以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の建物は、複数の住戸を有する二階建ての集合住宅として具体化されている。図1は集合住宅の外観を示す正面図である。なお、図1は集合住宅を南側から見た図となっている。
図1に示すように、集合住宅10は、下階部としての一階部分11と、上階部としての二階部分12と、二階部分12の上方に配設された屋根部13とを備える。一階部分11には複数(具体的には2つ)の住戸15(以下、一階住戸15A,15Bという)が設けられ、二階部分12には複数(具体的には2つ)の住戸16(以下、二階住戸16A,16Bという)が設けられている。一階住戸15Aと二階住戸16Aとは上下に並んで配置され、一階住戸15Bと二階住戸16Bとは上下に並んで配置されている。
集合住宅10は、平面視において四角形状をなしており(図2及び図3参照)、その南面には当該住宅10への出入口となる共用出入口18が設けられている。したがって、本集合住宅10はいわゆる南入りの住宅となっており、当該住宅10の南面が住宅正面となっている。共用出入口18は、集合住宅10の一階部分11において当該住宅10の間口方向(つまり、集合住宅10を正面視した場合における当該住宅10の横幅方向)における略中央に配置され、南側に向けて開口されている。
共用出入口18には、当該出入口18を開閉する出入口ドア19が設けられている。出入口ドア19は、透明性を有するガラス製のドアとなっており、この出入口ドア19を介して集合住宅10(詳しくは後述する共用通路部20)への外光の採り入れが可能となっている。
次に、集合住宅10の内部構成について図2及び図3に基づいて説明する。図2は集合住宅10の一階部分11を示す平面図であり、図3は二階部分12を示す平面図である。なお、以下の説明では、一階住戸15A及び二階住戸16Aに設けられている屋内空間(部屋)及び各種部材の符号にAを付し、一階住戸15B及び二階住戸16Bに設けられている屋内空間及び各種部材の符号にBを付す。
図2及び図3に示すように、集合住宅10の外周部には外壁部17が設けられている。外壁部17は、住宅内空間を四方から囲むように設けられており、具体的には集合住宅10の北側には北側外壁部17aが設けられ、集合住宅10の東側には東側外壁部17bが設けられ、集合住宅10の南側には南側外壁部17cが設けられ、集合住宅10の西側には西側外壁部17dが設けられている。
集合住宅10には、一階住戸15A,15B及び二階住戸16A,16Bが設けられているとともに、共用出入口18からそれら各住戸15A,15B,16A,16Bへと通じる共用通路部20が設けられている。共用通路部20は、隣り合う一階住戸15A,15Bの間及び隣り合う二階住戸16A,16Bの間に設けられており、集合住宅10における間口方向の略中央に配置されている。
共用通路部20は、共用出入口18から連続し、隣り合う一階住戸15A,15Bの間に設けられた一階廊下部21と、隣り合う各二階住戸16A,16Bの間に設けられた二階廊下部22と、一階廊下部21と二階廊下部22とを連絡する階段部25により形成された昇降通路部23とを備える。共用通路部20を平面視した場合、一階廊下部21を挟んで共用出入口18とは反対側に昇降通路部23(階段部25)が配置され、昇降通路部23を挟んで一階廊下部21とは反対側に二階廊下部22が配置されている。この場合、一階廊下部21と昇降通路部23と二階廊下部22とは、平面視において集合住宅10の間口方向と直交する方向、すなわち集合住宅10の奥行き方向(南北方向)に沿って直線状に並んでいる。つまり、本共用通路部20は、平面視において集合住宅10の奥行き方向に延びる通路となっており、同通路部20の平面視における通路延在方向が集合住宅10の奥行き方向と同方向となっている。
共用通路部20は、通路延在方向に沿って共用出入口18から北側外壁部17aまで延びており、当該北側外壁部17aにおいて行き止まりとなっている。したがって、共用通路部20は、集合住宅10の奥行き方向ほぼ全域に亘って延びている。なお、本集合住宅10では、共用通路部20から分岐する通路が一切設けられておらず、共用通路部20がいわゆる***の通路として構成されている。
