JP6201793B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

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Description

本発明は、トラックやバス等の車両に補助ブレーキとして搭載される渦電流式減速装置に関し、特に、制動力を発生させるために永久磁石を用いた渦電流式減速装置に関する。
一般に、永久磁石(以下、単に「磁石」ともいう)を用いた渦電流式減速装置(以下、単に「減速装置」ともいう)は、プロペラシャフト等の回転軸に固定した制動部材を備え、制動時に、磁石からの磁界の作用で、磁石と対向する制動部材の表面に渦電流を発生させ、これにより、回転軸と一体で回転する制動部材に回転方向と逆向きの制動力が生じ、回転軸を減速させるものである。減速装置は、制動力をもたらすために渦電流が発生させられる制動部材、及び磁石を保持して制動部材と対をなす磁石保持部材の形状に応じてドラム型とディスク型に大別され、制動と非制動とを切り替える構造も様々ある。
近年、装置の小型化への要請に対応するため、磁石を保持する磁石保持部材を回転軸に回転可能に支持し、制動時にその磁石保持部材を摩擦ブレーキによって静止させる減速装置が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。また、制動部材と磁石保持部材を入れ替え、磁石保持部材を回転軸に固定するとともに、制動部材を回転軸に回転可能に支持し、制動時にその制動部材を摩擦ブレーキによって静止させる減速装置も提案されている(例えば、特許文献5参照)。これらの減速装置は、以下に示すように、非制動時に磁石保持部材と制動部材が同期して回転することから、同期回転方式の減速装置と称される。
図1は、従来の同期回転方式の減速装置の構成例を示す縦断面図である。同図に示す減速装置はディスク型であり、制動部材としての制動ディスク101と、磁石保持部材としてその制動ディスク101の主面に対向し永久磁石105を保持する磁石保持ディスク104とを備える。
図1では、制動ディスク101は、プロペラシャフト等の回転軸111と一体で回転するように構成される。具体的には、回転軸111と同軸上に連結軸112がボルト等によって固定され、フランジ付きのスリーブ113がその連結軸112にスプラインで噛み合いながら挿入されてナット114で固定されている。制動ディスク101は、回転軸111と一体化されたスリーブ113のフランジにボルト等で固定され、これにより回転軸111と一体で回転するようになる。
制動ディスク101には、例えばその外周に放熱フィン102が設けられる。この放熱フィン102は、制動ディスク101と一体成形され、制動ディスク101そのものを冷却する役割を担う。制動ディスク101の材質は導電性材料であって、その中でも鉄等の強磁性材料や、フェライト系ステンレス鋼等の弱磁性材料といった磁性材料が好適である。制動ディスク101の材質は、導電性材料である限り、アルミニウム合金や銅合金のような非磁性材料でも良い。
図1では、磁石保持ディスク104は、回転軸111に対し回転可能に構成される。磁石保持ディスク104は、連結軸112と同心状の環状部材103と一体成形されたり、個別に成形されてボルト等で環状部材103に固定されたりしたものである。環状部材103は回転軸111と一体化されたスリーブ113に軸受115a、115bを介して支持され、これにより磁石保持ディスク104は回転軸111に対し自由に回転が可能になる。軸受115a、115bには潤滑グリスが充填され、この潤滑グリスは、環状部材103の前後両端に装着されたリング状のシール部材116a、116bにより漏出を防止される。
磁石保持ディスク104には、制動ディスク101の主面と対向する面に、円周方向にわたり複数の永久磁石105が固着される。永久磁石105は、磁極(N極、S極)の向きが磁石保持ディスク104の軸方向であり、円周方向に隣接するもの同士で磁極が交互に異なるように配置される。
図1では、磁石保持ディスク104には、永久磁石105の全体を覆うように、薄板からなる磁石カバー120が取り付けられる。この磁石カバー120は、鉄粉や粉塵から永久磁石105を保護するのみならず、永久磁石105の保有する磁力が熱影響で低下するのを防止するために、制動ディスク101から永久磁石105への輻射熱を遮る役割を担う。磁石カバー120の材質は、永久磁石105からの磁界に影響を及ぼさないように、非磁性材料である。
図1に示す減速装置は、制動時に磁石保持ディスク104を静止させる摩擦ブレーキとしてディスクブレーキを備える。このディスクブレーキは、磁石保持ディスク104の後方で環状部材103と一体のブレーキディスク106と、このブレーキディスク106を間に挟むブレーキパッド108a、108bを有するブレーキキャリパ107と、このブレーキキャリパ107を駆動させる電動式直動アクチュエータ109とから構成される。ブレーキディスク106は、ボルト等で環状部材103に取り付けられ、環状部材103と一体化される。
ブレーキキャリパ107は、前後で一対のブレーキパッド108a、108bを有しており、ブレーキパッド108a、108bの間にブレーキディスク106を配置し所定の隙間を設けて挟んだ状態で、バネを搭載したボルト等によりブラケット117に付勢支持される。このブラケット117は、車両のシャーシやクロスメンバー等の非回転部に取り付けられる。また、ブラケット117は、ブレーキディスク106の後方で環状部材103を包囲し、環状部材103に軸受118を介して回転可能に支持される。この軸受118にも潤滑グリスが充填され、この潤滑グリスは、ブラケット117の前後両端に装着されたリング状のシール部材119a、119bにより漏出を防止される。
