本発明者等は、まず、上述したような、比較的低分子量のポリアリーレンエーテル共重合体を用いた場合、硬化物の耐熱性が低くなるという傾向があることに着目した。硬化物の耐熱性を高めるために、ポリアリーレンエーテル共重合体以外の樹脂を用いることも考えられるが、ポリアリーレンエーテル共重合体が優れた誘電特性を有することから、ポリアリーレンエーテル共重合体を用いることを検討した。そして、比較的低分子量のポリアリーレンエーテル共重合体にエポキシ樹脂を併用することを検討した。そうすることによって、ポリアリーレンエーテル共重合体とエポキシ樹脂との硬化反応を進行させて、3次元的な架橋を形成させることにより、得られた硬化物の耐熱性を向上させることができると推察した。
その際、本発明者等の検討によれば、用いるエポキシ樹脂の種類によっては、硬化物の耐熱性を充分に高めることができない場合があった。このことは、エポキシ樹脂の種類によっては、ポリアリーレンエーテル共重合体との相溶性が低く、ポリアリーレンエーテル共重合体とエポキシ樹脂との硬化反応による3次元的な架橋形成が好適に進行しないことによると推察した。
以上のことから、本発明者等は、かかる知見に基づき、種々検討した結果、本発明に想到するに至った。
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gであって、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.5〜3個有するポリアリーレンエーテル共重合体(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率が、60〜85質量%である。
このような樹脂組成物は、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を有し、硬化物の耐熱性に優れ、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生を充分に抑制することができる。
このことは、以下のことによると考えられる。
まず、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gであって、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.5〜3個有するポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、粘度が比較的低いので、これを含有した樹脂組成物の粘度も比較的低く流動性が比較的高い樹脂組成物が得られる。
また、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、分子量が比較的低く、分子末端のフェノール性水酸基の1分子当たりの個数が比較的多いので、エポキシ樹脂(B)と3次元的な架橋を形成しやすいと考えられる。そして、このエポキシ樹脂(B)は、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものであり、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)との相溶性が比較的高いと考えられる。よって、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と均一に反応しやくすく、3次元的な架橋を均一に形成しやすいと考えられる。
よって、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)を用いて硬化させることによって、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)とによる3次元的な架橋を好適に形成させることができると考えられる。
これらのことから、樹脂ワニスにした際、その粘度が比較的低く、流動性が比較的高い樹脂組成物が得られ、さらに、その硬化物の耐熱性を充分に高めることができると考えられる。
さらに、本発明者等の検討によれば、エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂を用いることによって、流動性が比較的高い樹脂組成物であって、得られた樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上するだけではなく、さらに、得られた樹脂組成物を、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生も充分に抑制することができた。
以上のことから、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を有し、硬化物の耐熱性に優れ、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生を充分に抑制することができる樹脂組成物が得られると考えられる。また、プリプレグが厚くなると、外観不良が発生しやすくなる傾向があるが、本実施形態に係る樹脂組成物であれば、比較的厚いプリプレグの製造に用いても、得られたプリプレグの外観不良の発生も充分に抑制することができる。
以下、前記樹脂組成物の各成分について、詳細に説明する。
本実施形態で用いるポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gであって、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.5〜3個有するポリアリーレンエーテル共重合体であれば、特に限定されない。
また、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の固有粘度は、0.03〜0.12dl/gであればよいが、0.06〜0.095dl/gであることが好ましい。この固有粘度が低すぎると、分子量が低い傾向があり、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、固有粘度が高すぎると、粘度が高く、充分な流動性が得られず、成形不良を抑制できない傾向がある。よって、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の固有粘度が上記範囲内であれば、優れた、硬化物の耐熱性及び成形性を実現できる。
なお、ここでの固有粘度は、使用するポリアリーレンエーテル共重合体(A)の製品の規格値からわかる。また、ここでの固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度であり、より具体的には、例えば、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計で測定した値等である。この粘度計としては、例えば、Schott社製のAVS500 Visco System等が挙げられる。
