JP6061674B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法の如き方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いるトナーに関する。
近年、プリンターや複写機において高速化や低消費電力化が求められており、トナーの定着性能の改善が求められている。すなわち、より低い温度で速やかに溶融することにより、素早く、かつ低エネルギーで定着させることができ、低温定着性に優れるトナーの実現が望まれている。
これらの要求を満たすためには、結着樹脂の低分子量化などの手法でトナーを軟化させる必要があるが、単純にトナーを軟化させるだけでは耐熱保存性が低下してしまう。そこで低温定着性と耐熱保存性を両立するトナーを実現するために、結晶構造を取りうる部位を主成分として有する樹脂(以下、結晶性樹脂ともいう。)を結着樹脂として用いる手法が検討されている。結晶性樹脂は一般的に熱に対する粘弾性変化の応答速度に優れる一方、樹脂分子の主鎖が絡まり構造をとりにくいため外力に対して脆い性質を示す傾向にある。そのため、単に結晶性樹脂を導入し低温定着性を向上させようとした場合には、上記結晶性樹脂の特徴により、定着画像の折り曲げに対する耐性が低くなり、折り曲げによる画像剥がれが発生しやすい傾向にある。また、結晶性樹脂は溶融後に急激に粘度が低下するため、定着工程において所望の粘度に制御するのが難しく、定着可能温度領域が狭くなることが多い。さらに、結晶性樹脂は非晶性樹脂に比べて体積抵抗が低いため、電荷の漏えいが生じやすい傾向にある。そのため、結晶性樹脂を結着樹脂として用いたトナーにおいては、良好な帯電性能を得ることが困難な場合があった。上記課題を解決するために、種々の工夫がなされたトナーが提案されている。
特許文献1では、架橋構造により溶融後の粘度低下を抑制した結晶性樹脂を結着樹脂として用いることが提案されている。しかしながら、結晶性樹脂のみの構成であるため主鎖の絡まり合いが起きにくく、折り曲げ強度の向上は期待できない。また帯電性能についても不十分である可能性がある。
また特許文献2では、非晶性スチレンアクリルモノマーと結晶性のモノマー及び架橋剤を含むモノマー組成物を共重合した結着樹脂を用いたトナーが提案されている。しかしながら、該モノマー組成物中の結晶性モノマーの割合が非常に少ないために十分に結晶化することができず、多くが非晶化してしまっている(結晶化度が低い)と考えられる。そのため、結晶性樹脂の低温定着化効果を最大限に発揮しているとは言い難い。
また特許文献3では、結晶性ポリエステルと、非晶性スチレンアクリル樹脂とを混合したトナーが提案されている。
しかしながら、結晶性ポリエステルは主鎖結晶性樹脂であり、周囲の樹脂により結晶化が阻害され結晶化度が低下しやすいという傾向をもっている。そのため、製造時の加熱などによりトナーの結晶化度が大きく低下してしまい低温定着性が十分発揮されない懸念がある。また、定着後の紙面上においては、結晶性ポリエステルと非晶性樹脂が混じり合いガラス転移温度が低下してしまっていると考えられる。そのため、低い温度であっても定着画像がべたつき、定着画像を重ねて放置した場合紙同士がくっついてしまい、剥がした際に画像に欠損が起きてしまう(画像積載性が不十分)と考えられる。
このように、結晶性樹脂を添加して低温定着性能を向上させたトナーにおいて、低温定着性能と耐熱保存性を、かつ十分な帯電性能、定着画像の折り曲げ強度を有し、定着可能温度領域が広く、および高い画像積載性を有するトナーが待望されている。
特開2009−265644号公報 特開平7−181726号公報 特開2005−266546号公報
本発明の目的は、上述した従来の問題点を解決したトナーを提供することにある。
すなわち、結晶性樹脂を添加して低温定着性能を向上させたトナーにおいて、低温定着性能と耐熱保存性を両立し、かつ十分な帯電性能、定着画像の折り曲げ強度、広い定着可能温度領域、及び高い画像積載性を有するトナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂及び着色剤を含有するコアと、該コアを被覆するシェルを有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、
i)有機構造体の骨格に対し、脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である側鎖を有し、該側鎖間で結晶構造を取りうる構造を有する側鎖結晶性樹脂であり、
ii)融点Tmが50.0℃以上90.0℃以下であり、
該シェルを構成する樹脂は、ガラス転移温度Tgが50.0℃以上(Tm+35.0)℃以下であり、
該トナーは、
i)温度Tm+10.0℃における貯蔵弾性率G’(Tm+10.0)が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、
ii)温度Tm+50.0℃における貯蔵弾性率G’(Tm+50.0)と該G’(Tm+10.0)との比G’(Tm+10.0)/G’(Tm+50.0)が10.0以下である、
ことを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、低温定着性と耐熱保存性とが両立されており、かつ十分な帯電性能、定着画像の折り曲げ強度、広い定着可能温度領域、及び高い画像積載性を有するトナーを提供することができる。
本発明のトナーは、コアシェル構造を有するトナー粒子を有するトナーであって、本発明者らは、コアを形成する結晶性樹脂である結着樹脂の融点、シェルを構成する樹脂(シェル樹脂)のガラス転移温度(Tg)、およびトナーの粘弾性を制御することにより、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
定着工程においては、高速せん断を受けるため、溶融した結着樹脂は軟化したシェル樹脂に含浸し、両者の主鎖が絡み合った状態になると考えられる。そして、定着ローラー通過後には、定着画像は急激に室温まで冷却される。この際、シェルのTgが結晶性樹脂のTmに近く制御されていると、両者の固化はほぼ同時にかつ急激に起き、シェル樹脂と結着樹脂の主鎖同士が絡み合ったまま固化される。そのため、定着画像の脆さは改善される。また、結着樹脂が側鎖結晶性樹脂である場合には、主鎖が絡み合った状態でも、側鎖部分は結晶化が可能であるため、結晶化度の低下は抑制される。それにより、低温定着性と耐熱保存性の両立は維持することができると考えられる。また、周囲のシェル樹脂のガラス転移温度低下を最低限に抑えることができるため、良好な画像積載性が得られていると考えられる。
前述したコアを構成する結着樹脂のTmと、シェルを構成する樹脂のTgについて詳細に記載する。
本発明のトナーにおいて、シェルを構成する樹脂のガラス転移温度Tgは、50.0℃以上Tm+35.0℃以下(Tmは結着樹脂の融点)であることが必要である。より好ましくは50.0℃以上Tm+10.0℃以下である。
Tgが50.0℃未満の場合、トナーの耐熱保存性が低下してしまう。TgがTm+35.0℃より大きい場合、結着樹脂の溶融とシェル樹脂の軟化のタイミングがずれてしまうため主鎖の絡まり合いが起きる温度が高くなり低温定着性の面で不十分である。また両者の固化も同時ではないため冷却時に主鎖の絡まりがほどけやすくなってしまい、定着強度が弱くなり、定着画像を折り曲げた際に剥がれてしまう。該Tgはシェル樹脂の組成により制御することができる。
本発明において、トナー中のシェル樹脂は、例えば、該トナーのTHF可溶分中のCHX不溶分として、以下の手法で一部を抽出することができる。