ブレーキキャリパ107には、アクチュエータ109がボルト等で固定される。アクチュエータ109は、電動モータ110によって駆動し、電動モータ110の回転運動を直線運動に変換して後側のブレーキパッド108bをブレーキディスク106に向け直線移動させる。これにより、後側のブレーキパッド108bがブレーキディスク106を押圧し、これに伴う反力の作用で、前側のブレーキパッド108aがブレーキディスク106に向け移動し、その結果、ブレーキディスク106を前後のブレーキパッド108a、108bで強力に挟み込む。
図1に示す減速装置において、非制動時は、ディスクブレーキ(摩擦ブレーキ)を作動させない状態にある。このとき、制動ディスク101が強磁性材料や弱磁性材料といった磁性材料からなる場合は、回転軸111と一体で制動ディスク101が回転するのに伴い、環状部材103と一体の磁石保持ディスク104が、永久磁石105と制動ディスク101との磁気吸引作用により、制動ディスク101と同期して回転する。このため、制動ディスク101と永久磁石105との間に相対的な回転速度差が生じないことから、制動力は発生しない。
制動ディスク101が非磁性材料からなる場合は、磁石105と制動ディスク101との間に磁気吸引力は働かないが、制動ディスク101が、磁石105が及ぼす磁界中を回転移動するのに伴い、磁界の作用によって制動ディスク101に渦電流が発生する。このため、制動ディスク101に制動力が発生し、磁石105はその反力を受け、制動ディスク101と同じ方向に回転する。すなわち、制動ディスク101と磁石105との間の相対回転速度差によって生じる制動力と、磁石105が回転することによって生じる軸受部の損失や磁石保持ディスク104の回転による空気抵抗の抗力とが釣り合うように、磁石105は制動ディスク101と同じ方向へ僅かな相対回転速度差を生じながら回転する。つまり、制動ディスク101が非磁性材料からなる場合は、磁石105が制動ディスク101と完全に同期して回転するわけではなく、僅かな回転速度差をもって連れまわりをしているが、実質的には同期して回転しており、非制動状態が保たれている。
一方、制動時は、ディスクブレーキ(摩擦ブレーキ)を作動させ、ブレーキディスク106がブレーキパッド108a、108bによって挟み込まれ、これにより環状部材103と一体の磁石保持ディスク104の回転が停止し、磁石保持ディスク104が静止する。制動ディスク101が回転している際に磁石保持ディスク104のみが静止すると、制動ディスク101と永久磁石105との間に相対的な回転速度差が生じるため、永久磁石105からの磁界の作用で、制動ディスク101の主面に渦電流が発生し、制動ディスク101を介して回転軸111に制動力を発生させることができる。
なお、制動時の状態は、制動ディスク101の材質が磁性材料であっても非磁性材料であっても、磁界の作用による制動の原理は同じであるが、材料の導電率や透磁率の差によって制動効率に差が生じる。このため、制動ディスク101の材質は磁気回路設計時に制動効率の要求に応じて適宜選定すればよい。
このように図1に示す減速装置は、制動部材としての制動ディスク101を回転軸111に固定するとともに、磁石保持部材としての磁石保持ディスク104を回転軸111に回転可能に支持した構成であるが、制動ディスク101と磁石保持ディスク104を入れ替えた構成でも成り立つ。すなわち、回転軸に固定する対象は磁石保持ディスクとし、回転軸に回転可能に支持する対象は制動ディスクとしてもよい。
この減速装置の場合、非制動時は、回転軸と一体で磁石保持ディスクが回転するのに伴い、環状部材と一体の制動ディスクが、磁石保持ディスクで保持する永久磁石との磁気吸引作用(制動ディスクが磁性材料の場合)又は磁界の作用(制動ディスクが非磁性材料の場合)により、磁石保持ディスクと同期して回転する。このため、制動ディスクと、磁石保持ディスクにおける永久磁石との間に相対的な回転速度差が生じないことから、制動力は発生しない。
一方、制動時は、ディスクブレーキの作動により環状部材の回転が停止し、制動ディスクが静止する。磁石保持ディスクが回転している際に制動ディスクのみが静止すると、制動ディスクと、磁石保持ディスクにおける永久磁石との間に相対的な回転速度差が生じるため、制動ディスクの主面に渦電流が発生する。すると、制動ディスクの主面に生じた渦電流と永久磁石からの磁束密度との相互作用によりフレミングの左手の法則に従い、回転する磁石保持ディスクに回転方向と逆向きの制動力が発生し、磁石保持ディスクを介して回転軸の回転を減速させることができる。
また、上記した同期回転方式の減速装置はディスク型であるが、ドラム型であっても成り立つ。
特開平4−331456号公報 実開平5−80178号公報 特開2011−97696号公報 特開2011−139574号公報 特開2011−182574号公報
上記した従来の同期回転方式の減速装置では、以下に示す問題がある。
(1)制動部材及び磁石保持部材のうちで回転軸に回転可能に支持された部材を制動時に静止させるために、摩擦ブレーキ(ディスクブレーキ)が不可欠であり、別個独立したブレーキディスクが必要とされる。このため、減速装置が軸方向に拡大せざるを得ず、装置の小型化が制限される。
(2)制動部材と磁石保持部材の磁石とに挟まれた空隙部は常時強い磁束が出ている状態なので、両者の隙間に、鉄粉等の強磁性材料の異物が侵入して付着し、次々と堆積して成長する事態が起こり得る。このような事態が起こった場合、制動部材と磁石との間に相対的な回転速度差が生じる制動時、制動部材や磁石(磁石カバーがある場合は磁石カバー)が異物と擦れ合い、制動部材や磁石が損傷したり、制動部材と磁石との相対的な回転が妨げられたりする。