また、本実施形態で用いるポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)1分子当たりの、分子末端のフェノール性水酸基の平均個数(末端水酸基数)が1.5〜3個であればよいが、1.8〜2.4個であることが好ましい。この末端水酸基数が少なすぎると、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基との反応性が低下し、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端水酸基数が多すぎると、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基との反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、誘電率及び誘電正接が高くなる等の不具合が発生するおそれがある。
なお、ここでのポリアリーレンエーテル共重合体(A)の水酸基数は、使用するポリフェニレンエーテル樹脂の製品の規格値等からわかる。また、ここでの末端水酸基数としては、具体的には、例えば、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)1モル中に存在する全てのポリアリーレンエーテル共重合体(A)の1分子あたりの水酸基の平均値を表した数値等が挙げられる。
よって、本実施形態で用いるポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、分子量が比較的低く、末端水酸基数が比較的多いので、後述する、エポキシ樹脂(B)と3次元的な架橋を形成しやすいと考えられる。したがって、このようなポリアリーレンエーテル共重合体(A)を用いることによって、広い周波数領域において誘電特性が良好であるだけではなく、成形不良を抑制できる充分な流動性を有し、さらに硬化物の耐熱性が充分に高められると考えられる。
また、本実施形態で用いるポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、数平均分子量(Mn)が500〜3000であることが好ましく、650〜1500であることがより好ましい。また、分子量が低すぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。また、分子量が高すぎると、溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られず、成形不良を抑制できない傾向がある。よって、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の固有粘度が上記範囲内であれば、優れた、硬化物の耐熱性及び成形性を実現できる。
なお、ここでの数平均分子量は、具体的には、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
本実施形態で用いるポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、具体的には、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリアリーレンエーテル共重合体やポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。また、2官能フェノールとしては、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。このようなポリアリーレンエーテル共重合体(A)としては、より具体的には、例えば、式(1)に示す構造を有するポリアリーレンエーテル共重合体等が挙げられる。
式(1)中、s,tは、上述した固有粘度が0.03〜0.12dl/gの範囲内になるような重合度であればよい。具体的には、sとtとの合計値が、1〜30であることが好ましい。また、sが、0〜20であることが好ましく、tが、0〜20であることが好ましい。すなわち、mは、0〜20を示し、nは、0〜20を示し、mとnとの合計は、1〜30を示すことが好ましい。
本実施形態で用いるエポキシ樹脂(B)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものであれば、特に限定されない。すなわち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するビフェニル型エポキシ樹脂、及び1分子中に2個以上のエポキシ基を有するナフタレン型エポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を含むものであれば、特に限定されない。
まず、本実施形態で用いるエポキシ樹脂(B)は、エポキシ基が1分子中に2個以上有する。すなわち、エポキシ樹脂(B)1分子当たりの、エポキシ基の平均個数(平均エポキシ基数)が、2個以上である。そして、平均エポキシ基数が、2個以上であり、2〜10個であることが好ましく、2〜6個であることがより好ましい。平均エポキシ基数が2個以上であれば、得られた樹脂組成物の硬化物の耐熱性が高まる点から好ましい。なお、ここでの平均エポキシ基数は、使用するエポキシ樹脂の製品の規格値からわかる。ここでの平均エポキシ基数としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂1モル中に存在する全てのエポキシ樹脂の1分子あたりのエポキシ基の平均値を表した数値等が挙げられる。
また、ビフェニル型エポキシ樹脂は、分子中に、ビフェニル構造を有するものであれば、特に限定されない。よって、平均エポキシ数が2個以上であって、分子中に、ビフェニル構造を有するものであれば、特に限定されない。
また、ナフタレン型エポキシ樹脂は、分子中に、ナフタレン構造を有するものであれば、特に限定されない。よって、平均エポキシ数が2個以上であって、分子中に、ナフタレン構造を有するものであれば、特に限定されない。
このようなエポキシ樹脂(B)を用いることによって、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の有する、優れた誘電特性と流動性とを阻害することなく、硬化物の耐熱性が充分に高められると考えられる。さらに、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生も充分に抑制することができる樹脂組成物が得られると考えられる。このことは、このようなエポキシ樹脂(B)が、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)との相溶性が比較的高いことによると考えられる。よって、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と均一に反応しやすく、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と3次元的な架橋が形成されやすいと考えられる。