該トナーとTHFとを450mg/mlの濃度で混合し、室温にて10時間、試料の合一体がなくなるまで充分に振とうし、THFと試料を良く混ぜ、更に7日間静置する。その後、上記溶解液を冷却高速遠心機(例えばH−9R(コクサン社製))を用い、10℃環境にて15000r/minで60分間遠心分離することで、上澄み液と沈降物とに分離し上澄み液を採取する。さらに上澄み液を窒素ガスにてバブリングしながら上澄み液を50%減少させ濃縮液[X]を作製する。
その後、CHX100ml中に、上記濃縮液5mlを添加し不溶分を生成させる。不溶分が生成した液を冷却高速遠心機(例えばH−9R(コクサン社製))を用い、10℃環境にて15000r/minで60分間遠心分離することで、上澄み液と沈降物(CHX不溶分)とに分離して、上澄み液を除去する。
除去後の沈殿物を室温にて24時間静置させた後、真空乾燥機(40℃)において24時間脱溶媒をし、THFを除去して、THF可溶分中のCHXに対して不溶分となった成分を採取する。
上記Tgは該CHX不溶分のDSCを測定することにより算出することができる。該CHX不溶分の可逆比熱変化曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をTgとする。尚、DSCの測定方法については後述する。
本発明において、該結着樹脂は側鎖結晶性であることが必要である。側鎖結晶性樹脂とは有機構造体の骨格(主鎖)に対し、脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である側鎖を有する樹脂であって、該側鎖間で結晶構造を取りうる構造を有した樹脂である。結晶性ポリエステルに代表される主鎖結晶性樹脂が主鎖の折りたたみによって結晶化するのに対し、側鎖結晶性樹脂は一分子の側鎖同士で結晶化していると考えられる。そのため、ごく狭い領域でも結晶化でき、主鎖結晶性樹脂に比べ周囲の環境による結晶化度の低下が起きにくいと考えられる。そのため該結着樹脂として側鎖結晶性樹脂を用いることで、よりすぐれたシャープメルト性を有し、低温定着性と耐熱保存性を両立するトナーを得ることができると考えられる。
結着樹脂として主鎖結晶性樹脂を用いた場合、主鎖の絡み合いにより折りたたみが阻害されてしまい、結晶化度が低下し、またシェル樹脂のガラス転移温度を低下させてしまうため、画像積載性が低下してしまう可能性がある。
本発明において、該結着樹脂の融点Tmは50.0℃以上、90.0℃以下であることが必要である。より好ましくは50.0℃以上、80.0℃以下である。Tmが50.0℃未満であると耐熱保存性が低下し、90.0℃より大きいと低温定着性の観点において不十分である。融点Tmは結着樹脂のモノマー種や分子量により制御することができる。
本発明に係る結着樹脂は結晶性樹脂であり、THFに溶解しにくいため、結着樹脂の融点Tmは、上記抽出操作におけるTHF不溶分の示差走査熱量を測定することにより算出できる。該THF不溶分の示差走査熱量測定(DSC測定)で得られる温度−吸熱量曲線の最大吸熱ピーク温度をTmとする。DSCの測定方法については後述する。
また、該トナーの貯蔵弾性率G’は以下の規定を満たすことが必要である。
Tm+10.0℃における該トナーの貯蔵弾性率G’(Tm+10.0)が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、かつTm+50.0℃における該トナーの貯蔵弾性率G’(Tm+50.0)とG’(Tm+10.0)の比、G’(Tm+10.0)/G’(Tm+50.0)が10.0以下である。融点Tmが50.0℃以上、90.0℃以下であるトナーにおいて、貯蔵弾性率がこの規定を満たすことで、低温定着性と広い定着可能温度領域の両立を達成することができる。G’(Tm+10.0)が1.0×10未満であると、トナーの溶融粘度が低すぎ、溶融したトナーが定着ローラーから離型しない現象(ホットオフセット)が起きる場合がある。また、G’(Tm+10.0)が1.0×10より大きいと、トナーが十分に軟化しないため低温定着性の面で不十分である。さらに、G’(Tm+10.0)/G’(Tm+50.0)が10.0より大きい場合、トナー溶融後の粘度低下が大きすぎ、定着可能温度領域の減少が起きる場合がある。該G’は結着樹脂である側鎖結晶性樹脂のモノマー中に多官能モノマーやコモノマーの添加することによって制御できるが、結晶化度の低下の観点から、多官能モノマーを用いる方が好ましい。貯蔵弾性率G’の測定方法については後述する。
結着樹脂である側鎖結晶性樹脂は、側鎖に結晶性の官能基を有する樹脂であれば特に限定されない。例えば、α−オレフィン系樹脂、アルキルアクリレート系樹脂、アルキルメタクリレート系樹脂、アルキルエチレンオキシド系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリルアミド系樹脂などが使用できる。
中でも、下式であらわされる部分構造を有することにより、一層本発明の効果を発揮しやすい。

(式中、R1は炭素数が18以上34以下のアルキル基であり、R2は水素またはメチル基である。)
該成分は、粘弾性制御を行っても結晶化度が低下しにくく、好ましい。該成分のアルキル部分の鎖長は融点制御の観点からC18以上C34以下が好ましい。
本発明のトナーにおけるシェルの平均膜厚は3.0nm以上、500.0nm以下であることが、定着画像の折り曲げ強度と定着阻害のバランスの観点から好ましい。シェルの平均膜厚が3.0nm以上500.0nm以下であれば、シェル樹脂と結着樹脂の主鎖の絡み合いによる定着画像の折り曲げ時の耐剥がれ性が良好に向上し、かつシェル樹脂による定着阻害もほとんどない。またシェルの膜厚が上記の範囲内であることで、コアを十分に被覆することができ、帯電性も向上させることができる。尚、シェル平均膜厚の算出方法については後述する。
また該シェル樹脂のSP値(SP1)は、該結着樹脂のSP値(SP2)よりも大きく、両者の差が0.5以上2.0以下であることが好ましい。SP2よりもSP1が大きいことでより明確なコアシェル構造を得ることができる。またSP1とSP2の差が0.5以上であることで、定着後の画像におけるシェル樹脂由来成分のガラス転移温度低下を抑制でき、画像積載性が向上する。また両者の差が2.0以下であることで、溶融した結着樹脂が軟化したシェル樹脂により含浸しやすくなり主鎖の絡まりが促進されるため、定着画像の折り曲げ強度が向上すると考えられる。尚、SP値の算出方法については後述する。
本発明において、該トナーのDSC曲線のTmにおける吸熱ピーク半値幅は8.0℃以下であることが好ましい。この半値幅はトナーの結晶化度と相関があると考えられ、半値幅が小さいほど、結晶化度が高いと考えられる。半値幅が8.0℃以下であれば、結晶性樹脂のもつシャープメルト性がより高まる。該半値幅はトナーのDSCを測定することにより算出できる。該トナーの比熱変化曲線を測定し、Tmの吸熱ピークにおいてベースラインからピーク高さの2分の1の値を示す部分の温度幅を半値幅とした。尚、DSCの測定方法については後述する。
本発明において、トナーの製法は特に限定されない。すなわち粉砕法や溶解懸濁法や乳化凝集法、懸濁重合法の如き公知のトナー製法を用いることができる。中でもシェル樹脂を表面に均一に偏在させ、明確なコアシェル構造を得るといった観点から水系媒体中で粒子を形成させる製法が好ましい。特に、溶剤の使用量低減、工程数の低減などの観点から懸濁重合法が好ましい。
以下、懸濁重合法を用いた場合のトナー粒子の具体的な製造方法を説明するが、前述したように、本発明は懸濁重合法に限られたものではない。
まず、トナー粒子の結着樹脂となる結晶化可能な官能基を有するモノマーを含むモノマー組成物、シェル樹脂、及びその他トナー組成物を溶剤に溶解もしくは分散させる。
