以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1の左斜め下方、右斜め上方、右斜め下方、左斜め上方は、夫々、工作機械1の前方、後方、右方、左方である。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向を、夫々、工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とする。図1に示す工作機械1は複合加工機である。複合加工機はワーク(被加工物)に回転加工及び旋削加工を選択的に施すことができる。
図1〜図3を参照して、工作機械1の構造について説明する。工作機械1は、基台部2、Y軸移動機構、運搬体12、X軸移動機構、コラム5、Z軸移動機構、主軸ヘッド7、主軸8、ワーク保持装置80、自動工具交換装置(以下「ATC」と呼ぶ)30等を備える。
基台部2はY軸方向に長い矩形箱状の鉄製部材である。基台部2は下部四隅に脚3を夫々備える。基台部2は上面に台座部4、右側支持部18、左側支持部19を備える。台座部4は基台部2上面後部側に設けてある。台座部4は例えば略直方体状である。右側支持部18及び左側支持部19は台座部4よりも低い高さの台座である。右側支持部18は基台部2上面右前側に配置する。左側支持部19は基台部2上面左前側に配置する。右側支持部18及び左側支持部19はワーク保持装置80を下方から支持する。
Y軸移動機構は台座部4上面に設けてある。Y軸移動機構は運搬体12をY軸方向に移動する。Y軸移動機構は一対のY軸レール61,62、Y軸ボールネジ63、Y軸モータ52(図4参照)等を備える。Y軸レール61,62は台座部4上面の左右方向両端部に沿って設けてある。Y軸ボールネジ63はY軸レール61,62の間に設けてある。運搬体12はY軸レール61,62に沿って移動可能である。運搬体12は例えば所定厚を有する金属製板部材である。運搬体12は下面にナット(図示略)を備える。ナットはY軸ボールネジ63に螺合する。Y軸モータ52はY軸ボールネジ63を回転する。運搬体12はナットと共にY軸方向に移動する。
X軸移動機構は運搬体12上面に設けてある。X軸移動機構はコラム5をX軸方向に移動する。X軸移動機構は一対のX軸レール71,72、X軸ボールネジ73、X軸モータ51(図4参照)等を備える。X軸レール71,72、X軸ボールネジ73はX軸方向に延設する。X軸レール71は運搬体12上面後側、X軸レール72は運搬体12上面前側に配置する。X軸ボールネジ73はX軸レール71,72の間に配置する。コラム5はX軸レール71,72に沿って移動可能である。コラム5は下面にナット(図示略)を備える。ナットはX軸ボールネジ73に螺合する。X軸モータ51はX軸ボールネジ73を回転する。コラム5はナットと共にX軸方向に移動する。コラム5は運搬体12を介してY軸方向に移動する。即ち、コラム5はY軸移動機構、X軸移動機構、運搬体12によって、X軸方向及びY軸方向に移動可能となる。
コラム5は右側面下部に保護カバー16、左側面下部に保護カバー17、背面下部にカバー13を備える。保護カバー16はコラム5右側面から右側方において露出するX軸移動機構を覆う。保護カバー17はコラム5左側面から左側方において露出するX軸移動機構を覆う。保護カバー16,17はコラム5のX軸方向への移動に追従して移動する。カバー13はコラム5の背面後方において露出するY軸移動機構を覆う。カバー13はコラム5のY軸方向への移動に追従して伸縮する。保護カバー16,17、カバー13はX軸移動機構及びY軸移動機構内に切粉及び切削液が侵入するのを防止する。
Z軸移動機構はコラム5前面に設けてある。Z軸移動機構は主軸ヘッド7をZ軸方向に移動する。Z軸移動機構は一対のZ軸レール(図示略)、Z軸ボールネジ(図示略)、Z軸モータ53(図6参照)等を備える。Z軸レール、Z軸ボールネジはZ軸方向に延設する。Z軸ボールネジは一対のZ軸レールの間に配置する。主軸ヘッド7はZ軸レールに沿って移動可能である。主軸ヘッド7は背面にナット(図示略)を備える。ナットはZ軸ボールネジに螺合する。Z軸モータ53はZ軸ボールネジを回転する。主軸ヘッド7はZ軸方向に移動する。保護カバー28は主軸ヘッド7上部後側に固定してある。保護カバー28は主軸ヘッド7と共に上下動することでコラム5前面を覆う。コラム5は前面にZ軸シャッター27を備える。Z軸シャッター27は主軸ヘッド7の上下動に従い伸縮する。Z軸シャッター27はZ軸移動機構内に切粉及び切削液が侵入するのを防止する。
