JP5805568B2 - 色素増感太陽電池用集電体およびその材料の製造方法ならびに色素増感太陽電池 - Google Patents

色素増感太陽電池用集電体およびその材料の製造方法ならびに色素増感太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感太陽電池用集電体およびその材料の製造方法ならびに色素増感太陽電池に関する。
色素増感太陽電池は、湿式太陽電池あるいはグレッツェル電池等と呼ばれ、シリコン半導体を用いることなく電解液を使用した電気化学的なセル構造を持つ点に特徴がある。例えば、透明な導電性ガラス板等の透明導電膜を使用したアノード電極に二酸化チタン粉末等を焼付け、これに色素を吸着させて形成したチタニア層等の多孔質半導体層と導電性ガラス板(導電性基板)等からなる対極(カソード電極)の間に電解質としてヨウ素溶液等を配置した、簡易な構造を有する
色素増感太陽電池の発電メカニズムは、以下のとおりである。
受光面である透明導電膜面から入射した光を、多孔質半導体層に吸着された色素が吸収し、電子励起を引き起こし、その励起した電子が半導体へと移動し、導電性ガラスへと導かれる。ついで、対極に戻った電子はヨウ素などの電解液を介して電子を失った色素へと導かれ、色素が再生される。
色素増感太陽電池は、シリコン系の太陽電池と比べて材料が安価であり、作製に大掛かりな設備を必要としないことから、低コストの太陽電池として注目されており、さらなる低コスト化のため、例えば高価な透明導電膜を省略することが検討されている。なお、透明導電膜は電気抵抗が大きいため、電池の大型化に向かないという問題もあった。
透明導電膜を省略する方法の一つとして、ガラス表面に配置される透明導電膜の代わりに導電性金属からなる配線を施すことが挙げられる。しかし、この場合、入射光の一部は金属配線部分に遮られることとなり、効率の低下を伴う。
この点を改善するものとして、例えば、光照射側となる透明導電膜を持たない透明基板に色素担持半導体層を形成し、色素担持半導体層の上に有孔集電電極を配置する光電変換素子が開示されている(特許文献1参照)。有孔集電電極は網目状または格子状の構造であり、多孔質半導体の基板への塗布膜上にこの集電電極を載置して500℃で30分焼成するものとされている。
また、例えば、孔を有する集電電極として線径が1μm〜10mmの金網を用い、この金網に多孔質半導体層の材料であるペーストを塗布し、ペーストを焼成して多孔質半導体層を形成した後に、透明導電膜を持たないガラス製透明基板に多孔質半導体層の側を向けて金網を配置する技術が開示されている(特許文献2参照)。
しかし、これらの技術は、集電電極として予め加工形成された金網あるいはその他の有孔板等を用いるので、金属細線等材料のサイズの制約から、金網等の厚みを薄くすることには限界がある。そのため、金網等の厚みが厚いことに起因し、電解質が金網等を介して多孔質半導体層に移動する際の拡散抵抗が大きくなり、これにより光電変換効率の低下を来たすおそれがある。
これに対して、例えば、集電電極として、スパッタリングや蒸着等の方法によってタングステン、チタン、ニッケル等の金属を堆積させ、その後、フォトリソグラフィー等によりパターニングする方法が開示されている(特許文献3参照)。得られる集電電極は、極めて薄い金属膜である。
しかし、この方法は、集電電極の製造工程が煩雑である。また、集電電極が過度に薄すぎると、集電電極としての役割、性能に不足を来たすおそれもある。このとき、集電電極を適度の厚膜に形成しようとすると、成膜に時間とコストがかかりすぎるおそれがある。
一方、金属粉末を焼結させた金属焼結体からなり、内部に分散配置された複数の空孔部を有し、その気孔率が10体積%以上50体積%以下とされ、前記空孔部の平均孔径が1μm以上30μm以下とされており、複数の前記空孔部の一部が表面に開口するように配置されていることを特徴とする電気化学部材用焼結金属シート材が開示されている(特許文献4)。電気化学部材用焼結金属シート材は、原料スラリーをグリーンシートに成形したものを焼結して得られる。金属シート材の厚さは、例えば0.03mm以上0.3mm以下程度であるとされる。
上記の電気化学部材用焼結金属シート材は、明細書の技術分野の欄の記載振りから見て、電気分解装置の電極板、電気めっき装置の電極、電気二重層キャパシタの集電体、非水電解液2次電池の集電体等の用途における従来技術の不具合を改善することを目的とするものと考えられるが、具体的な開示は無い。また、グリーンシートをハンドリングする上記の電気化学部材用焼結金属シート材の製造方法では、下限値である0.03mm程度の厚みのシート材を得るのは実際には困難ではないかと思われる。
また、原料粉末、バインダー、および水を含む材料からなり気泡が分散形成されたスラリーを調製するスラリー製造工程と、このスラリーからグリーン体を形成するグリーン体形成工程と、このグリーン体を焼結する焼結工程とを有する多孔質焼結体の製造方法であって、グリーン体形成工程が所定の安置工程、凍結固化工程および真空凍結乾燥工程を含む技術が開示されている(特許文献5)。スラリー製造工程は、材料を混練してスラリーを調整する混練工程と、スラリーから気泡および溶存ガスを除去する脱泡工程と、このスラリーに添加ガスを導入しながら攪拌することにより、スラリー中に添加ガスからなる気泡核を分散形成する気泡核形成工程と、を有すると、スラリー中に含まれる気体量を精密に制御することができるとされている。チタン粉末を原料とした実施例として、80%を大幅に上回る高い気孔率と、数百μm以上の平均気孔径を有する多孔質焼結体が開示されている。
また、上記した金属焼結体に関し、本発明者らは、色素増感太陽電池の集電電極として市販の多孔質チタンシート(商品名タイポラス 大阪チタニウム社製 厚み100μm)を用いる技術を開示している(特許文献6)。この多孔質チタンシートは多数の孔が等方的に連通する金属多孔体であり、発電効率の向上に寄与する。
特開2001−283941号公報 特開2007−73505号公報 特開2005−158470号公報 特開2011−99146号公報 特開2010−229432号公報 WO2010/150461
解決しようとする問題点は、色素増感太陽電池の集電電極として多孔質焼結金属シートを用いる従来の技術は、発電効率の一層の向上に寄与するうえで、さらなる改良が求められる点である。
本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、厚みが5〜60μm、かつ空隙率が30〜80%であり、等方的に連通した多数の貫通孔を有する多孔質焼結金属シートからなる。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、好ましくは、前記多孔質焼結金属シートが厚みが10〜30μm、かつ空隙率が30〜60%の非発泡多孔質焼結金属シートであることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、好ましくは、平均空孔直径が5〜25μmであることを特徴とする。