次いで、上記溶液もしくは分散液を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることも出来る。
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら重合反応を行い、完結させる事でトナー粒子が形成される。その後、懸濁液を冷却し、必要に応じて洗浄を行い、種々の方法によって乾燥、分級を行うことでトナー粒子を得ることが出来る。
トナー懸濁液を冷却する際、ゆっくり冷却することで、結着樹脂である側鎖結晶性樹脂によるシェル樹脂の排除が促進され、明確なコアシェル構造を得ることができる。
懸濁重合法の場合、前述のシェル膜厚は導入するシェル樹脂量によって制御することができる。また、シェル樹脂のSP値SP1はシェル樹脂を構成するモノマーの組成を変更することで制御することができる。結着樹脂のSP値SP2についても結着樹脂を構成するモノマー組成を変更することで制御できるが、結晶化可能な部位を持たないモノマーを導入した場合、トナーのTmにおける吸熱ピークの半値幅が広がる傾向にあるため注意が必要である。 上記式で表される部分構造を有する側鎖結晶性樹脂を得るための長鎖アルキル基を有するモノマーとしては、公知のものを用いることができる。具体的には、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、テトラトリアコンチルアクリレートといった長鎖アルキルアクリレート又は長鎖アルキルメタクリレートが挙げられる。該モノマーは複数用いていてもよく、共重合していてもよい。
また、該結着樹脂は2つ以上の官能基を有するモノマー(多官能性モノマー)を共重合してもよい。多官能性モノマーとしては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレートの如き二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物。
また、該結着樹脂にはさらにコモノマーを共重合してもよい。共重合されるコモノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニルの如きビニルエステル酸;アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルの如きアクリル酸エステル類;前記アクリル酸エステル類のアクリルをメタクリルに変えたメタクリル酸エステル類;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸アミノエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロールの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタレン類;アクリロニトリル、メアクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。なお、コモノマーは、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明におけるシェル樹脂としては、トナーの結着樹脂として使用し得るものであれば特に限定されず、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。中でも、電子写真特性の観点からビニル樹脂やポリエステル樹脂であることが好ましい。
該ビニル系モノマーとしては、公知のラジカル重合性モノマーを重合したものを用いることができる。ラジカル重合性モノマーとして具体的には、結着樹脂に用いることができるコモノマーとして例示したモノマー類をあげることができる。なお、ラジカル重合性モノマーは、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いても良い。
該ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールの反応により得ることができる。
このようなポリエステル樹脂を得るための多価アルコールモノマーとしては、公知のアルコールモノマーを用いることができる。具体的には以下のものが使用できる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールの如きアルコールモノマー、ポリオキシエチレン化ビスフェノールAの如き2価のアルコール。1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール、ペンタエリスリトールの如き3価のアルコール。
このようなポリエステル樹脂を得るための多価カルボン酸モノマーとしては公知のカルボン酸モノマーが使用できる。具体的には、例えば以下のものが使用できる。シュウ酸セバシン酸の如きジカルボン酸及び、これらの酸無水物または低級アルキルエステル;トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパンの如き3価以上の多価カルボン酸及び、これらの酸無水物または低級アルキルエステル。
本発明に用いることのできるポリエステル樹脂は、公知のポリエステル合成法で製造することができる。例えばジカルボン酸成分とジアルコール成分をエステル化反応、又はエステル交換反応をせしめた後、減圧化又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させてポリエステル樹脂を得る。
エステル化のときには必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、テトラブチルチタネート、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマニウム如き通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いることができる。反応温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
また、ポリマー末端のカルボキシル基を封止することでポリエステル樹脂の酸価を制御制御することもできる。
末端封止にはモノカルボン酸、モノアルコールを用いることができる。モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。また、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及び高級アルコールが使用可能である。
本発明のトナーは、着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。従来知られている種々の染料や顔料等、公知の着色剤を用いることができる。黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い、黒色に調色されたものが使用される。イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー用の着色剤としては、例えば以下に示す着色剤を用いることができる。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、モノアゾ化合物、ジズアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクドリン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインヂゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が挙げられる。
