニルなどの保護基である]との金属触媒反応により得ることができる。
該反応に適した触媒としては、例えば、パラジウム(0)などの金属触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0);またはパラジウム(II)塩からin−situで形成される触媒、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、もしくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、およびホスフィンリガンド、例えばジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル)ホスフィンが挙げられる。
該反応は、適した溶媒、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン、または4−メチル−2−ペンタノールなどのアルコール中、例えば50℃〜180℃の範囲、好ましくは120℃〜150℃の範囲の温度で行うと好都合である。
該反応は、塩化リチウムなど追加的な塩の存在下で行うことも好都合である。
このタイプの適した反応は、‘Metal−Catalyzed Cross−Coupling Reactions’、第2版、Armin Meijere、Francois Diederich編集、Wiley−VCH、2004に記載されている。
式VIIIの化合物は、化合物VIIと適したヘキサアルキルジスタンナンとの金属触媒反応から得ることができる。該反応に適した触媒としては、例えば、パラジウム(0)などの金属触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0);またはパラジウム(II)塩からin−situで形成される触媒、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、もしくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、およびホスフィンリガンド、例えばジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル)ホスフィンが挙げられる。該反応は、適した溶媒、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、または4−メチル−2−ペンタノールなどのアルコール中、例えば50℃〜100℃の範囲、好ましくは70℃〜80℃の範囲の温度で行うと好都合である。
式IXの化合物は、実施例1(R1=MeおよびP=tert−ブトキシカルボニルである)に例示するように、市販の材料から数段階で得ることができる。
上記変形プロセスにおけるプロセス段階の他の並べ換えも可能であることを、理解すべきである。
先に記載したプロセスのいずれかにより得られる任意の式(I)の化合物は、必要に応じて他の式(I)の化合物に転化することができることを、理解すべきである。
式(I)の化合物の薬学的に許容しうる塩、例えば酸付加塩が必要な場合、それは、例えば、前記化合物と適した酸との反応により得ることができる。
式(I)の化合物の薬学的に許容しうるプロドラッグが必要な場合、それは、従来の手順を用いて得ることができる。例えば、式(I)の化合物のin vivo開裂性エステルは、例えば、ヒドロキシ基を含有する式(I)の化合物と、薬学的に許容しうるカルボン酸との反応により得ることができる。プロドラッグに関するさらなる情報は、先に提示してある。
上記反応のいくつかでは、化合物中の任意の感受性の高い基を保護することが必要または望ましい可能性があることも、理解されるであろう。保護が必要または望ましい場合および保護に適した方法は、当業者に公知である。従来の保護基を、標準的技法に従って用いることができる(例示のために、T.W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,1991参照)。したがって、反応体がアミノ、カルボキシまたはヒドロキシなどの基を包含する場合、上記反応のいくつかでは該基を保護することが望ましい可能性がある。
アミノまたはアルキルアミノ基に適した保護基は、例えば、アシル基、例えばアセチルなどのアルカノイル基、アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルもしくはt−ブトキシカルボニル基、アリールメトキシカルボニル基、例えばベンジルオキシカルボニル、またはアロイル基、例えばベンゾイルである。上記保護基の脱保護条件は、保護基の選択に伴い必然的に変動する。したがって、例えば、アルカノイルもしくはアルコキシカルボニル基などのアシル基またはアロイル基は、例えば、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化リチウムもしくは水酸化ナトリウムなど適した塩基との加水分解により除去することができる。あるいは、t−ブトキシカルボニル基などのアシル基は、例えば、塩酸、硫酸もしくはリン酸またはトリフルオロ酢酸などの適した酸との処理により除去することができ、ベンジルオキシカルボニル基などのアリールメトキシカルボニル基は、例えば、例えば、パラジウム担持カーボンなどの触媒上での水素化によるか、ルイス酸、例えばトリス(トリフルオロ酢酸)ホウ素での処理により、除去することができる。第一級アミノ基に適した他の保護基は、例えばフタロイル基であり、これは、アルキルアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミンでの処理によるか、またはヒドラジンでの処理により、除去することができる。
ヒドロキシ基に適した保護基は、例えば、アシル基、例えばアセチルなどのアルカノイル基、アロイル基、例えばベンゾイル、またはアリールメチル基、例えばベンジルである。上記保護基の脱保護条件は、保護基の選択に伴い必然的に変動する。したがって、例えば、アルカノイルなどのアシル基またはアロイル基は、例えば、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化リチウムもしくは水酸化ナトリウムなど適した塩基との加水分解により除去することができる。あるいは、ベンジル基などのアリールメチル基は、例えば、パラジウム担持カーボンなどの触媒上での水素化により、除去することができる。
カルボキシ基に適した保護基は、例えば、エステル化基、例えば、例えば水酸化ナトリウムなどの塩基での加水分解により除去することができるメチルもしくはエチル基、または、例えば、例えばトリフルオロ酢酸のような有機酸などの酸での処理により除去することができるt−ブチル基、または、例えば、例えばパラジウム担持カーボンなどの触媒上での水素化により除去することができるベンジル基である。
保護基は、化学分野で周知の従来技術を用いて、合成中の任意の好都合な段階で除去することができる。
本明細書中に定義する特定の中間体(例えば、式II、III、IV、VI、VII、VIIIの化合物)は新規であり、これらを、本発明のさらなる特徴として提供する。
生物学的アッセイ−
以下のアッセイを用いて、a)生物学的アッセイにおけるPI3キナーゼ酵素の阻害剤として、b)生物学的アッセイにおける他のキナーゼの阻害剤として、c)BT474細胞におけるホスホAKT(Thr308)のin vitro阻害剤として、d)MDA−MB−468細胞におけるホスホAKT(Ser473)のin vitro阻害剤として、e)JEKO細胞におけるホスホAKT(Ser473)のin vitro阻害剤として、f)HT29細胞におけるホスホChk1(Ser345)のin vitro阻害剤として、g)腫瘍細胞株パネル全体にわたる細胞増殖の阻害剤として、hおよびi)ヒト乳腺癌細胞株MCF7を移植したSCIDマウスにおけるそれぞれホスホAKT(Ser473)のin vivo阻害剤または腫瘍成長のin vivo阻害剤としての、本発明の化合物の効果を測定した。
アッセイプロトコルに用いられる略語:
PIP2: PI(4,5)P2、ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート
s.c.: 皮下に
ATP: アデノシン三リン酸
DMSO: ジメチルスルホキシド
TRIS: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
CHAPS: 3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート
DTT: ジチオトレイトール
FBS: ウシ胎仔血清
DMEM: ダルベッコ変法イーグル培地
EDTA: エチレンジアミン四酢酸
EGTA: エチレングリコール四酢酸
BSA: ウシ血清アルブミン
PBS: リン酸緩衝食塩液
HRP: ホースラディッシュペルオキシダーゼ
RPMI: ロズウェルパーク記念研究所培地1640
4NQO: 4−ニトロキノリンN−オキシド
EMEM: イーグル最小必須培地
CO2: 二酸化炭素
PBST: リン酸緩衝食塩液/Tween
Ab: 抗体
MTS試薬: [3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩;MTS]および電子結合試薬(フェナジンメトスルフェート)PMS。
(a) in Vitro酵素阻害アッセイ
PI3K−β、PI3K−α、PI3K−γおよびPI3K−δの阻害を、ヒト組み換え酵素を用いて、Kinase Gloに基づく酵素活性アッセイで評価した。アッセイプラットフォームは、酵素、PIP2基質、ATPおよび化合物とのインキュベーション後のATPの減少を間接的に測定するものであった。
酵素反応の終了後、残存するATPを、発光下でルシフェラーゼがホタルルシフェリンをオキシルシフェリンに変換する二次酵素反応で用いた。測定したルミネセンスと、完了したキナーゼ反応の残存ATPとの間には、直接的な関係があった。したがって、ルミネセンスは、キナーゼ活性に逆相関していた。典型的には、12種の異なる化合物濃度について試験し、PI3K−β、PI3K−α、PI3K−γまたはPI3K−δの阻害からの生データを、阻害剤濃度に対してプロットした。
方法の詳細:
100%DMSO中の化合物を、音響分配(acoustic dispensing)によりアッセイプレートに加えた。PI3K酵素をトリス緩衝液(50mMトリス pH7.4、0.05% CHAPS、2.1mM DTT、および10mM塩化マグネシウム)に加え、そのまま化合物と20分間プレインキュベートした後、PIP2およびATPを含有する基質溶液を加えた。80分後に、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含有するKinase Glo検出溶液(Kinase Glo(R) Plus Luminecent Kinase Assayキット(Promega#V3772)から)の添加により、酵素反応を停止させた。プレートを室温で30分間放置した後、標準的なルミネセンスフィルターブロックを備えるPherastar Instrumentで読み取った。該アッセイにおけるDMSO、ATPおよびPIP2の最終濃度は、それぞれ1%、8μM、および80μMであった。
データ解析
非線形回帰適合に適合している対数曲線を用いて、IC50値を計算した。IC50値は、酵素活性の50%を阻害する試験化合物の濃度であった。
(b)PI3キナーゼ クラス1酵素以外のキナーゼ選択性の評価
キナーゼアッセイの大規模パネルは、Millipore、InvitrogenおよびProQinaseなどさまざまな商業的製造供給元により提供されている。そのようなパネルにより、所定の化合物の全体的キナーゼ選択率の評価が可能になる。正確な方法/技術は、製造供給元によりさまざまである。
本明細書中に記載する化合物のいくつかに関する選択率データは、英国、ダンディーのMRC Protein Phosphorylation UnitのMRC−Division of Signal Transduction Therapy(DSTT)で実施される酵素アッセイを用いて得た。タンパク質キナーゼアッセイは、放射化学的フォーマットを用いて行った。アッセイは、室温において、マルチドロップ384ウェルプレート中、全アッセイ体積25.5μLで実施した。化合物を酵素およびペプチド/タンパク質基質存在下で5分間プレインキュベートした後、10μLのATP(最終濃度は、各キナーゼについて5、20または50μMで選択した)の添加により反応を開始させた。アッセイを室温で実施した後、5μLのオルトリン酸を加えることにより停止させた。その後、アッセイプレート内容物をPackard Harvester(洗浄緩衝液は50mMのオルトリン酸であった)によりWhatman−P81−Unifilter Plate上に採取し、風乾した。その後、乾燥UnifilterプレートをMicroScint Oの添加によって密封し、Packard Topcount NXTシンチレーションカウンターで計数した。このプロトコルは、パネルのキナーゼの大部分に適した一般的フォーマットを占めるが、当業者ならよくわかるように、該プロトコルの修正が少数のキナーゼには必要であった。
約18の脂質キナーゼに関する脂質キナーゼアッセイもDSTTで実施した。脂質キナーゼアッセイはすべて、室温において、384ウェルプレート中、全アッセイ体積40μLで行った。該アッセイは、ADP−GLOアッセイ(Promega、#V9101)に提供されているプロトコルに従って実施した。このプロトコルは、パネルのキナーゼの大部分に適した一般的フォーマットを占めるが、当業者ならよくわかるように、該プロトコルの修正が少数のキナーゼには必要であった。
キナーゼ選択率も、DiscoverXを介して入手可能なKINOMEscanTMスクリーニングプラットフォームを用いて評価した。これは、試験化合物と、450を超えるヒトキナーゼおよび疾患に関連する変異体バリアント(mutant variant)との相互作用を定量的に測定するために、活性部位を対象とする競合結合アッセイを採用している。KINOMEscanTMアッセイではATPが必要なく、これにより、ATP濃度に依存する可能性があるIC50値とは対照的に、真の熱力学的相互作用の親和力が報告される。該手法は、キナーゼ活性部位と結合し、固定化リガンドに結合するキナーゼを直接的(立体的)または間接的(アロステリック)に妨げ、これにより、固体支持体上に捕獲されるキナーゼの量を減少させる化合物に基づく。反対に、キナーゼと結合しない試験分子は、固体支持体上に捕獲されるキナーゼの量に対し影響を有さない。スクリーニングの“ヒット”は、関連するDNA標識を検出する定量的qPCR法を用いて、試験で捕獲されるキナーゼの量を対照試料と対比して測定することにより確認する。同様に、試験化合物−キナーゼ相互作用の解離定数(Kds)は、固体支持体上に捕獲されるキナーゼの量を試験化合物濃度の関数として測定することにより計算する。
(c)BT474細胞におけるリン酸化AKT(Tyr308)を測定するアッセイのプロトコル
このアッセイを用いて、細胞におけるPI3K−α阻害を測定した。BT474細胞(ヒト乳管癌、ATCC HTB−20)を、10%FBSおよび1%グルタミンを含有するDMEM中に5600細胞/ウェルの密度で黒色384ウェルプレート(Costar、#3712)中に播種し、一晩放置して付着させた。
翌朝、100%DMSO中の化合物を、音響分配によりアッセイプレートに加えた。37℃、5%CO2で2時間インキュベートした後、培地を吸引し、細胞を、25mMトリス、3mM EDTA、3mM EGTA、50mMフッ化ナトリウム、2mMオルトバナジン酸ナトリウム、0.27M スクロース、10mM β−グリセロホスフェート、5mMポリリン酸ナトリウム、0.5% Triton X−100およびコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Roche #04693116001、溶解緩衝液50mLあたり1錠使用)を含有する緩衝液で溶解させた。
20分後、細胞溶解物を、PBS緩衝液中の抗全AKT抗体で予めコーティングしてあるELISAプレート(Greiner #781077)に移し、非特異的結合を、0.05%のTween 20を含有するPBS中の1% BSAでブロックした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。翌日、該プレートを、0.05%のTween 20を含有するPBS緩衝液で洗浄し、マウスモノクローナル抗ホスホAKT T308を用いてさらに2時間インキュベートした。プレートを再び上記のように洗浄した後、ウマ抗マウスHRP接合二次抗体を加えた。室温で2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、QuantaBlu基質希釈標準溶液(Thermo Scientific #15169、供給元の指示に従って調製)を各ウェルに加えた。60分後、ウェルに停止液を加えることにより、発生した蛍光生成物を停止させた。325nmの励起波長および420nmの発光波長をそれぞれ用い、Tecan Safireプレートリーダーを用いて、プレートを読み取った。特記しない限り、Cell SignallingからのPath Scan Phospho AKT(Thr308) sandwich ELISAキット(#7144)に入っていた試薬を、このELISAアッセイで用いた。
(d)PI3キナーゼ−ベータ阻害の尺度としてのMDA−MB−468細胞におけるホスホAKT(Ser473)の検出プロトコル
このアッセイを用いて細胞におけるPI3K−β阻害を測定し、このアッセイを上記アッセイ(c)と併せて用いて、細胞におけるアルファ対ベータ選択率を決定した。MDA−MB−468細胞(ヒト乳腺癌#ATCC HTB 132)を、Greiner 384ウェル黒色平底プレート中に、10%FBSおよび1%グルタミンを含有する40μLのDMEM中に1500細胞/ウェルで播種した。細胞プレートを37℃のインキュベーターで18時間インキュベートした後、音響分配を用いて、100%DMSO中の化合物を投与した。
無作為化したプレートマップ中に、化合物を12点の濃度範囲で投与した。100% DMSOを投与するか(最大シグナル)、pAKTシグナルを完全に排除する参照化合物(PI3K−β阻害剤)を添加する(最小対照)ことにより、対照ウェルを得た。プレートを37℃で2時間インキュベートした後、10μLの3.7%ホルムアルデヒド溶液を添加することにより細胞を固定した。30分後、Tecan PW384プレート洗浄機を用いてプレートをPBSで洗浄した。ウェルをブロックし、0.5% Tween20および1% MarvelTM(乾燥粉乳)を含有する40μLのPBSを添加して細胞を透過処理し、室温で60分間インキュベートした。該プレートを0.5%(v/v)のTween 20を含有するPBSで洗浄し、同PBS−Tween+1% MarvelTM中の20μLのウサギ抗ホスホAKT Ser473(Cell Signalling Technologies、#3787)を加え、4℃で一晩インキュベートした。
Tecan PW384を用いて、プレートをPBS+0.05% Tween 20で3回洗浄した。1% MarvelTMを含有するPBS+0.05% Tween 20中に希釈した二次抗体Alexa Fluor 488抗ウサギ(Molecular Probes、#A11008)を各ウェルに20μL加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを上記のように3回洗浄した後、各ウェルに20μLのPBSを加え、プレートを黒色プレートシーラーで密封した。
プレートをできるだけ早くAcumenプレートリーダーで読み取り、488nmのレーザーで励起後の緑色蛍光を測定した。このシステムを用いてIC50値を得て、プレートの質を対照ウェルにより決定した。参照化合物を毎回操作して、アッセイ性能をモニタリングした。
(e)Jeko細胞におけるホスホAKT(ser473)の検出プロトコル
このアッセイを用いて、細胞におけるPI3K−δ阻害を測定した。10μLの1%(v/v)DMSO中の×10の最終濃度の化合物を、Greiner V底96ウェルプレート(Sigma #M9686)のウェルに加えた。1μMまたは10μMの最大用量から10点の濃度範囲で化合物を投与し、8つの化合物を1つのプレート上に投与した。抗IgM(AffiniPure F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgM(Stratech、#109−006−129)およびビヒクルを投与した最大シグナル対照がプレート1枚につき8ウェル、抗IgMおよび参照PI3K−δ阻害剤を投与した最小シグナル対照が8ウェルであった。最終ビヒクル濃度は0.1% DMSOであった。各試験にPI3K−δ選択性化合物の全用量反応曲線は包含されていた。Jeko B細胞(ヒトマントル細胞リンパ腫、ATCC #CRL−3006)を、化合物を含有するGreiner96ウェルV底プレート中に播種した。細胞は、1%グルタミンを含有する70μLのRPMI中に100000細胞/ウェルで播種した。
細胞プレートを化合物と一緒に37℃のインキュベーターで1時間インキュベートした。この化合物のプレインキュベーション時間の後、上記抗IgMを20μLのアッセイ緩衝液(1%グルタミンを含有するRPMI)中×5の最終濃度でプレートに加えた。最終抗IgM濃度は、0.06μg/mLまたはEC90用量と同等であった。プレートを37℃で10分間インキュベートした後、プレートをすぐに氷上に置き、12000rpmで4分間遠心分離した。氷上で、手動ピペットを用いて上澄みを慎重に除去し、40μLの溶解緩衝液を加えた。プレートを氷上で5分間インキュベートし、製造業者の指示に従ってリン光体(Ser473)/全Akt全細胞溶解液キット(Mesoscale Diagnostics、#K11100D−3)でアッセイするまで−80℃で保管した。
(f)HT29細胞におけるホスホChk1(Ser345)の検出プロトコル
ATR(Ataxia Telangiectasia+Rad3関連キナーゼ)は、DNAの損傷または複製のブロックに応答してセリンまたはスレオニン残基上の複数基質をリン酸化するPI3キナーゼ関連キナーゼである。Chk1は、ATRの下流タンパク質キナーゼであり、DNA損傷のチェックポイント制御において重要な役割を果たす。Chk1の活性化はSer317およびSer345のリン酸化を伴う(後者は、ATRによるリン酸化/活性化の選択的標的とみなされている)。
これは、化合物および紫外線模倣4NQO(Sigma #N8141)で処理した後のHT29細胞におけるChk1(Ser345)のリン酸化の減少を測定することにより、ATRキナーゼの阻害を測定するための、細胞に基づくアッセイであった。HT29細胞(ECACC #85061109)を、1%Lグルタミンおよび10%FBSを含有する40μLのEMEM培地中に6000細胞/ウェルの密度で384ウェルアッセイプレート(Costar #3712)中に播種し、一晩放置して付着させた。翌朝、100% DMSO中の化合物を音響分配によりアッセイプレートに加えた。37℃および5% CO2で1時間インキュベートした後、無応答対照(null response control)を作り出すために4NQOで処理しないままにした最小対照ウェルを除き、すべてのウェルに100% DMSO中の3mM 4NQOを音響分配により40nL加えた。プレートをさらに1時間インキュベーターに戻した。その後、PBS溶液中の3.7%ホルムアルデヒドを20μL加え、室温で20分間インキュベートすることにより、細胞を固定した。その後、PBS中の0.1% Triton X100を20μL加え、室温で10分間インキュベートして、細胞を透過処理した。その後、Biotek EL405プレート洗浄機を用いて、プレートを50μL/ウェルのPBSで1回洗浄した。
ホスホ−Chk1 Ser 345抗体(Cell Signalling Technology #2348)を、0.05%ポリソルベート/Tweenを含有するPBS中に150倍希釈し、15μLを各ウェルに加えて室温で一晩インキュベートした。翌朝、プレートを、Biotek EL405プレート洗浄機を用いて50μL/ウェルのPBSで3回洗浄した後、PBST中に500倍希釈のAlexa Fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes、#A−11008)および0.002mg/mL Hoeschst染料(Molecular Probes #H−3570)を含有する二次Ab溶液を20μL加えた。室温で2時間インキュベートした後、Biotek EL405プレート洗浄機を用いてプレートを50μL/ウェルのPBSで3回洗浄した後、読み取るまで黒色プレートシールでプレートを密封した。10×の対物レンズとともにXF53フィルターを用い、Array Scan VTI機器を用いて、プレートを読み取った。Hoeschst(405nM)での核染色およびpChk1(488nM)の二次抗体染色を分析するために、2つのレーザー装備を用いた。
(g)腫瘍細胞株における細胞増殖アッセイ(個別化医療の前提を実証するために用いる)
化合物の作用に対するヒト癌細胞株パネルの感受性を、標準的な増殖アッセイで決定した。細胞株はAstraZeneca Cell Bankから得た。細胞株の大部分は、当業者に公知の細胞バンク保管所、例えば、ATCC、ECACC、DMSZ、RIKEN、KCLB、JCRB(HSRRB)、LBNL、CLSおよびICLCからも入手可能である。
細胞を、96ウェルプレートに、10%FBSを含有するRPMI培地中に1ウェルあたり1000〜6000細胞の密度で入れた。37℃で16時間インキュベートした後、さまざまな濃度の化合物をアッセイプレートに加えた。追加的に72時間インキュベートした後、2時間にわたりMTS試薬(Promega #3582)を各ウェルに添加することにより生存細胞を決定した。MTSは、電子カップリング試薬の存在下で代謝的に活性な細胞によりホルマザンに生物還元されるテトラゾリウム塩である。その後、生細胞の相対数の指標として、ホルマザン生成物を490nmにおける吸光度により定量した。GI50(細胞成長が50%阻害された濃度)を決定するために、薬物添加時に存在する細胞の相対数を、薬物添加前のMTSの読み取りと比較することにより決定し、この値を、アッセイ中の細胞成長の基準として、未処理細胞の72時間の値から差し引いた。
以下の‘個別化ヘルスケア/個別化医療の例’に記載するこのデータの解析は、PI3Kα阻害剤が、PIK3CA遺伝子変異を有する細胞株の選択的成長阻害を示すことを明らかにするための、このデータの解析方法を例示している。応答予測バイオマーカーの読み取りを用いて、PIK3CA遺伝子に変異を含有する腫瘍を有し、本明細書中に記載する化合物に応答する可能性が高い患者を識別することができる場合、これは、個別化ヘルスケア(PHC)または個別化医療の適切な条件を例示している。
本明細書中に記載する化合物に応答する他の考えうるマーカーとしては、限定されるものではないが、複製数の増加、PIK3CA遺伝子の増幅または転座、およびPI33キナーゼ経路の活性化または依存性の基準を提供する他の遺伝子的、ゲノム的もしくはプロテオミクス的変化;例えば、限定されるものではないが、1以上の受容体チロシンキナーゼの活性化、またはPI3キナーゼの調節サブユニット(p85)をコードするPIK3R遺伝子の変異もしくは転座、またはpAKT、pS6もしくはFOXO状態などの下流シグナル伝達マーカーのリン酸化が挙げられる。これに加えて、他の遺伝子および/またはそれらのタンパク質生成物、例えばKrasのシグナル伝達の解析は、個別化医療アプローチの予測性の改善に役立つ可能性がある。
(h)雄SCIDマウスにおいて成長したMCF−7腫瘍からのホスホAKT(ser473)の検出プロトコル
これは、動物モデルにおけるPI3K−α阻害の基準を提供する薬力学的アッセイであった。雄SCIDマウス(英国AZ、英国Charles Riverからも入手可能)の皮下(s.c.)にヒト乳腺癌細胞株MCF7(ICRF London、ATCC #HTB−22からも入手可能)を移植して、PI3キナーゼ阻害剤でのAKTのリン酸化の阻害を決定した。細胞を埋め込む24時間前に、0.5mgの21日徐放エストロゲンペレット剤(Innovative Research of America、#E121)をマウスに埋め込んだ。50%マトリゲル(BD Bioscience)中の5×106細胞を、動物の左側腹部に皮下注射した。腫瘍が400mm3の体積に達したら動物を無作為に8匹の対照群と4匹の処置群に分け、翌日投与を開始した。選択した時間点に腫瘍を取り出し、このときにPK測定のために血液試料も取り出した。
マウスから切除した腫瘍をFast Prep管(溶解マトリックスAを含有する2mL畝付き管(ridged tube)、MP Biomedicals #6910−500)に入れ、即座に凍結した。1mLの溶解緩衝液(25mM Tris、3mM EDTA、3mM EGTA、50mMフッ化ナトリウム、2mMオルトバナジン酸塩、0.27Mスクロース、10mMベータ−グリセロホスフェート、5mMピロリン酸塩、0.5% Triton x−100)およびホスファターゼ阻害剤(Sigma #P2850およびSigma #5726、1:100希釈物)およびプロテアーゼ阻害剤(Sigma #P8340、1:200希釈物)を、各管に加えた。腫瘍をFastPrep−TM機(MP Biomedicals #116004500)で1分間ホモジナイズした後、氷上に5分間放置し、続いて、さらに2つの均質化段階を行い、各段階の後に氷上で5分間インキュベートした。試料を冷却遠心分離器において1300rpmで10分間スピンさせた。その後、澄んだ溶解物を未使用の管に取り、10μLをタンパク質決定アッセイに用いた。
