以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す縦断面図である。ここでは、少なくともカラーコピー機能を提供する画像形成装置を説明する。
画像形成装置は、図1に示すように、カラー画像を読み取り可能なリーダ10およびカラー画像形成可能なプリンタ20を備える。リーダ10は、原稿を1枚ずつ給送する自動原稿給送装置11および自動原稿給送装置11により給送された原稿上の画像をフルカラーで読み取ることが可能なスキャナ12を有する。スキャナ12は、原稿から読み取った画像データ(R,G,Bの各色の画像データ)を、画像処理部(図示せず)に出力する。上記画像処理部は、スキャナ12から出力された画像データに対して所定の画像処理を施し、画像処理された画像データをM(マゼンタ),C(シアン),Y(イエロー),K(ブラック)の各色の画像データに変換してプリンタ20に出力する。
プリンタ20は、電子写真方式により、上記画像処理部から出力された各色(M,C,Y,K)の画像データに基づいて、カラー画像または白黒画像を用紙上に形成する。プリンタ20は、詳細には、複数の露光ユニット26m,26c,26y,26kおよび複数の画像形成ユニット21m,21c,21y,21kを有する。
各露光ユニット26m〜26kは、対応する色(M,C,Y,K)の画像データに基づいてレーザ光を変調し、当該変調されたレーザ光で、対応する画像形成ユニット21m〜21kの感光ドラム22を露光走査する。
各画像形成ユニット21m〜21kは、感光ドラム(像坦持体)22、帯電器23、現像器24およびクリーナ25を有する。各画像形成ユニット21m〜21kの構成は同じであるので、ここでは、画像形成ユニット21mの構成要素のみに符号を付し、他の画像形成ユニット21c〜21kの構成要素に対する符号を、省略する。
感光ドラム22の表面は、帯電器23により、所定の電位に帯電させられた後に、対応する露光ユニット26m,26c,26y,26のレーザ光により露光走査される。これにより、感光ドラム22の表面には、画像データに対応する色の静電潜像が形成される。感光ドラム22上に形成された静電潜像は、現像器24により、トナー像に現像され、当該トナー像は感光ドラム22に坦持される。クリーナ25は、一次転写後の感光ドラム22の表面に残留するトナーを掻き落とし、回収する。
各画像形成ユニット21m〜21kの感光ドラム22にそれぞれ坦持された各色のトナー像は、対応する一次転写器28m〜28kにより、中間転写ベルト29上に重ね合わされて転写される(一次転写)。これにより、中間転写ベルト29上には、フルカラーのトナー像が形成される。
中間転写ベルト29に転写されたトナー像は、給紙カセット30または手指しトレイ31からレジストレーションローラ32を経て二次転写位置Tに給紙された用紙に転写される(二次転写)。トナー像が転写された用紙は、定着器33に導かれ、定着器33は、用紙上のトナー像を用紙に定着させる。トナー像が定着された用紙は、排紙トレイ34上に排紙される。
次に、各露光ユニット26m〜26kについて図2を参照しながら詳細に説明する。図2は図1の露光ユニット26m〜26kの主要部構成を示す模式図である。ここでは、各露光ユニット26m〜26kの構成は同じあるので、露光ユニット26mの構成を説明する。
露光ユニット26mは、図2に示すように、レーザ光源200、コリメータレンズ201、ポリゴンミラー202、f−θレンズ204、ビームデテクトセンサ(以下、BDセンサという)205、濃度センサ206およびレーザドライバ209を有する。
レーザ光源200は、副走査方向に所定の間隔をおいて配列されている複数の発光部を有する面発光型半導体レーザ素子からなる。このレーザ光源200は、例えば、従来の端面発光型半導体レーザ素子のスイッチング周波数が数十MHzである状況下において、数百MHzなどの高いスイッチング周波数で駆動される。
レーザ光源200が発光した複数本のレーザ光(各発光部がそれぞれ発光した複数本のレーザ光)は、それぞれ、コリメータレンズ201を介して平行なレーザ光に変換された後に、回転中のポリゴンミラー202に入射する。ここで、ポリゴンミラー202は、スキャナモータ203により、所定の等角速度で、回転駆動される。
ポリゴンミラー202に入射した各レーザ光は、ポリゴンミラー202により反射されて、f−θレンズ204へ至る。各レーザ光は、f−θレンズ204を通過して、感光ドラム22上において主走査方向に等速で結合走査される。この複数本のレーザ光の走査(即ちスキャン動作)により、感光ドラム22の表面には、複数の主走査方向ラインの潜像が同時に形成される。
