JP6197404B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器に係わる。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は液晶表示装置に比べ視野角依存性が少ない、コントラスト比が高い、薄膜化が可能等の利点を有している。
また、近年では、有機EL素子を利用した携帯ディスプレイや携帯背面ディスプレイ等も積極的に市場投入されている。これらの有機EL素子を利用したディスプレイは、視認性の高さから、大型テレビへの市場投入が期待され、一部投入計画が報道されるなどフラットパネルディスプレイでの市場投入に拍車がかかってきている。
また、有機EL素子は自己発光型光源であり、面発光光源であるため、次世代照明として脚光をあびており、有機EL照明として各所で開発がなされている。
有機EL素子は、RGBそれぞれの発光材料を電極間内に形成し、RGBの発光出力を駆動又は有機層の厚さを含めた層設計を施すことで、発光色や発光色強度を自由に変えることが可能となる。このため、照明用途として要求される白色として、例えば、色温度2000Kや3000Kなどの電球色から、5000Kや6000Kなどの昼白色まで、自由に形成することが可能である。さらに、燐光材料を使用することで、LEDや蛍光灯と同等、又は、それを超える発光効率も可能であり、薄型化照明としての実現が期待されている。
有機EL素子、一般的には透明ガラス基板、又は、透明フレキシブル基板上に透明電極を形成し、この透明電極上に発光層を形成する構造が取られる。しかし、発光機能層で発光したフォトンの20%程度しか基板外に取り出すことができていない。そのため、例えば、透明ガラス基板の光取り出し側の面に、散乱層を有するシートやプリズムシート等を設け、光取り出し効率を向上させることが知られている。
このように、有機EL素子では、透明基板内に閉じ込められる光を外部に取り出すための、取り出し効率向上フィルムが使用されている。例えば、発光機能層に閉じ込められる導波光を取り出すために、透明電極と透明基板又はフレキシブル基板の間に、散乱層等の光取り出しを向上させるための中間層を形成し、外部取り出し効率を向上し、発光効率を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、取り出し効率を増加するべく光散乱層を用い、さらに散乱層内バインダを樹脂中で凝集することで、部分的に光散乱粒子の含有比率を変えることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−335301号公報 特開2009−76452号公報
有機EL照明においては、照明用途に必要なルーメンを得るため、有機EL素子を大型化したり、発光輝度を向上したりする必要がある。パネルサイズを大型化した場合、陰極と陽極とのシート抵抗差や、素子の発熱により、発光面内に輝度分布を生じてしまう。このため、面内発光輝度分布の指標である均斉度が低下し、有機EL素子の表示品質が低下してしまう。
上述した問題の解決のため、本発明においては、表示品質を向上することが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、電子機器を提供するものである。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極とに挟持された発光機能層と、光散乱粒子とバインダとを有し、光散乱粒子の粒子密度が面内において相対的に異なるように設けられている光散乱層とを備える。
また、本発明の電子機器は、上記有機エレクトロルミネッセンス素子を備える。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、光散乱粒子を備える光散乱層を備える。そして、この光散乱層は、面内において相対的に光散乱粒子の粒子密度が異なるように形成されている。光散乱層は、光散乱粒子の粒子密度が高いほど発光機能層からの光の取り出し効率が向上する。このため、有機エレクトロルミネッセンス素子の光取り出し効率を、光散乱層の面内の光散乱粒子の粒子密度により、領域毎に調整することができる。従って、有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度分布を補正することができ、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、この有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器の表示品質を向上することができる。
本発明によれば、表示品質の向上が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子、及び、電子機器を提供することができる。
第1実施形態の有機EL素子の概略構成を示す図(斜視図)である。 図1に示す有機EL素子のA−A線断面図である。 図1に示す有機EL素子のB−B線断面図である。 図1に示す有機EL素子の底面図である。 第2実施形態の有機EL素子の底面図である。 第3実施形態の有機EL素子の底面図である。 第4実施形態の有機EL素子の底面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.有機エレクトロルミネッセンス素子(第1実施形態)
2.有機エレクトロルミネッセンス素子(第2実施形態)
3.有機エレクトロルミネッセンス素子(第3実施形態)
4.有機エレクトロルミネッセンス素子(第4実施形態)
〈1.有機エレクトロルミネッセンス素子(第1実施形態)〉
[有機エレクトロルミネッセンス素子の構成]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子と記す)の具体的な実施の形態について説明する。
図1に、第1実施形態の有機EL素子の概略構成図(斜視図)を示す。また、図2に、図1に示す有機EL素子のA−A線断面図を示す。図3に、図1に示す有機EL素子のB−B線断面図を示す。さらに、図4に、図1に示す有機EL素子の底面図を示す。
図1〜4に示す有機EL素子10は、支持基板13上に搭載されている。
有機EL素子10は、発光ユニット11と、光散乱層12とを有する。また、発光ユニット11と、光散乱層12との間には、光散乱層12の表面の粗さを低減するための平滑層19が設けられている。
発光ユニット11は、陽極となる第1電極16、陰極となる第2電極18、及び、第1電極16と第2電極18との間に挟持された発光機能層17から構成されている。光散乱層12は、発光ユニット11の発光機能層17からの光を取り出す側の電極の外側に設けられている。本例の有機EL素子10は、支持基板13側から発光光を取り出す構成であるため、光散乱層12は、陽極となる第1電極16と、支持基板13との間に設けられている。また、支持基板13及び第1電極16は透明部材により形成されている。
また、支持基板13上には、有機EL素子10の陽極に接続される第1電極配線14、有機EL素子10の陰極に接続される第2電極配線15、及び、各電極や配線等を絶縁するための絶縁層21が形成されている。本例の有機EL素子10では、第1電極16と第2電極配線15との短絡を防ぐために、有機EL素子10の側面から露出する第1電極16の端部を覆う絶縁層21を有している。
なお、図1では、発光機能層17、第1電極16及び第2電極18を単層の発光ユニット11として示し、図2及び図3では、発光ユニット11の各構成をそれぞれの層として示している。また、図1では、平滑層19や絶縁層21、第2電極配線15の一部の構成を省略している。
さらに、発光ユニッ11トと光散乱層12との間に形成される平滑層19は必要に応じて設ければよく、有機EL素子10を構成する必須の構成ではない。
[有機EL素子の構成層]
有機EL素子10は、対となる電極と、電極間に発光性を有する発光機能層と、光取り出し側の電極側に設けられた光散乱層12とを備える構成である。
電極は第1電極と第2電極とからなり、それぞれ有機EL素子の陰極又は陽極を構成する。発光機能層は、少なくとも発光層を有し、さらに、発光層と電極との間に他の層を備えていてもよい。光散乱層12は、後述の構成である。
有機EL素子10の電極及び発光機能層の代表的な素子構成としては、以下の構成を上げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除く層が、発光性を有する発光機能層である。
(発光機能層)
上記構成において、発光層は、単層または複数層で構成される。発光層が複数の場合は、各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
また、必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層)や電子注入層(陰極バッファー層)等を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層)や正孔注入層(陽極バッファー層)等を設けてもよい。
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層である。電子輸送層には、広い意味で電子注入層、及び、正孔阻止層も含まれる。また、電子輸送層は、複数層で構成されていてもよい。
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には、広い意味で正孔注入層、及び、電子阻止層も含まれる。また、正孔輸送層は、複数層で構成されていてもよい。
(タンデム構造)
また、有機EL素子10は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。この場合においても、光散乱層12は、有機EL素子10の最も光取り出し側の電極の外側に設けられる。また、光散乱層12は、複数の発光層の合計の輝度分布に対応して、粒子密度が調整されていてもよく、いずれかの層の発光層の輝度分布に合わせて、粒子密度が調整されていてもよい。
発光ユニットとは、上記有機EL素子10の構成において、発光性を有する発光機能層に該当する。発光ユニットとしては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成である。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
(1)陽極/第1発光機能層/中間層/第2発光機能層/陰極
(2)陽極/第1発光機能層/中間層/第2発光機能層/中間層/第3発光機能層/陰極
ここで、上記第1発光機能層、第2発光機能層及び第3発光機能層は、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられる。また、上記第1発光機能層、第2発光機能層及び第3発光機能層は、全て同じであっても、異なっていてもよい。また、2つの発光機能層が同じであり、残る1つの発光機能層が異なっていてもよい。