全AKTおよびリン酸化AKT(ser473)の検出は、MSDマルチスポットアッセイキット(Meso Scale Discovery #K1510OD−3 )を用いて行った。プレートの各ウェルは4つのスポットを含有していた;これらのうち2つは、キットに付いているマウスモノクローナル抗体でコーティングされており;1つは、全AKT用の捕捉抗体でコーティングされており、1つはリン酸化AKT(ser473)用の抗体でコーティングされていた。プレートを、低温室において、1ウェルあたり150μLのブロッキング溶液を用いてシェーカー上で一晩ブロックした。該ブロッキング溶液は、20mLの洗浄溶液の1×溶液およびキットに付いていた600mgのBlocker Aを用いて作製した。1ウェルあたり0.3mLの洗浄溶液でプレートを3回洗浄した。溶解物のアリコートを各腫瘍から取り出し、溶解緩衝液で2mg/mLの濃度に希釈した後、25μLの希釈溶解物を各ウェルに加え、1ウェルあたりの全量を50μgにした。プレートを室温において1時間シェーカー上に置いた後、プレートを3回洗浄した。検出抗体溶液は、ブロッキングおよび洗浄溶液の混合物、ならびに50×SULFO−TAG−TM抗全AKT抗体の1対50希釈物を用いて調製した。プレートを室温において1時間シェーカー上に置いた後、プレートを3回洗浄した。キットに付いていた読み取り緩衝液150μLを脱イオン水で1:4に希釈して各ウェルに加えた後、プレートをMSDプレート分析器で読み取った。読み取り緩衝液は電気化学ルミネセンスに適した化学的環境をもたらすので、プレートリーダーでプレートに電圧を加えると、プレート底面上の電極により、検出抗体に結合している標識は発光する。発光した光の強度は、存在する全AKTまたはリン酸化AKTの定量的尺度である。リン酸化AKTと全AKTの比を計算するために、Meso Scaleにより提案されている計算を施用した:リン酸化シグナルを2倍したものを全シグナル+リン酸化シグナルで割った後、100をかけてリンタンパク質の%を得る。値をLog10に変換した後、これらの値を用いて、各群のGeomeanおよび標準誤差を計算した。その後、両側検定の式(2 tailed formula)および不等分散を用いてスチューデントのt検定を施用して、有意性を確認した。試験により、8匹の動物の対照群と1処置群につき4匹が、試験を推進するのに十分であることが示された。
(i)SCIDマウスに移植したヒト乳腺癌細胞株MCF7における腫瘍成長の検出プロトコル
この方法は、PI3K−α依存性モデルにおけるPI3キナーゼ阻害剤のin vivoでの抗腫瘍効力の評価を提供する。上記PD試験では、雄SCIDマウスにヒト乳腺癌細胞株MCF7を皮下移植した。細胞を埋め込む24時間前に、0.5mgの21日徐放エストロゲンペレット剤をマウスに埋め込んだ。50%マトリゲル中の5×106細胞を、動物の左側腹部に皮下注射した。腫瘍が約200〜300mm3の体積に達したら動物を無作為に10〜15匹の対照群に分け、処置を開始した。動物に、経口経路、静脈内経路または腹腔内経路により、保護要件(welfare requirements)(経口投与用懸濁液はpH範囲4〜7、腹腔内/静脈内投与用溶液はpH範囲5.5〜7.0)に適応し、所要経路を介した投与に適したビヒクル中の化合物を、定義した投与量で2〜4週間にわたり投与した。通常、腫瘍はカリパスにより週に2回測定し、腫瘍体積は楕円の公式(パイ/6×幅×幅×長さ)を用いて計算した。
予想どおり、式(I)の化合物の薬理学的特性は構造変化に伴い変動するが、一般に、式(I)の化合物が持つ活性は、上記試験(a)および(c)の1以上において以下の濃度または用量で実証することができる:−
試験(a):− 例えば1nM〜100nMの範囲における、IC50対PI3K−α;
試験(c):− 例えば10nM〜1μMの範囲における、IC50対BT474細胞中の細胞ホスホAKT(Tyr308);
本発明の特定の化合物は、上記試験(a)および(c)の1以上において以下の濃度または用量で活性を持つと好都合である:−
試験(a):− 例えば1nM〜100nMの範囲における、IC50対PI3K−α;
試験(c):− 例えば10nM〜1μMの範囲における、IC50対BT474細胞中の細胞ホスホAKT(Tyr308);
本発明の特定の化合物は、上記試験(a)、(c)、(h)および(i)の1以上において以下の濃度または用量で活性を持つと好都合である:−
試験(a):− 例えば1nM〜100nMの範囲における、IC50対PI3K−α;
試験(c):− 例えば10nM〜1μMの範囲における、IC50対BT474細胞中の細胞ホスホAKT(Tyr308);
試験(h):− 例えば1〜200mg/kg/日の範囲における、in vivoでのホスホAKT(ser473)の>50%阻害;
試験(i):− 例えば1〜200mg/kg/日の範囲における異種移植片活性。
実施例に関し以下のデータを作成した:
組み合わせ試験
材料および方法
MCF7は、PIKC3CA遺伝子(E545K)に変異を有するエストロゲン受容体陽性の***腫瘍細胞株である。雄SCIDマウス(英国AZ)の皮下(s.c.)にヒト乳腺癌細胞株MCF7(ICRF London)を移植して、PI3キナーゼ阻害剤の抗腫瘍活性を決定した。細胞を埋め込む24時間前に、0.5mgの21日徐放エストロゲンペレット剤(Innovative Research of America)をマウスに埋め込んだ。50%マトリゲル(BD Bioscience)中の5×106細胞を、動物の左側腹部に皮下注射した。
BT474は、増加したHer2発現を有し、PIK3CA遺伝子(K111N)に変異を有する、エストロゲン受容体陽性の***腫瘍細胞株である。マウスで継代培養したヒト上皮乳管癌細胞株BT474c(BT474−ATCC HTB−20からAZで誘導)腫瘍を、雌スイス無胸腺ヌードマウス(スイスnu/nu−英国AZ)に皮下移植した。細胞を埋め込む24時間前に、0.36mgの60日徐放エストロゲンペレット剤(Innovative Research of America)をマウスに埋め込んだ。50%マトリゲル(BD Bioscience)中の5×106細胞を、動物の左側腹部に皮下注射した。
HCC70は、PTEN遺伝子発現に欠ける***腫瘍細胞株である。乳管上皮腫瘍細胞株HCC70(ATCC−CRL2315)細胞を、雌スイス無胸腺ヌードマウス(スイスnu/nu−英国AZ)に皮下移植した。50%マトリゲル(BD Bioscience)中の1×106細胞を、動物の左側腹部に皮下注射した。
腫瘍が約200〜300mm3の体積に達したら動物を無作為に10〜15匹の群に分け、処置を開始した。適したビヒクル中の化合物を、定義した用量およびスケジュールで経口経路により動物に3〜4週間投与した。腫瘍をカリパスにより週に2〜3回測定し、楕円の公式(パイ/6×幅×幅×長さ)を用いて腫瘍体積を計算した。
AZD5363は、単独で投与する場合、10% DMSO、25% Kleptose溶液中に配合した。(KleptoseはRoquette−Pharma(商標)から供給されるヒドロキシプロピル ベータシクロデキストリンである−in vivoでの使用および配合に適している)。
AZD5363は、実施例3と同時投与する場合、HPMC/Tween(0.5% Methocel(ヒドロキシプロピルメトセルロース)/0.1% Polysorbate 80)中に配合した。該懸濁液を一晩ボールミル粉砕した。
実施例3は、HPMC/Tween(0.5% Methocel(ヒドロキシプロピルメトセルロース)/0.1% Polysorbate 80)中に配合した。
AZD8186は、HPMC/Tween(0.5% Methocel(ヒドロキシプロピルメトセルロース)/0.1% Polysorbate 80)中に配合した。
AZD8186は、実施例3と同時投与する場合、HPMC/Tween(0.5% Methocel(ヒドロキシプロピルメトセルロース)/0.1% Polysorbate 80)中に配合した。該懸濁液を一晩ボールミル粉砕した。
オラパリブは、10% DMSO/30% Kleptose溶液中に配合した。
AKT阻害剤(AZD5363)と組み合わせた実施例3による腫瘍成長阻害−逐次投与
試験は、BT474異種移植モデルで実施した。実施例3およびAZD5363を、6〜8時間あけて1日2回(BID)、週に2日投与/5日非投与のサイクルで、AZD5363を週の1日目および2日目のサイクルで投与し、実施例3を週の3日目および4日目のサイクルで投与するような順序で投与した。それぞれHPMC/Tween中およびDMSO/Kloptose中、実施例3は50mg/kg BIDで投与し、AZD5363は170mg/kg BIDで投与した。
腫瘍成長曲線(図9に示す)は、実施例3またはAZD5363の間欠投与が、ビヒクルのみの対照(HPMC/Tween)と比べ、腫瘍成長を部分的に阻害したことを示している。実施例3+AZD5363の組み合わせは、腫瘍退縮をもたらした。
AKT阻害剤(AZD5363)と組み合わせた実施例3による腫瘍成長阻害−同時投与
試験は、BT474異種移植モデルで実施した。実施例3およびAZD5363を、6〜8時間あけて1日2回(BID)、週に2日投与/5日非投与のサイクルで、随伴して投与した。ともにHPMC/Tween中、実施例3は25mg/kg BIDで投与し、AZD5363は100mg/kg BIDで投与した。
腫瘍成長曲線(図10に示す)は、実施例3またはAZD5363の間欠投与が、ビヒクルのみの対照(HPMC/Tween)と比べ、腫瘍成長を部分的に阻害したことを示している。実施例3+AZD5363の組み合わせは、投与期間中は腫瘍退縮をもたらしたが、続く非投与期間中に腫瘍は再成長した。
PARP阻害剤(オラパリブ)と組み合わせた実施例3による腫瘍成長阻害
試験は、BT474異種移植モデルで実施した。実施例3およびオラパリブを、試験期間を通して毎日、実施例3は6〜8時間あけて1日2回(BID)、各回25mg/kgの用量で、オラパリブは1日1回(QD)、実施例3の最初の1日用量の1時間後に100mg/kgで投与した。どちらの作用物質もHPMC/Tween中のものを投与した。
腫瘍成長曲線(図11)は、オラパリブ単独は腫瘍成長に著しい効果を有さず、実施例3単独は部分的に成長を阻害したが、実施例3+オラパリブの組み合わせは腫瘍退縮をもたらしたことを示している。
PARP阻害剤(オラパリブ)と組み合わせた実施例3による腫瘍成長阻害
試験は、MCF7異種移植モデルで実施した。実施例3およびオラパリブを、試験期間を通して毎日、実施例3は6〜8時間あけて1日2回、各回25mg/kgの用量で、オラパリブは1日1回(QD)、実施例3の最初の1日用量の1時間後に100mg/kgで投与した。どちらの作用物質もHPMC/Tween中のものを投与した。
腫瘍成長曲線(図12)は、オラパリブ単独は腫瘍成長に対し最小限の効果しか有さず、実施例3単独は多少の腫瘍退縮をもたらすが、実施例3+オラパリブの組み合わせは、より強い腫瘍退縮をもたらしたことを示している。
PI3Kベータ/デルタ阻害剤(AZD8186)と組み合わせた実施例3による腫瘍成長阻害
試験は、HCC70異種移植モデルで実施した。実施例3およびAZD8186を、試験期間を通して毎日、1日2回(BID)、実施例3は各回25mg/kgの用量で、AZD8186は各回50mg/kgの用量で投与した。どちらの作用物質もHPMC/Tween中のものを投与した。
腫瘍成長曲線(図13)は、AZD8186は腫瘍成長を部分的に阻害し、実施例3単独はより強く成長を阻害したが、実施例3+AZD8186の組み合わせは腫瘍退縮をもたらしたことを示している。
本発明の他の観点に従って、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、医薬組成物を提供する。
錠剤製剤に適した薬学的に許容しうる賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤、顆粒化および崩壊剤、結合剤、潤滑剤、防腐剤ならびに酸化防止剤が挙げられる。錠剤製剤は、コーティングされていなくてもよく、あるいは、製剤の崩壊と、それに続く胃腸管内での活性構成成分の吸収を改変するために、または製剤の安定性および/もしくは外観を改善するために、どちらの場合も当分野で周知の従来のコーティング剤および手順を用いて、コーティングされていることができる。
経口使用のための組成物は、選択的に、活性構成成分が不活性固体希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセルの形態にあるか、活性構成成分が水またはオイルと混合されている軟ゼラチンカプセルの形態にあることができる。
水性懸濁液は一般に、微粉化形態にある活性構成成分を、1以上の懸濁化剤、分散剤または湿潤剤と一緒に含有する。水性懸濁液は、1以上の防腐剤、酸化防止剤、着色剤、香味剤、および/または甘味剤も含有することができる。
油性懸濁液は、活性構成成分を植物油または鉱油に懸濁させることにより配合することができる。油性懸濁液は増粘剤を含有することもできる。口当たりの良い経口調製物を提供するために、上記のような甘味剤、および香味剤を加えてもよい。これらの組成物は、酸化防止剤を加えることにより保存することができる。
水の添加により水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末および顆粒は、一般に、活性構成成分を、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤、および1以上の防腐剤と一緒に含有する。甘味剤、香味剤および着色剤などの追加的な賦形剤も、存在することができる。
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルションの形態で存在することもできる。油相は植物油もしくは鉱油またはこれらのいずれかの混合物であることができる。エマルションは、甘味剤、香味剤、および防腐剤も含有することができる。
シロップおよびエリキシルは、甘味剤と一緒に配合することができ、粘滑剤、防腐剤、香味剤および/または着色剤を含有することもできる。
該医薬組成物は、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液の形態にあることもでき、これは、上記の適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤の1以上を用い、公知の手順に従って配合することができる。無菌の注射可能な調製物は、非毒性で非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であることもできる。
吸入投与用の組成物は、微細な固体または液滴を含有するエーロゾルのいずれかとして活性構成成分が分配されるようになっている、従来の加圧エーロゾルの形態にあることができる。揮発性フッ素化炭化水素または炭化水素などの従来のエーロゾル噴射剤を用いることができ、エアゾール機器は、計量した分量の活性構成成分を分配するようになっている。
製剤に関するさらなる情報については、Comprehensive Medicinal Chemistryの第5巻、25.2章(Corwin Hansch;編集委員委員長)、Pergamon Press 1990を参照のこと。
単一剤形をもたらすために1以上の賦形剤と組み合わせる活性構成成分の量は、処置される宿主および特定の投与経路に応じて必然的に変動する。例えば、ヒトへの経口投与では、一般に、例えば、1mg〜2gの投与しようとする活性作用物質(より適切には100mg〜2g、例えば、250mg〜1.8g、例えば500mg〜1.8g、とりわけ500mg〜1.5g、好都合には500mg〜1g)を、全組成物の約3〜約98重量パーセントであることができる適切で好都合な量の賦形剤と配合することが必要になる。大用量が必要な場合、活性構成成分の用量を好都合に分けて、多数の剤形、例えば、2以上の錠剤またはカプセルが必要となる可能性があることは、理解されるであろう。好都合には、単一剤形は、1〜300mgの活性構成成分を含有することができる。
治療的または予防的目的での式(I)の化合物の用量サイズは、周知の医療の原理に準じて、疾患状態の性質および重症度、動物または患者の年齢および性別、ならびに投与経路に従って必然的に変動する。
治療的または予防的目的での式(I)の化合物の使用において、それは、一般に、必要に応じて分割用量で、例えば1mg/kg〜100mg/kg体重の範囲にある1日用量が受領されるように投与する。一般に、非経口経路を採用する場合は、より低い用量を投与する。したがって、例えば静脈内投与の場合、例えば1mg/kg〜25mg/kg体重の範囲の用量を一般に用いる。同様に、吸入投与の場合、例えば1mg/kg〜25mg/kg体重の範囲の用量を用いる。しかしながら、とりわけ錠剤形態での経口投与が好ましい。典型的には、単位剤形は、約10mg〜0.5gの本発明の化合物を含有する。
本発明の化合物は、毎日、または1日1回より多く、投与することができる。本発明の化合物は、適した投与スケジュールで投与することもでき、例えば、本発明の化合物を特定日数にわたり1日1回以上(例えば、1日1回、2回または3回)投与した後、一定期間投与しないことができる。その後、この投与サイクル(投与日および非投与日からなる)を繰り返すことができる。好都合には、投与サイクルは、5〜14日間、例えば、5、7、10または14日間であり、より好都合には7日間である。一観点において、ある投与サイクルでは、式(I)の化合物を1日または連続した2もしくは3日間投与した後、3、4、5または6日間投与しない。
一観点では、式(I)の化合物を1日投与した後、2、3または4日間投与しない。
他の一観点では、式(I)の化合物を2日間投与した後、4、5または6日間投与しない。
さらに他の一観点では、式(I)の化合物を3日間投与した後、3、4または5日間投与しない。
他の一観点では、式(I)の化合物を4日間投与した後、2、3または4日間投与しない。
他の一観点では、式(I)の化合物を5日間投与した後、1、2または3日間投与しない。
他の一観点では、式(I)の化合物を1日おきに投与する。
上記投与スケジュールは、本発明の化合物を単剤療法として用いるときに施用すると好都合である。併用療法として本発明の化合物を投与するための考えうる投与スケジュールの他の例は、以下に記載する。
上記のように、PI3K−αおよび−δ酵素は、癌および他の細胞の増殖を媒介する作用、血管新生事象を媒介する作用、ならびに癌細胞の運動、移動および侵襲を媒介する作用の1以上により、腫瘍形成に寄与することが知られている。われわれは、本発明の化合物が強い抗腫瘍活性を持ち、これが、腫瘍細胞の増殖および生存ならびに転移性腫瘍細胞の侵襲および移動能をもたらすシグナル伝達段階に関わるPI3K−αおよび−δ酵素の阻害により得られると考えられることを、見いだした。
したがって、本発明の化合物は、抗腫瘍剤として、とりわけ、腫瘍の成長および生存の阻害ならびに転移性腫瘍の成長の阻害をもたらす哺乳類癌細胞の増殖、生存、運動、内転移および侵襲の選択的阻害剤として、有用である。とりわけ、本発明の化合物は、固形腫瘍疾患の封じ込めおよび/または処置における抗増殖剤および抗侵襲剤として有用である。とりわけ、本発明の化合物は、腫瘍細胞の増殖および生存ならびに転移性腫瘍細胞の移動能および侵襲をもたらすシグナル伝達段階に関わるPI3K−αおよび/または−δ酵素の阻害に対し感受性を示す腫瘍の予防または処置に有用であると予想される。さらに、本発明の化合物は、PI3K−αおよび/もしくは−δ酵素の阻害により単独でまたは部分的に媒介される腫瘍の予防または処置に有用であると予想される、すなわち、該化合物は、PI3K−αおよび/または−δ酵素阻害作用を、そのような処置を必要とする温血動物にもたらすために、用いることができる。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物において医薬品として用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物における抗増殖作用の生成に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、ヒトなどの温血動物において固形腫瘍疾患の封じ込めおよび/または処置における抗侵襲剤として用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物における抗増殖作用の生成のための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、ヒトなどの温血動物における抗増殖作用の生成に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、ヒトなどの温血動物において固形腫瘍疾患の封じ込めおよび/または処置における抗侵襲剤として用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、抗増殖作用を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において生成するための方法であって、前記動物に、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、固形腫瘍疾患の封じ込めおよび/または処置による抗侵襲作用を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において生成するための方法であって、前記動物に、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物における癌の予防または処置に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物における癌の予防または処置に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、癌の予防または処置を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において行うための方法であって、前記動物に、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物における固形腫瘍疾患の予防または処置に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点に従って、ヒトなどの温血動物における固形腫瘍疾患の予防または処置に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、固形腫瘍疾患の予防または処置を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において行うための方法であって、前記動物に、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の観点に従って、腫瘍細胞の増殖、生存、侵襲および移動能をもたらすシグナル伝達段階に関わるPI3K−αおよび/または−δ酵素の阻害に対し感受性を示す腫瘍の予防または処置に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、腫瘍細胞の増殖、生存、侵襲および移動能をもたらすシグナル伝達段階に関わるPI3K−αおよび/または−δ酵素の阻害に対し感受性を示す腫瘍の予防または処置に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、腫瘍細胞の増殖、生存、侵襲および移動能をもたらすシグナル伝達段階に関わるPI3K−αおよび/または−δ酵素の阻害に対し感受性を示す腫瘍の予防または処置に用いるための方法であって、前記動物に、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の観点に従って、PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用をもたらすのに用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用をもたらすのに用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明の他の観点に従って、PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用をもたらすための方法であって、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法も提供する。
上記のように、本発明の特定の化合物は、PI3K−αおよび−δ酵素に対し、他のPI3キナーゼ酵素または他のキナーゼに対してより、実質的に良好な効能を持つ。そのような化合物は、PI3K−αおよび−δ酵素に対し十分な効能を持ち、PI3K−αおよび−δ酵素を阻害するのに十分な量で用いることができるが、PI3K−β酵素および他のほとんどのキナーゼ酵素に対しては活性をほとんど示さない。そのような化合物は、PI3K−αおよび−δ酵素の選択的阻害に有用である可能性が高く、例えばPI3K−αおよび/または−δ酵素により促進される腫瘍の有効な処置に有用である可能性が高い。
本発明のこの観点に従って、選択的PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用をもたらすのに使用するための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、選択的PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用をもたらすのに用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明の他の観点に従って、選択的PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用をもたらすための方法であって、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法も提供する。
“選択的PI3K−αおよび−δ酵素阻害作用”は、式(I)の化合物が、PI3K−αおよび−δ酵素に対し、他のクラス1 PI3キナーゼに対してより効能が高く、一般に、より広いPI3キナーゼファミリーの他のメンバー、ならびにチロシンおよびser/thrキナーゼを含むより広範なクラスのキナーゼ酵素にわたる他のメンバーと比較して、良好な選択性を示すことを意味する。
本発明の他の特徴に従って、乳癌、胃(stomach)(胃(gastric))および食道癌、扁平上皮癌(SCC)および腺癌を含む非小細胞性肺癌(NSCLC)、頭頚部(H&N)のSCC、婦人科癌(子宮内膜癌、卵巣癌および子宮頚癌を含む)、ならびに、多発性骨髄腫、リンパ腫および白血病(慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)を含む)などの血液癌の処置に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、膀胱、脳/CNS、結腸直腸、肺(すべての他の形態)、胆嚢および胆管、ならびに皮膚の癌の処置に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、前立腺、骨、腎臓、肝臓、黒色腫、胃腸組織、膵臓、睾丸、甲状腺、陰茎、外陰部の癌、および、変異、増幅または他の異常を通じてPI3キナーゼ依存性を示す他の腫瘍タイプの処置に用いるための、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、乳癌、胃(stomach)(胃(gastric))および食道癌、SCCおよび腺癌を含むNSCLC、H&NのSCC、婦人科癌(子宮内膜癌、卵巣癌および子宮頚癌を含む)、ならびに、多発性骨髄腫、リンパ腫および白血病(CLL、ALLおよびMCLを含む)などの血液癌の処置を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において行うための方法であって、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、膀胱、脳/CNS、結腸直腸、肺(すべての他の形態)、胆嚢および胆管、ならびに皮膚の癌の処置を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において行うための方法であって、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、前立腺、骨、腎臓、肝臓、黒色腫、胃腸組織、膵臓、睾丸、甲状腺、陰茎、外陰部の癌、および、変異、増幅または他の異常を通じてPI3キナーゼ依存性を示す他の腫瘍タイプの処置を、そのような処置を必要とするヒトなどの温血動物において行うための方法であって、有効量の先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の特徴に従って、乳癌、胃(stomach)(胃(gastric))および食道癌、SCCおよび腺癌を含むNSCLC、H&NのSCC、婦人科癌(子宮内膜癌、卵巣癌および子宮頚癌を含む)、ならびに、多発性骨髄腫、リンパ腫および白血病(CLL、ALLおよびMCLを含む)などの血液癌の処置に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、膀胱、脳/CNS、結腸直腸、肺(すべての他の形態)、胆嚢および胆管、ならびに皮膚の癌の処置に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明のこの観点の他の特徴に従って、前立腺、骨、腎臓、肝臓、黒色腫、胃腸組織、膵臓、睾丸、甲状腺、陰茎、外陰部の癌、および、変異、増幅または他の異常を通じてPI3キナーゼ依存性を示す他の腫瘍タイプの処置に用いるための医薬品の製造における、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の使用を提供する。
