以下、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の全体構成を示す。
本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像の形成が可能なプロセスカートリッジ方式のレーザービームプリンタである。又、本実施例では、画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)Sとして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色用の画像形成部Sを有する。但し、本実施例では、各画像形成部Sの構成及び動作は、使用するトナーの色を除いて実質的に同一であるので、図1には1つの画像形成部Sのみ示し、代表して1つの画像形成部Sについて説明する。
画像形成部Sは、像担持体としての回転可能なドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図中矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としての露光装置(レーザースキャナー)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、一次転写手段としてのローラ型の転写部材である一次転写ローラ5である。次に、除電手段としての上流ブラシ8である。次に、トナー帯電手段としての回転体である下流ブラシ9である。
又、感光ドラム1に対向するように、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト6が設けられている。中間転写ベルト6は、駆動ローラ61、二次転写対向ローラ62などの複数の支持ローラに掛け渡されている。中間転写ベルト6は、図中矢印R2方向に回転駆動される。一次転写ローラ5は中間転写ベルト6の内周面側に配置されており、中間転写ベルト6を感光ドラム1に向けて押圧して、中間転写ベルト6と感光ドラム1との接触部である一次転写部N1を形成している。又、中間転写ベルト6の外周面側には、二次転写対向ローラ62に対向する位置に、二次転写手段としてのローラ型の転写部材である二次転写ローラ7が配置されている。二次転写ローラ7は、中間転写ベルト6を介して二次転写対向ローラ62に押圧され、中間転写ベルト6と二次転写ローラ7との接触部である二次転写部N2を形成している。
又、画像形成装置100は、記録材Pを収容するカセット10、カセット10から記録材Pを送り出す給送ローラ11、記録材Pの搬送タイミングを制御するためのレジストローラ12、記録材Pにトナー像を定着させる定着手段としての定着装置13などを有する。
画像形成時には、回転する感光ドラム1の表面が帯電ローラ2によって所定の極性(本実施例では負極性)及び電位に一様に帯電させられる。このとき、帯電ローラ2には、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電した感光ドラム1の表面は、露光装置3によって画像情報に応じた情報光(光像)で露光され、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によってトナーが供給されて、トナー像として現像(可視像化)される。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ5によって中間転写ベルト6に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ5には、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性である正極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、複数の画像形成部Sで形成された、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト6上に順次に重ね合わせて転写(一次転写)される。
中間転写ベルト6上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ7によって紙などの記録材(記録媒体)Pに転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ7には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性である正極性の二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
