JP5937497B2 - アルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液及びこの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液及びこの製造方法に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することもある)は、数少ない結晶性の水溶性高分子であり、優れた造膜性、界面特性及び強度特性を有する。このため、PVAは増粘剤、紙用塗工剤、接着剤、繊維加工剤、バインダー、エマルジョン安定剤、フィルム及び繊維等の原料等として広く利用されている。またPVAの特定の性能を向上させるために、結晶性の制御、官能基の導入等による変性PVAの開発が行われている。
このような変性PVAの一つであるアルキル変性PVAは、水系溶媒中ではアルキル基相互作用が発現し、高粘度溶液を与えることが知られている。このため、アルキル変性PVAは、塗料や接着剤の増粘剤として有用であり、各種単量体単位を含有するアルキル変性PVAが開発されている(特開2008−291120号公報及び特開平10−338714号公報参照)。このようなアルキル変性PVA溶液は、十分に粘度が高いことと共に透明性が高いことも求められる。しかし、アルキル変性PVAは水への溶解性が低く、透明性を高くするためには、水溶液中の濃度をあまり高くできないという不都合があり、アルキル変性PVAの濃度を低くしても十分な粘度を発揮できることが求められている。
特開2008−291120号公報 特開平10−338714号公報
本発明は上述の事情に基づいてなされたものであり、透明性が高く、アルキル変性PVAの濃度を低くしても粘度が高いアルキル変性PVA溶液を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明は、
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、界面活性剤及び水を含有し、
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、
上記界面活性剤が、下記式(I)で表される化合物であるアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液である。
Figure 0005937497
(式(I)中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又はカルボニル基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の疎水基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の有機基である。mは、3以上300以下の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立して上記定義を満たす。但し、Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。)
当該アルキル変性PVA溶液は、上記特定の構造を有する界面活性剤を含有している。この界面活性剤は、親水性のオキシアルキレン基を有し、疎水基Xと有機基Xとが両端に位置する構造を有しており、上記特定のアルキル変性PVA及び水との相溶性に優れる。また、上記界面活性剤が有する上記両端の基の介在により、上記アルキル変性PVAが有するアルキル基間の疎水性相互作用を促進させることができると考えられる。その結果、当該アルキル変性PVA溶液は、透明性に優れ、アルキル変性PVAの濃度が低い場合でも粘度が高いアルキル変性PVA溶液となる。
上記X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜29のアルキル基又は炭素数2〜29のアルケニル基であることが好ましい。上記X及びXが上記特定の基であると、上述のアルキル基同士の疎水性相互作用をより促進させることができ、当該アルキル変性PVA溶液は、透明性及び粘度を向上させることができる。
上記単量体単位は、下記式(II)で表されることが好ましい。
Figure 0005937497
(式(II)中、Rは、炭素数5〜29のアルキル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)
上記単量体単位が上記特定構造を有することで、当該アルキル変性PVA溶液は、上記効果をより効果的に発揮させることができる。
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体は、下記式(III)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られるものであることが好ましい。
Figure 0005937497
(式(III)中、R及びRの定義は、上記式(II)と同様である。)
当該アルキル変性PVA溶液が含有するアルキル変性PVAが上記特定の単量体の共重合体をけん化することにより得られるものであることで、上記アルキル変性PVAのけん化度等の調整が容易となり、当該アルキル変性PVA溶液の透明性をより高めることができる。
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、100以上5,000以下が好ましい。上記アルキル変性PVAの粘度平均重合度を上記範囲とすることで、当該アルキル変性PVA溶液は、透明性を高めることができる。
上記界面活性剤の上記アルキル変性PVAに対する質量比は、0.1/99.9以上40/60以下が好ましい。界面活性剤とアルキル変性PVAとの質量比を上記範囲とすることにより、当該アルキル変性PVA溶液は、透明性及び粘度をさらに高めることができる。
上記アルキル変性PVAの濃度は、0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。上記アルキル変性PVAの濃度を上記範囲とすることで、当該アルキル変性PVA溶液は、上記効果をさらに効果的に発揮させることができる。
本発明のアルキル変性PVA溶液の製造方法は、
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、界面活性剤及び水を混合する工程を有し、
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、
上記界面活性剤が、下記式(I)で表される化合物であるアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液の製造方法である。
Figure 0005937497
