JP6163749B2 - タイヤのシミュレーション方法、タイヤ特性の評価方法、タイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンピュータを用いてタイヤを解析する技術に関する。
近年では、コンピュータ解析可能なタイヤモデルを作成してシミュレーションを行うシミュレーション装置が実用化されている。かかるシミュレーション装置として、特許文献1に記載される技術が知られている。
特開2011−219027号公報
図16及び図17は、タイヤ全体のモデルを用いてシミュレーション装置により実行される従来のシミュレーション方法を説明するための図である。図16に示すように、タイヤの内圧成長を測定するためのシミュレーション(変形解析)では、2次元の軸対称モデルを作成して、トレッドのセンター部分P1やショルダー部分P2などの成長量(成長率)の測定を行う。また、図17に示すように、タイヤの耐久性を測定するためのシミュレーション(変形解析)では、タイヤの全体モデルを作成して、タイヤを構成するベルト層に対応する部分P3の層間歪の測定などを行う。
図16や図17に示すように、コンピュータが解析可能なタイヤ全体のモデルを用いたシミュレーションでは、タイヤ全体のモデルを構成する要素の数が多いので、モデルの作成及びシミュレーションに関わるデータ量が膨大となる。このため、タイヤのシミュレーションに要する計算コストが嵩むなどの負担が大きいだけでなく、スクリーニングが困難であるという問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡便かつ精度の良いタイヤの性能解析を実現することができるタイヤのシミュレーション方法、タイヤ特性の評価方法、タイヤの製造方法を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、コンピュータがタイヤの解析を行うタイヤのシミュレーション方法であって、前記コンピュータが、前記タイヤを構成する複数のパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割した前記タイヤの解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を行うステップとを実行することを特徴とする。
また、本発明は、コンピュータにより実行されるタイヤの解析結果に基づいて、タイヤ特性を評価するタイヤ特性の評価方法であって、前記コンピュータが、前記タイヤのベルト層を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割した前記タイヤの解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を行うステップと、前記解析により得られる前記ベルト層の層間歪のデータを出力するステップとを実行することを特徴とする。
また、本発明は、タイヤを製造するタイヤの製造方法であって、コンピュータに、前記タイヤのベルト層を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割した前記タイヤの解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を実行させるステップと、前記解析により得られる前記ベルト層の層間歪のデータに基づいて、前記ベルト層の設計方法を決定するステップと、前記設計方法に従って生成したベルト層を含むグリーンタイヤを生成するステップとを含むことを特徴とする。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤは、コンピュータに、前記タイヤのベルト層を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割した前記タイヤの解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を実行させるステップと、前記解析により得られる前記ベルト層の層間歪のデータに基づいて、前記ベルト層の設計方法を決定するステップと、前記設計方法に従って生成したベルト層を含むグリーンタイヤを生成するステップとを含むタイヤの製造方法により製造されることを特徴とする。
図1は、空気入りタイヤの子午線方向の断面図である。 図2は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行する解析装置の機能構成を示すブロック図である。 図3は、本実施形態に係る積層板有限要素モデルの一例を示す図である。 図4は、本実施形態に係る積層板有限要素モデルの長手方向側面の一例を示す図である。 図5は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。 図6は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。 図7は、タイヤの内圧試験によるタイヤの成長量(率)のデータ例を示す図である。 図8は、積層板有限要素析モデルに対して引張荷重を与えるときのイメージを示す図である。 図9は、積層板有限要素モデルに対して引張荷重を与えたときの解析結果の一例を示す図である。 図10は、積層板有限要素モデルに対して引張荷重および3点曲げ荷重を与えるときのイメージを示す図である。 図11は、5枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルM3の変形解析の結果と、5枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤの実験結果とを比較する図である。 図12は、空気入りタイヤの走行実験の結果と、積層板有限要素モデルの変形解析の結果得られるベルト層の層間歪の解析結果との相関関係を0度ベルトの配置位置ごとに示す図である。 図13は、本実施形態に係る引張荷重および3点曲げ荷重による解析結果と従来の3点曲げによる解析結果とを比較する図である。 図14は、本実施形態に係る引張荷重および3点曲げ荷重による積層板有限要素モデルの変形例を示す図である。 図15は、従来の3点曲げ方法による積層板有限要素モデルの変形例を示す図である。 図16は、タイヤ全体のモデルを用いてシミュレーション装置により実行される従来のシミュレーション方法を説明するための図である。 図17は、タイヤ全体のモデルを用いてシミュレーション装置により実行される従来のシミュレーション方法を説明するための図である。