一階廊下部21は、図2に示すように、一階住戸15Aと仕切壁26により仕切られており、一階住戸15Bと仕切壁27により仕切られている。各仕切壁26,27にはそれぞれ一階廊下部21を一階住戸15A,15Bの玄関51A,51Bと連通させる玄関口28A,28Bが形成されている。この玄関口28A,28Bを通じて一階廊下部21から各一階住戸15A,15Bの玄関51A,51Bへの出入りが行われる。各玄関口28A,28Bにはそれぞれ当該玄関口28A,28Bを開閉する玄関ドア29A,29Bが設けられている。玄関ドア29A,29Bは、外開き式の開き戸となっており、一階廊下部21に向けて開動作される。
玄関口28A,28B周辺についてより詳しく説明すると、各仕切壁26,27において玄関口28A,28Bに対応する部分は、平面視において一階住戸15A,15B(玄関51A,51B)側にコ字状に凹ませられたコ字状壁部26a,27aとなっている。各玄関口28A,28Bはそれぞれ、各コ字状壁部26a,27aにおいて互いに対向する対向壁部31,32に形成されている。この場合、各玄関口28A,28Bは一階廊下部21を挟んで対向配置されている。
コ字状壁部26a,27aにより囲まれた凹状空間は玄関前スペース34,35となっている。玄関ドア29Aの開閉は玄関前スペース34内で行われ、玄関ドア29Bの開閉は玄関前スペース35内で行われる。これにより、玄関ドア29A,29Bの開閉によって一階廊下部21における通行が妨げられることがないようになっている。
一階廊下部21は、共用出入口18を介して玄関ポーチ33と連通している。玄関ポーチ33は、集合住宅10の南面において屋外に開口された凹状スペースとなっている。この玄関ポーチ33が設けられていることで、共用出入口18は集合住宅10の南面(南側外壁部17cの外壁面)に対して北寄りに位置している。この場合、一階廊下部21への出入りはこの玄関ポーチ33を通じて行われる。
二階廊下部22は、図3に示すように、二階住戸16Aと仕切壁36により仕切られており、二階住戸16Bと仕切壁37により仕切られている。各仕切壁36,37にはそれぞれ二階廊下部22を二階住戸16A,16Bの玄関61A,61Bと連通させる玄関口38A,38Bが形成されている。この玄関口38A,38Bを通じて二階廊下部22から各二階住戸16A,16Bへの出入りが行われる。各玄関口38A,38Bにはそれぞれ当該玄関口38A,38Bを開閉する玄関ドア39A,39Bが設けられている。玄関ドア39A,39Bは、外開き式の開き戸となっており、二階廊下部22に向けて開動作される。
二階廊下部22は、住宅間口方向の横幅が昇降通路部23の横幅よりも大きくなっている。この場合、二階廊下部22のうち住宅間口方向において昇降通路部23からはみ出した部分が玄関前スペース44,45となっている。玄関ドア39Aの開閉は玄関前スペース44内で行われ、玄関ドア39Bの開閉は玄関前スペース45内で行われる。これにより、玄関ドア39A,39Bの開閉によって二階廊下部22における通行が妨げられることがないようになっている。
二階廊下部22は、北側外壁部17aに隣接して設けられており、その北側外壁部17aには、二階廊下部22を屋外と連通させる窓部40が設けられている。窓部40は、その開口幅が昇降通路部23の横幅よりも大きくなっている。窓部40は、平面視において共用通路部20を挟んで共用出入口18と対向して配置されている。この場合、窓部40を通じて外光を二階廊下部22ひいては共用通路部20に採り入れることができる。また、窓部40には、当該窓部40を開閉する開閉部材としてガラス戸43が設けられている。
昇降通路部23を形成する階段部25は直階段により構成されている。階段部25は、階段室46に設置されており、その昇降方向を平面視において集合住宅10の奥行き方向(通路延在方向)に向けて配置されている。ここで、階段部25の昇降方向とは、当該階段部25の有する複数の踏板47が並ぶ方向と同じ方向である。