(式(I)中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又はカルボニル基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の疎水基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の有機基である。mは、3以上300以下の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立して上記定義を満たす。但し、Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。)
当該アルキル変性PVA溶液の製造方法によれば、透明性が高く、アルキル変性PVAの濃度を低くしても粘度が高いアルキル変性PVA溶液を容易に製造することができる。
なお、当該アルキル変性PVA溶液がゲルの状態のものも、当該アルキル変性PVA溶液の範囲に含まれる。
ここで、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本発明のアルキル変性PVA溶液は、透明性に優れ、アルキル変性PVAの濃度を低くしても高い粘度を発揮することができる。そのため、当該アルキル変性PVA溶液は、接着剤や塗料等の増粘剤等として好適に用いることができる。また、当該アルキル変性PVA溶液の製造方法によれば、このように透明性が高く、粘度が高いアルキル変性PVA溶液を容易に得ることができる。
以下、本発明のアルキル変性PVA溶液の実施形態について詳説する。
<アルキル変性PVA溶液>
本発明のアルキル変性PVA溶液は、アルキル変性PVA、界面活性剤及び水を含有する。また、当該アルキル変性PVA溶液は、本発明の趣旨を損なわない限り、任意成分を含有していてもよい。以下、これらの成分について詳述する。
(アルキル変性PVA)
本発明のアルキル変性PVA溶液が含有するアルキル変性PVAは、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有する。すなわち、上記アルキル変性PVAは、上記炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位と、ビニルアルコール系単量体単位とを含有する共重合体であり、さらに他の単量体単位を含有していてもよい。このアルキル基の炭素数が5未満の場合、アルキル基同士の疎水性相互作用が十分に発現しないため、当該アルキル変性PVA溶液の粘度が低下する。一方、このアルキル基の炭素数が29を超える場合、上記アルキル変性PVAの水溶性が低下し、当該アルキル変性PVA溶液の透明性が低下する。上記アルキル基の炭素数としては、透明性を高める観点から、5〜24が好ましく、5〜20がより好ましく、7〜20がさらに好ましく、9〜20が特に好ましい。
上記炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位としては、
1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン類に由来する単量体単位;
ペンチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類に由来する単量体単位;
下記式(IV)で表される単量体単位が好ましく、下記Rが炭素数5〜24のアルキル基である単量体単位がより好ましい。
Figure 0005937497
上記式(II)中、Rは、炭素数5〜29のアルキル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。
上記Rで表される炭素数5〜29のアルキル基としては、例えばペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、ヘキサコシル基等が挙げられる。これらのうち、当該アルキル変性PVA溶液の透明性及び粘度をより高くできる観点から、炭素数5〜24のアルキル基が好ましく、炭素数5〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数7〜20のアルキル基がさらに好ましく、炭素数9〜20のアルキル基が特に好ましい。
上記Rで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基が好ましい。
上記Rとしては、合成の容易性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましい。
なお、上記R及びRで表されるアルキル基は、本発明の趣旨が損なわれない範囲であれば、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよいが、これらの置換基を有していないことが好ましい。
上記アルキル変性PVAにおける炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率は、0.05モル%以上5モル%以下であることが重要であり、0.05モル%以上2モル%以下が好ましく、0.1モル%以上2モル%以下がより好ましく、0.2モル%以上1モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書における炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率とは、アルキル変性PVAを構成する全構造単位のモル数に占める炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位のモル数の割合である。
炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率が5モル%を超えると、上記アルキル変性PVA一分子あたりに含まれる疎水基の割合が高くなり、このアルキル変性PVAの水溶性が低下する。一方、炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有量が0.05モル%未満の場合、上記アルキル変性PVAの水溶性は優れているものの、このアルキル変性PVA中に含まれるアルキル基の数が少なく、アルキル変性に基づく高粘性等の物性が発現しない。
炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位の含有率は、上記アルキル変性PVAの前駆体であるアルキル変性ビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求めることができる。具体的には、n−ヘキサン/アセトンでアルキル変性ビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のサンプルを作製する。このサンプルをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定する。