以下、図面を参照しつつ、本出願により開示する技術である本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態で説明する技術的事項には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下の実施形態で説明する技術的事項は、本発明の目的を達成する上で必要と認める範囲において、適宜組み合わせることが可能である。
図1は、空気入りタイヤの子午線方向の断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交する方向、すなわち図1に示す座標系のr軸の方向に並行な方向に対応する。タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において、空気入りタイヤ1の回転軸に向かう側である。タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側である。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とするタイヤの周り方向、すなわち図1に示す座標系のθの方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸と平行な方向、すなわち図1に示す座標系のh軸の方向に並行な方向に対応する。タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向において、図1に示すタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側である。タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向において、図1に示すタイヤ赤道面CLから離れる側である。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向(θ)に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。また、本実施形態では、空気入りタイヤ1を長距離輸送用のトラック、バスなどのステア軸に装着される重荷重用ラジアルタイヤとした場合について説明する。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11と、一対のビードフィラー12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16とを備える。一対のビードコア11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。ビードコア11は、スチールワイヤである素線を複数束ね、タイヤ材料であるゴムで被覆された状態で構成される。一対のビードフィラー12は、ローアーフィラーおよびアッパーフィラーから成り、一対のビードコア11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。カーカス層13は、単層構造を有し、左右のビードコア11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。ベルト層14は、積層されたベルト141と、一対の交差ベルト142、143と、ベルト144と、周方向補強層145とから成り、カーカス層13のタイヤ径方向外周に配置される。
ここで、ベルト141は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、所定のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有する。また、ベルト141は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
一対の交差ベルト142、143は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上30[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト142、143は、相互に異符号のベルト角度を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ここでは、タイヤ径方向内側に位置する交差ベルト142を内径側交差ベルトと呼び、タイヤ径方向外側に位置する交差ベルト143を外径側交差ベルトと呼ぶ。なお、3枚以上の交差ベルトが積層されて配置されても良い(図示省略)。また、一対の交差ベルト142、143は、ベルト141のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
ベルト144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルト144は、交差ベルト142、143のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。なお、本実施形態では、ベルト144が、外径側交差ベルト143と同一のベルト角度(コード角度)を有し、また、ベルト層14の最外層に配置されている。なお、ベルト層14は、さらに、交差ベルト間あるいは交差ベルトよりもタイヤ径方向内側に周方向補強層を設けてもよい。
周方向補強層145は、スチール製のワイヤから成り、少なくとも1本のワイヤをタイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内で傾斜させつつ螺旋状に巻き廻わして構成される。また、周方向補強層145は、一対の交差ベルト142、143の間に挟み込まれて配置される。また、周方向補強層145は、一対の交差ベルト142、143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置される。具体的には、ワイヤが内径側交差ベルト142の外周に螺旋状に巻き廻されて、周方向補強層145が形成される。この周方向補強層145がタイヤ周方向の剛性を補強することにより、タイヤの耐久性能が向上する。