BDセンサ205は、レーザ光源200を強制的に点灯する強制点灯期間にポリゴンミラー202により反射されて入力されたレーザ光を検出すると、ビームデテクト信号(以下、BD信号という)S1をコントローラ210に出力する。このBD信号S1は、主走査毎の画像形成書き出しタイミングの基準信号となる信号である。
濃度センサ(濃度検出手段)206は、感光ドラム22の表面に形成された濃度検出用パターン画像の濃度を検出し、その検出結果(検出した濃度)を示す濃度信号S2をコントローラ210に出力する。
コントローラ210は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース(図示せず)などから構成され、装置全体の制御を行うとともに、後述する処理を含む各種処理を実行する。
コントローラ210は、BD信号S1に基づいて、書き出しシーケンスを実行する。この書き出しシーケンスの実行に伴い、ビデオ信号Voがレーザドライバ209に入力される。
また、コントローラ210は、濃度センサ206からの濃度信号S2(濃度検出用パターン画像の濃度)に基づいて、目標光量を算出するための目標光量算出処理と、上記算出された目標光量を得るための目標電流を算出する目標電流算出処理を行う。そして、コントローラ210は、上記算出された目標電流を示す目標電流信号S4をレーザドライバ209に出力する。
また、コントローラ210は、温度センサ(温度検出手段)207から出力される温度信号S6に基づいて、電圧源101に設定する電圧を算出する電圧算出処理を行う。そして、コントローラ210は、上記算出された電圧を示す電圧設定信号S5をレーザドライバ209に出力する。ここで、温度センサ207は、レーザ光源200の周囲温度を検出するように配置されており、温度信号S6は、検出結果(検出したレーザ光源200の周囲温度)を示す信号である。
また、コントローラ210は、スキャナモータ203を駆動するための駆動制御信号S7を生成してスキャナモータ203に出力する。
レーザドライバ209は、ビデオ信号Voに応答してレーザ光源200の各発光部を駆動すべく、各発光部に駆動電流Idを供給する。
次に、レーザドライバ209の構成について図3を参照しながら説明する。図3は図2のレーザドライバ209の構成を示す回路図である。
レーザドライバ209には、図3に示すように、レーザ光源200の発光部107毎に駆動回路209i(i=1〜n)が設けられている。各駆動回路209iは、それぞれ、ビデオ信号Voに応答して対応するスイッチング周波数(例えば数百MHzなどの高い周波数)で対応する発光部107を駆動すべく、発光部107への駆動電流Idの供給および遮断を行う。レーザ光源200の各発光部107は、それぞれ対応する主走査方向ラインを露光走査するように、設けられているものである。ここでは、1つの発光部107に対する1つの駆動回路209iのみが図示されている。
駆動回路209iは、電圧源101、電流検出回路102、電流制御回路103、エラーアンプ104、時定数回路105、スイッチング素子106およびインバータ113を有する。
電圧源101は、上記電圧設定信号S5により設定された電圧V1を出力する可変電圧源であり、電圧V1は、後述するように、目標電流に対してオーバーシュートした電流を生じさせる電圧である。
電流検出回路102は、電圧源101からスイッチング素子106を介して発光部107に至る電流路に流れる電流を検出し、当該検出した電流を示す電流検出信号S9を出力する。
電流制御回路103は、後述するエラーアンプ104からの応答制御信号S8に基づいて、電圧源101から出力された電圧V1に応じて生じた電流(目標電流に対してオーバーシュートした電流を制御する。詳細には、電流制御回路103は、まず、上記応答制御信号S8に基づいて、電圧源101から出力された電圧V1に応じて生じた最大の電流(目標電流に対してオーバーシュートした電流)を駆動電流Idとして出力する。この最大の電流は、目標電流に対してオーバーシュートした電流である。その後、電流制御回路103は、上記応答制御信号S8に基づいて、上記駆動電流Idを、時定数回路105により決定された時定数で、目標電流に収束させる。
エラーアンプ104は、電流検出回路102からの電流検出信号S9と目標電流信号S4の差分を検出する。そして、上記差分を示す信号が、応答制御信号S8として電流制御回路103に出力される。ここで、上記差分は、電流検出信号S9が示す電流が、時定数回路105により決定された時定数が規定する時間で、次第に、目標電流信号S4が示す目標電流に向けて収束するように、変化する。