この際、例えば、上記アルキル変性ビニルエステル系重合体が、上記式(IV)で表される単量体単位以外のアルキル変性単量体単位を含まず、かつ、Rが直鎖状であり、さらにRが水素原子である場合、以下の方法にて算出できる。すなわち、アルキル変性ビニルエステル系重合体の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)と、アルキル基Rの末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)とから、下記式を用いて、上記式(IV)で表される単量体単位の含有率Sを算出する。
S(モル%)
={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
当該アルキル変性PVA溶液が含有するアルキル変性PVAの粘度平均重合度は、100以上5,000以下であることが好ましく、500以上2,700以下がより好ましく、1,000以上2,300以下がさらに好ましい。なお、粘度平均重合度を単に重合度と呼ぶことがある。この重合度が5,000を超えると、上記アルキル変性PVAの生産性が低下するおそれがある。逆に、この重合度が100未満の場合、当該アルキル変性PVA溶液の粘度が低下するおそれがある。
この粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726:1994年に準じて測定される。すなわち、アルキル変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
当該アルキル変性PVA溶液が含有するアルキル変性PVAのけん化度は、20モル%以上99.99モル%以下であり、40モル%以上99.95モル%以下が好ましく、70モル%以上99.9モル%以下がより好ましい。このけん化度が20モル%未満の場合には、アルキル変性PVAの水溶性が低下し、その結果、当該アルキル変性PVA溶液の透明性が低下する。逆に、このけん化度が99.99モル%を超えると、アルキル変性PVAの生産が困難になるので実用的でない。なお、上記アルキル変性PVAのけん化度は、JIS−K6726:1994年に準じて測定される。
当該アルキル変性PVA溶液におけるアルキル変性PVAの濃度は特に限定されないが、0.5質量%以上50質量%以下が好ましく、0.8質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
(アルキル変性PVAの製造方法)
上記アルキル変性PVAを製造する方法は特に制限されないが、下記式(III)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られるアルキル変性ビニルエステル系重合体(共重合体)をけん化する方法が好ましい。当該アルキル変性PVA溶液が含有するアルキル変性PVAが上記特定の単量体の共重合体をけん化することにより得られるものであることで、上記アルキル変性PVAのけん化度等の調整が容易となり、透明性等をさらに高めることができる。ここで、上記共重合はアルコール系溶媒中又は無溶媒で行うことが好ましい。
Figure 0005937497
上記式(III)中、R及びRの定義は、上記式(II)と同様である。
上記式(III)で表される不飽和単量体としては、例えばN−ペンチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−デシルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ヘキサコシルアクリルアミド、N−ペンチルメタクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ペンチルメタクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミドが好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミドがより好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミドがさらに好ましい。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらのうち、酢酸ビニルが好ましい。
上記式(III)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合してもよい。使用し得る他の単量体としては、例えば
エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;
酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物類;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物類;
酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
また、上記式(III)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られる共重合体の重合度を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤を添加してもよい。この連鎖移動剤としては、例えば
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;
トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;
ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類等が挙げられる。これらのうち、アルデヒド類、ケトン類が好ましい。
上記連鎖移動剤の添加量としては、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするアルキル変性ビニルエステル系重合体の重合度、ひいてはアルキル変性PVAの重合度に応じて決定することができるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
上記式(III)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合を行う際に採用される温度としては、0℃〜200℃が好ましく、30℃〜140℃がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、本発明で規定するアルキル基を有する単量体単位の含有率を満足するアルキル変性PVAを得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0℃〜200℃に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合反応による発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、安全性の面からは適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法が好ましい。