なお、ベルト層14は、エッジカバーを有しても良い(図示省略)。一般に、エッジカバーは、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内のベルト角度を有する。また、エッジカバーは、外径側交差ベルト143(あるいは内径側交差ベルト142)の左右のエッジ部のタイヤ径方向外側にそれぞれ配置される。これらのエッジカバーがタガ効果を発揮することにより、トレッド部センター領域とショルダー領域との径成長差が緩和されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部33を構成する。一対のサイドウォールゴム16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。なお、本実施形態では、空気入りタイヤ1がタイヤ赤道面CLを中心とした左右対称な構造を有している。
また、空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部33にタイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝、具体的には、1本の周方向主溝21と、2本の周方向主溝22と、2本の周方向主溝23と、が形成されている。本実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向の外側に向かって、周方向主溝21、周方向主溝22、周方向主溝23の順で形成されている。なお、周方向主溝21は、タイヤ赤道面CL上に形成されている。また、トレッド部33は、トレッドゴム15が、周方向主溝21、22、23に区画され、複数の陸部、具体的には2つの陸部41と、2つの陸部42と、2つの陸部43とに分割された形状となる。2つの陸部41は、周方向主溝21と周方向主溝22とで挟まれた領域である。2つの陸部42は、それぞれ周方向主溝22と周方向主溝23とで挟まれた領域である。2つの陸部43は、周方向主溝23よりもタイヤ幅方向外側の領域である。陸部43は、タイヤ幅方向外側の端部が、トレッド部33の路面と接地する領域のタイヤ幅方向の端部である。ここで、本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部33は、タイヤ赤道面CLを対象面として左右対称である。以下、周方向主溝21、22、23は、センター溝21、中間溝22、ショルダー溝23と表記する場合がある。
続いて、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法(変形解析方法)を実行する解析装置について説明する。
図2は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行する解析装置の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、図2に示す解析装置50が実現する。解析装置50はコンピュータであり、図2に示すように、処理部52と記憶部54とで構成される。解析装置50は、入出力装置51と電気的に接続されている。入出力装置51に備えられた入力手段53は、後述するタイヤの解析モデルなどを作成する際に、評価対象のタイヤを構成するゴムなどの各種材料の物性値、及びタイヤのシミュレーションに必要な境界条件および荷重条件などの各種条件を、処理部52や記憶部54へ入力する。
入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスが適用される。記憶部54には、少なくとも、解析対象となるタイヤのベルト層14(図1参照)をモデル化するためのデータ、解析対象のタイヤおよびタイヤを構成するパーツのCAD(Computer Aided Design)用のデータ、及び本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成される。
上記コンピュータプログラムは、コンピュータやコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。
モデル作成部52aは、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法に供するモデルとして、解析対象となる空気入りタイヤ1のベルト層14(図1参照)をモデル化した積層板有限要素モデルを作成する。この積層板有限要素モデルは、後述する解析部52cにより実行される変形解析(シミュレーション)の解析用モデルに含まれる。具体的には、モデル作成部52aは、例えば、記憶部54からベルト層14を構成する各パーツをモデル化するためのデータを読込む。続いて、図3に示すように、モデル作成部52aは、記憶部54から読込んだデータを用いて、ベルト層14(図1参照)を構成する各パーツを順に積層してモデル化した後、有限かつ複数の要素に分割することにより、図3に示すような板状の積層板有限要素モデルM3を作成する。図3は、本実施形態に係る積層板有限要素モデルの一例を示す図である。本実施形態において、例えば、図4に示すように、ベルト層14をモデル化した積層板有限要素モデルM3は、5つの要素からなり、5つの要素のうちの少なくとも1つに0度ベルトが設定される。図4に示す例では、0度ベルトが中央に配置されている。0度ベルトは、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角が0度[deg]のベルトである。図4は、本実施形態に係る積層板有限要素モデルの長手方向側面の一例を示す図である。なお、本実施形態における積層板有限要素モデルM3は、5つの構成要素の1つに0度ベルトを設定する例について説明するが、0度ベルトを設定しなくてもよい。また、本実施形態における積層板有限要素モデルM3は、5つの構成要素からなる例を説明するが、構成要素の数も解析対象となる部材などに応じて適宜変更可能である。