時定数回路105は、コンデンサから構成され、ビデオ信号Voに応答する駆動回路の動作の時定数として、電流制御回路103が駆動電流Idを目標電流に収束させる際の時定数を決定する。ここで、上記時定数は、発光部107の出力特性(使用環境に応じた立ち上がり特性など)に応じた立ち上りの遅れ時間(遅れ量)と同じになるように決定されたものである。そして、上記コンデンサの容量は、上記時定数が得られるように選択された値である。
上記コンデンサには、スイッチング素子106がオフ動作中に、電荷が蓄積される。そして、上記コンデンサに蓄積された電荷は、発光部107の点灯開始に応答して即ちスイッチング素子106のオン動作に応答して放電され、当該放電は、上記時定数が規定する時間で完了する。
発光部107(レーザ光源200の各発光部107)を立ち上げる際の時定数回路105により決定された時定数の作用の詳細については、後述する。
スイッチング素子106は、ビデオ信号Voが入力されたインバータ113の出力に基づいて、スイッチング動作(即ち、オン、オフ動作)を行う。このスイッチング動作により、発光部107に対して駆動電流Idの供給および遮断が行われる。インバータ113に入力されるビデオ信号Voは、発光部107に対応する主走査方向ラインのビデオ信号である。
次に、発光部107(面発光型半導体レーザ素子)の特徴について図4を参照しながら簡単に説明する。図4(a)は従来の定電流制御で発光部107を駆動した場合の駆動電流Id’、発光部の光出力のそれぞれの立ち上がり波形を示す図である。図4(b)は図3の駆動回路209iにより発光部107を駆動した場合の駆動電流Id、発光部の光出力のそれぞれの立ち上がり波形を示す図である。
発光部107には、駆動電流Idに応答して短時間に、光出力を目標光量まで立ち上げることが要求される。しかし、発光部107は、駆動電流Idの立ち上がりに対して、立ち上がり(光出力の目標光量に達するまでの立ち上がり)が遅れるという特性を有する。また、その遅れ量(遅れ時間)は、発光部107の光量、周囲温度(または発光部107の温度)などにより大きく変動する。
従来、例えば図4(a)に示すように、ビデオ信号Voの入力に対して、駆動電流Id’の供給が開始される。この駆動電流Id’の供給開始により、発光部107の光出力(レーザ光の波形)は、ある光量までは即座に立ち上がるが、その後から目標光量に達するまでの期間に関しては、電流制御回路が有する時定数で、徐々に立ち上がる。ここで、駆動電流Id’の立ち上がりに対する光出力の立ち上がりの遅れは、温度(発光部107の温度またはその周囲温度)により影響されるものであり、低温時は遅れ量が大きく(実線)、高温時は遅れ量が小さくなる(点線)。
このようなレーザ光源の立ち上がりの遅れは、上述したように、画素の潜像形成に影響を与える。例えば、立ち上がり時間が長くなると、潜像の細りが生じるなど、画質の劣化を招くことになる。
本実施の形態においては、図4(b)に示すように、ビデオ信号Voに応答して発光部107を点灯させる際には、まず、電圧源101が出力する電圧V1に応じて生じた最大の電流が駆動電流Idとして発光部107に供給される。この最大の電流は、目標電流に対してオーバーシュートした電流である。これにより、従来に比して、より短い時間(速い速度)で、光出力が目標光量に達するように、発光部107を立ち上げることができる。即ち、発光部107の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができる。
ここで、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idが発光部107に供給され続けると、発光部107の光出力が目標光量を超えた状態になり、潜像の太りが生じるなど、画素の潜像形成に影響を与える。この潜像の太りを回避するために、適正な時間で、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idを目標電流に収束させることが必要である。
そのため、電流制御回路103において、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idを、上記時定数(応答制御信号S8)で目標電流に収束させる制御が行われる。この時定数は、上述したように、発光部107の出力特性に応じた立ち上りの遅れ時間と同じになるように決定されたものである。これにより、発光部107の光出力の立ち上がり波形を、遅れ量が小さい安定した波形(略矩形の波形)とすることができる。
