ところで、ウェビングにおけるタングとアンカ部材との間の部分がシート前方へ移動した状態で、タングをバックルに装着すると、ウェビングにおけるタングとアンカ部材との間の部分は、乗員の太腿上をシートの幅方向に横切る。この状態でモータを駆動させて保持部材の先端側を後方へ移動させるように筒体を回動させると、ウェビングにおいて乗員の太腿上をシートの幅方向に横切った部分が乗員の太腿上を摺動しつつ乗員の腰部に接近する。
このように、ウェビングが乗員の太腿上を摺動しつつ乗員の腰部に接近することで、ウェビングが乗員の太腿との摩擦で反転する可能性がある。
本発明は、上記事実を考慮して、バックルにタングを装着した状態でガイド部材をシート後方へ移動させた際にウェビングが反転することを防止又は抑制できるシートベルト装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係るシートベルト装置は、長手方向中間部よりも先端側がシートの幅方向一方の側でシート上方からシート下方に伸び、先端がアンカ部材を介して前記シート又は車体に固定されたウェビングと、前記アンカ部材とウェビングの長手方向中間部との間で前記ウェビングに設けられたタングと、前記シートの幅方向他方の側に設けられて、前記タングが装着されるバックルと、前記ウェビングを伴って前記シートの幅方向一方の側端に沿ってシート前後方向に移動可能に設けられると共に、前記シート前方へ移動することにより前記ウェビングの幅方向を前記シートの幅方向側へ傾斜させて前記ウェビングを厚さ方向側の面を前記シート後方から押圧するように前記ウェビングを前記シート前方へ引っ張り、更に、前記アンカ部材と前記タングとの間で前記ウェビングの長手方向が全体的に前記シート幅方向に沿うことで前記ウェビングの幅方向を前記シートの前後方向へ向けるガイド手段と、駆動力によって前記ガイド手段をシート前後方向へ移動させる駆動手段と、を備えている。
請求項1に記載のシートベルト装置では、駆動手段の駆動力でガイド手段がシート前方へ移動すると、ガイド手段によってウェビングのタングとアンカ部材との間の部分の幅方向がシートの幅方向側へ傾斜させられ、更に、この状態でウェビングの厚さ方向側の面がガイド手段にシート後方から押圧されるようにウェビングがガイド手段によってシート前方へ引っ張られる。
ここで、ウェビングがシート前方へ引っ張られる際には、ウェビングの幅方向がシート幅方向に傾けられて、厚さ方向側の面がシート後方側から押圧されるので、ウェビングの幅方向がシート前後方向に向いた状態でウェビングの幅方向端部がシート後方側から押圧される場合とは異なり、ウェビングがその幅方向に撓む所謂「ジャミング」が生じにくくなるうえ、シートに着座した乗員はタングを把持しやすい。
また、乗員が身体にウェビングを装着する際には、把持したタングをバックル側へ移動させてバックルにタングを装着する。このように、タングをバックル側へ移動させると、タングと共に引っ張られたウェビングは、タングとアンカ部材との間でその長手方向が全体的にシート幅方向に沿うようになる。この状態でガイド手段はウェビングの幅方向をシートの前後方向又はウェビングの幅方向前端側に対して幅方向後端側がシート上方へ傾斜した方向へ向け、この状態で、駆動手段の駆動力でガイド手段がシート後方側へ移動することにより乗員の身体に対するウェビングの装着状態になる。
ところで、ガイド手段がシート前方に移動した状態でタングがバックルに装着されるとタングとガイド手段との間でウェビングは乗員の太腿等に当接し、この状態で駆動手段の駆動力によってガイド手段がシート後方へ移動すると、ウェビングは乗員の太腿等に当接したまま乗員の腰部へ向けて移動する。
このようにウェビングが乗員の太腿から腰部までの間で乗員の身体に摺接することになるが、本発明に係るシートベルト装置では、ガイド手段によってタングとガイド手段との間でウェビングの幅方向がシート前後方向へ向いている。このため、ウェビングが乗員の身体との間の摩擦でウェビングの幅方向後端部のシート後方への移動が規制され、これにより、ウェビングが反転してしまうことを防止又は効果的に抑制できる。
しかも、この状態でウェビングの幅方向がシート前後方向へ向いているので、ウェビングが乗員の身体、例えば、腰部にフィットする。
請求項2に記載のシートベルト装置は、請求項1に記載の本発明において、長手方向下端側から上端側への向きがシート前方で且つシート幅方向内方へ傾斜して、前記シート前方へ前記駆動手段が移動した際には、前記ウェビングに干渉して前記ウェビングの幅方向を前記シート幅方向側へ傾けると共に、前記タングと前記アンカ部材との間で前記ウェビングの厚さ方向側の面に対し前記シート後方側から摺接可能な第1摺接部と、長手方向がシート前後方向に沿い、長手方向後端部が前記第1摺接部の長手方向上端部に繋がって前記タングと前記アンカ部材との間における前記ウェビングの長手方向が全体的に前記シート幅方向に沿うことで前記ウェビングの厚さ方向側の面に摺接し、前記ウェビングの幅方向を前記シートの前後方向へ向ける第2摺接部と、を有するガイド部材を含めて前記ガイド手段を構成している。