また、各発光機能層は直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよい。中間層は、例えば、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、又は、中間絶縁層等から構成され、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・錫酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiO、VO、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、これらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6,337,492号、米国特許第7,420,203号、米国特許第7,473,923号、米国特許第6,872,472号、米国特許第6,107,734号、米国特許第6,337,492号、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号、特開2006−24791号、特開2006−49393号、特開2006−49394号、特開2006−49396号、特開2011−96679号、特開2005−340187号、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号、特開2009−076929号、特開2008−078414号、特開2007−059848号、特開2003−272860号、特開2003−045676号、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、これらに限定されない。
[光散乱層]
有機EL素子10において、光散乱層12は、光散乱粒子12Aと、この光散乱粒子12Aを保持するためのバインダとからなる。
光散乱層12は、光散乱粒子12Aの粒子密度が、面内において相対的に異なるように設けられている。具体的には、光散乱層12は、発光層の輝度が低い領域に光散乱粒子12Aの粒子密度が高く、輝度が高い位置の光散乱粒子12Aの粒子密度が低い。なお、ここで粒子密度とは、光散乱層12中の光散乱粒子12Aの体積%である。
光散乱層12は、面内において粒子密度が0%から80%の間で調整されていることが好ましい。
また、光散乱層12において、平均粒子密度は、50%以上70%以下とすることが好ましい。
光散乱層12において、面内の粒子密度の差は、10%以上とすることが好ましい。また、面内の粒子密度の差は、70%以下とすることが好ましい。また、この粒子密度の傾斜は、数%/mm程度、または数十%/cm程度とすることが好ましい。
光散乱層12は、200nm〜1μmの厚さで形成することが好ましい。
(光散乱粒子)
光散乱層12に用いる光散乱粒子12Aとしては、光透過性を有する材料からなる透明粒子を用いることができる。例えば、TiO、SiO、ZrO、Al、Ta、ZnO、Sb、ZrSiO、ゼオライト、ITO等の酸化物、金属粒子、及び、これらの多孔性物質やこれらを主成分とする無機粒子、シリカ、フッ化樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び、シリコーン樹脂等の有機粒子、並びに、これらをコーティングした粒子等を用いることができる。
光散乱粒子12Aの粒径としては、100nm〜700nmとすることが好ましい。異なる粒径の光散乱粒子12Aを複数用いることもできる。
(バインダ)
光散乱層12に用いるバインダとしては、光透過性を有し、光散乱粒子12A同士を接合する能力を有する材料を用いることができる。例えば、SiO、及び、その他の無機材料、有機樹脂材料、並びに、これらを混合した材料を用いることができる。
また、シリケート系のアルコキシドを反応させたシリコーン樹脂や、ポリシロキサンからなるシリカ多孔質体を用いることもできる。
有機樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、及び、その他の熱可塑性樹脂、並びに、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体を用いることができる。
(屈折率)
光散乱層12は、例えば、光散乱層12の屈折率としてn=1.7〜2.2、光散乱粒子12Aの屈折率がn=1.5〜2.5、バインダの屈折率がn=1.45〜1.7であることが好ましい。
一般的に、有機EL素子10が搭載される支持基板13の屈折率は、n=1.4〜1.6程度である。光散乱層12は、支持基板13よりも屈折率が高い方が好ましい。
(光散乱層12の製造方法)
光散乱層12は、光散乱粒子12Aを分散させたバインダを、光散乱層12の形成面、例えば図1に示す有機EL素子10であれば、支持基板13上に塗布することで形成する。
例えば、光散乱粒子12Aを分散させたバインダを、インクジェット法を用いて塗布することで、光散乱層12を形成することができる。このとき、光散乱粒子12Aの分散量や、分散される光散乱粒子12Aの粒径が異なる複数のバインダを準備し、光散乱層12の粒子密度に応じて塗布するバインダの種類を変えることで、光散乱層12の粒子密度を調整することができる。
また、光散乱粒子12Aを含むバインダと、光散乱粒子12Aを含まないバインダとを準備し、それぞれのバインダのインクジェットから噴出量を調整することで、光散乱層12の粒子密度を調整することができる。
なお、光散乱層12の形成には、面内の光散乱粒子12Aの充填率を変えることができる方法であれば、上述のインクジェット法以外にも、スピン塗布法、印刷法等の方式を使用することもできる。
例えば、インクジェットはピエゾ方式のヘッドを用い、ヘッド部には加熱機構を有するインクジェットを使用することができる。バインダ塗布時の粘度を低減し、塗布形成しやすくするために、加熱機構により例えば80℃に加熱した状態で塗布することもできる。加熱温度は、使用するバインダ種類によって適切な温度にすることが望ましい。
光散乱層材料は、光散乱粒子とバインダとを、あらかじめバッファーで所望の散乱密度になるように配合する。そして、このバッファーで配合された光散乱層材料を塗布する。
また、バッファーに、更にサブバッファーを設けて、一方のサブバッファーに、光散乱粒子を90%、バインダを10%含んだ光散乱層材料を用意し、他方のサブバッファーに100%のバインダだけを用意する。そして、2つのサブバッファーからバッファーへ所望の比率の配合量になるよう制御しながら充填することで、バッファー内の光散乱粒子密度を制御することができる。
バッファーに充填された光散乱層材料は、散乱層として塗布されるが、パネル面内で光散乱粒子密度に傾斜をつける場合には、バッファー容量を小さくし、常に2つの混合液が形成されるような構造を有するバッファーを用いることが好ましい。
また、インクジェットプリンタヘッドとしては、使用する散乱粒子サイズにより、ヘッドの大きさや解像度を選択することができ、例えば、1ヘッドタイプで100ppi以上有するインクジェットプリンタヘッドを用いることができる。
上記方法によれば、光散乱粒子密度は0%から90%までの配合を自由に形成することが可能となる。
また、粒径の異なる複数の光散乱粒子を塗布する場合には、同様に複数のサブバッファーを用いて異なる粒径の光散乱粒子を有する光散乱層材料を用意し、これらをバッファー内で配合することができる。
なお、インクジェットとしては、上記ピエゾ方式のインクジェットヘッドに限らず、圧電方式、サーマル方式等の他の方式を用いることができる。
(粒子密度分布)
有機EL素子10において、光散乱層12の粒子密度が高い方が有機EL素子10からの光の取り出し効率が向上する。
また、有機EL素子10において、陽極と陰極電極とに顕著なシート抵抗差がある場合、注入電流密度が不均一となり、発光層の面内において輝度に差が発生する。
例えば、有機EL素子10として、第1電極16をITO等の金属酸化物の透明電極からなる陽極、第2電極18を金属等からなる陰極により構成した場合、シート抵抗の高い陽極(第1電極16)側に流れ込む電流密度が、シート抵抗の低い陰極(第2電極18)側から吸い出す電流密度よりも高くなる。このとき、シート抵抗の高い陽極側では、電流密度が高い部位近傍で輝度が上昇する。また、シート抵抗の低い陰極側においては輝度低下が発生してしまう。
具体的には、光取り出し側となる陽極側に、シート抵抗の高いITO等の透明電極が設けられるため、有機EL素子10の陽極(第1電極16)と陽極配線(第1電極配線14)との接続領域の近傍において電流密度が高くなりやすい。つまり、図4に示す領域Cにおいて、電流密度が高くなりやすい。
一方、透明性を要求されない陰極は、シート抵抗の低いアルミニウム等の金属により構成することができる。このため、陰極(第2電極18)と陰極配線(第2電極配線15)との接続領域の近傍においては、電流密度が低くなりやすい。つまり、図4に示す領域Dにおいて、電流密度が低くなりやすい。
この結果、電流密度が高くなりやすいITO等からなる第1電極16と第1電極配線14との接続領域の近傍である領域Cにおいて輝度が上昇し、電流密度が低くなりやすい第2電極18と第2電極配線15との接続領域の近傍である領域Dにおいて輝度が低下する。
従って、有機EL素子10では、相対的に、輝度が低下する第2電極18と第2電極配線15との接続領域の近傍において、光散乱層12の粒子密度を高くする。そして、輝度が上昇する第1電極16と第1電極配線14との接続領域の近傍において、光散乱層12の粒子密度を低くする。つまり、領域Dの粒子密度を高くし、領域Cの粒子密度を低くする。そして、発光機能層の電流密度や発光輝度に応じて、粒子密度の高い領域Dから粒子密度の低い領域Cに向けて粒子密度を傾斜させるように、光散乱層12の粒子密度を調整する。
例えば、第2電極配線15近傍の光散乱層12の粒子密度を80%とし、第1電極配線14近傍の光散乱層12の粒子密度を40%とする。そして、第2電極配線15近傍と、第1電極配線14近傍との間の領域は、40%から80%までの間で、第1電極配線14及び第2電極配線15からの距離に応じて粒子密度を調整する。
また、電流密度が最も高くなる位置から最も低くなる位置までの間で、電流密度が最も高くなる位置からの距離に応じて、粒子密度が低下するように密度の傾斜を設けてもよい。或いは、陽極配線からの距離に応じて粒子密度が低下するように密度の傾斜を設けてもよい。
このように、有機EL素子10では、光散乱層12の面内において、相対的に粒子密度の差を設けることにより、輝度均斉度を向上することができる。
輝度の低い領域の粒子密度を高くすることにより、光取り出し効率が向上し、有機EL素子10において、その部分の輝度が大きく上昇する。また、輝度の高い領域の粒子密度を低くすることにより、粒子密度を高くした部分に比べて、輝度の上昇が小さくなる。この結果、発光層に輝度分布が発生する場合にも、光散乱層12において輝度分布を補正することができ、有機EL素子10から取り出せる光の均一性を高めることができる。
上述のように、有機EL素子10では、光散乱層12の面方向において、相対的に粒子密度の差を設けることにより、輝度均斉度を向上することができる。
また、陽極に補助配線を形成することなく、輝度均斉度を向上することができ、コストの低減ならびに生産性を向上することが可能となる。
光散乱層12において、粒子密度(体積%)を相対的に変化させる方法は、特に限定されず、光散乱層12の粒子密度に変化を設けることができれば、その方法は特に問わない。
例えば、光散乱層12は、単位体積当たりの光散乱粒子12Aの数を調整することにより、粒子密度(体積%)を相対的に変化させることができる。また、粒径を変化させることにより、粒子密度(体積%)を相対的に変化させることができる。この2つの方法を組み合わせてもよい。
光散乱粒子12Aの粒径が同じ場合には、単位体積当たりの光散乱粒子12Aの数を大きくすることにより、粒子密度を大きくすることができる。
また、単位体積当たりの光散乱粒子12Aの数が同じ場合には、光散乱粒子12Aの径が大きい方が、粒子密度が大きくなる。このため、粒子密度を高くする領域に、粒径の大きな光散乱粒子12Aを分散させ、粒子密度を低くする領域に粒径の小さな光散乱粒子12Aを分散させることにより、粒子密度に差を設けることができる。
さらに、異なる粒径の光散乱粒子12Aを複数用いて光散乱層12の粒子密度を変化させる構成としてもよい。粒子密度の異なる複数の光散乱層12を積層することにより、光散乱層12の積層体を総合した粒子密度を変化させる構成としてもよい。
[平滑層]