このとき、前記平均空孔直径が15μm以下であると、より好適である。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、好ましくは、前記多孔質焼結金属シートの金属種がTi、W、Mo、Rh、PtおよびTaから選ばれるいずれか1種またはこれらを1種または2種以上含む合金であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、好ましくは、前記多孔質焼結金属シートの原料である金属粉末が水素化脱水素法により製造したチタン粉末であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、好ましくは、電気伝導率が0.5×10Ω−1・m−1以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、透明基板と、カソード極となる導電性基板と、該透明基板と該導電性基板の間に、該透明基板に近接してまたは接触して配置され色素を吸着した多孔質半導体層と、該多孔質半導体層の該透明基板とは反対側に接触して配置されアノード極となる上記の色素増感太陽電池用集電体を備え、電解質が封止されてなる。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、金属粉末および溶剤を含むスラリー状組成物を、酸に対して溶解性を有する基材上に成形して焼結前成形体を得る焼結前成形体形成工程、該焼結前成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程および酸により該焼結体から該基材を分離除去する基材除去工程を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記基材がFeまたはFeを含む合金で形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記焼結工程を、実質的に密閉状態の容器内で行い、炭化物および酸化物の標準生成自由エネルギー値が、焼結温度範囲で、前記金属粉末より大きい値を持つ金属を前記焼結前成形体の近傍に配置することを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記金属がTi、ZrおよびHfから選ばれる1種であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、基体金属と媒体金属の混合粉を成形して成形体を得る成形工程と、該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程と、該成形工程および該焼結工程のいずれか1つの工程または双方の工程の後に、該成形体または該焼結体を化学処理または物理処理して、該媒体金属を分離除去する媒体金属分離除去工程をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記化学処理が、酸洗処理であることを特徴とする請求項12記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記物理処理が、揮発分離処理または溶融分離処理であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記基体金属が、TiまたはTi合金であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、好ましくは、前記媒体金属が、鉄、鉄−クロム合金、銅、マグネシウム、セレン、カルシウム、亜鉛、カドミニウム、ビスマス、鉛および鉛−スズ合金から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、透明基板と、カソード極となる導電性基板と、該透明基板と該導電性基板の間に、該透明基板に近接してまたは接触して配置され色素を吸着した多孔質半導体層と、該多孔質半導体層の該透明基板とは反対側に接触して配置されアノード極となる上記の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法により得られる色素増感太陽電池用集電体材料を用いた集電体を備え、電解質が封止されてなる。
本発明に係る色素増感太陽電池用集電体は、厚みが5〜60μm、かつ空隙率が30〜80%であり、等方的に連通した多数の貫通孔を有する多孔質焼結金属シートからなるため、色素増感太陽電池に用いたときに電解質の通液性に優れて高い発電効率を得ることができる。
また、本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、金属粉末および溶剤を含むスラリー状組成物を、酸に対して溶解性を有する基材上に成形して焼結前成形体を得る焼結前成形体形成工程、該焼結前成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程および酸により該焼結体から該基材を分離除去する基材除去工程を含み、または、基体金属と媒体金属の混合粉を成形して成形体を得る成形工程と、該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程と、該成形工程および該焼結工程のいずれか1つの工程または双方の工程の後に、該成形体または該焼結体を化学処理または物理処理して、該媒体金属を分離除去する媒体金属分離除去工程をさらに含むため、上記本発明に係る色素増感太陽電池用集電体を好適に得ることができる。
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、上記本発明に係る色素増感太陽電池用集電体を備え、または、上記本発明に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法により得られる材料を用いた色素増感太陽電池用集電体を備えるため、電解質の通液性に優れて高い発電効率を得ることができる。
図1は本実施の形態に係る色素増感太陽電池の概略構成を示す図である。 図2は実施例1の多孔質チタンを主面(表面)から見たSEM写真を示す図である。 図3は実施例1の多孔質チタンの断面のSEM写真を示す図である。
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、以下に説明する。
まず、本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体について説明する。
本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体(以下、これを単に集電体ということがある。集電体はおおむね集電電極と同義である。)は、厚みが5〜60μm、かつ空隙率が30〜80%であり、等方的に連通した多数の貫通孔を有する多孔質焼結金属シートからなる。
多孔質焼結金属シートを用いるため、多孔質半導体層上等に薄膜形成法等で集電体を設ける場合に比べて、集電体の作製作業ひいては色素増感太陽電池の作製作業の煩雑さが大幅に軽減される。
多孔質焼結金属シートの厚みは、上記のように5〜60μmであるが、好ましくは5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜30μmである。多孔質焼結金属シートの厚みが5μmを大きく下回ると、厚み方向に存在する粒子数が少なくなり、金属多孔体としての強度が損なわれるおそれがある。一方、多孔質焼結金属シートの厚みが60μmを大きく上回ると、色素増感太陽電池に用いたときに、シート内部での電解液の流動抵抗が大きくなりシートの内部あるいは両面間での電解質の流通性や拡散性が悪くなり、また、多孔質半導体層との密着性や接合力が損なわれる等の問題を生じるおそれがある。なお、多孔質焼結金属シートの厚みは平均厚みをいう。
多孔質焼結金属シートの空隙率は、上記のように30〜80%であるが、好ましくは30〜60%である。多孔質焼結金属シートの空隙率が30%を大きく下回ると、色素増感太陽電池に用いたときに、シート内部での電解液の流動抵抗が大きくなりシートの内部あるいは両面間での電解質の流通性や拡散性が悪くなり、シート内部での電解質の流通・拡散が不十分となり、これにより、多孔質半導体層への電解質の均一な浸透が損なわれるおそれがある。一方、多孔質焼結金属シートの空隙率が80%を大きく上回ると、多孔質半導体層との密着性や接合力が損なわれるおそれがある。また、金属多孔体としての強度が損なわれるおそれがある。また、電極として好適な導電性が得られないおそれがある。なお、用語の定義上、言うまでもなく明らかであるが、空隙率の単位は体積%である。
多孔質焼結金属シートは、平均空孔直径が、好ましくは5〜25μmであり、さらに好ましくは5〜15μmである。多孔質焼結金属シートの平均空孔直径が5μmを大きく下回ると、色素増感太陽電池に用いたときに、シート内部での電解液の流動抵抗が大きくなりシートの内部あるいは両面間での電解質の流通性や拡散性が悪くなり、導電性金属層内部での電解質の流通・拡散が不十分となり、これにより、多孔質半導体層への電解質の均一な浸透が損なわれるおそれがある。一方、多孔質焼結金属シートの平均空孔直径が25μmを大きく上回ると、金属多孔体としての強度が損なわれおそれがある。また、平均空孔直径が過度に大きくなると、非空孔部の面積も大きくなるので、シート内部の電解質の均一な流通およびシートの開口から多孔質半導体層への電解質の均一な拡散が阻害されるおそれがある。
