JP5984895B2 - 酸化タングステンの製造方法及び酸化タングステンの処理方法 - Google Patents
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より具体的には:
(1)酸化タングステンがアンモニアに良好に溶解するため、酸化タングステンを溶解させるのに苛性ソーダを用いる必要が無い。従って、溶液中からNaを除去するための溶媒抽出やイオン交換、酸アルカリ処理等を行う必要が無く、安価なコストで処理することができる。
(2)Na等の不純物が抑制されているため、酸化タングステンのアンモニア溶液を酸で中和することで高純度のパラタングステン酸アンモニウムを容易に得ることができ、それによって高純度のタングステンを容易に作製することができる。
このような原料混合物の粉体としては、後述の酸化処理により良好に酸化される程度の粒径を有するものが好ましい。また、タングステン成分を含有する原料混合物の粉体として平面研削粉を用いてもよい。この場合は、研削の際に研削粉が飛び散らないように用いられた決着剤入りの水を含んでいたが、その後水分が蒸発することで、例えば平均粒径30mm程度の塊となっているものがある。このような粉体の塊であっても、その表面積が大きいため、酸化処理によって表面から順次酸化タングステンになり、結局塊が消滅し、それぞれ独立した粒子となる。
ここで、「原料混合物の粉体に含有されるタングステンから酸化タングステンへの変換率:C(%)」は、「原料混合物の粉体に含有されるタングステンのモル数」をAとし、「生成した酸化タングステンのモル数」をBとして、以下の式で算出される:
C=(B/A)×100(%)
また、「生成した酸化タングステンのアンモニアへの溶解率:c(%)」は、「生成した酸化タングステンの質量」をa(g)とし、「アンモニアへ溶解した酸化タングステンの質量」をb(g)として、以下の式で算出される:
c=(b/a)×100(%)
酸化処理時の雰囲気ガスは、酸化性のものであれば特に限定されず、空気雰囲気下や酸素雰囲気下等で酸化処理を行うことができる。酸化処理の時間は、特に限定されないが、生産効率を考慮すると50時間以下とすることができる。
ここで、タングステン成分を含有する原料混合物の粉体を酸化タングステンに変換するときの酸化処理の温度と時間、及び、酸化タングステンへの変換率の相関性の比較グラフを図1に示す。
以下の表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中420℃で50時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は80%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、濃度25%、70℃のアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は80%であった。
次に、得られたタングステン酸アンモニウム溶液を濃度30%、80℃の硝酸で中和してパラタングステン酸アンモニウム(APT)を作製した。得られたAPTの品位は3N5と高いものであった。
次に、得られたAPTを水素還元して、タングステンを作製した。得られたタングステンの品位は4Nと高いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中450℃で30時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は90%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は90%であった。
次に、得られたタングステン酸アンモニウム溶液を実施例1と同様に酸で中和してパラタングステン酸アンモニウム(APT)を作製した。得られたAPTの品位は3N5と高いものであった。
次に、得られたAPTを水素還元して、タングステンを作製した。得られたタングステンの品位は4Nと高いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中500℃で15時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は100%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は95%であった。
次に、得られたタングステン酸アンモニウム溶液を実施例1と同様に酸で中和してパラタングステン酸アンモニウム(APT)を作製した。得られたAPTの品位は3N8と高いものであった。
次に、得られたAPTを水素還元して、タングステンを作製した。得られたタングステンの品位は4Nと高いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中550℃で10時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は100%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は94%であった。
次に、得られたタングステン酸アンモニウム溶液を実施例1と同様に酸で中和してパラタングステン酸アンモニウム(APT)を作製した。得られたAPTの品位は3N6と高いものであった。
次に、得られたAPTを水素還元して、タングステンを作製した。得られたタングステンの品位は4Nと高いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中600℃で5時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は100%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は88%であった。
次に、得られたタングステン酸アンモニウム溶液を実施例1と同様に酸で中和してパラタングステン酸アンモニウム(APT)を作製した。得られたAPTの品位は3N6と高いものであった。
次に、得られたAPTを水素還元して、タングステンを作製した。得られたタングステンの品位は4Nと高いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中350℃で100時間酸化処理した。しかしながら、酸化タングステンが得られず、酸化タングステンへの変換率は0%であった。また、酸化処理後の粉体をアンモニア水へ加えたが、溶解しなかった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中400℃で100時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は5%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は5%と非常に低いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中650℃で2時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は100%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は50%と非常に低いものであった。
表1に示す品位のタングステンスクラップ粉を空気雰囲気中700℃で1時間酸化処理することで酸化タングステンの粉体を得た。その時の酸化タングステンへの変換率は100%であった。
次に、得られた酸化タングステンを、実施例1と同様にアンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液(タングステン酸アンモニウム溶液)を作製した。このときの溶解率は20%と非常に低いものであった。
図2に、実施例1〜5及び比較例1〜4の、「酸化温度」と、「酸化タングステンへの変換率」及び「アンモニアへの溶解率」との関係を示す。
Claims (4)
- タングステン成分を含有する原料混合物の粉体に対して、420〜600℃で5〜50時間の酸化処理を行うことで、濃度25%、70℃のアンモニア水に70質量%以上という溶解率Aで溶ける酸化タングステンを得る酸化タングステンの製造方法であり、前記溶解率Aは、前記酸化処理による前記タングステン成分を含有する原料混合物の粉体から前記酸化タングステンへの変換率と、前記酸化タングステンの前記アンモニア水への溶解率との積で算出される酸化タングステンの製造方法。
- 前記酸化処理時の温度が470〜550℃である請求項1に記載の酸化タングステンの製造方法。
- 前記酸化処理の温度及び時間の条件について、以下の(A)〜(E)のいずれか1つの条件で行う請求項1に記載の酸化タングステンの製造方法。
(A)420℃で50時間、
(B)450℃で30時間、
(C)500℃で15時間、
(D)550℃で10時間、
(E)600℃で5時間。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で得られた酸化タングステンを、アンモニア水へ溶解させて酸化タングステンのアンモニア溶液を作製する酸化タングステンの処理方法。
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