(3)減速装置への本質的な要求として、制動力の向上が命題である。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、下記の特性を有する同期回転方式の渦電流式減速装置を提供することである:
・装置の軸方向寸法を縮小すること;
・制動部材と永久磁石との隙間に異物が付着するのを防止すること;
・制動力を向上させること。
本発明の一実施形態である渦電流式減速装置は、
車両の回転軸に固定され、複数の永久磁石を円周方向にわたり保持した磁石保持部材と、
前記磁石保持部材を包囲するように一対の円板部及びこれらの円板部同士の外周部を連結する円筒部からなり、前記回転軸に回転可能に支持された制動部材と、
制動時に前記制動部材に摩擦部材を押し付けて前記制動部材を静止させる摩擦ブレーキと、を備える。
前記永久磁石は、前記円筒部の内周面及び前記一対の円板部それぞれの内面に対向し、磁極の向きが円周方向であって、円周方向に隣接するもの同士で磁極が交互に異なって配置されており、
前記磁石保持部材は、円周方向に隣接する前記永久磁石同士の間に、前記円筒部の内周面に向けて前記永久磁石よりも伸び出した磁性材を含む仕切り部材を備え、
前記仕切り部材の内周側の端部が前記永久磁石の内周側の端部よりも外周側に配置されている。
上記の減速装置において、
前記仕切り部材の形状は直方体であり、
前記永久磁石の形状は外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる楔形である構成とすることができる。
上記の減速装置において、
前記永久磁石の形状は直方体であり、
前記仕切り部材の形状は外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる楔形である構成とすることもできる。
これらの減速装置の場合、
前記仕切り部材は、前記一対の円板部それぞれの内面に向けて前記永久磁石よりも伸び出していることが好ましい。
また、上記の減速装置において、
前記永久磁石の形状は直方体であり、
前記仕切り部材は、円周方向に隣接する前記永久磁石それぞれに接触する磁性材の薄板部と、外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる硬質樹脂の楔部と、からなる構成とすることもできる。
この減速装置の場合、
前記薄板部は、前記一対の円板部それぞれの内面に向けて前記永久磁石よりも伸び出していることが好ましい。
以上の減速装置において、
前記摩擦ブレーキは、
前記摩擦部材として前記一対の円板部を間に挟む一対のブレーキパッドを有し、車両の非回転部に固定されたブレーキキャリパと、
このブレーキキャリパを駆動させ、前記一対のブレーキパッドを前記円板部に向けて移動させるアクチュエータと、からなる構成とすることができる。
本発明の渦電流式減速装置は、永久磁石を用いた同期回転方式の減速装置であって、下記の顕著な効果を有する:
・装置の軸方向寸法を縮小できること;
・制動部材と永久磁石との隙間に異物が付着するのを防止できること;
・制動力を向上できること。
図1は、従来の同期回転方式の減速装置の構成例を示す縦断面図である。 図2Aは、本発明の第1実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、一部を断面で表した側面図を示す。 図2Bは、本発明の第1実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2AのA−A断面図である。 図2Cは、本発明の第1実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2AのB−B断面の展開図である。 図3Aは、本発明の第2実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、一部を断面で表した側面図を示す。 図3Bは、発明の第2実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図3AのC−C断面の展開図を示す。 図4は、本発明の第3実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2AのA−A断面に相当する断面図である。 図5Aは、本発明の第4実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2AのA−A断面に相当する断面図である。 図5Bは、本発明の第4実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2AのB−B断面に相当する展開図を示す。 図6は、本発明の第5実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図3AのC−C断面に相当する展開図である。 図7は、実施例1の数値解析結果をまとめた図である。 図8は、実施例2の数値解析結果をまとめた図である。 図9は、実施例3の数値解析結果をまとめた図である。
以下に、本発明の渦電流式減速装置の実施形態について詳述する。
<第1実施形態>
図2A〜図2Cは、本発明の第1実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2Aは一部を断面で表した側面図を示し、図2Bは図2AのA−A断面図を示し、図2Cは図2AのB−B断面の展開図を示す。図2A〜図2Cに示す第1実施形態の減速装置はドラム型に相当するものであり、永久磁石5を保持する磁石保持部材4と、この磁石保持部材4の全体を包囲する制動部材1とを備える。
