以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
(第一の実施の形態)
以下、図1から図9を参照して、本発明の第一の実施の形態に係る化粧材繰出容器1について説明する。
図1に示すように、化粧材繰出容器1は、化粧材Aが内周に位置し、当該化粧材Aが進出可能な先端開口孔11が先端に形成される先筒10と、先筒10に相対回転可能に組み付けられる駆動筒20と、駆動筒20と一体に回転し、化粧材Aを繰り出す化粧材保持部31と当該化粧材保持部31から延設されて外周に雄ねじ32が形成される棒軸33とを有する押棒30と、先筒10と一体に回転し、先筒10と駆動筒20との間に設けられて雄ねじ32に螺合し、先筒10と駆動筒20との相対回転によって押棒30を軸方向に進退させる螺合ばね40とを備える。
化粧材繰出容器1は、使用者が先筒10と駆動筒20とを相対回転させることによって化粧材Aを繰り出し可能なものである。化粧材繰出容器1は、化粧材Aを繰り出すだけで、繰り戻す機能を有さない。
図2に示すように、先筒10は、軸方向にテーパ状に形成されるキャップ嵌入部18と、キャップ嵌入部18と比較して外径が大径に形成される先筒外筒19とを有する円筒状の部材である。
キャップ嵌入部18は、後述するキャップ2が取り付けられる部分である。キャップ嵌入部18の基端近傍の外周には、キャップ2が嵌合する環状の嵌合凸部12が突設される。キャップ嵌入部18は、先端の先端開口孔11に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ状に形成される。
先筒外筒19は、化粧材Aを繰り出す際に使用者が摘んで使用する部分である。先筒外筒19は、キャップ嵌入部18に連続して形成される。先筒外筒19の後端部には、先端開口孔11から軸方向に連通する後端開口孔16が形成される。先筒外筒19は、キャップ2の外径と略同径に形成される。よって、キャップ2が取り付けられた状態では、キャップ2の外周と先筒外筒19の外周とは略面一となる。
先筒10は、化粧材Aが挿入される前部腔部13と、前部腔部13と比較して内径が大径に形成される後部腔部14と、前部腔部13と後部腔部14との間に形成される段部17とを有する。
前部腔部13は、先端開口孔11から軸方向に連続して形成される。前部腔部13には、化粧材繰出容器1が組み立てられた後に、先端開口孔11からゲル状の化粧材Aが直接充填される。
後部腔部14は、後端開口孔16から軸方向に連続して形成される。後部腔部14における後端開口孔16の近傍には、駆動筒20と相対回転自在に嵌合する環状の嵌合凹部15が凹設される。
段部17は、先筒10の中心軸に対して垂直な平面である。段部17には、螺合ばね40の後述する前端部41が当接する。後部腔部14の内周には、段部17から軸方向に延設される複数の縦リブ17aが形成される。
縦リブ17aは、その内径が螺合ばね40の前端部41と比較して小径に形成される。これにより、螺合ばね40は、後部腔部14に挿入されると、前端部41が縦リブ17aによって保持される。
図3に示すように、キャップ2は、有底円筒状に形成される。キャップ2は、先筒10に取り付けられた状態で先端開口孔11を閉塞するインナーキャップ2aを底部に有する。インナーキャップ2aが設けられることによって、キャップ2が先筒10に取り付けられたときの前部腔部13の気密性が確保される。そのため、揮発性の高い軟質のゲル状の化粧材Aを用いることが可能である。
キャップ2における開口端の近傍の内周には、先筒10の嵌合凸部12と嵌合する環状の嵌合凹部2bが凹設される。嵌合凹部2bが先筒10の嵌合凸部12と嵌合することで、キャップ2の軸方向の位置が規定される。
図4(a)に示すように、駆動筒20は、有底円筒状に形成される。駆動筒20は、先筒10の後部腔部14に嵌入される嵌入円筒部21と、嵌入円筒部21と比較して外径が大径に形成される外筒円筒部22と、内周の腔部25に形成され押棒30と相対回転不能に係合する複数の縦リブ26とを有する。