階段室46は、一階部分11と二階部分12とに跨がって上下に延びる空間となっている。階段室46は、一階住戸15A及び二階住戸16Aと仕切壁48により仕切られており、一階住戸15B及び二階住戸16Bと仕切壁49により仕切られている。階段室46において階段部25よりも上方の空間が昇降通路部23となっており、この昇降通路部23を通って一階廊下部21と二階廊下部22との間を行き来することが可能となっている。なお、本実施形態では、昇降通路部23の幅寸法(間口方向の幅寸法)が1.5mに設定されている。また、一階廊下部21の幅寸法も昇降通路部23の幅寸法に合わせて1.5mに設定されている。
また、階段部25は、共用通路部20の通路延在方向において集合住宅10の中央部よりも住宅裏面側(住宅正面とは反対側)に配置されている。したがって、階段部25を挟んで両側に設けられた一階廊下部21と二階廊下部22とのうち一階廊下部21よりも二階廊下部22の方が通路延在方向の長さが短くなっている。
次に、一階住戸15及び二階住戸16について説明する。
図2に示すように、集合住宅10の一階部分11では、2つの一階住戸15A,15Bが共用通路部20詳しくは一階廊下部21及び昇降通路部23を挟んで住宅間口方向に隣り合って設けられている。一階部分11では、昇降通路部23(換言すると階段室46)を挟んで一階廊下部21とは反対側に一階界壁60が設けられている。一階界壁60は、二階廊下部22の下方に配置されており、北側外壁部17aと仕切壁48,49(詳しくは各仕切壁48,49の連結部)とに跨がって集合住宅10の奥行き方向(共用通路部20の通路延在方向)に沿って設けられている。この一階界壁60により各一階住戸15A,15Bが互いに仕切られている。また、一階界壁60は、集合住宅10における間口方向の中央部に配置されており、平面視において共用通路部20の幅方向中央部に沿って延びるように設けられている。なお、図2では各一階住戸15A,15Bの境界部(住戸境界線)を二点鎖線で示している。
各一階住戸15A,15Bは、その間取りが住戸境界線を基準として住宅間口方向に左右対称とされている。具体的には、各一階住戸15A,15Bには、屋内空間として、上述した玄関51A,51Bの他に、LDK52A,52B、洋室53A,53B、子供部屋54A,54B、浴室55A,55B、トイレ56A,56B、洗面室57A,57B、収納室58A,58B、バルコニー59A,59B等が設けられている。この場合、LDK52A,52B、洋室53A,53B、子供部屋54A,54Bが居室空間に相当し、浴室55A,55B、トイレ56A,56B、洗面室57A,57B、収納室58A,58Bが非居室空間に相当する。
LDK52A,52Bと子供部屋54A,54Bとは南側外壁部17cに隣接して設けられている。したがって、各一階住戸15A,15Bには南向きの居室空間52A,54A(52B,54B)が2室ずつ設けられている。このうち、LDK52A,52Bは、南側外壁部17cの他に東側外壁部17bにも隣接しており、南側及び東側の双方に向いている。また、LDK52A,52Bは南側外壁部17cを挟んでバルコニー59A,59Bと隣接しており、南側外壁部17cにはLDK52A,52Bからバルコニー59A,59Bへ出入りするための窓部71A,71B(例えば掃き出し窓)が設けられている。窓部71A,71Bには、当該窓部71A,71Bを開閉するガラス戸72A,72Bが設けられている。この場合、LDK52A,52Bは窓部71A,71Bを介して屋外に開放されており、当該窓部71A,71Bを通じてLDK52A,52Bに外光を採り入れることが可能となっている。
子供部屋54A,54Bは、仕切壁26,27を隔てて一階廊下部21に隣接している。子供部屋54A,54Bは、仕切壁26,27のコ字状壁部26a、27aよりも南側に配置されている。したがって、子供部屋54A,54Bは玄関51A,51Bよりも南側に配置されている。
洋室53A,53Bと浴室55A,55Bとは北側外壁部17aに隣接して設けられている。このうち、各浴室55A,55Bは一階界壁60を隔てて隣接している。詳しくは、各一階住戸15A,15Bでは、各部屋51A〜58A,51B〜58Bのうち浴室55A,55Bだけが一階界壁60を挟んで互いに隣接している。