光散乱層12上に発光ユニット11を形成する場合には、光散乱層12上に平滑層19を設けることが好ましい。光散乱層12は内部に光散乱粒子12Aを有するため、表面の平滑性が低い場合がある。このような平滑性の低い表面に有機EL素子10の電極を形成すると、平滑性の低下に起因するリーク電流の増加、素子不良等が発生するため好ましくない。
平滑層19は、光散乱層12の表面を平坦化することができる構成であれば特に限定されない。例えば、SiO、その他の無機材料、有機樹脂材料、及び、ハイブリッド材料を使用してもかまわない。
スピン塗布、インクジェット、印刷等他の方法を使用してもよく、また材料も異なる有機樹脂材料や無機材料またはハイブリッド材料を使用してもかまわない。
[発光層]
有機EL素子10に用いる発光層は、電極又は隣接層から注入される電子と正孔とが再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層である。発光層において、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の厚さの総和は、特に制限されず、形成する膜の均質性、発光時に必要とされる電圧、及び、駆動電流に対する発光色の安定性等の観点から決められる。発光層の厚さの総和は、例えば、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2nm〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5nm〜200nmの範囲に調整される。また、発光層の個々の膜厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2nm〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3nm〜150nmの範囲に調整される。
発光層は、発光ドーパント(発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう)と、ホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう)とを含有することが好ましい。
(1.発光ドーパント)
発光層に用いられる発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)、及び、リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう)が好ましく用いられる。これらのうち、少なくとも1層の発光層がリン光発光ドーパントを含有することが好ましい。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパントおよびデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができる。光ドーパントの濃度は、発光層の膜厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、発光層は、複数種の発光ドーパントが含まれていてもよい。例えば、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
有機EL素子10が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
有機EL素子10は、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
有機EL素子10における白色としては、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
(1−1.リン光発光性ドーパント)
リン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、25℃においてリン光量子収率が0.01以上の化合物である。発光層に用いるリン光ドーパントにおいて、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できる。発光層に用いるリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は、原理として二種挙げられる。
一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上で、キャリアの再結合によるホスト化合物の励起状態が生成される。このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つは、リン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーは、ホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
リン光ドーパントは、有機EL素子10の発光層に使用される公知の材料から適宜選択して用いることができる。
公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151 (1998)、Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Adv. Mater. 19, 739 (2007)、Chern. Mater. 17, 3532 (2005)、Adv. Mater. 17, 1059 (2005)、国際公開第2009100991号、国際公開第2008101842号、国際公開第2003040257号、米国特許公開第2006835469号、米国特許公開第20060202194号、米国特許公開第20070087321号、米国特許公開第20050244673号
Inorg. Chern. 40, 1704 (2001)、Chern. Mater. 16, 2480 (2004)、Adv. Mater. 16, 2003 (2004)、Angew. Chern. lnt. Ed. 2006, 45, 7800、Appl. Phys. Lett. 86, 153505 (2005)、Chern. Lett. 34, 592 (2005)、Chern. Commun. 2906 (2005)、Inorg. Chern. 42, 1248 (2003)、国際公開第2009050290号、国際公開第2002015645号、国際公開第2009000673号、米国特許公開第20020034656号、米国特許第7332232号、米国特許公開第20090108737号、米国特許公開第20090039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20060008670号、米国特許公開第20090165846号、米国特許公開第20080015355号、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許公開第20060263635号、米国特許公開第20030138657号、米国特許公開第20030152802号、米国特許第7090928号
Angew. Chern. lnt. Ed. 47, 1 (2008)、Chern. Mater. 18, 5119 (2006)、Inorg. Chern. 46, 4308 (2007)、Organometallics 23, 3745 (2004)、Appl. Phys. Lett. 74, 1361 (1999)、国際公開第2002002714号、国際公開第2006009024号、国際公開第2006056418号、国際公開第2005019373号、国際公開第2005123873号、国際公開第2005123873号、国際公開第2007004380号、国際公開第2006082742号、米国特許公開第20060251923号、米国特許公開第20050260441号、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20080297033号、米国特許第7338722号、米国特許公開第20020134984号、米国特許第7279704号、米国特許公開第2006098120号、米国特許公開第2006103874号
国際公開第2005076380号、国際公開第2010032663号、国際公開第第2008140115号、国際公開第2007052431号、国際公開第2011134013号、国際公開第2011157339号、国際公開第2010086089号、国際公開第2009113646号、国際公開第2012020327号、国際公開第2011051404号、国際公開第2011004639号、国際公開第2011073149号、米国特許公開第2012228583号、米国特許公開第2012212126号、特開2012−069737号、特開2012−195554号、特開2009−114086号、特開2003−81988号、特開2002−302671号、特開2002−363552号
中でも、好ましいリン光ドーパントとしては、Irを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも1つの配位様式を含む錯体が好ましい。
以下、発光層に適用可能な公知のリン光ドーパントの具体例を挙げるが、リン光ドーパントはこれらに限定されず、その他の化合物を適用することもできる。
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(1−2.蛍光発光性ドーパント)
蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
蛍光ドーパントしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、蛍光ドーパントして、遅延蛍光を利用した発光ドーパント等を用いてもよい。
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号、特開2010−93181号等に記載の化合物が挙げられる。
(2.ホスト化合物)
ホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入および輸送を担う化合物であり、有機EL素子10においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、さらに好ましくは、リン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子10の高効率化が可能となる。
発光層に用いるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子10で用いられる化合物を用いることができる。例えば、低分子化合物や、繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、或いは、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能または電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子10を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対する安定性の観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。ホスト化合物としては、Tgが90℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