嵌入円筒部21は、円筒状に形成される。嵌入円筒部21の基端近傍の外周には、先筒10の嵌合凹部15に嵌合する嵌合凸部23が環状に突設される。
外筒円筒部22は、嵌入円筒部21に連続して形成される。外筒円筒部22は、化粧材Aを繰り出す際に使用者が摘んで使用する部分である。外筒円筒部22は、先筒10の先筒外筒19の外径と略同径に形成される。よって、先筒10に駆動筒20が組み付けられた状態では、外筒円筒部22の外周と先筒外筒19の外周とは略面一となる。
縦リブ26は、腔部25の底面27から開口孔が形成される前端面24までにわたって軸方向に延設される。縦リブ26は、押棒30の後述する大径部34のガイド溝35に係合する。本実施の形態では、図4(b)に示すように、縦リブ26は四本設けられる。
図5に示すように、押棒30は、略円柱状に形成される。押棒30は、先筒10と駆動筒20との内周に収容される。押棒30は、先筒10及び駆動筒20と同軸に設けられる棒軸33と、棒軸33の一端に設けられる化粧材保持部31と、棒軸33の他端に設けられる大径部34とを有する。
棒軸33の外周には、ピッチP=1.0mm、リードL=2.0mmの二条ねじである雄ねじ32が形成される。先筒10の前部腔部13に充填される化粧材Aは、微量ずつ押し出されて使用されるものである。よって、雄ねじ32のピッチは、押棒30が微動可能なピッチに設定される。これに限らず、雄ねじ32は、ピッチP=0.5mm、リードL=0.5mmの一条ねじなどであってもよい。雄ねじ32には、螺合ばね40の後述する雌ねじ突起44が噛合可能である。
化粧材保持部31は、棒軸33と比較して大径の円柱状に形成される。化粧材保持部31は、先筒10の前部腔部13を軸方向に移動する。化粧材保持部31の前端面31aは、先筒10の前部腔部13内に充填された化粧材Aに当接する。化粧材保持部31は、押棒30が繰り出されたときに、前端面31aによって化粧材Aを押し出す。
化粧材保持部31における軸方向略中央の外周には、環状のOリング溝31bが凹設される。このOリング溝31bにOリング3(図7参照)が取り付けられ、先筒10にキャップ2が取り付けられることで、先筒10の前部腔部13の気密性が確保される。また、Oリング3によって、ゲル状の化粧材Aの漏れが防止される。
大径部34は、棒軸33と比較して大径に形成される。大径部34は、駆動筒20の腔部25を軸方向に移動する。大径部34は、駆動筒20の底面27と当接したときに、押棒30の繰出後退限を規定する。大径部34が底面27に当接した状態で、押棒30を更に繰り戻そうとすると、螺合ばね40の弾性によって螺合ばね40と雄ねじ32との螺合解除と螺合復帰とが繰り返されて、クラッチ動作が行われる。
一方、大径部34は、螺合ばね40の後述する後端部42と当接したときに、押棒30の繰出前進限を規定する。この場合も同様に、大径部34が後端部42に当接した状態で、押棒30を更に繰り出そうとすると、螺合ばね40の弾性によって螺合ばね40と雄ねじ32との螺合解除と螺合復帰とが繰り返されて、クラッチ動作が行われる。
なお、本実施形態では、押棒30を繰り戻すことは可能であるが、化粧材Aは、先筒10の前部腔部13に直接充填され、化粧材保持部31の前端面31aに当接しているだけであるため、繰り戻されることはない。
大径部34の外周には、駆動筒20の縦リブ26と係合する複数のガイド溝35が軸方向に凹設される。このガイド溝35が縦リブ26と係合することで、押棒30と駆動筒20との相対回転が不能となる。よって、使用者が駆動筒20を摘んで回転させると、押棒30も同時に回転することとなる。
図6(a)に示すように、螺合ばね40は、鼓状に形成される。螺合ばね40は、嵌入円筒部21の前端面24と先筒10の段部17との間に設けられ、先筒10の後部腔部14に収容される。螺合ばね40は、先筒10に駆動筒20が組み付けられる際に軸方向に圧縮され、押棒30の雄ねじ32に螺合する。
