JP5845098B2 - 繊維シートに含浸させるための水溶性組成物 - Google Patents

Description

本発明は、特に乳幼児のおしりふき、大人用の身体または、おしりふき、その他の拭き取りシート（清拭用シート）として好適に使用できる繊維シートに含浸された薬液に関する。

従来、このような繊維シートの水溶性組成物（以下「薬液」と略す）には、使用中、保存中に微生物による汚染や劣化を防ぐために殺菌防腐剤が含有されている。殺菌防腐剤としては、例えば、ポリアミノプロピルビグアナイド等のようなビグアナイド系化合物、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム等のような四級アンモニウム塩、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のような有機酸およびその塩類といった防腐剤系が主に繊維シート用の薬液に使用されている。

このような殺菌防腐剤は、人体に対する刺激性が低く、且つ防菌性、防腐性が高いことが好ましい。特に乳幼児や老人等、皮膚抵抗の低い人が使用する場合、こうした特性が重要視される。

更に近年、赤ちゃん用おしりふきを適度な温度に保管できるウォーマーなどの使用で、室温以上の温度帯（約３５-４５℃）で繊維シートが保存されることもある。また使用される繊維シートの材質、繊維シートの構造も多岐にわたる。従って使用条件、繊維シートの材質、構造によっては、繊維シート中の殺菌防腐剤を含む薬液の保存安定性に大きな影響を与え、殺菌防腐効果の長期持続性が問題となる場合がある。

殺菌防腐剤を含有する繊維シート用薬液は、高い防腐効果と低皮膚刺激性が要求されるが、これら二つの特性は相反する場合が多い。例えば、繊維シート用水溶性組成物の防腐剤としてパラベンが使用されることが多いが、近年、皮膚に対する肌荒れやかぶれ等のトラブルの原因となるおそれがあるため、パラベンを含まない繊維シート用薬液開示されている。

特許第２６４３４５８号公報 特開２０００-１９１５２１号公報 ２００４-１８８０８５号公報 ２００４-２９８４１２号公報 特開２００８-２９５８３７号公報 特開２００３-７９５３０号公報 特願平６-４８６６４号公報

本発明は、特に乳幼児のおしりふき、大人用の身体または、おしりふき、その他の拭き取りシート（清拭用シート）として好適に使用できる繊維シートに含浸された薬液を、パラベンを不使用としながらも、殺菌防腐効果を損なうことなく、その防腐効果を向上させ、且つ、その薬液の長期保存安定性に優れた、従来のものより、水を主体とするシンプルな刺激性の無い薬液として調製し、皮膚に対する刺激が抑制された、使用者の肌などに対し、肌への優しさ、使用しやすさを向上させることを目的としたものである。

本発明の殺菌防腐剤を含有する繊維シートに含浸させるための薬液は、最適な抗微生物活性を得るために調製されたものであり、少なくともカチオン系バイオサイドであるポリアミノプロピルビグアナイド、四級アンモニウム塩、安息香酸塩、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含み、残部の水で構成される薬液は、高い殺菌防腐効果を有し、且つ長期保存安定性に優れている。

高水溶性の防かび剤として安全性の高い食品添加物であるソルビン酸カリウムを使用した繊維シート用薬液は、防カビ効果もあり一般に使用されている。しかし、その薬液は、高温下及び低ｐＨ域での保存で黄変度合が大きくなる傾向があるため、長期保管、保存されるような繊維シート及び繊維シート用薬液の保存安定性に影響を与える。

しかし、同じような高水溶性の防かび剤として安全性の高い食品添加物である安息香酸塩を使用した繊維シート用水溶性組成物は、高温化及び低ｐＨ域での保存で黄変しないため、長期保存されるような繊維シート及び繊維シート用薬液の保存安定性に優れる。

抗微生物活性は主にポリアミノプロピルビグアナイド及び安息香酸塩に由来するが、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを加えることにより、繊維シート用薬液のｐＨを一定の範囲に調整し、繊維シート基布への吸着防止及びｐＨの緩衝剤として作用させることが出来る。よって、従来のものより、その防腐効果を向上させ、且つその薬液の長期保存安定性に優れた最適な効果が持続されるような薬液を調製することが可能になった。

本発明の繊維シート用薬液は、パラベン類を含んでおらず、水に溶解する成分のみで構成されているため、長期保存安定性に優れる。また、パラベン類を溶解させるためのポリオール類を含ませる必要がないため、繊維シートを肌に用いるときに、ぬるつきやべたつきが生じにくいという利点を有する。

本発明の繊維シート用薬液に使用される非イオン性界面活性剤は０.０５〜０.５重量％とするのが好ましく、０.０５〜０.３重量％とするのがより好ましく、０.１〜０.２５重量％とするのが、特に好ましい。

本発明の繊維シート用薬液に、ＨＬＢ１７〜２０である非イオン性界面活性剤を使用することにより、皮膚への刺激が少ないものとして、その効果を発揮する。ここで、ＨＬＢ（Hydrophilic-Lipophilic Balance）とは、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さのバランスを表した数値である。ＨＬＢ値は０から２０までの値があり、０に近いほど親油性が高く２０に近いほど親水性が高くなる。また、前記殺菌防腐剤等を含有する薬液が１.００重量％以下であり、その全体に対して、水が９９.００重量％以上を占めていることで、水を主体とした肌への刺激を低減、防止させた効果を発揮する。

前記繊維シート用薬液以外のＨＬＢ５〜１６の非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコールラウリン酸ジエステル、ソルビタンラウリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどであり、必要に応じて公知の皮膚保湿剤、例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ヒアルロン酸、可溶性コラーゲン；皮膚軟化剤、例えば、エトキシル化ラノリン、エトキシル化グルコース、シリコーン油、鉱油、脂肪酸エステル；両性界面活性剤、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、清涼感付与剤、エモリエント剤、ｐＨ調整剤、香料、酸化防止剤、キレート剤、植物エキス、褐色防止剤、消炎剤、皮膚賦活剤、収斂剤等と使用可能である。

繊維シートへの薬液含浸量は適宜定めることが出来る。繊維シート基布重量に対して１５０〜５００重量％とするのが好ましく、２００〜４００重量％とするのが特に好ましい。１５０重量％以下では、充分な拭き取り性が望めなくなったり、シート乾燥がしやすくなることがあり、５００重量％以上になると繊維シートの保持が困難になり、肌が過度に濡れ過ぎてしまうことがある。

本発明の繊維シート用薬液は、基材に含浸させることによって、使用が可能となる。基材としては、例えば、天然繊維または合成繊維からなる不織布、紙などがある。好適には、レーヨン、パルプなどの親水繊維と、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維とを一種または数種配合した、湿潤強度が高いスパンレース不織布が用いられる。基材として用いられるシートの大きさは、使用部位、あるいは収納する容器または包装体に応じて、適宜設定されるが、通常１５０×２００ｍｍ程度である。

以下、実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
表１、表２に示す実施例１〜４及び比較例１〜９の組成の薬液を作製した。それら薬液を０℃で１週間、及び５０℃で４週間保存した後の保存状態を目視によって、透明に溶解している場合は○とし、透明に溶解はしているが、ごくわずかな沈殿が観察される場合は△とし、白濁、黄変、または沈殿が観察される場合は×と評価した。

（殺菌効力試験）
下記による殺菌効力試験を行い、最長接触時間終了時における生菌数が１０の１乗個/ｍＬ以下である場合に、殺菌効力を○とし、そうでないときは×と評価した。
(１)試験菌
・ Escherichia coli NBRC 3972 (大腸菌)
・ Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275 (緑膿菌)
・ Staphylococcus aureus subsp, aureus NBRC 13276 (黄色ブドウ球菌)
Klebsiella pneumonia（肺炎桿菌：ワイプから検出された野生株）
Sphinogomonas paucimobilis（ワイプから検出された野生株）
Acidovorax avenae（ワイプから検出された野生株）
・ Aspergillus niger NBRC 9455 (クロコウジカビ)
Cladosporium cladosprioides NBRC 6348 (クラドスポリウム)
Aspergillus niger（クロコウジカビ：ワイプから検出された野生株）
Penicillium herquei（ぺ二シリウム：ワイプから検出された野生株）
(２)試験用培地
NA培地:普通寒天培地[栄研化学株式会社]
PDA培地：ポテトデキストロース寒天培地[栄研化学株式会社]
SCDLP培地:SCDLP培地[日本製薬株式会社]
GPLP培地:GPLP培地[日本製薬株式会社]
SCDLPA培地:SCDLP寒天培地[日本製薬株式会社]
GPLPA培地:GPLP寒天培地[日本製薬株式会社]
(３)菌液の調製
a) 大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、Sphinogomonas paucimobilis、Acidovorax avenae
NA培地で３５℃±１℃、２４時間培養後、得られた試験菌の菌体を滅菌リン酸緩衝生理食塩水に懸濁させ、菌数が約１０７〜１０８個/ｍＬとなるように調整したものを試験菌液とした。
b) クロコウジカビ、クラドスポリウム、Aspergillus niger、Penicillium herquei
PDA培地で２７℃±１ ℃、１０日間培養後、得られた試験菌の胞子を０.０５％ポリソルベー卜８０添加生理食塩水に懸濁させ、胞子数が約１０６〜１０７/ｍＬとなるように調整したものを菌液とした。
(４)試料の調製
繊維シートに表１、表２に示す実施例１〜４及び比較例１〜９の組成の薬液を含浸させ、５０℃にて４週間保管した。４週間保管後に、繊維シートを絞り、絞り液を採取した。絞り液２０ｍＬを滅菌容器に分注した。対照試料として、滅菌生理食塩水を用いた。なお、本評価に用いる薬液含浸繊維シートは、レーヨン：ポリエステルが６０％：４０％の割合で出来ているスパンレースで目付けが６０ｇの不織布を１５０×２００ｍｍの大きさに裁断し、繊維シート基布重量に対して薬液２８０重量部を含浸させて作成した。
(５)試験操作
試験菌液を試料に対して１％量（０.２ｍＬ）接種した後、２５℃の恒温器で保存した。細菌については、１分、１０分、１時間、６時間後に、その１ｍＬを採取してSCDLP液体培地９ｍＬへ移した。カビについては、２時間、２４時間、４８時間後に、その１ｍＬを採取してGPLP液体培地９ｍＬへ移した。このSCDLP及びGPLP液体培地液の生菌数を、細菌はSCDLP寒天培地混釈法にて、３７℃４８時間培養により測定した。カビについてはGPLP寒天培地混釈法にて、２８℃７２時間培養により測定した。

（抗菌性防腐試験）
下記による殺菌効力試験を行い、開始時における生菌数から終了時における生菌数の差が３Log以上である場合に、抗菌性防腐効力を○とし、そうでないときは×と評価した。
(１)試験菌：前記に準じた。
(２)試験用培地：前記に準じた。
(３)菌液の調製：前記に準じた。
(４)試料の調製
繊維シートに表１、表２に示す実施例１〜４及び比較例１〜９の組成の薬液を含浸させ、５０℃にて４週間保管した。４週間保管後に、繊維シートを一辺が約５ｃｍの正方形に切り取り、これを３枚重ねて試料とした。また、薬液未含浸の繊維シート基布を一辺約５ｃｍの正方形に切り取り、これを３枚重ねて滅菌精製水を所定量含浸させ、高圧蒸気滅菌（１２１℃、１５分間）したものを対照試料とした。
(５)試験操作
試料を滅菌シャーレに入れ、菌液０.１ｍＬを滴下後、ふたを閉め、細菌については、３７℃±１℃ の恒温器で保存し、保存７日後に、リン酸緩衝生理食塩水１０ｍＬ試料を入れ、１分間混和し抽出する。この抽出液の生菌数をSCDLP寒天培地混釈法にて、３７℃４８時間培養により測定した。カビについては、保存７日後に、リン酸緩衝生理食塩水１０ｍＬ試料を入れ、１分間混和し抽出する。この抽出液の生菌数をGPLP寒天培地混釈法にて、２８℃４日間培養により測定した。

表１より実施例１〜４は、比較例１〜９に比べ高い殺菌効力、抗菌性防腐能および良好な保存安定性を有している。

Claims (6)

1. ポリアミノプロピルビグアナイド、またはポリアミノプロピルビグアナイドと第四級アンモニウム塩との混合物０.０１〜０.１重量％、安息香酸ナトリウム０.１５〜０.６重量％、クエン酸０.０５〜０.５０重量％、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム０.０１〜０.２０重量％、非イオン性界面活性剤０.０５〜０.５重量％、全体を１００重量％とする量の水を含み、
   該非イオン性界面活性剤のＨＬＢが１７〜２０であり、且つ薬液のｐＨが３.５〜４.５である、繊維シート含浸用の水溶性組成物。
2. 前記薬液に対して水が９９.０重量％以上を占めている請求項１に記載の水溶性組成物。
3. 前記薬液にパラオキシ安息香酸エステル類を含まない請求項１または２に記載の水溶性組成物。
4. 前記薬液に、さらに皮膚保湿剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、またはこれらの成分の混合物を含有する請求項１〜３のいずれか一項に記載の水溶性組成物。
5. 請求項１〜４のいずれか一項に記載の水溶性組成物を含有する繊維シート。
6. 前記水溶性組成物の含有量が、前記繊維シートの１５０〜５００重量％である、請求項５に記載の繊維シート。