具体的には、上記駆動回路209iにおいて、電圧源101は、電圧設定信号S5により設定された電圧V1を出力している。ここで、L(Low)レベルのビデオ信号Voがインバータ113に入力されると、インバータ113は、H(High)レベルの信号を出力する。このインバータ113からのHレベルの信号により、スイッチング素子106は、オフ動作する。
スイッチング素子106がオフ動作している場合、電流検出回路102は、電流を検出しない。これにより、エラーアンプ104から出力される応答制御信号S8は、電流制御回路103に対して、電圧源101の電圧V1に応じた最大の電流を駆動電流Idとして出力させる信号となる。
次にHレベルのビデオ信号Voがインバータ113に入力されると、インバータ113からは、Lレベルの信号が出力され、スイッチング素子106は、オン動作する。これにより、電流制御回路103は、発光部107に対して、電圧源101から出力された電圧V1に応じた最大の電流を、駆動電流Idとして供給する。このような動作により、光出力が目標光量に即座に達するように発光部107を立ち上げることができる。
このとき、電流検出回路102は、電圧源101からスイッチング素子106を経て発光部107に供給される電流を検出し、電流検出信号S9をエラーアンプ104に出力する。電流検出回路102が検出した電流は、目標電流に対してオーバーシュートした電流であり、時定数回路105のコンデンサの放電により、エラーアンプ104の入力には、その出力から時定数回路105を介して負帰還が掛る。そして、時定数回路105が決定した時定数が規定する時間の経過に伴い、電流検出回路102が検出した電流と目標電流の差分(応答制御信号S8が示す値)は、次第に小さくなる。よって、上記応答制御信号S8に基づいて、電流制御回路103は、上記時定数で、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idを目標電流に向けて収束させる。
また、電圧設定信号S5が設定する電圧即ち電圧源101が出力する電圧V1は、発光部107(レーザ光源200)の周囲温度(温度センサ207の温度信号S6)および目標光量に基づいて決定された電圧である。即ち、この電圧設定信号S5により、発光部107の立ち上がり時に、当該発光部107に対して電流制御回路103が供給する最大の電流を制御することが可能になる。よって、発光部107(レーザ光源200)の周囲温度に影響されることなく、発光部107の立ち上がり時においては、遅れ量が小さい安定した波形(略矩形の波形)の光出力を得ることができる。
ここで、例えばレーザ光源200の周囲温度(温度センサ207の温度信号S6)が第1の温度(低温時)の場合と、当該第1の温度より高い第2の温度(高温時)の場合を想定する。
第1の温度の場合、第2の温度の場合に比して、電圧設定信号S5により、電圧源101が出力する電圧V1は、大きくされる。これにより、第1の温度の場合に電流制御回路103が供給する最大の電流は、第2の温度の場合に比して、大きくなる。即ち、図4(b)に示すように、低温時には、高温時に比して、駆動電流Idの立ち上がり波形が高くなる(目標電流に対する行き過ぎ量が大きくなる)ように、高い電圧V1が設定される。これにより、光出力の立ち上がり時における高温時の遅れ量(図4(a)の実線)より大きい低温時の遅れ量(図4(a)の点線)を小さくすることができる。よって、低温時の立ち上がり時において、遅れ量が非常に小さい安定した波形の光出力を得ることができる。
これに対し、第2の温度の場合、第1の温度の場合に比して、電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧V1は、小さくされる。即ち、図4(b)に示すように、高温時には、低温時に比して、駆動電流Idの立ち上がり波形が低くなる(目標電流に対する行き過ぎ量が小さくなる)ように、低い電圧V1が設定される。
次に、目標電流信号S4が示す目標電流と電圧設定信号S5が設定する電圧を算出する処理について図5を参照しながら説明する。図5は目標電流信号S4が示す目標電流と電圧設定信号S5が設定する電圧を算出する処理の手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示す手順は、例えば電源投入時などの予め決められたタイミングにおいて、コントローラ210により実行されるものである。
コントローラ210は、図5に示すように、まず、予め決められている濃度検出用パターン画像(トナー像)を、感光ドラム22上に形成する(ステップS500)。そして、コントローラ210は、濃度センサ206からの濃度信号S1に基づいて、感光ドラム22に形成された濃度検出用パターン画像の濃度を検出する(ステップS501)。