有機EL素子10に用いられる、公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第20030175553号、米国特許公開第20060280965号、米国特許公開第20050112407号、米国特許公開第20090017330号、米国特許公開第20090030202号、米国特許公開第20050238919号、国際公開第2001039234号、国際公開第2009021126号、国際公開第2008056746号、国際公開第2004093207号、国際公開第2005089025号、国際公開第2007063796号、国際公開第2007063754号、国際公開第2004107822号、国際公開第2005030900号、国際公開第2006114966号、国際公開第2009086028号、国際公開第2009003898号、国際公開第2012023947号、特開2008−074939号、特開2007−254297号、EP2034538等である。
[電子輸送層]
有機EL素子10に用いる電子輸送とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
電子輸送層の総厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
また、有機EL素子10においては、発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極で反射されてから取り出される光とが、干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総膜厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の膜厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に膜厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性若しくは輸送性、又は、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体、芳香族炭化水素環誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体等が挙げられる。
上記含窒素芳香族複素環誘導体としては、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の1つ以上が窒素原子に置換)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等が挙げられる。
芳香族炭化水素環誘導体としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及び、これらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又は、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機EL素子10では、ゲスト材料として電子輸送層にドープ材をドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体及びハロゲン化金属等の金属化合物や、その他のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
有機EL素子10に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
米国特許第6528187号 、米国特許第7230107号、米国特許公開第20050025993号 、米国特許公開第20040036077号 、米国特許公開第20090115316号 、米国特許公開第20090101870号 、米国特許公開第20090179554号 、国際公開第2003060956号、国際公開第2008132085号、Appl. Phys. Lett. 75, 4 (1999)、Appl. Phys. Lett. 79, 449 (2001)、Appl. Phys. Lett. 81, 162 (2002)、Appl. Phys. Lett. 81, 162 (2002)、Appl. Phys. Lett. 79, 156 (2001)、米国特許第7964293号 、米国特許公開第2009030202号 、国際公開第2004080975号 、国際公開第2004063159号、国際公開第2005085387号、国際公開第2006067931号、国際公開第2007086552号、国際公開第2008114690号、国際公開第2009069442号 、国際公開第2009066779号 、国際公開第2009054253号、国際公開第2011086935号 、国際公開第2010150593号 、国際公開第2010047707号 、EP2311826号 、特開2010−251675号 、特開2009−209133号 、特開2009−124114号 、特開2008−277810号 、特開2006−156445号 、特開2005−340122号 、特開2003−45662号 、特開2003−31367号 、特開2003−282270号、国際公開第2012115034号等
より好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
[正孔阻止層]
正孔阻止層は、広い意味では電子輸送層の機能を有する層である。好ましくは、電子を輸送する機能を有しつつ、正孔を輸送する能力が小さい材料からなる。電子を輸送しつつ正孔を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、上述の電子輸送層の構成を、必要に応じて正孔阻止層として用いることができる。
有機EL素子10に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
有機EL素子10において、正孔阻止層の厚さは、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、上述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、上述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
[電子注入層]
電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層である。電子注入層の一例は、「有機EL素子10とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に記載されている。
有機EL素子10において、電子注入層は必要に応じて設けられ、上述のように陰極と発光層との間、又は、陰極と電子輸送層との間に設けられる。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されている。電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、上述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する材料からなる。正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する層である。
有機EL素子10において、正孔輸送層の総膜厚に特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)は、正孔の注入性または輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよい。正孔輸送材料は、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
正孔輸送材料は、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、ポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖若しくは側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているヘキサアザトリフェニレン誘導体も正孔輸送材料として用いることができる。
さらに、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。例えば、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載された構成を正孔輸送層に適用することもできる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、所謂p型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖若しくは側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
有機EL素子10に用いられる正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
Appl. Phys. Lett. 69, 2160 (1996)、J. Lμmin. 72-74, 985 (1997)、Appl. Phys. Lett. 78, 673 (2001)、Appl. Phys. Lett. 90, 183503 (2007)、Appl. Phys. Lett. 90, 183503 (2007)、Appl. Phys. Lett. 51, 913 (1987)、Synth. Met. 87, 171 (1997)、Synth. Met. 91, 209 (1997)、Synth. Met. 111,421 (2000)、SID Symposiμm Digest, 37, 923 (2006)、J. Mater. Chern. 3, 319 (1993)、Adv. Mater. 6, 677 (1994)、Chern. Mater. 15,3148 (2003)、米国特許公開第20030162053号、米国特許公開第20020158242号、米国特許公開第20060240279号、米国特許公開第20080220265号、米国特許第5061569号、国際公開第2007002683号、国際公開第2009018009号、EP650955、米国特許公開第20080124572号、米国特許公開第20070278938号、米国特許公開第20080106190号、米国特許公開第20080018221号、国際公開第2012115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号、米国特許出願番号13/585981号
[電子阻止層]
電子阻止層は、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層である。好ましくは、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなる。電子阻止層は、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、上述の正孔輸送層の構成を必要に応じて、有機EL素子10の電子阻止層として用いることができる。有機EL素子10に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
電子阻止層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
電子阻止層に用いられる材料としては、上述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いることができる。また、上述のホスト化合物として用いられる材料も、電子阻止層として好ましく用いることができる。
[正孔注入層]
正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層である。正孔注入層の一例は、「有機EL素子10とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に記載されている。
