JP6022878B2 - 積層体の製造方法、および分離層形成装置 - Google Patents

積層体の製造方法、および分離層形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、基板と支持体とが積層された積層体の製造方法、および分離層形成装置に関する。
近年、ICカード、携帯電話などの電子機器の薄型化、小型化、軽量化などが要求されている。これらの要求を満たすためには、組み込まれる半導体チップについても薄型の半導体チップを使用しなければならない。このため、半導体チップの基となるウエハ基板の厚さ(膜厚)は現状では125μm〜150μmであるが、次世代のチップ用には25μm〜50μmにしなければならないといわれている。したがって、上記の膜厚のウエハ基板を得るためには、ウエハ基板の薄板化工程が必要不可欠である。
ウエハ基板は、薄板化により強度が低下するので、薄板化したウエハ基板の破損を防ぐために、製造プロセス中は、ウエハ基板に支持体を貼り合わされた状態で自動搬送しながら、ウエハ基板上に回路等の構造物を実装する。そして、製造プロセス後に、ウエハ基板を支持体から分離する。したがって、製造プロセス中は、ウエハ基板と支持体とが強固に接着していることが好ましいが、製造プロセス後には、支持体からウエハ基板を円滑に分離できることが好ましい。
ウエハ基板と支持体とを強固に接着した場合、接着材料によっては、ウエハ基板上に実装した構造物を破損させることなく、ウエハ基板から支持体を分離することは困難である。したがって、製造プロセス中にはウエハ基板と支持体との強固な接着を実現しつつ、製造プロセス後にはウエハ基板上に実装した素子を破損させることなく分離するという、非常に困難な仮止め技術の開発が求められている。
半導体ウエハに支持体を貼り合わせ、半導体ウエハを処理した後、支持体を分離するような半導体チップの製造方法として、特許文献1に記載のような方法が知られている。特許文献1に記載の方法においては、光透過性の支持体と半導体ウエハとを、支持体側に設けられた光熱変換層と接着層とを介して貼り合わせ、半導体ウエハを処理した後、支持体側から放射エネルギーを照射することによって光熱変換層を分解して、支持体から半導体ウエハを分離する。
また、特許文献2に記載の積層体においては、光電変換層を構成する材料に、熱処理により自己架橋しうる官能基を分子内に持つ熱分解性樹脂や、紫外線・可視光で架橋可能な熱分解性樹脂或いはその前駆体を配合することで、光電変換層の耐薬品性を向上させている。
特開2005−159155号公報(2005年6月16日公開) 特開2004−64040号公報(2004年2月26日公開) 特開平9−50897号公報(1997年2月18日公開)
本発明者らの知見によれば、支持体上に分離層を形成し、当該分離層にウエハを貼り合わせた積層体に対して様々な処理を行なう際に、処理において用いた薬品等によって、部分的に分離層が変質して支持体から剥がれてしまうケースが起こり得る。
例えば、レジスト剥離工程等で、高温且つ長時間、極性溶媒を含む剥離液(例えば、N−メチル−2−ピロリドンのような非プロトン性溶媒を含む剥離液)に積層体が曝されると、積層体のエッジ端面から剥離液が浸透し、当該部分において分離層が支持体から剥がれてしまう場合がある。
このように、処理の途中で分離層が剥がれるとウエハにクラックが入ったり、割れたり、凹凸が発生したりするため、次工程に進むことができない。
本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、支持体上に分離層を形成し、当該分離層にウエハを貼り合わせた積層体に対して所望の処理を行なう際に、分離層が支持体から剥離することを抑制するために、耐薬品性に優れる積層体の製造方法、およびそのために用いる分離層形成装置を提供することを主たる目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る製造方法は、基板、該基板を支持する光透過性の支持体、および該基板と該支持体との間に設けられ、該支持体を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層を備えた積層体の製造方法であって、排気孔を有する反応室内において、上記支持体が上記排気孔よりも鉛直下方に位置した状態で、プラズマCVD法により該支持体上に上記分離層を形成する分離層形成工程を包含していることを特徴としている。
また、本発明に係る分離層形成装置は、光透過性の支持体上に、該支持体を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層をプラズマCVD法により形成する分離層形成装置であって、排気孔を有する反応室と、該反応室内において、該支持体を載置するための載置台と、を備えており、該排気孔は、該載置台に対して1mm以上、鉛直上方に配置されていることを特徴としている。
本発明によれば、耐薬品性に優れ、積層体に対して所望の処理を行なう際に分離層が支持体から剥離することを好適に抑制することができる積層体を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法の各工程を模式的に示す図である。 (a)は、本発明の一実施形態に係る積層体を示す断面図およびその部分拡大図を示し、(b)は、従来技術に係る積層体を示す断面図およびその部分拡大図を示す。 (a)は、本実施形態における分離層形成工程において用いる分離層製造装置の一構成例を示す断面図であり、(b)はその排気孔と支持体との位置関係を示す図である。 (a)は、分離層製造装置の参考構成例を示す断面図であり、(b)はその排気孔と支持体との位置関係を示す図である。
<積層体の製造方法>
本発明の一実施形態に係る製造方法を、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る積層体の製造方法の各工程を模式的に示す図である。また、図2の(a)は、本実施形態に係る積層体1を示す断面図およびその部分拡大図を示す。また、図2の(b)は、従来技術に係る積層体2を示す断面図およびその部分拡大図を示す。
本実施形態に係る積層体の製造方法で製造する積層体1は、支持体12、表面処理膜14、分離層15、接着層13、および、基板11がこの順に積層されてなる(図2の(a)参照)。図1に示すように、本実施形態に係る積層体の製造方法は、支持体12の分離層が設けられる表面を疎水化する表面処理工程(図1の(1))、表面処理工程後に、支持体12上に分離層15を形成する分離層形成工程(図1の(2))、基板11上に接着層13を形成する接着層形成工程(図1の(3))、および基板11と支持体12とを、接着層13および分離層15を介して貼り合わせる積層工程を包含している。但し、表面処理工程は省略することもできる。その場合、表面処理膜14は形成されない。
〔表面処理工程〕
本実施形態に係る積層体の製造方法における表面処理工程は、表面が親水性であって基板11を支持する光透過性の支持体12の少なくとも分離層15が設けられる表面を疎水化する工程である。
従来の積層体の製造方法では、支持体12として、ガラスからなる支持体を使用する場合、該支持体12の表面に対する水の接触角は、10〜20°以下という低い値を採る。特に酸素プラズマ処理されたガラスからなる支持体12の表面に対する水の接触角は、0〜5°というさらに低い値を採る。これに対して、分離層15に用いられる材料は疎水性である。本発明の発明者らは、ここに着目して、これが積層体における分離層の破損を起こす一因であることを突き止めた。そして、本発明者らは、表面処理工程によって親水性のガラスからなる支持体1を表面処理することで疎水性の表面処理膜14を設けて、支持体12と分離層15との親和性を高めることで、分離層15の剥離による支持体1への悪影響を低減し得ることを見出した。
すなわち、支持体12と分離層15との親和性を高めることにより、積層体1に対して薬品処理等の所望の処理を行なう際に、分離層15が支持体12から剥離することを抑制することができる。
なお、分離層15の材料自身の耐薬品性が向上しているのではないため、支持体12の分離工程後における支持体12上に付着した分離層15の残渣を容易に洗浄できるという効果を奏する。つまり、本発明に係る積層体は、分離層の薬品による破損を解消しつつ、該分離層の洗浄の容易さを維持するという、相反する利益を両立できる。これは従来の積層体のような、分離層(光熱変換層)自身の耐薬品性を向上させるという方法では、両立し得ない効果である。
表面処理工程では、好ましくは、上記表面に対する水の接触角が50°以上となるように当該表面を疎水性化する。これにより、支持体12と分離層15との親和性を十分に向上させることができる。
(支持体)
支持体12は、基板11を支持する支持体であり、光透過性を有している。そのため、積層体10の外から支持体12に向けて光が照射されたときに、該光が支持体12を通過して分離層15に到達する。また、支持体12は、必ずしも全ての光を透過させる必要はなく、分離層15に吸収されるべき(所定の波長を有している)光を透過させることができればよい。
支持体12は、基板11を支持するものであり、基板11の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板11の破損または変形を防ぐために必要な強度を有していればよい。以上のような観点から、支持体12としては、ガラス、シリコン、アクリル樹脂からなるもの等が挙げられる。
なお、支持体12は、親水性の物質からなり、例えば、ガラスからなるものを使用する場合、該支持体12の表面に対する水の接触角は、10〜20°以下という低い値を採る。特に酸素プラズマ処理されたガラスからなる支持体12の表面に対する水の接触角は、0〜5°というさらに低い値を採る。
表面処理膜14を形成する表面処理剤としては、支持体12の表面を疎水化し得るものであれば特に限定されないが、例えば、シリル化剤、ポリマーコーティング剤等を用いることができ、特に好ましくは、ヘキサメチルジシラザンを用いることができる。以下に各表面処理剤についての説明を行なう。
(シリル化剤)
本発明に係る表面処理工程における表面処理剤に使用されるシリル化剤としては、特に限定されず、従来公知のあらゆるシリル化剤を用いることができる。このようなシリル化剤としては、例えば、下記一般式(1)で表される置換基を有するシリル化剤を用いることができる。
Figure 0006022878
(上記一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、含窒素基または有機基を表す。但し、R1、R2およびR3に含まれる炭素原子の合計の個数は1個以上である。)
上記一般式(1)で表される置換基を有するシリル化剤として、より具体的には、下記一般式(2)〜(8)で表されるシリル化剤を用いることができる。
Figure 0006022878
(上記一般式(2)中、R1、R2およびR3は、上記一般式(1)と同様であり、Rは、水素原子、または飽和若しくは不飽和アルキル基を表し、R5は、水素原子、飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、アセチル基、または飽和若しくは不飽和ヘテロシクロアルキル基を表す。R4およびR5は、互いに結合して窒素原子を有する飽和または不飽和へテロシクロアルキル基を形成してもよい。)
Figure 0006022878
(上記一般式(3)中、R1、R2およびR3は、上記一般式(1)と同様であり、R6は、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、またはジメチルシリル基を表し、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に水素原子または有機基を表す。但し、R7、R8およびR9に含まれる炭素原子の合計の個数は1個以上である。)
Figure 0006022878
(上記一般式(4)中、R1、R2およびR3は、上記一般式(1)と同様であり、Xは、O、CHR22、CHOR22、CR2222、またはNR23を表し、R10およびR22はそれぞれ独立に水素原子、飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、アルコキシ基、フェニル基、フェニルエチル基、またはアセチル基を表し、R23は、水素原子、アルキル基、またはトリアルキルシリル基を表す。)
Figure 0006022878
(上記一般式(5)中、R1、R2およびR3は、上記一般式(1)と同様であり、R6は、上記一般式(3)と同様であり、R11は、水素原子、飽和若しくは不飽和アルキル基、トリフルオロメチル基、またはトリアルキルシリルアミノ基を表す。)
Figure 0006022878
(上記一般式(6)中、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表し、R12およびR13の少なくとも一つは、トリアルキルシリル基を表す。)
Figure 0006022878
(上記一般式(7)中、R14はトリアルキルシリル基を表し、R15およびR16は、それぞれ独立に水素原子または有機基を表す。)