シアン着色料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
本発明のトナーには離型性付与のため離型剤を含有させてもよい。本発明に用いられる離型剤としては特に制限はなく公知のものが利用できる。具体的には、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、エステルワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明に用いることのできる重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤など様々なものは使用できる。使用できる過酸化物系重合開始剤としては、有機系としては、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられる。無機系としては、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。具体的には、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネートなどのパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサンなどのパーオキシケタール;ジーt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられる。また、使用できるアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が例示される。なお、必要に応じてこれら重合開始剤を2種以上同時に用いることもできる。
また、本発明のトナー粒子は、荷電制御剤を使用しても良い。中でも、トナー粒子を負荷電性に制御する荷電制御剤を用いることが好ましい。該荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。また、スルホン酸基、スルホン酸塩基、或いは、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸樹脂は好ましく用いることができる。
さらに本発明のトナー粒子は磁性体を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、該磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属が挙げられる。或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金及びその混合物が挙げられる。
本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。さらに、本発明のトナーは、必要に応じて流動性向上剤以外の外部添加剤をトナー粒子に混合されていてもよい。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
以下に、本発明のトナーにかかる物性値の測定方法について説明する。
(1)樹脂及びトナーの示差走査熱量測定(DSC測定)方法
樹脂の融点及び半値幅、ガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、測定対象のサンプル3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れる。リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲20℃から140℃間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度20℃から140℃の範囲において比熱変化が得られる。示差走査熱量測定で得られる温度−吸熱量曲線より、前述のTg、Tm、半値幅を算出した。
(2)トナーの貯蔵弾性率G’の測定方法
本発明におけるTm+10.0℃における該トナーの貯蔵弾性率G’(Tm+10.0)と、融点Tm+50.0℃における該トナーの貯蔵弾性率G’(Tm+50.0)は以下の方法で測定する。
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。測定試料としては、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、トナーを直径8.0mm、厚さ2.0±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料をパラレルプレートに装着し、室温(25.0℃)からTm+5.0℃まで昇温して、試料の形を整えた後、粘弾性の測定開始温度まで冷却し、測定を開始する。この際、初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットすることが、重要である。
測定は、以下の条件で行う。
1) 直径8.0mmのパラレルプレートを用いる。
2) 周波数(Frequency)は1.0Hzとする。
3) 印加歪初期値(Strain)を0.1%に設定する。
4) 0℃〜150℃の間を、昇温速度(Ramp Rate)2.0℃/minで測定を行う。尚、測定においては、以下の自動調整モードの設定条件で行う。自動歪み調整モード(Auto Strain)で測定を行う。
5) 最大歪(Max Applied Strain)を20.0%に設定する。
6) 最大トルク(Max Allowed Torque)200.0g・cmとし、最低トルク(Min Allowed Torque)0.2g・cmと設定する。
7) 歪み調整(Strain Adjustment)を20.0% of Current Strainと設定する。
上記の方法により、温度30℃以上200℃以下の温度範囲において貯蔵弾性率G’を測定した際のTm+10.0℃における貯蔵弾性率G’の値をG’(Tm+10.0)、Tm+50.0℃における貯蔵弾性率G’の値をG’(Tm+50.0)とした。
(3)シェルの平均膜厚算出方法
前記シェルの平均膜厚は、トナー粒子の断面の形態を測定することによって求めることができる。トナー粒子の断面の形態を測定する具体的方法としては、まず、光硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、紫外線を照射して該エポキシ樹脂を硬化させる。得られた硬化物を、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて切断し、薄片状のサンプルを作製する。該サンプルに四酸化ルテニウムを用い染色を施した後、透過電子顕微鏡(TEM)(HITACHI社製 H7500)を用い、加速電圧120kVの条件でトナーの断層形態を観察する。上記した観察方法において、四酸化ルテニウムによりトナー粒子の非晶部が強く染色される。その結果、本発明における非晶性樹脂を主成分とするシェル部分が染色され、染色されていない側鎖結晶性樹脂を主成分とするコア部分がコントラストとして観察可能となる。尚、観察倍率は20000倍とした。
また、上記写真撮影により得られた画像は、インターフェースを介して、600dpiで読み取り、画像解析装置WinROOFVersion5.0(マイクロソフト社製−三谷商事)に導入した。
得られたTEM写真をもとに、トナー粒子の断面においてトナー粒子の表面同士を直線で結んだときに最も長い直線をトナー粒子の長軸とし、その長さを長軸直径R(nm)とする。長軸上における二つのコア/シェル界面間の長さをr(nm)としたときに、(R−r)/2(nm)をシェルの膜厚とした。