また、エポキシ樹脂(B)の150℃における粘度が、0.005〜0.5Pa・sであることが好ましく、0.01〜0.4Pa・sであることがより好ましい。このような粘度のエポキシ樹脂であれば、得られた樹脂組成物を、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生をより抑制することができる。なお、ここでの、150℃における粘度とは、150℃において、ICIコーンプレート回転粘度計で測定したICI粘度を言う。
また、エポキシ樹脂(B)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいれば、他のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。他のエポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェノール型エポキシ樹脂、軟化温度が50〜70℃のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、軟化温度が50〜70℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。この中でも、軟化温度が50〜70℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましい。軟化温度が50〜70℃のトリフェノルメタン型エポキシ樹脂を含有させることによって、Tgを高め、得られた樹脂組成物の硬化物の耐熱性を高め、さらに、プリプレグの外観不良の発生をより抑制することができる。また、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態に係る樹脂組成物には、ハロゲン化エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。なお、軟化温度は、例えば、動的粘弾性の測定により確認することができる。具体的には、粘弾性測定装置において試験片に引張応力を与え、その応答によって測定される損失正接(tanδ)を測定したときにtanδがピークを示す温度等が挙げられる。
以上のことから、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)とを組み合わせて用いることによって、上述したように、3次元的な架橋を好適に進行させることができると考えられる。さらに、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gと、溶液での粘度が比較的低く、エポキシ樹脂(B)との相溶性が高いので、得られた樹脂組成物に溶媒を加えて、樹脂ワニスにしたときの粘度が低くなると考えられる。よって、得られた樹脂組成物は、その硬化物の成形性に優れたものになると考えられる。
本実施形態で用いる硬化促進剤(C)は、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等の有機ホスフィン系化合物、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系化合物、金属石鹸等が挙げられる。また、金属石鹸は、脂肪酸金属塩を指し、直鎖状の脂肪酸金属塩であっても、環状の脂肪酸金属塩であってもよい。具体的には、例えば、炭素数が6〜10の、直鎖状の脂肪族金属塩及び環状の脂肪族金属塩等が挙げられる。より具体的には、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、及びオクチル酸等の直鎖状の脂肪酸や、ナフテン酸等の環状の脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、銅及び亜鉛等の金属とからなる脂肪族金属塩等が挙げられる。これらの中でも、オクチル酸亜鉛が好ましく用いられる。硬化促進剤(C)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態で用いる硬化促進剤(C)としては、例示した硬化促進剤の中でも、イミダゾール系化合物を含有することが、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる点から好ましく、さらに、イミダゾール系化合物及び金属石鹸を含有することがより好ましい。このことは、イミダゾール系化合物及び金属石鹸が、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との硬化反応だけではなく、エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応も促進させることができるものであるので、エポキシ樹脂(B)を過剰に含有させた場合であっても、エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応によって、硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。また、硬化促進剤(C)として、イミダゾール系化合物及び金属石鹸等を用いた場合は、特に硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。
本実施形態に係る樹脂組成物には、本発明の目的とする所望の特性を阻害しない範囲で、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、及び硬化促進剤(C)以外の組成を含有してもよい。具体的には、例えば、無機充填材、硬化剤、難燃剤、及び添加剤等が挙げられる。
まず、本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、樹脂組成物の硬化物の、耐熱性や難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、特に限定されない。無機充填材を含有させることによって、耐熱性や難燃性等を高めることができる。また、ポリアリーレンエーテル共重合体を含む樹脂組成物は、一般的な絶縁基材用のエポキシ樹脂組成物等と比較すると、架橋密度が低く、硬化物の熱膨張係数、特に、ガラス転移温度を超えた温度での熱膨張係数α2が高くなる傾向がある。無機充填材を含有させることによって、誘電特性及び硬化物の耐熱性や難燃性に優れ、ワニス状にしたときの粘度が低いまま、硬化物の熱膨張係数、特に、ガラス転移温度を超えた温度での熱膨張係数α2の低減、及び硬化物の強靭化を図ることができる。
無機充填材としては、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、無機充填材としては、そのまま用いてもよいが、エポキシシランタイプ、又はアミノシランタイプのシランカップリング剤で表面処理されたものが、特に好ましい。このようなシランカップリング剤で表面処理された無機充填材が配合された樹脂組成物を用いて得られる金属張積層板は、吸湿時における耐熱性が高く、また、層間ピール強度も高くなる傾向がある。