本発明の1つの特徴において、処置しようとする癌は乳癌である。この特徴の他の観点において、乳癌はエストロゲン受容体陽性である。この観点の一態様では、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、本明細書中で定義する抗ホルモン剤と組み合わせて投与する。この観点の他の態様では、実施例3を、本明細書中で定義する抗ホルモン剤と組み合わせて投与する。この観点の他の態様では、実施例3を、オラパリブまたは薬学的に許容しうるその塩と組み合わせ、所望によりさらに本明細書中で定義する抗ホルモン剤と組み合わせて投与する。この観点の他の態様では、実施例3を、AZD5363または薬学的に許容しうるその塩と組み合わせ、所望によりさらに本明細書中で定義する抗ホルモン剤と組み合わせて投与する。
癌の処置が示されている一観点において、これは、転移すなわち癌の拡散の予防および転移の処置をさすことができることを、理解すべきである。したがって、本発明の化合物は、転移を有さない患者を処置するのに用いると、転移の発生を阻止するか転移が発生するまでの期間を長くすることができ、既に転移を有する患者に用いると、転移それ自体を処置することができる。さらに、癌の処置は、確立された原発腫瘍(1以上)および進行性の原発腫瘍(1以上)の処置をさすことができる。したがって、一観点において、癌の処置は転移の予防に関する。本発明の他の観点において、癌の処置は転移の処置に関する。本発明の他の観点において、癌の処置は、確立された原発腫瘍(1以上)または進行性の原発腫瘍(1以上)の処置に関する。
上記のように、式(I)の化合物のin vivo作用は、式(I)の化合物の投与後にヒトまたは動物の体内で形成される1以上の代謝産物(先に定義した式Aの化合物など)により部分的にもたらされる。
本発明の特定の化合物は、PI3キナーゼ−αおよび−δに対し、他のクラスIのPI3キナーゼアイソフォーム、例えば−βおよび−γに対してより、良好な効能を持つ。一観点において、本発明の化合物は、PI3K−βおよび−γに比べPI3K−αおよび−δに対し選択性が高い。
したがって、本発明はまた、患者においてPI3キナーゼ−αを阻害するための方法であって、患者においてホスホイノシチド3キナーゼ−αを阻害するのに有効な量の式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、患者に投与することを含む、前記方法を企図する。
したがって、本発明はまた、患者においてPI3キナーゼ−αおよび−δを阻害するための方法であって、患者においてPI3キナーゼ−αおよび−δを阻害するのに有効な量の式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、患者に投与することを含む、前記方法を企図する。
PI3キナーゼの阻害剤である式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩は、さまざまな他の疾患状態における潜在的な治療上の用途も有する。例えば、PI3キナーゼは、血管樹、すなわち、血管平滑筋細胞(Thyberg,European Journal of Cell Biology,1998,76(1),33−42)および肺(気道平滑筋細胞)(Krymskaya,V.P.,BioDrugs,2007,21(2),85−95)における平滑筋増殖を促進するのに重要な役割を果たす。血管平滑筋細胞の過剰増殖は、アテローム斑の形成および侵襲的な血管処置後の新生内膜過形成の発現において、重要な役割を果たす(Scwartz et al.,Progress in Cardiovascular Disease,1984,26,355−372;Clowes et al.,Laboratory Investigations,1978,39,141−150)。さらに、気道平滑筋細胞の過剰増殖は、喘息および慢性気管支炎の状況においてCOPDの発現を引き起こす。したがって、PI3キナーゼ活性の阻害剤は、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症およびCOPDの予防に用いることができる。
PI3キナーゼはまた、白血球機能(Fuller et al.,The Journal of Immunology,1999,162(11),6337−6340;Eder et al.,The Journal of Biological Chemistry,1998,273(43),28025−31)およびリンパ球機能(Vicente−Manzanares et al.,The Journal of Immunology,1999,163(7),4001−4012)において重要な役割を果たす。例えば、炎症を起こした内皮への白血球付着には、PI3キナーゼ依存性シグナル伝達プロセスによる内因性白血球インテグリンの活性化が関与する。さらに、好中球における酸化的バースト(Nishioka et al.,FEBS Letters,1998,441(1),63−66およびCondliffe,A.M.,et al.,Blood,2005,106(4),1432−40)および細胞骨格の再構築(Kirsch et al.,Proceedings National Academy of Sciences USA,1999,96(11),6211−6216)に、PI3キナーゼシグナル伝達が関与すると思われる。好中球の遊走および方向性運動も、PI3キナーゼ活性に依存する(Camps,M.,et al.,Nat Med,2005,11(9),936−43およびSadhu,C.et al.,J Immunol,2003,170(5),2647−54)。したがって、PI3キナーゼの阻害剤は、炎症部位での白血球の付着および活性化を減少させるのに有用である可能性があり、したがって、急性および/または慢性の炎症性障害の処置に用いることができる。PI3キナーゼは、リンパ球の増殖および活性化においても重要な役割を果たす。Fruman et al.,Science,1999,283(5400),393−397。とりわけ、PI3K−δはB細胞の発生および機能、例えば、IgMに特異的な抗体により誘発されるB細胞増殖(Okkenhaug K etal.,Science,2002,297(5583),1031−1034)、B細胞受容体により誘発されるDNAの合成および増殖、ならびにIL−4により誘発される生存(Bilancio A et al.,Blood,2006,107,642−650)に必須である。これらの観察結果は、PI3K−δが、B細胞の機能において、他のクラスIのPI3Kにより補われない極めて重要で重複しない役割を有することを示している。自己免疫疾患におけるリンパ球の重要な役割を考えると、PI3キナーゼ活性の阻害剤を、そのような疾患の処置に用いることができる(Rommel C,Camps MおよびJi H,Nat Rev Immunol,2007,1038,191−201)。
先に定義した抗癌処置は、単独療法として施用することができ、または、本発明の化合物に加えて、従来の外科手術もしくは放射線療法もしくは化学療法を包含することができる。そのような化学療法としては、以下のカテゴリーの抗腫瘍剤の1以上を挙げることができる:−
(i)医学的腫瘍学で用いられるような抗増殖薬/抗新生物薬およびそれらの組み合わせ、例えば、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド(temozolamide)およびニトロソウレア);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシダビンおよび抗葉酸剤、例えば、5−フルオロウラシルおよびテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシウレア);抗腫瘍性抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシンおよびミトラマイシンのようなアントラサイクリン);抗有糸***剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド、ならびにタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド、ならびにポロキナーゼ阻害剤);ならびにトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、ならびにカンプトセシン);
(ii)抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、および酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン、およびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール(vorazole)、およびエキセメスタン)、ならびに5α−レダクターゼの阻害剤、例えばフィナステリド;
(iii)成長因子の機能およびそれらの下流のシグナル伝達経路の阻害剤:これには、Stern et al.Critical Reviews in Oncology/Haematology,2005,54,11〜29頁により検討されている任意の成長因子または成長因子受容体標的のAbモジュレーターが包含される;そのような標的の小分子阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤も包含される−例としては、抗erbB2抗体トラスツズマブ[HerceptinTM]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗EGFR抗体セツキシマブ[Erbitux、C225]のほか、erbB受容体ファミリーの阻害剤を含むチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブまたはエルロチニブなどの上皮成長因子ファミリー受容体(EGFR/erbB1)チロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブなどのerbB2チロシンキナーゼ阻害剤、およびアファチニブ(afatanib)などの混合erb1/2阻害剤が挙げられる;同様の戦略が、他のクラスの成長因子およびそれらの受容体、例えば、肝細胞成長因子ファミリーまたはc−metおよびronを含むそれらの受容体の阻害剤;インスリンおよびインスリン成長因子ファミリーまたはそれらの受容体(IGFR、IR)の阻害剤、血小板由来成長因子ファミリーまたはそれらの受容体(PDGFR)の阻害剤、ならびに、c−kit、AnLKおよびCSF−1Rなど他の受容体チロシンキナーゼにより媒介されるシグナル伝達の阻害剤に、利用可能である;
より広範なPI3キナーゼシグナル伝達経路でシグナル伝達タンパク質を標的にするモジュレーター、例えば、PI3K−βなど他のPI3キナーゼアイソフォームの阻害剤、およびAKT、mTOR、PDK、SGK、PI4KまたはPIP5Kなどのser/thrキナーゼの阻害剤も包含される;
先に挙げていないセリン/スレオニンキナーゼの阻害剤、例えば、ベムラフェニブなどのraf阻害剤、セルメチニブ(AZD6244)などのMEK阻害剤、イマチニブまたはニロチニブなどのAbl阻害剤、イブルチニブなどのBkt阻害剤、フォスタマニチブなどのSyk阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤(例えばAZD1152)、JAK、STATおよびIRAK4など他のser/thrキナーゼの阻害剤、ならびにサイクリン依存性キナーゼ阻害剤も包含される;
(iv)DNA損傷シグナル伝達経路のモジュレーター、例えば、PARP阻害剤(例えばオラパリブ)、ATR阻害剤またはATM阻害剤;
(v)Bclファミリーモジュレーター(例えばABT−263/ナビトクラックス、ABT−199)などのアポトーシスおよび細胞死経路のモジュレーター;
(vi)血管内皮成長因子の作用を阻害するような抗血管新生剤[例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(AvastinTM)、ならびに、例えば、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、スニチニブおよびバンデタニブなどのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(ならびに、他の機序により働く他の化合物(例えば、リノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、およびアンギオスタチン)];
(vii)コンブレタスタチンA4などの血管損傷剤;
(viii)抗侵襲剤、例えば、ダサチニブ(J.Med.Chem.,2004,47,6658−6661)およびボスチニブ(SKI−606)のようなc−Srcキナーゼファミリー阻害剤、ならびに、マリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害剤、またはヘパラナーゼに対する抗体];
(ix)免疫療法アプローチ、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子のようなサイトカインでのトランスフェクションなど、患者の腫瘍細胞の免疫原性を向上させるex−vivoおよびin−vivoアプローチ、T細胞アネルギーを低下させるアプローチ、サイトカイントランスフェクト樹状細胞などのトランスフェクト免疫細胞を用いるアプローチ、サイトカイントランスフェクト腫瘍細胞株を用いるアプローチ、ならびに抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチなど。具体例としては、PD−1を標的にするモノクローナル抗体(例えばBMS−936558)またはCTLA4を標的にするモノクローナル抗体(例えば、イピリムマブおよびトレメリムマブ)が挙げられる;
(x)アンチセンスまたはRNAiに基づく治療、例えば、上記標的を対象とするもの。
(xi)遺伝子療法アプローチ、例えば、異常p53または異常BRCA1もしくはBRCA2のような異常遺伝子を置換するアプローチ、シトシンジアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌性ニトロレダクターゼ酵素を用いるようなGDEPT(遺伝子を対象とする酵素プロドラッグ療法)アプローチ、ならびに多剤耐性遺伝子療法など化学療法または放射線療法に対する患者の耐容性を向上させるアプローチなど。
本発明のこの観点に従って、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、他の抗腫瘍剤、とりわけ、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤のいずれか1つとを含む組み合わせを提供する。とりわけ、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤は、処置しようとする特定の癌の標準治療である;当業者なら、“標準治療”の意味を理解するであろう。
したがって、本発明の他の観点において、他の抗腫瘍剤、とりわけ、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点において、他の抗腫瘍剤、とりわけ、上記(i)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、上記(i)に挙げた抗腫瘍剤のいずれか1つとを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、例えばタキソールまたはタキソテールなどのタキソイド、好都合にはタキソテールとを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の他の観点において、他の抗腫瘍剤、とりわけ、上記(ii)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、上記(ii)に挙げた抗ホルモン剤、例えば、上記(ii)に挙げた抗エストロゲン剤のいずれか1つとを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の他の観点において、国際公開WO2008/023161号に開示されているようなmTOR阻害剤、例えば、
と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、国際公開WO2008/023161号に開示されているようなmTOR阻害剤、例えば、
とを含む、前記組み合わせを提供する。
とりわけ、mTOR阻害剤はAZD2014であり、これは以下の構造を有する:
一観点において、式(I)の化合物とAZD2014の上記組み合わせは、所望により標準治療のホルモン療法と組み合わせて、エストロゲン受容体陽性の乳癌の処置に用いるのに適してる。
本発明の他の観点において、PI3K−βの阻害剤と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
式(I)の化合物とPI3K−βの阻害剤の組み合わせは、PTEN喪失に起因する腫瘍、例えば、前立腺癌、乳癌(例えばトリプルネガティブ乳癌)、扁平上皮NSCLCおよび腎癌の処置に、とりわけ有用であることができる。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩とPI3K−βの阻害剤とを含む組み合わせを提供する。
一観点において、上記PI3K−βの阻害剤は、PI3K−δ阻害活性もいくらか有する。
本発明の他の観点において、PI3K−βの阻害剤、例えば、国際特許出願WO2011/051704号の実施例のいずれか1つと組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、PI3K−βの阻害剤、例えば、国際特許出願WO2011/051704号の実施例のいずれか1つとを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の他の観点において、PI3K−βおよびPI3K−δの阻害剤、例えば、8−((1R)−1−(3,5−ジフルオロフェニルアミノ)エチル)−N,N−ジメチル−2−モルホリノ−4−オキソ−4H−クロメン−6−カルボキサミド(国際特許出願WO2011/051704号の実施例3.06b、AZD8186としても知られる)または薬学的に許容しうるその塩:
と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、PI3K−βおよびPI3K−δの阻害剤、例えば、8−((1R)−1−(3,5−ジフルオロフェニルアミノ)エチル)−N,N−ジメチル−2−モルホリノ−4−オキソ−4H−クロメン−6−カルボキサミド(国際特許出願WO2011/051704号の実施例3.06b、AZD8186としても知られる)または薬学的に許容しうるその塩:
とを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の他の観点において、AKTキナーゼの阻害剤、例えば、(S)−4−アミノ−N−(1−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−1−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)ピペリジン−4−カルボキサミド(AZD5363)または薬学的に許容しうるその塩(例えば国際公開WO2009/047563号参照)と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
式(I)の化合物とAKT阻害剤の組み合わせは、PIK3CA遺伝子の変異がより高率で出現している腫瘍、例えば、エストロゲン受容体陽性の乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌、扁平上皮NSCLC、胃癌、膀胱癌、および胆道癌の処置に、とりわけ有用であることができる。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、AKTキナーゼの阻害剤、例えば、(S)−4−アミノ−N−(1−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−1−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)ピペリジン−4−カルボキサミド(AZD5363)または薬学的に許容しうるその塩(例えば国際公開WO2009/047563号参照)とを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の他の観点において、オラパリブ(4−[3−(4−シクロプロパンカルボニル−ピペラジン−1−カルボニル)−4−フルオロ−ベンジル]−2H−フタラジン−1−オン)または薬学的に許容しうるその塩と組み合わせた、式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を提供する。
式(I)の化合物とオラパリブの組み合わせは、BRCA野生型または欠損のいずれかのトリプルネガティブ乳癌と、エストロゲン受容体陽性(ER+ve)乳癌の両方、とりわけ、PIK3CA遺伝子に変異を有するものに、とりわけ有用であることができる。
本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した組み合わせであって、先に定義した式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩と、オラパリブ(4−[3−(4−シクロプロパンカルボニル−ピペラジン−1−カルボニル)−4−フルオロ−ベンジル]−2H−フタラジン−1−オン)または薬学的に許容しうるその塩とを含む、前記組み合わせを提供する。
本発明の特定の組み合わせは、本明細書中の実施例の化合物(または薬学的に許容しうるその塩)のいずれか1つと、上記のようなmTOR阻害剤、PI3Kβ阻害剤、AKTキナーゼの阻害剤またはオラパリブとを含む。本発明の他の特定の組み合わせは、実施例3(または薬学的に許容しうるその塩)と、上記のようなmTOR阻害剤、PI3Kβ阻害剤、AKTキナーゼの阻害剤またはオラパリブとを含む。本発明の他の特定の組み合わせは、実施例3(または薬学的に許容しうるその塩)と、上記のようなPI3Kβ阻害剤、AKTキナーゼの阻害剤またはオラパリブ(または、これら3つのうちいずれか1つの薬学的に許容しうる塩)とを含む。本発明のさらに他の特定の組み合わせの例は、実施例3(または薬学的に許容しうるその塩)と、AZD8186、AZD5363およびオラパリブ(または、これら3つのうちいずれか1つの薬学的に許容しうる塩)とを含む。本発明の組み合わせの他の例は、実施例3とAZD2014を含む。
上記組み合わせのすべてにおいて、該組み合わせは、当業者なら理解するように、上記(i)〜(xi)からの他の処置などの標準治療の処置と一緒に投与することもできることは、理解されるであろう。例えば、エストロゲン受容体陽性乳癌の処置に上記組み合わせのいずれかを用いようとする場合、標準治療のホルモン療法(上記(ii)に挙げた作用物質など)を、本発明の組み合わせと併せて用いることができる。他の観点において、標準治療は、上記(i)から適切に選択することができる。
したがって、本発明の他の観点において、癌の処置に用いるのに適した三重の組み合わせ
a)式(I)の化合物(実施例3など)または薬学的に許容しうるその塩;
b)mTOR阻害剤、PI3Kβ阻害剤、AKTキナーゼの阻害剤またはオラパリブまたは薬学的に許容しうるそれらの塩;
c)処置しようとする癌に関する標準治療の療法
を提供する。
標準治療の療法は、当業者なら理解するように、その通常の投与計画に従って適切に投与することができる。
本発明の他の観点に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、医薬組成物を提供する。
本発明の他の観点に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた実施例3または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、医薬組成物を提供する。
本発明の他の観点に従って、AZD5363、AZD8186またはオラパリブ(または、これら3つのうちいずれか1つの薬学的に許容しうる塩)と組み合わせた実施例3または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、医薬組成物を提供する。
本発明の他の観点に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、癌の処置に用いるための医薬組成物を提供する。
本発明の他の観点に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた実施例3または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、癌の処置に用いるための医薬組成物を提供する。
本発明の他の観点に従って、AZD5363、AZD8186またはオラパリブ(または、これら3つのうちいずれか1つの薬学的に許容しうる塩)と組み合わせた実施例3または薬学的に許容しうるその塩を、薬学的に許容しうる希釈剤またはキャリヤーと共同して含む、癌の処置に用いるための医薬組成物を提供する。
本発明の他の特徴に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩の、ヒトなどの温血動物における癌に用いるための医薬品の製造における使用を提供する。
本発明の他の特徴に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた実施例3または薬学的に許容しうるその塩の、ヒトなどの温血動物における癌に用いるための医薬品の製造における使用を提供する。
本発明の他の特徴に従って、AZD5363、AZD8186またはオラパリブ(または、これら3つのうちいずれか1つの薬学的に許容しうる塩)と組み合わせた実施例3または薬学的に許容しうるその塩の、ヒトなどの温血動物における癌に用いるための医薬品の製造における使用を提供する。
したがって、本発明の追加的特徴において、癌の処置を必要とするヒトなどの温血動物における癌の処置方法であって、前記動物に、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
したがって、本発明の追加的特徴において、癌の処置を必要とするヒトなどの温血動物における癌の処置方法であって、前記動物に、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた有効量の実施例3または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
したがって、本発明の追加的特徴において、癌の処置を必要とするヒトなどの温血動物における癌の処置方法であって、前記動物に、AZD5363、AZD8186またはオラパリブ(または、これら3つのうちいずれか1つの薬学的に許容しうる塩)と組み合わせた有効量の実施例3または薬学的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の観点に従って、上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤と組み合わせた式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩を含む、キットを提供する。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤;ならびに
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある上記(i)〜(xi)に挙げたものから選択される抗腫瘍剤;
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段;ならびに、所望により
d)使用説明書。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にあるmTOR阻害剤、例えば国際公開WO2008/023161号に開示されているもの、例えば
;ならびに
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にあるPI3K−βの阻害剤、例えば、国際特許出願WO2011/051704号の実施例のいずれか1つ、または薬学的に許容しうるその塩;ならびに
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にあるPI3K−βの阻害剤、例えば、国際特許出願WO2011/051704号の実施例のいずれか1つ、または薬学的に許容しうるその塩;