上記式(III)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合を行うのに用いられる重合方式としては、例えば回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合等が挙げられる。重合方法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の方法を用いることができる。これらのうち、無溶媒又はアルコール系溶媒中で重合を行う塊状重合法、溶液重合法が好適に採用され、高重合度の共重合物の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。
上記アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は2種類以上を混合して用いることができる。
上記式(III)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等を用いることができる。
上記アゾ系開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
上記過酸化物系開始剤としては、例えば
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;
t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;
アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤とすることもできる。
上記レドックス系開始剤としては、例えば上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたもの等が挙げられる。
なお、上記式(III)で表される不飽和単量体と上記ビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがある。この場合には、着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を、ビニルエステル系単量体に対して1〜100ppm程度添加するのがよい。
上記共重合により得られたアルキル変性ビニルエステル系共重合体のけん化反応には、公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒又はp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた加アルコール分解反応又は加水分解反応を適用することができる。
上記けん化反応に使用し得る溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。なお、これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記けん化反応としては、メタノール、又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒として用いて行う方法が簡便であり好ましい。
(界面活性剤)
当該アルキル変性PVA溶液が含有する界面活性剤は、下記式(I)で表される化合物である。
Figure 0005937497
式(I)中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又はカルボニル基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の疎水基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の有機基である。mは、3以上300以下の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立して上記定義を満たす。但し、Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。
上記界面活性剤は、親水性のオキシアルキレン基を有し、疎水基Xと有機基Xとが両端に位置する構造を有しており、上記特定のアルキル変性PVA及び水との相溶性に優れる。また、上記界面活性剤が有する上記両端の基の介在により、上記アルキル変性PVAが有するアルキル基間の疎水性相互作用を促進させることができると考えられる。その結果、当該アルキル変性PVA溶液は、透明性に優れ、アルキル変性PVAの濃度が低い場合でも粘度が高いアルキル変性PVA溶液となる。
上記Xで表される炭素数1〜30の疎水基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、これらの中でも、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜30の直鎖状又は分岐状のアルケニル基がより好ましい。
上記炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。これらの中で、n−ヘプタデシル基が好ましい。
上記炭素数2〜30の直鎖状又は分岐状のアルケニル基としては、例えば、
エテニル基、n−プロペニル基、i−プロペニル基、n−ブテニル基、i−ブテニル基、sec−ブテニル基、t−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基、n−オクテニル基、n−ノネニル基、n−デセニル基、n−ドデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基、n−イコセニル基、n−ドコセニル基、n−テトラコセニル基、n−ヘキサコセニル基、n−ノナコセニル基等が挙げられる。これらの中で、n−ヘプタデセニル基が好ましい。
上記Xで表される炭素数1〜30の有機基としては、炭素数1〜30の疎水基が好ましく、炭素数1〜30の炭化水素基がより好ましく、これらの中でも、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜30の直鎖状又は分岐状のアルケニル基がさらに好ましい。これらの基としては、例えば、上記Xとして例示したそれぞれの基と同様の基等が挙げられる。また、Xとして好ましい基も、上記Xの好ましい基と同様である。
上記X及びXの炭素数としては、4〜24が好ましく、8〜22がより好ましく、12〜20がさらに好ましい。上記炭素数を上記範囲とすることで、上記アルキル変性PVAのアルキル基とX及びXとの相互作用が高まると考えられ、その結果、上記アルキル変性PVAの粘度がより高まる。