主軸ヘッド7はZ軸駆動機構によりコラム5前面に沿って昇降する。主軸8は主軸ヘッド7下部に設けてある。主軸8は工具装着部(図示略)を備える。工具装着部は例えばテーパ状の孔部である。工具装着部は工具TA,TBを装着する。工具TAは回転加工用の工具である。工具TBは旋削加工用の工具である。以下、工具TA,TBを総称する場合は工具Tと称する。主軸モータ54は主軸ヘッド7上面前側に設けてある。主軸モータ54は主軸8を回転する。ケーブルベア(登録商標)29は主軸ヘッド7上部とコラム5上部との間に設けてある。
図1〜図3を参照して、ワーク保持装置80の構造について説明する。ワーク保持装置80は、右側固定部88、左側固定部89、治具固定テーブル81、C軸モータ56、C軸82、チルトモータ57等を備える。右側固定部88は右側支持部18の上面に固定する。左側固定部89は左側支持部19の上面に固定する。
治具固定テーブル81は、テーブル部81A、右連結部81B、左連結部81Cを備える。C軸モータ56は治具固定テーブル81の下面側に設けてある。C軸82は治具固定テーブル81の略中央に設けてある。C軸82は円柱状である。C軸82はC軸モータ56の回転軸に連結する。治具(図示略)はC軸82の上面に固定する。治具は例えば円柱状で且つC軸82と同軸上に配置する。治具はワークを保持する。C軸82の軸線方向はテーブル部81A表面に対して直交する。故に治具はC軸82と共に回転可能である。
右連結部81Bはテーブル部81Aから右上方向に延出し且つ右側固定部88にX軸回りに回転可能に連結する。左連結部81Cはテーブル部81Aから左上方向に延出し且つ左側固定部89にX軸回りに回転可能に連結する。チルトモータ57は右側固定部88に固定してある。チルトモータ57は治具固定テーブル81をX軸回りに回転する。チルトモータ57の回転軸は右連結部81Bと連結する。
治具に固定したワークは、C軸モータ56の駆動によりC軸82の軸回りで回転する。治具に固定したワークは、チルトモータ57による治具固定テーブル81の回転に関わらず、C軸モータ56の駆動によりテーブル部81Aに対して直角な軸回りで回転する。
図1〜図3を参照して、ATC30の構造について説明する。ATC30は、工具マガジン31、マガジン支持部材32、マガジンモータ55、駆動ギヤ35等を備える。マガジン支持部材32は楕円状の金属製板部材である。マガジン支持部材32は、主軸ヘッド7及びコラム5を内側に挿入した状態で、コラム5に取り付けてある。工具マガジン31は前方から後方に従って上方に向かって傾斜している。
工具マガジン31はマガジン支持部材32の外周に沿って取り付けてある。工具マガジン31はチェーン34、複数のポット37を備える。チェーン34はマガジン支持部材32の外周に沿って移動可能に取り付けてある。複数のポット37はチェーン34に夫々取り付けてある。本実施形態の工具マガジン31は例えば21本のポット37を備える。ポット37は工具Tを保持可能である。ポット37は例えばアーム状に形成し且つ揺動可能に取り付けてある。
マガジンモータ55はマガジン支持部材32の上部に取り付けてある。マガジンモータ55の駆動軸はマガジン支持部材32の上面に直交する。マガジンモータ55の駆動軸は正逆何れの方向にも回転可能である。駆動ギヤ35はマガジンモータ55の駆動軸に取り付けてある。駆動ギヤ35はマガジンモータ55の駆動軸と共に回転する。駆動ギヤ35は工具マガジン31のチェーン34に噛合する。チェーン34は駆動ギヤ35の駆動によりマガジン支持部材32の外周に沿って正逆何れかの方向に移動する。故にポット37はチェーン34と共にマガジン支持部材32の外周に沿って移動する。工具マガジン31の最下部に位置するポット37の位置は、工具交換位置である。工具交換位置は主軸8に最も近接する位置である。ATC30は、工具交換位置にあるポット37が保持する次工具を、主軸8に装着する現工具と交換する。
工作機械1による加工方法について説明する。工作機械1は回転加工と旋削加工が可能である。回転加工は固定したワークに回転する工具TAを当てて移動する加工方法である。例えばドリル、タップ等の孔空け加工の際に用いる。回転加工は回転加工用の工具TAを用いる。工具TAは主軸8に装着した状態で回転可能である。旋削加工は回転するワークに工具TBを当てて移動する加工方法である。例えばフェイシング加工等に用いる。旋削加工は旋削加工用の工具TBを用いる。工具TBは主軸8に装着した状態では回転不能となる。