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、硬化剤を含有してもよい。硬化剤としては、エポキシ樹脂(B)の硬化剤が挙げられる。例えば、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上の、芳香族アミン化合物及びフェノール樹脂等が好ましく用いられ、特に、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上の芳香族アミン化合物がより好ましく用いられる。このような硬化剤を用いることによって、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上の、芳香族アミン化合物及びフェノール樹脂は、エポキシ樹脂(B)の硬化剤として働き、また、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)との相溶性が高いので、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との硬化反応を阻害することなく、エポキシ樹脂(B)の硬化反応を促進できることによると考えられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、難燃剤を含有してもよい。そうすることによって、樹脂組成物の硬化物の難燃性をさらに高めることができる。難燃剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、リン系難燃剤等が挙げられる。リン系難燃剤の具体例としては、例えば、縮合リン酸エステル、環状リン酸エステル等のリン酸エステル、環状ホスファゼン化合物等のホスファゼン化合物、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩等のホスフィン酸塩系難燃剤、リン酸メラミン、及びポリリン酸メラミン等のメラミン系難燃剤等が挙げられる。この中でも、環状ホスファゼン化合物が好ましい。難燃剤として、環状ホスファゼン化合物を用いることによって、樹脂組成物の硬化物の誘電特性や耐熱性を維持しつつ、難燃性を高めることができる。このことは、難燃性を高めつつ、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)とによる架橋形成の阻害を充分に抑制することができることによると考えられる。また、難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、環状ホスファゼン化合物は、シクロホスファゼンとも呼ばれ、リンと窒素とを構成元素とする二重結合を分子内に有する化合物であって、環状構造を有するものである。
また、リン系難燃剤は、10質量%となるように水に分散させた分散液を160℃で24時間処理した後の抽出液のpHが6〜8となり、この抽出液の電気伝導度が100μS/cm以下となるものが好ましく、このような条件を満たす環状ホスファゼン化合物がより好ましい。このようなリン系難燃剤を用いることによって、樹脂組成物の硬化物の誘電特性や耐熱性を維持しつつ、難燃性をより高めることができる。このことは、難燃性を高めつつ、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)とによる架橋形成の阻害を充分に抑制することができるという効果をより発揮することができることによると考えられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、及びアクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、湿潤分散剤等の分散剤等が挙げられる。
また、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率は、60〜85質量%であり、65〜75質量%であることが好ましい。すなわち、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有量は、樹脂組成物全量100質量部に対して、60〜85質量部であり、65〜75質量部であることが好ましい。ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率が低すぎると、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の有する優れた誘電特性を充分に発揮することができない傾向がある。また、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率が高すぎると、樹脂組成物を充分に硬化させることができず、硬化物の耐熱性等が低下する傾向がある。これらのことから、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率が、上記範囲内であれば、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を有し、硬化物の耐熱性に優れ、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生を充分に抑制することができる樹脂組成物が得られる。
また、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)に対するエポキシ樹脂(B)の当量比が、0.5〜2であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましい。ポリアリーレンエーテル共重合体(A)に対するエポキシ樹脂(B)の当量比とは、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)のフェノール性水酸基1個当たりのエポキシ樹脂(B)のエポキシ基の数に相当する。このような範囲内であれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性等により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)のフェノール性水酸基より多くても、エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応によって、硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。また、硬化促進剤(C)として、エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応を促進させうる、イミダゾール系化合物、又はイミダゾール系化合物及び金属石鹸を用いた場合は、特に硬化物の耐熱性の向上に寄与することができると考えられる。