浴室55A,55Bと洗面室57A,57Bとは仕切壁48,49を隔てて階段室46(換言すると昇降通路部23)に隣接している。つまり、一階住戸15A,15Bでは、これらの非居室空間55A,57A(55B,57B)が階段室46に隣接配置されていることから、居室空間(LDK52A,52Bなど)が階段室46から離れた場所に、詳しくは階段室46から他の屋内空間を隔てた場所に配置されている。
図3に示すように、集合住宅10の二階部分12では、2つの二階住戸16A,16Bが共用通路部20詳しくは二階廊下部22及び昇降通路部23を挟んで住宅間口方向に隣り合って設けられている。二階部分12では、昇降通路部23(換言すると階段室46)を挟んで二階廊下部22とは反対側に二階界壁70が設けられている。二階界壁70は、一階廊下部21の上方に配置されており、南側外壁部17cと仕切壁48,49(各仕切壁48,49の連結部)とに跨がって集合住宅10の奥行き方向に沿って設けられている。この二階界壁70により各二階住戸16A,16Bが互いに仕切られている。
二階界壁70は、集合住宅10における間口方向の中央部に配置されており、平面視において共用通路部20の幅方向中央部に沿って延びるように設けられている。この場合、一階界壁60と二階界壁70とは、平面視において共用通路部20の通路延在方向に一列に並んで配置されており、詳しくは共用通路部20の通路中央部に沿って一列に並んでいる。また、上述したように、一階廊下部21の長さが二階廊下部22の長さよりも長くなっている関係上、一階廊下部21の上方に設けられた二階界壁70の横幅は、二階廊下部22の下方に設けられた一階界壁60の横幅よりも長くなっている。なお、図3では各二階住戸16A,16Bの住戸境界線を二点鎖線で示している。
各二階住戸16A,16Bは、その間取りが住戸境界線を基準として左右対称とされている。具体的には、各二階住戸16A,16Bには、屋内空間として、上述した玄関61A,61Bの他に、LDK62A,62B、洋室63A,63B、子供部屋64A,64B、浴室65A,65B、トイレ66A,66B、洗面室67A,67B、収納室68A,68B、バルコニー69A,69B等が設けられている。この場合、LDK62A,62B、洋室63A,63B、子供部屋64A,64Bが居室空間に相当し、浴室65A,65B、トイレ66A,66B、洗面室67A,67B、収納室68A,68Bが非居室空間に相当する。
LDK62A,62Bと洋室63A,63Bとは南側外壁部17cに隣接して設けられている。したがって、各二階住戸16A,16Bには南向きの居室空間62A,63A(62B,63B)が2室ずつ設けられている。このうち、LDK62A,62Bは、南側外壁部17cの他に東側外壁部17bにも隣接しており、南側及び東側の双方に向いている。また、LDK62A,62Bは南側外壁部17cを挟んでバルコニー69A,69Bと隣接しており、南側外壁部17cにはLDK62A,62Bからバルコニー69A,69Bへ出入りするための窓部74A,74B(例えば掃き出し窓)が設けられている。窓部74A,74Bには、当該窓部74A,74Bを開閉するガラス戸75A,75Bが設けられている。この場合、LDK62A,62Bは窓部74A,74Bを介して屋外に開放されており、当該窓部74A,74Bを通じてLDK62A,62Bに外光を採り入れることが可能となっている。
各洋室63A,63Bは二階界壁70を隔てて隣接している。洋室63A,63Bは、南側外壁部17cに設けられた窓部77A,77Bによって屋外と連通されている。この場合、この窓部77A,77Bを通じて洋室63A,63Bへの外光の採り入れが可能となっている。また、窓部77A,77Bには、当該窓部77A,77Bを開閉するガラス戸78A,78Bが設けられている。
トイレ66A,66B、洗面室67A,67B及び収納室68A,68Bは仕切壁48,49を隔てて階段室46(換言すると昇降通路部23)に隣接している。つまり、二階住戸16A,16Bでは、これらの非居室空間66A〜68A(66B〜68B)が階段室46に隣接して配置されていることから、居室空間(LDK62A,62Bなど)が階段室46から離れた場所に、詳しくは階段室46から他の屋内空間を隔てた場所に配置されている。また、各収納室68A,68Bは洋室63A,63Bと階段室46との間に配置されており、二階界壁70によって互いに仕切られている。