なお、空隙率および平均空孔直径は、水銀圧入法により測定するときの値である。水銀圧入式細孔分布測定装置(CARLOERBA INSTRUMENTS社製PascaI 140およびPascal 440、測定可能範囲:比表面積0.1m/g以上、細孔分布0.0034〜400μm)を用いて、圧力範囲0.3〜400kPa、および0.1〜400MPaの範囲で、圧入体積を円筒細孔モデルに従って、側面積として計算し積算して測定する。
多孔質焼結金属シートは、上記したように、等方的に連通した多数の貫通孔を有する。ここで、等方的に連通するとは、多数の孔が多孔質焼結金属の厚みの方向にのみ、すなわち異方性を有するように連通して貫通孔を形成するだけではなく、多孔質焼結金属の平面に沿った方向にも、すなわち三次元的にあらゆる方向に等方性を有するように連通することをいう。これにより、色素増感太陽電池に用いたときに、シートにおいて、電解質がより均一に浸透するとともに、電解質がシートの開口から多孔質半導体層へより均一に拡散する。
多孔質焼結金属シートは、例えば前記した特許文献5の技術のような、スラリー発泡法やこれに準ずる技術を用いたいわゆる発泡金属を用いることができる。ただし、後述する本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法のような、スラリー発泡法等を用いることなくスラリーを形成した金属であると、上記した空隙率および平均空孔直径がより好適な範囲の多孔質焼結金属シートを得ることができて、より好ましい。本明細書では、このスラリー発泡法等を用いることなくスラリーを形成した金属を非発泡多孔質焼結金属シートと呼んで、発泡金属と区別する。
多孔質焼結金属シートからなる集電体を集電電極として多孔質半導体層と接して色素増感太陽電池に用いたとき、粒子の凝集体である多孔質半導体層との接触面積が大きく、かつ、シートの表面の孔に多孔質半導体層の表面の粒子が、いわば噛み合った状態に係合する。これにより、シートと多孔質半導体層の接合力が大きい。これに対して、従来の薄膜形成法で形成した導電性金属層を集電体とする場合、貫通孔の開口は、導電性金属層の平面に沿った方向には離散的に配置され、かつ、開口の数にも限界があることが多いため、または、導電性金属層が平滑なシート状に形成されるため、導電性金属層と多孔質半導体層の接合力を大きくとることが難しいことがある。この不具合は、集電体として金網を用いる場合や薄板に加工によって貫通孔を形成する場合においてより顕著である。集電体と多孔質半導体層の接合力が小さいと、例えば500℃程度の加熱による電気的接合工程においてクラックを生じて、集電体と多孔質半導体層が剥離するおそれがある。
多孔質焼結金属シートは、金属種がTi、W、Mo、Rh、PtおよびTaから選ばれるいずれか1種またはこれらを1種または2種以上含む合金であることが、色素増感太陽電池に用いたときに電解質に対する高い耐食性を得、また、高い導電性を得るうえで好ましい。多孔質焼結金属シートは、電気伝導率が0.5×10Ω−1・m−1以上であることが好ましい。電気伝導率は4探針法により測定することができる。
また、多孔質焼結金属シートは、原料である金属粉末がチタン粉末または水素化チタン粉末であることが好ましく、特に、水素化脱水素法により製造したチタン粉末であると、金属粉末間のネッキング部位が多い点で好ましい。そのほか、スポンジ金属粉末、ガスアトマイズ金属粉末等が適用できる。
なお、多孔質焼結金属シートを集電体に用いるとき、ガラス繊維成形体、多孔質アルミナ板等の無機多孔体、耐熱性多孔質プラスチック等の有機多孔体、金属多孔体等を集電体の補助基板として設けてもよい。
多孔質焼結金属シートの製造方法は、特に限定するものではなく公知の適宜の方法を採用することができるが、次に説明する本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法を用いることが好適である。
以上説明した本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体は、色素増感太陽電池用いたときに電解質の通液性に優れて高い発電効率を得ることができる。また、本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体は、フレキシブルであり、かつ軽量であるため、これを用いた色素増感太陽電池のフレキシブル化や軽量化を図ることができる。
つぎに、本実施の形態の第一および第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法について説明する。
本実施の形態の第一および第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、いずれも、厚みが5〜60μm、かつ空隙率が30〜80%であり、等方的に連通した多数の貫通孔を有する本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体材料を好適に得ることができるものである。本実施の形態の第一および第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、いずれも、焼結工程の前に成形工程を設けることで、成形体を極薄の薄膜でなくかつ厚すぎない所望の厚みに調製し、さらに、成形工程において原料として集電体材料となる金属粉に他の成分を配合して金属粉の粒子間に他の成分を介在させ、最終的に他の成分を除去することで、他の成分が抜けた箇所に空隙を生成する技術である点で共通する。
まず、本実施の形態の第一の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法について説明する。
本実施の形態の第一の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、金属粉末および溶剤を含むスラリー状組成物を、酸に対して溶解性を有する基材上に成形して焼結前成形体(焼結前駆体)を得る焼結前成形体形成工程、該焼結前成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程および酸により該焼結体から該基材を分離除去する基材除去工程を含む。
まず、金属粉末および溶剤を含むスラリー状組成物を、酸に対して溶解性を有する基材上に成形して焼結前成形体を得る焼結前成形体形成工程について説明する。
多孔質焼結金属シートの原料である金属粉末の種類は、上記本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体について説明したとおりであり、重複する説明を省略する。
金属粉末の平均粒子直径は、溶剤を含む組成物に適度な粘性と流動性を付与し、かつ薄板状に成形し易くするためには、1μm〜50μmが好ましく、かつ粒子直径が1〜50μmである粒子を50vol%以上含むことが好ましい。これにより、より、均一な膜厚、空隙率および空孔直径の多孔質焼結金属シートが得られる。粒子直径が1μm未満であると、焼結時に粒子の大きさに対する不導体被膜の厚みが増して、十分な焼結体が得られないおそれがある。また、焼結後の多孔質焼結金属シートの導電性が損なわれるおそれがある。一方、粒子直径が50μmを超えると、多孔質焼結金属シートの厚みを例えば25μm以下程度に成形することが困難となる。
溶剤は、水、またはエタノール、トルエン、イソプロパノール、ターピネオール、ブチルカルビトール、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等の有機溶剤が使用できる。溶剤の割合は、使用する溶剤の種類や金属粉末の種類等によって適宜異なりうるが、金属粉末100質量部に対して25〜150質量部であることが好ましい。