正孔注入層は必要に応じて設けられ、上述のように陽極と発光層との間、又は、陽極と正孔輸送層との間に設けられる。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されている。
正孔注入層に用いられる材料は、例えば上述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。中でも、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432や特開2006−135145等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
上述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
[含有物]
有機EL素子10を構成する発光機能層は、更に他の含有物を含んでもよい。
含有物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
含有物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
[発光機能層の形成方法]
有機EL素子10の発光機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
発光機能層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセス)等により形成することができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等がある。均質な薄膜が得られやすく、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・ツー・ロール方式に適性の高い方法が好ましい。
湿式法において、発光機能層の材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
発光機能層を構成する各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10−6Pa〜10−2Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
有機EL素子10の形成は、一回の真空引きで一貫して発光機能層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、層毎に異なる形成方法を適用してもよい。
[陽極]
有機EL素子10における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5V以上)金属、合金、電気伝導性化合物、及び、これらの混合物からなる電極物質が用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成する。或いは、パターン精度をあまり必要としない(100μm以上程度)場合は、上記電極物質を蒸着法又はスパッタリング法で形成する際に、所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。
陽極側から発光光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましい。また、陽極の厚さは、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
[陰極]
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物、及び、これらの混合物からなる電極物質が用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属と、この電子注入性金属よりも仕事関数の値が大きく安定な第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極は、上記電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法を用いて、作製することができる。また、陰極のシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましい。また、陰極の厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができる。これを応用することで、陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
[支持基板]
有機EL素子10に用いることができる支持基板13(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板13側から光を取り出す場合には、支持基板13は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板13としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板13は、有機EL素子10にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜等によるバリア膜が形成されていてもよい。バリア膜は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましい。更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、10−5g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよい。例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に、バリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層との積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と発光機能層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。例えば、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが好ましい。
不透明な支持基板13としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
[封止]
有機EL素子10は、封止部を備えていてもよい。
有機EL素子10は少ない電力で良好発光するものの、水分に弱く、水分吸水により非発光部ができてしまうため、封止部により封止することが好ましい。
有機EL素子10の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板13とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子10の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウムおよびタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
有機EL素子10の薄膜化のためには、ポリマーフィルム、金属フィルムを使用することが好ましい。さらに、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m/24h)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/(m/24h)以下であることが好ましい。
接着剤としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化型及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子10が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃以下までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、発光機能層を挟み支持基板13と対向する側の電極上に、この電極と発光機能層とを被覆し、支持基板13と接する形で無機物、有機物の層を形成することで、封止膜とすることもできる。この場合、封止膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子等の浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。
さらに、封止膜の脆弱性を改良するために、上述のバリア膜と同様に、無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子10の表示領域との間隙には、窒素、アルゴン等の不活性気体による気相、又は、フッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体による液相を注入することが好ましい。また、封止部材と有機EL素子10の表示領域との間隙を、真空とすることも可能である。
さらに、封止部材と有機EL素子10の表示領域との間隙の内部に、吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等の硫酸塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等の金属ハロゲン化物、過塩素酸バリウム、及び、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類等が挙げられる。硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類としては無水塩が好適に用いられる。
[保護膜、保護板]
有機EL素子10を封止する封止膜又は封止用フィルムの外側には、素子の機械的強度を高めるために、保護膜又は保護板を設けてもよい。特に、封止膜により有機EL素子10の封止が行われている場合には、機械的強度が必ずしも高くないため、保護膜又は保護板を設けることが好ましい。保護膜又は保護板として使用することが可能な材料は、例えば、上述の封止部材と同様に、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができる。保護膜又は保護板としては、軽量化及び薄膜化が可能なポリマーフィルムを用いることが好ましい。
[集光シート]
有機EL素子10は、上述の光散乱層12に加えて、支持基板13(基板)の光取出し側に、例えばマイクロレンズアレイや、所謂集光シート設けることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光して、特定方向上の輝度を高めることができる。
また、有機EL素子10からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺30μm、頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば、液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているシートを用いることが可能である。このようなシートとしては、例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートとしては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの断面三角形状のストライプが形成された形状、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、及び、その他の形状を用いることができる。