螺合ばね40は、先筒10に当接して軸方向の位置が規定される前端部41と、駆動筒20に当接して軸方向の位置が規定される後端部42と、前端部41と後端部42とを連結し、前端部41と後端部42とを連結して押棒30に向かって曲がる複数の板ばね部43と、複数の板ばね部43のうち少なくとも一つに設けられ、雄ねじ32と噛合する雌ねじ突起44とを備える。
螺合ばね40は、ステンレスの薄板によって形成される。これにより、螺合ばね40の耐久性及び復元性が確保され、化粧材繰出容器1を長期間使用することが可能となる。これに代えて、螺合ばね40を樹脂などの他の材料によって形成することも可能である。
前端部41は、環状に形成される。前端部41の外径は、先筒10の後部腔部14の内径と比較して小さく、かつ後部腔部14に形成される縦リブ17a間の内径と比較して大きく形成される。螺合ばね40は、先筒10の内周に形成された縦リブ17aに前端部41が固定されることによって先筒10と一体に回転する。
前端部41の中央には、押棒30の棒軸33が進退可能な貫通孔41aが形成される。前端部41は、先筒10の内周に形成される段部17に当接する。
後端部42は、前端部41と同形状の環状に形成される。後端部42の外径は、先筒10の後部腔部14の内径と比較して小さく形成される。後端部42の中央には、押棒30の棒軸33が進退可能な貫通孔42aが形成される。後端部42は、駆動筒20の嵌入円筒部21の前端面24に当接する。
板ばね部43は、前端部41と後端部42との間で軸方向の圧縮力を受けて押棒30に向かって曲がる。図6(b)に示すように、板ばね部43は、軸方向に押圧されると内周に向かって湾曲する。これに代えて、板ばね部43を、軸方向に押圧されると内周に向かって屈曲するように形成してもよい。板ばね部43は、先筒10と駆動筒20とを相対回転させたときに、駆動筒20の前端面24と後端部42との摩擦力によって捩れる。
雌ねじ突起44は、板ばね部43が曲がることによって雄ねじ32と噛合する。雌ねじ突起44は、板ばね部43の軸方向の略中央の内側に突設される。雌ねじ突起44は、先筒10に駆動筒20が組み付けられて未だ相対回転されていない状態では、板ばね部43が捩れていないため、前端部41及び後端部42と平行である。
雌ねじ突起44は、先筒10と駆動筒20とを相対回転させると、図7に示すように、板ばね部43が押棒30の外周に絡みつくように捩れた状態で雄ねじ32に噛合する。雌ねじ突起44は、化粧材Aを繰り出す方向(以下、「順方向」と称する。)に先筒10と駆動筒20とを相対回転させたときに、雄ねじ32のリード角と同方向に傾斜する。
これにより、雌ねじ突起44と雄ねじ32とは、強い螺合力で螺合することとなる。よって、化粧料Aが先筒10の前部腔部13に密着して充填されているような場合であっても、強い力で押し出すことが可能である。
また、使用者が化粧を施す際には、化粧材Aが軸方向に繰り戻される方向に押圧されるが、雌ねじ突起44と雄ねじ32とが強い螺合力で螺合しているため、化粧材Aが繰り戻されるいわゆるカップダウンが抑制される。
一方、雌ねじ突起44は、化粧材Aを繰り戻す方向(以下、「逆方向」と称する。)に先筒10と駆動筒20とを相対回転させたときに、雄ねじ32のリード角と逆方向に傾斜する。これにより、雌ねじ突起44と雄ねじ32との螺合力は、順方向に相対回転させた場合と比較して小さくなるが、化粧材繰出容器1では、化粧材Aを繰り戻すことはないので、問題とはならない。
板ばね部43が押棒30の外周に絡みつくように捩れた状態で雄ねじ32に螺合することで、先筒10と駆動筒20との相対回転に適度な抵抗が付与される。よって、先筒10と駆動筒20との相対回転に抵抗を付与するためのOリングなどを設ける必要はない。また、圧縮された螺合ばね40による復元力が先筒10と駆動筒20とを互いに離間させる方向に作用するため、先筒10と駆動筒20とのぐらつきが抑制される。
雌ねじ突起44は、複数の板ばね部43のうち一つに設けられればよいが、本実施形態のように一対の板ばね部43が対向して設けられている場合には、両方の板ばね部43に形成されることが望ましい。また、板ばね部43は、一対に限らず、複数であれば何片であってもよい。