次いで、コントローラ210は、検出した濃度に基づいて、目標光量を算出する(ステップS502)。そして、コントローラ210は、上記算出した目標光量を得るための目標電流および目標電圧を算出する(ステップS503)。
次いで、コントローラ210は、温度センサ207からの温度信号S6に基づいて、レーザ光源200(発光部107)の周囲温度を検出する(ステップS504)。そして、コントローラ210は、表1に示すテーブルを参照し、上記算出した目標光量(光出力)と上記検出した周囲温度に基づいて、上記目標電圧を補正するための補正係数を算出する(ステップS505)。
次いで、コントローラ210は、上記算出した補正係数を用いて上記目標電圧を補正し、当該補正した電圧を、電圧源101が出力する電圧V1として算出し(ステップS506)、本処理を終了する。
このようにして目標電流および電圧源101が出力する電圧V1が算出されると、上記目標電流を示す目標電流信号S4が電流制御回路103に、上記電圧V1を設定するための電圧設定信号S5が電圧源101にそれぞれ出力される。
ここで、表1に示すテーブルは、目標電圧を補正するめの補正係数α(%)を示すものである。目標電圧をVAとすると、電圧源101が出力する電圧V1は、(1+α/100)VAとなる。例えば光出力が0.2(mW)の場合において、補正係数αは、16(%)であるので、電圧源101が出力する電圧V1は、1.16VAとなる。
発光部107は点灯、消灯を繰り返すことにより、発光部107の周囲温度は、変動する。これに伴い、発光部107の立ち上がりの遅れ量が変化する。よって、本実施の形態は、発光部107の周囲温度の変動による発光部107の立ち上がりの遅れ量の変化に対応するために、電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧V1を変更する。
この電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧V1を変更する場合について図6を参照しながら説明する。図6は電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧V1を変更する際のビデオ信号Vo、駆動電流Id、目標電流信号S4、電圧源101の出力電圧V1、発光部107への印加電圧Vd、応答制御信号S8、光出力のそれぞれの波形を示す図である。
図6に示すように、スイッチング素子106がオフ動作している初期状態においては、発光部107には駆動電流Idが流れておらず、また、電流検出回路102は、電流を検出していない。このとき、電圧源101は、電圧設定信号S5により設定された電圧V1を出力しており、電流制御回路103は、エラーアンプ104からの応答制御信号S8により、最大の電流を供給する状態にある。
ここで、タイミングT1において、インバータ113にHレベルのビデオ信号Voが入力されると、スイッチング素子106は、オン動作する。そして、電流制御回路103からは、電圧源101が出力する電圧V1に応じた最大の電流が駆動電流Idとして、発光部107に供給される。また、電流検出回路102が検出した電流(電流検出信号S9)は、目標電流信号S4が示す目標電流より大きくなる。
エラーアンプ104は、電流検出信号S9が示す電流と目標電流信号S4が示す目標電流の差分を示す応答制御信号S8を出力する。この応答制御信号S8が示す差分は、時定数回路105により決定された時定数が規定する時間で、次第に小さくなるように変化する。電流制御回路103は、エラーアンプ104からの応答制御信号S8により、時定数回路105により決定された時定数が規定する時間で、駆動電流Idを目標電流に収束させる。これに合わせて、発光部107への印加電圧Vdは、電圧V1から次第に低下する。
タイミングT2において、ビデオ信号V0がLレベルになると、スイッチング素子106は、オフ動作する。これにより、電流検出回路102が検出した電流は目標電流(目標電流信号S4)より小さくなる。よって、エラーアンプ104の応答制御信号S8が示す差分が次第に大きくなり、電流制御回路103は、駆動電流Idを増大させる電流制御状態になる。
タイミングT3〜T4の間の期間において、インバータ113にタイミングT1〜T2の間の期間のビデオ信号Voよりデューティが低いビデオ信号Voが入力されると、当該ビデオ信号Voに基づいてスイッチング素子106は、オン、オフ動作する。タイミングT2〜T3の間の期間は、時定数回路105が十分に飽和する期間であり、タイミングT1と同様に、電圧源101からは電圧V1が出力される。