その他、玄関61A,61Bと子供部屋64A,64Bとは北側外壁部17aに隣接しており、トイレ66A,66Bは仕切壁36,37を隔てて二階廊下部22と隣接している。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
集合住宅10の共用通路部20を、一階部分11及び二階部分12でそれぞれ隣り合う住戸15A,15B(16A,16B)同士の間に設け、その共用通路部20にあって隣り合う一階住戸15A,15Bへ通じる一階廊下部21と、隣り合う二階住戸16A,16Bへ通じる二階廊下部22とを直階段よりなる階段部25により連絡する構成とした。そして、共用通路部20の平面視において、階段部25の昇降方向における昇降通路部23(階段部25)を挟んだ両側に一階廊下部21と二階廊下部22とを配置し、一階廊下部21を挟んで昇降通路部23とは反対側に共用出入口18を配置した。この場合、一階廊下部21と昇降通路部23と二階廊下部22とが直線状に配置されているため、共用通路部20の通路幅を直階段よりなる階段部25の幅に合わせた大きさとすることができ、その結果共用通路部20の通路幅を折り返し階段が設置されている階段室の幅と比べて小さくすることができる。これにより、集合住宅10において共用出入口18が設けられている住宅正面側において、集合住宅10の間口に対して共用通路部20の占める割合を小さくすることができるため、住宅正面側において共用通路部20を挟んだ両側で住戸内空間を広く確保することができる。その結果、採光性を確保し易い住戸15,16を得ることが可能となる。また、共用通路部20の通路幅を小さくすることで住宅正面側において住戸内空間を広く確保することとした上記の構成では、集合住宅10の間口が大きくなるのを抑制しながら、すなわち集合住宅10の敷地対応力が低下するのを抑制しながら採光性の確保が容易な住戸15,16を得ることが可能となる。
特に、共用出入口18が集合住宅10の南側に設けられた本集合住宅10では、住宅正面側が採光条件のよい南側を向いているため、かかる構成とすることにより採光性に優れた住戸15,16を敷地対応力の低下を抑制しつつ得ることが可能となる。
また、共用通路部20の通路幅を小さくすることにより、共用通路部20へ出入りするための共用出入口18の幅も小さくすることができるため、集合住宅10の正面側をすっきりとした外観にすることもできる。
一階部分11では、一階廊下部21を挟んで隣り合う一階住戸15A,15B同士を二階廊下部22の下方に設けた一階界壁60により仕切ることとし、二階部分12では、二階廊下部22を挟んで隣り合う二階住戸16A,16B同士を一階廊下部21の上方に設けた二階界壁70により仕切ることとした。この場合、隣り合う住戸15,16同士の間に共用通路部20が設けられる構成にあって、一階廊下部21の上方空間と二階廊下部22の下方空間とをそれぞれ各住戸15,16の住戸内空間として利用することができ、住戸内空間を広く確保することが可能となる。
一階界壁60と二階界壁70とを平面視において共用通路部20の通路中央部に沿って一列に並ぶように配置したため、隣り合う各住戸15A,15B(16A,16B)の間取りを界壁60(70)を基準として左右対称とすることが可能となる。これにより、建築部材の共通化や、設計負荷の低減といった利点を得ることが可能となる。
北側外壁部17aに二階廊下部22を屋外と連通させる窓部40を設けたため、窓部40を通じて二階廊下部22に外光を採り入れることができる。これにより、直線状の共用通路部20にあって共用出入口18とは反対側に設けられているが故に同出入口18を介して採り入れた外光が到達しにくい二階廊下部22が暗くなるのを抑制することができる。