[用途]
有機EL素子10は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源などの電子機器に適用することができる。
発光光源としては、例えば、家庭用照明や車内照明等の照明装置、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。特に、液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
有機EL素子10においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよく、電極と発光層をパターニングしてもよく、又は、素子全層をパターニングしてもよい。素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
(照明装置)
照明装置に用いる有機EL素子は、上述した構成の各有機EL素子に共振器構造を持たせた設計としてもよい。共振器構造として構成された有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
なお、有機EL素子に用いられる材料は、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子(白色有機EL素子ともいう)に適用できる。例えば、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ることもできる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させてもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有させてもよい。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光又は蛍光で発光する材料の組み合わせや、蛍光又はリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせでもよい。白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせて混合してもよい。
このような白色有機EL素子は、各色発光の有機EL素子をアレー状に個別に並列配置して白色発光を得る構成と異なり、有機EL素子自体が白色を発光する。このため、素子を構成するほとんどの層の形成にマスクを必要とせず、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で例えば導電層を形成でき、生産性も向上する。
また、このような白色有機EL素子の発光層に用いる発光材料としては、特に制限はなく、例えば液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、上述の有機EL素子の実施形態に記載の金属錯体、また公知の発光材料の中から任意の材料を選択して組み合わせて白色化すればよい。
以上に説明した白色有機EL素子を用いれば、実質的に白色の発光を生じる照明装置を作製することが可能である。
また、照明装置は、例えば有機EL素子を複数用いることにより、発光面を大面積化することもできる。この場合、透明基板上に有機EL素子を設けた複数の発光パネルを、支持基板上に複数配列する(すなわちタイリングする)ことによって発光面を大面積化する。支持基板は、封止材を兼ねるものであってもよく、この支持基板と、発光パネルの透明基板との間に有機EL素子を挟持する状態で各発光パネルをタイリングする。支持基板と透明基板との間には接着剤を充填し、これによって有機EL素子を封止してもよい。尚、発光パネルの周囲には、透明電極及び対向電極の端子を露出させておく。
このような構成の照明装置では、各発光パネルの中央が発光領域となり、発光パネル間には非発光領域が発生する。このため、非発光領域からの光取り出し量を増加させるための光取り出し部材を、光取り出し面の非発光領域に設けてもよい。光取り出し部材としては、集光シートや光拡散シートを用いることができる。
[効果]
本例の有機EL素子では、発光層の輝度分布に対し、相対的に輝度の高い領域において、光散乱層12の粒子密度を高くする。そして、輝度の低い領域において、光散乱層12の粒子密度を高くする。
輝度の上昇が小さい領域の粒子密度を高くすることにより、光取り出し効率が向上し、有機EL素子10において、その部分の輝度が大きく上昇する。また、輝度の上昇が小さい領域の粒子密度を低くすることにより、粒子密度を高くした部分に比べて、光取り出し効率が低下して輝度の上昇が小さくなる。この結果、発光層の電流密度分布や発熱分布に起因する輝度分布が発生する場合にも、光散乱層12において輝度分布を補正することができ、有機EL素子10から取り出せる光の均一性を高めることができる。
特に、輝度分布を生じてしまう有機EL素子に対して光散乱粒子を均一に分散させた散乱層を適用した場合に、輝度差がさらに顕著となるため、面内発光輝度分布の指標である均斉度が著しく低下していたが、上述の構成の光散乱層12を適用することにより、輝度均斉度を向上することができる。
上述のように、有機EL素子10では、光散乱層12の面方向において、相対的に粒子密度の差を設けることにより、輝度均斉度を向上することができる。
また、電極に補助配線を形成することなく、輝度均斉度を向上することができ、コストの低減ならびに生産性を向上することが可能となる。
〈2.有機エレクトロルミネッセンス素子(第2実施形態)〉
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の有機EL素子において、第1電極配線の形成位置、第2電極配線の形成位置、及び、光散乱層の構成以外は、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、上述の第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の構成]
第2実施形態の有機EL素子の底面図を図5に示す。図5に示す構成は、上述の第1実施形態の有機EL素子の図4に示す構成に相当する。
図5に示す有機EL素子は、発光面が図面横方向に長く、一方の長辺側に有機EL素子の第1電極に接続される第1電極配線14が形成され、他方の長辺側に第2電極に接続される第2電極配線15が形成されている。
上述の第1実施形態と同様に、第1電極をITO等の金属酸化物の透明電極からなる陽極とし、第2電極をアルミニウム等の金属からなる陰極とした場合には、陽極と陰極電極とのシート抵抗差により、発光層の面内において輝度に差が発生する。つまり、シート抵抗の高い陽極(第1電極)側に流れ込む電流密度が、シート抵抗の低い陰極(第2電極)側から吸い出す電流密度よりも高くなる。
従って、陽極と陽極配線(第1電極配線14)との接続領域の近傍において電流密度が高くなり、図5に示す領域Cにおいて電流密度が高くなりやすい。また、陰極と陰極配線(第2電極配線15)との接続領域の近傍において電流密度が低くなり、図5に示す領域Dにおいて、電流密度が低くなりやすい。
この結果、電流密度が高くなりやすいITO等からなる第1電極と第1電極配線14との接続領域の近傍である領域Cにおいて輝度が上昇し、電流密度が低くなりやすい第2電極と第2電極配線15との接続領域の近傍である領域Dにおいて輝度が低下する。このように、シート抵抗の高い陽極側の電流密度が高い部位近傍で輝度が上昇し、シート抵抗の低い陰極側において輝度低下が発生してしまう。
従って、第2実施形態においても、相対的に、輝度が低下する第2電極と第2電極配線15との接続領域の近傍において、光散乱層12の粒子密度を高くする。そして、輝度が上昇する第1電極と第1電極配線14との接続領域の近傍において、光散乱層12の粒子密度を低くする。つまり、領域Dの粒子密度を高くし、領域Cの粒子密度を低くする。そして、発光機能層の電流密度や発光輝度に応じて、粒子密度の高い領域Dから粒子密度の低い領域Cに向けて粒子密度を傾斜させるように、光散乱層12の粒子密度を調整する。
例えば、第2電極配線15近傍の光散乱層12の粒子密度を80%とし、第1電極配線14近傍の光散乱層12の粒子密度を0%とする。そして、第2電極配線15近傍と、第1電極配線14近傍との間の領域は、0%から80%までの間で、第1電極配線14及び第2電極配線15からの距離に応じて粒子密度を調整する。
このように、第2実施形態の有機EL素子においても、光散乱層12の面内において、相対的に粒子密度の差を設けることにより、輝度均斉度を向上することができる。
輝度の低い領域の粒子密度を高くすることにより、光取り出し効率が向上し、有機EL素子において、その部分の輝度が大きく上昇する。また、輝度の高い領域の粒子密度を低くすることにより、粒子密度を高くした部分に比べて、輝度の上昇が小さくなる。この結果、発光層に輝度分布が発生する場合にも、光散乱層12において輝度分布を補正することができ、有機EL素子から取り出せる光の均一性を高めることができる。
〈3.有機エレクトロルミネッセンス素子(第3実施形態)〉
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態の有機EL素子において、光散乱層の構成以外は、上述の第2実施形態と同様の構成である。このため、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の構成]
第3実施形態の有機EL素子の底面図を図6に示す。図6に示す構成は、上述の第2実施形態の有機EL素子の図5に示す構成に相当する。
図6に示す有機EL素子は、上述の第2実施形態と同様に、発光面が図面横方向に長く、一方の長辺側に有機EL素子の第1電極に接続される第1電極配線14が形成され、他方の長辺側に第2電極に接続される第2電極配線15が形成されている。
従って、陽極と陽極配線(第1電極配線14)との接続領域の近傍において電流密度が高くなり、図6に示す領域Cにおいて電流密度が高くなりやすい。また、陰極と陰極配線(第2電極配線15)との接続領域の近傍において電流密度が低くなり、図6に示す領域Dにおいて、電流密度が低くなりやすい。
この結果、電流密度が高くなりやすいITO等からなる第1電極と第1電極配線14との接続領域の近傍である領域Cにおいて輝度が上昇し、電流密度が低くなりやすい第2電極と第2電極配線15との接続領域の近傍である領域Dにおいて輝度が低下する。このように、シート抵抗の高い陽極側の電流密度が高い部位近傍で輝度が上昇し、シート抵抗の低い陰極側において輝度低下が発生してしまう。
従って、第2実施形態においても、相対的に、輝度が低下する第2電極と第2電極配線15との接続領域の近傍において、光散乱層12の粒子密度を高くする。そして、輝度が上昇する第1電極と第1電極配線14との接続領域の近傍において、光散乱層12の粒子密度を低くする。つまり、領域Dの粒子密度を高くし、領域Cの粒子密度を低くする。そして、発光機能層の電流密度や発光輝度に応じて、粒子密度の高い領域Dから粒子密度の低い領域Cに向けて粒子密度を傾斜させるように、光散乱層12の粒子密度を調整する。
第3実施形態では、粒径を変化させることにより、粒子密度(体積%)を相対的に変化させる。例えば、図6に示すように、粒径の大きい光散乱粒子12Bと、粒径の小さい光散乱粒子12Cとを用いて光散乱層12を構成する。そして、光散乱粒子12Bと光散乱粒子12Cとの存在比率を制御することにより、光散乱層12の粒子密度を調整することができる。
単位体積当たりの光散乱粒子の数が同じ場合には、粒径の大きい光散乱粒子12Bの比率が大きい方が、粒子密度が大きくなる。また、粒径の小さい光散乱粒子12Cの比率が大きい方が、粒子密度が小さくなる。