トナー像が転写された記録材Pは、定着装置13へと搬送され、ここで加熱及び加圧されてその上にトナー像が定着される。その後、記録材Pは、画像形成装置100の本体(装置本体)110の外部に排出される。
一方、トナー像を記録材Pに転写した後の感光ドラム1の表面は上流ブラシ8によって除電され、又感光ドラム1上に残留した転写残トナーは下流ブラシ9によって負極性に帯電させられる。このとき、上流ブラシ8には、正極性の電圧(除電バイアス)が印加され、又下流ブラシ9には負極性の電圧(トナー帯電バイアス)が印加される。感光ドラム1上の負極性に帯電した転写残トナーは、現像装置4の現像スリーブ41に印加される負極性の現像バイアスにはじかれて、現像装置4の現像剤収容部42内に回収される。
2.プロセスカートリッジの全体的な構成
次に、本実施例の画像形成装置100に用いられるプロセスカートリッジ50の全体的な構成について説明する。
図2は、本実施例におけるプロセスカートリッジ50の断面図であり、図3は、本実施例におけるプロセスカートリッジの外観斜視図である。
一般的に、プロセスカートリッジは、感光体と、感光体に作用するプロセス手段の少なくとも1つと、を一体的にカートリッジ化して、画像形成装置の本体に着脱可能としたものである。ここで、プロセス手段としては、例えば、感光体を帯電させる帯電手段、感光体に形成された静電潜像を現像する現像手段、感光体に残留するトナーをクリーニングするためのクリーニング手段などがある。又、プロセス手段としては、画像形成装置がクリーナレスシステムを採用する場合などに設けられる、感光体を除電する除電手段、感光体上のトナーを帯電させるトナー帯電手段などが含まれてもよい。
本実施例では、プロセスカートリッジ50は、ドラム型の感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、装置本体110内の光学系からの画像情報に基づいた情報光(光像)が、プロセスカートリッジ50の露光開口58を通して露光されるようになっている。又、本実施例では、プロセスカートリッジ50は、プロセス手段として、帯電手段としての帯電ローラ2、現像手段としての現像装置4、除電手段としての上流ブラシ8、トナー帯電手段としての下流ブラシ9を有する。
本実施例では、感光ドラム1は、負帯電性のOPC(有機光導伝体)の感光層を有する有機感光体ドラムである。又、本実施例では、感光ドラム1の外径は30mmである。
本実施例では、帯電ローラ2は、直径8mmの芯金2aと、その外周に外径14mmとなるように形成された弾性層2bとを有する。弾性層2bは、例えばエチレンプロピレンゴムやニトリルゴムやエピクロロヒドリンゴムなどに添加剤を加え抵抗値を調整した弾性材料で形成することができる。詳しくは後述するように、帯電ローラ2は、使用時には弾性層2bが感光ドラム1の表面に接触するように、感光ドラム1に向けて押圧される。一方、詳しくは後述するように、帯電ローラ2は、プロセスカートリッジ50の使用開始前の輸送又は保管中などには、感光ドラム1の表面から離間されている。
上流ブラシ8は、基部8aにブラシ部8bが形成された、デッキブラシ状のブラシであり、感光ドラム1の表面にそのブラシ部8bが接触するように固定して配置されている。
下流ブラシ9は、芯金9aの外周にブラシ部9bが形成されたローラ状のブラシ(ブラシローラ)であり、感光ドラム1の表面にブラシ部9bが接触して回転可能なように配置されている。
現像装置4は、現像剤としてのトナーを収容する現像剤収容部42を有し、この現像剤収容部42の開口部に位置して感光ドラム1に対向するように現像剤担持体としての回転可能な現像スリーブ41が配置されている。現像スリーブ41は、現像剤収容部42に対して固定して配置された、磁界発生手段としての固定磁石(マグネットローラ)を内蔵している。現像剤収容部42内に配置された現像剤送り手段としての回転可能な送り部材43は、現像剤収容部42内のトナーを現像スリーブ41に向けて送り出す。そして、現像スリーブ41が回転し、現像ブレード44によって摩擦帯電電荷が付与されたトナーの層が、現像スリーブ41の表面に形成される。このトナー層のトナーが、静電潜像に応じて感光ドラム1に転移させられることによって、感光ドラム1の表面にトナー像が形成される。