窓部40を、共用通路部20の突き当たりに位置する北側外壁部17aに形成するとともに、平面視において共用出入口18と共用通路部20を挟んで対向配置した。これにより、共用通路部20を通って各住戸15A,15B,16A,16Bの玄関51A,51B,61A,61Bへと移動する際には窓部40を正面に見ながら、ひいては窓部40を通じて屋外を見ながら移動することができる。これにより、北側外壁部17aで行き止まりとなる共用通路部20を移動するにあたって閉塞感を感じるのを抑制することができる。
住戸15A,15B,16A,16B内において昇降通路部23(階段室46)と隣接する室内空間を洗面室57A,57Bや浴室55A,55B等の水廻り空間としたため、LDK52A,52Bや洋室53A,53B等の居室空間については昇降通路部23から離れた位置に配置することができる。これにより、階段部25の上り下りに伴って生じる騒音や振動が居室空間に伝わるのを抑制することができるため、かかる騒音や振動により居住者に不快感を与えるのを抑制することができる。
各一階住戸15A,15Bにおいて、玄関51A,51Bと子供部屋54A,54Bとをそれぞれ一階廊下部21に仕切壁26,27を隔てて隣接配置するとともに、玄関51A,51Bを子供部屋54A,54Bよりも階段部25(昇降通路部23)寄りに配置した。この場合、居室空間としての子供部屋54A,54Bを一階廊下部21に隣接して配置する構成にあって、当該子供部屋54A,54Bを集合住宅10の正面側に配置することが可能となる。このため、住宅正面側において居室空間を広く確保する上で好ましい構成といえる。
集合住宅10において共用通路部20を挟んで隣り合う各住戸15A,15B,16A,16Bにそれぞれ南向きの居室空間を2室ずつ設けた。具体的には、一階住戸15A,15BにおいてはLDK52A,52Bと子供部屋54A,54Bとを設け、二階住戸16A,16BにおいてはLDK62A,62Bと洋室63A,63Bとを設けた。そのため、採光性の面で好ましい住戸15,16を得ることができる。また、このように南向きの居室空間を2室ずつ設ける構成にあっても、集合住宅10の間口が大きくなるのを抑制することができるため、敷地対応力の低下を抑制しながら採光性に優れた住戸15,16を得ることができる。
各一階住戸15A,15Bにおいて一階界壁60を隔てて隣接する室内空間を浴室35A,35Bのみ、換言すると非居室空間のみとした。この場合、各一階住戸15A,15Bでは、居室空間(例えば洋室53A,53B等)同士が界壁60を隔てて隣接することがないため、居室空間においては隣りの住戸15A(又は15B)からの騒音が伝わりにくくなっている。そのため、住戸15A,15B間における騒音対策の点で好ましい構成といえる。
一階廊下部21の一部を、一階住戸15A,15Bの玄関51A,51B側に張り出させることで玄関前スペース34,35を形成し、その玄関前スペース34,35内で玄関ドア29A,29Bの開閉を行う構成とした。これにより、一階廊下部21の通路幅が直階段よりなる階段部25の幅に合わせた大きさとなっている構成にあって、玄関ドア29A,29Bの開閉により一階廊下部21における通行が妨げられるのを防止することができる。特に、各一階住戸15A,15Bの玄関口28A,28Bが一階廊下部21を挟んで対向配置されている構成では、双方の玄関ドア29A,29Bが同時に開閉されるとドア29A,29B同士が干渉するおそれもあるため、それを回避することができる利点もある。
なお、これと同様に、二階廊下部22の一部についても、二階住戸16A,16Bの玄関61A,61B側に張り出させることで玄関前スペース44,45を形成し、同スペース44,45内で玄関ドア39A,39Bの開閉を行う構成としたため、上記一階廊下部21の玄関前スペース34,35と同様の効果が得られる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、共用通路部20の突き当たりを北側外壁部17aとしたが、共用通路部20の突き当たりを北側外壁部17aの手前に設定してもよい。すなわち、図4に示すように、共用通路部20の突き当たりを北側外壁部17aよりも共用出入口寄りに設定し、二階廊下部82を北側外壁部17aから隔てて配置してもよい。この場合、二階部分12において、二階廊下部82と北側外壁部17aとの間に各二階住戸83A,83Bを仕切る二階界壁85を配置することができる。かかる構成によれば、集合住宅10の北面(換言すると裏面)における間口方向のほぼ全域を二階住戸83A,83Bの壁面として利用することができるため、二階住戸83A,83Bに例えば北向きに開口する大開口の窓部を形成することが可能となる。