請求項2に記載のシートベルト装置では、駆動手段の駆動力でガイド手段のガイド部材がシート前方へ移動すると、ガイド部材の第1摺接部にウェビングが摺接する。第1摺接部は、長手方向下端側から上端側への向きがシート前方で且つシート幅方向内方へ傾斜しており、第1摺接部がウェビングに干渉するとウェビングはその幅方向がシート幅方向に傾けられる。これにより、ウェビングはその厚さ方向がシート前後方向に傾けられ、第1摺接部が後方からウェビングの厚さ方向側の面を押圧するようにガイド部材がウェビングをシート前方へ引っ張る。これにより、ウェビングがその幅方向に撓む所謂「ジャミング」が生じにくくなるうえ、シートに着座した乗員はタングを把持しやすくなる。
また、乗員が身体にウェビングを装着する際には、把持したタングをバックル側へ移動させてバックルにタングを装着する。このように、タングをバックル側へ移動させると、タングと共に引っ張られたウェビングは、その長手方向が全体的にシート幅方向に沿う。これにより、ウェビングが第1摺接部側から第2摺接部側へ移動する。第2摺接部はその長手方向がシート前後方向に沿っているので、ウェビングが第2摺接部側へ移動することで、ウェビングはその幅方向がシートの前後方向を向く。これにより、ウェビングが反転してしまうことを防止又は効果的に抑制できる。
しかも、この状態でウェビングの幅方向がシート前後方向へ向いているので、ウェビングが乗員の身体、例えば、腰部にフィットする。
請求項3に記載の本発明に係るシートベルト装置は、請求項1に記載の本発明において前記タングと前記アンカ部材との間で前記ウェビング厚さ方向側の面に摺接可能な摺接部を有するガイド部材と、前記シート上下方向を軸方向とする軸周りに前記ガイド部材を回動可能に支持する前記シート前後方向に移動可能な支持部材と、前記駆動手段の駆動力で前記シート前後方向に移動する可動部と、前記支持部材における前記ガイド部材の回動中心からその回動半径方向に離れた位置で前記ガイド部材に設けられると共に、前記可動部が係合し、前記シート前方へ移動する前記可動部からの押圧力で前記摺接部が前記シート前方に傾くように前記ガイド部材を回動させ、前記シート後方へ移動する前記可動部からの押圧力で前記摺接部がシート幅方向に傾くように前記ガイド部材を回動させる回動操作部と、を含めて前記ガイド手段を構成している。
請求項3に記載のシートベルト装置では、駆動手段の駆動力で可動部がシート前方へ移動すると、可動部が回動操作部をシート前方へ押圧し、これにより、回動操作部を有するガイド部材が支持部材を伴いシート前方へ移動する。
ここで、上記のように、可動部が回動操作部をシート前方へ押圧すると、この押圧力によりガイド部材はシート前方へ移動するのみならず、支持部材におけるガイド部材の支持位置を中心にガイド部材がシート上下方向を軸方向とする軸周りに回動する。これにより、ガイド部材の摺接部がシート前方側へ傾き、摺接部はシート後方側からウェビングの厚さ方向側の面に摺接する。
この状態でガイド部材がシート前方へ移動すると、ウェビングは厚さ方向側の面が摺接部にシート後方から押圧されるようにガイド部材に引っ張られる。このため、ウェビングがその幅方向に撓む所謂「ジャミング」が生じにくくなる。
また、乗員が身体にウェビングを装着する際には、把持したタングをバックル側へ移動させてバックルにタングを装着する。このように、タングをバックル側へ移動させると、タングと共に引っ張られたウェビングは、その長手方向が全体的にシート幅方向に沿う。この状態から駆動手段の駆動力で可動部がシート後方へ移動すると、可動部が回動操作部をシート後方へ押圧し、ガイド部材が支持部材を伴いシート後方へ移動する。
このように可動部が回動操作部をシート後方へ押圧すると、この押圧力によりガイド部材はシート後方へ移動するのみならず、支持部材におけるガイド部材の支持位置を中心にガイド部材がシート上下方向を軸方向とする軸周りに回動する。これにより、ガイド部材の摺接部がシート幅方向に傾斜すると、この摺接部が摺接するウェビングの厚さ方向側の面もシート幅方向に傾斜する。このため、この状態では、ウェビングはその幅方向がシートの前後方向を向く。これにより、ウェビングが反転してしまうことを防止又は効果的に抑制できる。
しかも、この状態でウェビングの幅方向がシート前後方向へ向いているので、ウェビングが乗員の身体、例えば、腰部にフィットする。