さらに、結着剤を添加してもよく、溶剤が水または水溶性有機溶剤の場合はメチルセルロース系、エチルセルロース系、ポリビニルアルコール系の結着剤を使用でき、溶剤が非水溶性有機溶剤の場合は、アクリル系、ポリビニルブチラール系、エチルセルロース系の結着剤を使用できる。ただし、金属粉末に対する結着剤の割合が多すぎると焼結体に含まれる酸素、炭素、水素等の割合が大きくなり、脆化による焼結体の破損を招くおそれがある。このため、結着剤の割合は、金属粉末100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
またさらに、可塑剤を添加してもよく、溶剤が水または水溶性有機溶剤の場合はグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等を使用でき、溶剤が非水溶性有機溶剤の場合は、フタル酸エステル等を使用できる。ただし、金属粉末に対する結着剤の割合が多すぎるとスラリー乾燥時のレベリング性が悪くなり、膜厚が不均一となり、一方、少なすぎると焼結前成形体の伸び性が悪くなり破損を招くおそれがある。このため、可塑剤の割合は、金属粉末100質量部に対して2〜30質量部であることが好ましい。
基材は、酸に対して溶解性を有するものであるとともに、金属粉末の焼結温度における耐熱性を有することおよび金属粉末と反応しないものを用いる。基材の使用により、金属粉末の焼結時において、しわやクラックの発生と多孔質焼結金属シートの膜厚のばらつきを抑制することができる。そのために、基材は適度の剛性があることが好ましい。
上記の特性を有するものであれば基材の材料種類は特に限定しないが、Zn、Fe、これらを含む合金またはこれらを含む酸化物が好適であり、FeまたはFeを含む合金から構成されるものが特に好適である。
基材の厚みは特に限定しないが、燒結工程で反りを生じない程度に肉厚であることが好ましく、例えば100μm以上とすることができる。
基材は、単体であってもよいし、焼結体と接する面に、例えば離型剤が表面コートしてあるような複層構造であってもよい。
なお、基材を使わずに、スラリー状組成物に高粘度有機物をバインダーとして添加し、焼結前成形体を疑似的に自立膜(グリーンシート)とすることも考えられるが、高粘度有機物は残渣が残りやすく、焼結工程で炭化物や酸化物が形成され焼結阻害要因となるため、好ましくない。さらに、焼結工程でしわやクラックが発生する恐れがある。
金属粉末および溶剤を含むスラリー状組成物を、乾燥時の減量を考慮して、例えば6〜100μmの厚みに基材上に塗布し、成形する。
塗布法は、ドクターブレード法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、コンマコーティング法、バーコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、インクジェット法、スプレー法、ディスペンス法、スピンコート法等適宜の方法を用いることができる。
得られる焼結前成形体形は、有機溶剤等を除去するために、乾燥を行うことが好ましい。乾燥は、常圧下、減圧下、加圧下いずれの条件でも可能であるが、乾燥速度が速すぎると、焼結前成形体にクラックや反りが発生するおそれがあるため、焼結前成形体の物性に応じた適当な温度、圧力、風量等を選択して行う。なお、加圧下で乾燥する場合は、以下に説明する焼結前成形体のプレス処理を兼ねることになる。
焼結前成形体はプレス処理を行うことが好ましい。プレス処理により、金属粉末間の接触面積が増大するため、ネッキング部位が増える。また、プレス処理の圧力は高いほど、電気伝導度の向上、膜厚の低下、空隙率の低下が起こる。そのため、用途に応じて圧力の条件を選択する必要がある。ただし、プレス圧が低過ぎると金属粉末間の接触面積が増大せず、高すぎると空隙率が適切な範囲を外れて低下し、または金属粉末が塑性変形を起こす。そのため、好ましいプレス圧の範囲は0.1〜100MPaである。また、プレス処理において適切なクッション材を使用することが好ましい。クッション材としては紙、金属箔、シリコン、耐熱性プラスチック、ゴム等、適宜のものを使用することができる。プレス方法は、平板プレス、ロールプレス、真空ラミネーター等、適宜の方法で行うことができる。
次に、焼結前成形体を焼結して焼結体を製造する焼結工程について説明する。
焼結前成形体を焼結するに先立ち、脱脂処理を行うことが好ましい。脱脂処理は、焼結前成形体中に含まれる溶剤、結着剤および可塑剤(以下、あわせて残炭成分という)を熱分解又は蒸発させ除去することが目的である。通常は、残炭成分の大部分は、焼結工程における昇温時に除去されるが、残炭成分が焼結前成形体中に若干残る場合、焼結温度周辺の高温下で残炭成分と金属が反応し金属炭化物が形成することがある。その結果、焼結体の機械強度が低くなり、破損しやすくなる。特にチタンを焼結する場合は、800℃以上において容易に残炭成分とチタンが反応し炭化チタンが形成する。このため、脱脂処理を行い、確実に残炭成分を除去することが望ましい。
脱脂処理は、加熱処理、プラズマ処理、オゾン処理、溶剤による洗浄等の方法を用いることができる。加熱処理の場合は、焼結工程における昇温過程において、昇温速度を下げたり、保持時間を設けたりすることで、脱脂処理と焼結工程を連続して行うこともできる。このときの加熱環境は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、酸素原子を含む気体、気流下または雰囲気下、真空下等、金属粉末の種類によって適宜選択できるが、残炭成分を効率良く除去できるという点で酸素原子を含む気体中が好ましく、酸素ガス、空気、酸素ガスと不活性ガスの混合ガス等酸素原子が1%以上含む気体中がより好ましい。また、加熱温度と加熱時間は、結着剤の種類と量やガス種により適宜選択することができるが、特に酸素原子を含む気体中で行う場合は、焼結前成形体の酸化を抑制するという点で、400℃以下、より好ましくは350℃未満であることが好ましい。また、加熱時間は0.1〜6時間であることが好ましい。
焼結の条件は、焼結する金属の種類によって異なる。例えばチタンの場合は、酸化物や窒化物を形成し易いことから、真空中またはアルゴン不活性雰囲気下で行い、700〜1100℃の温度で、0.1〜6時間保持することが好ましく、750〜1000℃、0.5〜4時間保持することがより好ましい。温度が低過ぎると焼結が十分でなく、温度が高すぎると金属多孔体の反りが生じ、また、金属粉末が溶融することにより孔が閉塞し、多孔体とならないおそれがある。
焼結工程は、実質的に密閉状態の容器内で行い、焼結前成形体の近傍に炭化物および酸化物の標準生成自由エネルギー値が、焼結温度範囲で、焼結する金属粉末より大きい値を持つ金属(以下、ゲッター材という。)を配置して行うことが好ましい。
実質的に密閉状態の容器は、例えば開口が扉で閉止された真空焼成炉等である。
ゲッター材を配置した容器中で焼結することで、容器外の酸素の混入を防ぐとともに、容器内の酸素はゲッター材が優先的に反応・消費するので、焼結体の酸化が抑えられるため、より好ましい。ゲッター材の材質は、焼結する金属の種類によって異なるが、例えば金属粉末がチタンの場合は、ゲッター材はTi、ZrまたはHfが好ましい。
最後に、酸により焼結体から基材を分離除去する基材除去工程について説明する。
酸を用いた基材除去方法は、剥離効率の点から好ましい。酸の種類は、基材が剥離するものであれば、塩酸、硫酸、硝酸、王水等の無機酸、リン酸、カルボン酸等の有機酸等、特に制限はないが、焼結体が溶解しない酸、焼結体と化学反応しないものが好ましい。具体的には硝酸、硫酸が好適に用いられる。酸を用いた基材除去方法は、特に限定されず、焼結体を酸溶液に浸漬させる方法でもよいし、焼結体に酸溶液をスプレーする方法でもよい。基材剥離後は、速やかに洗浄を行い、焼結体に残存する酸を除去する。洗浄用の液体は、水、有機溶剤等、酸が溶解するものであれば、制限なく使用することができる。
以上説明した本実施の形態の第一の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法によれば、本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体の材料、すなわち、多孔質焼結金属シートを好適に得ることができる。
つぎに、本実施の形態の第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法について説明する。
本実施の形態の第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法は、基体金属と媒体金属の混合粉を成形して成形体を得る成形工程と、成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程と、成形工程および焼結工程のいずれか1つの工程または双方の工程の後に、成形体または焼結体を化学処理または物理処理して、媒体金属を分離除去する媒体金属分離除去工程をさらに含む。
ここで、基体金属と媒体金属は、予め基体金属および媒体金属をそれぞれ別に粉化したうえで混合することが、両者で異なる所望の粒径を得るうえで好ましく、また、粉砕性のことなる両者を所望の条件に粉砕するうえでも好ましい。一方、工程の簡略化を図る観点からは、基体金属と媒体金属を混合したうえで粉砕して粉化することが好ましい。
基体金属粉は、色素増感太陽電池用集電体材料となる金属粉を意味し、その粒径は最大粒径を45μm以下に整粒しておくことが好ましい。粒径45μmを大きく上回る粒径の基体金属粉粒子を過剰に含むと、最終的に得られる焼結体の強度が不足するおそれがある。この粒度範囲に整粒しておくことにより、基体金属粉と媒体金属粉を均一混合することができるとともに、基体金属の焼結を好適に行うことができる。
基体金属粉の金属種は、特に制限なく、水素化脱水素法(HDH法)により製造した金属粉末、スポンジ金属粉末、ガスアトマイズ金属粉末等が適用できるが、好ましくは、金属粉末間のネッキング部位が多い水素化脱水素法により製造した金属粉末である。
また、例えば、フィルターや電極等への適応性の観点からは、チタン、タングステン、モリブデン、ロジウム、白金、タンタル、ルテニウム、パラジウム、ニッケル等またはこれらを含む合金が好ましく、さらにはチタンまたはチタン合金を使用することが好ましい。
媒体金属粉は、基体金属粉と混合され、色素増感太陽電池用集電体材料製造後は除去されて空隙を形成するための媒体として機能する金属粉を意味し、その粒径は、以下に説明するように、得られる多孔体、言い換えれば製造する集電体材料が所望の空隙寸法となるのに好適な粒径に整粒しておくことが好ましい。
媒体金属粉の粒径は、分離のしやすさと最終的な空隙寸法を考慮して決めるべきであるが、分離の方法によって、経験的に決めるのが実際的である。これは、空隙寸法は媒体金属の粒度だけでなく、媒体金属の分散程度や焼結工程での収縮など、いろいろな因子に影響されるからである。したがって、媒体金属粉の粒径は、具体的に設定される集電体材料の諸条件に応じて予備実験等による試行錯誤を経て最適な値が決定される。例えば、媒体金属粉として鉄粉を用いる場合、1〜10μmの粒径範囲のものを用いることは、酸洗処理により、鉄を溶解除去する際に好適な実施態様である。
媒体金属粉の金属種は、焼結体から化学処理または物理処理により分離できるものであれば制限ないが、分離の容易さの点から、鉄、鉄−クロム合金、銅、マグネシウム、セレン、カルシウム、亜鉛、カドミニウム、ビスマス、鉛または鉛−スズ合金を使用することを好ましい態様とするものである。上記鉄−クロム合金は、例えば、鉄−9%クロム、鉄−11%クロム、鉄−13%クロム等の鉄基合金を好適に利用することができる。また、鉄や銅は、基体金属と反応しづらく、また、酸洗処理の際に容易に溶解するため、好ましい。
基体金属粉と媒体金属粉の配合比率は、得ようとする空隙の条件に応じて決定する。
基体金属粉と媒体金属粉の混合は、均一な混合粉を得ることができるならばどのような混合法でもよく、粉末冶金でよく用いられるV型混合器による混合で十分に目的を達せられる。
基体金属粉と媒体金属粉からなる混合粉は、焼結工程に先立ち、成形工程で成形する。
成形方法は特に限定するものではないが、プレス成形法や圧延成形法を好適に用いることができる。後者の圧延成形法を用いる場合、シース被覆圧延を行うことがより好ましい。シース被覆圧延により、圧延ロールを通過しない粉体が発生したときに、十分な圧延が行なえなくなるおそれをより確実に防止することができる。
プレス成形法の場合、好ましいプレス圧の範囲は1〜900MPaである。一方、圧延成形法の場合、好ましい圧延荷重の範囲はロール幅1mmあたり1ton以下である。シース材は延性に優れたアルミニウム等を用いることができる。
得られる成形体を、必要に応じて媒体金属分離除去工程を経て、加熱して焼結体を得る。
成形体を焼結する温度は、800〜1400℃であることが好ましい。用いる基体金属および媒体金属の金属種によって異なるものの、温度が800℃を大きく下回ると、空隙率が過大となるおそれがあり、一方、温度が1400℃を大きく上回ると、空隙率が過小となるおそれがある。加熱時間は0.1〜2時間であることが好ましい。
焼結は、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、もしくは水素ガス雰囲気下、または高真空下で行うことが好ましい。これにより、焼結時のチタンや鉄の酸化を効果的に抑制することができる。
媒体金属粉分離除去工程について説明する。
媒体金属粉分離除去工程は、成形工程および焼結工程のいずれか1つの工程または双方の工程の後に行う。成形工程後の媒体金属粉分離除去工程は、焼結工程後に媒体金属粉分離除去工程を必ず行う場合は工程簡略化の観点から省略することが可能である。逆に、焼結工程後の媒体金属粉分離除去工程は、成形工程後に媒体金属粉分離除去工程を必ず行う場合は工程簡略化の観点から省略することが可能である。成形工程後および焼結工程後にそれぞれ媒体金属粉分離除去工程を行うと、媒体金属粉分離除去をより確実に行うことができて好ましいことは勿論である。
化学処理は、基体金属が反応せず、媒体金属のみが反応する処理剤で媒体金属のみを溶解除去できるものであれば、例えばキレート化、アルカリ処理等の適宜の処理方法を用いることができるが、それらの中でも酸洗処理を用いることが最も簡便で好ましい。物理処理は、揮発分離処理や溶融分離処理等を用いることができる。
化学処理は、空隙率や平均空孔直径が比較的小さい焼結体を得るうえで好ましく、一方、物理処理は、空隙率や平均空孔直径が比較的大きい焼結体を得るうえで好ましい。なお、物理処理は化学処理に用いる酸洗処理等で発生する廃液の処理がないというメリットもある。
物理処理のうち揮発分離処理は、媒体金属として、基体金属との反応性が低く、また、基体金属よりも圧倒的に大きな蒸気圧を持っている亜塩やマグネシウム等を用いる場合に好ましい。一方、溶融分離処理は、媒体金属として、基体金属より低融点で、かつ融点付近の温度で基体金属と反応性が乏しい金属である錫、鉛、カルシウム、セレン、カドミウム、ビスマス、Pb−Sn合金あるいはその合金などを用いる場合に好ましい。
酸洗処理する場合、酸の種類は特に限定するものではなく、例えば無機酸等を用いることができるが、基体金属と反応しない硝酸や硫酸を用いることがより好ましい。
酸洗処理は、例えば、成形体または焼結体を酸溶液に浸漬する方法であってもよく、また、成形体または焼結体に酸溶液をスプレーする方法であってもよい。少なくとも焼結体を酸洗処理した後は、速やかに水等により洗浄を行い焼結体に残存する酸を除去する。
揮発分離処理は、媒体金属の蒸気圧よりも高真空の例えば10−4Torr(1.3x10−2Pa)以下の減圧下で300℃以上の温度で加熱保持処理することで、媒体金属を選択的に蒸発させて(揮発処理)消滅させる。加熱温度は、成形体を揮発分離処理する場合は300〜400℃が好ましく、一方、焼結体を揮発分離処理する場合は800〜1400℃が好ましい。加熱保持時間はいずれの場合も1時間以上が好ましい。
溶融分離処理は、金属浴に浸漬した成形体または焼結体を基体金属粉を溶融しない限度で媒体金属の融点以上の高温に加熱保持して、媒体金属を溶融除去する。
金属浴の金属種は、カルシウム、セレン、カドミウム、鉛、ビスマス、Pb−Sn合金を用いることが好ましい。これらの金属は低融点であるために媒体金属のみを選択的に溶融させることができ、その結果、基体金属だけを効果的に残留させることができる。
以上説明した本実施の形態の第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法例によれば、本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体の材料、すなわち、多孔質焼結金属シートを好適に得ることができる。
次に、図1に模式的に示す本実施の形態例に係る色素増感太陽電池10は、透明基板12と、カソード極となる導電性基板14と、透明基板12と導電性基板14の間に、透明基板12に近接してまたは接触して配置され色素を吸着した多孔質半導体層16と、多孔質半導体層16の透明基板12とは反対側に接触して配置されアノード極となる色素増感太陽電池用集電体18を備え、電解質20が封止される。
色素増感太陽電池用集電体18は、本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体、または、本実施の形態の第一の例もしくは第二の例に係る色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法により得られる材料を用いた色素増感太陽電池用集電体である。なお、図1中参照符号22は封止材を示す。
色素増感太陽電池用集電体18以外の色素増感太陽電池10の構成要素については、通常採用される適宜の材料を用い、適宜の方法で作製することができる。
透明基板12は、例えば、ガラス板であってもよくあるいはプラスチック板であってもよいが、プラスチック板を用いた場合、色素増感太陽電池に柔軟性を付与できるため、好ましい。プラスチック板を用いる場合、例えば、PET、PEN、ポリイミド、硬化アクリル樹脂、硬化エポキシ樹脂、硬化シリコーン樹脂、各種エンジニアリングプラスチックス、メタセシス重合で得られる環状ポリマ等が挙げられる。
導電性基板14は、透明基板12と同様の基板を用い、基板の電解質20に向けた面の一部に、例えば、ITO(スズをドープした酸化インジウム膜)、FTO(フッ素をド一プした酸化スズ膜)、SnO膜、Ti、W、Mo、Rh、Pt、Ta等の金属膜等の導電膜を積層し、さらに導電膜の上に例えば白金膜等の触媒膜を設ける。また、透明基板を省略し、金属箔に白金膜等の触媒膜を設けても良い。金属箔は、好ましくは、Tiである。
多孔質半導体層16は、材料として、ZnOやSnO等適宜のものを用いることができるが、TiOが好ましい。TiO等の微粒子形状は特に限定するものではないが、1nm〜100nm程度が好ましい。
多孔質半導体層16は、TiOのペーストの薄膜を形成した後に、例えば300〜550℃の温度で焼成する操作を繰り返して所望の厚膜にすると好ましい。
多孔質半導体層16を構成する微粒子の表面に、色素を吸着する。色素は、400nm〜1000nmの波長領域の少なくとも一部に吸収を持つものであり、例えば、ルテニウム色素、フタロシアニン色素などの金属錯体、シアニン色素などの有機色素を挙げることができる。吸着の方法は特に限定されず、例えば、色素溶液に多孔質半導体層16を形成した色素増感太陽電池用集電体18を浸し微粒子表面に色素を化学吸着させるいわゆる含浸法を用いることができる。
透明基板12と多孔質半導体層16は接触していても、接触していなくてもどちらでもよいが、両者の間隔はなるべく短いほうがよい。色素増感太陽電池用集電体18と導電性基板(対極) 14を接触しないように配置するため、例えば電解質20に対して耐腐食性を有し、かつ、電解質イオンの拡散を妨げないように十分な空孔を有するガラスペーパーなどのスペーサで絶縁する方法もある。色素増感太陽電池用集電体18と導電性基板14の間隔は100μm以下であることが好ましい。
電解質20は、特に限定されないが、例えば、ヨウ素、リチウムイオン、イオン液体、t−ブチルピリジン等を含むものであり、ヨウ素の場合、ヨウ化物イオンおよびヨウ素の組み合わせからのなる酸化還元体を用いることができる。また、コバルト等の金属錯体を酸化還元対として用いてもよい。また、この酸化還元体を溶解可能な溶媒を含むものであり、例えば、アセトニトリル、γブチロラクトン、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、イオン性液体等が挙げられる。
電解質20の注入方法は特に限定されず、例えば封止材22の一部をシールせずに開口部にしておき、その開口部から電解質20を注入し、開口部をシールすることもできる。また、導電性基板14の一部に予め開口部を設けておき、そこから電解質20を注入した後に開口部をシールすることもできる。
透明基板12と導電性基板14との間に電解質20を注入して封止する封止材22は、硬化後の厚みが100μm以下の熱可塑性樹脂シートや、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。
以上説明した本実施の形態例に係る色素増感太陽電池10は、色素増感太陽電池用集電体18が電解質20の通液性に優れて高い発電効率を得ることができる。
なお、上記の本実施の形態例に係る色素増感太陽電池以外の色素増感太陽電池、例えば、透明基板に透明導電膜を設けたものに本実施の形態例に係る色素増感太陽電池の集電体を設けたものや、多孔質半導体層の透明基板とは反対側に接触して配置されるものとは別の部位に1または2以上の集電体が配置されるもの等、色素増感太陽電池全般について本実施の形態例に係る色素増感太陽電池用集電体を適宜用いることができることは言うまでもない。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
水素化脱水素法により製造したチタン粉末(粒径3〜40μm、平均粒径10μm)と、エチルセルロース系結着剤(日新化成(株)製EC−200FTD)を、配合比がチタン粉末60質量%、結着剤40質量%となるよう混合し、スラリー状組成物を調整した。なお、結着剤は約80質量%のターピネオールと約20質量%のエチルセルロースからなる。
次に、このスラリー状組成物を厚み50μm、開口部12mm×50mmのメタルマスクを使ってスキージ法(スクリーン印刷法)により基材である20mm×60mm、厚さ100μmの鉄箔上に塗布し、これを30kPa下で150℃、1.5時間の減圧乾燥を行い、焼成前成形体を得た。その後、焼成前成形体を68.6MPaでプレス処理した。
そして、この焼成前成形体を鉄箔ごと真空焼成炉に入れて1×10−1Pa、300℃、1時間加熱し、脱脂処理を行った。さらに、真空焼成炉中の焼結前成形体の上面全面を覆うようにチタン箔をかぶせた後、3×10−3Paの圧力下、800℃の温度で、2時間加熱して焼成し、焼結体を得た。
さらに、この焼結体を、3N硫酸水溶液に1時間浸漬させて、焼結体と接触している鉄箔部分を溶解させて焼結体から鉄箔を剥離させた。
得られた焼結体を蒸留水および洗剤水で繰り返し洗浄し硫酸を除去した後、加熱乾燥して、多孔質チタン(多孔質焼結金属シート)を得た。
図2および図3に多孔質チタンのSEM写真を示す。図2は多孔質チタンを主面(表面)側から見たものであり、図中、参照符号24は多孔質チタンを、参照符号26は金属部を、参照符号28は孔部を、それぞれ示す。図3は多孔質チタンを断面側から見たものであり、図中、参照符号30は主面を、参照符号32は断面を、それぞれ示す。
得られた多孔質チタン(A−1)の厚み、空隙率、平均空孔直径、電気伝導率を測定した。得られた結果を、チタン粉末の粒径と併せて表1に示す。
作製した多孔質チタン(A−1)の10mm×50mmの範囲にチタニアペースト(商品名NanoxideD、ソーラ口ニクス社製)を印刷し、乾燥後、425℃で30分、空気中で焼成した。焼成後のチタニア上に、さらにチタニアベーストを印刷、焼成する操作を合計3回繰り返し、チタニア層付き多孔質Tiシート基板を得た。
N719色素(ソーラ口ニクス社製)のアセトニトリルとt‐ブチルアルコールの混合溶媒溶液に、作製したチタニア層付き多孔質Tiシート基板を64時間含浸させ、チタニア表面に色素を吸着した。吸着後の基板をアセトニトリルとt‐ブチルアルコールの混合溶媒で洗浄して、色素吸着チタニア層付き多孔質Tiシート基板を得た。
15mm×40mm、厚み20μmのチタン箔を、上記色素吸着チタニア層付き多孔質Tiシート基板のチタニアペースト未製膜面の端部2mmに積層し、取り出し電極付きアノード極を得た。
12mm×50mm、厚み50μmのチタン箔の片面に、白金を400nm蒸着させ、Pt触媒層付きTi基板とした。さらに、上記Pt触媒層付きTi基板のPtのない面の端部2mmに15mm×40mm、厚み20μmのチタン箔を積層し、取り出し電極付きカソード極を得た。
24mm×60mm、厚み60μmの樹脂シート(SOLARONIX社製、商品名MELTONIX1170−60)を貼合せた24mm×60mm、厚み125μmのPENフィルムの、上記樹脂シート面と、上記取り出し電極付きカソード極のチタン箔面が向き合うように積層した。さらに、上記取り出し電極付き対極のPt触媒層面に、16mm×52mm、厚み50μm、空隙率85%以上のガラスペーパーを積層した。
さらに、上記取り出し電極付きアノード極のチタニアペースト未製膜面と、ガラスペーパーに向かい合うように積層した。さらに、24mm×60mm、厚み60μmの上記樹脂シートを貼合せた24mm×60mm、厚み125μmのPENフィルムの、上記樹脂シート面と、上記取り出し電極付きアノード極の色素吸着チタニア層面が向かい合うように積層した。また、カソード電極側のPENフィルムにφ3mmの電解液挿入穴を設けた。これらを温度130℃でロールプレスした。
さらに、上記電解液挿入穴から、ヨウ素、LiIを含むγ-ブチロラクトン溶媒の電解液を減圧注入した後、電解液挿入穴をUV硬化樹脂で封止し、色素増感太陽電池(C−1)を得た。
得られた色素増感太陽電池の光電変換性能を、0.1mW/cmの強度の蛍光灯をアノード極側から照射したときのIV曲線を測定して調べた。得られた結果を表2に示す。
(実施例2)
多孔質チタン(A−1)の代わりに、スラリー発泡法により製造された発泡金属である三菱マテリアル製多孔質チタンシート(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池(C−2)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例3)
水素化脱水素法により製造したチタン粉末(粒径45μm以下、平均粒径24μm)572gとカルボニル・粉砕法で製造した鉄粉428g(粒径2〜9.6μm、平均粒径4.5μm)を徳寿製作所製の混合機(V−5型)を用いて均一混合し、金型に装入し、次いで200MPaで加圧して成形体を得た。得られた成形体を硝酸3%を含む水溶液に72時間浸漬し水洗した後、1150℃、2×10−5mbar、2時間焼結処理を行い、多孔質チタン(A−3)を得た。
得られた多孔質チタン(A−3)の厚み、空隙率、平均空孔直径、電気伝導率を測定した。さらに、多孔質チタン(A−1)の代わりに多孔質チタン(A−3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で色素増感太陽電池(C−3)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例4)
金型に装入する代わりに、シース圧延(株式会社吉田記念製、実験用圧延機)を用いて
加圧して成形体を得たこと以外は実施例3と同様にして多孔質チタン(A−4)及び色素増感太陽電池(C−4)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例5)
水素化脱水素法により製造したチタン粉末(粒径45μm以下、平均粒径24μm)596gと亜鉛粉404g(粒径8〜42μm、平均粒径20μm)を徳寿製作所製の混合機(V−5型)を用いて均一混合し、金型に装入し、次いで200MPaで加圧して成形体を得た。得られた成形体を日本真空技術製実験用加熱炉に挿入し、300℃、2時間、2×10−5mbarの真空で加熱後、温度を900℃に上げて2時間焼結処理を行い、多孔質チタン(A−5)を得た。
得られた多孔質チタン(A−5)の厚み、空隙率、平均空孔直径、電気伝導率を測定した。さらに、多孔質チタン(A−5)を用いて、実施例1と同様の方法で色素増感太陽電池(C−5)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例6)
アトマイズ法により製造したチタン粉末(粒径45μm以下、平均粒径32μm)687gとセレン粉313g(粒径10〜42μm、平均粒径24μm)を徳寿製作所製の混合機(V−5型)を用いて均一混合し、金型に装入し、次いで200MPaで加圧して成形体を得た。チタン製の容器の上にチタン製の金網を敷いて、その上に得られた成形体を置き、日本真空技術製実験用加熱炉に挿入した。800℃、2時間、2×10−5mbarの真空で加熱後、温度を1050℃に上げて2時間焼結処理を行い、多孔質チタン(A−6)を得た。
得られた多孔質チタン(A−6)の厚み、空隙率、平均空孔直径、電気伝導率を測定した。さらに、多孔質チタン(A−6)を用いて、実施例1と同様の方法で色素増感太陽電池(C−6)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例7)
鉄粉の代わりに水アトマイズ法で製造により製造したFe−12%Cr合金粉(最小粒径4μm、最大粒径9.8μm、平均粒径7μm)を使用し、硝酸3%の代わりにpH1.4の塩酸と硝酸を含む混合溶液を使用した以外は、実施例3と同様の方法で、多孔質チタン(A−7)および色素増感太陽電池(C−7)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例8)
24mm×60mmの透明導電膜(FTO)付きガラスの透明導電膜側の10mm×50mmの範囲にチタニアペースト(商品名NanoxideD、ソーラ口ニクス社製)を印刷し、乾燥後、425℃で30分、空気中で焼成した。焼成後のチタニア上に、さらにチタニアベーストを印刷、焼成する操作を合計2回繰り返した。さらに焼成後のチタニア上に、チタニアベーストを印刷後、多孔質チタン(A−1)をチタニア側に積層して乾燥し、425℃で30分、空気中で焼成し、透明導電膜付きガラス、チタニア、多孔質Tiシートの積層体基板を得た。
N719色素(ソーラ口ニクス社製)のアセトニトリルとt‐ブチルアルコールの混合溶媒溶液に、作製した積層体基板を64時間含浸させ、チタニア表面に色素を吸着した。吸着後の基板をアセトニトリルとt‐ブチルアルコールの混合溶媒で洗浄して、色素吸着積層体基板を得た。
15mm×40mm、厚み20μmのチタン箔を、上記色素吸着チタニア層付き多孔質Tiシート基板のチタニアペースト未製膜面の端部2mmに積層し、取り出し電極付きアノード極を得た。チタン箔は多孔質Tiシートと透明導電膜の両方に接触するよう配置して積層した。
24mm×60mm、厚み60μmの樹脂シート(SOLARONIX社製、商品名MELTONIX1170−60)に16mm×52mmの開口部を設けた封止部材を得た。上記封止部材を上記取り出し電極付きアノード極の色素吸着チタニア層面側の、取り出し電極とガラス基板の間で、取り出し電極が多孔質Tiシートと透明導電膜の両方に接触する事を阻害しない様に配置した。
12mm×50mm、厚み50μmのチタン箔の片面に、白金を400nm蒸着させ、Pt触媒層付きTi基板とした。さらに、上記Pt触媒層付きTi基板のPtのない面の端部2mmに15mm×40mm、厚み20μmのチタン箔を積層し、取り出し電極付きカソード極を得た。
24mm×60mm、厚み60μmの樹脂シート(SOLARONIX社製、商品名MELTONIX1170−60)を貼合せた、24mm×60mm、厚み125μmのPENフィルムの、上記樹脂シート面と、上記取り出し電極付きカソード極のチタン箔面が向き合うように積層した。さらに、上記取り出し電極付き対極のPt触媒層面に、16mm×52mm、厚み50μm、空隙率85%以上のガラスペーパーを積層した。さらに、上記16mm×52mmの開口部を設けた封止部材を配置した、取り出し電極付きアノード極の多孔質Tiシート側のチタニアペースト未製膜面と、ガラスペーパーに向かい合うように積層した。また、カソード電極側のPENフィルムにφ3mmの電解液挿入穴を設けた。これらを温度130℃でロールプレスした。