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段;ならびに、所望により
d)使用説明書。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、8−((1R)−1−(3,5−ジフルオロフェニルアミノ)エチル)−N,N−ジメチル−2−モルホリノ−4−オキソ−4H−クロメン−6−カルボキサミド(国際特許出願WO2011/051704号の実施例3.06b、AZD8186としても知られる)または薬学的に許容しうるその塩であるPI3K−βおよびPI3K−δの阻害剤;ならびに
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、8−((1R)−1−(3,5−ジフルオロフェニルアミノ)エチル)−N,N−ジメチル−2−モルホリノ−4−オキソ−4H−クロメン−6−カルボキサミド(国際特許出願WO2011/051704号の実施例3.06b、AZD8186としても知られる)または薬学的に許容しうるその塩であるPI3K−βおよびPI3K−δの阻害剤;
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段;ならびに、所望により
d)使用説明書。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、AKTキナーゼの阻害剤、例えば、(S)−4−アミノ−N−(1−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−1−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)ピペリジン−4−カルボキサミドまたは薬学的に許容しうるその塩(AZD5363、例えば国際公開WO2009/047563号参照);
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段;ならびに、所望により
d)使用説明書。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、AKTキナーゼの阻害剤、例えば、(S)−4−アミノ−N−(1−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−1−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)ピペリジン−4−カルボキサミドまたは薬学的に許容しうるその塩(AZD5363、例えば国際公開WO2009/047563号参照);ならびに
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、AKTキナーゼの阻害剤、例えば、(S)−4−アミノ−N−(1−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−1−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)ピペリジン−4−カルボキサミドまたは薬学的に許容しうるその塩(AZD5363、例えば国際公開WO2009/047563号参照);
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段;ならびに、所望により
d)使用説明書。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、オラパリブ(4−[3−(4−シクロプロパンカルボニル−ピペラジン−1−カルボニル)−4−フルオロ−ベンジル]−2H−フタラジン−1−オン)または薬学的に許容しうるその塩;ならびに
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段。
本発明の他の観点に従って、以下を含むキットを提供する:
a)第1の単位剤形にある式(I)の化合物または薬学的に許容しうるその塩;
b)第2の単位剤形にある、オラパリブ(4−[3−(4−シクロプロパンカルボニル−ピペラジン−1−カルボニル)−4−フルオロ−ベンジル]−2H−フタラジン−1−オン)または薬学的に許容しうるその塩;
c) 前記第1および第2の剤形を含有するための容器手段;ならびに、所望により
d)使用説明書。
上記組み合わせ、使用、処置方法およびキットのすべてにおいて、AZD5363、AZD8186およびオラパリブは、遊離塩基の形態または薬学的に許容しうる塩の形態にあることができる。したがって、一態様においてAZD5363は遊離塩基の形態にあり;別の態様においてAZD5363は薬学的に許容しうる塩の形態にある。他の態様においてAZD8186は遊離塩基の形態にあり;別の態様においてAZD8186は薬学的に許容しうる塩の形態にある。他の態様においてオラパリブは遊離塩基の形態にあり;別の態様においてオラパリブは薬学的に許容しうる塩の形態にある。
式(I)の化合物は主に温血動物(ヒトを含む)において用いるための治療薬として有用であるが、それらはまた、PI3キナーゼ−αおよび−δの作用を阻害することが必要な場合はつねに有用である。したがって、それらは、新規生物学的試験の開発および新規薬理学的作用物質の探索に用いるための薬理学的標準物質として有用である。
本明細書中、“組み合わせ”という用語を用いる場合、これは同時、個別または逐次投与をさすことを理解すべきである。本発明の一観点において、“組み合わせ”は同時投与をさす。本発明の他の観点において、“組み合わせ”は個別投与をさす。本発明の別の観点において、“組み合わせ”は逐次投与をさす。投与が逐次投与または個別投与である場合、第2の成分の投与における遅延は、有益な効果が失われないようなものであるべきである。
一態様において、逐次処置は、組み合わせの各成分を11日の期間以内に投与することを包含する。他の態様において、この期間は10日である。他の態様において、この期間は9日である。他の態様において、この期間は8日である。他の態様において、この期間は7日である。他の態様において、この期間は6日以内である。他の態様において、この期間は5日以内である。他の態様において、この期間は4日以内である。他の態様において、この期間は3日以内である。他の態様において、この期間は2日以内である。他の態様において、この期間は24時間以内である。他の態様において、この期間は12時間以内である。
本明細書では、逐次投与および同時投与の両方を、BT474モデルにおける実施例3およびAZD5363の組み合わせ実験で実証する。この実施例において、逐次投与は、AZD5363を2日間、続いて実施例3を2日間投与した後、どちらの作用物質も3日間投与せず、その後、該パターンを繰り返す(“投与サイクル”)ことにより例示する。同時投与は、AZD5363および実施例3の両方を2日間投与した後、どちらの作用物質も5日間投与しない投与計画で例示する。これら2つの実施例において、逐次投与は、腫瘍退縮をもたらすのにより有効であると思われ、計画の最適化の潜在的重要性を例示している。他の考えうる同時投与計画としては、以下が挙げられる:
1)AZD5363と実施例3を両方とも2日間投与した後、どちらの作用物質も3日間投与しない投与サイクル;
2)AZD5363と実施例3を両方とも3日間投与した後、どちらの作用物質も4日間投与しない投与サイクル;
3)AZD5363と実施例3を両方とも4日間投与した後、どちらの作用物質も3日間投与しない投与サイクル;
4)AZD5363と実施例3を両方とも5日間投与した後、どちらの作用物質も2日間投与しない投与サイクル;
5)AZD5363と実施例3を1日おきに投与する投与サイクル;
6)AZD5363と実施例3を3日ごとに投与する投与サイクル;
7)AZD5363と実施例3を、投与間隔が3日および4日の週間スケジュール(例えば、月曜日/木曜日)で投与する投与サイクル;
8)AZD5363と実施例3を、投与間隔が2日および3日の週間スケジュール(例えば、月曜日/水曜日/金曜日)で投与する投与サイクル。
式(I)の化合物、とりわけ実施例3と、mTOR阻害剤、例えばAZD2014またはPI3K−β阻害剤(β/δ阻害剤AZD8186など)の組み合わせは、実施例3とAZD5363の組み合わせに関し上記したものと同様の計画で、適切に投与することができる。
式(I)の化合物とオラパリブの組み合わせは、オラパリブは毎日投与することができ、式(I)の化合物は間欠投与スケジュール(例えば、2日間投与した後、3〜5日間投与しないなど)に従って投与する。
これらの各例示的投与計画は、本発明の他の観点を構成する。これらの各例示的投与計画は、上記(i)〜(xi)に挙げた他の抗腫瘍剤との組み合わせに施用することもできる。
所定の投与サイクル内に、組み合わせの特定の一成分を他に先立ち投与する−すなわち、逐次投与が有利である可能性がある。
したがって、一態様において、逐次投与は、投与サイクル内に、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)の後、上記(i)〜(xi)に挙げた他の抗腫瘍剤、とりわけ、AZD5363、AZD8186およびオラパリブから選択される抗腫瘍剤を投与する、逐次投与を含む。
他の態様において、逐次投与は、投与サイクル内に、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤、とりわけ、AZD5363、AZD8186およびオラパリブから選択される抗腫瘍剤の後、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を投与する、逐次投与を含む。
一態様では、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤および式(I)の化合物を、最大2日間あけて投与する。他の態様では、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤および式(I)の化合物を、最大1日あけて投与する。他の態様では、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤および式(I)の化合物を、最大18時間あけて投与する。他の態様では、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤および式(I)の化合物を、最大12時間あけて投与する。他の態様では、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤および式(I)の化合物を、最大6時間あけて投与する。他の態様では、上記(i)〜(xi)に挙げた抗腫瘍剤および式(I)の化合物を、最大3時間あけて投与する。
他の態様において、投与サイクルは長さが5〜10日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが6〜10日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが7〜9日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが6〜8日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが10日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが9日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが8日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが7日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが6日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは長さが5日間であることができる。
他の態様において、投与サイクルは、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を連続2〜4日間投与し、長さが6〜9日間の投与サイクル内の残りの日は投与しないことを包含することができる。
他の態様において、投与サイクルは、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を連続3〜4日間投与し、長さが6〜9日間(例えば長さ7日間)の投与サイクル内の残りの日は投与しないことを包含することができる。
他の態様において、投与サイクルは、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を連続3〜5日間投与し、長さが7〜10日間の投与サイクル内の残りの日は投与しないことを包含することができる。
他の態様において、投与サイクルは、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を連続5日間投与し、長さが6〜9日間の投与サイクル内の残りの日は投与しないことを包含することができる。
他の態様において、投与サイクルは、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を連続4日間投与し、長さが6〜9日間(例えば長さ7日間)の投与サイクル内の残りの日は投与しないことを包含することができる。
他の態様において、投与サイクルは、式(I)の化合物(とりわけ実施例3)を連続3日間投与し、長さが6〜9日間の投与サイクル内の残りの日は投与しないことを包含することができる。
投与サイクルは、活性な組み合わせの成分を投与しない数日間により分離されていてもよい。
上記併用療法は、典型的には通常の処方投薬スケジュールに従って実行される標準治療療法に加えることができる。
個別化ヘルスケア
本発明の他の観点は、ホスホイノシチド−3−キナーゼ触媒アルファポリペプチド(PIK3CA)をコードする遺伝子の状態と、式(I)の化合物での処置に対する感受性との関連の確認に基づく。したがって、これは、式(I)の化合物で処置するための患者、とりわけ癌患者を選択するため、ならびに/または、該処置に治療的に応答する可能性が高くない患者の処置を回避し、これにより、不必要な処置、およびそのような非効果的な処置に付随しうるあらゆる副作用を回避するための、条件、方法およびツールを提供する。
本発明は、患者の選択ツールおよび選択方法(個別化医療を含む)に関する。選択は、処置しようとする腫瘍細胞が野生型PIK3CA遺伝子を持つか変異体PIK3CA遺伝子を持つか基づく。したがって、PIK3CA遺伝子状態は、PI3K−αおよび−δ阻害剤での処置に対する感受性のバイオマーカーとして用いることができる。
腫瘍がPI3K−αおよび−β阻害剤、例えば式(I)の化合物での処置に応答する患者をエンリッチ化(enrich)または選択するバイオマーカーが、明らかに必要とされている。作用物質に応答する可能性がもっとも高い患者を識別する患者選択バイオマーカーは、癌の処置に理想的である。これは、応答しない腫瘍を有する患者における、そのような作用物質の潜在的副作用に対する不必要な処置が減少するためである。
バイオマーカーは、“正常な生物学的プロセス、発病プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定および評価される特性”として説明することができる。バイオマーカーは、特定の状態または疾患に関連する識別および測定可能な任意の指標であり、バイオマーカーの存在またはレベルと、状態または疾患のいくつかの観点(状態または疾患の存在、レベルもしくは変化レベル、タイプ、段階、状態または疾患に対する感受性、あるいは状態または疾患を処置するのに用いられる薬剤に対する応答性を含む)との間には相互関係がある。該相互関係は、定性的、定量的、または定性的および定量的の両方であることができる。典型的には、バイオマーカーは、化合物、化合物フラグメント、または化合物群である。そのような化合物は、生体中に見いだされるか生体により産生される任意の化合物、例えば、タンパク質(およびペプチド)、核酸および他の化合物であることができる。
バイオマーカーは予測力を有することができ、したがって、特定の状態または疾患の存在、レベル、タイプまたは段階(特定の微生物または毒素の存在またはレベルを含む)、特定の状態または疾患に対する感受性(遺伝的感受性を含む)、あるいは特定の処置(薬物処置を含む)に対する応答を、予測または検出するのに用いることができる。バイオマーカーは、研究開発プログラムの効率を改善することにより、薬物の発見および開発において今後ますます重要な役割を果たすようになると考えられる。バイオマーカーは、診断薬、疾患進行のモニター、処置のモニター、および臨床転帰の予測因子として用いることができる。例えば、さまざまなバイオマーカー研究プロジェクトで、特定の癌ならびに特定の心臓血管疾患および免疫学的疾患のマーカーの識別が試みられている。新規の有効なバイオマーカーの開発により、ヘルスケアおよび薬剤開発のコストの著しい低下、ならびに多種多様な疾患および状態の処置の著しい改善の両方がもたらされると考えられる。
臨床試験を最適に設計し、これらの試験からもっとも多くの情報を得るために、バイオマーカーが必要になる可能性がある。マーカーは、代用組織および腫瘍組織において測定可能であることができる。理想的には、これらのマーカーは効力にも相関し、したがって、最終的に患者の選択に用いることができる。
したがって、本発明のこの観点の根底にある技術的問題は、式(I)の化合物で処置するための患者の階層化手段の識別である。該技術的問題は、本明細書中の特許請求の範囲および/または説明で特徴付けられる態様を提供することにより解決される。
本明細書中の実施例で詳述するように、PIK3CAに変異を持つ細胞は、一般に式(I)の化合物による成長阻害の影響をより受けやすいことが見いだされた。
本発明は、式(I)の化合物に対する細胞の感受性を決定する方法を提供する。該方法は、前記細胞中のPIK3CA遺伝子の状態を決定することを含む。細胞は、該細胞が変異PIK3CA遺伝子を持つ場合、式Iの化合物に対し感受性を示す可能性が高いと識別される。したがって、変異PIK3CA遺伝子を有する患者は、式(I)の化合物での処置の影響をとりわけ受けやすいと予測される。細胞は、細胞成長アッセイにおいて細胞数の増加が式(I)の化合物により阻害される場合(細胞増殖の阻害により、および/または細胞死の増加により)、式(I)の化合物に対し感受性を示すと定義される。本発明の方法は、成長阻害により式(I)の化合物に応答する可能性が高い細胞を予測するのに有用である。
本発明はさらに、式(I)の化合物を投与するか否かの決定を含め、式(I)の化合物に対する患者の応答性を決定するのに用いることができる方法に、部分的に基づく。具体的には、本発明の方法は、PIK3CAの遺伝子状態の決定を包含する。変異PIK3CA遺伝子の存在は、式(I)の化合物と接触したときに腫瘍細胞が成長阻害により応答する可能性が高いことを示す。したがって、PIK3CA遺伝子状態は、式(I)の化合物で処置するための患者の選択に用いることができる。
さらに、式(I)の化合物に対し感受性を示す可能性がある患者を識別するためのin vitro法を開示する。PIK3CA遺伝子の変異状態を検出することができるオリゴ−またはポリヌクレオチドプライマーまたはプローブの使用も開示する。PIK3CA変異の検出用キット、例えば、限定されるものではないが、QiagenおよびRoche Molecular Systemsなどの診断会社により市販されているPIK3CA変異検出キットの使用も開示する。他の態様において、本発明は、癌を患っている患者が式(I)の化合物での薬学的処置に対する応答者である可能性があるか否かを決定するためのin vitro法に関連する。前記方法は、以下の段階を含む:(i)前記患者から予め収集した腫瘍の代表的試料を得る段階;および(ii)PIK3CA遺伝子が前記試料中に変異を含有するか否かを決定する段階。PIK3CA遺伝子における変異は、式(I)の化合物での処置に応答する可能性の増大を示す。単一遺伝子バイオマーカー試験として、PIK3CA変異を含有する腫瘍の識別は、式(I)の化合物への応答をエンリッチ化する。PIK3CA変異を含有する個々の腫瘍は、式(I)の化合物に応答する可能性がもっとも高い。
“腫瘍の代表的”試料は、単離した実際の腫瘍試料であることができ、または、さらに処理してある試料、例えば、腫瘍試料からのPCR増幅核酸の試料であることができる。
定義:
この個別化ヘルスケアの節において:
“アレル”は、特定のヌクレオチドまたはアミノ酸配列により他の形態と区別される、遺伝子座の特定の形態をさす。
“増幅反応”は、非標的核酸に対し標的核酸の特異的増幅をもたらす核酸反応である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、周知の増幅反応である。
“癌”は、本明細書中では、新生物表現型への細胞形質転換により生じる新生物成長をさす。
“遺伝子”は、プロモーター、エクソン、イントロン、および5’または3’隣接領域内(遺伝子の転写部分内ではなく)に位置することができ発現を制御する他の配列因子を含む、RNA産物の調節された生合成のためのすべての情報を含有するDNA断片である。
“遺伝子状態”は、遺伝子が野生型であるか否か(すなわち変異体)をさす。
“標識”は、アッセイ試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示す検出可能なシグナルを生成することができる組成物をさす。適した標識としては、放射性同位体、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光性分子、化学発光部分、磁性粒子、生物発光部分などが挙げられる。したがって、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出することができる任意の組成物である。
“非同義バリエーション(variation)”は、別個の(変更された)ポリペプチド配列の生成をもたらす、遺伝子のコード配列における、またはこれと部分的に一致するバリエーション(バリアンス(variance))をさす。これらのバリエーションは、タンパク質機能に影響を及ぼす可能性があってもなくてもよく、ミスセンスバリアント(アミノ酸1つが他のものにより置換される)、ナンセンスバリアント(未成熟終止コドンの発生により短縮型(truncated)ポリペプチドがもたらされる)および挿入/欠損バリアントを包含する。
“同義バリエーション”は、コードされたポリペプチドの配列に影響を及ぼさない、遺伝子のコード配列におけるバリエーション(バリアンス)をさす。これらのバリエーションは、間接的に(例えば、遺伝子発現の変更により)タンパク質機能に影響を及ぼす可能性があるが、不利な証拠がない場合、一般に無害であると推定される。
“核酸”は、自然界で見いだされる天然核酸、および/または修飾された主鎖もしくは塩基を有する当分野で公知の人工の修飾核酸を含む、一本鎖または二本鎖のDNAおよびRNA分子をさす。
“プライマー”は、複製しようとする核酸鎖に相補的なプライマー伸長生成物の合成に関し開始点として働くことができる一本鎖DNAオリゴヌクレオチド配列をさす。プライマーの長さおよび配列は、伸長生成物の合成を始動させることができるようなものでなければならない。典型的なプライマーは、標的配列に実質的に相補的で長さが少なくとも約7ヌクレオチドの配列を含有するが、いくぶん長いプライマーが好ましい。通常、プライマーは約15〜26ヌクレオチドを含有するが、これより長いまたは短いプライマーを採用することもできる。
“多型部位”は、ある集団において少なくとも2つの代替的配列が見いだされる、座位内の位置である。
“多型”は、個体の多型部位で観察される配列バリエーションをさす。多型は、ヌクレオチドの置換、挿入、欠失およびマイクロサテライトを包含し、遺伝子発現またはタンパク質機能に、必ずではないが、検出可能な差をもたらす可能性がある。発現またはタンパク質機能に対する作用の証拠がない場合、非同義バリアントを含む一般的な多型は、一般に、野生型の遺伝子配列の定義に包含されると考えられる。ヒト多型のカタログおよび関連注釈、例えば、バリデーション、観測頻度および疾病関連性は、NCBI(dbSNP:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)により維持されている。遺伝子配列の文脈で用いられる場合の“多型”という用語をは、固体状態の形の化合物の文脈で用いられる場合の“多形”、すなわち化合物の結晶質または非晶質の性質と混同すべきでないことに、留意されたい。当業者なら、文脈により意図する意味を理解するであろう。
“プローブ”は、検出しようとするアレルの標的配列に対し正確に相補的な配列を有する、一本鎖配列に特異的なオリゴヌクレオチドをさす。
“応答”は、患者を2つの主要群、すなわち、部分的応答または安定な疾患を示す群と、進行性疾患の徴候を示す群とに分類することを包含する、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)に従って決定される測定値により定義される。
“ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20pg/mIの変性剪断サケ***DNAを含む溶液中、42℃で一晩インキュベートした後、約65℃において0.1×SSC中でフィルターを洗浄することをさす。
“生存”は、患者の全生存および無進行生存を包含する。
“全生存”(OS)は、投薬開始から何らかの原因による死亡までの時間と定義される。“無進行生存”(PFS)は、投薬開始から、進行性疾患の最初の出現または何らかの原因による死亡までの時間と定義される。
本発明の一観点に従って、式(I)の化合物で処置するための患者の選択方法であって、該方法が、患者からの腫瘍細胞含有試料を提供し;患者の腫瘍細胞含有試料中のPIK3CA遺伝子が野生型であるか変異体であるかを決定し;そして、それに基づき式(I)の化合物で処置するための患者を選択することを含む、前記選択方法を提供する。
該方法は、実際の患者の試料の単離段階を包含することができ、または排除することができる。したがって、本発明の一観点に従って、式(I)の化合物で処置するための患者の選択方法であって、該方法が、患者から予め単離した腫瘍細胞含有試料中のPIK3CA遺伝子が野生型であるか変異体であるかを決定し;そして、それに基づき式(I)の化合物で処置するための患者を選択することを含む、前記選択方法を提供する。
一態様において、腫瘍細胞のDNAが変異体PIK3CA遺伝子を有する場合、患者を、式(I)の化合物での処置に選択する。他の態様において、腫瘍細胞のDNAが野生型PIK3CA遺伝子を持つ患者は、式(I)の化合物での処置に選択しない。
本発明の他の観点に従って、式(I)の化合物に対する患者の応答性を予測するための方法であって、該方法が、患者の腫瘍細胞中のPIK3CA遺伝子が野生型であるか変異体であるかを決定し、それに基づき、式(I)の化合物での処置に対する患者の応答性を予測することを含む、前記方法を提供する。
本発明の他の観点に従って、癌に罹患しているヒト患者において式Iの化合物での処置の有効性の可能性を決定するための方法であって、患者の腫瘍細胞中のPIK3CA遺伝子(1以上)が野生型であるか変異体であるかを決定し、それに基づき、式(I)の化合物での処置に対する患者の応答性を予測することを含む、前記方法を提供する。
本発明の目的に関し、野生型の遺伝子状態は、遺伝子が正常または適切に発現し、コードされたタンパク質の機能が正常であることを示すものとする。対照的に、変異体状態は、遺伝子発現が異常もしくは不適切であるか、または、癌における変異体PIK3CAの公知の役割(上記のような)と一致する、変更された機能を有するタンパク質が発現していることを示すものとする。いくつもの遺伝子的または非遺伝子的な変更、例えば、限定されるものではないが、変異、増幅、欠失、ゲノム再編成、またはメチル化プロフィールにおける変化が、変異体状態をもたらす可能性がある。しかしながら、そのような変更が、それでもなお正常なタンパク質の適切な発現または機能的に同等の変異体をもたらす場合、その遺伝子状態は野生型とみなす。機能的変異体遺伝子状態を典型的にはもたらさない変異体の例としては、同義コード変異体および一般的多型(同義または非同義)が挙げられる。以下で検討するように、遺伝子状態は、機能性アッセイにより評価することができ、または、検出された参照配列からの逸脱の性質から推察することができる。
特定の態様において、PIK3CA遺伝子の野生型または変異体の状態は、遺伝子中に非同義核酸バリエーションが存在するか存在しないかにより決定される。観察される非同義バリエーションは、注釈付きの機能効果のない公知の一般的な多型に対応する場合、変異体の遺伝子状態に寄与しない。
変異状態を示すPIK3CA遺伝子における他のバリエーションは、pre−mRNAからmRNAへの処理中のイントロン/エクソン接合部の認識を低下させる、スプライス部位のバリエーションを包含する。これは、エクソンのスキッピング、またはスプライシングされたmRNAにおける正常なイントロン配列の包含(イントロン保持または隠蔽された(cryptic)スプライス接合部の利用)をもたらす可能性がある。同様に、これは、正常なタンパク質と比べ挿入および/または欠失を有する異常なタンパク質の生成をもたらす可能性がある。したがって、他の態様において、遺伝子は、イントロン/エクソン接合部におけるスプライス部位認識配列を変更するバリアントが存在する場合、変異体状態を有する。
これに加えて、異常または脱調節されたPIK3CAまたはPI3K−αを有する腫瘍における耐性の潜在的マーカーであるKrasなどの追加的遺伝子の変異状態または活性化状態の測定は、個別化医療アプローチの予測性の向上に役立つ可能性がある。