また、樹脂組成物に、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上の芳香族アミン化合物を含む場合、この芳香族アミン化合物もエポキシ樹脂(B)と硬化反応するため、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)及び芳香族アミン化合物に対するエポキシ樹脂(B)の当量比が、0.5〜2であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましい。すなわち、芳香族アミン化合物の含有量は、上記範囲を満たす量であることが好ましい。
また、樹脂組成物に、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含む場合は、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)に対するエポキシ樹脂(B)を含む全エポキシ樹脂の当量比が、0.5〜2であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましい。具体的には、樹脂組成物に、軟化温度が50〜70℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含む場合、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)に対するエポキシ樹脂(B)及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂の当量比が、0.5〜2であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましい。
また、硬化促進剤(C)の含有量としては、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、及び硬化促進剤(C)等の種類によっても異なり、特に限定されない。具体的には、例えば、イミダゾール系化合物と金属石鹸とを併用する場合、イミダゾール系化合物の含有量が、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましい。また、金属石鹸の含有量が、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、0.5〜4質量部であることが好ましい。硬化促進剤(C)の含有量が少なすぎると、硬化促進効果を高めることができない傾向にある。また、硬化促進剤(C)の含有量が多すぎると、成形性に不具合を生じる傾向があり、また、硬化促進剤の含有量が多すぎて経済的に不利となる傾向がある。また、樹脂組成物のライフ性が低下する傾向がある。
また、無機充填材の含有量としては、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、硬化促進剤(C)、及び無機充填材等の種類によっても異なり、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましく、30〜70質量部であることがさらに好ましい。無機充填材の含有量が少なすぎると、無機充填材を含有させることによって発揮しうる効果、例えば、硬化物の耐熱性や難燃性等の向上効果を充分に発揮できない傾向がある。また、無機充填材の含有量が多すぎると、それ以外の成分、例えば、樹脂成分の量が少なくなりすぎ、硬化物の成形性が低下する傾向がある。
また、難燃剤の含有量としては、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、硬化促進剤(C)、及び難燃剤等の種類によっても異なり、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、10〜40質量部であることが好ましい。また、例えば、環状ホスファゼン化合物等のリン系難燃剤の場合、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)とエポキシ樹脂(B)との合計量100質量部に対して、10〜40質量部であることが好ましく、15〜30質量部であることがより好ましい。このような含有量であれば、樹脂組成物の硬化物の誘電特性や耐熱性を維持しつつ、難燃性を高めることができるという効果をより発揮することができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸する目的でワニス状に調製して用いられることが多い。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、通常、ワニス状に調製されたもの(樹脂ワニス)であることが多い。このような樹脂ワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
まず、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)及びエポキシ樹脂(B)等の、有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて用いられ、有機溶媒に溶解しない成分、例えば、無機充填材等を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の樹脂組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)及びエポキシ樹脂(B)等を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエン等が挙げられる。
得られた樹脂ワニスを用いてプリプレグを製造する方法としては、例えば、得られた樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
プリプレグを製造する際に用いられる繊維質基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。偏平処理加工としては、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。
また、繊維質基材の厚みとしては、目的とするプリプレグの厚みに応じて変えればよく、特に限定されないが、例えば、0.04〜0.3mmのものを一般的に使用できる。また、プリプレグの厚みは、その使用態様に応じて異なり、特に限定されないが、0.04〜0.3mmであることが一般的である。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、プリプレグ製造する際に用いた場合、外観不良の発生を抑制する効果が高いので、プリプレグが比較的厚くても、外観不良の発生を充分に抑制することができる。このことから、樹脂組成物の、外観不良の発生を抑制する効果を充分に発揮し、外観不良の充分に抑制された厚いプリプレグが得られるという点から、プリプレグの厚みが、比較的厚い、例えば、0.1〜0.3mmであることが好ましい。