スイッチング素子106がオン動作すると、応答制御信号S8が示す差分は、次第に小さくなる。これに対し、スイッチング素子106がオフ動作すると、応答制御信号S8が示す差分は、次第に大きくなる。このように、スイッチング素子106のオン、オフ動作に合わせて、応答制御信号S8が示す差分は、増減を繰り返す。
また、発光部107(レーザ光源200)の温度またはその周囲温度は、発光部107の点灯、消灯の繰り返しに応じて、上昇、低下を繰り返すように変化する。これにより、発光部107の立ち上がりの遅れ量は、変動する。
ここでは、発光部107の点灯時間が消灯時間より短いので、発光部107の温度またはその周囲温度の変化は小さく、発光部107の立ち上がりの遅れ量の変動は小さい。よって、電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧V1を変更する必要はなく、当該電圧V1は、そのままの値に 保持される。
タイミングT4において、ビデオ信号VoがLレベルになると、スイッチング素子106はオフ動作する。これにより、エラーアンプ104からの応答制御信号S8により、電流制御回路103は、駆動電流Idを増大させる電流制御状態になる。
タイミングT5〜T6の間の期間において、ビデオ信号Voとして、デューティが高いビデオ信号Voが入力されると、当該ビデオ信号Voに基づいてスイッチング素子106は、オン、オフ動作する。タイミングT4〜T5の間の期間は、時定数回路105に十分に飽和する時間を与える期間であり、タイミングT1と同様に、電圧源101からは電圧V1が出力される。
ここで、タイミングT5〜T6の間の期間においては、発光部107の点灯時間が消灯時間より長いので、応答制御信号S8が示す差分は、スイッチング素子106のオン、オフ動作に合わせて、僅かな増減を繰り返しながら次第に減少する。これにより、駆動電流Idの立ち上がりの波形(オーバーシュート)は、次の立ち上がりの波形に対して、低くなり、発光部107の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができない。また、発光部107の温度またはその周囲温度は上昇し、発光部107の立ち上がりの遅れ量は、小さくなる方向に変動する。
よって、高温時における発光部107の立ち上がりの遅れ量は小さくなるので、駆動電流Idの立ち上がりの波形(オーバーシュート)が低くなっても、小さくなるように、補正されることになる。即ち、電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧を変更することなく、発光部107の出力波形として、遅れ量が小さい安定した波形を得ることができる。
タイミングT7において、例えば温度センサ207により検出された発光部107の周囲温度(温度信号S6)の低下により、発光部107の立ち上がりの遅れ量が大きくなったとする。これは、コントローラ210により、温度信号S6に基づいて判断される。この場合、コントローラ210は、電圧源101に設定する電圧V1を大きくし、この大きくした電圧V1を設定するための電圧設定信号S5を電圧源101に出力する。これにより、電圧源101は、タイミングT7以前の電圧V1より大きい電圧V1を出力する。
タイミングT8〜T9の間の期間において、Hレベルのビデオ信号Voが入力されると、電流制御回路103から発光部107に駆動電流Idが供給される。この駆動電流Idの立ち上がりの波形(オーバーシュート)は、タイミングT1時の駆動電流Idの立ち上がりの波形(オーバーシュート)より高くなる。これにより、発光部107の周囲温度の低下により大きくなった発光部107の立ち上がりの遅れ量が小さくされ、発光部107の立ち上がり時において目標光量に即座に到達するような光出力を得ることができる。
ここで、電圧源101に設定する電圧V1を変更する場合、表1に示すテーブルが参照され、現在の光出力と周囲温度に基づいて補正係数が決定される。そして、現在設定されている電圧V1に対して補正係数分の電圧が加算されたものが、電圧源101に設定する電圧V1として設定される。
以上、本実施の形態によれば、高いスイッチング周波数で発光部107(レーザ光源200)を駆動する場合において、発光部107の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができる。その結果、発光部107(レーザ光源200)の立ち上がりの遅れに起因する画質の劣化を未然に防止することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図7を参照しながら説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に搭載されているレーザドライバの構成を示す回路図である。ここで、上記第1の実施の形態と同じ要素または部材には同じ符号し、同じ要素または部材の説明は省略または簡略化する。