制動部材1は、磁石保持部材4を包囲しつつ、回転軸11に対し回転可能に構成される。具体的には、制動部材1は、磁石保持部材4の軸方向の前後に配置された一対からなるドーナツ形の円板部1a、1bと、これらの円板部1a、1b同士の外周部を連結する円筒部1cとから構成される。各円板部1a、1bは、回転軸11と一体化されたスリーブ13に軸受15a、15bを介して支持される。これにより制動部材1は、一対の円板部1a、1b及び円筒部1cが一体で、回転軸11に対し自由に回転が可能になる。図2Aでは、前側の円板部1aと円筒部1cが一体成形され、これが後側の円板部1bとボルト等によって一体化された態様を示している。
制動部材1、特に円筒部1cの材質は、導電性材料であって、その中でも炭素鋼や鋳鉄等の強磁性材料や、フェライト系ステンレス鋼等の弱磁性材料といった磁性材料、又はアルミニウム合金や銅合金等の非磁性材料である。もっとも、これらの材料を制動部材1の母材とし、更に制動効率を向上させるため、円筒部1cの内周面の表層部は、銅や銅合金等の良導電性材料であるのがより好ましい。
制動部材1には、その外周に円筒部1cと一体成形された放熱フィン2が設けられる。なお、制動部材1の円板部1a、1bにおいて、放熱フィン2は、後述する摩擦ブレーキの摩擦部材の配設に支障が無い領域、例えば、外面の内周部の領域に設けてもよい。この放熱フィン2は、制動部材1そのものを冷却する役割を担う。
第1実施形態では、磁石保持部材4は、その外周に制動部材1の円筒部1cと同心状の磁石保持リング4aを有し、回転軸11と一体で回転するように構成される。具体的には、管状の連結軸12が回転軸11と同軸上にボルト等によって固定され、磁石保持部材4は、その連結軸12に圧入されたスリーブ13を介して連結軸12に固定されている。これにより、磁石保持部材4は回転軸11と一体で回転するようになる。
磁石保持部材4は、磁石保持リング4aの外周面に、円周方向にわたり複数の永久磁石5が取り付けられている。永久磁石5は、制動部材1における一対の円板部1a、1bそれぞれの内面、及び円筒部1cの内周面に対向し、磁極(N極、S極)の向きが回転軸11の円周方向、すなわち磁石保持部材4の円周方向であり、円周方向に隣接するもの同士で磁極が交互に異なるように配置される(図2B及び図2C参照)。
また、図2B及び図2Cに示すように、円周方向に隣接する永久磁石5同士の間には、永久磁石5に対する磁気回路を形成するために、磁性材を含む仕切り部材20が配置され、この仕切り部材20も磁石保持リング4aに保持されている。仕切り部材20は、円筒部1cの内周面に向けて永久磁石5よりも伸び出し、その外周側の先端面20bが円筒部1cの内周面に対し僅かな隙間を空けて近接している(図2B参照)。
更に、仕切り部材20は、その内周側の端部20aが永久磁石5の内周側の端部5aよりも外周側に配置されている(図2B参照)。すなわち、仕切り部材20は、永久磁石5の外周端の位置を始点とする内周側の径方向長さ(以下、「仕切り部材の径方向内周側長さ」ともいう)が、永久磁石5の径方向長さよりも短くなっている。図2Bには、永久磁石5と円筒部1cとの間の仕切り部材20を通じた磁束の流れを点線矢印で示している。図2Cには、永久磁石5と一対の円板部1a、1bそれぞれとの間の仕切り部材20を通じた磁束の流れを点線矢印で示している。
第1実施形態では、図2Bに示すように、仕切り部材20の形状は直方体であり、回転軸11の軸方向から見て矩形である。一方、永久磁石5の形状は楔形であり、回転軸11の軸方向から見て、その厚みは、外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなっている。永久磁石5及び仕切り部材20をそのような形状にすれば、磁石保持リング4a(磁石保持部材4)への永久磁石5及び仕切り部材20の取付けに際し、磁石保持リング4aの外周面に永久磁石5及び仕切り部材20を交互に配列し、最後に楔形の永久磁石5を打ち込むことにより、磁石保持リング4aに永久磁石5及び仕切り部材20を容易に固定することができる。
磁石保持部材4、特に磁石保持リング4aの材質は、永久磁石5に対する磁気回路を遮断するために、アルミニウムやオーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性材料である。もっとも、回転軸11へ接続される部分は非磁性材料でも磁性材料であっても良い。一方、仕切り部材20の材質は、永久磁石5に対する磁気回路を形成するために、炭素鋼や鋳鉄等の強磁性材料や、フェライト系ステンレス鋼等の弱磁性材料といった磁性材料である。
図2A〜図2Cに示す減速装置は、制動時に制動部材1を静止させる摩擦ブレーキを備える。この摩擦ブレーキは、制動部材1の外周部、すなわち円板部1a、1bそれぞれの外面の外周部を間に挟む摩擦部材としてのブレーキパッド8a、8bを有するブレーキキャリパ7と、このブレーキキャリパ7を駆動させる電動式直動アクチュエータ9と、から構成される。
ブレーキキャリパ7は、前後で一対のブレーキパッド8a、8bを有しており、ブレーキパッド8a、8bの間に制動部材1を配置し所定の隙間を設けて挟んだ状態で、バネを搭載したボルト等によりブラケット17に付勢支持される。このブラケット17は、車両の非回転部に取り付けられる。
また、ブラケット17は、回転軸11と一体化されたスリーブ13に軸受18を介して回転可能に支持される。もっとも、車両のトランスミッションの出力側に搭載される減速装置の場合、ブラケット17は、トランスミッションカバー(非回転部)に固定すれば、軸受18を介して支持する必要はない。トランスミッションカバーが軸受を介して支持されているからである。
ブレーキキャリパ7には、アクチュエータ9がボルト等で固定される。アクチュエータ9は、電動モータ10によって駆動し、電動モータ10の回転運動を直線運動に変換して後側のブレーキパッド8bを後側の円板部1bに向け直線移動させる。これにより、後側のブレーキパッド8bが後側の円板部1bを押圧し、これに伴う反力の作用で、前側のブレーキパッド8aが前側の円板部1aに向け移動し、その結果、制動部材1を前後のブレーキパッド8a、8bで強力に挟み込む。