以上、説明したように、本発明に係るシートベルト装置は、ウェビングをシート前後方向へ移動させるガイド部材からウェビングが外れることなくガイド部材の大型化を防止又は抑制でき、しかも、バックルにタングを装着した状態でガイド部材をシート後方へ移動させた際にウェビングが反転することを防止又は抑制できる。
次に、図1から図14の各図を用いて本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態を説明するにあたり、説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
<第1の実施の形態の構成>
図1には第1の実施の形態に係るシートベルト装置10の全体構成の概略が車幅方向外側からの側面図によって示されている。
図1に示されるように、シートベルト装置10はウェビング巻取手段としてのウェビング巻取装置12を備えている。ウェビング巻取装置12はフレーム14を備えている。ウェビング巻取装置12はボルト等の図示しない締結手段によってフレーム14が、例えば、車両のセンターピラー(図示省略)の下端部近傍にて車体に固定されている。ウェビング巻取装置12のフレーム14にはスプール18が設けられている。スプール18は軸方向が概ね車両の前後方向に沿った略円筒形状に形成されている。
このスプール18には長尺帯状に形成されたウェビング20の長手方向基端部が係止されている。ウェビング20はスプール18がその軸周り一方である巻取方向に回転することでスプール18の外周部に基端側から層状に巻取られて格納され、ウェビング20を先端側へ引っ張れば、スプール18に巻取られたウェビング20が引出され、これに伴い、巻取方向とは反対の引出方向にスプール18が回転する。また、フレーム14にはスプリングケース19が取り付けられている。このスプリングケース19には図示しない渦巻きばね等の付勢手段が収容されており、スプール18を巻取方向に付勢している。さらに、フレーム14には回転位置検出装置21が取り付けられており、スプール18にそれ以上ウェビング20を巻取ることができない『全格納状態』でのウェビング20の回転位置を初期位置とし、この初期位置からスプール18がどれだけ回転したかを検出している。
シートベルト装置10が車両の運転席用又は助手席用として適用されるのであれば、ウェビング20は車両のセンターピラーに沿って略車両上方側へ引出されている。また、センターピラーの上端部近傍ではショルダアンカ22が車体に取り付けられている。ショルダアンカ22にはウェビング20の通過が可能な程度のスリット孔24が形成されており、スプール18から引出されたウェビング20は、スリット孔24を通過して略車両下方へ折り返されている。スリット孔24にて折り返されることでシート30の上方から下方へ伸ばされたウェビング20の先端は、例えば、ウェビング巻取装置12の近傍で車体に固定されたアンカ手段としてのアンカプレート26に係止されている。
一方、アンカプレート26に係止されたウェビング20の先端部と、ショルダアンカ22でのウェビング20の折り返し部分との間にはタング28が設けられている。さらに、車両のシート30を介してウェビング巻取装置12やアンカプレート26の反対側では、シート30のシートクッション32を下方から支持するクッションフレーム34又は車体にバックル36が取り付けられている。
バックル36は、その上端に形成された開口(図示省略)からタング28の先端側を挿入できるようになっており、この開口からタング28がバックル36の内部に入り込むと、バックル36の内部に設けられたラッチ等のロック手段(図示省略)がタング28に係合して、バックル36から抜け出る方向へのタング28の移動を規制すると共に、バックル36に設けられたバックルスイッチ38から出力されるタング装着信号BsがLowレベルからHighレベルに切り替わるようになっている。
一方、本シートベルト装置10はリーチャ装置50を備えている。リーチャ装置50は駆動手段としての駆動部52を備えている。駆動部52は長手方向がシート30の前後方向に沿った箱状のハウジング54を備えている。図2に示されるように、ハウジング54の内側におけるシート30の前方側の端部近傍にはプーリ56が設けられている。プーリ56はシート30の上下方向を軸方向とするシャフト58に回転自在に支持されている。これに対して、ハウジング54の内側におけるシート30の後方側の端部近傍にはプーリ60が設けられている。このプーリ60の下側にはモータアクチュエータ62が設けられている。モータアクチュエータ62は、モータと、このモータの駆動力を減速しつつ伝達する減速ギヤ列とにより構成されており、減速ギヤ列の最終ギヤに連結された上下方向を軸方向とする出力軸64にプーリ60が同軸的且つ一体的に連結されている。