本実施の形態のレーザドライバ209には、図7に示すように、レーザ光源200の発光部107毎に駆動回路209i(i=1〜n)が設けられている。そして、各駆動回路209iは、対応する発光部107を駆動するための駆動電流Idを対応する発光部107に供給する。
駆動回路209iは、電圧源101、電流検出回路102、電流制御回路103、エラーアンプ104、時定数回路105、スイッチング素子106およびインバータ113を有する。また、駆動回路209iには、光量制御回路114(目標電流決定手段)が設けられている。
光量制御回路114は、発光部107が発光したレーザ光の光量を検出し、当該検出した光量を示す信号を出力するフォトダイオード(光量検出手段;以下、FDという)108を有する。FD108から出力された信号は、アンプ109で増幅された後、エラーアンプ111に入力される。また、エラーアンプ111には、コントローラ210から出力された目標光量信号S10が入力される。ここで、目標光量信号S10は、目標光量を示す信号である。エラーアンプ111は、FD108からアンプ109を介して入力された信号が示す光量と目標光量信号S10が示す目標光量との差分を示す差分信号を、出力する。
エラーアンプ111から出力された差分信号は、サンプルホールド回路112に入力される。サンプルホールド回路112は、コントローラ210からのサンプル/ホールド信号S11に基づいて、エラーアンプ111から出力された差分信号を保持し、出力する。サンプルホールド回路112から出力された差分信号は、エラーアンプ104に入力される。
APC(自動光量制御)時には、コントローラ210から、サンプル/ホールド信号S11および目標光量を示す目標光量信号S10が出力され、発光部107が発光するレーザ光の光量と目標光量が一致するように、駆動電流Idが制御される。そして、発光部107が発光するレーザ光の光量と目標光量が一致すると、そのときの駆動電流Idが目標電流として決定されて、サンプル/ホールド回路112に保持される。
画像形成時には、コントローラ210から、サンプル/ホールド信号S11がサンプル/ホールド回路112に出力される。そして、サンプル/ホールド回路112に保持されている、APCにより得られた目標電流(発光部107が発光するレーザ光の光量と目標光量が一致した際の電流)が、目標電流信号S4として、エラーアンプ104に出力される。
ここで、ビデオ信号Voに応答して発光部107を点灯させる際には、第1の実施の形態と同様に、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idが発光部107に供給される。そして、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idは、時定数回路105が決定した時定数で、目標電流に収束する。
このようにして、上記第1の実施の形態と同様に、発光部107(レーザ光源200)の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図8および図9を参照しながら説明する。図8は本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置に搭載されているレーザドライバの構成を示す回路図である。図9は本発明の第3の実施の形態におけるビデオ信号Voの波形、電流制御回路103,303がそれぞれ出力する電流の波形、駆動電流Idの波形、光出力の波形をそれぞれ示す図である。ここで、上記第1の実施の形態と同じ要素または部材には同じ符号し、同じ要素または部材の説明は省略または簡略化する。
本実施の形態のレーザドライバ209には、図8に示すように、レーザ光源200の発光部107毎に駆動回路209i(i=1〜n)が設けられている。そして、各駆動回路209iは、それぞれ対応する発光部107を駆動するための駆動電流Idを対応する発光部107に供給する。
駆動回路209iには、2つの駆動電流供給系、インバータ113およびスイッチング素子106を有する。一方の駆動電流供給系は、電圧源101(第1の電圧源)、電流検出回路102、電流制御回路103(第1の電流制御回路)、エラーアンプ104および時定数回路105(第1の時定数回路)を有する。ここで、電圧源101は、コントローラ210からの電圧設定信号S15により設定された電圧V1(第1の電圧)を出力する。時定数回路105は、電流制御回路103が出力する電流(第1の電流)を収束させる際の時定数Aを決定する。