モデル作成部52aは、ベルト層14に対応する積層板有限要素モデル(図3参照)を作成した後、記憶部54から解析対象となる空気入りタイヤ1のCAD用のデータを読み込む。そして、モデル作成部52aは、読込んだデータに基づいて空気入りタイヤ1の環状構造の形状をモデル化した全体モデルを作成し、作成した全体モデルを有限要素に分割したタイヤの有限要素モデルを作成する。
さらに、モデル作成部52aは、タイヤと接触するリムのモデル(リムモデル、あるいはリムモデルを含むホイールモデル)、タイヤが接触する路面のモデル(路面モデル)等も必要に応じて適宜作成する。そして、モデル作成部52aは、積層板有限要素モデル(図3参照)、タイヤの有限要素モデル、その他のモデルを記憶部54に格納する。全体モデル、その他のモデルは、シミュレーションの方法に応じて、単独あるいは組み合わせて、後述する解析部52cにより実行される変形解析(シミュレーション)の解析用モデルとして利用される。
条件設定部52bは、モデル作成部52aで作成した積層板有限要素モデル(図3参照)を用いた解析、及びタイヤの有限要素モデルを用いた解析、それぞれを実行するための各種条件を設定する。条件設定部52bは、入力手段53で入力を検出した操作や記憶部54に記憶されている情報に基づいて各種条件を設定する。各種条件には、解析を実行する際の境界条件、荷重条件及び収束条件の他、解析時に条件を変更する設計変数、条件を変更しない固定値などが含まれる。設計変数には、例えば、タイヤの有限要素モデルのベルト層を構成するベルトの枚数、ベルトの配置位置、トレッド部のゴムまたはコートゴムのヤング率や幅、ベルトのコードの角度、エンド数(単位幅当たりのコード本数)や剛性、カーカス層の形状や寸法の少なくとも1つが含まれる。
本実施形態において、条件設定部52bは、後述する解析部52cにより実行される変形解析に際して、積層板有限要素モデルM3に対して与える所定の引張荷重として、空気入りタイヤ1の内圧によりベルト層14に加えられることが想定される張力を設定し、積層板有限要素モデルM3に対して与える所定の3点曲げ荷重として、接地したときに空気入りタイヤ1に作用する接地荷重(押し込み荷重もしくは押し込み変位)によりベルト層14に加えられることが想定される張力を設定する。なお、本実施形態において、条件設定部52bは、後述する解析部52cにより実行される変形解析に際して、積層板有限要素モデルM3における0度[deg]ベルトの配置位置を適宜変更する。
なお、本実施形態では、解析対象となるタイヤに実際に空気を充填させるタイヤの内圧試験を実施して、内圧によるタイヤの成長量(率)を部位ごとに測定する。部位には、トレッド部33のセンター溝21(例えば、図1の21参照)、中間溝22(例えば、図1の22参照)、ショルダー溝23(例えば、図1の23参照)がある。そして、本実施形態では、部位ごとに測定したタイヤの成長量(率)を記録しておく。
解析部52cは、モデル作成部52aにより作成された積層板有限要素モデル(図3参照)を用いた解析(シミュレーション)、及びタイヤの有限要素モデルを用いた解析(シミュレーション)を実行する。なお、解析の詳細は、後述する。
処理部52は、例えば、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部52は、本実施形態に係る各種処理を実行する場合、前記コンピュータプログラムを記憶部54から読み込んで、メモリに展開する。メモリに展開された前記コンピュータプログラムは、本実施形態に係る各種処理を実行するプロセスとして機能する。例えば、このプロセスは、記憶部54から前記解析モデルや入力データ等の各種データを適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータに基づいて、タイヤの解析に関する各種処理を実行する。なお、このプロセスは、タイヤの解析に関する各種処理に関わるデータを記憶部54に適宜格納し、必要に応じて記憶部54から適宜読み出して処理を進める。
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。記憶部54は、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。
次に、図5〜図14を参照しつつ、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を説明する。なお、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、上述した解析装置50により実現できる。
図5及び図6は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明するように、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、空気入りタイヤ1のベルト層14を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割した解析用モデルである積層板有限要素モデルを用いて実行される。
図5に示すように、解析部52cは、例えば、入力手段53を介して、タイヤの仕様の設定を受け付けると、タイヤの仕様を決定する(ステップS101)。例えば、解析部52cは、重荷重用ラジアルタイヤ(図1参照)にタイヤの仕様を決定する。
解析部52cは、記憶部54からタイヤの内圧試験の結果得られるタイヤの成長量(率)を取得する(ステップS102)。図7は、タイヤの内圧試験によるタイヤの成長量(率)のデータ例を示す図である。図7に示すように、解析部52cが記憶部54から取得するタイヤの成長量(率)のデータには、ベルト層14が4つのパーツから構成される構造(以下、4枚ベルト構造)のベルト層14を有する空気入りタイヤ1、およびベルト層14が5つのパーツから構成される構造(以下、5枚ベルト構造)のベルト層14を有する空気入りタイヤ1について、実際に内圧試験を実行したときのデータが含まれる。4枚ベルト構造では、ベルト層14に0度ベルトが配置されない構造に相当する。5枚ベルト構造構造は、ベルト層14の中央(3B位置)に0度ベルトが配置される構造(図4参照)に相当する。また、図7に示すように、解析部52cが記憶部54から取得するタイヤの成長量(率)のデータには、空気入りタイヤ1のトレット部33のセンター溝21、中間溝22、ショルダー溝23の各部位についての成長量および成長率が含まれる。なお、図7に示すデータは、一例であり、図7に示す例には限定されない。