樹脂ワニスの繊維質基材への含浸は、浸漬及び塗布等によって行われる。この含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂ワニスを用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び樹脂量に調整することも可能である。
樹脂ワニスが含浸された繊維質基材は、所望の加熱条件、例えば、80〜170℃で1〜10分間加熱されることにより半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
このようにして得られたプリプレグを用いて金属張積層板を作製する方法としては、プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができるものである。加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグの樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を170〜210℃、圧力を3.5〜4.0Pa、時間を60〜150分間とすることができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を有し、硬化物の、成形性、及び耐熱性に優れた樹脂組成物である。このため、前記樹脂組成物を用いて得られたプリプレグを用いた金属張積層板は、誘電特性、及び耐熱性が優れたプリント配線板を、成形不良の発生が抑制しつつ製造できる、信頼性の高いものである。
そして、作製された積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができるものである。このように得られるプリント配線板は、誘電特性、及び耐熱性が優れ、さらに、成形不良の発生が抑制されたものである。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜10、比較例1〜6>
[樹脂組成物の調製]
本実施例において、樹脂組成物を調製する際に用いる各成分について説明する。
ここで、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度を、固有粘度(IV)を示す。また、ポリアリーレンエーテル共重合体1分子当たりの、分子末端のフェノール性水酸基の平均個数を、末端水酸基数と示す。また、エポキシ樹脂1分子当たりの、エポキシ基の平均個数を、平均エポキシ基数と示す。また、トルエンに対する、25℃における溶解度を、トルエン溶解度と示す。また、難燃剤において、10質量%となるように水に分散させた分散液を160℃で24時間処理した後の抽出液のpHを、抽出液pHと示し、この抽出液の電気伝導度を、電気伝導度と示す。
(ポリアリーレンエーテル共重合体:PAE)
PAE 1:ポリアリーレンエーテル共重合体(SABICイノベーティブプラスチックス社製のMX−90、固有粘度(IV)0.085dl/g、末端水酸基数1.9個、水酸基当量580g/eq、数平均分子量Mn1050)
PAE 2:国際公開第2007/067669号に記載の方法で合成したポリアリーレンエーテル共重合体(固有粘度(IV)0.06dl/g、末端水酸基数1.8個、水酸基当量420g/eq、数平均分子量Mn800)
PAE 3:ポリアリーレンエーテル共重合体(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA−120、固有粘度(IV)0.13dl/g、末端水酸基数0.9個、水酸基当量3400g/eq、数平均分子量Mn3200)
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製のYX4000、150℃におけるICI粘度0.02Pa・s、エポキシ当量192g/eq、平均エポキシ基数2個)
エポキシ樹脂2:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のEXA4700、150℃におけるICI粘度0.4Pa・s、エポキシ当量160g/eq、平均エポキシ基数4個)
エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロン850S、エポキシ当量190g/eq、平均エポキシ基数2個)
エポキシ樹脂4:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロンN680、エポキシ当量190g/eq、軟化温度80℃、平均エポキシ基数6個)
エポキシ樹脂5:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のEPPN501H、軟化温度53℃)
エポキシ樹脂6:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のEPPN502H、軟化温度65℃)
エポキシ樹脂7:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のEPPN501HY、軟化温度59℃)
エポキシ樹脂8:アルキルフェノールモノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(DIC株式会社性のエピクロン520、エポキシ当量235g/eq、平均エポキシ基数1個)
(硬化促進剤)
イミダゾール系化合物:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)
金属石鹸:オクタン酸亜鉛(DIC株式会社製)
(硬化剤)
芳香族アミン化合物:ジエチルトルエンジアミン(アルベマール日本株式会社製のエタキュア100、トルエン溶解度100質量%)
(難燃剤)
難燃剤:環状フェノキシホスファゼン化合物(大塚化学株式会社製のSPB−100、抽出液pH6.8、電気伝導度20μS/cm)
[調製方法]
まず、各成分を表1及び表2に記載の配合割合で、固形分濃度が50質量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その混合物を、80℃になるまで加熱し、80℃のままで30分間攪拌することによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)が得られた。
次に、得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製の♯7628タイプ、Eガラス)に含浸させた後、160℃で約3〜8分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。その際、ポリアリーレンエーテル共重合体、及びエポキシ樹脂等の樹脂成分の含有量(レジンコンテント)が約42質量%となるように調整した。