本実施例では、プロセスカートリッジ50は、上述のような各手段を複数の枠体によって支持し、これらの枠体が結合されることで、一体的に装置本体110に着脱可能なカートリッジにまとめられている。即ち、プロセスカートリッジ50は、上流ブラシ8、下流ブラシ9が組み込まれる第1の支持枠体51を有する。又、プロセスカートリッジ50は、現像装置4の現像ブレード44と現像スリーブ41が組み込まれる第2の支持枠体52を有する。又、プロセスカートリッジ50は、現像剤収容部42を形成し、感光ドラム1を回転可能に支持すると共に、帯電ローラ2が組み込まれる第3の支持枠体(以下「容器枠体」という。)53を有する。又、プロセスカートリッジ50は、容器枠体53の長手方向の一方の側面に取り付けられる第1の側部部材(側面カバー)54を有する。又、プロセスカートリッジ50は、容器枠体53の長手方向の他方の側面において感光ドラム11を回転可能に支持する第2の側部部材(ドラム支持部材)55を有する。更に、プロセスカートリッジ50は、プロセスカートリッジ50を装置本体110から取り出すための把手56と、容器枠体53の上面を覆う上カバー57と、を有する。
3.帯電ローラと感光ドラムとの離間機構
次に、帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる機構について説明する。
図4は、第1の側部部材54を外した状態のプロセスカートリッジ50の外観斜視図である。図5は、図4のA−A線断面図であり、帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した状態を示す。
本実施例では、プロセスカートリッジ50は、帯電ローラ2を回転可能に支持すると共に、プロセスカートリッジ50の使用開始前の輸送又は保管中などには帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させる支持体(帯電ローラ支持体)21を有する。
図6(a)は支持体21の側面図、図6(b)は底面が現れた斜視図である。
支持体21は、帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)の端部の回転軸2aを回転可能に支持する、円弧状の面で構成された内周部21fを有する。又、支持体21は、円筒形状の感光ドラム1の表面に接触する、円弧状の面で構成された当接部21aを有する。当接部21aは、感光ドラム1の外径の半分の半径を有するR面とされている。又、支持体21は、感光ドラム1の回転力が伝達される駆動受け部21bを有する。駆動受け部21bは、下流ブラシ9の長手方向(回転軸線方向)の端部の回転軸9aに取り付けられた駆動伝達部としての支持体駆動ギア22と噛み合う歯面を有する歯形形状とされている。又、支持体21は、容器枠体53の案内部53a、53b、53c、53d(図8)の面(案内面)に沿って摺動することができる、円弧状の面で構成された外周部(外周面)21dを有する。
更に説明すると、支持体21は、周方向の一部に開口部21gが設けられた略円筒形状の軸受部21hと、この軸受部21hの外周の一部から軸受部21hの半径方向の外側に突出するように設けられた離間部21iと、を有する。離間部21iは、軸受部21hの開口部21gを除く略半周に設けられている。又、離間部21iは、軸受部21hの中心軸線方向に所定の厚さを有する板状形状とされ、軸受部21hとの結合部における離間部21hの両側に軸受部21hの外周が露出するようになっている。又、後述する摺動部21cと軸受部21hとの結合部における摺動部21cの両側に軸受部21hの外周が露出するようになっている。この軸受部21hの内周が帯電ローラ2の回転軸2aを摺動可能に受け入れる内周部21fとされ、軸受部21hの露出した外周が、容器枠体53の案内部53a〜53dに沿って摺動する外周部21dとされる。そして、離間部21iの外側面の一部に、感光ドラム1の外周面と当接する当接部21aが形成されている。本実施例では、当接部21aは、感光ドラム1の外周面と適合する円弧状の面を有する。又、離間部21iの外側面の他の一部に、支持体21が帯電ローラ2の回転軸2aを中心として回転するための駆動力が伝達される駆動受け部21bが形成されている。本実施例では、支持体21がプロセスカートリッジ50に組み込まれた状態で、当接部21aは、駆動受け部21bよりも、帯電ローラ2の回転方向の下流側に形成されている。
詳しくは後述するように、支持体21は、感光ドラム1と帯電ローラ2とを離間させるスペーサー(離間部材)として機能する第1の位置(図10(a)参照)をとり得る。又、支持体21は、感光ドラム1と帯電ローラ2とが当接するように帯電ローラ2の軸受として機能する第2の位置(図10(d)参照)をとり得る。このように、支持体21は、感光ドラム1に対して、位置と角度とが切り替わるように動作する。
支持体21が帯電ローラ2の軸受として機能する第2の位置にある時に付勢部材25の端面が当接するように、平面状の底面部(平面部)21eが設けられている(図10(d)参照)。この底面部21eの角度は、付勢部材25の端面と平行になるように規定される。本実施例では、付勢部材25として、圧縮コイルばねを使用した。