このため、粒子密度を高くする領域に、粒径の大きな光散乱粒子12Bの比率が大きくなるように分散させる。そして、粒子密度を低くする領域に粒径の小さな光散乱粒子12Cの比率が大きくなるように分散させる。これにより、光散乱層12において、面内の粒子密度を任意に調整することができる。
例えば、第2電極配線15近傍の光散乱層12において、粒径の大きい光散乱粒子12Bの比率を、粒径の小さい光散乱粒子12Cの比率よりも大きくする。そして、第1電極配線14近傍の光散乱層12において、粒径の小さい光散乱粒子12Cの比率を、粒径の大きい光散乱粒子12Bの比率よりも大きくする。これにより、例えば、第2電極配線15近傍の光散乱層12の粒子密度を80%とし、第1電極配線14近傍の光散乱層12の粒子密度を40%とする。さらに、第2電極配線15近傍と、第1電極配線14近傍との間の領域は、光散乱粒子12Bと光散乱粒子12Cとの比率を調整することで40%から80%までの間で、第1電極配線14及び第2電極配線15からの距離に応じて粒子密度を調整する。
このように、第3実施形態の有機EL素子においても、光散乱層12に粒径の異なる複数の光散乱粒子を用いて、相対的に粒子密度の差を設けることにより、輝度均斉度を向上することができる。
輝度の低い領域の粒子密度を高くすることにより、光取り出し効率が向上し、有機EL素子において、その部分の輝度が大きく上昇する。また、輝度の高い領域の粒子密度を低くすることにより、粒子密度を高くした部分に比べて、輝度の上昇が小さくなる。この結果、発光層に輝度分布が発生する場合にも、光散乱層12において輝度分布を補正することができ、有機EL素子から取り出せる光の均一性を高めることができる。
粒径の大きい光散乱粒子12B、及び、粒径の小さい光散乱粒子12Cは、上述の光散乱粒子と同様の材料を用いることができる。また、粒径の大きい光散乱粒子12Bと、粒径の小さい光散乱粒子12Cとは、それぞれ同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
粒径の大きい光散乱粒子12Bの粒径は、例えば、400〜500nmとすることが好ましい。また、粒径の小さい光散乱粒子12Cの粒径は、例えば、100〜200nmとすることが好ましい。
粒径の大きい光散乱粒子12Bと、粒径の小さい光散乱粒子12Cとの粒径の差は、200nm〜400nm とすることが好ましい。
さらに、異なる粒径の光散乱粒子12Aを複数用いて光散乱層12の粒子密度を変化させる構成としてもよい。粒子密度の異なる複数の光散乱層12を積層することにより、光散乱層12の積層体を総合した粒子密度を変化させる構成としてもよい。
〈4.有機エレクトロルミネッセンス素子(第4実施形態)〉
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態の有機EL素子において、光散乱層の構成以外は、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、上述の第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の構成]
第4実施形態の有機EL素子の底面図を図7に示す。図7に示す構成は、上述の第1実施形態の有機EL素子の図4に示す構成に相当する。
図7に示す有機EL素子は、上述の第1実施形態と同様に、発光面が正方形であり、一方の辺側に有機EL素子の第1電極に接続される第1電極配線14が形成され、他方の辺側に第2電極に接続される第2電極配線15が形成されている。
有機EL素子の発光面積が大きくし、高ルーメン又は高輝度を得るために、有機EL素子に流す電流密度を高くすると、発光層において発熱量が増加する。このとき、第1電極16(陽極)と第2電極18(陰極)とにシート抵抗に顕著な差がない構成とした場合にも、発光機能層の面内で発熱量に差が発生する。このため、有機EL素子においては、発光層の面内に発熱分布が生じてしまう。
例えば、発光層の周縁部では側面から放熱されるが、発光層の中心部では放熱性が低くい。このため、発光機能層の面方向の中心部、つまり、図7に示す領域Eでの熱量が大きくなり、図7に示す領域Fで発光機能層の端部での熱量が小さくなる。
有機EL素子の温度特性によって、高温度で発光層の発光効率が上昇する場合には、発熱量の増加に起因して、発熱量の高い部分で特に輝度が上昇してしまう。また、発熱量の低い部分では、輝度の上昇が低い。このため、有機EL素子において、発熱分布に応じた輝度の不均一性が発生する。つまり、図7に示す領域Eでの輝度上昇が大きくなり、図7に示す領域Fでの輝度上昇が小さくなる。
このような場合においても上述の構成と同様に、有機EL素子では、相対的に、輝度の上昇が少ない領域において、光散乱層12の粒子密度を高くする。そして、輝度の上昇が大きい領域において、光散乱層12の粒子密度を低くする。つまり、領域Fの粒子密度を高くし、領域Eの粒子密度を低くする。そして、発光機能層の発熱量や発光輝度に応じて、粒子密度の高い領域Fから粒子密度の低い領域Eに向けて粒子密度を傾斜させるように、光散乱層12の粒子密度を調整する。例えば、発光層の周縁部において光散乱層12の粒子密度を高くし、発光層の周縁部からの距離に応じて粒子密度を低くする。そして、発光層の中心部の粒子密度を最も低くする。
輝度の上昇が小さい領域の粒子密度を高くすることにより、光取り出し効率が向上し、有機EL素子において、その部分の輝度が大きく上昇する。また、輝度の上昇が小さい領域の粒子密度を低くすることにより、粒子密度を高くした部分に比べて、光取り出し効率が低下して輝度の上昇が小さくなる。この結果、発光層に発熱分布に起因する輝度分布が発生する場合にも、光散乱層12において輝度分布を補正することができ、有機EL素子から取り出せる光の均一性を高めることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[試料101の有機EL素子の作製]
以下のように、上述の図4に示す構成の光散乱層を備える有機EL素子の試料101を作製した。有機EL素子の全体構成は、上述の図1〜3に示す構成と同様である。
(支持基板)
まず、有機EL素子を形成する支持基板として、90mm×90mmの外形サイズ有する透明基板を準備した。そして、この透明基板に、アセトン超音波洗浄、セミコクリーン超音波洗浄、オゾンクリーニングを施し、基板の表面を洗浄した。
(光散乱層)
洗浄した基板上に、光散乱粒子として粒径300nm±50nmのTiOを、ポリシラザンからなるバインダに分散させた光散乱層材料を、発光エリアを超える領域にインクジェットで1μmの厚さになるよう形成した。その後、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、80分のポストベークを実施した。このようにSiOのバインダ中に、TiOからなる光散乱粒子の粒子密度が、40〜80%の間で分布した光散乱層を形成した。
本条件で形成した光散乱層の概観状態は、上述の図4に相当する。
ここで、光散乱層は、まず、光散乱粒子の充填率を40%とした光散乱層材料を準備し、この光散乱層材料を用いて、有機EL素子の陽極と陽極配線との接続部分近傍に光散乱層を形成した。
次に、陽極配線の近傍から、陰極と陰極配線との接続部分近傍へ向かうに従い、光散乱層材料の光散乱粒子の充填率を増加させ、光散乱層を形成した。そして、陰極と陰極配線との接続部分近傍で光散乱粒子の充填率が80%となるように光散乱層材料の光散乱粒子の充填率を増加させ、光散乱層を形成した。
これにより、陽極配線の近傍から陰極配線の近傍との間で、粒子密度が傾斜増加する光散乱層を形成した。
試料101では光散乱層の屈折率がおおよそn=1.7〜2.2で、バインダの屈折率がおおよそ1.45〜1.7となるよう形成した。異なる屈折率を有する材料で光散乱層を形成しているため、光散乱層に入射した光が光散乱粒子により光が散乱され、外部への光放出量が増加するよう設計した。
(平滑層)
次に、光散乱層の表面の凹凸をなくし、リークや短絡等を防止するために、光散乱層上に、平滑層を形成した。平滑層は、SiOからなる屈折率がおおよそ1.45〜1.7の平滑層を500nm程度となるように、スピン塗布にて形成した。そして、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、120分のポストベークを実施した。
(陽極)
次に、有機EL素子の陽極として、ITO層を300nm形成した。陽極は、スパッタリング法を用いて、おおよそ5Ω/sq.程度のシート抵抗値となるように形成した。
スパッタリングにはDCマグネトロンスパッタを使用した。基板加熱温度90℃、真空度1×10−4(Pa)となる真空度下に基板を設置し、酸素2%混合アルゴンガスを0.5Paとなるように導入し、500WのDC印加をITOターゲットに加えることで基板上にITO層を形成した。使用したITO層はおおよそ5Ω/sq.程度のシート抵抗値になるように設計した。
次に、ITO層を陽極の形状にパターニングした。パターニングは、レジストを基板上に1μmとなるようにスピン塗布し、80℃、5分のプリベーク後、露光機にて露光、NaOHに3分浸漬する事で現像し、純水リンスを施し、スピン乾燥後にポストベークを100℃、40分実施した。
ITO層のエッチングは15%の塩化第二鉄水溶液を使用し、エッチング後に純水リンスし、レジストを剥離するべくNaOHに3分浸漬、レジストを剥離、同様に純水リンスを施し、スピン乾燥を施すことで所望の形状にエッチングした。
(絶縁層)
次に、陽極となるITOパターンエッジ近傍での電気的ショートを防ぐために、ポリイミドからなる絶縁層を形成した。
まず、ITOのパターニングが完了した基板を、再度アセトン超音波洗浄、セミコクリーン超音波洗浄、スピン乾燥、オゾンクリーニングを施した。その後、ポリイミドを1μmとなるようにスピン塗布した。そして、プリベークを85℃、3分施し、露光機にて露光後、3%のTMAHに5分浸漬することで現像した。現像後は純水リンスを施し、スピン乾燥後にポストベークを100℃、80分施すことで実施した。
(発光機能層)
次に、陽極上に発光機能層を真空蒸着にて形成した。
まず、陽極の表面状態を活性化するべくUV洗浄を5分実施し、その後基板を真空蒸着機に入れ、1×10−5(Pa)の真空度になるまで真空引きした。
真空引きが完了後に、発光機能層を構成する各層を随時蒸着にて形成した。
まず、陽極上に正孔注入層としてMoOを30nm、正孔輸送層としてα−NPDを50nm蒸着形成した。次に、発光層としてAlq3を30nm蒸着形成した。次に、電子輸送層としてBCPを20nm形成し、電子注入層としてLiFを1nm形成した。
(陰極)
次に、発光機能層上に陰極及び反射電極として機能する導電層を形成した。陰極となる導電層は、EB蒸着法にてAlを300nm形成した。
陰極は、シート抵抗値がおおよそ0.2Ω /sq.程度となるように設計、成膜した。
(封止)
以上の工程により形成した有機EL素子を封止するために、ザグリ加工を施したで封止基板を用いて封止部を形成した。
具体的には、4辺のリードを残すように85mm×85mmの外形サイズのガラス缶(t=1.1mm)に、ザグリ掘り込み量0.7mmを彫り込み、同部位に吸湿剤を張り付け、水分を吸着するように施した。
また、封止基板と素子基板が接触する部位のザグリ掘り込みが形成されていない領域に、接着剤としてUV硬化性のエポキシ系接着樹脂を塗布し、素子基板と密着、加圧した。
さらに、接着剤を効果するためメタルハライドにて積算照度10Jとなるよう封止基板側からUV照射を行い、さらに、接着剤を硬化させるべく、80℃、1h程度の熱硬化にて接着剤の硬化を促進させ、封止基板と素子基板である透明基板を接着した。
(有機EL素子)
以上の工程により、有機EL素子の試料101を作製した。
試料101の有機EL素子は、発光エリアよりも大きい領域で、かつ封止基板よりも狭い領域に光散乱層または平滑層が形成されているため、光散乱層や平滑層を導入することによる封止性能の阻害は発生しない。