そして、得られた各プリプレグを所定枚数重ねて積層し、温度180℃、1時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、所定の厚みの評価基板を得た。
具体的には、例えば、得られた各プリプレグを4枚重ねて積層することによって、厚み約0.8mmの評価基板を得た。
上記のように調製された各プリプレグ及び評価基板を、以下に示す方法により評価を行った。
[誘電特性(誘電率及び誘電正接)]
1GHzにおける評価基板の誘電率及び誘電正接を、IPC−TM650−2.5.5.9に準拠の方法で測定した。具体的には、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー株式会社製のRFインピーダンスアナライザ HP4291B)を用い、1GHzにおける評価基板の誘電率及び誘電正接を測定した。
[半田耐熱性]
半田耐熱性は、JIS C 6481に準拠の方法で測定した。具体的には、評価基板を、121℃、2気圧(0.2MPa)、2時間のプレッシャークッカーテスト(PCT)を行い、各サンプルで行い、サンプル数5個で、260℃の半田槽中に20秒間浸漬し、ミーズリングや膨れ等の発生の有無を目視で観察した。ミーズリングや膨れ等の発生が確認できなければ、「○」と評価し、発生が確認できれば、「×」と評価した。また、別途、260℃の半田槽の代わりに、288℃の半田槽を用いて、同様の評価を行った。
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は、IPC−TM−650−2.4.25に準拠の方法で測定した。具体的には、示査走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分の条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。
[難燃性]
評価基板(基板厚み0.5mm)から、長さ125mm、幅12.5mmのテストピースを切り出した。そして、このテストピースについてUnderwriters Laboratoriesの”Test for Flammability of Plastic Materials−UL 94”に準じて、10回燃焼試験を行い、その際の総燃焼時間(秒間)を測定し、その結果から評価した。
[透明性]
得られた樹脂ワニスを、室温まで冷却後1日放置した後、樹脂ワニスの透明性を目視で確認した。透明であると確認できれば、「○」と評価した。また、透明性は多少損なわれているが、浮遊物や沈殿物等が確認できなければ、すなわち、半透明であると確認できれば、「△」と評価した。また、浮遊物や沈殿物等が確認でき、すなわち、濁っていると判断されれば、「×」と評価した。
[プリプレグの外観]
得られたプリプレグを目視で評価した。特に問題を確認できない状態、すなわち、いわゆる粉落ちの発生をほとんど確認できず、均一で平滑性の高い状態であれば、「◎」と評価した。また、粉落ちの発生を少し確認され、発泡による平滑性が多少低下している状態であれば、「○」と評価した。また、粉落ちの発生が確認され、発泡による平滑性の低下が顕著、すなわち、表面の凹凸が顕著であれば、「×」と評価した。
[プリプレグの樹脂流れ性]
各プリプレグの樹脂流れ性は、JIS C 6521に準拠の方法で測定した。
上記各評価における結果は、表1及び表2に示す。なお、当量比は、ポリアリーレンエーテル共重合体(A)及び芳香族アミン化合物に対する全エポキシ樹脂の当量比を示す。
表1及び表2からわかるように、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gであって、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.5〜3個有するポリアリーレンエーテル共重合体(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率が、60〜85質量%である樹脂組成物である場合(実施例1〜10)は、その他の場合(比較例1〜6)と比較して、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を有し、硬化物の耐熱性に優れる。さらに、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生を充分に抑制することができる効果が高い。
具体的には、エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂以外のものを用いた場合(比較例1〜3)は、Tgが低い等の、耐熱性の低いものか、外観不良の発生を充分に抑制できないものであることがわかった。
また、ポリアリーレンエーテル共重合体の含有率が、60質量%未満である場合(比較例4)は、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を充分に発揮できない傾向があった。また、ポリアリーレンエーテル共重合体の含有率が、85質量%を超える場合(比較例5)は、外観不良の発生を充分に抑制できないものであることがわかった。これらのことから、ポリアリーレンエーテル共重合体の含有率は、60〜85質量%であることが、本発明の効果を発揮するのに必要であることがわかった。
また、エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいたとしても、ポリアリーレンエーテル共重合体として、固有粘度(IV)が0.12dl/gを越え、末端水酸基数が1.5個未満のものを用いた場合(比較例6)は、外観不良の発生を充分に抑制できないものであることがわかった。
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gであって、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.5〜3個有するポリアリーレンエーテル共重合体(A)と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、ビフェニル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むエポキシ樹脂(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)の含有率が、60〜85質量%であることを特徴とするものである。
このような構成によれば、ポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を有し、硬化物の耐熱性に優れ、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生を充分に抑制することができる樹脂組成物を提供することができる。
また、前記樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(B)の150℃における粘度が、0.005〜0.5Pa・Sであることが好ましい。