図4の如く、工具TBは、テーパシャンク101、プルスタッド102、フランジ103等を備える。テーパシャンク101は略円錐状である。テーパシャンク101は主軸8の工具装着部(図示略)に装着する。プルスタッド102はテーパシャンク101の頂上部に設けてある。プルスタッド102は工具装着部内に設けた把持部(図示略)が把持する部分である。フランジ103は工具TBとテーパシャンク101との間に設けてある。フランジ103は工具TBの径方向外側に延出する略円盤状である。
フランジ103は一対のキー溝105,106を備える。キー溝105,106は長方形状に形成してあるが形状は限定しない。キー溝105,106はフランジ103の中心を挟んで互いに対向する位置にある。キー溝105,106は旋削加工用の工具TBに特有である。図5の如く、主軸ヘッド7は下端面に一対のキー91,92を備える。キー91,92は例えば凸状である。キー91,92の形状はキー溝105,106の形状に対応する。キー91,92は主軸8の工具装着部を挟んで互いに対向する位置関係である。
図5の如く、主軸8(図5では図示略)は工具TBを装着した状態である。工具TBのテーパシャンク101は主軸8の工具装着部に装着する。フランジ103は主軸ヘッド7の下端面に接触する。キー91,92はキー溝105,106に係合する。キー91,92はキー溝105,106の内面に係止する。工具TBは主軸ヘッド7に対して機械的に固定した状態なので主軸8は回転不能となる。回転加工用の工具TAは、工具TBと同様に、テーパシャンク、プルスタッドを備えるがフランジは無い。故に工具TAは主軸8の工具装着部に装着した場合、キー91,92と係合しないので、工具TAは主軸8と共に回転可能である。
図1〜図3を参照して、工作機械1を用いた回転加工工程について説明する。作業者はC軸82に治具を用いてワークを固定する。ATC30は主軸8に工具TAを装着する。工具TAは主軸ヘッド7に対して回転可能状態である。工作機械1は主軸モータ54を駆動する。工具TAは主軸8と共に回転する。工作機械1はC軸モータ56を駆動しないので、C軸82上の治具に固定したワークは回転しない。工作機械1はX軸モータ51〜Z軸モータ53を駆動して主軸8の位置を移動し、且つ主軸8を回転させて治具に固定したワークに対して回転加工ができる。
図1〜図3を参照して、工作機械1を用いた旋削加工工程について説明する。作業者はC軸82の上面に治具を用いてワークを固定する。ATC30は主軸8に工具TBを装着する。工具TBは主軸ヘッド7に対して回転不可能な状態である。工作機械1はC軸モータ56を駆動する。C軸82上の治具に固定したワークは回転する。工作機械1はX軸モータ51〜Z軸モータ53を駆動して主軸8の位置を移動し、回転したワークに対して工具TBによる旋削加工ができる。
工作機械1はチルトモータ57によりX軸回りのワーク姿勢を調整可能である。故にワークの所望の部位を加工できる。なお工作機械1は主軸モータ54及びC軸モータ56を同時に回転してワークを加工してもよい。
図6を参照して、工作機械1の電気的構成について説明する。工作機械1は数値制御部20を備える。数値制御部20はCPU21、ROM22、RAM23、フラッシュメモリ24、入力部25、入出力部26等を備える。CPU21は工作機械1の動作を統括制御する。ROM22は各種プログラムを記憶する。RAM23は各種データを記憶する。フラッシュメモリ24はNCプログラム、後述するポットテーブル241(図7参照)、後述する切断時パラメータテーブル242(図8参照)等を記憶する。NCプログラムは複数のブロックで構成したものである。各ブロックは各種NCコマンドを含む。NCコマンドは制御指令である。
操作部38、Z軸原点センサ39は入力部25に接続する。操作部38は例えば工作機械1を覆うカバー(図示略)に設けてある。操作部38は例えば作業者が工作機械1の動作について各種入力及び設定を行う機器である。Z軸原点センサ39は主軸ヘッド7のZ軸方向の原点を検出する。駆動回路41〜49は入出力部26に接続する。