なお、螺合ばね40は天地が決まっていない。そのため、螺合ばね40を、前端部41が駆動筒20の前端面24に当接し、後端部42が先筒10の段部17に当接するように後部腔部14に収容してもよい。
次に、主として図1,図8,及び図9を参照して、化粧材繰出容器1の作用について説明する。
図8は、化粧材繰出容器1の組み立ての途中の状態を示すものである。図8に示す状態では、未だ先筒10に駆動筒20が組み付けられておらず、駆動筒20の腔部25に押棒30が挿入され、押棒30の外周に螺合ばね40が取り付けられている。この状態では、螺合ばね40は、未だ軸方向に押圧されていないため、雌ねじ突起44が棒軸33の雄ねじ32に噛合していない。
この状態から、駆動筒20の嵌入円筒部21を先筒10の後部腔部14に押し込むと、まず、螺合ばね40の前端部41が、縦リブ17aの間に進入する。そして、前端部41は、段部17に当接して、縦リブ17aの間で保持されることとなる。
駆動筒20の嵌入円筒部21を先筒10の後部腔部14に更に押し込むと、駆動筒20の嵌合凸部23が先筒10の嵌合凹部15に嵌合する。これにより、先筒10と駆動筒20との軸方向の位置が規定されるとともに、先筒10と駆動筒20とが相対回転自在に組み立てられる。
同時に、駆動筒20の前端面24が螺合ばね40の後端部42を押圧して、螺合ばね40が軸方向に圧縮される。よって、螺合ばね40の一対の板ばね部43が内周に向けて湾曲し、板ばね部43に設けられた雌ねじ突起44が押棒30の雄ねじ32に噛合することとなる。
このように、先筒10に駆動筒20を組み付けるだけで、先筒10と駆動筒20との間で螺合ばね40が圧縮されて、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合することとなる。したがって、押棒30の外周に形成される雄ねじ32に螺合する雌ねじを容易に形成することができる。
先筒10に駆動筒20が組み付けられた後、図1に示すように、先端開口孔11からゲル状の化粧材Aが直接充填される。そして、先筒10のキャップ嵌入部18にキャップ2を取り付けることで、化粧材繰出容器1が完成する。
図1に示す状態から、使用者が先筒10の先筒外筒19と駆動筒20の外筒円筒部22とを摘んで相対回転させる操作を行うと、先筒10と一体に回転する螺合ばね40に対して、駆動筒20と一体に回転する押棒30が相対回転する。これにより、使用者が先筒10と駆動筒20とを順方向に相対回転させると、螺合ばね40の雌ねじ突起44と押棒30の雄ねじ32との噛合によって、押棒30が軸方向に繰り出されることとなる。よって、化粧材Aは、押棒30の化粧材保持部31の前端面31aによって押し出されて、使用者が使用可能な状態となる。
使用者が、先筒10と駆動筒20とを更に相対回転させ続けると、図9に示すように、押棒30が繰出前進限まで繰り出される。この繰出前進限は、押棒30の大径部34が螺合ばね40の後端部42に当接することによって規定される。この状態から、使用者が、先筒10と駆動筒20とを更に相対回転させても、板ばね部43の弾性によって雌ねじ突起44が拡げられることで雄ねじ32が空回りする。よって、押棒30は、これ以上ストロークしない。
なお、これに限らず、大径部34が後端部42に当接する前に、押棒30の雄ねじ32のストローク端に到達することによって押棒30の繰出前進限を規定してもよい。
以上の第一の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
化粧材繰出容器1では、先筒10と駆動筒20との間で軸方向に圧縮されて押棒30の雄ねじ32に螺合する螺合ばね40が設けられる。この螺合ばね40には、軸方向への圧縮力を受けて押棒30に向かって曲がる板ばね部43と、板ばね部43が曲がることによって押棒30の雄ねじ32と噛合する雌ねじ突起44とが形成される。よって、先筒10に駆動筒20を組み付けるだけで、先筒10と駆動筒20との間で螺合ばね40が圧縮されて、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合することとなる。したがって、押棒30の外周に形成される雄ねじ32に螺合する雌ねじを容易に形成することができる。