このような構成の第1実施形態の減速装置では、非制動時は、摩擦ブレーキを作動させない状態にある。このとき、回転軸11と一体で磁石保持部材4が回転するのに伴い、制動部材1が、これを構成する円筒部1cと、磁石保持部材4(磁石保持リング4a)で保持する永久磁石5(厳密には、仕切り部材20)との磁気吸引作用(制動部材1が磁性材料の場合)又は磁界の作用(制動部材1が非磁性材料の場合)により、磁石保持部材4と同期して回転する。このため、円筒部1c(制動部材1)と、磁石保持リング4aにおける永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じないことから、制動力は発生しない。
一方、制動時は、摩擦ブレーキを作動させ、制動部材1が摩擦部材であるブレーキパッド8a、8bによって挟み込まれ、これにより制動部材1の回転が停止し、制動部材1が静止する。磁石保持部材4が回転している際に制動部材1のみが静止すると、円筒部1c(制動部材1)と、磁石保持部材4における永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じるため、永久磁石5から仕切り部材20を経た磁界の作用により、円筒部1cの内周面に渦電流が発生する。すると、制動部材1の円筒部1cの内周面に生じた渦電流と永久磁石5から仕切り部材20を経た磁束密度との相互作用によりフレミングの左手の法則に従い、回転する磁石保持部材4に回転方向と逆向きの制動力が発生し、磁石保持部材4を介して回転軸11の回転を減速させることができる。
第1実施形態の減速装置によれば、前記図1に示す従来の減速装置で必要とされる別個独立したブレーキディスク106が無くても、制動時に制動部材1に直接摩擦部材を押し付けて制動部材1を静止させることが可能であるため、装置の軸方向寸法を縮小することができる。しかも、磁石保持部材4の全体が制動部材1によって包囲されているため、制動部材1と磁石5との隙間が外部から隔離され、その隙間に外部から異物が侵入するのを防止でき、ひいては、その隙間への異物の付着を防止することが可能となる。これにより、異物付着に起因した制動部材1や磁石5の損傷を防止することができ、制動部材1と磁石5との円滑な相対回転を確保することができる。
また、第1実施形態では、制動部材1を構成する円板部1a、1b及び円筒部1cのうちで回転中心から離れた円筒部1cの内周面に渦電流が発生するため、大きい制動トルクがもたらされる。更に、第1実施形態では、仕切り部材20の内周側の端部20aが永久磁石5の内周側の端部5aよりも外周側に配置されているので、制動力が一層向上する。その理由を以下に示す。
永久磁石5からの磁束は、永久磁石5のN極に接触した一方の仕切り部材20を経て外部空間に漏れ、その一方の仕切り部材20に永久磁石5を介して隣接した他方の仕切り部材20を経て永久磁石5のS極に戻る。上記した減速装置においては、仕切り部材20の外周側の先端面20bから漏れた磁束は制動部材1の円筒部1cに導かれ、この円筒部1cに渦電流を発生させて制動力をもたらす(図2B参照)。一方、仕切り部材20の内周側の先端面からは磁束は漏れない。非磁性材料からなる磁石保持リング4aが存在するからである。仕切り部材20の前後側部それぞれの先端面20cからは、制動部材1の円板部1a、1bそれぞれに向けて磁束が漏れ、この磁束は、永久磁石5を介して隣接した仕切り部材20に戻る(図2C参照)。
ここで、例えば、仕切り部材20の内周側の端部20aが永久磁石5の内周側の端部5aよりも内周側に配置されている場合、すなわち、仕切り部材20の径方向内周側長さが永久磁石5の径方向長さよりも長い場合、永久磁石5からの磁束は、永久磁石5の内周側の端部5aより内周側に超えた仕切り部材20の内周側の端部20aから余計に漏れてしまう。このため、永久磁石5から漏れる磁束密度が全体として減少し、その結果、制動部材1の円筒部1cに導かれる磁束密度も減少することから、制動力の向上が制限される。
これに対し、第1実施形態の減速装置では、仕切り部材20の内周側の端部20aが永久磁石5の内周側の端部5aよりも外周側に配置されているので、永久磁石5の内周側の端部5aより内周側の領域から余計に磁束が漏れることがない。従って、永久磁石5から漏れる磁束密度が全体として増加し、その結果、制動部材1の円筒部1cに導かれる磁束密度も増加することから、制動力が一層向上する。
<第2実施形態>
図3A及び図3Bは、本発明の第2実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図3Aは一部を断面で表した側面図を示し、図3Bは図3AのC−C断面の展開図を示す。図3A及び図3Bに示す第2実施形態の減速装置は、前記図2A〜図2Cに示す第1実施形態の減速装置の構成を基本とするものであるが、前記第1実施形態とは以下の点で相違する。
第2実施形態の減速装置では、前記第1実施形態と同様に、仕切り部材20は、円筒部1cの内周面に向けて永久磁石5よりも伸び出している。これに加え、図3A及び図3Bに示すように、仕切り部材20は、一対の円板部1a、1bそれぞれの内面に向けて永久磁石5よりも伸び出し、その前後側部それぞれの先端面20cが円板部1a、1bそれぞれの内面に対し僅かな隙間を空けて近接している。図3Bには、永久磁石5と一対の円板部1a、1bそれぞれとの間の仕切り部材20を通じた磁束の流れを点線矢印で示している。