さらに、上記電解液挿入穴から、ヨウ素、LiIを含むγ-ブチロラクトン溶媒の電解液を減圧注入した後、電解液挿入穴をUV硬化樹脂で封止し、色素増感太陽電池(C−7)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例9)
実施例1と同様にしてスラリー状組成物を調製し、このスラリー状組成物を塗布厚み75μmに設定したベーカー式アプリケーター(宝泉株式会社製)を使って基材である60mm×70mm、厚さ100μmの鉄箔上に塗布し、これを30kPaの圧力下、150℃の温度で、1.5時間減圧乾燥を行い、燒結前成形体を得た。
そして、この燒結前成形体を鉄箔ごとシリコニット炉に入れて大気圧下、300℃の温度で、1時間加熱し、脱脂処理を行った。次に、脱脂処理を行った燒結前成形体を真空焼成炉に入れ、焼結前成形体の上面全面を覆うようにチタン箔をかぶせた後、3×10−3Paの圧力下、800℃の温度で、2時間加熱し、焼結体を得た。
さらに、この焼結体を、3N硫酸水溶液に1時間浸漬させて、焼結体と接触している鉄箔部分を溶解させて焼結体から鉄箔を剥離させた。
得られた焼結体を3N硫酸で酸洗した後、蒸留水および洗剤水で繰り返し洗浄し硫酸を除去した後、加熱乾燥して多孔質チタン(A−9)を得た。さらに、多孔質チタン(A−9)を用いて、実施例1と同様の方法で色素増感太陽電池(C−9)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例10)
燒結前成形体を294MPaでプレスした以外は、実施例2と同様にして多孔質チタン(A−10)及び色素増感太陽電池(C−10)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例11)
平均粒径17μmのチタン粒子を用い、スラリー状組成物を厚み50μm、開口部10×30mmのメタルマスクを使い、スキージ法で塗布した以外は、実施例2と同様にして多孔質チタン(A−11)及び色素増感太陽電池(C−11)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例12)
平均粒径10μmのチタン粒子30質量%と、平均粒径6μmの水素化チタン粒子30質量%と、エチルセルロース系結着剤40質量%を配合したスラリー状組成物を厚み50μm、開口部10×30mmのメタルマスクを使い、スキージ法で塗布した以外は、実施例2と同様にして多孔質チタン(A−12)及び色素増感太陽電池(C−12)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例13)
燒結工程において、燒結前成形体の上面全面をジルコニウム箔で覆いかぶせた以外は、実施例2と同様にして多孔質チタン(A−13)及び色素増感太陽電池(C−13)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例14)
スラリー状組成物を厚み50μm、開口部10×30mmのメタルマスクを使い、スキージ法で塗布し、脱脂処理を1×10−1Pa下で行った以外は、実施例2と同様にして多孔質チタン(A−14)及び色素増感太陽電池(C−14)を得た。結果を表1および表2に示す。
(実施例15)
スラリー状組成物を厚み50μm、開口部10×30mmのメタルマスクを使い、スキージ法で塗布し、脱脂処理を1×10−1Pa下で行い、基材除去工程を3N硝酸で行った以外は、実施例2と同様にして多孔質チタン(A−15)及び色素増感太陽電池(C−15)を得た。結果を表1および表2に示す。
(比較例1)
多孔質チタン(A−1)の代わりに、大阪チタニウム製多孔質チタンシート(B−1)(商品名タイボラス)を用いた以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池(D−1)を得た。結果を表1および表2に示す。
(比較例2)
水素化脱水素法により製造したチタン粉末(粒径3〜5μm、平均粒径4μm)を用い、実施例1と同様のスラリー状組成物を厚み20μm、開口部10mm×30mmのスクリーンマスクを使ってスクリーン印刷法により基材である20mm×40mm、厚さ100μmの鉄箔上に塗布した。その後実施例1と同様にして多孔質チタン(多孔質焼結金属シート B−2)を得た。得られた結果を、チタン粉末の粒径と併せて表1に示す。
作製した多孔質チタン(B−2)を用いて、実施例1と同様にしてチタニア層付き多孔質Tiシート基板を得た。得られたチタニア層付き多孔質Tiシート基板は、チタニア側にカールし、一部チタニアの剥離が見られた。多孔質チタン(B−2)を用いて、実施例1と同様の方法で色素増感太陽電池(D−2)を得た。結果を表1および表2に示す。
Figure 0005805568
Figure 0005805568
10 色素増感太陽電池
12 透明基板
14 導電性基板
16 多孔質半導体層
18 色素増感太陽電池用集電体
20 電解質
22 封止材
24 多孔質焼結金属シート
26 金属部
28 孔部
30 主面
32 断面

Claims (9)

  1. 金属粉末および溶剤を含むスラリー状組成物を、酸に対して溶解性を有する基材上に成形して焼結前成形体を得る焼結前成形体形成工程、該焼結前成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程および酸により該焼結体から該基材を分離除去する基材除去工程を含むことを特徴とする色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  2. 前記基材がFeまたはFeを含む合金で形成されることを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  3. 前記焼結工程を、実質的に密閉状態の容器内で行い、炭化物および酸化物の標準生成自由エネルギー値が、焼結温度範囲で、前記金属粉末より大きい値を持つ金属を前記焼結前成形体の近傍に配置することを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  4. 前記金属がTi、ZrおよびHfから選ばれる1種であることを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  5. 基体金属と媒体金属の混合粉を成形して成形体を得る成形工程と、該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程と、該成形工程および該焼結工程のいずれか1つの工程または双方の工程の後に、該成形体または該焼結体を化学処理または物理処理して、該媒体金属を分離除去する媒体金属分離除去工程をさらに含むことを特徴とする色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  6. 前記化学処理が、酸洗処理であることを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  7. 前記物理処理が、揮発分離処理または溶融分離処理であることを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  8. 前記基体金属が、TiまたはTi合金であることを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
  9. 前記媒体金属が、鉄、鉄−クロム合金、銅、マグネシウム、セレン、カルシウム、亜鉛、カドミニウム、ビスマス、鉛および鉛−スズ合金から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項に記載の色素増感太陽電池用集電体材料の製造方法。
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