支持体21の軸受部21hの開口部21gは、支持体21が帯電ローラ2の軸受として機能する第2の位置にある時に感光ドラム1に向かうように、その方向を位置付けられている(図10(d)参照)。即ち、開口部21gと底面部21eとは、軸受部21hの周方向において、対向する位置に設けられている。本実施例では、開口部21gは、次のような目的で設けられている。即ち、支持体21が、帯電ローラ2の芯金2aとの摺動で変形(膨張等)し、帯電ローラ2の芯金2aや容器枠体53に設けられた支持体21の案内部53a〜53dに食い付き、摩擦力が増加するのを防ぐためである。つまり、支持体21が変形(膨張等)しても、支持体21の形状の一部をカットすることで、内周部21fと外周部21dが、それぞれ帯電ローラ2の芯金2aや容器枠体53に設けられた支持体21の案内部53a〜53dに当接できるようにしている。
又、支持体21の底面部21eを挟んで離間部21iとは反対側の外周の一部から離間部21iの半径方向の外側に突出するように、円弧状の摺動部(円弧部)21cが形成されている。この摺動部21cは、支持体21が第1の位置と第2の位置との間で移動する間、付勢部材25の端面が当接して、これを案内する。摺動部21cは、底面部21eに連続して設けられている。これにより、図11に示すように、支持体21がスペーサーとして機能する第1の位置と軸受として機能する第2の位置とに、位置と角度が切り替わるように動作しても、付勢部材25の端面が摺動部21cから底面部21eに沿って摺動できる。そのため、支持体21に作用する付勢部材25の付勢力は、常に、感光ドラム1に向かう方向に作用する。尚、図11は、支持体21が移動する際の、支持体21と付勢部材25の付勢力(矢印で表示)との位置関係を示す。
ここで、本実施例では、感光ドラム1の表面を均一に帯電させるために、帯電ローラ2を感光ドラム1に付勢する力は、7.7N必要であった。又、本実施例では、感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)の両端に、付勢部材25は各1個ずつ設けられる。又、本実施例では、帯電ローラ2と2個の支持体21との合計の重量が1.8Nある。これらのことより、付勢部材25の1個当たりが帯電ローラ2に加える付勢力は4.75Nとなる。
この所定の付勢力を得るために、本実施例では、付勢部材25として、線径(直径)0.45mm、内径3.5mm、自由長10.4mm、有効槇数5.5のばね鋼から成り、端部形状を平らに加工したクローズドエンド形状のコイルばねを使用した。又、本実施例では、支持体21が、感光ドラム1と帯電ローラ2とが当接する第2の位置にある時(図10(d)参照)の付勢部材25の長さLdは、6.4mmに設定した。
上述のような圧力で、長期間、帯電ローラ2が感光ドラム1に当接すると、弾性層2bの接触位置に相当する部位が変形を起こすことがある。プロセスカートリッジ50は、装置本体110に対して必要時に交換する消耗品であり、保管期間が1年を超える長期にわたる場合も想定される。そして、このような変形が起きると、帯電能力が変化することがあり、濃度ムラなどの画像不良が生じる場合がある。又、感光ドラム1の表面においても、プロセスカートリッジ50の使用開始前の輸送又は保管中などの振動などにより、感光ドラム1と帯電ローラ2とが摺擦し、感光ドラム1の面に帯電メモリとして履歴が残ることがある。又、帯電ローラ2の弾性層2bが長期間にわたり感光ドラムに接触したままとされることによって、弾性層2bからしみ出した物質によって、感光ドラム1の表面が汚染されることもある。これにより、濃度ムラなどの画像不良が生じる場合がある。従って、感光ドラム1と帯電ローラ2とは使用開始時まで、離間させておくことが望まれる。
このように、本実施例の目的の一つは、プロセスカートリッジ50の使用開始前に帯電ローラ2が感光ドラム1と当接したままとされることによって生じる帯電ローラ2の変形や感光ドラム1の表面の帯電メモリや汚染などの発生を抑制することである。特に、本実施例では、プロセスカートリッジ50のサイズの増加を抑制しつつ、プロセスカートリッジ50の内部の簡単な機構で、上記帯電ローラ2の変形などの抑制を達成することである。
次に、帯電ローラ2、支持体21及び付勢部材25の容器枠体53への組み付け方法について説明する。
図7は、帯電ローラ2、支持体21及び付勢部材25を容器枠体53に組み込む状態の組立斜視図である。又、図8(a)は、図7中の円で囲んだ部位を拡大した図であり、図8(b)はその要部を更に拡大した図である。