上記Rで表される炭素数2又は3のアルキレン基としては、エチレン基、1,1−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基等が挙げられる。
上記R及びRとしては、カルボニル基が好ましい。
上記mとしては、当該アルキル変性PVA溶液の粘度がより高くなる観点から、10以上300以下の整数が好ましく、25以上300以下の整数がより好ましく、50以上300以下の整数がさらに好ましく、100以上250以下の整数が特に好ましい。
上記界面活性剤としては、上記式(I)で表される化合物であれば特に限定されないが、例えば、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのジブロック共重合体;
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのトリブロック共重合体などの両末端の水酸基の水素原子を炭素数2〜31のアシル基及び/又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換したジエステル体、ジエーテル体又はエステルエーテル体等が挙げられる。これらのうち、当該アルキル変性PVA溶液の透明性及びアルキル変性PVAが低濃度の場合の粘度の高さをより一層高める観点から、ポリエチレングリコールのジエステル体、ポリプロピレングリコールのジエステル体が好ましく、ポリエチレングリコールのジ(n−オクタデカン酸)エステル、ポリプロピレングリコールのジ(n−オクタデカン酸)エステルがより好ましい。
当該アルキル変性PVA溶液が含有する上記界面活性剤の上記アルキル変性PVAに対する質量比(界面活性剤の質量/アルキル変性PVAの質量)としては、0.1/99.9以上40/60以下が好ましく、3/97以上35/65以下がより好ましく、7/93以上30/70以下がさらに好ましく、10/90以上25/75以下が特に好ましい。界面活性剤とアルキル変性PVAとの質量比を上記範囲とすることで、当該アルキル変性PVA溶液は、透明性及び粘度をより高めることができる。上記質量比が0.1/99.9未満の場合は、当該アルキル変性PVA溶液の透明性及び粘度が低下するおそれがある。逆に、上記質量比が40/60を超える場合は、当該アルキル変性PVA溶液の透明性が低下するおそれがある。
(任意成分)
[添加剤]
当該アルキル変性PVA溶液は、アルキル変性PVA、上記特定の界面活性剤及び水以外に、各種可塑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、充填材、pH調整剤、耐水化剤等の添加剤を本発明の趣旨を損なわない範囲で含有していてもよい。
[他の水溶性高分子]
当該アルキル変性PVA溶液は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当該アルキル変性PVA溶液が含有する上述のアルキル変性PVA以外の公知の各種PVA、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の他の水溶性高分子を含有していてもよい。これらの他の水溶性高分子の配合量は、当該アルキル変性PVA溶液が含有する上記アルキル変性PVA100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
(用途等)
当該アルキル変性PVA溶液は、透明性が高く、アルキル変性PVAの濃度を低くしても高い粘度を有する。従って、当該アルキル変性PVA溶液は、感温性バインダー、ゲル化剤、感温性接着剤、増粘剤等として好適に用いることができる。具体的には、例えば、紙用コーティング剤;内添サイズ剤;繊維加工剤;染料;グラスファイバーのコーティング剤;金属やガラスの表面コート剤;防曇剤等の被覆剤;木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤;不織布バインダー;繊維状バインダー;石膏ボード及び繊維板等の建材用バインダー;各種エマルジョン系接着剤の増粘剤;尿素樹脂系接着剤の添加剤;セメント及びモルタル用添加剤;ホットメルト型接着剤;感圧接着剤等の各種接着剤;エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等の各種エチレン系不飽和単量体の乳化重合用分散剤;塗料、接着剤等の顔料分散用安定剤;塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル等の各種エチレン性不飽和単量体の懸濁重合用分散安定剤;繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、水溶性繊維、暫定皮膜等の成形物;疎水性樹脂への親水性付与剤;土質改良剤;土質安定剤等を構成する成分として用いることができる。
<アルキル変性PVA溶液の製造方法>
本発明のアルキル変性PVA溶液の製造方法は、
アルキル変性ビニルアルコール系重合体、界面活性剤及び水を混合する工程を有し、
上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、
上記界面活性剤が、下記式(I)で表される化合物である製造方法である。
Figure 0005937497
式(I)中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又はカルボニル基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の疎水基である。Xは、水素原子又は炭素数1〜30の有機基である。mは、3以上300以下の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立して上記定義を満たす。但し、Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。Rが単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。
当該アルキル変性PVA溶液の製造方法によれば、透明性が高く、アルキル変性PVAの濃度を低くしても粘度が高い溶液を容易に得ることができる。このアルキル変性PVA、界面活性剤等の詳細は上述した通りである。
このアルキル変性PVA、界面活性剤及び水を混合する方法としては、特に限定されず、界面活性剤と水とを混合した混合物にアルキル変性PVAを加えてもよいし、アルキル変性PVA水溶液に界面活性剤を加えてもよい。なお、溶解性を高めるために、加熱しながら撹拌してもよい。上記加熱の際の溶液の温度としては、例えば80℃以上95℃以下が採用される。
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
下記製造例により得られたPVA(アルキル変性PVA及び無変性PVA)について、以下の方法に従って評価を行った。