われわれがAstraZenecaで行った乳癌に関する調査(COSMIC データベース(Welcome Trust Sanger Institute、2011年9月)に基づく)では、PIK3CA遺伝子における>55の異なる変異が、>5Kのヒト腫瘍を対象とするデータセットから識別された。変異の大部分は<1%の頻度で発生し、3つは1〜3%の頻度で発生したが、4つの変異はPIK3CAの全変異の約88%を占めた。これらは、C末端キナーゼドメイン、すなわちH1047R(55%)およびH1047L(5%)、ならびにヘリカルドメイン残留物、すなわちE545K(18%)およびE542K(11%)における、キナーゼドメインのミスセンス変異であった。他の一般的な乳癌変異のより長いリストは、網羅的なわけではないが、R38H、R38C、R88Q、N345K、C420R、E453Q、P539R、E542K、E545K、E545A、Q546K、Q546P、M1043I、M1043V、H1047R、H1047L、H1047Yを包含する。したがって、もっとも一般的な変異の検出に焦点を合わせ、これにより大部分のPIK3CA変異の識別を可能にする診断アッセイを、構築することができる。例えば、Roche Molecular SystemsからのCobas(TM)PIK3CA変異試験は、ホルマリンで固定しパラフィンで包埋した腫瘍試料から単離したDNA中のPIK3CA遺伝子のエクソン1、4、7、9および20における17の変異(E542K、E545A、E545G、E545K、E545D、E546K、Q546R、Q546E、Q546L、N345K、C420R、R88Q、H1047L、H1047R、H1047Y、G1049RおよびM1043I)を検出するように設計されている。このキットは、エストロゲン受容体陽性乳癌における変異の最高約95%を捕捉することができる。変異の分布は他の腫瘍タイプでは異なり、それに応じて診断上の戦略を適応させることができる。例えば、子宮内膜癌では、乳癌と比べ、より均一な変異の分布がPIK3CA遺伝子コード配列の全体に広がり、より多数の変異がタンパク質のN末端領域にみられる(Douglas A.Levine,M.Dによる情報、TCGA 2nd Annual Symposium,2012年12月28日)。
PIK3CAの場合、参照配列は、遺伝子(GenBankアクセッション番号:NG_012113)、mRNA(GenBankアクセッション番号:NM_006218)、およびタンパク質(GenBankアクセッション番号:NP_006209またはSwiss−Protアクセッション:P42336)で使用可能である。参照遺伝子(ゲノム領域)配列は、上流配列の5000塩基および下流配列の2000塩基を包含する。PIK3CA内での変異は周知であり(COSMICデータベース−Welcome Trust Sanger Institute)、当業者なら、PIK3CAの遺伝子状態、すなわち、特定のPIK3CA遺伝子が野生型であるか変異体であるかを、野生型のDNAまたはタンパク質配列との比較に基づき決定することができる。
PIK3CAについて開示されている遺伝子およびmRNA配列ならびにPI3キナーゼアルファタンパク質配列のp110α触媒サブユニットは、それぞれ代表的な配列であることは明らかであろう。正常な個体では、各遺伝子の2つの複製、すなわち母方および父方の複製が存在し、これらが配列の差異をいくらか有すると思われ、さらに個体群内では、遺伝子配列のアレルバリアントが非常に多く存在する。野生型とみなされる他の配列としては、核酸配列に1以上の同義変化をもつもの(この変化は、コードされたタンパク質配列を変更しない)、タンパク質配列を変更するがタンパク質機能には影響を及ぼさない一般的な非同義多型(例えば、生殖細胞株多型)、およびイントロン非スプライス部位の配列変化が挙げられる。
本発明の他の観点に従って、癌に罹患しているヒト患者において式(I)の化合物での処置の有効性の可能性を決定するための方法であって、前記患者のPIK3CA遺伝子中に野生型と比べて少なくとも1つの非同義核酸バリアンスが存在するか存在しないかを検出することを含む方法を提供する。これに関し、PIK3CA遺伝子における少なくとも1つの体細胞非同義核酸バリアンスの存在は、式(I)の化合物での処置が有効である可能性があることを示す。
本発明の他の観点に従って、式(I)の化合物での処置に対する個体の感受性を評価するための方法を提供する。これに関し、該方法は、
(i)個体からの腫瘍細胞DNA中のPIK3CA遺伝子の非同義変異状態を決定し;そして、
(ii)腫瘍細胞中のPIK3CA遺伝子の非同義変異状態を参照することにより、式(I)の化合物での処置に対する個体の推定感受性を決定する、
ことを含む。
PIK3CAの遺伝子状態を決定するために当業者が利用することができる技術は数多くある。遺伝子状態は、核酸配列の決定により決定することができる。これは、全長遺伝子の直接的配列決定または遺伝子内の特定部位、例えば、一般に変異部位の分析により行うことができる。
PIK3CA遺伝子が野生型または変異体であるか否かを決定するための他の手段は、転写遺伝子の機能の評価である。このPIK3CA遺伝子の機能的変異は、脂質キナーゼ活性が向上したタンパク質をもたらして、細胞における経路の下流でのシグナル伝達の増大、例えば、限定されるものではないが、AktおよびS6キナーゼの活性化をもたらす。細胞中に発現した場合にPIK3CAバリアントの機能状態を評価するためのアッセイ
としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:
(i)PIK3CA遺伝子、ホスファチジルイノシトール−三リン酸(PI(3,4,5)P3)のキナーゼ活性の生成物の生成の増大;
(ii)リン酸化AktまたはS6キナーゼのレベルの増大;
(iii)PIK3CAのバリアントをトランスフェクトしたNIH−3T3細胞のフォーカスおよびコロニー形性の増大;(Ikenoue T et al.,Cancer Res.,2005 65,4562−4567)。
試料
遺伝子状態を試験する患者の試料は、個体から得た、または得ることができる、任意の腫瘍組織または腫瘍細胞含有試料であることができる。試験試料は、個体から得た血液、口腔スワブ、生検材料、または他の体液もしくは体組織の試料であると好都合である。特定の実施例は以下を包含する:循環腫瘍細胞、血漿もしくは血清中の循環DNA、卵巣癌患者の腹水から単離した細胞、肺内に腫瘍を有する患者の肺喀痰、乳癌患者からの細針吸引物、尿、末梢血、細胞剥離物、毛嚢、皮膚穿刺物または頬試料。
試験試料は、同等に、試験試料中の配列に対応する核酸配列であることができる、すなわち、核酸試料中の領域のすべてまたは一部を、最初に任意の従来技術、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅してから分析することができることは、理解されるであろう。核酸は、ゲノムDNAまたは断片化もしくは全細胞RNAであることができる。特定の態様において、RNAは全細胞RNAであり、ランダムプライマーまたはポリAプライマーを用いて第1鎖cDNAを標識するための鋳型として直接用いられる。試験試料中の核酸またはタンパク質は、標準的手順に従って試料から抽出することができる(Green & Sambrook編集,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(2012,第4版,1〜3巻,ISBN 9781936113422)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.参照)。
本発明の診断方法は、個体または患者から予め採取しておいた試料を用いて開始することができる。そのような試料は、凍結させるか、ホルマリン−パラフィンもしくは他の媒体に固定し包埋することにより、保存することができる。あるいは、新しい腫瘍細胞含有試料を入手して用いてもよい。
本発明の方法は、任意の腫瘍からの細胞を用いて施用することができる。式(I)の化合物での処置に適した腫瘍については、本明細書中で先に記載している。
PIK3CAの変異は臨床腫瘍において広く見いだされるが、各遺伝子の変異出現率は、腫瘍組織のタイプにより著しく変動する。例えば、PIK3CA変異は乳癌では比較的一般的であるが、腎腫瘍では比較的まれである。
当業者には明らかになるように、この頻度データは、TCGA(The Cancer Genoma Atlas)およびICGC(International Cancer Genome Consortium)などのヒト癌ゲノムプロファイリングコンソーシアムから新規およびより包括的なデータが出ると、継続的に改善および更新される。したがって、PIK3CA依存性の追加的な腫瘍タイプを識別し、本明細書中に記載する化合物での処置に望ましいとすることができる。
核酸の検出方法
本発明の状況では、変異体PIK3CA核酸の検出を採用して薬物処置に対する応答を予測することができる。これらの遺伝子の変異はDNAレベルで起こるので、本発明の方法は、ゲノムDNAにおける変異またはバリアンス、ならびに転写産物およびタンパク質自体の検出に基づくことができる。検出した変異が実際に被検体に発現していることを保証するために、転写産物および/またはポリペプチドの分析によりゲノムDNAの変異を確認することが望ましい可能性がある。
遺伝子の1以上の位置にバリアントヌクレオチドが存在するか存在しないかを検出するために用いることができる分析手順は非常に多くあることが、当業者には明らかであろう。一般に、アレルバリエーションの検出は、変異判別技術、所望により増幅反応(ポリメラーゼ連鎖反応に基づくものなど)および所望によりシグナル発生システムを必要とする。当分野で利用可能な変異検出技術は数多くあり、これらは、当分野で利用可能なものが多数あるシグナル発生システムと組み合わせて用いることができる。アレルバリエーションを検出するための多くの方法が、Nollau et al.,Clin.Chem.,1997,43,1114−1120;Anderson SM.Expert Rev Mol Diagn.,2011,11,635−642;Meyerson M.et al.,Nat Rev Genet.,2010,11,685−696により;ならびに、標準的教科書、例えば“Laboratory Protocols for Mutation Detection”,U.Landegren編集,Oxford University Press,1996および“PCR”,Newton & Grahamによる第二版,BIOS Scientific Publishers Limited,1997に、概説されている。
上記のように、癌を有する患者のPIK3CA遺伝子に特定のバリアンスまたは複数のバリアンスが存在するか存在しないかの決定は、さまざまな方法で実施することができる。そのような試験は、一般に、生物学的試料、例えば、組織生検材料、尿、便、喀痰、血液、細胞、組織剥離物、胸部吸引物または他の細胞材料から収集したDNAまたはRNAを用いて実施し、さまざまな方法、例えば、限定されるものではないが、PCR、アレル特異性プローブを用いるハイブリダイゼーション、酵素変異検出、ミスマッチの化学開裂、質量分析法、またはミニ配列決定を含むDNA塩基配列決定法により、実施することができる。
適した変異検出技術としては、増幅不応性変異システム(amplification refractory mutation system)(ARMSTM)、増幅不応性変異システム線形延長(ALEXTM)、競合的オリゴヌクレオチドプライミングシステム(COPS)、Taqman、Molecular Beacon、制限断片長多型(RFLP)、ならびに制限部位に基づくPCRおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術が挙げられる。
特定の態様において、バイオマーカー遺伝子内のヌクレオチド(1以上)を決定するために採用される方法は、以下から選択される:アレル特異性増幅(アレル特異性PCR)−例えば、増幅不応性変異システム(ARMS)、配列決定、アレル判別アッセイ、ハイブリダイゼーション、制限断片長多型(RFLP)またはオリゴヌクレオチド連結反応アッセイ(OLA)。
特定の態様において、アレル特異性プローブを用いるハイブリダイゼーションは、以下により行うことができる:(1)例えば多くのDNAチップでの施用のように、溶液中の標識試料と一緒に固相(例えば、ガラス、シリコン、ナイロン膜)に結合しているアレル特異性オリゴヌクレオチド;または(2)結合試料(クローン化DNAまたはPCR増幅DNAであることが多い)および溶液中の標識オリゴヌクレオチド(アレル特異性であるか、ハイブリダイゼーションによる配列決定が可能になるように短い)。診断試験は、固体支持体上にあることが多いバリアンスのパネルを包含することができ、該パネルにより、1より多くのバリアンスを同時に決定することが可能になる。そのようなハイブリダイゼーションプローブは、当分野で周知であり(例えば、Green & Sambrook編集,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(2012年,第4版,Vol.1−3,ISBN 9781936113422)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)、2以上のバリアンス部位に及ぶことができる。
したがって、一態様において、少なくとも1つの変異が存在するか存在しないかの検出は、推定変異部位を含有するPIK3CA核酸を、少なくとも1つの核酸プローブと接触させることを提供する。バリアンス部位を包含し、該バリアンス部位に相補的ヌクレオチド塩基を含有する核酸配列と、プローブは、選択的ハイブリダイゼーション条件下で優先的にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは、当業者に公知の標識を用いて、検出可能な標識で検出することができる。そのような標識としては、限定されるものではないが、放射性標識、蛍光標識、染料標識および酵素標識が挙げられる。
他の態様において、少なくとも1つの変異が存在するか存在しないかの検出は、推定変異部位を含有するPIK3CA核酸を、少なくとも1つの核酸プライマーと接触させることを提供する。バリアンス部位を包含し、該バリアンス部位に相補的ヌクレオチド塩基を含有する核酸配列と、プライマーは、選択的ハイブリダイゼーション条件下で優先的にハイブリダイズする。
特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中心において(これにより、増幅は示差的ハイブリダイゼーションに依存する;例えば、Gibbs,et al.,1989,Nucl.Acids Res.,17,2437−248参照)、または、適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を抑えるか減少させることができる、1つのプライマーの3’最末端(extreme 3'-terminus)において(例えば、Prossner,1993,Tibtech,11 238参照)、相補的ヌクレオチド塩基を対象となる変異に進めることができる。
さらに他の態様において、少なくとも1つの変異が存在するか存在しないかの検出は、少なくとも1つの核酸配列を配列決定し、得られた配列を公知の野生型核酸配列と比較することを含む。
あるいは、少なくとも1つの変異が存在するか存在しないかは、少なくとも1つの核酸配列の質量分光測定を含む。
一態様において、少なくとも1つの核酸バリアンスが存在するか存在しないかの検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の実施を含む。仮定的バリアンスを含有する標的核酸配列を増幅し、増幅核酸のヌクレオチド配列を決定する。増幅核酸のヌクレオチド配列の決定は、少なくとも1つの核酸セグメントの配列決定を含む。あるいは、増幅産物をサイズに従って分離することができる任意の方法、例えば、自動および手動でのゲル電気泳動法などを用いて、増幅産物を分析することができる。
ゲノム核酸における変位は、増幅核酸断片の移動度シフトに基づく技術により有利に検出される。例えば、Chen et al.,Anal Biochem 1996,239,61−9には、競合的移動度シフトアッセイによる単一塩基変異の検出が記載されている。さらに、Marcelino et al.,BioTechniques 1999,26,1134−1148の技術に基づくアッセイは、商業的に利用可能である。
特定の例では、キャピラリーヘテロ二本鎖分析を用いて、ミスマッチの存在の結果として、キャピラリー系における二本鎖核酸の移動度シフトに基づき、変異の存在を検出することができる。
試料からの分析用核酸の生成には、一般に核酸増幅が必要である。多くの増幅方法は、酵素連鎖反応(ポリメラーゼ連鎖反応、リカーゼ連鎖反応、または自立配列複製など)に依存するか、それがクローニングされているベクターのすべてまたは一部の複製に由来する。好ましくは、本発明に従った増幅は、例えばポリメラーゼ連鎖反応により示されるような、指数関数的増幅である。
多くの標的およびシグナル増幅方法が文献に記載されており、例えば、Landegren,U.,et al.,Science,1988 242,229−237およびLewis,R.,Genetic Engineering News 1990,10,54−55には、これらの方法の一般的概説が記載されている。これらの増幅方法は、われわれの発明の方法に用いることができ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、in situ PCR、リガーゼ増幅反応(LAR)、リガーゼハイブリダイゼーション、Qβバクテリオファージレプリカーゼ、転写に基づく増幅システム(TAS)、転写産物配列決定を伴うゲノム増幅(GAWTS)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、およびin situハイブリダイゼーションを包含する。さまざまな増幅技術に用いるのに適したプライマーは、当分野で公知の方法に従って調製することができる。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)PCRは、とりわけ米国特許公報第4683195号および第4683202号に記載されている核酸増幅方法である。PCRは、DNAポリメラーゼが引き起こすプライマー伸長反応の繰り返しサイクルからなる。標的DNAを熱変性し、増幅しようとするDNAの逆鎖の標的配列を挟む2つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズする。これらのオリゴヌクレオチドが、DNAポリメラーゼと一緒に用いるためのプライマーになる。プライマー伸長によりDNAが複製されて、両方の鎖の第2の複製が作られる。熱変性、プライマーのハイブリダイゼーション、および伸長のサイクルを繰り返すことにより、標的DNAを約2〜4時間で100万倍以上に増幅することができる。PCRは、増幅結果を決定するための検出技術と併せて用いなければならない分子生物学的ツールである。PCRの利点は、それが、約4時間で標的DNAの量を100万から10億倍に増幅することにより感度を向上させる点である。PCRは、診断の状況であらゆる公知の核酸を増幅するのに用いることができる(Mok et al.,Gynaecologic Oncology,1994,52:247−252)。
増幅不応性変異システム(ARMSTM)などのアレル特異性増幅技術(Newton et al.,Nucleic Acids Res.,1989,17,2503−2516)も、単一塩基変異の検出に用いることができる。適したPCR増幅条件下において、プライマーの3’末端に位置する単一塩基ミスマッチは、完全にマッチしたアレルの優先的増幅に十分であり(Newton et al.,1989,supra)、近縁種の判別が可能になる。上記プライマーを用いる増幅システムの基礎は、3’残基がミスマッチしているオリゴヌクレオチドが、適切な条件下でのPCRにおいてプライマーとして機能しないということである。この増幅システムにより、アガロースゲル電気泳動後の反応混合物の検査のみによる遺伝子型決定が可能になる。
増幅産物の分析は、増幅産物をサイズに従って分離することができる任意の方法、例えば、自動および手動でのゲル電気泳動法、質量分析法などを用いて、実施することができる。
核酸の単離、増幅および分析の方法は当業者にとって日常的なものであり、プロトコルの例は、例えば、Green & Sambrook編集,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(2012,第4版,Vol.1−3,ISBN 9781936113422),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harobor,N.Y.)に見いだすことができる。PCR増幅に用いられる方法にとりわけ有用なプロトコル源は、M.J.McPherson,S.G.Mailer,P.Beynon,C.HoweによるPCR(Basics:From Background to Bench),Springer Verlag;第1版(2000年10月15日),ISBN:0387916008である。
本発明はまた、PIK3CA遺伝子中の標的核酸を増幅するための縮重プライマーと、増幅プロトコルおよび結果の分析を含む使用説明書とを含む、予測的および診断的なキットを提供する。あるいは、該キットは、増幅産物の増幅および分析を実施するための緩衝液、酵素、および容器も含むことができる。該キットは、スクリーニングの構成要素、またはDNAマイクロアレイなどの他のツールもしくは他の支持体を含む診断キットであることもできる。好ましくは、該キットは、1以上の対照鋳型、例えば、正常な組織試料および/または参照遺伝子にさまざまなバリアンスを示す一連の試料から単離した核酸も提供する。
一態様において、該キットは、2以上のプライマー対を提供する。これに関し、各対は参照(PIK3CA)遺伝子の異なる領域を増幅することができ(各領域は潜在的バリアンスの部位である)、これにより、1つの反応またはいくつかの並列反応での生物学的試料におけるいくつかの遺伝子バリアンスの発現を分析するためのキットがもたらされる。
キット中のプライマーは、増幅産物の検出および核酸バリアンスの必然的な分析を促進するために、標識、例えば蛍光標識されていてもよい。また、該キットにより、1より多くのバリアンスを1つの分析で検出することが可能になる。したがって、組み合わせキットは、参照遺伝子の異なるセグメントを増幅することができるプライマーを含む。プライマーは、バリアンスが差別化されるように、例えば異なる蛍光標識を用いて、異なった形で標識することができる。
PIK3CA変異の検出用キット、例えば、限定されるものではないが、QiagenおよびRoche Molecular Systemsなどの診断会社により市販されているPIK3CA変異検出キットの使用も開示する。
他の観点において、本発明は、以下を含む、癌を患っている患者の処置方法を提供する:患者の腫瘍細胞中のPIK3CA遺伝子が変異体状態であるか野生型状態であるかを決定し、PIK3CA遺伝子が変異体である場合、患者に有効量の式(I)の化合物を投与する。
本明細書中で用いる場合、“有効な”および“有効性”という用語は、薬理学的有効性と生理学的安全性の両方を包含する。薬理学的有効性は、処置が、患者に望ましい生物学的効果をもたらす能力をさす。生理学的安全性は、処置の投与に起因する毒性のレベル、または細胞、臓器および/もしくは生命体レベルでの他の有害な生理学的作用(しばしば副作用とよばれる)をさす。“より低い有効性”は、処置が、治療的に著しくより低いレベルの薬理学的有効性および/または治療的により高いレベルの有害な生理学的作用をもたらすことを意味する。
本発明の他の観点に従って、腫瘍細胞が変異体PIK3CA遺伝子を持つと確認されている癌患者を処置するための、式(I)の化合物の使用を提供する。
本発明の他の観点に従って、変異体PIK3CA遺伝子を持つと確認されている腫瘍細胞を有する癌を処置するための式(I)の化合物を提供する。
さらに他の態様において、本発明は、変異体PIK3CA遺伝子を持つと確認されている腫瘍細胞を有する癌の予防および処置に用いるための、式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。
上記観点のすべてに関し、決定/確認されたPIK3CAの変異体形態は、遺伝子全体のすべての位置に存在する。
上記観点のすべてに関し、一例として乳癌などの腫瘍を用いる場合、決定/確認されたPIK3CAの特定の変異体形態は、R38、R88、N345、C420、E453、P539、E542K、E545K、Q546、M1043、M1043およびH1047Rの位置にあるものである。
上記観点のすべてに関し、一例として乳癌などの腫瘍を用いる場合、決定/確認されたPIK3CAの特定の変異体形態は、E542、E545およびH1047の位置にあるものである。
個別化ヘルスケア/個別化医療の例
腫瘍細胞株における細胞増殖アッセイ
化合物の作用に対するヒト癌細胞株パネルの感受性を、標準的な増殖アッセイで決定した。アッセイプロトコルの詳細は、上記生物学的アッセイ(g)に記録している。
変異の相関分析
方法
実施例3での処置に応答した細胞成長阻害を測定する薬理学データを、さまざまな組織および多数の供給源からの209個の癌細胞株のコレクション(collection)について得た。各細胞株を、感受性(GI50<=1.0μM)または耐性(GI50>1.0μM)として分類した。
各細胞株の遺伝子の変異状態は、内部(AstraZeneca)および公共の情報源からの結果を統合することにより得た。公共のデータは、Genomics of Drug Sensitivity in Cancer Projectリリース3(Garnett MJ,et al. Nature,2012,Mar 483,570−5)、Cancer Cell Line Encyclopediaプロジェクト(Barretina J,et al.,Nature 2012,483,603−7)およびCatalogue of Somatic Mutations In Cander(COSMIC)データベース(リリースv61;http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmic/;Forbes SA,et al.Nucleic Acids Res,2011,39(データベース発行):D945−50;Forbes SA,et al.Curr Protocol Hum Genet.2008;10章:単元10.11.)、および選択した学術論文からの全細胞株データを包含していた。サイレントコーディング領域変異(同義バリアント)および非同義多型は除外し、この分析の目的に関し、変異の接合性は無視した。細胞株と遺伝子の各組み合わせについて、状態を、変異体(MUT)、野生型(WT)、または不一致(INCON)としてまとめた。最初に不一致であったいくつかの例(同じ細胞株の同じ遺伝子に関する独立したWTおよびMUTの観察)は、内部観察結果およびCOSMICのCancer Cell line Project(CCLP)サブセットの観察結果に加重するか、マニュアルレビュー(manual review)後に状態を選択することにより解決した。不一致の観察結果を解決することができなかった場合、INCON標識を保持し、分析中の遺伝子状態は未知とみなした。
変異状態と応答との関連を、各遺伝子について分割表を構築し、対応するオッズ比およびフィッシャーの正確確率検定の両側検定p値を決定することにより確認した。応答に不十分と分類された細胞株は初期分析から除外して、対象となるバイオマーカーを識別した。変異状態に関し、MUTまたはWT所見を計数し、4未満のWTまたは4未満のMUTを有する遺伝子の細胞株も排除した。
結果および考察
変異状態と応答との関連を、方法に記載したように確認した。実施例3に対する細胞株の応答と、これに対応するPIK3CA遺伝子の遺伝子状態を表3に示す。
変異が実施例3に対する感受性ともっとも強く相関していた遺伝子は、PIK3CAであった。PIK3CA WT細胞株は177個のうち12個(7.7%)だけが実施例3に対し感受性を示したが、PIK3CAの変異体である細胞株は32個のうち15個(46.9%)が感受性を示した。これは、12.1のオッズ比および1.2×10−7のp値に対応する(表4参照)。
本明細書中に示すように、異常または脱調節されたPIK3CAまたはPI3K−αを有する腫瘍における耐性の潜在的マーカーであるKRASなどの追加的遺伝子の変異状態または活性化状態の測定は、個別化医療アプローチの予測性の向上に役立つ可能性があることが、報告されている。
われわれは、これを、PIK3CA変異体細胞中のKRAS変異のエンリッチメント(enrichment)を、阻害に対する細胞株の応答と比較することにより、上記データセットに関し実証した。分析は、2つの遺伝子の‘ホットスポット’変異を含有する細胞株に限定した(PIK3CAについてはコドンE542、E545およびH1047、KRASについてはコドンK12、13およびQ61)。これにより、PIK3CA変異体細胞株では、KRASにおける変異が、実施例3による阻害に対する耐性を与えることが示された。
−28個の細胞株はPIK3CAに活性化変異を含有していた。
−活性化PIK3CA変異および野生型KRAS遺伝子を含有する19個の細胞株のうち6個(31.6%)は、実施例3に対し耐性を示した。
−9個のPIK3CA変異体細胞株のうち7個(77.8%)が、共存するKRAS変異を含有し、実施例3に対し耐性を示した。