上述したように、螺合ばね40は、先筒10と駆動筒20との間で軸方向に圧縮されることによって、板ばね部43が押棒30に向かって湾曲し、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合するものである。これに代えて、螺合ばね40が軸方向に圧縮されていない状態で、既に雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合可能なようにしてもよい。
この場合、螺合ばね40は、前端部41と後端部42との間の長さが、先筒10に駆動筒20が組み付けられた状態における段部17と前端面24との間の距離と一致するように形成される。そして、螺合ばね40は、一対の板ばね部43が、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合するように押棒30に向けて予め湾曲した形状に形成される。
これにより、螺合ばね40を軸方向に圧縮しなくても、雌ねじ突起44を雄ねじ32に噛合させることが可能である。螺合ばね40を押棒30に組み付ける際には、押棒30の化粧材保持部31を螺合ばね40の後端部42の貫通孔42a側から挿入する。化粧材保持部31は、板ばね部43を外側へ押し広げながら雌ねじ突起44を通過する。化粧材保持部31が通過すると、板ばね部43は元の形状に戻り、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合することとなる。
なお、このとき、螺合ばね40の前端部41と後端部42との間の長さを、先筒10に駆動筒20が組み付けられた状態における段部17と前端面24との間の距離よりも若干長めに形成してもよい。この場合、先筒10に駆動筒20を組み付ける際に、螺合ばね40が軸方向に圧縮されるため、雌ねじ突起44が雄ねじ32に強く噛合することとなる。
(第二の実施の形態)
以下、図10から図12を参照して、本発明の第二の実施の形態に係る化粧材繰出容器101について説明する。なお、以下に示す各実施の形態では、前述した実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
第二の実施の形態に係る化粧材繰出容器101は、化粧材Bを繰り出すだけでなく、繰り戻すことも可能な点で、第一の実施の形態とは相違する。
図10に示すように、化粧材繰出容器101は、化粧材Bが内周に位置し、当該化粧材Bが進出可能な先端開口孔11が先端に形成される先筒110と、先筒110に相対回転可能に組み付けられる駆動筒20と、駆動筒20と一体に回転し、化粧材Bを保持して繰り出す化粧材保持部131と当該化粧材保持部131から延設されて外周に雄ねじ32が形成される棒軸33とを有する押棒130と、先筒110と一体に回転し、先筒110と駆動筒20との間で軸方向に圧縮されて雄ねじ32に螺合して、先筒110と駆動筒20との相対回転によって押棒130を軸方向に進退させる螺合ばね40とを備える。
化粧材繰出容器101では、使用者が先筒110と駆動筒20とを順方向に相対回転させることによって化粧材Bを繰り出し可能であるとともに、使用者が先筒110と駆動筒20とを逆方向に相対回転させることによって化粧材Bを繰り戻し可能である。
図11に示すように、先筒110は、先端の先端開口孔11に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ状に形成される。先筒110は、化粧材Bを繰り出したり繰り戻したりする際に使用者が摘んで使用する部分である。
先筒110は、化粧材Bが挿入される前部腔部13と、前部腔部13と比較して内径が大径に形成される後部腔部14と、前部腔部13と後部腔部14との間に形成される段部17と、段部17から軸方向に延設される複数の縦リブ17aと、後部腔部14に凹設され、駆動筒20と相対回転自在に嵌合する環状の嵌合凹部15とを有する。