[変性率]
各PVAの変性率(PVAにおけるアルキル基を有する単量体単位の含有率)は、上述のプロトンNMRを用いた方法により求めた。
[重合度]
各PVAの粘度平均重合度は、JIS−K6726:1994年に記載の方法により求めた。
[けん化度]
各PVAのけん化度は、JIS−K6726:1994年に記載の方法により求めた。
<PVAの製造>
[製造例1](PVA1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g及びN−オクタデシルメタクリルアミド1.1gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてN−オクタデシルメタクリルアミドをメタノールに溶解して濃度5%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下により添加し、重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとN−オクタデシルメタクリルアミドとの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。用いたコモノマー(N−オクタデシルメタクリルアミド)の総量(仕込み+添加)は4.8gであった。酢酸ビニルの重合率は40%であった。また重合停止時の固形分濃度は29.9%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性ビニルエステル系重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液771.4g(溶液中のアルキル変性PVAc200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液におけるアルキル変性PVAc濃度は25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03であった。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA1)を得た。
[製造例2〜18](PVA2〜18の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するアルキル基を有する不飽和単量体の種類や添加量等の重合条件、酢酸ビニルの重合率、けん化時におけるアルキル変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種のアルキル変性PVA(PVA2〜18)を製造した。
[製造例19](PVA19の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、及びオクタデシルビニルエーテル57.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0gを添加し重合を開始した。60℃で2時間重合した後、冷却して重合を停止した。酢酸ビニルの重合率は40%であった。重合停止時の固形分濃度は30.4%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性ビニルエステル系重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液792.9g(溶液中のアルキル変性PVAc200.0g)に、7.0gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液のアルキル変性PVAc濃度は25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.0075であった。アルカリ溶液を添加後約12分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA19)を得た。
[製造例20](PVA20の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル900g及びメタノール100gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。酢酸ビニルの重合率は35%であった。重合停止時の固形分濃度は31.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液971.1g(溶液中のPVAc200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液のPVAc濃度は20%、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03であった。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して無変性PVA(PVA20)を得た。
Figure 0005937497
<アルキル変性PVA溶液の調製>
[実施例1]
攪拌機付きの300mLのセパラブルフラスコに、水98.5g及び界面活性剤としてのポリエチレングリコールのn−オクタデカン酸ジエステル(下記表2の界面活性剤A)0.15gを加え、溶解させた。次に、1.5gのPVA1を室温で加え、90℃まで昇温し、1.5時間攪拌して、溶解させた。その後、室温まで冷却し、PVA1を1.5質量%の濃度で含有するPVA溶液を得た。
[実施例2〜23及び比較例1〜4]
用いたPVA及び界面活性剤の種類、並びに界面活性剤とPVAとの質量比を表3に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、各PVAを1.5質量%の濃度で含有するPVA溶液を調製した。使用した界面活性剤の種類を表2に示す。なお、表2中の界面活性剤A〜Eは、式(I)で表される界面活性剤である。
Figure 0005937497
<評価>
当該アルキル変性PVA溶液について、下記方法により溶解性評価及び溶液評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、表3中の「(*1)」は、界面活性剤を添加しなかったことを示す。また、表3中の「(*2)」は、PVAが完全には溶解せず、評価不能であったことを示す。
[溶液評価]
(粘度増加度)
上記実施例で調製したアルキル変性PVA溶液の粘度(a)(mPa・s)をBH型粘度計を用い、ロータ回転数2rpm、20℃の条件下で測定した。また、界面活性剤を含有しない同濃度のアルキル変性PVA溶液の粘度(b)を同様の条件で測定した。これらの測定値から粘度比(a/b)を算出し、粘度増加度とした。
(20℃における透明度)
上記実施例で得られたPVA溶液の20℃における透明度を目視で評価した。なお、下記評価がA又はBの場合、実用性に優れると言える。
A:透明である
B:青白い
C:白濁