容器枠体53には、支持体21の外周部21dを案内する案内部53a、53b、53c、53dが設けられている。案内部53a〜53dは、容器枠体53の底部53iから感光ドラム1側に向けて起立して設けられている。案内部53a、53bは、支持体21における底面部21eよりも摺動部21cが設けられた側の略半周の外周部21dであって、摺動部21cの一方の面側と他方の面側の外周部21dをそれぞれ案内する。又、案内部53c、53dは、支持体21における底面部21eよりも離間部21iが設けられた側の略半周の外周部21dであって、離間部21iの一方の面側と他方の面側の外周部21dをそれぞれ案内する。
又、容器枠体53には、組み立て時に付勢部材25によって帯電ローラ2が押し出されるのを防止する爪部53eが設けられている。爪部53eは、容器枠体53の底部53iから感光ドラム1側に向けて起立して設けられている。そして、爪部53eの頭部53e1が帯電ローラ2の長手方向の内側に向けて突出しており、組み立て時にこの頭部が帯電ローラ2の長手方向の端部の回転軸2aに弾発的に係合する。
又、容器枠体53の底部53iの案内部53a〜53dと爪部53eに囲まれた領域である支持体配置部53fには、付勢部材25を保持する付勢部材保持部53gと、付勢部材25の配置時又はその伸縮時にこれを案内する付勢部材案内部53hが設けられている。
本実施例では、付勢部材保持部53gは、容器枠体53の底部53iから感光ドラム1側に向けて突出した、付勢部材25の半径方向に複数(本実施例では4個)の保持作用部53g1を等間隔に有する突起とされている。付勢部材保持部53gは、その外接円が付勢部材25の内径3.5mmよりわずかに小さい径(例えば、内径3mm程度)となるように形成されている。又、付勢部材保持部53gは、容器枠体53の底部(底面)53iからの高さが、圧縮時の付勢部材25の同方向の長さよりも1〜2mm程度低く設定されている(本実施例では3mm)。これにより、付勢部材25の一方の端部(容器枠体53の底部53i側)が付勢部材保持部53gによって保持され、他方の端部(感光ドラム1側)が支持体21と摺擦しても、感光ドラム1の中心方向に向かうように、付勢部材25の姿勢が保たれる。又、付勢部材案内部53hは、付勢部材保持部53上から感光ドラム1側に突出し、その外接円が付勢部材保持部53gの外接円よりも小さい径となるように形成された、付勢部材保持部53gと同様の形状の突起とされている。
組み立て時には、付勢部材保持部53gに内周を嵌合させるように付勢部材25を支持体配置部53fに配置する。その上から、支持体21を嵌合させた帯電ローラ2の長手方向の端部の回転軸2aを、支持体配置部53f内に配置する。このとき、支持体21は、離間部21iが案内部53c、53dとの間のスリット53jを通され、外周部21dが案内部53a〜53dに案内される。そして、この帯電ローラ2の回転軸2aを、付勢部材25の弾性力に抗して容器枠体53の底部53iに向けて押圧する。これにより、爪部53eが回転軸2aの端部に係合して、帯電ローラ2は、容器枠体53内に、そこから抜けないように配置される。その後、支持体21は、後述するように、離間部21iの駆動受け部21bが下流ブラシ9の長手方向の端部の回転軸9aに取り付けられた支持体駆動ギア22と噛み合わされて、感光ドラム1と帯電ローラ2とを離間させる第1の位置に配置させられる。
尚、本実施例のプロセスカートリッジ50では、感光ドラム1の長手方向の中央を基準とした対称位置に、同様の構成の支持体21が配置されており、同様の構成により組み付けられ、そして同様の構成により駆動されるようになっている。
次に、プロセスカートリッジ50における支持体21の駆動方法について説明する。
図9は、支持体21が回転する際の駆動伝達構成を示す斜視図である。
感光ドラム1の長手方向における両側の支持体21は、離間部21iの駆動受け部21bが、下流ブラシ9の長手方向の両端部の回転軸9aに取り付けられた、駆動伝達部としての支持体駆動ギア22とそれぞれ噛み合う。又、下流ブラシ9の長手方向の一方の端部の回転軸9aに取り付けられた下流ブラシ駆動ギア26は、感光ドラム1の長手方向の一方の端部に取り付けられた端部部材としてのフランジ27に形成されたドラムフランジギア27aと噛み合う。
図10(a)〜(d)は、第1の位置から第2の位置までの支持体21の動きを順に示している。同図を参照して、支持体21の動作について更に説明する。