[試料102の有機EL素子の作製]
以下のように、上述の図5に示す構成の光散乱層を備える有機EL素子の試料102を作製した。有機EL素子の全体構成は、上述の図1〜3に示す構成と同様である。
(支持基板)
まず、有機EL素子を形成する支持基板として、パネルサイズ150mm×50mm、発光エリア138mm×37mmの横長で、長辺方向の1方向に透明電極からなる陽極の配線を形成し、長辺方向の他方側に陰極の配線を形成した。
そして、上述の試料101と同様に、基板に、アセトン超音波洗浄、セミコクリーン超音波洗浄、オゾンクリーニングを施した。
(光散乱層)
洗浄した基板上に、発光エリアの陰極配線側から15mmまでの領域に、粒径300nm±50nmのTiOからなる光散乱粒子を80%含む光散乱層を形成し、他の領域は光散乱粒子を含まないバインダのみの光散乱層を、インクジェット装置にて形成した。
その後、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、80分のポストベークを実施した。
インクジェット装置は、バインダラインと、光散乱粒子をバインダに分散させたラインの2本を、バッファーで混錬しつつ噴出する装置を使用した。この方法により、光散乱粒子を含まず、粒子密度が0%の光散乱層と、光散乱粒子を含む粒子密度が80%の光散乱層とを形成した。
本条件で形成した光散乱層の概観状態は、上述の図5に相当する。
(平滑層〜封止)
次に、上述の試料101と同様に、光散乱層上に、平滑層、陽極、発光機能層、及び、陰極を形成し、有機EL素子を形成した。そして、上述の試料101と同様に、この有機EL素子を封止し、有機EL素子の試料102を作製した。
[試料103の有機EL素子の作製]
以下のように、上述の図6に示す構成の光散乱層を備える有機EL素子の試料103を作製した。有機EL素子の全体構成は、上述の図1〜3に示す構成と同様である。
(支持基板)
まず、上述の試料102と同様の支持基板を準備し、長辺方向の1方向に透明電極からなる陽極の配線を形成し、長辺方向の他方側に陰極の配線を形成した。試料101と同様に、基板に、アセトン超音波洗浄、セミコクリーン超音波洗浄、オゾンクリーニングを施した。
(光散乱層)
上述の試料102と同様のインクジェット装置を用いて、洗浄した基板上に、発光エリアの陰極配線側か15mmまでの領域に、粒径300nm±50nmのTiOからなる光散乱粒子を80%含む光散乱層を形成した。そして、他の領域は光散乱粒子を含まないバインダのみの光散乱層をインクジェットにて形成した。
その後、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、80分のポストベークを実施した。
インクジェットのバッファー混錬部へ導入する1方のラインには、試料101及び試料102で使用したTiOからなる300nm±50nmの光散乱粒子を含むバインダラインA(粒子密度80%)を接続した。そして、他方のラインにはTiOからなる150nm±50nmからなる光散乱粒子を含むバインダラインB(粒子密度50%)を接続した。そして、粒径の異なる光散乱粒子を含むことにより、粒子密度を異ならせたバインダラインAとバインダラインBとの噴出量を任意に調整することで、異なる粒子密度を有する光散乱層を形成した。
光散乱層は、陰極配線から陽極配線へ向かう方向に、バインダラインAの比率からバインダラインBの比率を1:0から0:1となるように傾斜成膜を行った。また、光散乱層の膜厚が1μmとなるように形成した。そして、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、80分のポストベークを実施した。
本条件で形成した光散乱層の概観状態は、上述の図6に相当する。
(平滑層〜封止)
次に、試料101と同様に、光散乱層上に、平滑層、陽極、発光機能層、及び、陰極を形成し、有機EL素子を形成した。そして、試料101と同様に、この有機EL素子を封止し、有機EL素子の試料103を作製した。
[試料104の有機EL素子の作製]
以下のように、上述の図7に示す構成の光散乱層を備える有機EL素子の試料104を作製した。有機EL素子の全体構成は、上述の図1〜3に示す構成と同様である。
(支持基板)
まず、有機EL素子を形成する支持基板として、パネルサイズ150mm×150mm、発光エリア138mm×138mmで、4辺の1方向に透明電極からなる陽極の配線を形成し、他方側に陰極の配線を形成した。試料101と同様に、基板に、アセトン超音波洗浄、セミコクリーン超音波洗浄、オゾンクリーニングを施した。
(光散乱層)
洗浄した基板上に、光散乱粒子として粒径300nm±50nmのTiOを、ポリシラザンからなるバインダに分散させた光散乱層材料を、発光エリアを超える領域にインクジェットで1μmの厚さになるよう形成した。
その際、インクジェット装置は、バインダラインと、光散乱粒子をバインダに分散させたラインの2本を、バッファーで混錬しつつ噴出する装置を使用した。この方法により、光散乱粒子密度が40%の光散乱層から光散乱粒子密度が80%と粒子密度を任意にコントロールできる光散乱層が形成できるようにした。
具体的には、発熱による輝度傾斜を考慮し、一方の取り出し電極近傍の端部から中央へ向けて粒子密度を80%〜40%になるように粒子密度に傾斜をつけ、中央から他方の取り出し電極近傍の端部へ40%〜80%になるように粒子密度に傾斜をつけて光散乱層を形成した。
その後、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、80分のポストベークを実施した。このようにSiOのバインダ中に、TiOからなる光散乱粒子の粒子密度が、40〜80%の間で分布した光散乱層を形成した。
本条件で形成した光散乱層の概観状態は、上述の図7に相当する。
次に、試料101と同様に、光散乱層上に、平滑層、陽極、発光機能層、及び、陰極を形成し、有機EL素子を形成した。そして、試料101と同様に、この有機EL素子を封止し、有機EL素子の試料104を作製した。
[試料105の有機EL素子の作製]
以下のように、比較例の有機EL素子の試料105を作製した。有機EL素子の全体構成は、上述の図1〜3に示す構成と同様である。
(支持基板)
上述の試料102と同様の支持基板を準備し、長辺方向の1方向に透明電極からなる陽極の配線を形成し、長辺方向他方側に陰極の配線を形成した。試料101と同様に、基板に、アセトン超音波洗浄、セミコクリーン超音波洗浄、オゾンクリーニングを施した。
(光散乱層)
洗浄した基板上に、粒径300nm±50nmのTiOからなる光散乱粒子を、発光エリアに均一に1μmの厚さにインクジェットにて形成した。その後、80℃、5分のプリベークを実施し、100℃、80分のポストベークを実施した。
(平滑層〜封止)
次に、試料101と同様に、光散乱層上に、平滑層、陽極、発光機能層、及び、陰極を形成し、有機EL素子を形成した。そして、試料101と同様に、この有機EL素子を封止し、有機EL素子の試料105を作製した。
[実施例の各試料の評価]
作製した試料101〜105の有機EL素子について、輝度(cd/m)、及び、均斉度を測定した。この結果を下記表1に示す。
[輝度]
輝度はJIS C 1609 の方法に従い、発光パネル面内の9点を測定して平均値を算出した。
[均斉度]
均斉度は、上記方法により測定した9点の輝度のMin/Max値を示している。
Figure 0006197404
[実施例の評価結果]
表1に示すように、各試料101〜105は、光散乱層を設けていない状態の有機EL素子の発光層の中央の輝度である3000cd/mから、それぞれ大きく上昇している。このため、試料101〜104のように、面内で粒子密度が相対的に異なるように光散乱粒子を分散させた光散乱層を用いた場合にも、面内で粒子密度が均一となるように光散乱粒子を分散させた光散乱層を用いた試料105と同様の光取り出し効率を有していることわかる。
また、試料101〜104では、均斉度が試料105よりも大きく向上している。
試料105では、光散乱層を粒子密度が均一となるように形成しているため、発光層の輝度分布を補正する手段を有していない。このため、試料105は均斉度が低い。
これに対し、試料101〜104では、相対的に輝度が高くなる陽極と陽極配線との接続部分近傍や、発光層の中心部の光散乱層の粒子密度を高くし、輝度が低くなる陰極と陰極配線との接続部分近傍や、発光層の周縁部の光散乱層の粒子密度を低くしている。このように、輝度が低い領域の粒子密度を大きくすることにより、光の取り出し効率を向上させている。このため、有機EL素子の発光層の輝度分布を補正することができ、均斉度を向上させることができる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10 有機EL素子、11 発光ユニット、12 光散乱層、12A,12B,12C 光散乱粒子、13 支持基板、14 第1電極配線、15 第2電極配線、16 第1電極、17 発光機能層、18 第2電極、19 平滑層、21 絶縁層

Claims (10)

  1. 第1電極と、
    第2電極と、
    前記第1電極と前記第2電極とに挟持された発光機能層と、
    光散乱粒子とバインダとを有し、前記光散乱粒子の粒子密度が面内において相対的に異なるように設けられている光散乱層と、を備え、
    前記光散乱層は、前記光散乱粒子として、第1光散乱粒子と、前記第1光散乱粒子よりも粒径の小さい第2光散乱粒子とを含み、
    前記光散乱層は、前記発光機能層の輝度が高い領域に対応して粒子密度が相対的に低く、前記発光機能層の輝度が低い領域に対応して粒子密度が相対的に高く、
    前記散乱層の粒子密度が相対的に高い領域において、前記第1光散乱粒子の比率が前記第2光散乱粒子の比率よりも大きい
    有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記第1光散乱粒子と前第2光散乱粒子との粒径の差が、200nm以上400nm以下である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前第1光散乱粒子の粒径が、400nm以上500nm以下である請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前第2光散乱粒子の粒径が、100nm以上200nm以下である請求項1から3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記第1電極及び前記第2電極の一方が透明電極からなり、前記透明電極と配線との接続部分の近傍の輝度が高く、前記透明電極と対向する電極と配線との接続部分の近傍の輝度が低い請求項1から4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記発光機能層の周縁部での輝度が低く、前記発光機能層の中心部での輝度が高い請求項1から4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記光散乱層上に、平滑層を備える請求項1から6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記光散乱層は、粒子密度が、0%以上80%以下である請求項1から7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記光散乱層は、面内において10%以上の粒子密度の差を有する請求項1から8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する電子機器。
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