Figure 0005937497
表3に示されるように、実施例1〜23の溶液は、60℃における透明性に優れ、また、アルキル変性PVAの濃度が低いにもかかわらず、高い粘度を示すことが分かる。さらに、PVAの重合度、単量体単位の構造、界面活性剤の種類及び界面活性剤とアルキル変性PVAとの質量比を特定した、実施例4〜7、9〜13、15及び16の溶液は、特に高い粘度のものが得られた。なお、実施例3、8及び14は、60℃の透明性が低下していることが分かる。これは、アルキル変性PVAの重合度が比較的高いこと、けん化度が比較的低いこと、アルキル変性PVAのアルキル基のアルキル基の炭素数が比較的多いこと等に起因していると考えられる。また、実施例20、21及び23では60℃における透明性が低下している。これは、界面活性剤の構造が異なることや界面活性剤の添加量が多い又は少ないことに起因していると考えられ、アルキル変性PVAと界面活性剤と水との相溶性が少し低下しているためだと考えられる。
一方、PVAが規定の要件(アルキル基の炭素数、変性率及びけん化度)を満たさない場合(比較例1〜3)、界面活性剤の構造が規定の要件を満たさない場合(比較例4及び5)並びに界面活性剤を使用しない場合(比較例6)は、60℃における透明性が低下する、アルキル変性PVA濃度が低い場合に高い粘度のものが得られない等が観察された。
本発明のアルキル変性PVA溶液は、透明性が高く、アルキル変性PVAを低濃度としても粘度を高くすることができる。そのため、当該アルキル変性PVA溶液は、接着剤、増粘剤等に好適に用いることができる。また、本発明のアルキル変性PVA溶液の製造方法によれば、このように透明性が高く、粘度が高い溶液を容易に得ることができる。

Claims (8)

  1. アルキル変性ビニルアルコール系重合体、界面活性剤及び水を含有し、
    上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、
    上記界面活性剤が、下記式(I)で表される化合物であるアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
    Figure 0005937497
    (式(I)中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又はカルボニル基である。Xは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基である。Xは、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基である。mは、3以上300以下の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立して上記定義を満たす。但し、R が単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。)
  2. 上記 が、水素原子、炭素数1〜29のアルキル基又は炭素数2〜29のアルケニル基であり、X が、炭素数1〜29のアルキル基又は炭素数2〜29のアルケニル基である請求項1に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
  3. 上記単量体単位が、下記式(II)で表される請求項1又は請求項2に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
    Figure 0005937497
    (式(II)中、Rは、炭素数5〜29のアルキル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)
  4. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が、下記式(III)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られる請求項3に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
    Figure 0005937497
    (式(III)中、R及びRの定義は、上記式(II)と同様である。)
  5. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が、100以上5,000以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
  6. 上記界面活性剤の上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体に対する質量比が、0.1/99.9以上40/60以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
  7. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体の濃度が、0.5質量%以上50質量%以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液。
  8. アルキル変性ビニルアルコール系重合体、界面活性剤及び水を混合する工程を有し、
    上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が炭素数5〜29のアルキル基を有する単量体単位を含有し、この単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下であり、かつ上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が20モル%以上99.99モル%以下であり、
    上記界面活性剤が、下記式(I)で表される化合物であるアルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液の製造方法。
    Figure 0005937497
    (式(I)中、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、単結合又はカルボニル基である。Xは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基である。Xは、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基である。mは、3以上300以下の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立して上記定義を満たす。但し、R が単結合の場合、Xが水素原子である場合はない。)
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