第2実施形態の場合、制動部材1の円板部1a、1bの材質は、導電性材料であって、その中でも炭素鋼や鋳鉄等の強磁性材料や、フェライト系ステンレス鋼等の弱磁性材料といった磁性材料、又はアルミニウム合金や銅合金等の非磁性材料である。もっとも、これらの材料を制動部材1の母材とし、更に制動効率を向上させるため、円板部1a、1bにおいて、磁石5と対向する内面の表層部は、銅や銅合金等の良導電性材料であるのがより好ましい。
このような構成の第2実施形態の減速装置では、非制動時は、回転軸11と一体で磁石保持部材4が回転するのに伴い、制動部材1が、これを構成する円板部1a、1b及び円筒部1cと、磁石保持部材4(磁石保持リング4a)で保持する永久磁石5(厳密には、仕切り部材20)との磁気吸引作用(制動部材1が磁性材料の場合)又は磁界の作用(制動部材1が非磁性材料の場合)により、磁石保持部材4と同期して回転する。このため、制動部材1と、磁石保持リング4aにおける永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じないことから、制動力は発生しない。
一方、制動時は、摩擦ブレーキの作動により制動部材1のみが静止するのに伴い、円板部1a、1b及び円筒部1c(制動部材1)と、磁石保持部材4における永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じるため、永久磁石5から仕切り部材20を経た磁界の作用により、円板部1a、1bそれぞれの内面及び円筒部1cの内周面に渦電流が発生する。すると、制動部材1の円板部1a、1bそれぞれの内面及び円筒部1cの内周面に生じた渦電流と永久磁石5から仕切り部材20を経た磁束密度との相互作用により、回転する磁石保持部材4に回転方向と逆向きの制動力が発生し、磁石保持部材4を介して回転軸11の回転を減速させることができる。
従って、第2実施形態の減速装置でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。
特に、第2実施形態では、渦電流が制動部材1の円板部1a、1bの内面それぞれ及び円筒部1cの内周面に発生するため、制動力が3面からもたらされ、制動効率を更に向上させることが可能である。
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図2AのA−A断面に相当する断面図である。図4に示す第3実施形態の減速装置は、前記図2A〜図2Cに示す第1実施形態の減速装置、並びに図3A及び図3Bに示す第2実施形態の減速装置の構成の一部を変形したものである。
第3実施形態の減速装置では、図4に示すように、永久磁石5の形状は直方体であり、回転軸11の軸方向から見て矩形である。一方、仕切り部材20の形状は楔形であり、回転軸11の軸方向から見て、その厚みは、外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなっている。永久磁石5及び仕切り部材20をそのような形状にすれば、磁石保持リング4a(磁石保持部材4)への永久磁石5及び仕切り部材20の取付けに際し、磁石保持リング4aの外周面に永久磁石5及び仕切り部材20を交互に配列し、最後に楔形の仕切り部材20を打ち込むことにより、磁石保持リング4aに永久磁石5及び仕切り部材20を容易に固定することができる。
前記第1、第2実施形態の場合、永久磁石5の形状が楔形であるため、その独特な形状を確保しつつ適切な磁力を保有するように永久磁石5を製作することは、必ずしも容易とは言えない。この点、第3実施形態では、永久磁石5の形状が単なる直方体であるため、永久磁石5の製作が容易であるという利点がある。もっとも、第3実施形態の場合、仕切り部材20の形状が楔形であるが、仕切り部材20は磁力を保有するわけではないので、製作はそれほど難しくない。
勿論、第3実施形態の減速装置でも、前記第1、第2実施形態と同様の効果を奏する。
<第4実施形態>
図5A及び図5Bは、本発明の第4実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図5Aは図2AのA−A断面に相当する断面図を示し、図5Bは図2AのB−B断面に相当する展開図を示す。図5A及び図5Bに示す第4実施形態の減速装置は、前記図2A〜図2Cに示す第1実施形態の減速装置の構成を基本とした前記図4に示す第3実施形態の減速装置の構成の一部を変形したものである。
第4実施形態の減速装置では、図5A及び図5Bに示すように、永久磁石5の形状は直方体であり、回転軸11の軸方向から見て矩形である。一方、仕切り部材20の形状は全体として楔形であり、回転軸11の軸方向から見て、その厚みは、外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなっている。特に、第4実施形態では、仕切り部材20は、円周方向に隣接する永久磁石5それぞれに接触する磁性材の薄板部21と、外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる硬質樹脂の楔部22と、から構成される。薄板部21は、円筒部1cの内周面に向けて永久磁石5よりも伸び出し、その外周側の先端面21bが円筒部1cの内周面に対し僅かな隙間を空けて近接している。図5Aには、永久磁石5と円筒部1cとの間の薄板部21を通じた磁束の流れを点線矢印で示している。図5Bには、永久磁石5と一対の円板部1a、1bそれぞれとの間の薄板部21を通じた磁束の流れを点線矢印で示している。