図10(a)は、容器枠体53に支持体21が組み込まれ、帯電ローラ2が感光ドラム1から離間した初期状態を示す。同図において、支持体21は、付勢部材25の付勢力によって、当接部21aにおいて感光ドラム1に押し付けられ、且つ、駆動受け部21bにおいて支持体駆動ギア22に押し付けられる。これにより、感光ドラム1と帯電ローラ2とを離間させるスペーサーとして、安定した状態を保っている。この時、付勢部材25の長さLaを約4mmと小さくすることで、帯電ローラ2にかかる合計の付勢力は14.2Nとなる。この値は、帯電ローラ2と2個の支持体21との合計の重量1.8Nの約8倍ある。そのため、プロセスカートリッジ50に衝撃が加わっても、感光ドラム1と帯電ローラ2との離間状態を安定して保つスペーサーとして機能することができる。
次に、図10(b)に示すように、感光ドラム1に回転駆動力が伝達されると、感光ドラム1は図中矢印R1方向に回転し始める。これにより、図9に示すようにドラムフランジギア27aと下流ブラシ駆動ギア26とが噛み合っているので、下流ブラシ駆動ギア26と同軸上に取り付けられている支持体駆動ギア22も図中矢印R3方向に回転する。そして、支持体駆動ギア22と支持体21の駆動受け部21bとが噛み合っているので、支持体駆動ギア22の回転に伴い、支持体21が図中矢印R4方向に回転する。この時、支持体21は、容器枠体53に形成された案内部53a〜53dによって案内されている。そのため、支持体21は、支持体駆動ギア22の歯面に押されて、付勢部材25を図中矢印A1方向(圧縮させる方向)に押しながら、支持体駆動ギア22が駆動受け部21bの歯形形状の終端を過ぎるまで回転しながら移動する。
次に、図10(c)に示すように、支持体21は、支持体駆動ギア22が駆動受け部21bの歯形形状の終端を過ぎると、支持体駆動ギア22との噛み合いによって押されることが無くなる。そのため、付勢部材25の押圧力により支持体2は図中矢印A2方向(感光ドラム1に向かう方向)に移動し、これにより帯電ローラ2も同方向に移動して感光ドラム1と当接する。
最終的に、図10(d)に示すように、支持体21は、底面部21eの面が付勢部材25の端部の面と等しくなるまで図中矢印R4方向に更に回転し、安定した位置になる。この位置で、支持体21の駆動受け部21bは、支持体駆動ギア22から所定の間隙G1を有して完全に離間する。又、この位置で、支持体21の当接部21aは、感光ドラム1の表面から所定の間隙G2を有して完全に離間する。この状態で、付勢部材25の長さLdは6.4mmとなり、前述のように、帯電ローラ2を感光ドラム1に付勢する力は7.7Nとなる。これにより、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を均一に帯電させることが可能となる。
このように、本実施例では、プロセスカートリッジ50は、回転可能な感光体1と、感光体1に当接し感光体1を帯電させる帯電ローラ2と、を有する。又、プロセスカートリッジ50は、帯電ローラ2の回転軸2aを回転可能に支持する支持体21と、支持体21を感光体1に向けて付勢する付勢部材25と、を有する。支持体21は、帯電ローラ2の回転軸2aを摺動可能に受け入れる軸受部21hと、感光体1と当接する当接部21aと、帯電ローラ2の回転軸2aを中心として回転するための駆動力が伝達される駆動受け部21bと、を有する。又、支持体21は、プロセスカートリッジ50の使用開始時に、駆動受け部21bに感光体1の回転力が伝達されることで、付勢部材25の付勢力に抗して、第1の位置から、第2の位置へと、帯電ローラ2の回転軸2aを中心として回転する。第1の位置は、帯電ローラ2が感光体1から離間した状態で帯電ローラ2の回転軸2aを支持する位置である。又、第2の位置は、帯電ローラ2が感光体1に当接した状態で帯電ローラ2の回転軸2aを支持する位置である。そして、第1の位置では、当接部21aが感光体1に当接すると共に、駆動受け部21bが該駆動受け部21bに感光体1の回転力を伝達する駆動伝達部22と係合して、軸受部21hが付勢部材25の付勢力に抗して感光体1から離間する方向に押し付けられる。又、第2の位置では、当接部21aが感光体1から離間すると共に、駆動受け部21bが駆動伝達部22から離間して、軸受部21hが付勢部材25の付勢力によって感光体1に向かう方向に押し付けられる。
本実施例では、プロセスカートリッジ50は、支持体21が回転する際に軸受部21hを案内する案内部53a〜53dを有し、支持体21は案内部53a〜53dによって案内される円弧状の外周部21dを有する。又、本実施例では、支持体21は、付勢部材25が接触する平面状の底面部21eを有する。又、本実施例では、支持体21は、支持体21が第1の位置から第2の位置に向けて回転する際に付勢部材25がその上を摺動する、底面部21eに連続して設けられた摺動部21cを有する。又、本実施例では、支持体21には、感光ドラム1の回転力が伝達されて回転する回転体の回転軸に取り付けられた駆動伝達部から、感光ドラム1の回転力が伝達される。この回転体としては、感光ドラム1に当接し、これを除電又は帯電させる回転体が好適であり、本実施例では、感光ドラム1の回転方向において帯電ローラ2の上流側に隣接して配置された下流ブラシ9が用いられる。