これは、7.5のオッズ比および0.042のp値に変換される(表5参照)。
実施例
ここで、本発明を以下の実施例で例示する。これに関し、一般に:
(i)操作は、特記しない限り、周囲温度、すなわち17〜25℃において、窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行った;
(ii)蒸発は、回転蒸発によるか真空下でGenevac装置を利用して行い、後処理手順は、濾過により残留固体を除去した後に行った;
(iii)フラッシュクロマトグラフィー精製は、自動Armen Glider Flashで実施した:ドイツ、DarmstadのMerckから得た予め充填されているMerck順相Si60シリカカートリッジ(粒度分布:15〜40または40〜63μm)を用いるSpot II Ultimate(Armen Instrument,Saint−Ave,フランス);
(iv)分取クロマトグラフィーは、ZMDまたはZQ ESCi質量分析計およびWaters X−TerraまたはWaters X−BridgeまたはWaters SunFire逆相カラム(C−18、5ミクロンシリカ、直径19mm、長さ100mm、流速40mL/分)を取り付けたWaters機器(600/2700または2525)で、極性が低下する水(0.2%炭酸アンモニウムを含有する)とアセトニトリルの混合物を溶離液として用いて実施した;
(v)収量は、存在する場合、必ずしも到達可能な最大値ではない;
(vi)一般に、式Iの最終生成物の構造は、核磁気共鳴(NMR)分光法により確認した;NMR化学シフト値はデルタスケールで測定した[プロトン磁気共鳴スペクトルは、Bruker Avance 500(500MHz)機器を用いて決定した];特記しない限り、測定は周囲温度で行った;以下の略語を用いた:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;dd、ダブレットのダブレット;ddd、ダブレットのダブレットのダブレット;dt、トリプレットのダブレット;bs、ブロードシグナル;
(vii)一般に、式Iの最終生成物は、液体クロマトグラフィーに続く質量分析(LCMS)による特性決定も行った;LCMSは、Waters ZQ ESCiまたはZMD ESCi質量分析計およびX Bridge 5μm C−18カラム(2.1×50mm)を取り付けたWaters Alliance HT(2790 & 2795)を用い、95%A+5%C〜95% B+5%Cの溶媒系を2.4mL/分の流速で4分間にわたって用いて行った。これに関し、A=水、B=メタノール、C=1:1 メタノール:水(0.2%炭酸アンモニウムを含有する)である;
(viii)中間体は、一般に完全には特性を決定せず、薄層クロマトグラフィー、質量スペクトル、HPLCおよび/またはNMR分析により純度を評価した;
(ix)X線粉末回折スペクトルは、結晶質材料の試料をBrukerシリコン単結晶(SSC)ウエハマウント上に載せ、顕微鏡スライドを用いて該試料を薄層へ広げることにより決定した(Bruker D4分析機器を用いる)。試料を1分あたり30回転でスピンさせ(計数統計を向上させるために)、40kVおよび40mAで操作した銅ロングファインフォーカス管(long-fine focus tube)により発生させた波長1.5418オングストロームのX線を照射した。コリメートしたX線源を、V20に設定した自動可変発散スッリトに通し、反射した放射線を5.89mmの散乱防止スリット(antiscatter slit)および9.55mmの検出器スリットに通して方向付けた。試料を、シータ−シータモードで2度〜40度の2シータ範囲にわたり、0.00570°の2シータ増分につき0.03秒間暴露した(連続走査モード)。実行時間は3分36秒であった。該機器に、位置感応検出器(Lynxeye)を備え付けた。対照およびデータの捕捉には、Dell Optiplex 686 NT4.0 WorkstationをDiffrac+ソフトウェアで操作して用いた。X線粉末回折分野の技術者なら、ピークの相対強度が、例えば、30ミクロンより大きいサイズの粒子や試料の分析に影響を及ぼしうる非ユニタリーなアスペクト比により影響を受ける可能性があることを、理解するであろう。当業者は、反射の位置が、回折計の中で試料が置かれる位置の正確な高さと回折計のゼロ較正により影響を受ける可能性があることも、理解するであろう。試料表面の平面性もわずかな影響を有する可能性がある。したがって、提示する回折パターンデータは、絶対的な値とみなすべきではない;
(x)示差走査熱量測定は、TA Instruments Q1000 DSC機器を用いて実施した。典型的には、蓋付きの標準的なアルミニウム製パンに入れた5mg未満の材料を、1分あたり10℃の一定の加熱速度で25℃〜300℃の温度範囲にわたり加熱した。窒素を用いるパージガスを、1分あたり50mLの流速で用いた;そして
(xi)以下の略語を用いた:−
aq. 水性
CDCl3 ジュウテロクロロホルム
CHCl3 クロロホルム
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン
DCM ジクロロメタン
DEA ジエチルアミン
DIPEA N−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DSC 示差走査熱量測定
DTAD (E)−ジ−tert−ブチルジアゼン−1,2−ジカルボキシレート
EDCI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
Ether ジエチルエーテル
EtOH エタノール
EtOAc 酢酸エチル
%ee エナンチオマー過剰率%
HOPO 2−ヒドロキシ−ピリジンN−オキシド
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA イソプロピルアルコール
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MIBK メチルイソブチルケトン
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
NMP 1−メチル−2−ピロリドン
rt 室温
sat. 飽和
sol. 溶液
THF テトラヒドロフラン
TEA トリエチルアミン
TBTU 2−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボレート
v/v 体積/体積
TFA トリフルオロ酢酸
実施例1
1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン
3−ヒドロキシプロパン酸(水中の30%v/v溶液)(200μL、47.0mg、0.52mmol)を蒸発乾固した後、トルエンと共沸させた。該酸をNMP(1mL)に溶解し、モレキュラーシーブ(100mg、0.26mmol)、N−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(0.136mL、0.78mmol)を加えた後、2−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]−トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボレート(209mg、0.65mmol)を加えた。30分間撹拌した後、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(100mg、0.26mmol)を加え、混合物を2時間攪拌した。反応混合物を、Waters X−Bridge逆相カラム(C−18、5ミクロンシリカ、直径19mm、長さ100mm、流速40mL/分)および極性が低下する水(0.2%炭酸アンモニウムを含有する)とアセトニトリルの混合物を溶離液として用いて、分取HPLCにより精製した。
望ましい化合物を含有する画分を蒸発乾固して、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(45.0mg、37.9%)を透明な黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル (CDCl3) 1.52 (9H, s), 1.79 - 1.94 (2H, m), 2.07 - 2.15 (2H, m), 2.58 (2H, t), 2.84 - 2.94 (1H, m,), 3.00 - 3.10 (1H, m), 3.17 - 3.26 (1H, m), 3.53 (1H, t), 3.86 - 3.94 (3H, m), 4.30 (3H, s), 4.56 -4.62 (1H, m), 9.02 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 456.
3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(実施例1.1)は、以下のように調製した:
20℃において、ジクロロメタン(500mL)中のtert−ブチル4−カルバモイルピペリジン−1−カルボキシレート(47g、205.88mmol)を、ジクロロメタン(500mL)中のトリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート(V)(56.2g、226.47mmol)の攪拌溶液に、窒素下で45分間にわたり滴下して加えた。得られた溶液を20℃で一晩攪拌した。その後、Na2CO3の飽和水溶液を、pH8が得られるまで加えた。相をデカントし、水相を再び200mLのCH2Cl2で抽出した後、有機相をMgSO4上で乾燥し、濾過し、濃縮して、tert−ブチル4−(エトキシ(イミノ)メチル)ピペリジン−1−カルボキシレート(51.0g、97%)を無色液体として得た:
ジオキサン(500mL)中のtert−ブチル4−(エトキシ(イミノ)メチル)ピペリジン−1−カルボキシレート(51g、198.95mmol)の攪拌溶液に、ホルモヒドラジド(17.92g、298.43mmol)を加えた。この溶液をN2下、40℃でそのまま一晩攪拌すると、白色固体(ヒドラジド中間体)の沈殿が生じた。その後、反応混合物を6時間にわたり80℃に加熱し、室温に冷却し、濃縮した。残渣を500mLのCH2Cl2に溶解し、300mLの水を加えた。相をデカントし、有機相をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、濾過し、濃縮して、tert−ブチル4−(1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(46.0g、92%)を白色固体として得た:
ジクロロメタン(250mL)中のtert−ブチル4−(1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(22g、87.19mmol)の攪拌溶液に、水酸化ナトリウム2N(131mL、261.58mmol)を加えた。反応混合物を機械的攪拌で激しく攪拌した後、温度を約15℃に維持しつつ、ジクロロメタン(250mL)中のベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド(37.4g、95.91mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物をそのまま室温で1時間攪拌し、2N HClを加えてpH5を得た(温度は約15℃に維持した)。相をデカントし、有機相をH2O(2×1L)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、濾過し、濃縮して、tert−ブチル4−(5−ブロモ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(25.00g、87%)を灰色がかった白色の固体として得た:
トルエン(200mL)およびメタノール(50mL)中のtert−ブチル4−(5−ブロモ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(26g、78.50mmol)の攪拌懸濁液に、温度を約20℃に維持しつつ、N2下でヘキサン(43.2mL、86.35mmol)中の(ジアゾメチル)トリメチルシラン2M溶液を滴下して加えた:ガスの発生およびわずかな発熱が観察された。得られた黄色溶液を室温で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、得られたオイルをシリカ上で精製し、石油エーテル中の40%EtOAcで溶離して、tert−ブチル4−(5−ブロモ−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(15.00g、55.3%)をオイルとして得た:
ヒドラジン一水和物(34mL、1094.95mmol)を、エタノール(65mL)中のメチル3−アミノピラジン−2−カルボキシレート(21.3g、139.09mmol)の攪拌懸濁液に室温で少しずつ加えた。得られたスラリーを60℃で2時間攪拌し、室温に冷却し、濾過した。固体を冷エタノール(2×25mL)で洗浄し、恒量まで乾燥して、3−アミノピラジン−2−カルボヒドラジド(20.75g、97%)をベージュ色の固体として得た: 1 H NMRスペクトル;(DMSO-d6) 4.49 (2H, d), 7.46 (2H, br s,), 7.78 (1H, d), 8.17 (1H, d), 9.79 (1H, t);質量スペクトル [M+H]+= 154。
2−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボレート(47.7g、148.69mmol)を、アセトニトリル(350mL)中のN−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(70.6mL、405.51mmol)、ピバル酸(17.08mL、148.69mmol)および3−アミノピラジン−2−カルボヒドラジド(20.7g、135.17mmol)の攪拌懸濁液に15分かけて少しずつ加え、反応混合物を80℃で20分間攪拌した(溶液を得た)。反応混合物を0℃に冷却し、N−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(70.6mL、405.51mmol)、続いて4−メチルベンゼン−1−スルホニルクロリド(77g、405.51mmol)を15分間にわたり加えた。反応混合物(黄色懸濁液)を還流(可溶化)した後、そのまま室温で14時間攪拌して、暗い橙色の溶液を得た。該溶液を濃縮した。残渣をジクロロメタンで希釈し、水、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮した。粗生成物を、ジクロロメタン中の0〜40%酢酸エチルで溶離してシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。溶媒を蒸発乾固した。得られた混合物をエーテル(100mL)で粉砕し、濾過し、最低限のエーテルで洗浄し、乾燥して、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミン(20.8g、70.2%)を淡黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル;(CDCl3) 1.53 (9H, s), 1.58 - 1.68 (2H, m), 6.67 (2H, s), 8.13 (2H, dt);質量スペクトル [M+H]+= 220。
1−ブロモピロリジン−2,5−ジオン(18.57g、104.36mmol)を、THF(320mL)中の3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミン(20.8g、94.87mmol)に少しずつ加え、溶液を室温で16時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタン(300mL)に溶解し、水(2×150mL)、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮した。溶媒を蒸発させ、粗生成物を、ジクロロメタン中の0〜10%酢酸エチルで溶離してシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。溶媒を蒸発乾固して、5−ブロモ−3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミン(25.5g、90%)をベージュ色の固体として得た: 1 H NMRスペクトル;(CDCl3) 1.52 (9H, s), 8.23 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 300。
トルエン(450mL)中の5−ブロモ−3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミン(45g、150.94mmol)の懸濁液に、1,1,1,2,2,2−ヘキサメチルジスタンナン(37.6mL、181.12mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(5.30g、7.55mmol)を加えた。反応混合物をアルゴンで脱ガスし、80℃で2時間加熱した。(加熱により可溶化した後、橙色溶液が再沈殿して黒色になる。これは、反応が終了したことを示している。)反応混合物を冷却し、濃縮し、残渣をCH2Cl2に溶解し、Decalite上で濾過して、不溶性不純物を除去した。濾液を濃縮し、CH2Cl2中の0〜10%EtOAcで溶離してシリカ上で精製した。溶媒を濃縮して、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(トリメチルスタンニル)ピラジン−2−アミン(22.63g、39.2%)を橙色固体として得た: 1 H NMRスペクトル;(CDCl3) 0.38 (9H, s), 1.53 (9H, s), 6.49 (2H, br s), 8.13 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 384。
4−メチル−2−ペンタノール(28mL)中のtert−ブチル4−(5−ブロモ−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(2700mg、7.82mmol)および3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(トリメチルスタンニル)ピラジン−2−アミン(2988mg、7.82mmol)の攪拌懸濁液に、塩化リチウム(995mg、23.46mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(220mg、0.31mmol)を加えた。該混合物をアルゴンで脱ガスし、140℃で2時間加熱した。反応物を冷却し、得られた沈殿物を濾過により収集し、イソプロパノール(25mL)、水(25mL)で洗浄し、吸引乾燥した。イソプロパノール有機画分を濃縮し、形成した沈殿物を収集し、主な沈殿物と組み合わせて、tert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(3.0g、79%)を得た: 1 H NMRスペクトル: (DMSO-d6) 1.41 (9H, s), 1.45 (9H, s), 1.50 - 1.68 (2H, m), 1.95 (3H, dd), 2.78 - 3.05 (1H, m), 3.96 (3H, d), 4.21 (3H, s), 8.86 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 484。
TFA(15mL)およびCH2Cl2(15mL)中のtert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(3g、6.20mmol)の溶液を25℃で1時間攪拌した。該混合物をトルエンと共沸させ、メタノールおよびジクロロメタン中のアンモニアの7N溶液を加え、混合物をシリカゲル上に吸着させた。粗生成物を、ジクロロメタン中の0〜8%メタノール、続いてジクロロメタン中の0〜10%メタノール性アンモニアで溶離してシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。溶媒を蒸発乾固して、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(2.040g、86%)を黄色結晶質固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.45 (9H, s), 1.55 - 1.66 (2H, m), 1.86 (2H, dd), 2.52 - 2.61 (2H, m), 2.69 - 2.78 (1H, m), 2.95 - 3.02 (2H, m), 4.20 (3H, s), 8.86 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 384。
実施例1の単結晶形の単離
上記で単離した材料のX線粉末回折スペクトルは、材料が、結晶質であるが、多形形態の混合物であることを示した。この材料は226.4℃の融点(開始)を有していた。
フォームAの材料は、25℃において原材料をアセトニトリル中でスラリー化することにより生成した。約20mgの原材料をマグネティックスターラーバーと一緒にバイアルに入れ、約2mLのアセトニトリルを加えた後、バイアルを蓋でしっかり密封し、マグネティックスターラープレート上でそのまま攪拌した。約5日後、試料をプレートから除去し、蓋を外し、スラリーを、周囲条件下で放置して乾燥した後、XRPDおよびDSCにより分析した。この形態(フォームA)は、XRPDにより結晶質であると決定された。この材料は227.2℃の融点(開始)を有していた。
同じ結晶形を、室温において粗材料をアセトニトリル中で一晩スラリー化した後、得られた固体を濾過し、冷アセトニトリルで洗浄し、乾燥することにより、作製することができる。
本発明の一観点において、化合物試料をアセトニトリル中でスラリー化することにより実施例1の結晶形(フォームA)を形成するためのプロセスを提供する。X線粉末回折の10個のピークを以下の表に示す:
実施例1フォームAのX線粉末回折スペクトルを図1に示す。
実施例1フォームAのDSC分析は、227.2℃で開始し228.6℃にピークを有する融解吸熱を示している(図2)。
したがって、DSC分析は、実施例1フォームAが、約227.2℃で融解を開始し228.6℃にピークを有する高融点固体であることを示している。
実施例1フォームAのDSCを図2に示す。
X線粉末回折
分析機器:Bruker D4。
X線粉末ディフラクトグラムは、結晶質材料の試料をBrukerシリコン単結晶(SSC)ウエハマウント上に載せ、顕微鏡スライドを用いて該試料を薄層へ広げることにより決定した。試料を1分あたり30回転でスピンさせ(計数統計を向上させるために)、40kVおよび40mAで操作した銅ロングファインフォーカス管により発生させた波長1.5418オングストロームのX線を照射した。コリメートしたX線源を、V20に設定した自動可変発散スッリトに通し、反射した放射線を5.89mmの散乱防止スリットおよび9.55mmの検出器スリットに通して方向付けた。試料を、シータ−シータモードで2度〜40度の2シータ範囲にわたり、0.00570°の2シータ増分につき0.03秒間暴露した(連続走査モード)。実行時間は3分36秒であった。該機器に、位置感応検出器(Lynxeye)を備え付けた。対照およびデータの捕捉には、Dell Optiplex 686 NT4.0 WorkstationをDiffrac+ソフトウェアで操作して用いた。X線粉末回折分野の技術者なら、ピークの相対強度が、例えば、30ミクロンより大きいサイズの粒子や試料の分析に影響を及ぼしうる非ユニタリーなアスペクト比により影響を受ける可能性があることを、理解するであろう。当業者は、反射の位置が、回折計の中で試料が置かれる位置の正確な高さと回折計のゼロ較正により影響を受ける可能性があることも、理解するであろう。試料表面の平面性もわずかな影響を有する可能性がある。したがって、提示する回折パターンデータは、絶対的な値とみなすべきではない。
示差走査熱量測定
分析機器:TA Instruments Q1000 DSC。
典型的には、蓋付きの標準的なアルミニウム製パンに入れた5mg未満の材料を、1分あたり10℃の一定の加熱速度で25℃〜300℃の温度範囲にわたり加熱した。窒素を用いるパージガスを、1分あたり50mLの流速で用いた。
実施例1の化合物の他の合成法を、実施例2として以下に提供する。
実施例2:1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン
ピリジン4−メチルベンゼンスルホネート(3.58g、14.25mmol)を、窒素下でメタノール(275mL)中の1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(37g、68.57mmol)の懸濁液に加えた。混合物を60℃で1.5時間攪拌した。該混合物は5分後に溶解性を示した。該混合物を50℃で一晩保持すると、その間に沈殿物が形成した。反応混合物をジクロロメタン(400mL)に溶解し、水(300mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。水性抽出物をDCM(100mL)で逆洗し、有機相を組み合わせたものをMgSO4上で乾燥し、濃縮した。粗生成物を、100%酢酸エチル〜10:50:40メタノール/酢酸エチル/DCMで溶離してシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。複数の画分を含有する生成物を蒸発乾固して、ベージュ色の固体(24.5g)を得た。固体をアセトニトリル(500mL)中で一晩スラリー化し、濾過し、高真空下で乾燥して、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(実施例2)(24g、78%)をクリーム色の固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.51 (9H, s), 1.55 - 1.68 (1H, m), 1.68 - 1.84 (1H, m), 1.96 - 2.13 (2H, m), 2.78 - 2.93 (1H, m), 2.98 - 3.1 (1H, m), 3.19 - 3.3 (1H, m), 3.71 (2H, q), 3.93 - 4.04 (1H, m), 4.27 (3H, s), 4.35 - 4.48 (1H, m), 4.54 (1H, t), 7.96 (2H, s), 8.92 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 456
(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(実施例2.1)は、以下のように調製した:
ヒドラジン水和物(23.59mL、480.75mmol)を、EtOH(2L)中のメチル3−アミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボキシレート(100g、418.04mmol)の攪拌混合物に滴下して加えた。混合物を、窒素下、50℃で加熱した。得られた濃厚懸濁液を50℃で16時間攪拌した。さらにヒドラジン(2.5mL)を1回で加え、懸濁液を50℃でさらに24時間攪拌した。エタノール(500mL)を濃厚反応混合物に入れ、該混合物をそのまま室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過し、固体をエタノール(1L)で洗浄し、真空乾燥して、3−アミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボヒドラジド(98g、定量的)をクリーム色の固体として得た: 1 H NMRスペクトル;(DMSO-d6) 4.52 (2H, s), 7.59 (2H, s), 8.30 (1H, s), 9.74 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 232。
無水ピバル酸(165mL、815.38mmol)をアセトニトリル(1.8L)中の3−アミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボヒドラジド(172g、741.26mmol)の攪拌混合物に加え、混合物を80℃で1時間加熱した。反応物を放置して16時間攪拌した。必要な黄色固体材料を濾過により単離した。濾液をEtOAc(2L)と水性重炭酸ナトリウム(2L)に分配した。有機相を飽和ブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥した。溶液を濾過して濃縮すると橙色の粘性固体を得られ、これをMTBE(250mL)で粉砕した。不溶性黄色固体を濾過により単離した。この材料は最初の固体と同一であることが示された。固体を組み合わせたものを50℃の真空オーブンで3日間乾燥して、3−アミノ−6−ブロモ−N’−ピバロイルピラジン−2−カルボヒドラジド(224g、96%)を黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.17 (9H, s), 7.62 (2H, s), 8.37 (1H, s), 9.42 - 9.56 (1H, m), 10.09 - 10.23 (1H, m);質量スペクトル[M+H]+ = 318。