駆動回路41はX軸モータ51を駆動する。エンコーダ51AはX軸モータ51と入出力部26に接続する。エンコーダ51AはX軸モータ51の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。駆動回路42はY軸モータ52を駆動する。エンコーダ52AはY軸モータ52と入出力部26に接続する。エンコーダ52AはY軸モータ52の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。駆動回路43はZ軸モータ53を駆動する。エンコーダ53AはZ軸モータ53と入出力部26に接続する。エンコーダ53AはZ軸モータ53の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。
駆動回路44は主軸モータ54を駆動する。エンコーダ54Aは主軸モータ54と入出力部26に接続する。エンコーダ54Aは主軸モータ54の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。駆動回路46はマガジンモータ55を駆動する。エンコーダ55Aはマガジンモータ55と入出力部26に接続する。エンコーダ55Aはマガジンモータ55の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。駆動回路46はC軸モータ56を駆動する。エンコーダ56AはC軸モータ56と入出力部26に接続する。エンコーダ56AはC軸モータ56の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。
駆動回路47はチルトモータ57を駆動する。エンコーダ57Aはチルトモータ57と入出力部26に接続する。エンコーダ57Aはチルトモータ57の回転量を検出し該検出信号を入出力部26に入力する。駆動回路48はクランプ装置58を駆動する。クランプ装置58は治具固定テーブル81の裏面側に設けてある。クランプ装置58は治具の回転軸を固定保持する。駆動回路49は表示部11を駆動する。表示部11は例えばスプラッシュカバー(図示略)に設けてある。表示部11は工作機械1の設定画面、操作画面等の各種画面を表示する。
X軸モータ51、Y軸モータ52、Z軸モータ53、主軸モータ54、マガジンモータ55、C軸モータ56、チルトモータ57は例えばサーボモータである。
図7を参照して、ポットテーブル241について説明する。ポットテーブル241はポット番号と工具番号を夫々対応付けて記憶する。上述の通り、工具マガジン31は例えば21本のポット37を備える。工作機械1は各ポット37にポット番号を割り付けてある。P1〜P21はポット番号である。工具番号は各工具に割り付けた番号である。P1〜P18に対応する各工具番号は、工具マガジン31のP1〜P18に実際に装着した工具の工具番号に対応する。P1〜P18に装着する工具の順番は例えばNCプログラムの実行において使用する工具の順番に対応するとよい。P19〜P21の3本のポット37は電源切断時に主軸8に装着する工具専用のポット(以下電源切断時専用ポットと呼ぶ)である。P19に対応する工具は例えば工具TAである。P20に対応する工具は例えば工具TBである。P21は例えば空状態である。
図8を参照して、切断時パラメータテーブル242について説明する。切断時パラメータテーブル242は切断時パラメータとポット番号を夫々対応付けて記憶する。切断時パラメータは、主軸8の状態を第一状態、第二状態、第三状態の何れか一の状態に制御する為のパラメータである。第一状態は主軸8に工具TAを装着した状態である。第二状態は主軸8に工具TBを装着した状態である。第三状態は主軸8に工具を装着していない状態である。切断時パラメータ1は第一状態に制御する為のパラメータである。切断時パラメータ2は第二状態に制御する為のパラメータである。切断時パラメータ3は第三状態に制御する為のパラメータである。P19は切断時パラメータ1に対応する。P19は工具TAを装着した状態である。P20は切断時パラメータ2に対応する。P20は工具TBを装着した状態である。P21は切断時パラメータ3に対応する。P21は工具を装着していない状態である。
P19〜P21は電源切断時専用ポットである。P19〜P21は21本のポット37の順番の最後の3本である。故に本実施形態は電源切断時に装着する工具専用のポット37を、他のポット37と区分けができる。作業者は各ポット37に対する工具の装着間違いを防止できる。電源切断時専用ポットは21本のポット37のうち最初の三本でもよく、バラバラに配置してもよい。電源切断時専用ポットは工具の装着間違いを防止する為、纏めて配置するのが好ましい。