Figure 0006022878
(上記一般式(8)中、R1、R2およびR3は、上記一般式(1)と同様であり、R17は、有機基を表し、R18は、存在しないか、存在する場合、−SiR242526を表す。R24、R25およびR26は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、含窒素基または有機基を表し、R24、R25またはR26の何れか一つは、R1、R2またはR3の何れか一つと窒素原子を介して結合してイミノ基を形成してもよい。)
上記式(2)で表されるシリル化剤としては、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルシラン、N,N−ジメチルアミノモノメチルシラン、N,N−ジエチルアミノトリメチルシラン、t−ブチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、トリメチルシリルアセタミド、N,N−ジメチルアミノジメチルビニルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルプロピルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルオクチルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルフェニルエチルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルフェニルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチル−t−ブチルシラン、N,N−ジメチルアミノトリエチルシラン、トリメチルシラナミン等が挙げられる。
上記式(3)で表されるシリル化剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N−メチルヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルジシラザン、1,2−ジ−N−オクチルテトラメチルジシラザン、1,2−ジビニルテトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、トリス(ジメチルシリル)アミン、トリス(トリメチルシリル)アミン、ペンタメチルエチルジシラザン、ペンタメチルビニルジシラザン、ペンタメチルプロピルジシラザン、ペンタメチルフェニルエチルジシラザン、ペンタメチル−t−ブチルジシラザン、ペンタメチルフェニルジシラザン、トリメチルトリエチルジシラザン等が挙げられる。
上記式(4)で表されるシリル化剤としては、トリメチルシリルアセテート、ジメチルシリルアセテート、モノメチルシリルアセテート、トリメチルシリルプロピオネート、トリメチルシリルブチレート、トリメチルシリルオキシ−3−ペンテン−2−オン等が挙げられる。
上記式(5)で表されるシリル化剤としては、ビス(トリメチルシリル)尿素、N−トリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
上記式(6)で表される化合物としては、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド等が挙げられ、上記式(7)で表される化合物としては、2−トリメチルシロキシペンタ−2−エン−4−オン等が挙げられる。上記式(8)で表される化合物としては、1,2−ビス(ジメチルクロロシリル)エタン、t−ブチルジメチルクロロシラン、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン等が挙げられる。
また、シリル化剤として環状シラザン化合物を使用することもできる。この環状シラザン化合物としては、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン等の環状ジシラザン化合物、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシラザン等の環状トリシラザン化合物、および2,2,4,4,6,6,8,8−オクタメチルシクロテトラシラザン等の環状テトラシラザン化合物等が挙げられる。
上記に例示したシリル化剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
また、上記シリル化剤に対し、シリル化複素環化合物を添加することもできる。シリル化複素環化合物は、上記シリル化剤(例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS))による支持体12の表面のシリル化を、触媒作用により促進することができる。また、その触媒作用によって支持体12の表面を高度に疎水化することができる。
表面処理工程における表面処理剤に使用されるシリル化複素環化合物は、シリル基に複素環基が結合した構造を有する化合物である。このような化合物としては、下記一般式(9)のような化合物が例示される。
Figure 0006022878
(上記一般式(9)中、R19、R20およびR21は、それぞれ独立に水素原子または有機基を表す。但し、R19、R20およびR21のうち少なくとも一つは有機基を表す。Aは、複素環基を表し、置換基を有していてもよい。)
シリル化複素環化合物は、上記一般式(9)中のAが窒素原子を有するシリル化窒素含有複素環化合物であることが好ましい。また、シリル化複素環化合物は、上記一般式(1)中のAが芳香性を有する化合物であることが好ましい。上記一般式(9)中のAが芳香性を有することにより、表面処理剤で処理された支持体12の表面の疎水性を大きくすることができる。
また、シリル化複素環化合物は、上記一般式(9)中のAが窒素原子を有する芳香環であることが、入手性および支持体12の表面に大きな疎水性を付与できるという観点から特に好ましい。このようなシリル化複素環化合物としては、シリル化イミダゾール化合物、シリル化トリアゾール化合物が例示される。
表面処理剤で使用されるシリル化複素環化合物としては、モノメチルシリルイミダゾール、ジメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルイミダゾール、モノメチルシリルトリアゾール、ジメチルシリルトリアゾール、トリメチルシリルトリアゾール等が例示される。これらのシリル化複素環化合物は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
溶剤としては、シリル化剤およびシリル化複素環化合物を溶解できるものであれば、特に限定されずに従来公知の溶剤を使用することができる。
具体的には、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール等のジアルキルグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、ギ酸−n−ペンチル、酢酸−i−ペンチル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸−i−プロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸−n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;β−プロピロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−ペンチロラクトン等のラクトン類、p−メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;等が挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
なお、ジシラザンを表面処理剤として使用する場合、5または6員環のラクトン化合物を溶剤として使用することが好ましい。中でも、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサノラクトンおよびγ−ヘキサノラクトンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの溶剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記で列挙した溶剤成分の中でも、γ−ブチロラクトンが工業上の入手し易さの面で特に好ましく使用される。
表面処理剤に溶剤を含有させる場合、表面処理剤に含まれるシリル化剤およびシリル化複素環化合物の合計の濃度が0.1質量%以上であることが実用上好ましい。
シリル化剤による表面処理工程は、支持体12の表面に上記表面処理剤を曝露させ、支持体12の表面を処理する工程である。
支持体12の表面に表面処理剤を曝露する方法としては、従来公知の方法を特に制限なく使用することができ、例えば、表面処理剤を気化させて蒸気とし、その蒸気を支持体12の表面に接触させる方法、表面処理剤をスピンコート法や浸漬法等により支持体12の表面に接触させる方法等が挙げられる。このような操作により、支持体12の表面がシリル化されて支持体12に疎水性の表面処理膜14を形成することで、分離層15の支持体12に対する親和性を向上させることができる。
(ポリマーコーティング)
また、本実施形態の表面処理工程において用いる表面処理剤として、支持体12と分離層15との間に設けられる表面処理膜14を形成するために、質量平均分子量が1,000〜50,000であるエポキシ樹脂を含有するポリマーコーティングを使用してもよい。
上記「エポキシ樹脂」は、1分子中にエポキシ基を2個以上もつ比較的低分子のポリマー(プレポリマー)、およびそのエポキシ基の開環反応によって生じた熱硬化性樹脂を包含する。
上記エポキシ樹脂(以下「(G)成分」という。)は、質量平均分子量が1,000〜50,000であり、2,000〜40,000であることが好ましく、3,000〜30,000であることがより好ましく、3,000〜20,000が最も好ましい。
(G)成分の質量平均分子量が上記範囲であることにより、支持体と良好に貼り合わされた表面処理膜を形成でき、支持体12との親和性に優れる。
該質量平均分子量が下限値以上であると、支持体12との架橋効率が高まり、支持体12と表面処理膜とが強固に貼り合わされる。また、表面処理剤として(G)成分を有機溶剤に溶解してなる溶液を用いた際に、該溶液は適度な粘度を有し、支持体12上に該溶液を均一に塗布しやすくなる。一方、上限値以下であることにより、該溶液の粘度増加が抑えられ、支持体上に該溶液を均一に塗布しやすくなる。
上記において「質量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準の値を示す。以下、該質量平均分子量をMwと表すことがある。
(G)成分としては、支持体12の表面を疎水化することから、未開環のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましく、例えば、下記一般式(g0−1)で表されるエポキシ基が高分子化合物の主鎖の途中に存在して該エポキシ基の炭素原子が主鎖の一部を形成しているもの;下記一般式(g0−2)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているもの、下記一般式(g0−2)で表されるエポキシ基が高分子化合物の主鎖の末端を形成しているもの;下記一般式(g0−3)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているもの、下記一般式(g0−3)で表されるエポキシ基が高分子化合物の主鎖の末端を形成しているもの;下記一般式(g0−4)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているもの、下記一般式(g0−4)で表されるエポキシ基が高分子化合物の主鎖の末端を形成しているもの;下記一般式(g0−5)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているもの、下記一般式(g0−5)で表されるエポキシ基が高分子化合物の主鎖の末端を形成しているもの等が挙げられる。
Figure 0006022878
(式中、R63およびR64はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。R66〜R68はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。R66a、R69aおよびR69bはそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基であり、g4は1〜20の整数であり、g5は1〜20の整数である。)
上記式(g0−1)中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R63およびR64におけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。なかでも、R63およびR64は、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(g0−2)中、R66〜R68は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R66〜R68におけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。なかでも、R66は、水素原子またはメチル基が好ましく;R67〜R68は、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましく、何れも水素原子であることが特に好ましい。
上記式(g0−3)中、R66a、R69aおよびR69bは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R66a、R69aおよびR69bにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。なかでも、R66aは、水素原子またはメチル基が好ましく;R69aおよびR69bは、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましく、何れも水素原子であることが特に好ましい。
g4は1〜20の整数であり、1〜5であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、2であることが最も好ましい。
g5は1〜20の整数であり、1〜5であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
上記のなかでも、一般式(g0−1)で表されるエポキシ基が高分子化合物の主鎖の途中に存在して該エポキシ基の炭素原子が主鎖の一部を形成しているもの、一般式(g0−2)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているもの、一般式(g0−3)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているもの、一般式(g0−4)で表されるエポキシ基が高分子化合物の側鎖に含まれているものが好ましい。
(G)成分の好適なものとして、より具体的には、エポキシ基を含む構成単位(g1)の繰り返し構造を有するものが挙げられる。
この繰り返し構造を有するものは、質量平均分子量が1,000〜50,000の範囲内が、支持体12と分離層15の親和性が向上することから、好ましい。
エポキシ基を含む構成単位(g1)は、特に限定されず、例えば、エポキシ基を含む有機基からなり、該エポキシ基の炭素原子が主鎖の一部を形成している構成単位が挙げられる。
これ以外の構成単位(g1)としては、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位、アクリル酸エステルから誘導される構成単位、または主鎖が環状型の構成単位(以下「主鎖環状型構成単位」という。)であってもよく、これらの中では、アクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
ここで、本明細書および本特許請求の範囲において「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレンのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン」とは、ヒドロキシスチレン、およびヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことを意味する。
ヒドロキシスチレンにおいて、α位の置換基としてのアルキル基として、具体的には炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
また、本明細書において「主鎖環状型構成単位」とは、単環または多環式の環構造を有し、該環構造の環上の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の炭素原子が主鎖を構成する構成単位をいう。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含む概念とする。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことを意味する。
アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としての炭素数1〜5のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
また、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、上記「α位の置換基としての炭素数1〜5のアルキル基」の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
アクリル酸エステルのα位に結合しているのは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であることがより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
構成単位(g1)としては、例えば、下記一般式(g1−1)〜(g1−4)で表される構成単位、特開2003−076012号公報の段落[0012]〜[0042]に開示されている化合物から誘導される構成単位などが挙げられる。
なかでも、支持体12の表面を疎水化する効果に優れることから、下記一般式(g1−1)〜(g1−4)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
Figure 0006022878
(式中、R61およびR62はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい二価の炭化水素基であり、R63およびR64はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、R65は置換基を有していてもよい二価の炭化水素基であり、R66〜R68はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。R65aは置換基を有していてもよい二価の炭化水素基であり、R66a、R69aおよびR69bはそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基であり、g4は1〜20の整数であり、g5は1〜20の整数である。R65bは置換基を有していてもよい二価の炭化水素基である。)
上記式(g1−1)中、R61およびR62は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい二価の炭化水素基である。
該炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されていることを意味する。
61またはR62において、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
「脂肪族炭化水素基」は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
61またはR62における脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、その構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、1〜2が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CH−CH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCH−CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(以下「鎖状の脂肪族炭化水素基」という。)は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
その構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子2個以上を除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するかまたは鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして、具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
61またはR62における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、1価の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた2価の芳香族炭化水素基;該2価の芳香族炭化水素基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等で、かつ、その芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた芳香族炭化水素基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
61またはR62としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が最も好ましい。
上記式(g1−1)中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。
63およびR64におけるアルキル基は、上記式(g0−1)における説明と同様である。
なかでも、R63およびR64は、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(g1−2)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
Rのアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてもよい炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基と同様である。
なかでも、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
上記式(g1−2)中、R65は、置換基を有していてもよい二価の炭化水素基であり、上記式(g1−1)におけるR61およびR62と同様のものが挙げられ、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が最も好ましい。
上記式(g1−2)中、R66〜R68は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R66〜R68におけるアルキル基は、上記式(g0−2)における説明と同様である。
なかでも、R66〜R68は、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(g1−3)中、R65aは、置換基を有していてもよい二価の炭化水素基であり、上記式(g1−2)におけるR65と同様のものが挙げられ、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が最も好ましい。
上記式(g1−3)中、R66a、R69aおよびR69bは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R66a、R69aおよびR69bにおけるアルキル基は、上記式(g0−3)における説明と同様である。なかでも、R66〜R68は、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましい。
g4およびg5は、何れも、上記式(g0−3)における説明と同じである。
上記式(g1−4)中、R65bは、置換基を有していてもよい二価の炭化水素基であり、上記式(g1−2)におけるR65と同様のものが挙げられ、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が最も好ましい。
以下に、上記一般式(g1−1)〜(g1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
Figure 0006022878
Figure 0006022878
Figure 0006022878
(G)成分においては、構成単位(g1)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、(G)成分としては、上記式(g1−1)で表される構成単位を有すもの、上記の式(g1−2)または式(g1−3)で表される構成単位を有するものが好ましい。
上記式(g1−1)で表される構成単位を用いる場合、(G)成分は、該式(g1−1)で表される構成単位の1種の繰り返しからなる重合体(ホモポリマー)であることが好ましい。
上記の式(g1−2)または式(g1−3)で表される構成単位を用いる場合、(G)成分は、該式(g1−2)で表される構成単位と、後述のその他の構成単位とを有する共重合体(コポリマー);該式(g1−3)で表される構成単位と、後述のその他の構成単位とを有する共重合体(コポリマー);該式(g1−2)で表される構成単位と、該式(g1−3)で表される構成単位とを有する共重合体(コポリマー);該式(g1−2)で表される構成単位と、該式(g1−3)で表される構成単位と、後述のその他の構成単位とを有する共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
(G)成分中、構成単位(g1)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計に対して10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、35モル%以上であることが特に好ましく、100モル%であってもよい。
構成単位(g1)の割合が下限値以上であると、支持体12との架橋効率が高まり、分離層15との親和性がより高くなる。
(G)成分が共重合体(コポリマー)である場合、構成単位(g1)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計に対して10〜80モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(g1)の割合が上記範囲内であれば、支持体12との架橋効率が高まり、支持体12と分離層15との親和性がより高くなる。
(G)成分は、支持体12表面の疎水化効果を損なわない範囲で、必要に応じて上記構成単位(g1)以外のその他構成単位(g2)を有していてもよい。
かかるその他構成単位(g2)としては、特に限定されるものではなく、上記構成単位(g1)を誘導する化合物と共重合可能な化合物から誘導される構成単位が好ましい。
かかるその他構成単位(g2)として、具体的には、例えば、アクリル酸から誘導される構成単位、メタクリル酸から誘導される構成単位(以下、これらをまとめて「構成単位(g21)」という。);アクリル酸メチル若しくはアクリル酸エチル等のアクリル酸アルキル(好ましくは、該アルキルの炭素数1〜5である。)から誘導される構成単位(以下「構成単位(g22)」という。);メタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキル(好ましくは、該アルキルの炭素数1〜5である。)から誘導される構成単位(以下「構成単位(g23)」という。);後述する(A1−1)成分についての説明における構成単位(a1)〜(a4)などが好適なものとして挙げられる。構成単位(a1)〜(a4)のなかでも、支持体12から分離層15が剥離することをより抑制できることから、構成単位(a1)、(a2)、(a4)がより好ましく、構成単位(a4)がさらに好ましい。
(G)成分においては、構成単位(g2)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(G)成分中、構成単位(g2)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計に対して1〜30モル%であることが好ましく、5〜25モル%であることがより好ましく、10〜20モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(g2)の割合が上記範囲内であれば、支持体12と分離層15の親和性は良好に維持される。
表面処理剤において、(G)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、(G)成分は、例えば、構成単位(g1)の繰り返しからなる重合体(ホモポリマー)、構成単位(g1)と構成単位(g2)とを有する共重合体(コポリマー)が好適なものとして挙げられる。
かかる共重合体(コポリマー)として、具体的には、構成単位(g1)と構成単位(g21)とを有する共重合体が好適なものとして挙げられる。
かかる(G)成分としては、下記の様な構成単位を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
Figure 0006022878
(式中、g6およびg7はそれぞれ独立して1〜5の整数である。)
上記式(G−1)で表されるエポキシ樹脂は、該式(G−1)で表される構成単位の繰り返しからなるホモポリマーである。
上記式中、g6およびg7は、それぞれ独立して、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましく、g6およびg7の何れも1であることが特に好ましい。
Figure 0006022878
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。g8は1〜5の整数であり、Rβはアルキル基である。)
上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
g8は、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
R1は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
Figure 0006022878
(式中、Rは上記と同じであり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。g8は上記と同じである。g9は1〜5の整数であり、g4およびg5はそれぞれ上記と同じである。)
上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
g8は、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
g9は、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
g4は、1または2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
g5は、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
構成単位(g1)の繰り返し構造を有する重合体(ホモポリマー)または共重合体(コポリマー)は、所望する構成単位を誘導するモノマーを、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル等のラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等により重合させることによって得ることができる。
(G)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜6.5が好ましく、1.5〜6がより好ましく、1.5〜5が最も好ましい。なお、「Mn」は数平均分子量を示す。
表面処理剤中、(G)成分の含有量は、0.010〜0.050質量%であることが好ましく、0.010〜0.040質量%であることがより好ましく、0.015〜0.035質量%であることがさらに好ましい。
(G)成分の含有量が下限値以上であると、支持体12と分離層15の親和性がより高くなる。また、表面処理剤として(G)成分を有機溶剤に溶解してなる溶液を用いた際に、該溶液は適度な粘度を有し、支持体上に該溶液を均一に塗布しやすくなる。一方、上限値以下であると、該溶液の粘度増加が抑えられ、支持体上に該溶液を均一に塗布しやすくなる。
表面処理剤は、上記(G)成分以外のその他成分を含有してもよい。
その他成分としては、例えば、有機溶剤、界面活性剤等が挙げられる。
有機溶剤としては、(G)成分を溶解して均一な溶液とすることができるものであればよく、例えば、一般的な化学増幅型レジスト組成物の有機溶剤として用いられているものが挙げられる。
この有機溶剤は、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類または上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい); ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
有機溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上の混合溶剤として用いてもよい。
表面処理剤は、(G)成分を含有して表面処理膜を形成し得るものであればその形態は特に限定されず、例えば、(G)成分を有機溶剤に溶解してなる溶液として用いるものであってもよく、その溶液を乾燥してなるシート状物として用いるものであってもよい。
該表面処理剤に含まれるエポキシ樹脂の好適なものとしては、支持体12と分離層15の親和性がより良好となることから、上記構成単位(g1)の繰り返し構造を有するものが挙げられ、上記構成単位(g1)の割合が、該エポキシ樹脂を構成する全構成単位の合計に対して10モル%以上であるものが好ましい。
また、上記構成単位(g1)のなかで好適なものとしては、支持体12と分離層15の親和性が特に良好となることから、上記一般式(g1−1)〜(g1−4)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
支持体上に、表面処理剤を用いて表面処理膜を形成する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば表面処理剤として(G)成分を有機溶剤に溶解してなる溶液((G)成分溶液)を用いる場合、支持体12上に、(G)成分溶液を、スピンナー等を用いる従来公知の方法により塗布してベーク処理を施し、有機溶剤を揮発させることにより表面処理膜を形成できる。
ベーク処理におけるベーク温度は80〜400℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましく、ベーク処理時間は15〜120秒間であることが好ましく、30〜90秒間であることがより好ましい。
表面処理剤に用いるエポキシ樹脂が上記一般式(g1−1)で表される構成単位を有するものである場合、上記ベーク温度は150〜300℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましい。
表面処理剤に用いるエポキシ樹脂が上記一般式(g1−2)で表される構成単位、上記一般式(g1−3)で表される構成単位または上記一般式(g1−4)で表される構成単位を有するものである場合、上記ベーク温度は85〜350℃であることが好ましく、120〜300℃であることがより好ましい。
上記の何れのベーク温度も上記範囲内であると、支持体12の表面を特に好適に疎水化することができる。
表面処理膜の厚さは、好ましくは0.01〜3.5nm、より好ましくは0.3〜2.5nmである。表面処理膜の厚さを上記範囲内とすることにより、支持体12表面を十分に疎水化して、支持体12と分離層15との親和性をより高めることができる。
〔分離層形成工程〕
本実施形態に係る積層体の製造方法における分離層形成工程は、上記表面処理工程によって表面処理された上記支持体12の、疎水化された上記表面上の表面処理膜14の上に分離層15を形成する工程である。
(分離層)
分離層15は、支持体12を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。本明細書において、分離層15が「変質する」とは、分離層15をわずかな外力を受けて破壊され得る状態、または分離層15と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。光を吸収することによって生じる分離層15の変質の結果として、分離層15は、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体12を持ち上げるなど)ことによって、分離層15が破壊されて、支持体12と基板11とを容易に分離することができる。
また、分離層15の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性または非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化または官能基の解離(そして、これらにともなう分離層の硬化、脱ガス、収縮または膨張)等であり得る。分離層15の変質は、分離層15を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層15の変質の種類は、分離層15を構成する材料の種類に応じて変化し得る。
分離層15は、支持体12における、接着層13を介して基板11が貼り合わされる側の表面に設けられている。すなわち、分離層15は、表面処理膜14と接着層13との間に設けられている。
分離層15の厚さは、例えば、0.05〜50μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることがさらに好ましい。分離層15の厚さが0.05〜50μmの範囲内に収まっていれば、短時間の光の照射および低エネルギーの光の照射によって、分離層15に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層15の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内に収まっていることが特に好ましい。
なお、積層体10において、分離層15と支持体12との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これによって、分離層15への光の入射を妨げることなく、積層体10に好ましい性質などを付与する層を、適宜追加することができる。分離層15を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、すべての光を透過させる必要はなく、分離層15を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択し得る。
また、分離層15は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層15を形成してもよい。また、分離層15における接着層13に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層15の形成が容易に行なえ、且つ貼り付けにおいても均一に貼り付けることが可能となる。
分離層15は、以下に示すような分離層15を構成する材料を予めフィルム状に形成したものを支持体12に貼り合わせて用いてもよいし、支持体12上に分離層15を構成する材料を塗布してフィルム状に固化したものを用いてもよい。支持体12上に分離層15を構成する材料を塗布する方法は、分離層15を構成する材料の種類に応じて、化学気相成長(CVD)法による堆積等の従来公知の方法から適宜選択することができる。
分離層15は、レーザから照射される光を吸収することによって変質するものであってもよい。すなわち、分離層15を変質させるために分離層15に照射される光は、レーザから照射されたものであってもよい。分離層15に照射する光を発射するレーザの例としては、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、または、非レーザ光等が挙げられる。分離層15に照射する光を発射するレーザは、分離層15を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層15を構成する材料を変質させ得る波長の光を照射するレーザを選択すればよい。
(フルオロカーボン)
分離層15は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層15は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体12を持ち上げるなど)ことによって、分離層15が破壊されて、支持体12と基板11とを容易に分離することができる。
また、一つの観点からいえば、分離層15を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD法によって好適に成膜され得る。なお、フルオロカーボンは、CxFy(パーフルオロカーボン)およびCxHyFz(x、yおよびzは整数)を含み、これらに限定されないが、例えば、CHF、CH、C、C、C、C等で有り得る。また、分離層15を構成するために用いるフルオロカーボンに対して、必要に応じて窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、アルカン、アルケンなどの炭化水素、および、酸素、二酸化炭素、水素を添加してもよい。また、これらのガスを複数混合して用いてもよい(フルオロカーボン、水素、窒素の混合ガス等)。また、分離層15は、単一種のフルオロカーボンから構成されていてもよいし、2種類以上のフルオロカーボンから構成されていてもよい。
フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層15に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層15における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
分離層15に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、または、非レーザ光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
(光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体)
分離層15は、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。該重合体は、光の照射を受けて変質する。該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層15は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体12を持ち上げるなど)ことによって、分離層15が破壊されて、支持体12と基板11とを容易に分離することができる。
光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰り返し単位として該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。該構造は、例えば、置換もしくは非置換のベンゼン環、縮合環または複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、該構造は、カルド構造、または上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造もしくはジフェニルアミン構造であり得る。
上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、該構造は以下の式によって表され得る。
Figure 0006022878
(式中、R30はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基またはN(R31)(R32)であり(ここで、R31およびR32はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、または−CO−、−SO−、−SO−もしくは−NH−であり、kは0または1〜5の整数である。)
また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)の何れかによって表される繰り返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、または(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
Figure 0006022878
(式中、lは1以上の整数であり、mは0または1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の“化18”に示した式の何れかであり、(f)において上記の“化18”に示した式の何れかであるか、または存在せず、Y1およびY2はそれぞれ独立して、−CO−またはSO−である。lは好ましくは10以下の整数である。)
上記の“化18”に示されるベンゼン環、縮合環および複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオリム、置換フルオリム、フルオリモン、置換フルオリモン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナンスレン、置換フェナンスレン、ピレンおよび置換ピレンが挙げられる。例示した置換基が置換を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノおよびアリールアミノから選択される。
上記の“化18”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、およびビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。
上記の“化18”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシドなどが挙げられる。
上記の“化18”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、および4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰り返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層15の光の透過率が0.001〜10%になる範囲にある。該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層15が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体10からの支持体12の除去が容易であり、該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100〜2000nmであることがより好ましい。この範囲のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100〜500nmである。例えば、上記構造は、好ましくは約300〜370nmの波長を有している紫外光を吸収することによって、該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm〜436nm)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)もしくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、またはg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)もしくはi線(波長:365nm)などである。
上述した分離層15は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層15はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、および支持体12の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、および重合体の変質を妨げないか、または促進する、従来公知の物質または材料から適宜選択される。
(無機物)
分離層15は、無機物からなっていてもよい。分離層15は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体12を持ち上げるなど)ことによって、分離層15が破壊されて、支持体12と基板11とを容易に分離することができる。
上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物およびカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO、SiN、Si、TiN、およびカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層15に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
無機物からなる分離層15に照射する光としては、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、または、非レーザ光を適宜用いればよい。
無機物からなる分離層15は、例えばスパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術により、支持体12上に形成され得る。無機物からなる分離層15の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05〜10μmの膜厚とすることがより好ましい。また、分離層15を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面または片面に予め接着剤を塗布し、支持体12および基板11に貼り付けてもよい。
なお、分離層15として金属膜を使用する場合には、分離層15の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層15の上下またはどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
(赤外線吸収性の構造を有する化合物)
分離層15は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層15は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度または接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体を持ち上げるなど)ことによって、分離層15が破壊されて、支持体12と基板11とを容易に分離することができる。
赤外線吸収性を有している構造または赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコールおよびフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタンおよびチオフェノールおよびチオール酸などの硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A結合(Aは、H、C、Oまたはハロゲン)、P−A結合(Aは、H、CまたはO)、またはTi−O結合であり得る。
上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CHCl、−CHBr、−CHI、−CF−、−CF、−CH=CF、−CF=CF、フッ化アリール、および塩化アリールなどが挙げられる。
上記Si−A1結合を含む構造としては、SiH、SiH、SiH、Si−CH、Si−CH−、Si−C、SiO−脂肪族、Si−OCH、Si−OCHCH、Si−OC、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF、およびSiFなどが挙げられる。Si−A結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格およびシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
上記P−A結合を含む構造としては、PH、PH、P−CH、P−CH−、P−C、A −P−O(Aは脂肪族または芳香族)、(AO)3−P−O(Aはアルキル)、P−OCH、P−OCHCH、P−OC、P−O−P、P−OH、およびO=P−OHなどが挙げられる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm〜20μmの範囲内であり、2μm〜15μmの範囲内をより好適に吸収できる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合およびTi−O結合である場合には、9μm〜11μmの範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
分離層15の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解でき、固化されて固層を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層15における化合物を効果的に変質させ、支持体12と基板11との分離を容易にするには、分離層15における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層15に赤外線を照射した際の赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層15における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(10)で表される繰り返し単位および下記化学式(11)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記化学式(10)で表される繰り返し単位およびアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
Figure 0006022878
(化学式(11)中、R41は、水素、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基である)
中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記化学式(10)で表される繰り返し単位および下記化学式(12)で表される繰り返し単位の共重合体であるt−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(10)で表される繰り返し単位および下記化学式(12)で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
Figure 0006022878
また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(13)で表される繰り返し単位および下記化学式(14)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
Figure 0006022878
(化学式(13)中、R42は、水素または炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、化学式(14)中、R43は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、またはフェニル基である)
シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特許文献4:特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特許文献5:特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特許文献6:特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)および特許文献7:特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用できる。
中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記化学式(15)で表される繰り返し単位および下記化学式(16)で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記化学式(15)で表される繰り返し単位および下記化学式(16)で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
Figure 0006022878
シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、および籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
また、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、およびチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートなどのアルコキシチタン;(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、およびプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などのキレートチタン;(iii)i−CO−[−Ti(O−i−C−O−]n−i−C、およびn−CO−[−Ti(O−n−C−O−]n−n−Cなどのチタンポリマー;(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、および(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタンなどのアシレートチタン;(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタンなどの水溶性チタン化合物などが挙げられる。
中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC)2[OCN(COH))が好ましい。
上述した分離層15は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層15はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、および支持体12の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、および化合物の変質を妨げないか、または促進する、従来公知の物質または材料から適宜選択される。
(赤外線吸収物質)
分離層15は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層15は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体12を持ち上げるなど)ことによって、分離層15が破壊されて、支持体12と基板11とを容易に分離することができる。
赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、またはアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層15に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層15に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
(分離層製造装置)
図3の(a)は、本実施形態における分離層形成工程において用いる分離層製造装置100の一構成例を示す断面図であり、(b)はその排気孔と支持体との位置関係を示す図である。分離層15の形成方法は、分離層15を構成する物質に応じて適宜選択すればよいが、特に、図3に示すように、排気孔109を有する反応室102内において、支持体12が排気孔109よりも鉛直下方に位置した状態で、プラズマCVD法により支持体12上に分離層15を形成することが好ましい。これにより、図2の(a)に示すように、表面に微細な凹凸のない均質で薄い分離層15が形成された積層体1を提供することができる。なお、本明細書において、「支持体12が排気孔109よりも鉛直下方に位置した状態」とは、支持体12の上面が、排気孔109の鉛直最下部よりも鉛直下方に位置した状態を指す。
これにより、図2の(a)に示すように、本実施形態に係る積層体1の分離層15では、図2の(b)に示すような従来技術に係る積層体2に比べ、積層体1の外部へ露出する部分を減少させることができる。そのため、分離層15は、薬品処理によって変質しにくくなる。その結果、積層体1に対して所望の処理を行なう際に、分離層15が支持体12から剥離することを抑制することができる。
なお、分離層15の材料自身の耐薬品性が向上しているのではないため、支持体12の分離工程後における支持体12上に付着した分離層15の残渣を容易に洗浄できるという効果を奏する。つまり、本発明に係る積層体は、分離層の薬品による破損を解消しつつ、該分離層の洗浄の容易さを維持するという、相反する利益を両立できる。これは従来の積層体のような、分離層(光熱変換層)自身の耐薬品性を向上させるという方法では、両立し得ない効果である。
以上をより詳細に説明する。図4の(a)は、分離層製造装置の参考構成例を示す断面図であり、(b)はその排気孔と支持体との位置関係を示す図である。図4の(a)に示す分離層製造装置100’では、図4の(b)に示すように、排気孔109は、被処理物である支持体12と同じ高さにある。このような分離層製造装置100’を用いた場合、図2の(b)に示すように、分離層15は、支持体12の端部において厚く形成され、さらには支持体12の端面にまで成膜される。また、プラズマ中の活性種の固化物が、分離層15の上に乗ることで、分離層15の表面に微細な凹凸ができ、均質な分離層15を形成することが困難である。このため、積層体2における分離層15は、積層体2の外部へ露出する表面が広くなり、その結果、積層体2に対する薬品処理によって、支持体12の端面にまで形成された分離層15が変質し、その後の様々な工程において積層体2から支持体12が剥離するという問題がある。特許文献3に記載の従来技術に係るプラズマCVD装置では、排気孔は、被処理物である支持体よりも鉛直下方に設けられているが、同様の問題が生じる。
ここで、本発明者らは、分離層形成装置の反応室内における気流に着目し、装置の各部材の形状および位置の変化が、反応室内の気流へ与える影響について鋭意検討した。その結果、分離層形成装置の反応室内部における排気孔の位置が、支持体12の表面の上部のプラズマによって生じた活性種の流れに大きく影響を与えることを見出した。そして、図3に示すような、排気孔109の鉛直最下部が、支持体12の上面よりも鉛直上方へ離れて設けられている分離層形成装置100を用いて分離層15を形成したところ、図2の(a)に示すように、分離層15は、支持体12の端部から支持体12の中央部まで均一な厚みで形成され、さらに支持体12の端面における分離層15の形成も低減された。また、表面に微細な凹凸のない均質な分離層15が形成された。これにより、積層体1の耐薬品性を向上することができた。特に、支持体12に対して上述した表面処理工程を実行し、かつ、上述した反応室を用いて分離層15を形成したときに、積層体1の耐薬品性が顕著に向上することが分かった。
図3に示すように、分離層製造装置100は、反応室102を囲むように、ベース101、戴置台兼下部電極103、排気リング104、石英チャンバー胴部105、石英チャンバー上部106、および天板108を備えており、排気リング104に排気孔109が設けられている。
ベース101は、反応室102の側壁を構成する部材を支える支持部である。すなわち、ベース101には、排気リング104、石英チャンバー胴部105、石英チャンバー上部106、および天板108がこの順に重なっている。排気リング104には、反応室102から気体を排出するための排気孔109が設けられている。石英チャンバー胴部105および石英チャンバー上部106は、石英からなり、反応室102の側壁を構成している。石英チャンバー胴部105は筒形状を有し、石英チャンバー上部106は伏鉢形状を有しており、全体としてベルジャー型の構造を構成している。なお、当該形状は一例であり、本実施形態に係る分離層形成装置100の形状はこれに限定されない。
石英チャンバー上部106の外側には、コイル状の上部電極が備えられている。上部電極は、高周波電源に電気的に接続されている。また、石英チャンバー上部106の天頂部に天板108が被せられている。天板108には、反応室102に反応ガス等の気体を供給するためのガス供給口が設けられている。
また、ベース101の鉛直下方には開口部が設けられており、当該開口部を塞ぐように戴置台兼下部電極103が取り付けられている。戴置台兼下部電極(載置台)103は、支持体12を載置するための載置台として機能するとともに、上部電極との間に電圧を印加する下部電極として機能する。戴置台兼下部電極103は、例えば、アルミニウム合金等の導電体から構成され、かつ接地されている。
なお、戴置台兼下部電極103の上面から天板108の底面までの高さよりも、石英チャンバー胴部105の内周の直径の方が長いことが好ましい。
そして、反応室102内に、ガス供給口から分離層15を形成する材料となる反応ガスを導入するとともに、上部電極と下部電極との間に電圧を印加することにより、プラズマを生じさせ、プラズマと共に生じる活性種によって分離層15が形成される。
ここで、図3の(b)に示すように、排気孔109が、戴置台兼下部電極103に対して1mm以上、鉛直上方に位置するように配置されている。なお、排気孔109が、戴置台兼下部電極103に対して1mm以上、鉛直上方に位置するとは、排気孔109の鉛直最下部が、戴置台兼下部電極103の上面に対して1mm以上、鉛直上方に位置することを意味する。ここで、通常使用される支持体12の厚みは0.7mm程度である。このため、排気孔109を、戴置台兼下部電極103に対して1mm以上、鉛直上方に配置することによって、戴置台兼下部電極103に載置された支持体12の上面(分離層15を形成される表面)を、排気孔109(の最下部)より鉛直下方に位置するように維持することができる。
このように、排気孔109を戴置台兼下部電極103に対して1mm以上、鉛直上方に設置することで、被処理物である支持体15の上面(分離層15が形成される表面)は、排気孔109(の最下部)より鉛直下方に位置することになる。これによって、分離層形成工程中に排気孔109に吸い寄せられるプラズマが、支持体15の端部および端面に滞留することを抑制することができる。また、排気孔109に吸い寄せられたプラズマ中の活性種の固化物が、分離層15に沈着することを抑制することができる。
これらの効果によって、分離層形成装置100によって形成される分離層15は、支持体12の端部から支持体12の中央部まで均一な厚みで形成されるようになり、さらに支持体12の端面における分離層15の形成も低減されるようになる。また、表面に微細な凹凸のない均質な分離層15が形成できるようになる。
なお、分離層形成工程では、分離層15を形成する支持体12の表面より鉛直上方に排気孔109を配置することにより、均質な分離層15の形成を達成している。そのため、その応用において、さらに薄い支持体12またはその他の基材上に、分離層15またはその他の材料の堆積層を形成する場合には、戴置台兼下部電極103に対して1mmより低い位置に排気孔109を配置しても、支持体12またはその他の基材の表面が排気孔109より鉛直下方に位置するならば、本発明の効果を生じ得ることは考慮されるべきである。
また、一実施形態において、反応室102の内壁(排気リング104の内壁)における排気孔109の鉛直下方には、絶縁リング(絶縁部材:図示しない。)を設けることもできる。絶縁リングは、反応室102の内壁が金属により構成されている場合、プラズマが反応室102の内壁周辺に集中することを防止することができる。これにより、より均質な分離層15を形成することができる。但し、絶縁リングを設けなくともよい。
また、排気孔109と支持体12との水平方向の距離は、1mm以上であることが好ましい。排気孔109と支持体12との水平方向に距離を1mm以上にすることでも、上記反応室内の気流は制御され、均質な分離層15を形成しやすくなるからである。そのため、排気孔109は、載置台兼下部電極103の端面よりも、1mm以上外側に位置していることが好ましい。これにより、支持体12に対して排気孔109の位置を確実に水平方向へ1mm以上離すことができる。
反応ガスは、形成する分離層15に応じて適宜選択すればよいが、例えば、一実施形態において、フッ化炭素ガスおよび炭化水素ガスの少なくとも何れかを含有するガスを用いることができる。フッ化炭素ガスおよび炭化水素ガスの少なくとも何れかを反応ガスとしてプラズマCVD法を実行することにより、分離層15を好適に形成することができる。
フッ化炭素ガスの例示としては、CxFyおよびCxHyFzが挙げられ(x、yおよびzは自然数)、より詳細には、CHF、CH、C、C、C、C等が例示されるが、これらに限定されない。また、炭化水素ガスの例示としては、CH等のアルカン類、エチレン等のアルケン類、及びアセチレン等のアルキン類が挙げられる。
また、反応ガスに、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、アルカン、アルケン、アルキンなどの炭化水素ガス、フッ化炭素ガス、水素、酸素等の添加ガスを1種類以上添加してもよい。添加ガスの添加量は特に限定されないが、例えば、水素を添加する場合には、これに限定されるものではないが、ガス全体に対して5%以上、20%以下の割合で添加することが好ましい。また、酸素は、これに限定されるものではないが、極めて微量を添加するか、または添加しないことが好ましい。
なお、反応ガスは、フッ化炭素ガスを主成分としてもよく、この場合、添加ガスとして炭化水素ガスを含有させてもよい。原料ガス全体に対する添加ガスの含有量は、例えば、5%以上、20%以下とすることが好ましい。また逆に、反応ガスが、炭化水素ガスを主成分としている場合は、添加ガスとしてフッ化炭素ガスを含有させることが好ましい。なお、主成分とは、反応室102に供給するガス中において最も含有量(体積%)が多いガスを意味する。また、不活性ガスを適量添加することにより、反応ガスを好適に攪拌して、分離層15を均一に成膜することもできる。
反応ガスの流量および反応室102内の圧力は、特に限定されず、種々の条件に設定すればよい。なお、反応ガスは、天板108に設けられたガス供給口から供給されるとともに、排気孔109からポンプ等によって排気されることが好ましい。
プラズマCVD法実行時の反応室102内の目標温度は、特に限定されず、公知の温度を用いることができるが、100℃以上、300℃以下の範囲であることがより好ましく、200℃以上、250℃以下の範囲であることが特に好ましい。反応室102内の温度を、このような範囲に設定することにより、プラズマCVD法を好適に実行することができる。
また、石英チャンバー上部106に設けられた上部電極に印加する高周波電力は、これに限定するものではないが、モードジャンプを起こす電力よりも大きくなるように設定することが好ましい。容量結合主体のプラズマ(Eモードプラズマ)は、一般にプラズマ密度が低い場合に発生し、誘導結合主体のプラズマ(Hモードプラズマ)は、一般にプラズマ密度が高い場合に発生する。EモードからHモードへの遷移は誘電電界に依存し、誘電電界がある値以上になると容量結合から誘導結合へ切り替る。この現象は一般に「モードジャンプ」または「密度ジャンプ」と呼ばれている。すなわち、モードジャンプを起こす電力以下で生じているプラズマがEモードプラズマであり、モードジャンプを起こす電力より大きい電力で生じているプラズマがHモードプラズマである(例えば、特許3852655号、特許4272654号等を参照のこと)。これにより、高品質な分離層15を形成することができる。
〔接着層形成工程〕
本実施形態に係る積層体の製造方法における接着層形成工程は、基板11上に接着層13を形成する工程である。
(基板)
基板11は、支持体12に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供されるものである。本実施形態では基板11はウエハであるが、本発明に係る積層体が備える基板は、ウエハに限定されず、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を採用することができる。また、基板11における接着層13側の面には、電気回路等の電子素子の微細構造が形成されていてもよい。
(接着層)
接着層13は、基板11をサポートプレート12に接着固定すると同時に、基板11の表面を覆って保護する構成である。よって、接着層は、基板11の加工または搬送の際に、サポートプレート12に対する基板11の固定、および基板11の保護すべき面の被覆を維持する接着性および強度を有している必要がある。一方で、サポートプレート12に対する基板11の固定が不要になったときに、基板11から容易に剥離または除去され得る必要がある。
したがって、接着層13は、通常は強固な接着性を有しており、何らかの処理によって接着性が低下するか、または特定の溶剤に対する可溶性を有する接着剤によって構成される。接着層13の厚さは、例えば、1〜200μmであることがより好ましく、10〜150μmであることがさらに好ましい。接着層13は、以下に示すような接着材料を、スピン塗布のような従来公知の方法により基板11上に塗布することによって、形成することができる。
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキサン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が、本実施形態に係る接着層13を構成する接着剤として使用可能である。以下では、本実施の形態における接着層13が含有する樹脂の組成について説明する。
接着層13が含有する樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、またはこれらを組み合わせたものなどが挙げられる。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、ならびに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィンなどが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制するうえで好ましい。
単量体成分を重合する際の重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移点が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層の軟化をさらに抑制することができる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層が軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離する際の剥離速度が良好なものとなる。
樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、300〜3000であることが好ましい。樹脂(B)の分子量が300以上であると、耐熱性が充分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の分子量が3000以下であると、積層体を剥離する際の剥離速度が良好なものとなる。なお、本実施形態における樹脂(B)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性および剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、および柔軟性に優れるので好ましい。
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンまたはスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状または分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドなどのアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
例えば、下記化学式(17)で表される繰り返し単位および下記化学式(18)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
Figure 0006022878
(化学式(18)中、nは0または1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、およびAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)などを使用できる。
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着層13を形成することが好ましい。これは、光硬化性樹脂が、接着層13の剥離または除去の後に、基板11の微小な凹凸の周辺に残渣として残ってしまう場合があり得るからである。特に、特定の溶剤に溶解する接着剤が接着層13を構成する材料として好ましい。これは、基板11に物理的な力を加えることなく、接着層13を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着層13の除去に際して、強度が低下した基板11からでさえ、基板11を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層13を除去することができる。
上述した分離層、接着層を形成する際の希釈溶剤として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましい。接着剤として用いるエラストマーは、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であることが好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であることが好ましい。
エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPT)、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、および、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)等が挙げられる。
(その他の成分)
接着材料には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤および界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
〔積層工程〕
積層工程とは、基板11と支持体12を、基板11と支持体12との間に分離層15を備えるように接着層13を介して積層する工程をいう。
積層工程の具体的な方法としては、図1に示すように、基板11上の接着層13が形成された面と支持体12の分離層15が形成された面とを貼り合わせ、真空下でベークし圧着することで積層する工程が挙げられる。
なお、本発明に係る積層体は、基板と支持体を、基板と支持体との間に分離層を備えるように接着層を介して積層されており、かつ上記支持体における少なくとも分離層が設けられる表面が、表面処理工程によって疎水性化されていれば、特に工程の順序は限定されない。
以上により,本実施形態に係る積層体1を製造することができる。積層体1は、(i)表面が親水性の支持体12における少なくとも分離層15が設けられる表面が疎水化されている(当該表面に表面処理膜14が設けられている)ことによって、支持体12と分離層15との親和性が向上しており、また、(ii)排気孔を有する反応室内において、支持体12が当該排気孔よりも鉛直下方に位置した状態で、プラズマCVD法により支持体12上に分離層15を形成されていることによって、表面に微細な凹凸のない均質で薄い分離層15を形成することができる。これにより、薬品耐性の向上した積層体1を提供することができる。
また、分離層15を成膜した支持体12がカセットに保存される場合、支持体12の端面に形成された分離層15が、カセットを汚染するという問題も、本実施形態に係る積層体では解消することができる。
なお、本実施形態に係る積層体は、上記(i)および(ii)の両方の構成を備えていることが好ましいが、何れか一方のみを備えるものであってもよい。また、本実施形態に係る積層体の製造方法は、(iii)表面が親水性の支持体12における少なくとも分離層15が設けられる表面を疎水化する工程、および、(iv)排気孔を有する反応室内において、支持体12が当該排気孔よりも鉛直下方に位置した状態で、プラズマCVD法により支持体12上に分離層15を形成する工程の両方を包含していることが好ましいが、何れか一方のみを包含するものであってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1〕
表面処理工程のためのシリル化剤としてヘキサメチルジシラン(HMDS)を用い、これをレジスト塗布装置SK−W80A(大日本スクリーン製造社製)のHMDS処理ユニットにセットし、80℃−10分間のベーパー加熱条件で、支持体(12インチガラス基板、厚さ700μm)の表面処理を行った(表面処理工程)。
上記支持体の表面処理した面より、鉛直上方に16.5mm、水平方向に8.0mm離れるように、排気孔の位置が設定されたCVD装置の反応室内に、上記表面処理した支持体を設置した。
流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2800Wおよび成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてCを使用したCVD法により、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ0.5μm)を上記支持体の表面処理をした面の上に形成した(分離層形成工程)。
つぎに、725μmの厚さの半導体ウエハ(12インチシリコンウエハ)基板上に、ベーク後に50μmの厚さになる量の炭化水素系の接着剤組成物「TZNR-A3007」(東京応化工業株式会社製)を塗布した。そして、90℃,160℃および220℃のそれぞれにおいて、段階的に15分間ずつベークして半導体ウエハ基板上に接着層を形成した(接着層形成工程)。そして、真空下220℃、4000Kgの条件で3分間、分離層を形成した支持体と貼り合せを行い積層体とした(積層工程)。
(薬品耐性評価)
ウエハを40μmまで研削して、剥離液としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いた薬品耐性評価を行った。60℃に加温したNMPに上記積層体を10分間浸漬した後、目視による外観検査、並びに顕微鏡によるガラス側、基板側からのエッジ部の観察、によって剥がれ等の不具合がないか評価した。
(加熱処理評価)
上述した薬品耐性評価後の積層体を、それぞれ、260℃のN環境下で30分間、加熱処理を行なった。その後、目視による外観検査、並びに顕微鏡によるガラス側、基板側からのエッジ部の観察によって、剥がれ等の不具合がないか評価した。
実施例1の積層体では、薬品耐性評価および加熱処理評価ともに問題ない結果となった。
〔実施例2〕
表面処理工程のためのポリマーコーティングとして、COUT200(エポキシ系ポリマーコーティング、東京応化工業株式会社製)を、支持体上に塗布し、240℃で60秒間のベーク処理を行い、乾燥することにより、厚さ220nmの表面処理膜を形成した。
上記支持体の表面処理した面より、鉛直上方に16.5mm、水平方向に8.0mm離れるように、排気孔の位置が設定されたCVD装置の反応室内に、上記表面処理した支持体を設置した。
流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2800Wおよび成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてCを使用したCVD法により、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ0.5μm)を上記支持体の表面処理をした面の上に形成した(分離層形成工程)。
つぎに、725μmの厚さの半導体ウエハ基板上に、ベーク後に50μmの厚さになる量の炭化水素系の接着剤組成物「TZNR-A3007」(東京応化工業株式会社製)を塗布した。そして、90℃,160℃および220℃のそれぞれにおいて、段階的に15分間ずつベークして半導体ウエハ基板上に接着層を形成した(接着層形成工程)。そして、真空下220℃、4000Kgの条件で3分間、分離層を形成した支持体と貼り合せを行い積層体とした(積層工程)。
(薬品耐性評価)
ウエハを40μmまで研削して、剥離液としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いた薬品耐性評価を行った。60℃に加温したNMPに上記積層体を10分間浸漬した後、目視による外観検査、並びに顕微鏡によるガラス側、基板側からのエッジ部の観察、によって剥がれ等の不具合がないか評価した。
(加熱処理評価)
上述した薬品耐性評価後の積層体を、それぞれ、260℃のN環境下で30分間、加熱処理を行なった。その後、目視による外観検査、並びに顕微鏡によるガラス側、基板側からのエッジ部の観察、によって剥がれ等の不具合がないか評価した。
実施例2の積層体では、薬品耐性評価および加熱処理評価ともに問題ない結果となった。
本発明は、例えば、微細化された半導体装置の製造分野において好適に利用することができる。
1 積層体
2 積層体
11 基板
12 支持体
13 接着層
14 表面処理膜
15 分離層
100 分離層形成装置
101 ベース
102 反応室
103 戴置台兼下部電極(載置台)
104 排気リング
105 石英チャンバー胴部
106 石英チャンバー上部
108 天板
109 排気孔

Claims (7)

  1. 基板、該基板を支持する光透過性の支持体、および該基板と該支持体との間に設けられ、該支持体を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層を備えた積層体の製造方法であって、
    排気孔を有する反応室内において、上記支持体が上記排気孔よりも鉛直下方に位置した状態で、プラズマCVD法により該支持体上に上記分離層を形成する分離層形成工程を包含しており、
    上記反応室は、全体としてベルジャー型であり、上記排気孔は、当該反応室の内壁を構成している排気リングに設けられており、当該反応室の内壁の天頂部にガス供給口が設けられていることを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 上記反応室内には、上記支持体を載置するための載置台が設けられており、
    上記排気孔は、該載置台に対して1mm以上、鉛直上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 上記反応室の内壁における上記排気孔の鉛直下方に、絶縁部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
  4. 上記排気孔と上記支持体との水平方向の距離が、1mm以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
  5. 上記分離層形成工程では、炭化水素ガスおよびフッ化炭素ガスの少なくとも何れかを含有する反応ガスを用いたプラズマCVD法により、上記分離層を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
  6. 光透過性の支持体上に、該支持体を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層をプラズマCVD法により形成する分離層形成装置であって、
    排気孔を有する反応室と、
    該反応室内において、該支持体を載置するための載置台と、を備えており、
    該排気孔は、該載置台に対して1mm以上、鉛直上方に配置されており、
    上記反応室は、全体としてベルジャー型であり、上記排気孔は、当該反応室の内壁を構成している排気リングに設けられており、当該反応室の内壁の天頂部にガス供給口が設けられていることを特徴とする分離層形成装置。
  7. 上記反応室の内壁における上記排気孔の鉛直下方に、絶縁部材がさらに設けられていることを特徴とする請求項6に記載の分離層形成装置。
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