本実施例によれば、新たに付加される部品は、支持体21を回転させるための支持体駆動ギア22のみでよい。そのため、簡単な構成で、所望の効果を達成することができる。
又、プロセスカートリッジ50の組み立てにおいては、帯電ローラ2の長手方向の両側において、従来の軸受に換えて支持体21を組み込めばよい。そのため、従来の組立性を損なうことはない。同様に、プロセスカートリッジ50の解体時にも、従来の作業性が変わることはない。
又、支持体21には、支持体21が帯電ローラ2の軸受として機能する第2の位置にある時に付勢部材25の端面が当接するように底面部21eを設け、その底面部21eの角度を付勢部材25の端面と平行になるように規定する。又、この底面部21eの角度が付勢部材25の端面と平行になる前に、駆動受け部21bと支持体駆動ギア22との係合が解除され、駆動受け部21bに対する支持体駆動ギア22からの駆動伝達が終了するようになっている。そのため、最終的に、支持体21は、底面部21eが付勢部材25の端面に密着するまで、付勢部材25の付勢力によって回転する(図10(d))。これにより、支持体21の駆動受け部21bは、支持体駆動ギア22から完全に離間し、回転する支持体駆動ギア22に触れることは無い。従って、画像形成動作中に支持体21の駆動受け部21bが支持体駆動ギア22に触れることで帯電ローラ2が振動して、感光ドラム1の帯電が不均一になり、濃度ムラなどの画像不良が発生することは無い。
以上、本実施例によれば、帯電ローラ2の軸受部材として機能する支持体21が、感光ドラム1から帯電ローラ2を離間させるためのスペーサー(離間部材)の機能も兼ね備えている。そのため、帯電ローラ2を感光ドラム1から離間させるために、帯電ローラ2の軸受部材の他に、改めて別の離間部材を用いなくてもよい。従って、帯電ローラ2や感光ドラム1の長手方向の寸法に対して、更にスペーサーの機構の分の長さが必要になることで同方向におけるプロセスカートリッジ50や画像形成装置100のサイズなどが増加することを抑制することができる。これにより、プロセスカートリッジ50や画像形成装置100のコンパクト化を図ることが可能である。又、帯電ローラ2の軸受部材と感光ドラム1から帯電ローラ2を離間させるためのスペーサーが一部品でよい。そのため、軸受部材とスペーサーとが別部材である場合には、それぞれの部品で部品間の位置保証をしていたものが、一部品で達成できる。従って、精度管理する部品が少なくなり、部品管理が容易となり、プロセスカートリッジ50や画像形成装置100の性能向上に繋がる。
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、支持体駆動ギアは、下流ブラシの回転軸に取り付けられていた。しかし、これに限定されるものではなく、支持体駆動ギアは、プロセスカートリッジを構成する枠体などに回転可能に設けられていてもよい。又、上記実施例における下流ブラシ駆動ギアなど、支持体以外の被駆動部材に駆動を伝達するギアを支持体駆動ギアとして兼用してもよい。又、感光体から、複数のギアなどの複数の部材を介して、支持体に回転力が伝達されてもよい。感光体の回転開始に伴い、感光体の回転力を支持体に伝達して、支持体を第1の位置から第2の位置に移動させられればよい。
又、支持体への駆動の伝達は、ギアの噛み合いによるものに限定されるものではない。例えば、支持体の駆動受け部と駆動伝達部との摩擦係合により、支持体に駆動を伝達してもよい。
又、支持体は、感光体の外周面に当接することに限定されるものではなく、感光体の長手方向(回転軸線方向)の端部に取り付けられて一体的に回転する端部部材としてのフランジなどに当接してもよい。
又、本発明は、上記実施例のように、帯電ローラがプロセスカートリッジとして画像形成装置の本体に対して容易に着脱して交換可能とされている態様に限定されるものではない。帯電ローラが画像形成装置に搭載された状態で出荷される場合であっても、使用開始前の輸送又は保管中などに帯電ローラが感光体に当接したままとされないように、これを感光体から離間させて出荷することが望まれることがある。このように、帯電ローラが画像形成装置に搭載された状態で、感光体から離間される構成となっている場合も、本発明を等しく適用することができ、上記同様の効果を奏することができる。