さらにこの測定をトナー100個について行い、その平均値をシェル平均膜厚とした。
(4)結着樹脂及びシェル樹脂のSP値の算出方法
本発明において、結着樹脂のSP値(SP2)、シェル樹脂のSP値(SP1)はFedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求めた。
まず、結着樹脂又は樹脂(以下、樹脂等ともいう)を構成する繰り返しユニットのSP値を以下のようにして求める。ここで結着樹脂又は樹脂を構成する繰り返しユニットとは、結着樹脂又は樹脂がビニル系樹脂の場合(ビニル系モノマーの重合反応によって該樹脂を構成する重合体を生成している場合)、該ビニル系モノマーの二重結合が重合によって開裂した状態の分子構造を意味する。
例えば、繰り返しユニットのSP値(σ)を計算する場合、その繰り返しユニットの分子構造中の原子又は原子団に対して、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147−154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(cal/mol)及びモル体積(Δvi)(cm/mol)を求め、下記式(1)より算出する。
式(1): σ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
樹脂等のSP値(σ)は、その樹脂を構成する繰り返しユニットの蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)を繰り返しユニット毎に求め、各繰り返しユニットの樹脂中におけるモル比(j)との積をそれぞれ算出し、各繰り返しユニットの蒸発エネルギーの総和をモル体積の総和で割ることによって求め、下記式(2)より算出する。
式(2): σ={(Σj×ΣΔei)/(Σj×ΣΔvi)}1/2
例えば、樹脂がX、Yの2種類の繰り返しユニットより構成されるものと仮定した時、各繰り返しユニットの組成比をWx、Wy(質量%)、分子量をMx、My、蒸発エネルギーをΔei(X)、Δei(Y)、モル体積をΔvi(X)、Δvi(Y)とすると、各繰り返しユニットのモル比(j)はWx/Mx、Wy/Myとなり、この樹脂の溶解度パラメータ値(σ)は下記式(3)のようになる。
式(3): σ=[{(Wx/Mx)×Δei(X)+Wy/My×Δei(Y)}/{(Wx/Mx)×Δvi(X)+Wy/My×Δvi(Y)}]1/2
さらに2種類以上の樹脂を混合した場合は、その混合物のSP値(σ)は混合物の質量組成比(Wi)とそれぞれの樹脂のSP値(σi)の積として算出し、下記式(4)のようになる。
式(4): σ=Σ(Wi×σi)
(5)トナーのピーク分子量(Mp)の算出
本発明におけるトナーの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、トナーをクロロホルムに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、クロロホルムに可溶な成分の濃度が0.5質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8220 GPC(検出器:RI、UV)(東ソー社製)
カラム:TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL(東ソー社製)
溶離液:クロロホルム
流速:1.0ml/min
オーブン温度:45.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
(6)樹脂微粒子の体積基準のメジアン径の測定
本発明で用いられる樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(D50)の測定は、JIS Z8825−1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、LA−920に付属の専用ソフト「HORIBA LA−920 for Windows WET(LA−920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
測定手順は、以下の通りである。
1)バッチ式セルホルダーをLA−920に取り付ける。
2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、ファイル「110A000I」(相対屈折率1.10)を選択する。
5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。
6)1時間以上の暖気運転を行なった後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
7)ガラス製の100ml平底ビーカーに約60mlのイオン交換水を入れる。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
9)前記7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
10)前記9)のビーカー内の水溶液に超音波を照射した状態で、約1mgの脂肪酸金属塩を少量ずつ前記ビーカー内の水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、この際に脂肪酸金属塩が固まりとなって液面に浮く場合があるが、その場合はビーカーを揺り動かすことで固まりを水中に沈めてから60秒間の超音波分散を行なう。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
11)前記10)で調製した脂肪酸金属塩が分散した水溶液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%〜95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、体積基準のメジアン径(D50)を算出する。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中で使用する部は全て質量部を示す。
<シェル樹脂1の製造>
還流冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れた。
・トルエン 100.0部
・スチレン(St) 84.5部
・アクリル酸n−ブチル(BA) 11.3部
・メタクリル酸メチル(MMA) 2.5部
・メタクリル酸(MAA) 1.7部
・t−ブチルパーオキシピバレート 3.0部
前記容器内を毎分200回転で撹拌し、70℃に加熱して10時間撹拌した。さらに、100℃に加熱して6時間重合した。その後溶媒を留去させてシェル樹脂1を得た。シェル樹脂1は、Tgが71℃、SP値が9.9、ピーク分子量(Mp)が15000であった。
<シェル樹脂2乃至9の製造>
シェル樹脂1の製造において、単量体の仕込み量を表1に示すように変更した以外は同様にして反応を行い、シェル樹脂2乃至9を得た。各シェル樹脂のTg、SP値、Mpは表1に示した。
尚、表1中、Stはスチレン、BAはn−ブチルアクリレート、MMAはメチルメタクリレート、AcMOはアクリロイルモルホリン、MAAはメタクリル酸を表す。
<シェル樹脂10の製造>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、窒素雰囲気下で以下の材料を仕込んだ。