p−トルエンスルホニルクロリド(164g、861.60mmol)を、アセトニトリル(2200mL)中の3−アミノ−6−ブロモ−N’−ピバロイルピラジン−2−カルボヒドラジド(227g、718.00mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(297mL、1795.01mmol)の懸濁液に少しずつ加えた。混合物を70℃で2時間攪拌した。反応物を一晩放置して室温まで冷却した。反応混合物を酢酸エチル(2L)と重炭酸ナトリウム溶液(2L)に分配した。有機層を飽和ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。得られた褐色/ベージュ色の固体を高温のMTBE(1000mL)で粉砕し、濾過により単離し、乾燥して、5−ブロモ−3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミンを黄色固体(187g、87%)として得た。母液を蒸発乾固した。粗製固体をMTBE(500mL)で粉砕し、濾過し、100mLのMTBEで洗浄した。得られた固体を一晩風乾して、5−ブロモ−3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミンの第2の収穫物(crop)(36g、17%)を得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.43 (9H, s), 7.70 (2H, s), 8.39 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 298。
他の調製法では、50℃において、MeCN(10.8L)中の3−アミノ−6−ブロモ−N’−ピバロイルピラジン−2−カルボヒドラジド(2301g、7.28mol)に、DIPEA(3.044L、17.48mol)およびp−トルエンスルホニルクロリド(1665g、8.73mol)を30分間かけて少しずつ(約280g×6)加えた。反応温度は、添加速度を制御することにより65〜70℃に維持した。添加終了後、反応混合物を70℃で1時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、5%NaHCO3(水性、24.2L)で急冷した。得られた懸濁液を30分間撹拌した後、濾過した。生成物を水(14.8L)で洗浄し、吸引乾燥し、50℃で16時間乾燥した。生成物をDCM(12L)に溶解し、相を分離した。有機相をシリカパッド(6kg)上に載せ、生成物を20%EtOAc/DCM(8×10L)で溶離した。複数の画分を含有する生成物を濃縮して、1987g(収率92%)をHPLCによる純度99.8%で得た。
窒素ガス流を、DMA(1.2L)中の5−ブロモ−3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−アミン(89.35g、239.75mmol)の溶液に20分間通した。ジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル)ホスフィン(11.43g、23.98mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5.49g、5.99mmol)、亜鉛(1.568g、23.98mmol)およびジシアノ亜鉛(16.89g、143.85mmol)を、攪拌混合物に逐次的に加えた。該混合物を100℃に加熱し、1時間攪拌した。混合物を冷却し、DCM(3L)と水(1L)に分配した。黒色混合物をセライトに通して濾過し、有機層を分離した。溶液を、水、次にブラインで洗浄した。該溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をMTBEで粉砕し、濾過により単離し、MTBEで洗浄した。濾過ケークを真空乾燥して、5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−カルボニトリル(55.7g、95%)を淡橙色固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.46 (9H, s), 6.02 (1H, s), 8.38 (2H, s);質量スペクトル[M-H]-= 242。
MTBEでの粉砕の代わりに、生成物をヘプタン中でスラリー化した後、濾過し、乾燥してもよい。
ヒドラジン水和物(82mL、1.69mol)をIPA(200mL)中の5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−カルボニトリル(55g、225.18mmol)に加え、混合物を窒素下、50℃で16時間加熱した。混合物を氷浴で冷却した。得られた沈殿物を濾過により収集し、IPAおよびジエチルエーテルで洗浄し、恒量まで乾燥して、(Z)−5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−カルボヒドラゾンアミド(49.2g、79%)を黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル: (DMSO-d6) 1.45 (9H, s), 5.26 (2H, s), 5.58 (2H, s), 7.56 (2H, s), 8.75 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 277。
O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(74.3g、195.44mmol)を、DMA(800mL)中のN−Boc−イソニペコチン酸(41.1g、179.15mmol)および4−メチルモルホリン(35.9mL、325.74mmol)の溶液に加えた。混合物を10分間攪拌した後、該溶液に(Z)−5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−カルボヒドラゾンアミド(45g、162.87mmol)を1回で加えた(22℃〜27℃に発熱が観察された)。数分後、生成物が反応混合物から晶出した。反応混合物を容器から取り出し、シンターに通して濾過した。追加的なDMAを容器の側面から洗浄生成物に加え(150mL)、これを濾過ケーク上に注ぎ入れた。イソプロパノール(600mL)を容器に加え、容器中の生成物の残りを、激しい攪拌を用いてこの溶媒に懸濁させた。該イソプロパノール懸濁液を、DMAを吸引除去した後すぐに濾過ケークを洗浄するために用いた。濾過ケークを吸引乾燥した後、MTBEで洗浄し、もう一度吸引乾燥した。濾過ケークを真空乾燥して、(Z)−tert−ブチル4−(2−(アミノ(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)メチレン)ヒドラジンカルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレート(76g、95%)を黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.40 (9H, s), 1.46 (9H, s), 1.63 - 1.9 (2H, m), 2.33 - 2.6 (2H, m, DMSOシグナルにより不明瞭になった), 2.63 - 3.03 (2H, m), 3.18 - 3.48 (4H, m, 水シグナルにより不明瞭になった), 3.88 - 4.11 (2H, m), 6.43 (2H, s), 7.76 (2H, br), 8.84 (0.5H, s), 8.87 (0.5H, s), 9.85 (1H, s);質量スペクトル[M+H]+ = 488
他の調製法では、N−Boc−イソニペコチン酸をin situで以下のように作製することができる:イソニペコチン酸(858g、3.74mol)をDMA(25.3L)に溶解し、4−メチルモルホリン(393mL、3.74mol)を加えた。5分間撹拌し、クロロギ酸イソブチル(489mL、3.74mol)を加えた。反応混合物を25℃で2時間攪拌し、15℃に冷却してから、(Z)−5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−カルボヒドラゾンアミド(940g、3.4mol)を10分かけて少しずつ加えた。反応混合物を15℃で1〜2時間攪拌した。水(20.5L)を1時間かけて少しずつ加え、さらに1時間攪拌した後、濾過した。その後、濾過ケークを水(4×4L)で洗浄し、フィルター上で吸引乾燥した後、乾燥するまで50℃の真空オーブンで乾燥して、望ましい生成物を得た。
3Lの固定二重ジャケット付き容器中のジオキサン(500mL)に酢酸(200mL)を加え、溶液を窒素下で70℃に加熱した。(Z)−tert−ブチル4−(2−(アミノ(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)メチレン)ヒドラジンカルボニル)−ピペリジン−1−カルボキシレート(74.5g、152.80mmol)を、加温した混合物に少しずつ加えた。10分後、温度を100℃に上昇させた(わずかに還流した)。反応混合物を100℃で1.5時間攪拌した後(懸濁液)、80℃で一晩保持した(一晩保持した後、溶液が形成した)。得られた溶液を減圧濃縮した後、トルエンで希釈し、蒸発乾固し、トルエンで溶解し、再び濃縮した。残留オイルを多少の酢酸エチルと混合し、乾燥するまで濃縮した。固体が溶液から晶出し、これをMTBE(200mL)で粉砕し、濾過により単離した。濾過ケークを水およびMTBEで洗浄して、tert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(50g、70%)を灰色固体として得た。濾液を減圧濃縮して黄色固体を得た。この材料をMTBEで粉砕し、濾過した。濾過ケークを、酢酸エチル、次にMTBEで洗浄して、淡黄色固体として第2の収穫物を得た(4.93g、7%)。この材料は、第1の収穫物と同一であった:
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(19.87mL、132.90mmol)を、2−メチルTHF(300mL)中のtert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(48g、102.23mmol)の懸濁液に加えた。5分後に暗色溶液が得られた。これを木炭で処理し、セライトパッドに通して濾過し、木炭と木炭を追加的な2−メチルTHF(100mL)で洗浄した。濾液を、3Lのジャケット付き固定容器内で、窒素雰囲気下、−5℃において、エアースターラーを用いて攪拌した。黄色懸濁液の攪拌を促すために2−メチルTHF(100mL)を加えた。ヨードメタン(7.96mL、127.78mmol)を15分かけて滴下して加えた。該混合物を2時間攪拌し、反応混合物を室温まで温めた。16時間後、追加的なヨードメタン(6mL)およびDBU(20mL)を加え、16時間にわたり攪拌を継続した。該混合物を水中に注ぎ入れ、5分間撹拌した。不溶性材料をベージュ色の固体として単離し、真空乾燥して、tert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(24.77g、50.1%)を得た。母液を減圧濃縮し、残渣を、MTBEを溶離液として用いてシリカ上でのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、望ましい生成物の第2の収穫物(13.04g、26%)を黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.47 (9H, s), 1.51 (9H, s), 1.57 - 1.76 (2H, m), 1.94 - 2.1 (2H, m), 2.87 - 3.09 (3H, m), 3.9 - 4.08 (2H, m), 4.26 (3H, s), 7.97 (2H, br, s), 8.92 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 484。
tert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(36.81g、76.12mmol)を、DCM(100mL)中の2,2,2−トリフルオロ酢酸(100mL、1305.87mmol)の溶液に加えた。混合物を室温で3時間攪拌した。該混合物を減圧濃縮した。残渣をDCM(1.5L)に溶解し、水(400mL)中で激しく攪拌している濃アンモニア(150mL)に加えた。水性物をDCM(400mL)で洗浄し、有機溶液を組み合わせたものを硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、乾燥するまで濃縮して、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(30.0g、103%)を黄色固体として得た:
1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.44 (9H, s), 1.54 - 1.69 (2H, m), 1.8 - 1.92 (2H, m), 2.53 - 2.63 (2H, m), 2.68 - 2.83 (1H, m), 2.93 - 3.05 (2H, m), 4.19 (3H, s), 7.89 (2H, br), 8.85 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 384。
O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(30.4g、80.04mmol)を、25℃において、アセトニトリル(200mL)に溶解した3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン酸(12.67g、72.76mmol)およびN−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(25.3mL、145.52mmol)の攪拌溶液に少しずつ加えた。得られた溶液を25℃で20分間攪拌した後、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(30g、72.76mmol)を少しずつ加え、最後のポーションをアセトニトリル(100mL)中のスラリーとして混合物中に洗い流した。1時間攪拌した後、沈殿物を濾過により収集し、アセトニトリルで洗浄し、真空乾燥して、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(35.0g、89%)をベージュ色の固体として得た。濾液をDCM(600mL)で希釈し、水洗し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮した。残渣を、ジクロロメタンを用いて2〜2.5%のメタノール中の7Nアンモニアの勾配で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物の第2の収穫物(3.31g、6.13mmol、8.43%)も、クリーム色固体として得られた。両方の試料を組み合わせてベージュ色の固体を得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.44 (9H, s), 1.52 - 1.79 (4H, m), 1.88 - 2. 04 (2H, m), 2.53 - 2.73 (2H, m), 2.73 - 2.87 (1H, m), 2.91 - 3.05 (1H, m), 3.13 - 3.24 (1H, m), 3.37 - 3.47 (1H, m), 3.53 - 3.65 (1H, m), 3.7 - 3.8 (1H, m), 3.81 - 3.89 (1H, m), 3.89 - 3.99 (1H, m), 4.20 (3H, s), 4.29 - 4.4 (1H, m), 4.54 - 4.61 (1H, m), 7.60 - 8.20 (2H, br), 8.85 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 540。
実施例3
1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン
ピリジン4−メチルベンゼンスルホネート(11.62g、46.24mmol)を、窒素下でメタノール(1L)中の1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(128g、231.19mmol)の懸濁液に加えた。混合物を60℃で1.5時間攪拌した。該混合物は5分後に溶解性を示した。該混合物を50℃で一晩保持すると、その間に沈殿物が形成した。固体材料を濾過により単離し、水およびアセトニトリルで洗浄した。この材料はまだ前段階からの少量の不純物を含有しており、さらに精製する必要があった。該材料をジクロロメタンに溶解し、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(0%メタノール/DCM〜10%メタノール/DCM)により精製した。このようにして、望ましい生成物である1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(実施例3)(92g、85%)をクリーム色固体として単離した(フォームA): 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.4 - 1.51 (12H, m), 1.51 - 1.78 (2H, m), 1.89 - 2.05 (2H, m), 2.72 - 2.86 (1H, m), 2.91 - 3.05 (1H, m), 3.12 - 3.24 (1H, m), 3.64 (2H, q), 3.83 - 4.01 (1H, m), 4.29 - 4.41 (1H, m), 4.47 (1H, t), 4.58 (2H, q), 8.26 (2H, s), 8.85 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 470。
1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(実施例3.1)は、以下のように調製した:
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(76mL、511.14mmol)を、2−メチルTHF(1.2L)中のtert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(150g、319.46mmol)の懸濁液に加えた。ヨードエタン(46mL、575.03mmol)を加え、混合物を35℃で16時間攪拌した。さらにヨードエタン(46mL、575.03mmol)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(76mL、511.14mmol)を加え、攪拌を35℃で24時間継続した。混合物を水中に注ぎ入れ、不溶性材料を濾過により単離し、水およびMTBEで洗浄し、真空乾燥して、tert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(116g、73.0%)を黄色固体として得た。濾液をDCMで抽出し、有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣を、勾配溶離(30% MTBE/ヘプタン〜100% MTBE)を用いてシリカ上でのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、望ましい生成物の第2の収穫物(12g、24.12mmol、7.55%)を黄色固体として単離し、これを後で第1の収穫物と組み合わせた: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.41 (9H, s), 1.44 (9H, s), 1.48 (3H, t), 1.52 - 1.69 (2H, m), 1.87 - 2.04 (2H, m), 2.79 - 3.03 (3H, m), 3.86 - 4.03 (2H, m), 4.59 (2H, q), 7.89 (2H, s), 8.85 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 498。
THFも上記反応に適した溶媒である可能性がある。
TFA(400mL)を、DCM(400mL)中のtert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(126g、253.22mmol)の溶液に少しずつ加えた。混合物を室温で16時間攪拌した。該混合物を減圧濃縮し、DCM(1L)に溶解し、0℃において、水中の濃水性アンモニア(500mL)の激しく攪拌している溶液に徐々に加えた。有機溶液を水性物から分離し、減圧濃縮*して、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−エチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(101g、100%)を黄色固体として得た: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.4 - 1.52 (12H, m), 1.57 - 1.73 (2H, m), 1.83 - 1.93 (2H, m), 2.57 - 2.7 (2H, m), 2.71 - 2.84 (1H, m), 2.96 - 3.09 (2H, m), 4.58 (2H, q), 8.06 (2H, s), 8.84 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 398。
*同様の規模(約170gの出発材料)での他の実験では、以下の単離手順を用いた:層を分離し、上層(固体を含むエマルション)を濾過した。固体をDCM(0.5L)で洗浄し、濾液を分液漏斗に移した。層を分離し、水層をDCM(0.5L)で抽出した。有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過し、濃縮した。生成物を50℃で一晩乾燥した(81.75g)。抽出物からの固体を室温において水(200mL)中で30分間スラリー化し、濾過により取り出した。生成物を50℃で真空乾燥した(61.8g)。
他の変法は以下のとおりである;
DCM(9L)中のtert−ブチル4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(3009.5g、6.05mol)の懸濁液を、N2下で5〜10℃に冷却した。温度を<30℃に維持しつつ、TFA(9L)を懸濁液に少しずつ加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した。混合物を濃縮し、得られた残渣を水(30L)に溶解し、0〜5℃で35%アンモニア水溶液(12L)に徐々に加えた。懸濁液を30分間撹拌した後、生成物を濾過により取り出し、水(2×6L)で洗浄した。生成物を50℃で2日間にわたり真空乾燥した(2496g)。
O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、106g、279.51mmol)を、25℃において、アセトニトリル(600mL)に溶解した3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン酸(44.3g、254.10mmol)およびN−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(89mL、508.21mmol)の攪拌溶液に少しずつ加えた。得られた溶液を25℃で20分間攪拌した後、3−(5-tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−エチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(101g、254.10mmol)を少しずつ加え、最後のポーションをアセトニトリル(300mL)中のスラリーとして混合物中に洗い流した。1時間攪拌した後、沈殿物を濾過により収集し、アセトニトリルで洗浄し、真空乾燥して、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(128g、91%)をベージュ色の固体として得た。濾液をDCM(600mL)で希釈し、水洗し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮した。残渣を、ジクロロメタンを用いて2〜2.5%のメタノール中の7Nアンモニアの勾配で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。望ましい生成物の第2の収穫物(40g、72.2mmol、28.4%)をクリーム色固体として得た。これを第1の収穫物と組み合わせた: 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.29 - 1.48 (16H, m), 1.48 - 1.75 (4H, m), 1.83 - 1.99 (2H, m), 2.48 - 2.68 (2H, m), 2.68 - 2.79 (1H, m), 2.87 - 2.99 (1H, m), 3.07 - 3.19 (1H, m), 3.32 - 3.42 (1H, m), 3.47 - 3.6 (1H, m), 3.64 - 3.75 (1H, m), 3.75 - 3.84 (1H, m), 3.84 - 3.95 (1H, m), 4.24 - 4.39 (1H, m), 4.47 - 4.6 (3H, m), 7.84 (2H, s), 8.79 (1H, s):質量スペクトル [M+Na]+ = 577。
他の調製法:
THF(552mL)中の3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン酸(48.80g、0.2774mol)およびN−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(86.96mL、0.4993mol)の溶液に、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(115.73g、0.3051mol)を、窒素下、室温において少しずつ加えた。得られた混合物を20分間攪拌した後、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−エチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(122.5g(110.25g活性)、0.2774mol)を1時間かけて少しずつ加えた。3.5時間後、混合物を濃縮し、残渣を室温で15分間にわたりMeCN(275mL)中でスラリー化した。生成物を濾過により取り出し、MeCN(3×110mL)で洗浄し、50℃で一晩真空乾燥した。これにより、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(131.9g、96%)を得た。さらに他の調製法では、THF中のHBTU(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)を、HATUの代わりにカップリング剤として用いてもよい。
実施例3の他の調製法
メタノール(1045mL)中の1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン−1−オン(131.9g、0.2382mol)の懸濁液に、N2下でp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(11.97g、47.7mmol)を加えた。反応混合物を、60℃で5.5時間、その後50℃で一晩攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、固体を濾過により取り出した。生成物を室温において水(250mL)中で20分間スラリー化し、濾過により取り出し、水(3×40mL)で洗浄し、50℃で真空乾燥した。これにより、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(21.4g)をフォームAとして得た(以下参照)。
メタノール液を濃縮し、得られた固体を室温において水(0.6L)中で20分間スラリー化した。固体を濾過により単離し、水(3×100mL)で洗浄した。濾過ケークの2回目のスラリー化を、水(0.5L)中でさらに20分間行った。生成物を濾過により単離し、水(100mL)で洗浄し、50℃で真空乾燥した。これにより、81.9gの1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(81.9g)をフォームAとして得た。