仕切り部材20を構成する薄板部21は折り曲げ加工が可能であり、その材質は、永久磁石5に対する磁気回路を形成するために、炭素鋼や鋳鉄等の強磁性材料や、フェライト系ステンレス鋼等の弱磁性材料といった磁性材料である。一方、仕切り部材20を構成する楔部22の材質は、硬質樹脂である限り特に限定はなく、例えば、自動車部品に用いられているPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂、PVC(塩化ビニル樹脂)、PMMA(メタクリル樹脂)などの汎用樹脂を用いることができる。このような構成の仕切り部材20は、素材の薄板を楔形に折り曲げ加工し、その内側に硬質樹脂を充填することにより、容易に製作することができる。
前記第1実施形態の構成を基本とした前記第3実施形態の場合、仕切り部材20が一体の磁性材料からなるため、重量が重くなるという不都合がある。この点、第4実施形態では、仕切り部材20が、磁性材料からなる薄板部21と、硬質樹脂からなる楔部22と、から構成されるため、軽量化を実現できるという利点がある。
勿論、第4実施形態の減速装置でも、前記第1、第3実施形態と同様の効果を奏する。
<第5実施形態>
図6は、本発明の第5実施形態である同期回転方式の減速装置の全体構成を示す模式図であり、図3AのC−C断面に相当する展開図である。図6に示す第5実施形態の減速装置は、前記図3A及び図3Bに示す第2実施形態の減速装置の構成を基本とした前記図4に示す第3実施形態の減速装置の構成の一部を変形したものである。
第5実施形態の減速装置では、前記第4実施形態と同様に、仕切り部材20を構成する薄板部21は、円筒部1cの内周面に向けて永久磁石5よりも伸び出している。これに加え、図6に示すように、薄板部21は、一対の円板部1a、1bそれぞれの内面に向けて永久磁石5よりも伸び出し、その前後側部それぞれの先端面21cが円板部1a、1bそれぞれの内面に対し僅かな隙間を空けて近接している。図6には、永久磁石5と一対の円板部1a、1bそれぞれとの間の薄板部21を通じた磁束の流れを点線矢印で示している。
第5実施形態の減速装置では、前記第4実施形態と同様の効果に加え、前記第2実施形態と同様の効果を奏する。
その他本発明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、制動時に摩擦部材が押し付けられる円板部(制動部材)の外面の外周部には、不用意な摩耗を低減させるために、熱処理や表面処理を施して表面硬度を高めたり、耐摩耗性に優れた鋼板を貼り付けたりしてもよい。制動部材がアルミニウム合金からなる場合であれば、耐摩耗性を向上する目的で陽極酸化被膜を表面に設けても良い。
また、制動時に制動部材を静止させる摩擦ブレーキとしては、電動式直動アクチュエータを駆動源とし、ブレーキパッドを制動部材(円板部)の外面に押し付けるものに限らず、電磁石を利用した電磁クラッチ機構によって、クラッチ板を摩擦部材として制動部材の外面に押し付けるものであってもよいし、ドラムブレーキ機構によって、ブレーキシューを摩擦部材として制動部材(円筒部)の外周面に押し付けるものであっても構わない。
本発明の効果を確認するため、下記の実施例1〜3の数値解析を実施した。
<実施例1>
実施例1は、前記図2A〜図2Cに示す第1実施形態の減速装置の構成を前提とする。すなわち、仕切り部材の形状が直方体であって、制動部材の円筒部のみから制動力がもたらされる構成を前提とする。この構成を前提にし、永久磁石の外周端の位置を始点とする仕切り部材の内周側の径方向長さ(仕切り部材の径方向内周側長さ)を種々変更した条件で数値解析を実施して、各条件での制動力を導き出した。その際、永久磁石の径方向長さを40.5mmと一律にし、回転軸の回転数が1200rpmであるときの制動力を評価した。
各条件での制動力の評価にあたり、仕切り部材の径方向内周側長さは、永久磁石の径方向長さに対する比率で整理した。この仕切り部材の径方向内周側長さの比は、仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さと同一の条件では1であり、仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さよりも短い条件では1よりも小さく、仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さよりも長い条件では1よりも大きくなることを意味する。
また、各条件での制動力は、仕切り部材の径方向内周側長さの比が1である条件、すなわち仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さと同一の条件での制動力(350Nm)に対する比率で整理した。この制動力の比は、1よりも大きいほど制動力がより向上し、1よりも小さいほど制動力がより低下することを意味する。
図7は、実施例1の数値解析結果をまとめた図である。仕切り部材の形状が直方体状であって、制動部材の円筒部のみから制動力がもたらされる構成の場合、図7に示すように、仕切り部材の径方向内周側長さの比が1よりも小さい条件、すなわち、仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さよりも短い条件で制動力が向上する。特に、仕切り部材の径方向内周側長さの比が0.88程度であるとき、制動力の向上のピークが存在する。
図7に示す結果から、実施例1の場合、制動力を向上させるには、仕切り部材の径方向内周側長さの比は、0.75〜0.95の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、0.82〜0.90の範囲内である。
<実施例2>
実施例2は、前記図3A及び図3Bに示す第2実施形態の減速装置の構成を基本とした前記図4に示す第3実施形態の減速装置の構成を前提とする。すなわち、仕切り部材の形状が楔形であって、制動部材の円筒部のみならず一対の円板部からも制動力がもたらされる構成を前提とする。この構成を前提にし、上記の実施例1と同様に、仕切り部材の径方向内周側長さを種々変更した条件で数値解析を実施して、制動力を評価した。