なお本実施形態は、通常使用するポット37と区別して電源切断時専用ポットを設け、電源切断時に電源切断時専用ポットに装着する工具TA等を主軸8に装着する。例えば通常加工時に使用するポット37に工具TA等を装着し、電源切断時にそのポット37に装着する工具TA等を主軸8に装着するようにしてもよい。工具TA等は通常使用する工具Tと同じであり、加工時において他の工具Tと同様に使用する。
図9を参照して、主軸状態指定処理について説明する。作業者は例えば操作部38(図6参照)を操作し主軸状態指定モードに切り替える。作業者は主軸状態指定モードにおいて電源切断時に主軸8に装着する工具を指定する。CPU21は主軸状態指定モードへの切り替えにより、ROM22に記憶した主軸状態指定プログラムを読み出して本処理を実行する。
先ずCPU21は表示部11に指定画面(図示略)を表示する(S1)。指定画面は電源切断時の主軸8の状態について、第一状態、第二状態、第三状態の何れか一つを選択して指定する画面である。作業者は例えば現場で使用する工具、所有する工具の種類等に応じて指定する工具を自由に決めればよい。
作業者は例えば工具TAを所有するのであれば、第一状態又は第三状態を指定するのがよい。作業者は工具マガジン31に空きポットを設けないのであれば、第一状態に指定するのがよい。作業者は電源切断時の主軸状態を第一状態又は第三状態に指定することで、次回起動時において主軸8は主軸指令に基づき回転できる。故に工作機械1は工具TBを装着した状態で回転するのを防止できる。作業者は例えば工具TBを多く所有するのであれば、第二状態を指定してもよい。工作機械1は電源切断時の主軸状態を第二状態に指定することで、次回起動時において主軸8は主軸指令を無視する。故に工作機械1は加工動作をより早く進めることができる。
CPU21は第一状態を指定したか否か判断する(S2)。CPU21は第一状態を指定したと判断した場合(S2:YES)、切断時パラメータを1に設定する(S5)。CPU21はパラメータ情報をフラッシュメモリ24に記憶する(S8)。パラメータ情報は切断時パラメータの情報である。CPU21は第一状態を指定していないと判断した場合(S2:NO)、第二状態を指定したか否か判断する(S3)。CPU21は第二状態を指定したと判断した場合(S3:YES)、切断時パラメータを2に設定する(S6)。CPU21はパラメータ情報をフラッシュメモリ24に記憶する(S8)。CPU21は第二状態も指定していないと判断した場合(S3:NO)、第三状態を指定したか否か判断する(S4)。CPU21は第三状態を指定したと判断した場合(S4:YES)、切断時パラメータを3に設定する(S7)。CPU21はパラメータ情報をフラッシュメモリ24に記憶する(S8)。
CPU21は第三状態も指定してないと判断した場合(S4:NO)、作業者が指定を完了するまで、S2〜S4の判断処理を繰り返す。CPU21は切断時パラメータの設定を完了し(S5〜S7)、パラメータ情報をフラッシュメモリ24に記憶した後(S8)、本処理を終了する。
図10を参照して、電源切断時処理について説明する。CPU21は、作業者による電源切断の操作により、ROM22に記憶した電源切断時プログラムを読み出して本処理を実行する。先ず、CPU21はフラッシュメモリ24に記憶した切断時パラメータが1か否か判断する(S11)。CPU21は切断時パラメータが1であると判断した場合(S11:YES)、切断時パラメータテーブル242を参照する。切断時パラメータ1に対応するポット番号はP19である。P19に装着してある工具はポットテーブル241を参照すると工具TAである。CPU21はATC30によってP19に装着してある工具TAへの工具交換を実行する(S14)。CPU21は電源を切断し(S19)、本処理を終了する。
CPU21は切断時パラメータが1でないと判断した場合(S11:NO)、切断時パラメータは2か否か判断する(S12)。CPU21は切断時パラメータが2であると判断した場合(S12:YES)、切断時パラメータテーブル242を参照する。切断時パラメータ2に対応するポット番号はP20である。P20に装着してある工具はポットテーブル241を参照すると工具TBである。CPU21はATC20によってP20に装着してある工具TBへの工具交換を実行する(S15)。CPU21は電源を切断し(S19)、本処理を終了する。
CPU21は切断時パラメータが2でもないと判断した場合(S12:NO)、切断時パラメータは3か否か判断する(S13)。CPU21は切断時パラメータが3であると判断した場合(S13:YES)、切断時パラメータテーブル242を参照する。切断時パラメータ2に対応するポット番号はP21である。P21は工具を装着していない。CPU21はATC20によって主軸8に装着してある工具Tを外し(S16)、主軸8から外した工具Tを工具マガジン31のP21に装着して収納する。CPU21は電源を切断し(S19)、本処理を終了する。