両方の収穫物を組み合わせ(103.3g)、フォームB(16.68g)を種入れ(seed)し、室温においてMeCN(826mL)中で一晩スラリー化した。これにより、117.4gの1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンを淡黄色固体(117.4g)、フォームB(以下参照)として得た。この材料を、ヘプタン(7.5相対体積)中で1時間スラリー化することにより、さらに精製した。混合物を濾過し、フィルター上で吸引乾燥し、50℃の真空オーブンで一晩乾燥して、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(102.5g)をフォームBとして得た。
フォームBは、種入れすることなく、MeCN中でフォームAをスラリー化することにより作製することもできる。
フォームAまたはBは、以下のようにフォームCに転化することもできる:
IPA(12体積)中の1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オン(例えば、先に概説したプロセスにより作製したフォームB)の懸濁液を、固体が溶解するまで加熱還流した。溶液を熱濾過した後、室温に冷却した。これにより、フォームCとして、1−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−ヒドロキシプロパン−1−オンを淡黄色固体(99.3g、97%)として得た。
フォームCは、以下のようにフォームBに転化することもできる。
10Lのフランジフラスコ中で、MIBK(7900mL)中のフォームC(377.8g ポーション1)を110〜115℃に加熱して溶液を得た。該溶液をそのまま97〜103℃に冷却し、−15℃で攪拌しているアセトニトリル(8220mL)中のフォームBの種(0.8g)を含有する50L容器中に速やかに研磨濾過(polish filter)した。添加中、50L容器中の温度は、ジャケット冷却により−15〜25℃に維持した。MIBKに溶解した化合物の他の3つのポーションを、同様の方法により加えた。得られたスラリーにフォームBの種(0.8g)を加えた後、混合物を10〜20℃で一晩攪拌した。プロセス中、分析により望ましい形態(フォームB)が確認され、フォームCまたは可視的非晶質は確認されなかった。混合物を濾過し、アセトニトリル(3340mL)で洗浄した。固体を、恒量が得られるまで2日間オーブン乾燥した(乾燥中に、固体は、粉末およびサイズが約1mm〜約3〜4mmの小さな塊の混合物に崩壊した)。収量=1532.8g(93.5%)
3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン酸は、以下のように調製した:
窒素下、0℃において、メタノール(2.4L)および濃硫酸(44.4mL、832.61mmol)の攪拌溶液に、ベータ−プロピオラクトン(175mL、2.78mol)を滴下して加えた。この溶液をそのまま室温で2日間攪拌した。反応混合物を10℃に冷却した後、重炭酸ナトリウム(145g、1.72mol)を少しずつ加え、得られた懸濁液を放置して室温で75分間攪拌した。この溶液を濾過し、濾過ケークをメタノール(800mL)で洗浄した。濾液を蒸発させてオイルを得、これをジクロロメタン(1.2L)に再溶解し、60分間攪拌した後、再び濾過した。この溶液を濾過した後、蒸発させて、3−ヒドロキシプロパン酸メチル(219g、76%)をオイルとして得た。 1 H NMRスペクトル: (CDCl3) 2.50 (2H, t), 3.63 (3H, s), 3.78 (2H, t)。
p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(7.65g、30.45mmol)を、窒素下の室温においてジクロロメタン(650mL)中の3−ヒドロキシプロパン酸メチル(63.4g、609.00mmol)および3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(78mL、852.60mmol)の透明溶液に加えて、濁った溶液を得た。これを、そのまま室温で一晩攪拌した。反応混合物を水(250mL)およびブライン(250mL)で洗浄した後、乾燥(MgSO4)し、蒸発させて、オイルを得た。この粗生成物を、ヘプタン中の15〜30% EtOAcの溶離勾配でフラッシュシリカクロマトグラフィーにより精製した。純粋な画分を蒸発乾固して、メチル3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパノエート(67.7g、59.0%)を無色オイルとして得た: 1 H NMRスペクトル:(CDCl3) 1.47 (4H, dddd), 1.55 - 1.84 (2H, m), 2.55 (2H, t), 3.33 - 3.53 (1H, m), 3.53 - 3.7 (4H, m), 3.78 (1H, ddd), 3.93 (1H, dt), 4.42 - 4.72 (1H, m);質量スペクトル [MH]+= 189。
水酸化ナトリウム(2M、349mL、697.58mmol)を、室温において、THF(680mL)中のメチル3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパノエート(67.68g、359.58mmol)の溶液に加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。THFを真空除去し、つぎに水層を酢酸エチル(260mL)で洗浄した後、0℃に冷却し、塩酸(2M)の添加によりpH5に慎重に酸性化した。生成物を酢酸エチル(3×250mL)で抽出した後、乾燥(MgSO4)し、蒸発させて、3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン酸(57.0g、91%)を透明オイルとして得た。この材料を酢酸エチル(750mL)に溶解した後、水(3×250mL)およびブライン(250mL)で洗浄して、残存する酢酸を除去した。有機溶液を乾燥(MgSO4)し、蒸発させて、3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)プロパン酸(45.67g、72.9%)を無色オイルとして得た: 1 H NMRスペクトル: 1H NMR (CDCl3) 1.43 - 1.67 (4H, m), 1.65 - 1.95 (2H, m), 2.68 (2H, t), 3.48 - 3.58 (1H, m), 3.73 (1H, dt), 3.88 (1H, ddd), 4.02 (1H, dt), 4.59 - 4.7 (1H, m);質量スペクトル [M-H]- = 173。上記で単離した実施例3は、本明細書中ではフォームA、BおよびCと記載する、3つの異なる結晶形にある結晶質固体であった。
実施例3のフォームAの結晶構造は、XRPDおよびDSCにより特性決定することができる。
これらの技術を実施するための方法は、実施例1について記載したとおりである。
実施例3フォームAのXRPDを図3に示す。
実施例3フォームAのDSC分析は、27.0℃で開始し63.0℃にピークを有する初期吸熱を示している。以下の温度に、開始およびピークを有する他の吸熱シフトが見られる;166.5℃および168.7℃、172.2℃および173.2℃、ならびに174.8℃の最終融解および175.7℃のピーク(図4)。
したがって、DSC分析は、実施例3フォームAが、約27.0℃で脱溶媒和を開始し約63.0℃にピークを有する溶媒和材料であることを示している。
実施例3(フォームA)のX線粉末回折スペクトルは、該材料が結晶質であることを示した。この材料は28.0℃の脱溶媒和点(開始)を有していた。
実施例3は、本明細書中でフォームBとよぶ他の多形形態で存在することもできる。フォームBの調製法は先に記載した。
この材料は172.5℃の融点(開始)を有していた。
本発明の他の観点では、実施例3の試料をアセトニトリル中でスラリー化することにより、実施例3のフォームBを作製するためのプロセスを提供する。本発明の他の観点では、実施例3のフォームBを、MIBK中の実施例3フォームCの溶液から作製するためのプロセスを提供する。
実施例3フォームBのXRPDを図5に示す。
実施例3フォームBのDSC分析は、172.5℃で開始し174.2℃にピークを有する融解吸熱を示している(図6)。
したがって、DSC分析は、実施例3Bが、約172.5℃で融解を開始し約174.2℃にピークを有する高融点固体であることを示している。
実施例3は、本明細書中ではフォームCとよぶ第3の結晶形で存在することもできる。例えばフォームB材料からフォームC材料をイソプロピルアルコール(IPA)からの晶出により作製するためのプロセスを、先に記載している。
したがって、本発明の他の観点において、実施例3をIPAから晶出させることにより実施例3フォームCを作製するためのプロセスを提供する。
実施例3フォームCは、CuKa線を用いて測定して以下の2θ値の少なくとも1つを提供することを特徴とする:6.9および12.3。実施例3フォームCは、実質的に図7に示すようなX線粉末回折パターンを提供することを特徴とする。10個のX線粉末回折ピークを以下に示す:
実施例3フォームCのDSC分析は、183.0℃で開始し185.6℃にピークを有する融解吸熱を示している(図8)。
したがって、DSC分析は、実施例3フォームCが、約183.0℃で融解を開始し約185.6℃にピークを有する高融点固体であることを示している。
フォームCの分析に用いた技術の詳細
X線粉末回折
分析機器:Panalytical Cubix。
X線粉末ディフラクトグラムは、結晶質材料の試料をPanalyticalシリコン単結晶(SSC)ウエハマウント上に載せ、顕微鏡スライドを用いて該試料を薄層へ広げることにより決定した。試料を1分あたり30回転でスピンさせ(計数統計を向上させるために)、45kVおよび40mAで操作した銅ロングファインフォーカス管により発生させた波長1.5418オングストロームのX線を照射した。X線ビームを、0.04radのソーラスリット、次に20mmに設定した自動可変発散スッリト、最後に20mmのビームマスクに通した。反射した放射線を20mmの散乱防止スリットと0.04radのソーラスリットに通して方向付けた。試料を、シータ−シータモードで2度〜40度の2シータ範囲にわたり、0.0025067°の2シータ増分につき1.905秒間暴露した(連続走査モード)。該機器にX−Celerator検出器を備え付けた。対照およびデータの捕捉には、Dell Pentium 4HT WorkstationをX’Pert Industryソフトウェアで操作して用いた。X線粉末回折分野の技術者なら、ピークの相対強度が、例えば、30ミクロンより大きいサイズの粒子や試料の分析に影響を及ぼしうる非ユニタリーなアスペクト比により影響を受ける可能性があることを、理解するであろう。当業者は、反射の位置が、回折計の中で試料が置かれる位置の正確な高さと回折計のゼロ較正により影響を受ける可能性があることも、理解するであろう。試料表面の平面性もわずかな影響を有する可能性がある。したがって、提示する回折パターンデータは、絶対的な値とみなすべきではない。
示差走査熱量測定
分析機器:TA Instruments Q1000 DSC。
典型的には、蓋付きの標準的なアルミニウム製パンに入れた5mg未満の材料を、1分あたり10℃の一定の加熱速度で25℃〜300℃の温度範囲にわたり加熱した。窒素を用いるパージガスを、1分あたり50mLの流速で用いた。
実施例4
(3R)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−ブタン−1−オン
2−(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムテトラフルオロボレート(201mg、0.63mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)中の3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(200mg、0.52mmol、実施例1に記載)、N−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(0.273mL、1.56mmol)および(R)−3−ヒドロキシブタン酸(65.2mg、0.63mmol)の攪拌懸濁液に加えた。得られた懸濁液を室温で2時間攪拌した。得られた混合物を、Waters X−Bridge逆相カラム(C−18、5ミクロンシリカ、直径30mm、長さ150mm、流速60mL/分)を用い、水(炭酸アンモニウムを含有する(2g/L))中の31%アセトニトリルの無勾配混合物を用いて、分取HPLCにより精製した。望ましい化合物を含有する画分を蒸発乾固して、淡黄色固体を得た。この固体を室温においてアセトニトリル(3mL)中で攪拌した。得られた固体を濾過し、冷アセトニトリルで洗浄し、乾燥して、表題化合物(125mg、51.0%)を淡黄色固体として得た。
1 H NMRスペクトル:(CDCl3) 1.24 (3H, d), 1.52 (9H, s), 1.85 (2H, m), 2.10 (2H, m), 2.35 (1H, dd), 2.55 (1H, d), 2.90 (1H, m), 3.05 (1H, m), 3.20 (1H, m), 3.90 (1H, m), 4.25 (1H, m), 4.31 (3H, s), 4.6 (1H, m), 9.03 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 470。
実施例5
(3S)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−ブタン−1−オン
実施例4と同様の手順を用いて、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミンを(S)−3−ヒドロキシブタン酸と反応させて、表題化合物(167mg、68.2%)を淡黄色固体として得た。
1 H NMRスペクトル:(CDCl3) 1.24 (3H, d), 1.52 (9H, s), 1.85 (2H, m), 2.10 (2H, m), 2.35 (1H, dd), 2.55 (1H, d), 2.90 (1H, m), 3.05 (1H, m), 3.20 (1H, m), 3.90 (1H, m), 4.25 (1H, m), 4.31 (3H, s), 4.6 (1H, m), 9.03 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 470。
実施例6
(2R)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン
実施例4と同様の手順を用いて、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミンを(R)−3−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸と反応させて、表題化合物(87mg、47.4%)を淡黄色固体として得た。
1 H NMRスペクトル:(CDCl3) 1.55 (9H, s), 1.61 (3H, s br), 1.8-2.0 (2H, m), 2.10-2.25 (2H, m), 2.90 (2H, m), 3.10 (1H, m), 3.3 (2H, m), 3.77 (2H, m), 4.33 (3H, s), 4.6 (1H, m), 9.05 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 470。
実施例7
1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン
1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(100mg、0.52mmol)を、アルゴン下で、NMP(1.2mL)に溶解した2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸(38.0mg、0.37mmol)、3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(100mg、0.26mmol)および2−ヒドロキシ−ピリジンN−オキシド(57.9mg、0.52mmol)に1回で加えた。得られた溶液を25℃で3時間攪拌した。ピリジン(100μL、1.24mmol)を加え、混合物を18時間攪拌した。追加的な2−ヒドロキシピリジン1−オキシド(57.9mg、0.52mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(100mg、0.52mmol)を加えた。その後、混合物を48時間かけて最高70℃に加熱し、さらに2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸(15mg、0.14mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(50.0mg、0.26mmol)および2−ヒドロキシピリジン1−オキシド(25.0mg、0.23mmol)を加えた後、混合物を70℃に8時間維持した。該溶液を、Waters X−Bridge逆相カラム(C−18、5ミクロンシリカ、直径19mm、長さ100mm、流速40mL/分)および極性が低下する水(0.2%炭酸アンモニウムを含有する)とアセトニトリルの混合物を溶離液として用いて分取HPLCにより精製して、表題化合物(71mg、58%)を淡黄色固体として得た。
1 H NMRスペクトル:(CDCl3) 1.55 (15H, s br), 1.90 (2H, m), 2.15 (2H, m), 3.05-3.3 (4H, m), 4.32 (3H, s), 4.6 (1H, m), 9.03 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 470。
実施例8
3−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−メチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−オキソ−プロパン酸
エチル3−クロロ−3−オキソプロパノエート(0.037mL、0.29mmol)を、CH2Cl2(1.5mL)に溶解した3−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−メチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(100mg、0.26mmol)およびトリエチルアミン(0.047mL、0.34mmol)の攪拌溶液に、窒素下、0℃において2分間かけて滴下して加えた。混合物を0℃で10分間攪拌した後、そのまま室温まで温め、1時間攪拌した。該混合物を蒸発させ、DMFに溶解した;白色固体を濾過により取り出し、濾液を、水(0.2%炭酸アンモニウムを含有する)とアセトニトリルの混合物で溶離するWaters X−Terra逆相カラムを用いて分取HPLCにより精製して、エチル3−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロパノエート(80mg、61.7%)を黄色固体として得た。この材料をTHF(2mL)に懸濁させた。2N水酸化ナトリウム(0.235mL、0.47mmol)および水(0.5mL)を加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。2N塩酸(230μL)を混合物に加えた。溶媒を蒸発させた。残渣をCH2Cl2(30mL)および水(5mL)で希釈した。有機相をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させた。得られたフォームをエーテル中で粉砕した。得られた黄色固体を濾過し、乾燥し、アセトニトリル(3mL)中で粉砕した。黄色固体を濾過により収集し、40℃で乾燥して、表題化合物(50mg、68%)を黄色固体として得た。
1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.46 (9H, s), 1.58 (1H, m), 1.74 (1H, m), 1.98 (2H, m), 2.84 (1H, m), 3.0 (1H, m), 3.21 (1H, m), 3.46 (2H, m), 3.83 (1H, m), 4.22 (3H, s), 4.34 (1H, m), 7.8-8.2 (1H, m), 8.87 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 470。
実施例9:3−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−エチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−3−オキソ−プロパン酸
O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(474mg、1.25mmol)を、DMF(20mL)に溶解した3−エトキシ−3−オキソプロパン酸(150mg、1.13mmol)、N−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(0.394mL、2.26mmol)および3−(5−(tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−エチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(450mg、1.13mmol)の攪拌溶液に、50℃において30秒かけて少しずつ加えた。得られた溶液を1分後(反応終了)サンプリングし、そのまま速やかに周囲温度まで冷却した。反応混合物を濃縮し、EtOAc(100mL)で希釈し、水(20mL)および飽和ブライン(20mL)で順次洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過し、蒸発させて、粗製エチル3−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−(tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロパノエート(850mg)を得た。
該材料の一部(780mg)をTHF(20mL)に溶解した。この溶液に、2N水性水酸化ナトリウム(2.3mL、4.57mmol)および水(5mL)、続いてメタノール(5mL)を加えて、透明溶液を得た。混合物を室温で3時間攪拌した。THFを蒸発させた。水層を2N水性塩酸(2.5mL)でpH3に酸性化した。ジクロロメタン(50mL)を加え、有機相を抽出した。該有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させた。得られたガムを、極性が低下する水(1%アンモニアを含有する)とアセトニトリルの混合物を溶離液として用い、分取HPLC(Waters X−Bridge Prep C18 OBDカラム、5μシリカ、直径50mm、長さ100mm)により精製した。望ましい化合物を含有する画分を蒸発乾固して、純粋なアンモニウム塩を得た。これを水中で可溶化し、2N塩酸(約0.3mL)でpH3に酸性化した。ジクロロメタン(50mL)を加え、有機相を分離し、ブライン(5mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥した。濾過後、得られた溶液を蒸発乾固し、残渣をジエチルエーテル(5mL)で粉砕し、濾過して、3−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロパン酸(195mg、26.5%)をクリーム色固体として得た。 1 H NMRスペクトル:(DMSO-d6) 1.45 (9H, s), 1.48 (3H, m), 1.55 - 1.62 (1H, m), 1.70 - 1.80 (1H, m), 1.95 - 2.05 (2H, m), 2.80 - 2.90 (1H, m), 2.95 - 3.05 (1H, m), 3.15 - 3.25 (1H, m), 3.45 (2H, s), 3.78 - 3.85 (1H, m), 4.30 - 4.40 (1H, m), 4.55 - 4.65 (2H, m), 7.80 - 8.00 (2H, br s), 8.88 (1H, s), 12.60 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+= 484
実施例10:(2S)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−エチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−2,3−ジヒドロキシ−プロパン−1−オン
DCM(5mL)中の3−(5−(tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−エチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミン(257mg、0.50mmol、TFA塩)、カリウム(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレート(101mg、0.55mmol)およびEDCI(105mg、0.55mmol)の混合物に、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール水和物(85mg、0.56mmol)およびDIPEA(194mg、1.50mmol)を加えた。混合物を室温で16時間攪拌した。水を混合物に加え、該混合物をDCMで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、濾過し、濃縮して、(S)−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−(tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メタノン(320mg)を得た。質量スペクトル [M+H]+ = 526。DCM(10mL)中の(S)−(4−(5−(5−アミノ−6−(5−(tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル)−1−エチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル)(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メタノン(320mg)の混合物に、室温でTFA(1.6mL、20.77mmol)を滴下して加えた。混合物を室温で16時間攪拌し、濃縮し、極性が低下する水(0.1% NH3を含有する)とMeCNの混合物を溶離液として用いて分取HPLC(Waters XBridge Prep C18 OBDカラム、5μシリカ、直径19mm、長さ100mm)により精製した。望ましい化合物を含有する画分を蒸発乾固して、表題化合物(142mg、48%)を白色固体として得た: 1 H NMRスペクトル (400 Hz, DMSO-d6, 30oC): 1.45 (12H, m), 1.56 (1H, m), 1.70 (1H, m), 1.98 (2H, m), 2.85 (1H, m), 3.00 (1H, m), 3.20 (1H, m), 3.45 (1H, s), 3.55 (1H, s), 4.05 (1H, m), 4.35 (2H, m), 4.60 (2H, m), 4.70 (1H, m), 4.85 (1H, m), 7.90 (2H, m), 8.85 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 486。
実施例11:(2R)−1−[4−[5−[5−アミノ−6−(5−tert−ブチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ピラジン−2−イル]−1−エチル−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−1−ピペリジル]−2,3−ジヒドロキシ−プロパン−1−オン
3−(5−(tert−ブチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−5−(1−エチル−3−(ピペリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピラジン−2−アミンを、実施例10に記載した手順と同様の手順を用いてカリウム(R)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシレートと反応させて、表題化合物(0.145g、40%)を固体として得た: 1 H NMRスペクトル (400 Hz, DMSO-d6, 30oC): 1.45 (12H, m), 1.60 (2H, m), 1.98 (2H, m), 2.85 (1H, m), 3.00 (1H, m), 3.17 (1H, m), 3.45 (1H, s), 3.55 (1H, s), 4.05 (1H, m), 4.35 (2H, m), 4.60 (2H, m), 4.70 (1H, m), 4.85 (1H, m), 7.90 (2H, m), 8.85 (1H, s);質量スペクトル [M+H]+ = 486。