プーリ60とプーリ56には無端ベルト66が掛け回されており、モータアクチュエータ62から出力された駆動力でプーリ60が回転すると、無端ベルト66がシート30の上下方向を軸方向とする軸周りにプーリ56とプーリ60との間を回転する。また、プーリ56とプーリ60との間で無端ベルト66にはブロック状の可動部68が無端ベルト66に対して一体的に取り付けられており、モータアクチュエータ62の駆動力で無端ベルト66が正転すると可動部68がシート30の前方側へ移動して、モータアクチュエータ62の駆動力で無端ベルト66が逆転すると可動部68がシート30の後方側へ移動するようになっている。
また、上記のモータアクチュエータ62は図示しない制御手段としてのECUに電気的に接続されており、このECUにモータアクチュエータ62が制御されている。このモータアクチュエータ62が接続されたECUには回転位置検出装置21が接続されており、回転位置検出装置21における検出結果、すなわち、スプール18の回転位置等に基づきモータアクチュエータ62を制御できるようになっている。
一方、ハウジング54の上壁部には長手方向がシート30の前後方向に沿った長孔70が形成されている。長孔70はハウジング54の上壁部を貫通しており、可動部68の上面から突出した支持シャフト72が長孔70を通過してハウジング54の上方へ突出している。図1に示されるように、支持シャフト72の上端部にはガイド部材としてのガイドプレート80が取り付けられている。
ここで、図3にはガイドプレート80の平面図が示されている。ガイドプレート80は長手方向がシート30の前後方向に沿った前後プレート部82を備えている。この前後プレート部82の幅方向中間部にはウェビング通過部84を構成する第2通過孔としての前後スリット86が形成されている。前後スリット86は長手方向がシート30の前後方向に沿った長孔状に形成されており、その長手寸法はウェビング20の幅寸法よりも大きい。
一方、前後プレート部82におけるシート30の後方側端部からは連続して斜めプレート部88が形成されている。斜めプレート部88は長手方向が前後プレート部82の長手方向に対してシート30の幅方向に傾斜しており、前後プレート部82の後端部から斜めプレート部88がシート30の後方に対してシート30の幅方向外方へ伸びるように形成されている。この斜めプレート部88の幅方向中間部には前後スリット86と共にウェビング通過部84を構成する第1通過孔としての斜めスリット90が形成されている。
この斜めスリット90は長手方向が斜めプレート部88の長手方向に沿っており、斜めスリット90におけるシート30の前方側の端部が前後スリット86の後方側の端部に繋がっている。このため、ウェビング通過部84は全体的に長手方向中間部にて屈曲した「へ」字形状となっている。
このようなウェビング通過部84が形成されたガイドプレート80は、図1及び図4に示されるように、前後プレート部82に対して斜めプレート部88の後端側がシート30の下方に位置するように厚さ方向が傾いた状態で支持シャフト72の上端部に取り付けられている。このガイドプレート80に形成されたウェビング通過部84にはアンカプレート26とタング28との間でウェビング20が通過している。
ここで、図4に示されるように、ウェビング20はウェビング通過部84における斜めスリット90を通過し、斜めスリット90の内周縁部におけるシート30の幅方向内側の部分である第1内周縁部92に摺接している。但し、図6に示されるように、ウェビング20におけるアンカプレート26とタング28との間の部分がシート30の幅方向内側へ引っ張られると、ウェビング20は斜めスリット90側から前後スリット86側へ移動して、前後スリット86の内周縁部におけるシート30の幅方向内側の部分である第2内周縁部94に摺接する。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本シートベルト装置10では、例えば、シート30に対応した車両のドアが開放されると、モータアクチュエータ62や回転位置検出装置21が接続されているECUがモータアクチュエータ62を正転駆動させる。モータアクチュエータ62が正転駆動すると、出力軸64が正転して可動部68がシート30の前方へ移動する。これにより、ガイドプレート80がシート30の前方へ移動すると、ウェビング通過部84における斜めスリット90内を通過しているウェビング20が斜めスリット90の内周縁により押圧されて、図4に示される状態から図5に示されるように、ガイドプレート80と共にシート30の前方へ移動する。