図8は、実施例2の数値解析結果をまとめた図である。仕切り部材の形状が楔形であって、制動部材の円筒部及び一対の円板部から制動力がもたらされる構成の場合、図8に示すように、仕切り部材の径方向内周側長さの比が1よりも小さい条件、すなわち、仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さよりも短い条件で制動力が向上する。特に、仕切り部材の径方向内周側長さの比が0.95程度であるとき、制動力の向上のピークが存在する。
図8に示す結果から、実施例2の場合、制動力を向上させるには、仕切り部材の径方向内周側長さの比は、0.88〜1.00の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、0.93〜0.97の範囲内である。
<実施例3>
実施例3は、前記図6に示す第5実施形態の減速装置の構成を前提とする。すなわち、仕切り部材が薄板部と楔部とからなり、制動部材の円筒部及び一対の円板部から制動力がもたらされる構成を前提とする。この構成を前提にし、上記の実施例1と同様に、仕切り部材の径方向内周側長さを種々変更した条件で数値解析を実施して、制動力を評価した。
図9は、実施例3の数値解析結果をまとめた図である。仕切り部材が薄板部と楔部とからなり、制動部材の円筒部及び一対の円板部から制動力がもたらされる構成の場合、図9に示すように、仕切り部材の径方向内周側長さの比が1よりも小さい条件、すなわち、仕切り部材の径方向内周側長さが永久磁石の径方向長さよりも短い条件で制動力が向上する。特に、仕切り部材の径方向内周側長さの比が0.96程度であるとき、制動力の向上のピークが存在する。
図9に示す結果から、実施例3の場合、制動力を向上させるには、仕切り部材の径方向内周側長さの比は、0.90〜1.00の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、0.93〜0.97の範囲内である。
本発明の渦電流式減速装置は、あらゆる車両の補助ブレーキとして有用である。
1:制動部材、 1a、1b:円板部、 1c:円筒部、 2:放熱フィン、
4:磁石保持部材、 4a:磁石保持リング、
5:永久磁石、 5a:永久磁石の内周側の端部、
7:ブレーキキャリパ、 8a、8b:ブレーキパッド、
9:電動式直動アクチュエータ、 10:電動モータ、
11:回転軸、 12:連結軸、 13:スリーブ、
15a、15b:軸受、 17:ブラケット、 18:軸受、
20:仕切り部材、 20a:仕切り部材の内周側の端部、
20b:仕切り部材の外周側の先端面、 20c:仕切り部材の側部の先端面、
21:薄板部、
21b:薄板部の外周側の先端面、 21c:薄板部の側部の先端面、
22:楔部

Claims (7)

  1. 車両の回転軸に固定され、複数の永久磁石を円周方向にわたり保持した磁石保持部材と、
    前記磁石保持部材を包囲するように一対の円板部及びこれらの円板部同士の外周部を連結する円筒部からなり、前記回転軸に回転可能に支持された制動部材と、
    制動時に前記制動部材に摩擦部材を押し付けて前記制動部材を静止させる摩擦ブレーキと、を備え、
    前記永久磁石は、前記円筒部の内周面及び前記一対の円板部それぞれの内面に対向し、磁極の向きが円周方向であって、円周方向に隣接するもの同士で磁極が交互に異なって配置されており、
    前記磁石保持部材は、円周方向に隣接する前記永久磁石同士の間に、前記円筒部の内周面に向けて前記永久磁石よりも伸び出した磁性材を含む仕切り部材を備え、
    前記仕切り部材の内周側の端部が前記永久磁石の内周側の端部よりも外周側に配置されている、渦電流式減速装置。
  2. 請求項1に記載の渦電流式減速装置において、
    前記仕切り部材の形状は直方体であり、
    前記永久磁石の形状は外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる楔形である、渦電流式減速装置。
  3. 請求項1に記載の渦電流式減速装置において、
    前記永久磁石の形状は直方体であり、
    前記仕切り部材の形状は外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる楔形である、渦電流式減速装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の渦電流式減速装置において、
    前記仕切り部材は、前記一対の円板部それぞれの内面に向けて前記永久磁石よりも伸び出している、渦電流式減速装置。
  5. 請求項1に記載の渦電流式減速装置において、
    前記永久磁石の形状は直方体であり、
    前記仕切り部材は、円周方向に隣接する前記永久磁石それぞれに接触する磁性材の薄板部と、外周側の端部が厚く内周側の端部に至るに従って次第に薄くなる硬質樹脂の楔部と、からなる、渦電流式減速装置。
  6. 請求項5に記載の渦電流式減速装置において、
    前記薄板部は、前記一対の円板部それぞれの内面に向けて前記永久磁石よりも伸び出している、渦電流式減速装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の渦電流式減速装置において、
    前記摩擦ブレーキは、
    前記摩擦部材として前記一対の円板部を間に挟む一対のブレーキパッドを有し、車両の非回転部に固定されたブレーキキャリパと、
    このブレーキキャリパを駆動させ、前記一対のブレーキパッドを前記円板部に向けて移動させるアクチュエータと、からなる、渦電流式減速装置。
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