・テレフタル酸 230.0部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 690.0部
・安息香酸 120.0部
・チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート 3.0部
210℃で生成する水を留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgまで減圧し、さらに5時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸20.0部を加え、常圧で1時間反応させ、得られた樹脂をシェル樹脂10とした。得られたシェル樹脂8はTgが62℃、SP値が10.9、ピーク分子量(Mp)が5000であった。
<シェル樹脂11の製造>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、窒素雰囲気下で以下の材料を仕込んだ。
・2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 710.0部
・テレフタル酸 235.0部
・アジピン酸 140.0部
・テトラブトキシチタネート 0.5部
180℃で生成する水を留去しながら12時間反応させた。次いで230℃まで除々に昇温しながら4時間反応させた。その後5〜20mmHgまで減圧し、さらに5時間反応させた。得られた樹脂をシェル樹脂9とした。得られたシェル樹脂11はTgが65℃、SP値が11.1、ピーク分子量(Mp)が6500であった。
<シェル樹脂12の製造>
冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、下記原料を入れ、常圧下220℃で15時間反応を行い、さらに1.3〜2.6kPaの減圧下で0.5時間反応させた。
・テレフタル酸 210.0部
・イソフタル酸 210.0部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 1200.0部
・シュウ酸チタン酸カリウム 0.3部
その後180℃に降温し無水トリメリット酸を0.01部添加して、180℃で1.5時間反応させシェル樹脂12を得た。得られたシェル樹脂10はTgが75℃、SP値が9.8、ピーク分子量(Mp)が9000であった。
製造したシェル樹脂10乃至12の物性を表2に示す
<シェル樹脂分散液Aの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記原料を入れ、温度80℃に加熱して溶解した。
・シェル樹脂1 100.0部
・メチルエチルケトン 45.0部
・テトラヒドロフラン 45.0部
・ジエチルアミノエタノール 1.0部
次いで、撹拌下、温度80℃のイオン交換水300.0部を緩やかに添加して転相乳化させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中のシェル樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、シェル樹脂分散液Aとした。該シェル樹脂分散液Aの一部を抜き取り、体積基準のメジアン径(D50)を測定したところ、480nmであった。
<シェル樹脂分散液B乃至Dの製造>
シェル樹脂分散液Aの製造において、用いるシェル樹脂、ジエチルアミノエタノール量を表3に示したように変更した以外は同様にして転相乳化を行い、シェル樹脂分散液B乃至Dを得た。シェル樹脂分散液の体積基準のメジアン径(D50)は表3に示した。
<ベヘニルアクリレート分散液の調製>
・ベヘニルアクリレート 100.0部
・1,10−デカンジオールジアクリレート 0.7部
・t−ブチルパーオキシピバレート 6.0部
上記材料を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)2.0部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3.0部をイオン交換水140.0部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム1.0部を溶解したイオン交換水10.0部を投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が温度70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整し、ベヘニルアクリレート分散液を調製した。
<結晶性ポリエステル分散液の調製>
(結晶性ポリエステルの作製)
撹拌機、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置に1,10−ドデカン2酸49.5部、イソフタル酸8.0部、1,9−ノナンジオール22.3部、テトラブチルチタネート0.03部を入れ、窒素雰囲気下、温度220℃で5時間反応を行った。その後、反応容器内を0.7〜2.6kPaの減圧条件下でさらに5時間反応し結晶性ポリエステルを得た。
(結晶性ポリエステル分散液の作製)
前記結晶性ポリエステル100.0部を蒸留水800.0部中に入れ、70℃に加熱後、アンモニアにてpH9.0に調整し、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK)0.4部を加え、70℃に加熱しながら、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラックスT50)にて8000rpmで7分間分散し、結晶性ポリエステル分散液Aを得た。
<着色剤分散液の調製>
・ピグメントブルー15:3 70.0部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)社製:ネオゲン) 3.0部
・イオン交換水 400.0部
前記成分を混合して溶解させた後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させ、着色剤分散液Aを得た。
<離型剤分散液の調製>
・パラフィンワックス(日本精鑞製:HNP−5 融点60℃) 100.0部
・アニオン界面活性剤(竹本油脂社製:パイオニンA−45−D) 2.0部
・イオン交換水: 500.0部
前記成分を混合して溶解させた後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離型剤微粒子(パラフィンワックス)を分散させてなる離型剤分散液Aを得た。
<実施例1>
(トナー粒子1の作製)
・ベヘニルアクリレート(BeA) 100.0部
(新中村化学社製:NKエステル A−BH)
・1,10−デカンジオールジアクリレート(架橋剤) 0.7部
(新中村化学社製:NKエステル A−DOD−N)
・ピグメントブルー15:3 6.5部
・サリチル酸アルミニウム化合物 1.0部
(オリエント化学社製:ボントロンE−88)
・離型剤 パラフィンワックス 9.0部
(日本精鑞製:HNP−51 融点74℃)
・シェル樹脂1 10.0部
・トルエン 100.0部
からなるモノマーの混合物を調製した。これに15mmのジルコニアビーズを入れ、アトライター(三井三池化工機製)を用いて2時間分散して、モノマー組成物を得た。
また、高速撹拌装置TK−ホモミキサー(特殊機化工業製)を備えた容器に、イオン交換水800部とリン酸三カルシウム15.5部を添加し、回転数を15000回転/分に調整し、70℃に加温して分散媒系とした。