続いて、解析部52cは、解析対象となる空気入りタイヤ1のベルト層14(図1参照)を構成するパーツが積層された積層板有限要素モデルM3(図3参照)を記憶部54から取得する(ステップS103)。積層板有限要素モデルM3は、モデル作成部52aにより作成される。モデル作成部52aは、記憶部54からベルト層14を構成する各パーツをモデル化するためのデータを読込む。続いて、モデル作成部52aは、記憶部54から読込んだデータを用いて、ベルト層14を構成する各パーツを順に積層してモデル化した後、有限かつ複数の要素に分割することにより、図3に示すような板状の積層板有限要素モデルM3を作成する。
続いて、解析部52cは、積層板有限要素モデルM3の変形解析(シミュレーション)のための境界条件および荷重条件を設定し(ステップS104)、積層板有限要素モデルM3の変形解析(シミュレーション)を実行する(ステップS105)。図8は、積層板有限要素モデルに対して引張荷重を与えるときのイメージを示す図である。図8に示すように、解析部52cは、積層板有限要素モデルM3に所定の引張荷重F1を与えたときの変形解析を実行する。所定の引張荷重F1は、例えば、空気入りタイヤ1の内圧によりベルト層14に加えられることが想定される張力であり、任意の値が適宜設定される。
続いて、解析部52cは、ステップS105における積層板有限要素モデルM3の変形解析の結果を出力する(ステップS106)。例えば、解析部52cは、積層板有限要素モデルM3に与える所定の引張荷重F1を適宜変更して、引張荷重F1に対応する積層板有限要素モデルM3の伸び(%)などを演算する。伸び(%)は、積層板有限要素モデルM3の全体の長さに対する伸び率の値である。そして、解析部52cは、ステップS102にて取得した実際のタイヤの内圧試験の結果(図7参照)と照らし合わせて、積層板有限要素モデルM3の変形解析の結果の中から、実際のタイヤの内圧試験におけるタイヤの成長量(率)の傾向に合致する解析結果を出力する。
図9は、積層板有限要素モデルに対して引張荷重を与えたときの解析結果の一例を示す図である。図9には、4枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルに作用する荷重(kgf)と荷重による伸び(%)との関係、及び5枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルM3に作用する荷重(kgf)と荷重による伸び(%)との関係を表すグラフを示している。上記の図7に示すように、4枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤ1の内圧試験によれば、ショルダー溝23の成長率は0.48%である。図9に示す4枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルのグラフに対して、ショルダー溝23の成長率0.48%を伸び(%)に当てはめると、対応する荷重は46.30(kgf)となる。さらに、図9に示す5枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルのグラフに対して、荷重46.30(kgf)を当てはめると、伸び(%)は、0.26%となる。さらに、上記の図7に示すように、5枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤ1の内圧試験によれば、ショルダー溝23の成長率は0.27%である。よって、5枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤ1の内圧試験の結果から得られるショルダー溝23の成長率と、5枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルM3の伸び(%)とがほぼ一致する。したがって、解析部52cは、5枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルM3の解析結果として、46.30(kgf)を出力する。すなわち、解析部52cは、空気入りタイヤ1の内圧がベルト層に作用することによりベルト層に加えられることが想定される張力(空気入りタイヤ1の内圧相当の張力)のうち、例えば、5枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤ1のショルダー溝23の成長率に対応する荷重として、46.30(kgf)を出力する。
解析部52cは、同様の方法により、空気入りタイヤ1のトレット部33が有するセンター溝21の成長率に対応する荷重、および空気入りタイヤ1のトレット部33が有する中間溝22の成長率に対応する荷重を出力できる。例えば、解析部52cは、図9に示す積層板有限要素モデルM3の解析結果と、図7に示す空気入りタイヤ1の内圧試験の結果とに基づいて、5枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤ1のセンター溝21の成長率に対応する荷重として、27.90(kgf)を出力する。また、解析部52cは、図9に示す積層板有限要素モデルM3の解析結果と、図7に示す空気入りタイヤ1の内圧試験の結果とに基づいて、5枚ベルト構造のベルト層を有する空気入りタイヤ1の中間溝22の成長率に対応する荷重として、40.49(kgf)を出力する。