図12に示すように、押棒130は、略円柱状に形成される。押棒130は、先筒110と駆動筒20との内周に収容される。押棒130は、先筒110及び駆動筒20と同軸に設けられる棒軸33と、棒軸33の一端に設けられる化粧材保持部131と、棒軸33の他端に設けられる大径部34とを有する。
化粧材保持部131は、カップ状に形成され、棒状の成形芯である化粧材Bを保持する。化粧材保持部131は、化粧材Bが挿入されたときに化粧材Bの外周と略面一となるように薄膜状に形成される。なお、本実施の形態では、棒状の成形芯で揮発性の低い化粧材Bが用いられるため、前部腔部13を閉塞して気密性を確保するためにキャップやOリングを取り付ける必要はない。
使用者が、先筒110と駆動筒20とを順方向に相対回転させる操作を行うと、化粧材Bは、先筒110内を中心軸まわりに回転しながら繰り出される。同様に、使用者が、先筒110と駆動筒20とを逆方向に相対回転させる操作を行うと、化粧材Bは、先筒110内を中心軸まわりに回転しながら繰り戻される。
雌ねじ突起44は、先筒110と駆動筒20とを順方向に相対回転させたときに、雄ねじ32のリード角と同方向に傾斜する。これにより、雌ねじ突起44と雄ねじ32とは、強い螺合力で螺合することとなる。よって、使用者が化粧を施す際には、化粧材Bが軸方向に繰り戻される方向に押圧されるが、雌ねじ突起44と雄ねじ32とが強い螺合力で螺合しているため、化粧材Bが繰り戻されるいわゆるカップダウンが抑制される。
一方、雌ねじ突起44は、先筒110と駆動筒20とを逆方向に相対回転させたときに、雄ねじ32のリード角と逆方向に傾斜する。これにより、雌ねじ突起44と雄ねじ32との螺合力は、順方向に相対回転させた場合と比較して小さくなるが、化粧材Bを繰り戻すことは充分に可能である。
以上の第二の実施の形態によれば、第一の実施の形態と同様に、先筒110に駆動筒20を組み付けるだけで、先筒110と駆動筒20との間で螺合ばね40が圧縮されて、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合することとなる。したがって、押棒130の外周に形成される雄ねじ32に螺合する雌ねじを容易に形成することができる。
また、螺合ばね40と押棒130との螺合によって、化粧材Bを繰り出すだけでなく、繰り戻すことも可能とすることができる。
(第三の実施の形態)
以下、図13から図17を参照して、本発明の第三の実施の形態に係る化粧材繰出容器201について説明する。
第三の実施の形態に係る化粧材繰出容器201は、押棒230が先筒110と一体に回転し、螺合ばね40が駆動筒220と一体に回転する点で、上述した各実施の形態とは相違する。
図13に示すように、化粧材繰出容器201は、棒状化粧材Cが内周に位置し、当該棒状化粧材Cが進出可能な先端開口孔211が先端に形成される先筒210と、先筒210に相対回転可能に組み付けられる駆動筒220と、先筒210と一体に回転し、棒状化粧材Cを保持して繰り出す化粧材保持部231と当該化粧材保持部231から延設されて外周に雄ねじ32が形成される棒軸33とを有する押棒230と、駆動筒220と一体に回転し、先筒210と駆動筒220との間で軸方向に圧縮されて雄ねじ32に螺合して、先筒210と駆動筒220との相対回転によって押棒230を軸方向に進退させる螺合ばね40とを備える。
化粧材繰出容器201では、使用者が先筒210と駆動筒220とを順方向に相対回転させることによって棒状化粧材Cを繰り出し可能であるとともに、使用者が先筒210と駆動筒220とを逆方向に相対回転させることによって棒状化粧材Cを繰り戻し可能である。
図14に示すように、先筒210は、駆動筒220の後述する前部腔部228に嵌入される嵌入円筒部218と、嵌入円筒部218と比較して外径が大径に形成される摘み部219とを有する円筒状の部材である。