該モノマー組成物に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート6.0部を添加し、これを上記分散媒系に投入した。前記高速撹拌装置にて12000回転/分を維持しつつ20分間の造粒工程を行った。その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を代え、150回転/分で撹拌しながら70℃を保持して10時間重合を行った後、95℃で5時間脱溶媒を行った。
得られたトナー粒子分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えた。更に、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥して、ポリアクリル酸ベヘニルを結着樹脂として含有するトナー粒子1を得た。該トナー粒子1の分子量分布を測定し、ピーク分子量Mpを計算したところ56000であった。
(トナー1の作製)
上記トナー粒子1を分級した後、100.0部を量り取り、疎水性シリカ微粉体(一次粒径12nm、BET比表面積120m/g、表面処理剤:ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル)を1.0部加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合し、トナー1を得た。
<実施例2乃至8、10、12乃至16、比較例1乃至3、5乃至8>
実施例1において、使用したモノマーの種類、架橋剤量、使用した非晶性樹脂およびその導入量を表4に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子及びトナーを得た。尚、BeAはベヘニルアクリレート、MMAはメチルメタクリレート、AcAはアクリル酸、Stはスチレン、BMAはブチルメタクリレートを表す。また表中の結着樹脂組成における割合は質量割合である。
<実施例9>
実施例1において、重合時にシェル樹脂を仕込まず、モノマーの種類、架橋剤量を表5のようにし、重合反応を行った。重合終了後、得られた樹脂粒子の分散液を冷却し、イオン交換水を加えて分散液中の樹脂粒子濃度が20%になるように調整し、コア粒子分散液とした。
次に、該コア粒子分散液500.0部(固形分100.0部)にシェル樹脂分散液A225.0部(固形分45.0部)と、アニオン性界面活性剤(商品名:ネオゲンSC、第一工業製薬社製)20.0部を追加してシェル樹脂のTgである71.0℃まで加熱した。さらに水酸化ナトリウムを適宜添加することにより、系内のpHを4.0以下に保ち、3時間そのまま保持して凝集粒子を融合させた。その後、25℃まで冷却し、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過、乾燥、分級を行いトナー粒子9を得た。
<実施例11>
実施例9において使用した樹脂微粒子分散液及びその量を表5のようにした以外は、実施例9と同様にしてトナー粒子およびトナーを得た。
<実施例17>
・ベヘニルアクリレート分散液 300.0部
・着色剤分散液 50.0部
・離型剤粒子分散液 60.0部
・カチオン性界面活性剤 3.0部
(花王(株)製:サニゾールB50)
・イオン交換水 500.0部
前記成分を丸底ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて混合分散し、混合液を調製した後、加熱用オイルバスで50℃まで撹拌しながら加熱し、50℃で30分保持して凝集粒子を形成した。次に該凝集粒子分散液にアニオン性界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬(株)社製:ネオゲンSC)6.0部を追加して60℃まで加熱した。さらに水酸化ナトリウムを適宜添加することにより、系内のpHを4.0以下に保ち、3時間そのまま保持して凝集粒子を融合させた。その後1.0℃/minの降下速度で、45℃まで冷却した。得られた分散液にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度を20%に調製し、コア粒子分散液とした。
該コア粒子分散液500.0部(固形分100.0部)にポリ塩化アルミニウム10%水溶液を6部滴下した後、シェル樹脂分散液Cを50部(固形分10.0部)を加えpHを4に調整し30分攪拌を続けた。この懸濁液を71℃に加温し、さらに3時間攪拌を続けた。その後、ろ過し、イオン交換水で充分に洗浄し、これを真空乾燥器で乾燥させトナー粒子17を得た。
その後、実施例1と同様に疎水性シリカ微粉体を外添し、トナー17を得た。
<比較例4>
ベヘニルアクリレート分散液のかわりに結晶性ポリエステル分散液、シェル樹脂分散液Cのかわりにシェル樹脂分散液Dを用いたこと以外は実施例17と同様にし、トナー粒子およびトナー21を得た。
各トナーの物性を表6に示す
実施例1乃至17および比較例1乃至9で得られた各トナーについて、以下の方法に従って性能評価を行った。
<定着性>
市販のカラーレーザープリンター(キヤノン製:LBP−5400)を使用し、シアンカートリッジのトナーを取り出して、これにトナーを充填し、該カートリッジをシアンステーションに装着した。次いで、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m)上に、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(0.6mg/cm)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、市販のカラーレーザープリンター(キヤノン製:LBP−5400)から取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピード及び定着線圧が調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿下、プロセススピード250mm/s、定着線圧14.0kgfに設定し、初期温度を80℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行う。
(最低定着温度)
本発明において、コールドオフセットが生じなくなる温度を最低定着温度とした。尚、コールドオフセットとは画像を形成するトナーの一部のみが溶融し定着ローラーに付着し、後続の被定着シートを汚染することをいう。この際、定着ローラーに付着しなかったトナーは溶融していないため、定着しておらず指でこすると容易に消える。最低定着温度の評価基準は以下の通りである。
A:最低定着温度が90℃未満(低温定着性能が特に優れている)
B:最低定着温度が90℃以上95℃未満(低温定着性能が良好である)
C:最低定着温度が95℃以上100℃未満(低温定着性能が問題ないレベルである)
D:最低定着温度が100℃以上110℃未満(低温定着性能がやや劣る)
E:最低定着温度が110℃以上である(低温定着性能が劣る)
(定着画像の折り曲げ強度)
また、最低定着温度+20℃の温度で定着した定着画像を4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけたシルボン紙(オズ産業製:DUSPER K−3)で摺擦したときに、摺擦前後の濃度低下率を定着画像の折り曲げ強度とした。定着画像の折り曲げ強度の評価基準は以下の通りである。
A:濃度低下率が5%未満である(定着画像の折り曲げ強度が特に優れている)
B:濃度低下率が5%以上10%未満である(定着画像の折り曲げ強度が優れている)
C:濃度低下率が10%以上15%未満(定着画像の折り曲げ強度が問題のないレベルである)
D:濃度低下率が15%以上20%未満(定着画像の折り曲げ強度が劣る)