一方の駆動電流供給系を構成する電圧源101、電流検出回路102、電流制御回路103、エラーアンプ104および時定数回路105は、それぞれ、第1の実施の形態と同様の動作を行うものであり、ここでは、その説明を省略する。
同様に、他方の駆動電流供給系は、電圧源301(第2の電圧源)、電流検出回路302、電流制御回路303(第2の電流制御回路)、エラーアンプ304および時定数回路305(第2の時定数回路)を有する。
他方の駆動電流供給系において、電圧源301は、コントローラ210からの電圧設定信号S35により設定された電圧V2(第2の電圧)を出力する。電流検出回路302は、電圧源301からスイッチング素子106を介して発光部107に至る電流路に流れる電流を検出し、当該検出した電流を示す電流検出信号S39を出力する。
時定数回路305は、コンデンサから構成され、電流制御回路303が出力する電流(第2の電流)を収束させる際の時定数B(第1の時定数)を決定する。ここでは、時定数回路305が決定する時定数Bは、時定数回路105が決定する時定数Aより短くなるようにされている。上記時定数AおよびBは、各電流制御回路103,303が出力する電流を重畳した際に発光部107の光出力の立ち上がり波形が所望の矩形波形になるように決定されたものである。但し、時定数A,Bの間の関係は、A>Bの関係に限定されることはなく、例えば逆の関係でもよい。
エラーアンプ304は、電流検出回路302からの電流検出信号S39と目標電流信号S34の差分を検出する。上記電流検出信号S39と目標電流信号S4の差分を示す信号が、応答制御信号S38として電流制御回路103に出力される。
電流制御回路303は、エラーアンプ304からの応答制御信号S38に基づいて、目標電流に対してオーバーシュートした電流を、時定数回路305により決定された時定数Bで目標電流に収束させるように制御する。
本実施の形態においては、ビデオ信号Voの入力に応答してスイッチング素子106がオン動作すると、電流制御回路103,303のそれぞれが目標電流に対してオーバーシュートした後に時定数A,Bで収束する電流を出力する。そして、電流制御回路103,303のそれぞれから出力された電流は重畳され、駆動電流Idとして発光部107に供給される。
ここで、電流制御回路103,303のそれぞれが出力した電流の立ち上がり(オーバーシュート)の高さは、電圧源101,301が出力する電圧V1,V2により決定される。
また、本実施の形態は、レーザ光源200の周囲温度に応じて、電圧源101が出力する電圧V1を変更するが、電圧源301が出力する電圧V2は変更しないように構成されている。これに代えて、レーザ光源200の周囲温度に応じて、電圧源301が出力する電圧V2を変更してもよいし、各電圧源101,301がそれぞれ出力する電圧V1,V2を変更するようにしてもよい。
ここで、図9に示すように、電流制御回路103が出力する電流のオーバーシュートw1は、時定数Aで、目標電流に収束するような波形になる。電流制御回路303が出力する電流のオーバーシュートw2は、時定数Bで、目標電流に収束するような波形になる。
オーバーシュートw1とオーバーシュートw2は重畳され、当該重畳された電流は、目標電流に対してオーバーシュートした後に、時定数A,Bを合成した時定数で、目標電流に収束する駆動電流Idとなる。これにより、光出力の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができ、より遅れがない安定した光出力を得ることができる。
また、レーザ光源200の周囲温度の変化に伴い、電圧源101が出力する電圧V1が低い電圧に変更されると、電流制御回路103が出力する電流のオーバーシュートw1は、図中の点線で示すような波形になる。
上記第1〜3の実施の形態は、レーザ光源200の周囲温度を検出する温度センサ207の検出結果に基づいて、電圧源101が出力する電圧V1を算出するようにしている。これに代えて、レーザ光源200の内部温度を検出する温度センサを設け、当該温度センサの検出結果に基づいて、電圧源101が出力する電圧V1を算出するようにしてもよい。
このように、本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、発光部107(レーザ光源200)の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができる。