以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係るプロジェクター1の概略構成図である。光源装置10は、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光を含む照明光を射出する。光源装置10は、レーザーダイオードアレイ2、集光レンズ4、波長変換素子として機能する蛍光体ホイール100、及びピックアップレンズ6を有する。
レーザーダイオードアレイ2は、アレイ状に配置された複数のレーザーダイオード3から構成されている。レーザーダイオードアレイ2は、励起光60を射出する励起光用光源部として機能する。励起光60は、例えば、450nm付近の波長のB光である。集光レンズ4は、レーザーダイオードアレイ2から射出された励起光60を蛍光体ホイール100において集光させる集光光学系として機能する。
蛍光体ホイール100は、励起光60が照射されることにより励起光60とは異なる波長の蛍光を射出する。ピックアップレンズ6は、励起光60の光路上に設けられている。ピックアップレンズ6は、蛍光体ホイール100から射出した蛍光と蛍光体ホイール100を透過した励起光60とを捕捉し、コリメート光学系11へ進行させる。
コリメート光学系11は、光源装置10からの光をロッドインテグレーター12に集光する。ロッドインテグレーター12は、入射した光を内部にて多重反射させて均一化し、均一化された光を重畳レンズ13に向けて射出する。重畳レンズ13は、ロッドインテグレーター12にて複数に分割された光束を空間光変調装置にて重畳させる。
第1ダイクロイックミラー14は、重畳レンズ13から入射したR光及びG光を反射し、B光を透過させる。第1ダイクロイックミラー14を透過したB光は、反射ミラー16での反射により光路が折り曲げられ、入射側偏光板20Bへ入射する。入射側偏光板20Bを透過した光は、液晶パネル21Bへ入射する。液晶パネル21Bは、B光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置を構成する。液晶パネル21Bを透過した光は、射出側偏光板22Bへ入射する。射出側偏光板22Bを透過したB光は、クロスダイクロイックプリズム23へ入射する。
第1ダイクロイックミラー14で反射したR光およびG光は、第2ダイクロイックミラー15へ入射する。第2ダイクロイックミラー15は、G光を反射し、R光を透過させる。第2ダイクロイックミラー15での反射により光路が折り曲げられたG光は、入射側偏光板20Gへ入射する。入射側偏光板20Gを透過したG光は、液晶パネル21Gへ入射する。液晶パネル21Gは、G光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置を構成する。液晶パネル21Gを透過した光は、射出側偏光板22Gへ入射する。射出側偏光板22Gを透過したG光は、クロスダイクロイックプリズム23へ入射する。
第2ダイクロイックミラー15を透過したR光は、反射ミラー17での反射により光路が折り曲げられ、リレーレンズ18に入射する。リレーレンズ18を透過したR光は、反射ミラー19での反射により光路が折り曲げられ、入射側偏光板20Rへ入射する。入射側偏光板20Rを透過したR光は、液晶パネル21Rへ入射する。液晶パネル21Rは、R光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置を構成する。液晶パネル21Rを透過した光は、射出側偏光板22Rへ入射する。射出側偏光板22Rを透過したR光は、クロスダイクロイックプリズム23へ入射する。
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム23は、各空間光変調装置で変調された光を合成して映像光とし、投写光学系24へ進行させる。投写光学系24は、クロスダイクロイックプリズム23で合成された映像光を不図示のスクリーンへ投写する。
図2(a)は、波長変換素子として機能する蛍光体ホイール100の平面図であり、蛍光体ホイール100を構造体32が設けられた側から見た平面図である。図2(b)は、蛍光体ホイール100の断面図であり、蛍光体ホイール100の中心位置を含む断面である。図2(a)および図2(b)においては、蛍光体ホイール100にホイールモーター33が装着されており、図2(b)においては、蛍光体ホイール100にピックアップレンズ6がさらに組み合わせられている。
また、図3は、図1(a)において蛍光体ホイール100の回転軸Rを中心とする円の半径方向に沿うA−A’断面図である。
蛍光体ホイール100は、回転軸Rの周りに回転可能なホイール基板31と、構造体32と、を有する。
図2に示したように、ホイール基板31は、円形状の板状部材であって、ガラス等の透明部材から構成されている。ホイール基板31の中心には、円柱状のホイールモーター33を貫通させる開口部が設けられている。開口部において、ホイール基板31がホイールモーター33に装着されることで、ホイール基板31はホイールモーター33と一体とされている。ホイール基板31は、ホイールモーター33の駆動によって、円形状の中心位置を回転軸Rとして回転する。すなわち、ホイール基板31は、当該ホイール基板31の一面と交差する回転軸Rを中心として回転可能とされている。
図3に示したように本実施例では、構造体32は、蛍光体層36、第1の反射部34a、及び第2の反射部34bを含む。蛍光体層36には、粒子状の複数の蛍光体1000が含まれている。蛍光体層36は発光素子として機能する。励起光60は蛍光体層36の入射面36a側から蛍光体層36に入射し、蛍光体1000を励起させる。励起された蛍光体1000は、蛍光を発生する。蛍光体1000が発した蛍光および蛍光体層36を透過した一部の励起光60は、蛍光体層36の射出面36bから射出する。以下、実施例1乃至4においては、射出面36bは、蛍光体層36が有する複数の面のうち、蛍光体1000から発せられた蛍光が蛍光体層36から空気中に射出される面を指す。
ホイール基板31の一面、すなわち、励起光60がホイール基板31に入射する面31bとは反対側のホイール基板31の表面31aには、凹部37が設けられており、構造体32は該凹部37に設けられている。蛍光体層36の射出面36bとホイール基板31の表面31aとは互いに連続している。
図2(a)に示したように、蛍光体層36を含む構造体32は、平面視で一定の幅を持つ環をなしている。蛍光体層36(構造体32)がなす環は、ホイール基板31が回転軸Rを中心に回転することによって得られる励起光60のスポットの軌跡に対応している。
図3において、蛍光体層36は、第1の側面35aおよび第2の側面35bを備える。第1の側面35aおよび第2の側面35bは、平面視で回転軸Rを中心とする円の形状を有しており、互いに対向している。第1の側面35aは、環状の蛍光体層36のホイールモーター33側の側面であり、第2の側面35bは、環状の蛍光体層36のホイール基板31の外縁側の側面である。本実施例では、適宜、第1の側面35aと第2の側面35bを併せて側面35と呼ぶことがある。
第1の反射部34aは蛍光体層36の第1の側面35aに設けられ、第2の反射部34bは蛍光体層36の第2の側面35bに設けられている。第1の側面35aに交差する断面、たとえば回転軸Rを中心とする円の半径方向に沿った断面A−A’において、第1の側面35aと第2の側面35bとの間の距離は、励起光60の入射面36aから蛍光の射出面36bに向かって大きくなっている。したがって、第1の反射部34aと第2の反射部34bとの間の距離も、励起光60の入射面36aから蛍光の射出面36bに向かって大きくなっている。
本実施例では、適宜、第1の反射部34aと第2の反射部34bを併せて反射部34と呼ぶことがある。また、本明細書では便宜上、上記のような形態にて設けられた反射部34を、テーパ形状の反射部34、と呼ぶ。あるいは、反射部34がテーパ形状を有している、という。反射部34は、蛍光体層36から射出された蛍光及び励起光60を反射する。反射部34としては、高反射性部材、例えば金属部材からなる膜を用いる。
ダイクロイック膜38は、ホイール基板31と蛍光体層36との間にある入射面36aに設けられ、平面視で回転軸Rを中心とする円の形状を有している。ダイクロイック膜38は、レーザーダイオードアレイ2から射出された励起光60を透過させ、蛍光体1000から射出された蛍光を反射する波長特性を持つ波長分離層として機能する。
蛍光体1000は、励起光60の照射により、G光及びR光を含む蛍光を発生させる。蛍光体層36へ入射した励起光60のうちの一部は、蛍光とともに蛍光体層36の射出面36bからピックアップレンズ6に向かって射出する。このように、光源装置10は、G光およびR光を含む蛍光と、B光を含む励起光60とを混合させることにより、白色の照明光を射出する。
蛍光体としては、例えば、YAG蛍光体を用いる。蛍光体層36は、例えば、粉末状の蛍光体1000とバインダーとの混合物をホイール基板31に塗布し、熱硬化させることにより得られる。
蛍光体層36の入射面36aには、励起光60のスポットが形成される。光源装置10は、回転軸Rを中心とする円の半径方向に沿った励起光60のスポット径d1が、入射面36aの幅Mと略等しいか、もしくは入射面36aの幅Mより小さくなるように調整される。これにより、励起光60の入射位置、すなわち波長変換素子に形成される励起光のスポットが入射面36aからはみ出さないための、波長変換素子の回転によるぶれの許容範囲を大きくすることができる。
ホイール基板31へ入射した励起光60は、ホイール基板31及びダイクロイック膜38を透過して、蛍光体層36へ入射する。蛍光体層36へ入射した励起光60の一部は、蛍光体1000を励起し、励起された蛍光体1000は蛍光を発する。蛍光体1000で発生した蛍光は、発光位置を中心としてほぼ等方的に射出する。