続いて、解析部52cは、図6に示すように、タイヤ全体の有限要素モデルを記憶部54から取得し(ステップS107a)、境界条件及び荷重条件を設定する(ステップS107b)。境界条件および荷重条件を設定した後、解析部52cは、タイヤ全体の有限要素モデルの接地変形解析を実行する(ステップS107c)。そして、解析部52cは、ステップS107cにおける接地変形解析の解析結果を出力する(ステップS107d)。ステップS107dでは、空気入りタイヤ1の接地時にベルト層14に加えられることが想定される張力が得られる。なお、ステップS107dでは、空気入りタイヤ1の接地時にベルト層14に加えられることが想定される張力として、空気入りタイヤ1の部位ごと、例えば、トレット部33のセンター溝21、中間溝22、ショルダー溝23の各部位に対応する張力が得られる。
また、解析部52cは、解析対象となる空気入りタイヤ1のベルト層14を構成するパーツが積層された積層板有限要素モデルM3を記憶部54から取得し(ステップS108a)、境界条件及び荷重条件を仮設定する(ステップS108b)。ステップ108bにおいて、解析部52cが仮設定する荷重条件には、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重が含まれる。なお、解析部52cが仮設定する荷重条件のうち、所定の引張荷重は、上記ステップS106の変形解析の結果として出力される荷重の値に相当する。
境界条件及び荷重条件を仮設定後、解析部52cは、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重による積層板有限要素モデルM3の仮変形解析を実行する(ステップS108c)。ステップS108cにおける仮変形解析は、空気入りタイヤ1の部位ごと、例えば、トレット部33のセンター溝21、中間溝22、ショルダー溝23の各部位について実行してもよいし、ある特定の部位のみについて実行してもよい。
図10は、積層板有限要素モデルに対して引張荷重および3点曲げ荷重を与えるときのイメージを示す図である。図10に示すように、解析部52cは、積層板有限要素モデルM3に所定の引張荷重F1および所定の3点曲げ荷重F2を与えたときの変形解析を実行する。所定の引張荷重F1は、空気入りタイヤ1の内圧の作用によりベルト層14に加えられることが想定される張力であり、上記ステップS106にて出力される変形解析の結果に対応する。例えば、ショルダー溝23に対応する解析を実行する場合には、所定の引張荷重F1として、46.30(kgf)を設定する。所定の3点曲げ荷重F2は、空気入りタイヤ1が接地したときに空気入りタイヤ1に作用する接地荷重(押し込み荷重)によりベルト層14に加えられることが想定される張力であり、解析部52cにより、適宜、任意の値が仮設定される。また、解析部52cは、空気入りタイヤ1が接地した時にベルト層14に作用する荷重の状況に合わせて、例えば、図10に示すように、積層板有限要素モデルM3の一端を固定し、所定の引張荷重F1を加えた状態で、所定の3点曲げ荷重F2を加えたときの積層板有限要素モデルM3の変形を解析する。さらに、所定の3点曲げ荷重F2を加える際には、図10に示すように、3点曲げを実行するための支点間の距離Hを設定する。距離Hとしては、例えば、10mmから1500mm、好ましくは、20〜300mmとすればよく、本実施形態では、50mmに設定する。ステップS108cにおいて、解析部52cが実行する仮変形解析は、ステップS107cにて実行されるタイヤ全体の有限要素モデルの接地変形解析に対応する解析を、積層板有限要素モデルM3で実現するためのものである。積層板有限要素モデルM3の変形解析では、空気入りタイヤ1の接地時におけるベルト層14に加えられる力を、空気入りタイヤ1の内圧による引張荷重と空気入りタイヤ1の接地荷重による3点曲げ荷重とに基づいて再現する(図10参照)。
そして、解析部52cは、ステップS108cにおける仮変形解析の解析結果を出力する(ステップS108d)。ステップS108dでは、空気入りタイヤ1の接地時にベルト層14に加えられることが想定される張力(内圧による張力および接地荷重によりベルト層14に加えられる張力)が得られる。
ステップS107dの解析結果およびステップS108dの解析結果が出力されると、解析部52cは、ステップS107dの解析結果により得られるタイヤ接地時のベルト層14の張力と、ステップS108dの解析結果により得られるタイヤ接地時のベルト層14の張力とが一致するか否かを判定する(ステップS109)。ステップS109では、解析部52cにより、積層板有限要素モデルM3を用いたタイヤ接地時の解析を行うために、タイヤ全体の有限要素モデルを用いた空気入りタイヤ1の接地時の解析により得られるベルト層14の張力と、積層板有限要素モデルM3を用いた仮変形解析により得られるベルト層14の張力との合わせ込みが行われる。すなわち、ステップS109は、積層板有限要素モデルM3を用いたタイヤ接地時の解析を行うときに、タイヤ接地時にベルト層14に加えられる張力として設定すべき値を導出する処理である。
判定の結果、ステップS107dの解析結果により得られるタイヤ接地時のベルト層14の張力と、ステップS108dの解析結果により得られるタイヤ接地時のベルト層14の張力とが一致しない場合には(ステップS109、No)、解析部52cは、ステップS108bで仮設定した荷重条件(3点曲げ荷重)を修正する(ステップS110)。荷重条件(3点曲げ荷重)を修正後、解析部52cは、上記ステップS108bに戻って、ステップS108b〜ステップS109までの処理を再実行する。
ステップS109において、判定の結果、ステップS107dの解析結果により得られるタイヤ接地時のベルト層14の張力と、ステップS108dの解析結果により得られるタイヤ接地時のベルト層14の張力とが一致する場合には(ステップS109、Yes)、解析部52cは、積層板有限要素モデルM3の変形解析のための荷重条件を最終決定する(ステップS111)。
荷重条件の最終決定後、解析部52cは、積層板有限要素モデルM3の変形解析(層間歪の解析)を実行する(ステップS112)。解析部52cは、積層板有限要素モデルM3における0度ベルトの配置位置を適宜変更し、0度ベルトの配置位置ごとの層間歪を解析する。そして、解析部52cは、ステップS112における解析結果を出力し(ステップS113)、図5及び図6に示す処理手順を終了する。