嵌入円筒部218は、略円筒状に形成される。嵌入円筒部218には、駆動筒220の後述する嵌合凹部223に嵌合する環状の嵌合凸部212が突設される。嵌入円筒部218の後端部には、先端開口孔211から軸方向に連通する後端開口孔216が形成される。
摘み部219は、棒状化粧材Cを繰り出したり繰り戻したりする際に使用者が摘んで使用する部分である。摘み部219は、嵌入円筒部218に連続して形成される。摘み部219は、先端の先端開口孔211に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ状に形成される。摘み部219の後端部は、駆動筒220の外径と略同径に形成される。よって、先筒210に駆動筒220が取り付けられた状態では、摘み部219の後端部の外周と駆動筒220の外周とは略面一となる。
先筒210の内周には、押棒230の後述する化粧材保持部231を形成する爪片231aが摺動する複数の摺動溝213が軸方向に延設される。本実施の形態では、図14(c)に示すように、摺動溝213は四本設けられる。
図15に示すように、駆動筒220は、有底円筒状に形成される。駆動筒220は、底面227から軸方向に形成される後部腔部229と、後部腔部229と比較して内径が大径に形成される前部腔部228と、後部腔部229と前部腔部228との間に形成される段部222とを有する。
前部腔部228は、先端開口孔221から軸方向に連続して形成される。前部腔部228における先端開口孔221の近傍には、先筒210の嵌合凸部212と相対回転自在に嵌合する環状の嵌合凹部223が凹設される。
段部222は、駆動筒220の中心軸に対して垂直な平面である。段部222は、螺合ばね40の後端部42が当接する。前部腔部228の内周には、段部222から軸方向に延設される複数の縦リブ222aが形成される。
縦リブ222aは、その内径が螺合ばね40の後端部42と比較して小径に形成される。これにより、螺合ばね40は、前部腔部228に挿入されると、後端部42が縦リブ222aによって保持される。
図16に示すように、押棒230は、略円柱状に形成される。押棒230は、先筒210と駆動筒220との内周に収容される。押棒230は、先筒210及び駆動筒220と同軸に設けられる棒軸33と、棒軸33の一端に設けられる化粧材保持部231と、化粧材保持部231から軸方向に延設される係合条部236と、棒軸33の他端に設けられるストッパ部234とを有する。
化粧材保持部231は、棒状化粧材Cを挟み込んで保持する複数の爪片231aを有する。
爪片231aは、90度間隔で四箇所に形成される。爪片231aは、その外周の突起部が先筒210の摺動溝213と当接し、摺動溝213の内周を摺動する。
爪片231aは、押棒230が繰出前進限に位置したときに、その先端が先筒210における摺動溝213の先端部と当接しないように形成される。よって、繰出前進限にて押棒230を更に繰り出そうとしても、爪片231aに過度な負担がかかることはない。
また、爪片231aの幅は、摺動溝213の幅と比較して小幅に形成される。よって、爪片231aが摺動溝213の周方向に係合して相対回転を規制することはなく、爪片231aに過度な負荷がかかることはない。
係合条部236は、摺動溝213に係合する。これにより、押棒230と先筒210との相対回転が不能となる。よって、使用者が先筒210を摘んで回転させると、押棒230も同時に回転することとなる。
係合条部236は、爪片231aの外周の突起部と略同径に形成される。即ち、係合条部236は、先筒210の摺動溝213の内径と略同一の外径に形成される。これにより、押棒230と先筒210との同軸性が保たれるとともに、押棒230が先筒210に対してがたつくことが防止される。係合条部236は、押棒230の繰出前進限から繰出後退限までの全ストロークにおいて、常に摺動溝213に係合する。