CPU21は切断時パラメータが3でもないと判断した場合(S13:NO)、作業者による主軸状態の指定を完了していないので、表示部11等によって報知する(S17)。作業者は主軸状態の指定が完了していないことに気づく。作業者は上述の主軸状態指定モードに切り替え、上述の設定を行う。CPU21は作業者による設定が完了したか否か判断する(S18)。CPU21は作業者による設定が完了するまでは(S18:NO)、S18に戻って待機状態となる。CPU21は作業者による設定が完了したと判断した場合(S18:YES)、S11に戻り、設定した内容で、上記処理を実行する(S11〜S16)。CPU21は各処理を正常に完了した場合(S14〜S16)、工作機械1の電源を切断し(S19)、本処理を終了する。
図11を参照して、起動時処理について説明する。CPU21は起動時、ROM22に記憶した起動時プログラムを読み出して本処理を実行する。CPU21は主軸指令が有るか否か判断する(S21)。CPU21は主軸指令が有るまで(S21:NO)、S21に戻って待機状態となる。
CPU21は主軸指令が工具交換時のオリエント指令か否か判断する(S22)。CPU21は主軸指令がオリエント指令であると判断した場合(S22:YES)、工具交換は起動時最初の工具交換である。主軸モータ54はインクリメントモータである。工作機械1は通常、主軸モータ54の原点を検出する必要がある。工作機械1は主軸モータ54の原点を検出しなければ主軸8の現在の位置を認識できない。
CPU21は切断時パラメータが1又は3であるか否か判断する(S23)。CPU21は切断時パラメータが1であると判断した場合(S23:YES)、主軸8は工具TAを装着した第一状態である。故にCPU21は主軸オリエントを実行する(S24)。主軸オリエントは主軸8を原点位置に割り出す処理である。工具TAは回転可能である。工作機械1は主軸オリエントを正常に実行できる。CPU21は切断時パラメータが3であると判断した場合(S23:YES)、主軸8は工具Tを装着していない第三状態である。CPU21は主軸オリエントを実行する(S24)。主軸8は回転可能である。工作機械1は主軸オリエントを正常に実行できる。
CPU21はZ軸上昇を実行する(S25)。Z軸上昇は主軸ヘッド7を工具交換準備位置まで上昇する処理である。CPU21はATC30による工具交換を実行する(S26)。主軸8はS22で原点位置に割り出してある。故に工作機械1はATC30による工具交換の際に工具TAを主軸8に対して正常に着脱できる。
CPU21はZ軸下降を実行する(S27)。Z軸下降は主軸ヘッド7をZ軸原点位置まで下降する処理である。CPU21は本処理を終了する。
CPU21は切断時パラメータが2であると判断した場合(S23:NO)、主軸オリエントを実行せず、Z軸上昇を実行する(S25)。主軸8に工具TBを装着した第二状態である場合、キー91,92はキー溝105,106に係合する。主軸ヘッド7に対する工具TBの位置は決まる。主軸ヘッド7に対する位置が決まった工具TBを装着する主軸8の位置は原点位置である。即ち主軸8は既に原点位置に割り出した状態(オリエント状態)である。故にCPU21は主軸オリエントを実行しない。CPU21はS26,S27を上記同様に実行する。工作機械1は主軸オリエントを無視して次の処理に進むことができるので、動作を速く進めることができる。CPU21は本処理を終了する。
CPU21は主軸指令がオリエント指令ではなく、通常の主軸指令であると判断した場合(S22:NO)、CPU21は切断時パラメータが1又は3であるか否か判断する(S28)。通常の主軸指令はオリエント指令以外の主軸8を回転する指令である。CPU21は切断時パラメータが1又は3であると判断した場合(S28:YES)、上記と同じ理由により、主軸指令を実行する(S29)。CPU21は本処理を終了する。
CPU21は切断時パラメータが2であると判断した場合(S28:NO)、回転しない工具TBを主軸8に装着した第二状態で主軸指令を出力する状態は、例えばプログラムミスが原因である。工作機械1は工具TBを装着した状態で主軸8を回転しようとすると、主軸8に過剰な負荷がかかり、故障の原因になる。CPU21は主軸指令を実行することなく、その旨を報知し(S30)、本処理を終了する。報知は、例えば表示部11に異常メッセージ等を表示する処理、音声で報知する処理、ランプ等を点灯又は点滅する処理等の何れでもよい。故に作業者は工作機械1の異常を早期に認識できるので速やかな対応が可能である。