上記積層板有限要素モデルM3(図3参照)やタイヤ全体の有限要素モデルは、有限要素法や有限差分法等の数値解析手法を用いて変形解析などを行うために用いるモデルである。例えば、本実施形態では、積層板有限要素モデルM3やタイヤ全体の有限要素モデルの変形解析(図5及び図6など)などに有限要素法(FEM:Finite Element Method)を使用する。このため、積層板有限要素モデルM3やタイヤ全体の有限要素モデルは、有限要素法に基づいて作成される。有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤのような構造体に対して好適に適用できる。本実施形態における変形解析(図5及び図6など)などに適用できる解析手法は有限要素法に限られず、有限差分法(FDM:Finite Difference Method)や、境界要素法(BEM:Boundary Element Method)等も使用できる。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。
上記積層板有限要素モデルM3(図3参照)やタイヤ全体の有限要素モデルは、複数かつ有限個の要素に分割される。複数の要素は、それぞれ複数の節点で構成され、例えば、3次元形状の解析モデルとなる。タイヤモデルが有する要素は、例えば、3次元体では、四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標や円筒座標を用いて逐一特定される。
図11〜図15を参照しつつ、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法により得られる解析結果について説明する。
図11は、5枚ベルト構造のベルト層14に対応する積層板有限要素モデルM3の変形解析の結果と、5枚ベルト構造のベルト層14を有する空気入りタイヤ1の実験結果とを比較する図である。図11に示すように、5枚ベルト構造のベルト層14を有する空気入りタイヤ1の内圧試験の結果から得られるセンター溝、中間溝、ショルダー溝の成長率と、5枚ベルト構造のベルト層に対応する積層板有限要素モデルM3の伸び(%)とがほぼ一致するという結果が得られた。すなわち、ベルト層14に対応する積層板有限要素モデルM3の変形解析により、空気入りタイヤ1の内圧成長を計測するための試験と同等の解析結果を得ることができる。このようなことから、本実施形態によれば、簡便かつ精度の良い空気入りタイヤ1の性能解析を実現できる。
図12は、空気入りタイヤ1の走行実験の結果と、積層板有限要素モデルM3の変形解析の結果得られるベルト層14の層間歪の解析結果との相関関係を0度ベルトの配置位置ごとに示す図である。図12では、例えば、5枚ベルト構造D1〜D3に対応する走行距離および層間歪の値を、4枚ベルト構造に対応する値を「100」としたときのインデックスで表している。図12には、4枚ベルト構造、5枚ベルト構造D3、5枚ベルト構造D2、5枚ベルト構造D1のベルト層14について、走行実験の結果と、層間歪の解析結果との相関関係を示している。上述したように、4枚ベルト構造とは、4つのパーツから構成され、0度ベルトを有さない構造であり、5枚ベルト構造D3とは、5つのパーツから構成され、中央の層(3B位置、図4参照)に0度ベルトが配置される構造である。また、5枚ベルト構造D2とは、5つのパーツから構成され、空気入りタイヤ1の内径側から2番目の層(2B位置、図4参照)に0度ベルトが配置される構造であり、5枚ベルト構造D1構造とは、5つのパーツから構成され、空気入りタイヤ1の最内径の層(1B位置、図4参照)に0度ベルトが配置される構造である。
図12に示すように、空気入りタイヤ1の走行実験では、0度ベルトを含むベルト層14を有する空気入りタイヤ1ほど走行距離が長く、層間歪が少ない(耐久性が高い)という結果が得られている。一方、積層板有限要素モデルM3の変形解析では、0度ベルトを含むベルト層14に対応する積層板有限要素モデルM3ほど、層間歪が少ないという結果が得られている。よって、積層板有限要素モデルM3の変形解析により、0度ベルトを有する空気入りタイヤ1ほど耐久性が高いという実情に合致する傾向が再現されている。
また、図12に示すように、積層板有限要素モデルM3の変形解析では、0度ベルトの配置位置ごとの層間歪が得られる。図12に示す例では、5枚ベルト構造D1のベルト層14が、5枚ベルト構造D3あるいは5枚ベルト構造D2を有するベルト層14によりも層間歪が最も少なく、耐久性も高いことが分かる。このように、積層板有限要素モデルM3の変形解析により、0度ベルトの配置位置の違いによる空気入りタイヤ1の耐久性の違いを解析することができる。
本実施形態では、ベルト層14を構成するパーツを積層した積層板有限要素モデルM3を用いて、空気入りタイヤ1の接地時のベルト層における層間歪の解析を行うので、空気入りタイヤ1全体の有限要素モデルを用いて解析を行うよりも、解析に必要なデータ量を大幅に削減できる。また、上述してきたように、空気入りタイヤ1の接地時の層間歪(空気入りタイヤ1の耐久性)の傾向を良好に再現することができる。このようなことから、本実施形態によれば、負担を軽減しつつ、簡便かつ精度の良いタイヤの性能解析を実現できる。
図13は、本実施形態に係る引張荷重および3点曲げ荷重による解析結果と従来の3点曲げによる解析結果とを比較する図である。図13では、例えば、5枚ベルト構造D1〜D3に対応する層間歪の値を、4枚ベルト構造に対応する値を「100」としたときのインデックスで表している。図14は、本実施形態に係る引張荷重および3点曲げ荷重による積層板有限要素モデルの変形例を示す図である。図15は、従来の3点曲げ方法による積層板有限要素モデルの変形例を示す図である。なお、従来の3点曲げ試験については、例えば、特許第4822711号公報などに開示されている。