(2)上記実施形態では、共用通路部20において二階廊下部22の長さ(通路延在方向の長さ)を一階廊下部21の長さよりも短くしたが、これを変更して、一階廊下部21の長さを二階廊下部22の長さよりも短くしてもよい。この場合、階段部25が共用通路部20において通路延在方向の中央部よりも共用出入口18寄りに配置されることとなり、集合住宅10において奥行き方向の中央部よりも正面側に配置されることとなる。したがって、これに伴い、例えば一階廊下部21に通じる各一階住戸15A,15Bの玄関51A,51Bを集合住宅10の正面側に配置することが考えられる。なお、一階廊下部21の長さと二階廊下部22の長さとをそれぞれ同じ長さとしてもよい。
(3)上記実施形態では、一階界壁60と二階界壁70とを平面視において共用通路部20の通路幅方向の中央部に沿って一列に並べて配置したが、これら各界壁60,70の配置態様は必ずしもこれに限定されない。例えば、一階界壁60と二階界壁70とを平面視において通路延在方向と直交する方向にずらして配置してもよい。また、一階界壁60を二階廊下部22の下方位置とは異なる場所に配置してもよいし、二階界壁70を一階廊下部21の上方位置とは異なる場所に配置してもよい。
(4)一階廊下部21を、一階部分11と二階部分12とに跨がって上下に延びる吹き抜け空間としてもよい。この場合、南側外壁部17cの二階部分12に一階廊下部(吹き抜け空間)を屋外に開放させる窓部を設ければ、窓部を通じて一階廊下部に外光を十分に採り入れることができ、共用通路部20をより明るくすることが可能となる。
(5)上記実施形態では、二階廊下部22を屋外に開放させる窓部40を外壁部17(北側外壁部17a)に設けたが、これに代えて又は加えて屋根部13に設けてもよい。この場合にも、屋根部13に設けた窓部を通じて外光を二階廊下部22に採り入れることができるため、共用通路部20において暗くなりがちな二階廊下部22側を明るくすることができる。
(6)各住戸15,16の間取りは必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば、各住戸15,16において南向きの居室空間を1室だけ設けるようにしてもよい。この場合、集合住宅10の間口が大きくなるのを抑制しつつ、床面積の大きい南向きの居室空間を得ることができる。また、階段室46に隣接して洋室53A,53B(63A,63B)等の居室空間を配置してもよい。
(7)上記実施形態では、一階部分11及び二階部分12にそれぞれ2戸ずつ、計4戸の住戸15,16を有する集合住宅10に本発明を適用したが、一階部分11及び二階部分12にそれぞれ4戸ずつ、計8戸の住戸を有する集合住宅に本発明を適用してもよい。例えば8戸の住戸を有する集合住宅を、一階部分11と二階部分12とにそれぞれ2戸ずつの住戸を有する2つの住宅部からなるものとした場合に、各住宅部ごとにそれぞれ共用通路部20を設けることが考えられる。すなわち、各住宅部ごとに一階部分11及び二階部分12で隣り合う住戸同士の間に共用通路部20を設けることが考えられる。また、これと同じ要領で、一階部分11及び二階部分12にそれぞれ6戸ずつ又は8戸ずつの住戸を有する集合住宅に本発明を適用することも可能である。
(8)上記実施形態では、共用出入口18が集合住宅10の南側に設けられた、いわゆる南入りの住宅10に対して本発明を適用したが、北入り、東入り又は西入りの集合住宅に本発明を適用してもよい。この場合でも、集合住宅の間口が大きくなるのを抑制しながら、集合住宅の正面側にて住戸内空間を広く確保することができる。一般に集合住宅の正面側は道路や敷地内通路に面しており隣家と近接していることが少ないため、南入り以外の集合住宅においても、本発明を適用することで採光性を確保し易い住戸を得ることができる。