ストッパ部234は、棒軸33と比較して大径に形成される。ストッパ部234は、駆動筒220の後部腔部229を軸方向に移動する。ストッパ部234は、駆動筒220の底面227と当接したときに、押棒230の繰出後退限を規定する。ストッパ部234が底面227に当接した状態で、押棒230を更に繰り戻そうとすると、螺合ばね40の弾性によって螺合ばね40と雄ねじ32との螺合解除と螺合復帰とが繰り返されて、クラッチ動作が行われる。
一方、ストッパ部234は、図17に示すように、螺合ばね40の後端部42と当接したときに、押棒230の繰出前進限を規定する。この場合も同様に、ストッパ部234が後端部42に当接した状態で、押棒230を更に繰り出そうとすると、螺合ばね40の弾性によって螺合ばね40と雄ねじ32との螺合解除と螺合復帰とが繰り返されて、クラッチ動作が行われる。
図16に示すように、ストッパ部234は、自由端に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ状に形成される。また、ストッパ部234には、自由端から軸方向に切り欠かれる切欠部235が形成される。
これにより、押棒230に螺合ばね40を取り付ける際には、切欠部235が小さくなるように変形させてストッパ部234の外径を小さくする。よって、ストッパ部234の外径が小さくなった状態で、螺合ばね40の前端部41の貫通孔41aと後端部42の貫通孔42aを通過させることで、押棒230に螺合ばね40を取り付けることができる。
螺合ばね40は、嵌入円筒部218の後端面と段部222との間に設けられる。螺合ばね40は、駆動筒220の内周に形成された縦リブ222aに後端部42が固定されることによって駆動筒220と一体に回転する。
使用者が、先筒210と駆動筒220とを順方向に相対回転させる操作を行うと、棒状化粧材Cは、先筒210内を回転することなく繰り出される。同様に、使用者が、先筒210と駆動筒220とを逆方向に相対回転させる操作を行うと、棒状化粧材Cは、先筒210内を回転することなく繰り戻される。
雌ねじ突起44は、先筒210と駆動筒220とを順方向に相対回転させたときに、雄ねじ32のリード角と同方向に傾斜する。これにより、雌ねじ突起44と雄ねじ32とは、強い螺合力で螺合することとなる。よって、使用者が化粧を施す際には、棒状化粧材Cが軸方向に繰り戻される方向に押圧されるが、雌ねじ突起44と雄ねじ32とが強い螺合力で螺合しているため、棒状化粧材Cが繰り戻されるいわゆるカップダウンが抑制される。
一方、雌ねじ突起44は、先筒210と駆動筒220とを逆方向に相対回転させたときに、雄ねじ32のリード角と逆方向に傾斜する。これにより、雌ねじ突起44と雄ねじ32との螺合力は、順方向に相対回転させた場合と比較して小さくなるが、棒状化粧材Cを繰り戻すことは充分に可能である。
以上の第三の実施の形態によれば、上述した各実施の形態と同様に、先筒210に駆動筒220を組み付けるだけで、先筒210と駆動筒220との間で螺合ばね40が圧縮されて、雌ねじ突起44が雄ねじ32に噛合することとなる。したがって、押棒230の外周に形成される雄ねじ32に螺合する雌ねじを容易に形成することができる。
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
例えば、上述した各実施の形態では、螺合ばね40の前端部41と後端部42とのいずれかを縦リブ17a,222aによって保持して、先筒10,110又は駆動筒220と一体に回転するようにしている。これに代えて、前端部41と後端部42とに作用する摩擦力の大きさに基づいて、先筒10,110又は駆動筒220と一体に回転するようにしてもよい。
具体的には、第一の実施の形態及び第二の実施の形態では、先筒10,110と前端部41との間の摩擦力が、後端部42に作用する摩擦力と比較して大きくなるようにする。また、第三の実施の形態では、駆動筒220と後端部42との間の摩擦力が、前端部41に作用する摩擦力と比較して大きくなるようにする。
これにより、上述した各実施の形態と同様に、先筒10,110,220と駆動筒20,220とを相対回転させると、螺合ばね40と雄ねじ32との螺合によって押棒30を繰り出したり繰り戻したりすることが可能となる。