以上説明において、図4に示すキー溝105,106は本発明の係合部の一例である。図5に示すキー91,92は本発明の被係合部の一例である。図6に示す主軸モータ54は本発明の駆動部の一例である。図9に示すS2〜S7の処理を実行するCPU21は本発明の主軸状態指定手段の一例である。図10に示すS11〜S16の処理を実行するCPU21は本発明の主軸状態制御手段の一例である。図6に示す操作部38は本発明の設定手段の一例である。フラッシュメモリ24は本発明の記憶手段の一例である。図9に示すS8の処理を実行するCPU21は本発明の記憶処理手段の一例である。図11に示すS21,S22の処理を実行するCPU21は本発明の主軸指令判断手段の一例である。S23,S28の処理を実行するCPU21は第二状態判断手段の一例である。(S23:NO)、(S28:NO)の処理を実行するCPU21は本発明の主軸駆動制御手段の一例である。
以上説明したように、本実施形態の工作機械1は、回転加工用の工具TA及び旋削加工用の工具TBを共通の主軸8に選択的に装着可能である。工作機械1はワークに回転加工及び旋削加工を選択的に施すことができる。主軸ヘッド7は下端面に一対のキー91,92を備える。工具TBは一対のキー溝105,106を備える。主軸8は工具TBを装着する。キー91,92はキー溝105,106に係合する。キー91,92は工具TBの回転を規制する。工作機械1は数値制御部20を備える。数値制御部20はCPU21を備える。CPU21は電源切断時における主軸8の状態について、第一状態、第二状態、第三状態のうち少なくとも何れかの状態を指定可能である。第一状態は主軸8に回転加工用の工具TAを装着した状態である。第二状態は主軸8に旋削加工用の工具TBを装着した状態である。第三状態は主軸8に工具を装着しない状態である。CPU21は電源切断時にATC30によって主軸8を予め指定した主軸8の状態に制御できる。
主軸状態が例えば第一状態である場合、主軸8は工具TAを装着している。故に工作機械1は起動後に主軸8を回転する主軸指令があった場合に主軸8を回転しても故障する虞はない。主軸状態が第三状態の場合、主軸8は工具を装着していない。故に工作機械1は起動後に主軸指令があった場合に主軸8を回転しても故障する虞はない。主軸状態が第二状態である場合、主軸8は工具TBを装着している。主軸8は回転できない。故に工作機械1は例えば起動後の主軸指令に対して主軸を回転しない等の対策が可能である。故に工作機械1は起動時に主軸8に旋削加工用の工具TBを装着した状態で主軸8を回転するのを防止できる。
本実施形態では特に、作業者は操作部38によって第一状態、第二状態、及び第三状態のうち何れか一の状態をパラメータで設定できる。CPU21は操作部38で設定した一の状態を電源切断時の主軸8の状態として指定する。故に工作機械1は第一状態、第二状態、及び第三状態のうち何れか一の状態をパラメータで設定可能である。作業者は例えば現場で使用する工具に応じて何れかの状態を自由に設定できる。
本実施形態では特に、CPU21は操作部38で設定した切断時パラメータをフラッシュメモリ24に記憶する。CPU21は起動後に主軸指令があるか否か判断する。主軸指令は工具交換時のオリエント指令を含む。CPU21は主軸指令があると判断した場合、フラッシュメモリ24に記憶した切断時パラメータに基づき、第二状態を指定したと判断した場合、主軸指令を無視する。工作機械1は主軸8に旋削加工用の工具TBを装着した状態で主軸8を回転するのを防止できる。故に工作機械1は主軸8に過剰な負荷がかかるのを防止できる。
なお上記第一実施形態は様々な変形が可能である。上記実施形態の工作機械1は、コラム5がX軸及びY軸方向に移動可能なものであるが、これに限定しない。
また上記実施形態は、第一状態、第二状態、第三状態のうち少なくとも一の状態を指定可能なものであるが、本発明は例えば電源切断時において第一状態、第二状態、又は第三状態のみに制御できるものでもよい。特に第一状態又は第三状態に制御するものは、次回起動時は主軸指令に従って従来通り実行すればよいので制御は簡単である。また前記三つの状態のうち何れか二つの状態から一の状態を指定可能としてもよい。