本実施形態に係る引張および3点曲げによる変形解析では、例えば、図14に示すように、4枚ベルト構造、5枚ベルト構造D3、5枚ベルト構造D2、5枚ベルト構造D1のベルト層14に対応する各積層板有限要素モデルに対して、一端を固定した状態で引張荷重および3点曲げ荷重を与えたときの変形解析を実施する。一方、比較例となる従来の3点曲げ方法を用いた変形解析では、例えば、図15に示すように、4枚ベルト構造、5枚ベルト構造D3、5枚ベルト構造D2、5枚ベルト構造D1のベルト層14に対応する各積層板有限要素モデルに対して、両端を固定しない状態で、3点曲げ荷重のみを与えたときの変形解析を実施する。その結果、図13に示すように、本実施形態に係る引張および3点曲げによる変形解析では、0度ベルトを有するモデルほど、層間歪が少ないという結果が得られている。この結果は、図12に示す例と同様に、ベルト層14が0度ベルトを有するほど、耐久性が高いという実情に合致する傾向が良好に再現されている。一方で、図13に示すように、比較例となる従来の3点曲げ方法を用いた変形解析では、0度ベルトを有しないベルト層14の方が、0度ベルトを有するベルト層14よりも層間歪が少ないという結果となり、ベルト層14が0度ベルトを有するほど、耐久性が高いという実情に合致する傾向を再現できていない。このようなことから、本実施形態では、引張および3点曲げによる変形解析により、ベルト層14が0度ベルトを有するほど、耐久性が高いという実情に合致した解析を実現できる。
また、本実施形態では、ベルト層14を構成するパーツを積層してモデル化した積層板有限要素モデルを用いて、空気入りタイヤ1の内圧成長およびベルト層14の層間歪(空気入りタイヤ1の耐久性)などを、簡便かつ精度良く再現するタイヤのシミュレーション方法について説明した。しかしながら、ベルト層14を構成するパーツをモデル化する場合に限定されるものではなく、空気入りタイヤ1を構成するベルト層14以外のパーツを積層したモデルを作成し、空気入りタイヤ1の内圧成長や耐久性などを解析に利用してもよい。また、空気入りタイヤ1以外でも、複数の材料を組合せて生成される製品に、本実施形態に係る解析の方法を適用してもよい。
また、本実施形態では、解析装置50が、タイヤのシミュレーションにより得られる解析結果として、例えば、ベルト層14の層間歪のデータを出力でき、これにより、空気入りタイヤ1の耐久性の評価が可能となる結果、タイヤ特性の評価に寄与できる。層間歪を小さくすることで耐久性に優れたタイヤの設計が可能となる。また、積層板モデルの引張解析では成長量が計算でき、これにより、タイヤの偏摩耗性の評価が可能となる。トレッドのセンター部、ショルダー部、それらの間の中間部の成長を小さく、かつ、均一にすることで、耐偏摩耗性に優れたタイヤを設計することができる。
なお、本実施形態に係るタイヤのシミュレーションの結果に基づいて、タイヤを製造してもよい。例えば、本実施形態に係るタイヤのシミュレーションの結果により得られるベルト層14の層間歪および成長量のデータに基づいて、ベルト層14のベルト幅、角度、配置、エンド数および材料の応力−歪特性などの設計パラメータを迅速かつ適切に決定し、最適なベルト構造の選択が可能となる。そして、この設計方法に基づいて生成したベルト層14を含むグリーンタイヤを生成することによりタイヤを製造する。
1 空気入りタイヤ
50 解析装置
51 入出力装置
52 処理部
52a モデル作成部
52b 条件設定部
52c 解析部
54 記憶部

Claims (6)

  1. コンピュータがタイヤの解析を行うタイヤのシミュレーション方法であって、
    前記コンピュータが、
    前記タイヤのベルト層を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割して板状の前記タイヤの解析用モデルを作成するステップと、
    前記解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を行うステップと
    を実行することを特徴とするタイヤのシミュレーション方法。
  2. 前記コンピュータにより実行される前記解析を行うステップにおいて、前記解析用モデルに対して与えられる前記所定の引張荷重は、充填される空気による前記タイヤの内圧により前記ベルト層に加えられる張力に相当し、前記解析用モデルに対して与えられる所定の3点曲げ荷重は、接地時に前記タイヤに作用する接地荷重により前記ベルト層に加えられる張力に相当することを特徴とする請求項に記載のタイヤのシミュレーション方法。
  3. 前記コンピュータが、
    前記解析を行うステップにおいて、前記タイヤに空気を充填する試験を行って前記タイヤの所定部位ごとの成長率を実測した結果に基づいて前記所定の引張荷重の値を決定することを特徴とする請求項に記載のタイヤのシミュレーション方法。
  4. 前記コンピュータが、
    前記解析を行うステップにおいて、前記タイヤの全体モデルを用いて前記タイヤが接地したときに前記ベルト層に加えられる荷重の計算結果に基づいて、前記所定の3点曲げ荷重の値を決定することを特徴とする請求項に記載のタイヤのシミュレーション方法。
  5. コンピュータにより実行されるタイヤの解析結果に基づいて、タイヤ特性を評価するタイヤ特性の評価方法であって、
    前記コンピュータが、
    前記タイヤのベルト層を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割して板状の前記タイヤの解析用モデルを作成するステップと、
    前記解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を行うステップと、
    前記解析により得られる前記ベルト層の層間歪のデータを出力するステップと
    を実行することを特徴とするタイヤ特性の評価方法。
  6. タイヤを製造するタイヤの製造方法であって、
    コンピュータに、前記タイヤのベルト層を構成するパーツを積層して有限かつ複数の要素に分割して板状の前記タイヤの解析用モデルを作成するステップと、
    前記解析用モデルに対して、所定の引張荷重および所定の3点曲げ荷重を与えたときの解析を実行させるステップと、
    前記解析により得られる前記ベルト層の層間歪のデータに基づいて、前記ベルト層の設計方法を決定するステップと、
    前記設計方法に従って生成したベルト層を含むグリーンタイヤを生成するステップと
    を含むことを特徴とするタイヤの製造方法。
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