蛍光体層36の内部を、ホイール基板31の表面31aと平行に、あるいは蛍光体層36の射出面36bの法線Nに対して大きな角度をなして進む光は、反射部34によって反射される。そのため、回転軸Rを中心とする円の半径方向への蛍光の伝播が制限され、発光領域が第1の反射部34aと第2の反射部34bとの間の領域に制限される。つまり、発光領域は、第1の反射部34aを越えて広がることはない。また、発光領域は、第2の反射部34bを越えて広がることはない。したがって、発光面積の増加を抑制させることができる。
蛍光体層36の内部をホイール基板31の入射面36a側へ向かって進行した蛍光は、ダイクロイック膜38で反射され、蛍光体層36の射出面36bの方向へ進行する。そのため、蛍光体1000から発せられた蛍光は、ホイール基板31の入射面36a側へ漏れず、蛍光体層36の射出面36bから効率良く射出することができる。
また、蛍光体層36を透過した一部の励起光60および蛍光体1000が発した蛍光のうち、蛍光体層36の射出面36bに対して臨界角より小さい角度で入射した成分は、蛍光体層36から空気中へ射出する。
テーパ形状の反射部34によって光をホイール基板31の入射面36a側とは逆方向に反射させることで、射出面36bの法線Nに対する光線角度が小さくなるように光の進行方向を変化させることができる。したがって、蛍光体層36の射出面36bにおける光線角度が小さくなり、射出面36bにおける光の全反射が抑制され、蛍光体層36の内部を進行する光が蛍光体層36の射出面36bから空気中に射出しやすくなる。
そして、蛍光体層36の射出面36bによって反射されて蛍光体層36に戻ってくる光の量が少なくなるため、蛍光が蛍光体層36によって吸収されることによる光の損失や熱の発生が抑制される。
また、蛍光体層36の射出面36bから射出する光の射出角(光線角度)を小さくすることで、ピックアップレンズ6等で取り込まれる光の量を増大させることが可能となる。
このように、蛍光体ホイール100を含むプロジェクター1のシステム全体としての光利用効率を向上させることができる。
(変形例1)
図4は、本実施例の変形例1に係る蛍光体ホイールの要部断面図であり、図3の断面図に対応している。実施例1に係る蛍光体ホイール100では、蛍光体層36の射出面36bとホイール基板31の表面31aとが互いに連続するように設けられていたが、本変形例に係る蛍光体ホイール200では、蛍光体層36の射出面36bはホイール基板31に設けられた凹部37の内部に埋め込まれている。
反射部34は、蛍光体層36の側面35と凹部37の壁面とに挟まれている。また、反射部34は、蛍光体層36の側面35だけに設けられているのではなく、凹部37の壁面に沿って、蛍光体層36の射出面36bからホイール基板31の表面31a近傍まで延在している。本変形例では、反射部34は蛍光体層36の射出面36bからホイール基板31の表面31aまで延在している。
本変形例に係る蛍光体ホイール200によれば、実施例1に係る蛍光体ホイール100において得られる効果の他に、以下のような効果も得られる。
蛍光体層36の射出面36bから射出した光のうち、法線Nに対して大きな角度で射出した光が反射部34によってピックアップレンズ6の方向に反射されるため、ピックアップレンズ6で取り込まれる光の量を増大させることが可能となる。これにより、蛍光体ホイール200を含むプロジェクター1のシステム全体としての光利用効率を更に向上させることができる。
(変形例2)
図5は、本実施例の変形例2に係る蛍光体ホイールの要部断面図であり、図3の断面図に対応している。実施例1に係る蛍光体ホイール100では、構造体32はホイール基板31に設けられた凹部37に埋め込まれていたが、変形例2に係る蛍光体ホイール300では、構造体32はホイール基板31の表面31aに設けられている。
本変形例に係る蛍光体ホイール300によれば、実施例1に係る蛍光体ホイール100において得られる効果の他に、蛍光体層36で発生した熱を外部へ効果的に放散させることができるという効果も得られる。
(変形例3)
上記の実施例1及び変形例1、2に係る蛍光体ホイールでは、第1の反射部34aと第2の反射部34bとが設けられていたが、いずれか一方のみを設けてもよい。たとえば、第2の反射部34bのみを設けた場合、蛍光体層36の射出面36bの法線Nに対して大きな角度をなして進行する蛍光成分は、第2の反射部34bでの反射により、ホイール基板31の外側方向への伝播が制限される。第2の反射部34bによって反射された光は、蛍光体層36の内部を蛍光体1000によって散乱されながら進行し、やがて射出面36bから空気中に射出する。従って、第1の反射部34aと第2の反射部34bのうちいずれか一方のみを設けた場合であっても、システム全体としての光利用効率を向上させる効果が得られる。
[実施例2]
図6乃至図10を用いて、実施例2に係るプロジェクターについて説明する。図6は、本発明の実施例2に係るプロジェクター600の概略構成図である。図7は、蛍光体ホイール400の平面図である。図8は蛍光体ホイール400の断面C−C’を示す図であり、図9は蛍光体ホイール400の断面B−B’を示す図である。図10は、フィルター620の平面図である。
実施例1では、一つの環状の構造体32がホイール基板31に設けられていたが、本実施例に係る蛍光体ホイール400では、図7に示したように、複数の構造体32Rと複数の構造体32Gとがホイール基板31の回転軸Rを囲むように環状に配置されている。また、円柱状のホイールモーター33を貫通させる開口部433が設けられている。構造体32Rは、励起光60によって励起されることで赤色の蛍光を発する蛍光体1000Rを含む蛍光体層36Rを備え、構造体32Gは、励起光60によって励起されることで緑色の蛍光を発する蛍光体1000Gを含む蛍光体層36Gを備える。励起光60は、実施例1と同様、450nm付近の波長の青色光である。
図8と図9を用いて、構造体32Rについて説明する。構造体32Gは構造体32Rと同様な構造を備えているため、構造体32Gの説明は省略する。構造体32Rは、蛍光体層36R、第1の反射部34a、第2の反射部34b、第3の反射部84aおよび第4の反射部84bを含む。蛍光体層36Rには、粒子状の蛍光体1000Rが分散されている。励起光60は蛍光体層36Rの入射面36a側から蛍光体層36Rに入射し、蛍光体1000Rを励起させる。励起された蛍光体1000Rは、赤色の蛍光を発する。蛍光体層36Rを透過した一部の励起光60および蛍光体1000Rが発した蛍光は、蛍光体層36Rの射出面36bから射出する。
図8に示したように、蛍光体層36Rは、第1の側面35aおよび第2の側面35bを備える。第1の側面35aおよび第2の側面35bは、平面視でホイール基板31の回転軸Rを中心とする円の形状を有し、円の半径方向に互いに対向している。第1の側面35aは、蛍光体層36のホイールモーター33側の側面であり、第2の側面35bは、蛍光体層36のホイール基板31の外縁側の側面である。第1の反射部34aは蛍光体層36Rの第1の側面35aに設けられ、第2の反射部34bは蛍光体層36Rの第2の側面35bに設けられている。実施例1による蛍光体ホイール100と同様、第1の側面35aに交差する断面、たとえば回転軸Rを中心とする円の半径方向に沿った断面C−C’において、第1の側面35aと第2の側面35bとの間の距離は、入射面36aから射出面36bに向かって大きくなっている。したがって、第1の反射部34aと第2の反射部34bとの間の距離も、入射面36aから射出面36bに向かって大きくなっている。
図9に示したように、蛍光体層36Rは、さらに、ホイール基板31の回転軸Rを中心とする円の半径方向に延在する第3の側面85aおよび第4の側面85bを備える。第3の側面85aと第4の側面85bとは、円の円周方向に互いに対向している。第3の反射部84aは蛍光体層36Rの第3の側面85aに設けられ、第4の反射部84bは蛍光体層36Rの第4の側面85bに設けられている。第3の側面85aに交差する断面、たとえば回転軸Rを中心とする円の円周方向に沿った断面B−B’において、第3の側面85aと第4の側面85bとの間の距離は、入射面36aから射出面36bに向かって大きくなっている。したがって、第3の反射部84aと第4の反射部84bとの間の距離も、入射面36aから射出面36bに向かって大きくなっている。
本実施例では、適宜、第1の側面35aと第2の側面35bを併せて側面35と呼び、第3の側面85aと第4の側面85bを併せて側面85と呼ぶことがある。また、適宜、第1の反射部34aと第2の反射部34bを併せて反射部34と呼び、第3の反射部84aと第4の反射部84bを併せて反射部84と呼ぶことがある。さらに、実施例1と同様、上記のような形態にて設けられた反射部34および反射部84を、テーパ形状の反射部、と呼ぶ。あるいは、反射部がテーパ形状を有している、という。反射部34及び反射部84はテーパ形状を有しているため、蛍光体層36Rから入射した蛍光及び励起光60を射出面36bに向かって反射する。反射部34および反射部84としては、高反射性部材、例えば金属部材からなる膜を用いる。
図7に示したように、一対の構造体32Rと構造体32Gと他の一対の構造体32Rと構造体32Gとの間には、蛍光体が設けられていない領域424が備えられている。一対の構造体32Rと構造体32Gと蛍光体が設けられていない領域424とは、ホイール基板31の回転軸Rを中心とする円の円周方向に、交互に設けられている。励起光60は蛍光体が設けられていない領域424を透過することができる。そのため、ホイール基板31の回転に伴って、ホイール基板31からは、青色の励起光と赤色の蛍光が混合された光と、青色の励起光と緑色の蛍光が混合された光と、青色の励起光とが、順次射出される。
次に、蛍光体ホイール400を用いたプロジェクター600について、図6を用いて説明する。実施例1に係るプロジェクター1と共通する部材については、説明を省略する。
光源装置610はレーザーダイオードアレイ2、集光レンズ4、蛍光体ホイール400、フィルター620及びピックアップレンズ6を有する。
図10に示したように、フィルター620には、蛍光体ホイール400側から入射した励起光60を反射し、蛍光体ホイール400から発せられた赤色の蛍光と緑色の蛍光とを透過させるダイクロイック膜622が複数設けられている。また、互いに隣り合う2つのダイクロイック膜622の間には、ダイクロイック膜622が設けられていない領域624が設けられている。ダイクロイック膜622が設けられていない領域624とダイクロイック膜622が設けられている領域とは、フィルター620の回転軸Rを中心とする円の円周方向に、交互に設けられている。ダイクロイック膜622が設けられていない領域624は、励起光60が透過することができる。また、ダイクロイック膜622が設けられていない領域624には、励起光60を拡散させるような処理が施されている。たとえば、ダイクロイック膜622が設けられていない領域624においては、フィルター620の表面を粗くすることによって、励起光60を拡散させることができる。
フィルター620にも、円柱状のホイールモーター33を貫通させる開口部633が設けられている。フィルター620と蛍光体ホイール400とは、フィルター620に設けられたダイクロイック膜622が蛍光体ホイール400に設けられた一対の構造体32Rと構造体32Gとに平面視で重なり、且つフィルター620のダイクロイック膜622が設けられていない領域624が蛍光体ホイール400の蛍光体が設けられていない領域424と平面視で重なるように、ホイールモーター33に装着される。このようにフィルター620と蛍光体ホイール400とをホイールモーター33に装着することにより、フィルター620と蛍光体ホイール400の回転に伴って、光源装置610から、照明光として赤色光と青色光と緑色光とが順次射出される。
光源装置610から射出された照明光は、他の部材を通過しミラーデバイス630に入射する。ミラーデバイス630としては、たとえばテキサスインスツルメンツ社のDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)素子などを用いることができる。照明光としてミラーデバイス630に入射した各色光はミラーデバイス630によって変調される。変調された光はプリズム650に入射し、プリズム650内のミラー面に反射されて反射板651に入射する。反射板651に入射した光は投写光学系24に向けて反射される。投写光学系24の方向に反射された光は投写光学系24によって不図示のスクリーン上に拡大投写される。このようにして、スクリーン上には赤色の画像と青色の画像と緑色の画像が順次投写され、カラー画像が表示される。
蛍光体ホイール400は、テーパ形状を有する反射部34を円周方向に設け、テーパ形状を有する反射部84を半径方向に設けることで、円周方向と半径方向の両方について、発光領域を制限し、発光面積の増加を抑制させることができる。さらに、射出面36bにおいて、射出面36bの法線に対する光線角度を小さくすることが可能となる。これにより、蛍光体ホイール400を含むプロジェクター600のシステム全体としての光利用効率をさらに高めることができる。
[実施例3]
図11は、本発明の実施例3に係る波長変換素子として機能する蛍光体ホイール700の要部断面図である。実施例1に係る蛍光体ホイール100と異なる点について説明する。本実施例に係る蛍光体ホイール700では、実施例1の構造体32における蛍光体層36の入射面36aに相当する位置に、励起光60と蛍光とを反射させる反射層72がダイクロイック膜38の代わりに設けられている。
励起光60は、ホイール基板31の構造体32が設けられている側から図示しない蛍光体1000に照射され、蛍光体1000から蛍光が発せられる。従って、本実施例においては、蛍光体層36の蛍光射出面36bは、励起光の入射面でもある。蛍光体層36の内部をホイール基板31へ向かって進行した蛍光は、反射層72で反射する。そのため、蛍光体1000から発せられた蛍光は、ホイール基板31側へ漏れず、蛍光体層36の射出面36bから効率良く射出することができる。また、蛍光体層36の内部をホイール基板31へ向かって進行する励起光60も、同様に反射層72で反射し、蛍光体層36の射出面36bから効率良く射出することができる。
図12に、蛍光体ホイール700を用いた光源装置710を示す。励起光60は、ホイール基板31の構造体32が設けられている側から蛍光体1000へと照射され、励起光60の一部と蛍光体1000が発した蛍光とは、ピックアップレンズ6によって捕捉される。ピックアップレンズ6によって捕捉された光は、実施例1で説明したコリメート光学系11へ進行する。このようにして、光源装置710はプロジェクターの光源として利用される。このような反射型のホイール基板31であっても、実施例1で説明した透過型のホイール基板31と同様、システム全体としての光利用効率を向上させる効果が得られる。
反射型の蛍光体ホイール700の場合、ホイール基板31として透明部材を用いる必要はない。ホイール基板31として金属を用いれば、蛍光体1000で生じた熱を効果的に放散させることができる。この場合、実施例1や変形例1で示したように、ホイール基板の表面に設けた溝に蛍光体層36を設けることが好ましい。この構成によれば、蛍光体1000で生じた熱を、さらに効率的に放散させることができる。さらに、アルミ等の光反射率が高い金属を用いれば、ホイール基板自体が反射部34や反射部84、反射層72として機能するため、反射部34や反射層72を別個に設ける必要がない。
[実施例4]
図13は、本発明の実施例4に係るプロジェクターの概略構成図である。
上記の実施例1乃至3では、波長変換素子として、モーターによって回転可能とされた蛍光体ホイール100を用いた例を示した。これに対して、本実施例のプロジェクター800においては、光源装置810に用いる波長変換素子として、蛍光体基板811を用いている。蛍光体基板811は、基板本体812と構造体32Fとを有する。
図13に示したように、基板本体812は板状部材であって、ガラス等の透明部材から構成されている。構造体32Fは、実施例2で説明した構造体32Rまたは32Gと同一の構成である。つまり、構造体32Fは、蛍光体層、第1の反射部、第2の反射部、第3の反射部および第4の反射部を含む。励起光を効率よく利用するためには、蛍光体基板811の上に形成される励起光のスポットが蛍光体層36の入射面36aからはみ出さないことが好ましい。さらには、蛍光体層36の入射面36aの面積が励起光のスポットの面積と同じであることがさらに好ましい。基板本体812の一面、すなわち、基板本体812の励起光60が入射する面とは反対側の表面に凹部が設けられ、構造体32Fは凹部の内部に設けられている。本実施例の蛍光体基板811は、固定されたものであり、上記の実施例1乃至3の蛍光体ホイールのように回転することはない。
本実施例のプロジェクター800においても、上記の実施例1〜3と同様、蛍光体層の側面に反射部を設けたことにより、蛍光体層の内部を進行する光が蛍光体層の射出面から空気中に射出しやすくなる。その結果、蛍光体基板を含むプロジェクターのシステム全体としての光利用効率を向上させることができる。
各実施例の蛍光体ホイール31は、空間光変調装置として透過型の液晶パネルを用いるプロジェクター1や、空間光変調装置としてミラーデバイスを用いるプロジェクター600に適用される場合に限られない。蛍光体ホイールは、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を備えるプロジェクターに適用しても良い。
[実施例5]
図14は、本発明の実施例5に係るプロジェクター820の概略構成図である。
本実施例のプロジェクター820の基本構成は実施例1のプロジェクターと同様であり、蛍光体ホイールの構成が異なるのみである。よって、図14において、図1と共通な構成要素には同一の符号を付す。
光源装置821は、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光を含む照明光を射出する。光源装置821は、レーザーダイオードアレイ2、集光レンズ4、波長変換素子として機能する蛍光体ホイール822、及びピックアップレンズ6を有する。
レーザーダイオードアレイ2は、アレイ状に配置された複数のレーザーダイオード3から構成されている。レーザーダイオードアレイ2は、励起光60を射出する励起光用光源部として機能する。
励起光60は、例えば、450nm付近の波長のB光である。集光レンズ4は、レーザーダイオードアレイ2から射出された励起光60を蛍光体ホイール822にて集光させる集光光学系として機能する。蛍光体ホイール822は、励起光60の照射により励起光60とは異なる波長の蛍光を射出する。ピックアップレンズ6は、励起光60の光路上に設けられている。ピックアップレンズ6は、蛍光体ホイール822から射出した蛍光と蛍光体ホイール822を透過した励起光60とを捕捉し、コリメート光学系11へ進行させる。
コリメート光学系11は、光源装置821からの光をロッドインテグレーター12に集光する。ロッドインテグレーター12は、入射した光を内部にて多重反射させて均一化する。重畳レンズ13は、ロッドインテグレーター12にて複数に分割された光束を空間光変調装置にて重畳させる。
第1ダイクロイックミラー14は、重畳レンズ13から入射したR光及びG光を反射し、B光を透過させる。第1ダイクロイックミラー14を透過したB光は、反射ミラー16での反射により光路が折り曲げられ、入射側偏光板20Bへ入射する。入射側偏光板20Bを透過した光は、液晶パネル21Bへ入射する。液晶パネル21Bは、B光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置を構成する。液晶パネル21Bを透過した光は、射出側偏光板22Bへ入射する。射出側偏光板22Bを透過した光は、クロスダイクロイックプリズム23へ入射する。
第1ダイクロイックミラー14で反射したR光およびG光は、第2ダイクロイックミラー15へ入射する。第2ダイクロイックミラー15は、G光を反射し、R光を透過させる。第2ダイクロイックミラー15での反射により光路が折り曲げられたG光は、入射側偏光板20Gへ入射する。入射側偏光板20Gを透過したG光は、液晶パネル21Gへ入射する。液晶パネル21Gは、G光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置を構成する。液晶パネル21Gを透過した光は、射出側偏光板22Gへ入射する。射出側偏光板22Gを透過した光は、クロスダイクロイックプリズム23へ入射する。
第2ダイクロイックミラー15を透過したR光は、反射ミラー17での反射により光路が折り曲げられ、リレーレンズ18に入射する。リレーレンズ18を透過したR光は、反射ミラー19での反射により光路が折り曲げられ、入射側偏光板20Rへ入射する。入射側偏光板20Rを透過したR光は、液晶パネル21Rへ入射する。液晶パネル21Rは、R光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置を構成する。液晶パネル21Rを透過した光は、射出側偏光板22Rへ入射する。射出側偏光板22Rを透過した光は、クロスダイクロイックプリズム23へ入射する。
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム23は、各空間光変調装置で変調された光を合成して映像光とし、投写光学系24へ進行させる。投写光学系24は、クロスダイクロイックプリズム23で合成された映像光を不図示のスクリーンへ投写する。
図15(a)は、波長変換素子として機能する蛍光体ホイール822の平面図であり、図15(b)は、蛍光体ホイール822の断面図である。図15(a)および図15(b)においては、蛍光体ホイール822にホイールモーター33が装着されており、図15(b)においては、蛍光体ホイール822にピックアップレンズ6がさらに組み合わせられている。蛍光体ホイール822は、構造体823と、回転軸Rの周りに回転可能なホイール基板31とを有する。構造体823については後で詳述する。図15(a)に示した蛍光体ホイール822の平面図は、蛍光体ホイール822を構造体823が設けられた側から見た平面図である。また、図15(b)に示した蛍光体ホイール822の断面図は、蛍光体ホイール822の中心位置を含む断面である。また、図16は、ホイール基板31の回転軸Rを中心とする円の半径方向に沿う蛍光体ホイール822の断面A−A’である。
図15(a)、(b)に示したように、ホイール基板31は、円形状の板状部材であって、ガラス等の透明部材から構成されている。ホイール基板31の中心には、円柱状のホイールモーター33を貫通させる開口が設けられている。開口においてホイール基板31がホイールモーター33に装着されることで、ホイール基板31はホイールモーター33と一体とされている。ホイール基板31は、ホイールモーター33の駆動によって、円形状の中心位置を回転軸Rとして回転する。
図16に示したように、本実施例では、構造体823は、発光素子824、第1の反射部34a、及び第2の反射部34bを含む。発光素子824は、粒子状の複数の蛍光体1000を含む蛍光体層36および光透過層825を含む。蛍光体1000は励起光60の照射により励起され、蛍光を発生する。蛍光体層36は、蛍光体1000の粒子が分散された、透明樹脂からなるバインダーを有する。光透過層825は、蛍光体層36のホイール基板31とは反対側に設けられており、蛍光体層36から入射した光を透過させる。
構造体823は、ホイール基板31が有する複数の面のうち励起光60が入射する側とは反対側の表面31aに設けられている。図15(a)に示したように、構造体823に含まれる発光素子824は、平面視で一定の幅を持つ環をなしている。発光素子824がなす環は、ホイール基板31が回転することによって得られる励起光60のスポットの軌跡に対応している。
蛍光体ホイール822は、ホイール基板31の表面に構造体823を設けることで、蛍光体1000で発生した熱を外部へ効果的に放散させることができる。
図16に示したように、発光素子824は、平面視でホイール基板31の回転軸Rを中心とする円の形状を有する第1の側面35aおよび第2の側面35bを備える。第1の側面35aと第2の側面35bとは、互いに対向している。第1の側面35aは、環状の発光素子824のホイールモーター33側の側面であり、第2の側面35bは、環状の発光素子824のホイール基板31の外縁側の側面である。本実施例では、適宜、第1の側面35aと第2の側面35bを併せて側面35と呼ぶことがある。
第1の反射部34aは発光素子824の第1の側面35aに設けられ、第2の反射部34bは発光素子824の第2の側面35bに設けられている。第1の側面35aに交差する断面、たとえば回転軸Rを中心とする円の半径方向に沿った断面において、第1の側面35aと第2の側面35bとの間の距離が蛍光体層36から光透過層825に向かって大きくなっている。したがって、第1の反射部34aと第2の反射部34bとの間の距離も、蛍光体層36から光透過層825に向かって大きくなっている。本実施例では、適宜、第1の反射部34aと第2の反射部34bを併せて反射部34と呼ぶことがある。また、本明細書では便宜上、上記のような形態にて設けられた反射部を、テーパ形状の反射部、と呼ぶ。あるいは、反射部がテーパ形状を有している、という。反射部34は、蛍光体層36から入射した蛍光及び励起光と、光透過層825から入射した蛍光及び励起光とを反射する。反射部34としては、高反射性部材、例えば金属部材からなる膜を用いる。
ダイクロイック膜38は、ホイール基板31と蛍光体層36との間、すなわち蛍光体層36が有する複数の面のうち励起光60の入射面36aに設けられている。ダイクロイック膜38は、レーザーダイオードアレイ2から出射された励起光60を透過させ、蛍光体1000から出射された蛍光を反射する波長特性を持つ波長分離層として機能する。
蛍光体1000は、励起光60の照射により、G光及びR光を含む蛍光を発生させる。蛍光体層36へ入射した励起光60のうちの一部は、蛍光とともに蛍光体層36からピックアップレンズ6に向かって射出する。このように、光源装置821は、G光およびR光を含む蛍光と、B光を含む励起光60とを混合させることにより、白色の照明光を射出する。蛍光体としては、例えば、YAG蛍光体を用いる。蛍光体層36は、例えば、粉末状の蛍光体1000とバインダーとの混合物をホイール基板31に塗布し、熱硬化させることにより得られる。光透過層825は、蛍光体層36のバインダーと同じ屈折率の透明樹脂から構成されている。
蛍光体層36の入射面36aには、励起光60のスポットが形成される。光源装置821は、回転軸Rを中心とする円の半径方向に測った励起光60のスポット径d1が、入射面36aの半径方向の幅Mと略等しい、もしくは入射面36aの半径方向の幅Mより小さくなるように調整される。これにより、励起光60の入射位置、すなわち波長変換素子に形成される励起光のスポットを入射面36aからはみ出させないために許容される、蛍光体ホイール822の回転によるぶれの上限値を大きくすることができる。
ホイール基板31へ入射した励起光60は、ホイール基板31及びダイクロイック膜38を透過して、蛍光体層36へ入射する。蛍光体層36へ入射した励起光60の一部は、蛍光体1000を励起し、励起された蛍光体1000は蛍光を発する。蛍光体1000で発生した蛍光は、発光位置を中心としてほぼ等方的に出射される。
蛍光体層36から光透過層825へ進行した蛍光及び励起光60のうち、光透過層825と空気との界面へ臨界角より小さい角度で入射した成分は、光透過層825の蛍光射出面825bから空気中へ射出する。
本実施例では、光透過層825の屈折率は蛍光体層36のバインダーの屈折率と同じであるため、蛍光体層36と光透過層825との界面においては光が反射しない。そのため、蛍光体1000から射出された蛍光や、蛍光体1000によって散乱された励起光が蛍光体層36と光透過層825との界面において反射されて蛍光体層36に戻ることはない。その結果、蛍光が蛍光体層36によって吸収されることによる光の損失や熱の発生が抑制される。なお、光透過層825は、バインダーと同じ屈折率とする場合に限られず、例えば、バインダーより低い屈折率の材料で構成することとしても良い。
蛍光体層36の内部をホイール基板31へ向かって進行した蛍光は、ダイクロイック膜38で反射し、光透過層825の方向へ進行する。そのため、蛍光体1000から発せられた蛍光は、ホイール基板31側へ漏れず、光透過層825の蛍光出射面825bから効率良く射出することができる。以下、実施例5乃至10においては、蛍光出射面(射出面)825bは、光透過層825が有する複数の面のうち、蛍光体1000から発せられた蛍光が光透過層825から空気中に射出される面を指す。
また、テーパ形状の反射部34によって、ホイール基板31の法線Nに対する光線角度が小さくなるように光の進行方向を変化させることができる。したがって、光透過層825の蛍光出射面825bにおける光線角度が小さくなり、光透過層825と空気との界面における光の全反射が抑制され、その結果、光透過層825の内部を進行する光が光透過層825の蛍光出射面825bから空気中に射出しやすくなる。
さらに、蛍光体層36の内部をホイール基板31に対して平行に進行する蛍光成分は、反射部34での反射により、蛍光体ホイール822の半径方向への伝播が阻止される。本実施形態による蛍光体ホイール822では、蛍光体層36での蛍光の伝播が反射部34によって阻止されるため、蛍光体層36における発光面積の増加が抑制される。
また、光透過層825の蛍光出射面825bから射出する光の射出角を小さくすることで、ピックアップレンズ6等で取り込まれる光の量を増大させることが可能となる。これにより、蛍光体ホイール822を含むプロジェクター820は、システム全体としての光利用効率を向上させることができる。
(変形例1)
図17は、本実施例の変形例1に係る蛍光体ホイール830の要部断面図である。実施例5に係る蛍光体ホイール822では、構造体823は、ホイール基板31が有する複数の面のうち励起光60が入射する側とは反対側の表面31aに設けられていたが、本変形例に係る蛍光体ホイール830では、ホイール基板831の表面831aに設けられた溝832に構造体823が設けられていることを特徴とする。反射部34は、発光素子824の側面35と溝832の壁面とに挟まれている。ダイクロイック膜38は、溝832の底面に設けられている。溝832に蛍光体層36を設けることで、蛍光体層36の材料の塗布を安定して行うことができる。
(変形例2)
図18は、本実施例の変形例2に係る蛍光体ホイール840の平面図である。図19は、蛍光体ホイール840の要部断面図である。本変形例に係る蛍光体ホイール840は、蛍光体1000からの熱を伝導する熱伝導部841を有する。熱伝導部841は、ホイール基板31の表面31aの上に、構造体823と接するように設けられている。熱伝導部841は、高い熱伝導率の部材、例えば銅やアルミニウムを用いて構成されている。
励起光60の照射によって蛍光体1000で生じた熱は、蛍光体層36から反射部34を経て、或いは蛍光体層36から光透過層825及び反射部34を経て、熱伝導部841へ伝導する。蛍光体ホイール840は、熱伝導部841を設けることで、蛍光体1000で生じた熱を効果的に放散させることができる。蛍光体ホイール840は、効果的な放熱により、高い効率で蛍光を発生させることが可能となる。
熱伝導部841は、ホイール基板31の表面のうち構造体823以外の部分を完全に覆う場合に限られない。熱伝導部841は、蛍光体1000で生じた熱を効果的に放散させるためには、ホイール基板31の表面31aのうち構造体823の周囲の少なくとも一部に設けられていれば良いものとする。蛍光体ホイール840は、発光素子824の側面35と熱伝導部841との間に反射部34を設ける他、熱伝導部841の一部を反射部として機能させることとしても良い。
(変形例3)
図20は、本実施例の変形例3に係る蛍光体ホイール850の要部断面図である。本変形例に係る蛍光体ホイール850は、ホイール基板831及び熱伝導部841に形成された溝832に、構造体823が設けられている。本変形例の場合も、蛍光体ホイール850は、熱伝導部841を設けることで、蛍光体1000で生じた熱を効果的に放散させることができる。熱伝導部841は、ホイール基板831の表面のうち溝832以外の部分を完全に覆うこととしても良く、構造体823の周囲の一部に設けることとしても良い。
(変形例4)
図21は、本実施例の変形例4に係る蛍光体ホイール860の要部断面図である。本変形例に係る蛍光体ホイール860は、光透過層825の蛍光出射面825bに設けられた凹凸構造(モスアイ構造)861を有する。
凹凸構造861の各々は、例えば、蛍光の波長より短い幅で構成され、二次元的に設けられている。凹凸構造861は、光透過層825と空気との界面での光の反射を抑制させる。本変形例に係る蛍光体ホイール860は、凹凸構造861によって光透過層825から効率良く光を取り出すことができる。
(変形例5)
上記の実施例5及び変形例1乃至4に係る蛍光体ホイールでは、第1の反射部34aと第2の反射部34bとが設けられていたが、いずれか一方のみを設けてもよい。たとえば、第2の反射部34bのみを設けた場合、法線Nに対して大きな角度をなして進行する蛍光成分は、第2の反射部34bでの反射により、ホイール基板31の外側方向への伝播が阻止される。第2の反射部34bによって反射された光は、蛍光体層36の内部を蛍光体1000によって散乱されながら進行し、光透過層825に進入する。従って、第1の反射部34aと第2の反射部34bのうちいずれか一方のみを設けた場合であっても、システム全体としての光利用効率を向上させる効果が得られる。
[実施例6]
図22は、本発明の実施例6に係る波長変換素子として機能する蛍光体ホイール870の平面図である。本実施例では、反射部は、ホイール基板31の回転軸Rを中心とする円の形状に設けられた側面と、円の半径方向に設けられた側面とに設けられている。蛍光体ホイール870は、実施例5の光源装置810に適用される。実施例5と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。蛍光体層を含む構造体は、円周方向に配列された反射部によって、複数の単位構造体871に分割されている。
図23は、一つの単位構造体871の斜視図である。単位構造体871は、発光素子824、円周方向に設けられた第1の反射部34a、第2の反射部34b、半径方向に設けられた第3の反射部84a、及び第4の反射部84bを含む。発光素子824は、粒子状の蛍光体1000を含む蛍光体層36および光透過層825を含む。このように、発光素子824は、第1の反射部34aと第2の反射部34bと第3の反射部84aと第4の反射部84bとによって取り囲まれている。一つの単位構造体871について円周方向に設けられた第1の反射部34aおよび第2の反射部34bは、実施例5における反射部34(図16参照)と同様に、円の半径方向に沿う断面においてテーパ形状を有している。本実施例では、適宜、第1の反射部34aと第2の反射部34bとを併せて、反射部34と呼ぶことがある。同様に、第3の反射部84aと第4の反射部84bとを併せて、反射部84と呼ぶことがある。
図24は、図22において一点鎖線で示す円周方向における蛍光体ホイール870の要部断面図である。複数の単位構造体871は、反射部84によって互いに仕切られて、円周方向に並んでいる。波長分離層であるダイクロイック膜38は、ホイール基板31と、各単位構造体871の蛍光体層36との間に設けられている。一つの単位構造体871について半径方向に設けられた反射部84は、円周方向に沿う断面においてテーパ形状を有している。
本実施形態による蛍光体ホイール870では、テーパ形状を有する反射部34を円周方向に設け、テーパ形状を有する反射部84を半径方向に設けることで、円周方向と半径方向について、発光領域が制限される。そのため、発光面積の増加を抑制させるとともに、光透過層825の蛍光出射面825bにおける光線角度を小さくすることが可能となる。これにより、蛍光体ホイール870を含むプロジェクターは、システム全体としての光利用効率をさらに向上させることができる。
図24に示したように、互いに隣り合う2つの単位構造体871同士の間には、蛍光体1000が設けられていない領域が存在する。そこで、レーザーダイオードアレイ2(図14参照)は、蛍光体1000が設けられていない領域に励起光60を照射しないように、つまり各単位構造体871の蛍光体層36へ励起光60が適切に入射するように、蛍光体ホイール870の回転に応じたパルス周波数で励起光60を射出する。光源装置821は、蛍光体1000が設けられていない領域への励起光60の射出を停止させることで光利用効率を向上させるとともに、光源装置821から射出される光の強度を安定化させることができる。さらに、パルス発光とすることでレーザーダイオード3の寿命を延ばすことが可能となる。
1パルスの励起光60を蛍光体ホイール870へ入射した場合に、円周方向における照射領域の長さLは、式(1)により計算される。
L=d2+2πrmD/F …(1)
但し、d2は励起光60の円周方向のスポット径(単位m)、rは発光素子824の半径方向の中心と回転中心Rとの間の距離(単位m)、mは蛍光体ホイール870の回転数(単位rps)、Dは励起光60のパルスのデューティー比、Fは励起光60のパルス周波数(単位Hz)とする。図23に示すように、蛍光体層36の入射面36aの、円周方向についての長さをLとすることで、励起光200を単位構造体51に適切に照射することが可能となる。
長さLがスポット径d2のT倍まで許容可能、言い換えると、励起光60の滲み量がスポット径d2のT倍まで許容可能、とした場合、T=L/d2を式(1)に代入して、距離rについての式(2)が求められる。
r=(T−1)d2F/(2πrmD) …(2)
例えば、パルス周波数Fを100kHz、デューティー比Dを0.3、スポット径d2を1mm、回転数mを10000/60rps(=10000rpm)、Tを1.1、とした場合、式(2)により、距離rはおよそ3.2cmと計算される。このとき、一つの単位構造体871の円周方向の長さは、およそ1.1mmとなる。光源装置821は、このような計算に応じた設計及び駆動により、レーザーダイオードアレイ2による励起光60の照射と蛍光体ホイール870の回転とを同期させる。
蛍光体ホイール870に形成される単位構造体871の数Sは、S=F/mにより求められる。Sは整数であることから、Fはmの整数倍となる。これにより、レーザーダイオードアレイ2は、蛍光体1000が設けられていない領域を避けて、各単位構造体871の発光素子824へ励起光60を適切に入射させることができる。
各実施例の蛍光体ホイールは、空間光変調装置として透過型の液晶パネルを用いるプロジェクター1に適用される場合に限られない。蛍光体ホイールは、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)やDMD(Digital Micromirror Device)を備えるプロジェクターに適用しても良い。
[実施例7]
図25は、本発明の実施例7に係る波長変換素子として機能する蛍光体ホイール880の要部断面図である。実施例5に係る蛍光体ホイール822と異なる点について説明する。本実施例に係る蛍光体ホイール880では、実施例5の構造体823における蛍光体層36の入射面36aに相当する位置に、励起光60と蛍光とを反射させる反射層72がダイクロイック膜38の代わりに設けられている。励起光60は、ホイール基板31の構造体823が設けられている側から蛍光体1000に照射される。従って、本実施例においては、光透過層825の蛍光出射面825bは、蛍光体層36への励起光の入射面でもある。
蛍光体層36の内部をホイール基板31へ向かって進行した蛍光は、反射層72で反射され、光透過層825の方向へ進行する。そのため、蛍光体1000から発せられた蛍光は、ホイール基板31側へ漏れず、光透過層825の蛍光出射面825bから効率良く射出することができる。また、蛍光体層36の内部をホイール基板31へ向かって進行する励起光も、同様に反射層72で反射され、光透過層825の蛍光出射面825bから効率良く射出することができる。
図26に、蛍光体ホイール880を用いた光源装置881の一例を示す。励起光60は、ホイール基板31の構造体823が設けられている側から蛍光体1000に照射され、励起光60の一部と蛍光体1000が発した蛍光とは、ピックアップレンズ6によって捕捉される。ピックアップレンズ6によって捕捉された光は、実施例5で説明したコリメート光学系11へ進行する。このようにして、光源装置881はプロジェクターの光源として利用される。このような反射型のホイール基板であっても、実施例5で説明した透過型のホイール基板と同様、システム全体としての光利用効率を向上させる効果が得られる。
反射型の蛍光体ホイール880の場合、ホイール基板31として透明部材を用いる必要はない。ホイール基板として金属を用いれば、蛍光体1000で生じた熱を効果的に放散させることができる。この場合、実施例5の変形例1で示したように、ホイール基板831の表面に設けた溝832に発光素子824を設けることが好ましい。この構成によれば、蛍光体1000で生じた熱を、さらに効率的に放散させることができる。さらに、アルミ等の光反射率が高い金属を用いれば、ホイール基板自体が反射部材として機能するため、反射部34や反射層72を設ける必要がない。
[実施例8]
図27は、本発明の実施例8に係るプロジェクター890の概略構成図である。
上記の実施例5乃至7では、波長変換素子として、ホイールモーター33により回転可能とされた蛍光体ホイールを用いた例を示した。これに対して、本実施例のプロジェクター890においては、光源装置893に用いる波長変換素子として、蛍光体基板891を用いている。蛍光体基板891は、基板本体892と構造体823とを有する。
図27に示したように、基板本体892は板状部材であって、ガラス等の透明部材から構成されている。本実施例では、構造体823Fは、実施例6で説明した構造体871と同一の構成である。つまり、単位構造体871は、発光素子824、円周方向に設けられた第1の反射部34a、第2の反射部34b、半径方向に設けられた第3の反射部84a、及び第4の反射部84bを含む。励起光を効率よく利用するためには、蛍光体基板891の上に形成される励起光のスポットが蛍光体層36の入射面36aからはみ出さないことが好ましい。さらには、蛍光体層36の入射面36aの面積が励起光のスポットの面積と同じであることが好ましい。
基板本体892の一面、すなわち、基板本体892の励起光60が入射する面とは反対側の表面に構造体823が設けられている。本実施例の蛍光体基板891は、固定されており、上記の実施例5乃至7の蛍光体ホイールのように回転することはない。
本実施例のプロジェクター890においても、上記の実施例5乃至7と同様、蛍光体層の内部を進行する光が蛍光体層の射出面から空気中に射出しやすくなる。その結果、蛍光体基板を含むプロジェクターのシステム全体としての光利用効率を向上させることができる。
[実施例9]
図28は、本発明の実施例9に係るプロジェクター900の概略構成図である。
本実施例のプロジェクター900のうち、コリメート光学系11より後段の構成は実施例1のプロジェクターと同一である。本実施例のプロジェクター900は、コリメート光学系11よりも前段の光源装置901の構成が実施例1のプロジェクターと異なり、発光素子824への励起光の入射面の位置ずれを補正する補正部902を備えている。さらに言えば、発光素子824への励起光の入射面は、第1の反射部34aのホイール基板31とは反対側の端部と、第2の反射部34bのホイール基板31とは反対側の端部と、の間の領域である。以降、発光素子824への励起光の入射面のことを単に発光素子824の入射面と呼ぶ。
図28において、実施例1の図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施例の光源装置901は、図28に示すように、紫外レーザーダイオード903と、蛍光体ホイール904と、青色レーザーダイオード905と、クロスダイクロイックプリズム906と、ダイクロイックミラー907と、補正部902と、を主に備えている。紫外レーザーダイオード903は、励起光である紫外光を射出する励起光用光源部として機能する。蛍光体ホイール904は、ホイールモーター33によって回転するとともに、励起光の照射により蛍光を射出する波長変換素子として機能する。補正部902は、蛍光体ホイール904の回転により生じる発光素子824の入射面の位置ずれを補正する。補正部902の構成と機能は後で詳しく説明する。
蛍光体ホイール904は、ホイール基板908と、ホイール基板908の一つの主面に形成された溝に設けられた構造体823を有している。実施例5と同様、構造体823は、蛍光体層36と反射部とを含み、発光素子824は、蛍光体層36と光透過層825とを含む。構造体823の構成は実施例5で説明したので、構造体823に関する詳細な説明は省略する。また、本実施例においては、実施例7による蛍光体ホイール880と同様に、励起光はホイール基板908の構造体823が設けられている側から蛍光体1000に照射される。従って、本実施例においては、光透過層825の蛍光出射面825bが、発光素子824の入射面に相当する。本実施例のホイール基板908は、円形状の板状部材であって、アルミニウム等の金属材料から構成されている。ホイール基板908の中心には回転軸Rが設けられ、回転軸Rはホイールモーター33に連結されている。ホイール基板908は、ホイールモーター33の駆動によって回転軸Rを中心として例えば毎分7200回転の速度で回転する。蛍光体ホイール904は、ホイール基板908の一面と交差する回転軸Rを中心として回転可能とされている。そのため、蛍光体ホイール904の上に形成される励起光のスポットは、蛍光体ホイール904の上を時間的に移動する、と言うことができる。また、蛍光体層36は、ホイール基板908の一面に回転軸Rを中心とする円に沿って設けられている。
本実施例において、ホイール基板908は、例えば直径が40mmのアルミニウム円板で構成され、アルミニウム円板の一面に例えば内径が37mm、外径が38.3mm、幅(ホイール基板908の径方向の寸法)が1.3mm、深さが0.15mmの溝が形成されている。つまり、構造体823の蛍光出射面825bの幅は1.3mmである。また、実施例7による蛍光体ホイール880における励起光の入射面36aに相当する構造体823の底面の幅は、1mmである。また、後述する位置ずれの補正を容易にするため、ホイール基板908の径方向における構造体823の断面において、ホイール基板908のひとつの主面に対する第1の側面35aの傾斜角をホイール基板908のひとつの主面に対する第2の側面35bの傾斜角と等しくすることが好ましい。
溝の内面には反射膜として銀膜が成膜されている。また、銀膜の表面には、酸化シリコンからなる保護膜が形成されている。溝の内部には、例えば波長405nmの紫外光によって励起され、波長500〜700nmの黄色光を発する蛍光体粒子が分散、内包されたシリコーン樹脂が埋め込まれている。多数の蛍光体粒子が分散、内包されたシリコーン樹脂によって蛍光体層36が構成されている。溝の内面に銀膜が成膜されたことにより、蛍光体層36で発せられた黄色光は効率良く蛍光体ホイール904から取り出される。
紫外レーザーダイオード903は、蛍光体層36を励起させる励起光として、例えば波長405nmの紫外光を射出する。紫外レーザーダイオード903から射出された紫外光は、第1のコリメータレンズ909によって平行化され、計算機合成ホログラム910(CGH :Computer Generated Hologram、以下CGHと称す)によってビームが成形された後、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。紫外レーザーダイオード903から射出された光の光軸であって、第1のコリメータレンズ909、CGH910、クロスダイクロイックプリズム906を通る光軸を、光軸LAと称する。
クロスダイクロイックプリズム906は、波長500nm未満の光を反射し、波長500nm以上の光を透過させる第1の波長分離膜911と、波長700nm以上の光を反射し、波長700nm未満の光を透過させる第2の波長分離膜912と、を有している。クロスダイクロイックプリズム906に入射した紫外光は、第1の波長分離膜911で反射して光軸を90度折り曲げ、蛍光体ホイール904に向かう。第1の波長分離膜911で反射して90度折り曲げられた紫外光(励起光)の光軸を、光軸LCと称する。
クロスダイクロイックプリズム906と蛍光体ホイール904との間には、ピックアップレンズ913が設けられている。紫外レーザーダイオード903から射出された紫外光は、第1のコリメータレンズ909、CGH910、ピックアップレンズ913を経て、蛍光体ホイール904の蛍光体層36上に集光される。このとき、後述する第2のアクチュエーターによって光軸LC上でのピックアップレンズ913の位置が最適化されることにより、紫外光はホイール基板908上に1.2mm角の矩形状のスポット(光源像)として結像される。紫外光のスポットの大きさは1.2mm角であり、矩形状のスポットの一の辺はホイール基板908の径方向と略一致している。つまり、ホイール基板908の半径方向の断面におけるスポットの大きさW1は1.2mmである。また、ホイール基板908の半径方向の断面における発光素子824の入射面の幅W2は1.3mmである。そのため、励起光の集光位置と蛍光体層36とが適正な位置関係にある場合、励起光の集光位置は発光素子824の入射面、すなわち光透過層825の蛍光出射面825b上に位置し、しかも、ホイール基板908の上に形成される励起光のスポットが発光素子824の入射面の外側へはみ出すことはない。本実施例では、スポットの大きさW1を発光素子824の入射面の幅W2よりわずかに小さくしたが、蛍光体層36と励起光双方を有効に利用するためには、スポットの大きさW1を発光素子824の入射面の幅W2と等しくすることが好ましい。
紫外光が蛍光体層36に入射したとき、蛍光体は紫外光によって励起され、波長500〜700nmの黄色光を発する。蛍光体から発せられた黄色光は、ピックアップレンズ913を経てクロスダイクロイックプリズム906に入射し、第1の波長分離膜911および第2の波長分離膜912を透過して、後段のコリメート光学系11に向かう。一方、光軸LA上において、クロスダイクロイックプリズム906を挟んで紫外レーザーダイオード903が設けられた側と反対側には、波長500nm未満の光を反射し、波長500nm以上の光を透過させるダイクロイックミラー907が設けられている。
ダイクロイックミラー907を通り、光軸LAと直交する光軸を光軸LBとすると、光軸LB上に、例えば波長460nmの青色光を射出する青色レーザーダイオード905が設けられている。ダイクロイックミラー907と青色レーザーダイオード905との間には、第2のコリメータレンズ914が設けられている。青色レーザーダイオード905から射出された青色光は、第2のコリメータレンズ914によって平行化された後、ダイクロイックミラー907に入射する。青色光は、ダイクロイックミラー907で反射してダイクロイックプリズム906に入射する。ダイクロイックプリズム906に入射した青色光は、第1の波長分離膜911で反射して、後段のコリメート光学系11に向かう。このようにして、蛍光体層36から発せられた黄色光と青色レーザーダイオード905から射出された青色光とが合成されて白色光となり、白色光がコリメート光学系11に入射する。
補正部902は、第1のアクチュエーター915と、第2のアクチュエーター916と、赤外レーザーダイオード917と、回折格子918と、光検出器919と、円筒レンズ920と、偏光ビームスプリッター921(Polarized Beam Splitter, 以下、PBSと略記する)と、1/4波長板922と、第3のコリメータレンズ923と、制御部924と、を備えている。蛍光体ホイール904のホイールモーター33には第1のアクチュエーター915が設置されている。第1のアクチュエーター915は、励起光の光軸LC方向と垂直な方向における発光素子824の入射面の位置ずれを補正する第1の補正部に相当する。この補正は、蛍光体層36と励起光のスポットとの相対的な位置関係を補正することと等価である。第1のアクチュエーター915の駆動により、蛍光体ホイール904はホイール基板908の主面に平行な方向に平行移動する。また、ピックアップレンズ913には、第2のアクチュエーター916が設置されている。第2のアクチュエーター916は、励起光の光軸LC方向における発光素子824の入射面の位置ずれを補正する第2の補正部に相当する。この補正は、励起光が平行光でない場合において、励起光のスポットの大きさを補正することと等価である。第2のアクチュエーター916の駆動により、ピックアップレンズ913は光軸LCと平行な方向に平行移動する。
光軸LA上において、ダイクロイックミラー907を挟んでダイクロイックプリズム906が設けられた側と反対側には、ダイクロイックミラー907側から順に、1/4波長板922、第3のコリメータレンズ923、PBS921、回折格子918、赤外レーザーダイオード917が配置されている。PBS921は、当該PBS921の透過軸が赤外レーザーダイオード917から射出された赤外光の偏光軸と一致するように配置されている。ダイクロイックミラー907の後段側に配置された1/4波長板922、第3のコリメータレンズ923、PBS921、回折格子918、赤外レーザーダイオード917は、発光素子824の入射面の位置ずれの量を検出する検出部として機能する。
赤外レーザーダイオード917は、ピックアップレンズ913および発光素子824の入射面が適正な位置にあるか否かを検出するための検出光として、例えば波長780nmの赤外光を射出する。赤外レーザーダイオード917から射出された赤外光は、回折格子918によって3つのビームに分割された後、PBS921、第3のコリメータレンズ923、1/4波長板922、ダイクロイックミラー907を順に透過し、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906に入射した赤外光は、第2の波長分離膜912で反射し、ピックアップレンズ913を経て蛍光体ホイール904に入射し、蛍光体ホイール904で反射する。
蛍光体ホイール904で反射した赤外光は、ピックアップレンズ913を透過してクロスダイクロイックプリズム906の第2の波長分離膜912で反射し、ダイクロイックミラー907、1/4波長板922、第3のコリメータレンズ923を順に透過し、PBS921に入射する。このとき、赤外光は往路と復路とで1/4波長板922を2回透過したため、PBS921に入射する赤外光の偏光軸は、赤外レーザーダイオード917から射出された直後の赤外光の偏光軸に対して90°回転した状態となる。よって、赤外光は、PBS921で反射し、円筒レンズ920を介して光検出器919に入射する。
光検出器919は、入射した赤外光に基づいて、光軸LCに平行な方向における適正な位置からの、発光素子824の入射面の位置ずれ、いわゆるフォーカスずれを検出する。光検出器919はさらに、光軸LCに垂直な方向における適正な位置からの、発光素子824の入射面の位置ずれ、いわゆるトラッキングずれを検出する。ここで、光軸LCに平行な方向における、発光素子824の入射面の適正な位置とは、例えば励起光の集光点とすることができる。また、光軸LCに垂直な方向における発光素子824の入射面の適正な位置とは、紫外光(励起光)のスポットが蛍光体層36への励起光の入射面の外側にはみ出さないような位置である。フォーカスずれの検出には、ピックアップレンズ913の位置がベストフォーカス状態にあるか、ベストフォーカスよりも前で結像しているか、後で結像しているかによって、円筒レンズ920を透過した後の赤外光のビーム形状が変化することを利用している。すなわち、フォーカスずれの検出には、公知の非点収差法が用いられる。また、トラッキングずれの検出には、主ビームと2つの副ビームを用い、トラッキングずれの方向によって、2つの副ビームの光量の差が変化することを利用している。すなわち、トラッキングずれの検出には、公知の3ビーム法が用いられる。なお、フォーカスずれやトラッキングずれの検出方法は上記の方法に限るものではない。例えば、フォーカスずれの検出にフーコー法を用いたり、トラッキングずれの検出にプッシュプル法を用いたりしても良い。
光検出器919の出力信号は制御部924に送られる。制御部924は、光検出器919の出力信号に基づいて、フォーカスずれの方向とずれ量に応じてピックアップレンズ913を光軸LCと平行な方向に移動させるための駆動信号を第2のアクチュエーター916に送信する。また、制御部924は、光検出器919の出力信号に基づいて、トラッキングずれの方向とずれ量に応じて蛍光体ホイール904を光軸LCと垂直な方向に移動させるための駆動信号を第1のアクチュエーター915に送信する。第2のアクチュエーター916は、ピックアップレンズ913で集光された光が発光素子824の入射面上に常時ベストフォーカスで結像するように、ピックアップレンズ913を光軸LCと平行な方向に駆動する。この補正は、フォーカスずれによってスポットの大きさが変動することを補正することに対応する。これにより、フォーカスずれによってスポットが大きくなることに起因してスポットが発光素子824の入射面からはみ出し、励起光の利用効率が低下する、ということを低減することができる。また、光源装置から射出される光の強度の変動を小さくすることができる。第1のアクチュエーター915は、ピックアップレンズ913で集光された光、すなわち励起光のスポットが発光素子824の入射面上から常時はみ出さないように、蛍光体ホイール904を光軸LCと垂直な方向に駆動する。この補正は、蛍光体層36とスポットとの相対的な位置関係を補正することに対応する。これにより、スポットが発光素子824の入射面からはみ出すことで励起光の利用効率が低下する、ということを低減することができる。また、光源装置から射出される光の強度の変動を小さくすることができる。
本実施例のプロジェクター900においても、上記の実施例1〜8と同様、蛍光体層36の側面に反射部を設けたことにより、蛍光体層の内部を進行する光が蛍光体層の射出面から空気中に射出しやすくなる。その結果、プロジェクターのシステム全体としての光利用効率を向上させることができる。
ところが、プロジェクター900を停止した状態で各種光学部品を適正な位置にアライメントしたとしても、プロジェクター900を起動させ、蛍光体ホイール904が高速で回転した状態においては、ホイール基板908の偏心や面ぶれ等に起因して、すなわち発光素子824の入射面の位置ずれに起因して励起光のフォーカスずれやトラッキングずれを生じる虞がある。これに対し、本実施例の場合、励起光のフォーカスずれやトラッキングずれを補正する補正部902が備えられているため、フォーカスずれやトラッキングずれが確実に補正され、光源装置901から射出される光の強度の変動を抑えることができる。
[実施例10]
図29は、本発明の実施例10に係るプロジェクター930の概略構成図である。本実施例のプロジェクター930は、補正部931を備えた点では実施例9と同様であるが、補正部931の構成が実施例9と異なる。
図29において、実施例9の図28と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施例においても、光透過層825の蛍光出射面825bが、発光素子824の入射面に相当する。
本実施例のプロジェクター930は、図29に示すように、補正部931として、第1のアクチュエーター915と、第2のアクチュエーター914と、データ記憶部932と、制御部933と、を備えている。図28に示した実施例9のプロジェクター900と比較すると、本実施例のプロジェクター930の光源装置934は、赤外レーザーダイオードおよび光検出器等を含む、励起光のフォーカスずれやトラッキングずれを検出するための機構を備えていない。そのため、本実施例のプロジェクター930では、ダイクロイックミラー907に代えて、単なる反射ミラーを用いても良い。
蛍光体ホイール904を回転させた際に生じる発光素子824の入射面の位置ずれ、すなわち励起光のフォーカスずれやトラッキングずれは、光源装置934を組み立てた際に予め測定されている。測定によって得られた蛍光体ホイール904の回転角度とフォーカスずれの方向とずれ量との関係、および蛍光体ホイール904の回転角度とトラッキングずれの方向とずれ量との関係がマッピングデータとしてデータ記憶部932に記憶されている。
プロジェクター930を起動した際には、制御部933は、データ記憶部932のマッピングデータに基づいて、ピックアップレンズ913を光軸LCと平行な方向に移動させるための駆動信号を第2のアクチュエーター916に送信する。また、制御部933は、データ記憶部932のマッピングデータに基づいて、トラッキングずれの方向とずれ量に応じて蛍光体ホイール904を光軸LCと垂直な方向に移動させるための駆動信号を第1のアクチュエーター915に送信する。第2のアクチュエーター916は、ピックアップレンズ913で集光された光が発光素子824の入射面上に常時ベストフォーカスで結像するように、ピックアップレンズ913を光軸LCと平行な方向に駆動する。第1のアクチュエーター915は、ピックアップレンズ913で集光された光、すなわち励起光のスポットが発光素子824の入射面上から常時はみ出さないように、蛍光体ホイール904を光軸LCと垂直な方向に駆動する。
本実施例のプロジェクター930においても、上記の実施例1〜9と同様、蛍光体層36の側面に反射部を設けたことにより、蛍光体層36の内部を進行する光が蛍光体層の射出面から空気中に射出しやすくなる。その結果、プロジェクターのシステム全体としての光利用効率を向上させることができる。また、補正部931によってフォーカスずれやトラッキングずれが確実に補正され、光源装置901から射出される光の強度の変動を抑えることができる。実施例9のプロジェクターと比較すると、フォーカスずれやトラッキングずれを検出するための機構を備えていない分、補正部931の構成が簡略化できる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、実施例4では、実施例1で用いた蛍光体ホイール100と同じ態様で、基板本体812の一面に形成された溝に蛍光体層36が設けられた蛍光体基板811を用いたが、これに限られない。実施例4において、実施例1の変形例1乃至3及び実施例3で用いたいずれの態様で蛍光体層36が基板本体812に設けられた蛍光体基板を用いてもよい。
同様に、実施例8では、実施例5で用いた蛍光体ホイール822と同じ態様で蛍光体層36が基板本体892の一面に設けられた蛍光体基板891を用いたが、これに限られない。実施例8において、実施例5の変形例1乃至5及び実施例7で用いたいずれの態様で蛍光体層36が基板本体892に設けられた蛍光体基板を用いてもよい。
また、実施例9および実施例10では、構造体として実施例5で説明した構造体823を用いたが、これに限られない。実施例9または実施例10において、実施例1ないし8で用いたいずれの構造体を用いてもよい。また、実施例9および実施例10では、蛍光体ホイールとして、ホイール基板908の一つの主面に形成された溝に構造体823が設けられた蛍光体ホイール904を用いたが、これに限られない。実施例9または実施例10において、実施例1乃至3および実施例5乃至7で用いたいずれの蛍光体ホイールを用いてもよい。
また、実施例9および実施例10では、スポットが発光素子824の入射面からはみ出すことを低減するように、蛍光体層36と励起光のスポットとの相対的な位置関係、あるいは励起光のスポットの大きさを補正していた。言い換えれば、発光素子824の入射面を補正の対象としていた。しかし、本発明はこれに限られない。蛍光体層36と光透過層825との界面を補正の対象として、スポットが当該界面からはみ出すことを低減するように、蛍光体層36と励起光のスポットとの相対的な位置関係、あるいは励起光のスポットの大きさを補正してもよい。これによれば、光源装置から射出される光の強度の変動をさらに小さくすることができる。
また、実施例1のように、構造体32の励起光の入射面36aから励起光が蛍光体層36へ入射する場合、構造体32の励起光の入射面36aを補正の対象とする。そして、スポットが入射面36aからはみ出すことを低減するように、蛍光体層36と励起光のスポットとの相対的な位置関係、あるいは励起光のスポットの大きさを補正すれば、光源装置から射出される光の強度の変動をさらに小さくすることができる。
また、実施例3のように、発光素子が光透過層を有しておらず、構造体32の蛍光の射出面36bから励起光が蛍光体層36へ入射する場合、射出面36bを補正の対象とする。
また、実施例1の変形例1に示したような形態で、蛍光体層36の射出面36bがホイール基板908の一つの主面に形成された溝の内部に埋め込まれている場合は、次のように補正の対象を設定する。つまり、ホイール基板908の径方向における構造体823の断面において、第1の反射部34aのホイール基板908側の端部を一端とし、第2の反射部34bのホイール基板908側の端部を一端とする領域を発光素子の入射面として定義する。そして、当該入射面を補正の対象とする。
また、実施例9および実施例10では、励起光を発光素子824の入射面に対して集光させていたが、これに限られない。励起光の集光面と発光素子824の入射面との励起光の光軸方向での位置関係にかかわらず、上記したように、励起光のスポットが補正対象物からはみ出さないように補正対象物を補正すればよい。
また、必ずしも励起光を蛍光体層36に向かって集光させる必要はない。平行化した励起光を用いる場合、第2の補正部を省略することができる。
また、実施例9および実施例10では、励起光を効率よく利用するために、励起光のスポットが発光素子824の入射面からはみ出さないように蛍光体層36の位置ずれを補正していたが、これに限られない。要は、発光素子824の入射面等の補正対象物と励起光のスポットとが互いに重なっている領域の面積の変動が小さくなるように、蛍光体層と励起光のスポットとの相対的な位置関係およびスポットの大きさのうち少なくとも一方を補正すればよい。これにより、光源装置から射出される光の強度の変動を小さくすることができる。
また第1のアクチュエーター915をピックアップレンズ913に設けて、ピックアップレンズ913をホイール基板908の主面に平行な方向に平行移動させてもよい。また、第2のアクチュエーター916をホイールモーター33に設けて、ホイール基板908を光軸LCと平行な方向に平行移動させてもよい。
例えば上記実施例では、青色光もしくは紫外光を励起光として黄色光を蛍光発光させる構成の例を示した。この構成に代えて、紫外光を励起光として赤色光、緑色光、青色光を蛍光発光させ、これら3色の光を時分割で射出させる構成としても良い。または、青色光を励起光として赤色光、緑色光を蛍光発光させるとともに青色光をそのまま射出させ、これら3色の光を時分割で射出させる構成としても良い。その他、上記実施形態で例示したプロジェクターおよび光源装置の各構成要素の形状、数、配置、材料等に関しては、適宜変更が可能である。