このような構成によれば、誘電特性、及び耐熱性に優れ、さらに、プリプレグを製造する際に用いた場合、外観不良の発生をより抑制することができる。
また、前記樹脂組成物において、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)が、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなることが好ましい。
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、2,6−ジメチルフェノールからなるポリアリーレンエーテル共重合体の有する優れた誘電特性を維持したまま、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と前記エポキシ樹脂(B)との3次元的な架橋を好適に形成できることによると考えられる。
また、前記樹脂組成物において、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)が、前記式(1)で表される化合物であることが好ましい。式(1)中、mは、0〜20を示し、nは、0〜20を示し、mとnとの合計は、1〜30を示す。
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。
また、前記樹脂組成物において、前記硬化促進剤(C)が、イミダゾール系化合物、又はイミダゾール系化合物及び金属石鹸であることが好ましい。
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、イミダゾール系化合物及び脂肪酸金属塩が、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応だけではなく、前記エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応も促進させることができるものであるので、前記エポキシ樹脂(B)を過剰に含有させた場合であっても、前記エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応によって、硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。
また、前記樹脂組成物において、軟化温度が50〜70℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂をさらに含むことが好ましい。
このような構成によれば、Tgを高め、得られた樹脂組成物の硬化物の耐熱性を高め、さらに、プリプレグの外観不良の発生をより抑制することができる。
また、前記樹脂組成物において、リン系難燃剤をさらに含むことが好ましい。また、前記リン系難燃剤が、環状ホスファゼン化合物であることがより好ましい。
このような構成によれば、硬化物の誘電特性や耐熱性を維持しつつ、難燃性を高めることができる。このことは、難燃性を高めつつ、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と前記エポキシ樹脂(B)とによる架橋形成の阻害を充分に抑制することができることによると考えられる。
また、前記樹脂組成物において、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上の、芳香族アミン化合物をさらに含むことが好ましい。
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上の、芳香族アミン化合物は、前記エポキシ樹脂(B)の硬化剤として働き、また、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)との相溶性が高いので、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)と前記エポキシ樹脂(B)との硬化反応を阻害することなく、前記エポキシ樹脂(B)の硬化反応を促進できることによると考えられる。
また、前記樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(B)の、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)及び前記芳香族アミン化合物に対する当量比が、0.5〜2であることが好ましい。
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性等により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基が、前記ポリアリーレンエーテル共重合体(A)のフェノール性水酸基と前記芳香族アミン化合物のアミノ基との合計より多くても、エポキシ樹脂(B)同士の硬化反応によって、硬化物の耐熱性の向上に寄与できることによると考えられる。
また、前記樹脂組成物において、無機充填材をさらに含むことが好ましい。
このような構成によれば、誘電特性及び硬化物の耐熱性や難燃性に優れ、ワニス状にしたときの粘度が低いまま、硬化物の熱膨張係数、特に、ガラス転移温度を超えた温度での熱膨張係数α2の低減、及び硬化物の強靭化を図ることができる。
また、本発明の他の一態様に係る樹脂ワニスは、前記樹脂組成物と溶媒とを含有するものである。
このような構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性に優れ、粘度が低く、流動性の高い樹脂ワニスが得られる。そして、この樹脂ワニスを用いて得られたプリプレグは、プリント配線板等の電子部品を、成形不良の発生を抑制しつつ製造できる。
また、本発明の他の一態様に係るプリプレグは、前記樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させて得られたものである。
このような構成によれば、誘電特性、硬化物の、成形性、及び耐熱性が優れた金属張積層板を製造するのに好適に用いられるものであるので、金属張積層板やプリント配線板を製造する際の成形不良の発生を抑制できる信頼性に優れたものが得られる。
また、本発明の他の一態様に係る金属張積層板は、前記プリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られたものである。
このような構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性が優れたプリント配線板を、成形不良の発生を抑制しつつ製造できる、信頼性に優れた金属張積層板が得られる。
また、本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、前記プリプレグを用いて製造されたものである。
このような構成によれば、誘電特性、及び硬化物の耐熱性が優れ、さらに、成形不良の発生を抑制されたものが得られる。