E:濃度低下率が20%以上である(定着画像の折り曲げ強度が著しく劣る)
(定着可能領域)
また、同条件でホットオフセットが観察されなかった最高温度を最高定着温度とし、最高定着温度と最低定着温度の差を定着可能領域とした。定着可能領域の評価基準は以下の通りである。
A:ホットオフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+60℃以上である(定着可能領域が特に広い)
B:ホットオフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+50℃以上+60℃未満である(定着可能領域が広い)
C:ホットオフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+40℃以上+50℃未満である(定着可能領域が問題ないレベルである)
D:ホットオフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+30℃以上+40℃未満である(定着可能領域がやや狭い)
E:低温側開始点の温度+30℃未満の温度領域でホットオフセットが発生する(定着可能領域が狭い)
<帯電性>
(かぶり)
トナー1乃至25について、それぞれのトナーとシリコーン樹脂で表面被覆した磁性微粒子分散型樹脂キャリア(数平均粒子径35μm)とを、トナー濃度が8.0質量%になるように混合し、二成分現像剤1乃至25を作製した。
それぞれの二成分現像剤450gを高温高湿下(30℃/80%)で7日間放置した後、常温常湿下(23℃/60%)でさらに3日間放置し初期混合による摩擦帯電をリセットした。それらを常温常湿環境(23℃/60%)で、カラー複写機CLC5500改造機(キヤノン製)にて画出し評価を行った。
各現像剤を現像器ユニットに仕込み、予備回転なしにベタ白のA4画像を10枚出力し、画像のベタ白部の反射率を測定した。さらに未使用の紙の反射率を測定し、上記画像のベタ白部の反射率から引いてかぶり濃度とした。出力した10枚の画像について測定したかぶり濃度の平均値を、以下の評価基準にしたがって評価した。尚、反射率はTC−6DS(東京電色製)で測定した。
A:かぶり濃度が0.6%未満(帯電性が特に優れている)
B:かぶり濃度が1.0%未満(帯電性が優れている)
C:かぶり濃度が1.5%未満(帯電性が良好である)
D:かぶり濃度が2.0%未満(帯電性がやや劣る)
E:かぶり濃度が2.0%以上(帯電性が劣る)
<耐熱保存性>
(ブロッキング)
トナー5gを容積100mlのポリカップに量り採り、これを内部温度50℃の恒温槽に入れて放置する。3日後に、恒温槽内のポリカップを取り出して、中のトナーの状態変化を目視にて評価する。判定基準は以下の通りである。
A:変化なし(耐熱保存性が特に優れている)
B:わずかに凝集塊が生じるが、すぐにほぐれる(耐熱保存性が良好である)
C:多少の凝集塊が生じるが、少しの衝撃でほぐれる(耐熱保存性が問題ないレベルである)
D:凝集塊が生じ、容易にはほぐれない(耐熱保存性がやや劣る)
E:完全に凝集し、ボタン状に固まる(耐熱保存性が劣る)
(画像積載性)
最低定着温度よりも20℃高い温度における定着画像紙について、以下の評価を行った。該定着画像紙の画像部を下向きにして、未使用の紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m)500枚の上に載せ、さらに該定着画像紙の上から、同種の未使用の紙を500枚乗せて、該定着画像紙を挟み込んだ。これを、45℃に調温した恒温槽に静置し、72時間放置した後に恒温槽から取り出した。該定着画像紙と接触していた未使用の紙の、画像部と接触していた部分の反射率を測定し、該未使用の紙の画像部と接触していなかった部分の反射率を引いて、画像の色移りを測定した。その様子から画像の積載性について以下の基準に従って評価を行った。尚、反射率はTC−6DS(東京電色製)で測定した。
A:色移りした部分の濃度が0.5%未満(画像の積載性が特に優れている)
B:色移りした部分の濃度が1.0%未満(画像の積載性が優れている)
C:色移りした部分の濃度が2.0%未満(画像の積載性について、実用上問題ない)
D:色移りした部分の濃度が4.0%未満(画像の積載性にやや劣る)
E:色移りした部分の濃度が4.0%以上(画像の積載性に劣る)
結果を表7に示す
以上により、結晶性樹脂からなるコアをシェル樹脂で被覆したトナーにおいて、結晶性樹脂として側鎖結晶性樹脂を用い、粘弾性を適切に制御することで低温定着、かつ広い定着可能領域を実現できることがわかった。それに加え、シェル樹脂のガラス転移温度を適切に制御することで定着時に結晶性樹脂とシェル樹脂が混じり合うことで高い定着画像の折り曲げ強度が実現し、また高い画像積載性を有するトナーが得られることがわかった。
一方、比較例において、本発明の要件を満たさない結晶性樹脂を用いた場合定着可能領域はせまくなってしまったり、低温定着性が十分発揮されなかったりした。また本発明の要件を満たさないシェル樹脂を用いた場合、定着画像の折り曲げ強度が低くなってしまった。
以上より、本発明の構成を有することで、低温定着性と耐熱保存性を両立し、かつ十分な帯電性能、定着画像の折り曲げ強度、広い定着可能温度領域、及び高い画像積載性を有するトナーを提供することができることがわかった。

Claims (5)

  1. 結着樹脂及び着色剤を含有するコアと、該コアを被覆するシェルを有するトナー粒子を有するトナーであって、
    該結着樹脂は、
    i)有機構造体の骨格に対し、脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素である側鎖を有し、該側鎖間で結晶構造を取りうる構造を有する側鎖結晶性樹脂であり、
    ii)融点Tmが50.0℃以上90.0℃以下であり、
    該シェルを構成する樹脂は、ガラス転移温度Tgが50.0℃以上(Tm+35.0)℃以下であり、
    該トナーは、
    i)温度Tm+10.0℃における貯蔵弾性率G’(Tm+10.0)が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、
    ii)温度Tm+50.0℃における貯蔵弾性率G’(Tm+50.0)と該G’(Tm+10.0)との比G’(Tm+10.0)/G’(Tm+50.0)が10.0以下である、
    ことを特徴とするトナー。
  2. 側鎖結晶性樹脂における側鎖を有するユニットが化式1で表わされる部分構造であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。

    (化式1)
    (式中、R1は炭素数が18以上34以下のアルキル基であり、R2は水素またはメチル基である。)
  3. 該シェルの平均膜厚が3.0nm以上、500.0nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
  4. 該シェルを構成する樹脂のSP値をSP1とし、該結着樹脂のSP値をSP2とした時、差(SP1−SP2)がが0.5以上3.0以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
  5. 該トナーは、示差走査熱量測定で得られる温度−吸熱量曲線のメインピークに関し、ピークの半値幅が8.0℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
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