これにより、ショルダアンカ22とガイドプレート80との間でもウェビング20が前方へ移動するので、ウェビング20と共にタング28がシート30の前方へ移動する。このため、シート30に着座した乗員100はタング28を把持しやすくなる。しかも、この状態でウェビング通過部84においてウェビング20が通過する斜めスリット90は前後スリット86側の端部に対して前後スリット86とは反対側の端部がシート30の幅方向外側に位置している。
このため、斜めスリット90を通過している状態では、ウェビング20の厚さ方向がシート30の幅方向に対してシート30の前後方向に傾く。このため、斜めスリット90の第1内周縁部92はウェビング20において厚さ方向を向く面をシート30の前方へ押圧するので、ウェビング20の幅方向一端が他端に接近するようにウェビング20が撓む所謂『ジャミング』の発生を防止又は抑制できる。
一方、可動部68と共にガイドプレート80がシート30の前方へ移動することでウェビング通過部84の内周部にウェビング20が引っ張られると、ウェビング20がウェビング巻取装置12のスプール18から引出され、これにより、スプール18が引出方向へ回転する。ウェビング巻取装置12に設けられた回転位置検出装置21はスプール18の回転位置を検出し、この検出結果がECUに入力される。ECUにはモータアクチュエータ62が正転駆動開始してからの経過時間に応じたスプール18の引出方向への回転量が予め記憶手段に記憶されており、記憶されたスプール18の引出方向への回転量と実際のスプール18の回転量とが比較される。
ガイドプレート80がシート30の前方へ移動開始した後(すなわち、ガイドプレート80の移動途中又はガイドプレート80がシート30の前方側における移動終点に到達した状態)で、図6に示されるように、タング28がバックル36側へ引っ張られ、これにより、ウェビング20におけるショルダアンカ22とアンカプレート26との間の部分がバックル36側へ引っ張られると、ウェビング20がスプール18から更に引出される。
このため、この状態では、モータアクチュエータ62が正転駆動を開始してからの経過時間に応じたスプール18の引出方向への回転量よりもスプール18が大きく引出方向へ回転させられる。ECUにおいてモータアクチュエータ62が正転駆動開始してからの経過時間に応じたスプール18の引出方向への回転量よりもスプール18の実際の引出方向への回転量が大きいと判定されると、ECUはモータアクチュエータ62の正転駆動を終了して逆転駆動を開始させる。
これにより、ウェビング20におけるウェビング通過部84の通過部分がシート30の後方へ引っ張られるため、ウェビング20は更にスプール18から引出される。このため、乗員100がタング28と共にウェビング20を引っ張ってスプール18からウェビング20を引出す量を少なくでき、その結果、乗員100にとってウェビング20の引出しが軽くなる。
この状態からバックル36にタング28が装着される。このようにして、アンカプレート26よりもタング28側でウェビング20がバックル36側へ向けられると、ウェビング20においてウェビング通過部84を通過している部分はウェビング20の張力で斜めスリット90側から前後スリット86側へ滑って移動し、ウェビング20が第2内周縁部94に摺接する。ここで、前後スリット86の長手方向はシート30の前後方向を向いている。このため、前後スリット86よりもタング28側ではウェビング20の幅方向がシート30の前後方向を向く。
さらに、上記のようにバックル36にタング28が装着された状態でウェビング20がそれ以上引出されないと、スプール18はスプリングケース19内の付勢手段の付勢力で巻取方向に回転し、ウェビング20の弛みが解消するまでウェビング20を巻取る。これにより、タング28とアンカプレート26との間ではウェビング20が乗員100の太腿部に摺接する。
この状態でECUはモータアクチュエータ62を逆転駆動させ、ガイドプレート80をシート30の後方へ移動させているので、ウェビング20のタング28とアンカプレート26との間の部分は乗員100の太腿部に摺接した状態のまま乗員100の腰部へ向けて移動する。このように、ウェビング20は乗員100の太腿部に摺接した状態でシート30の後方へ移動するが、この状態では、タング28とアンカプレート26との間の部分におけるウェビング20の幅方向がシート30の前後方向を向いているので、主にウェビング20の厚さ方向下側の面が乗員100の太腿部に摺接し、乗員100の太腿部がウェビング20の幅方向後端部に大きく干渉することはない。このため、ウェビング20が後方へ移動する際に反転してしまうことを防止又は抑制できる。
また、スプール18の巻取方向への回転が回転位置検出装置21に検出されると、ECUはモータアクチュエータ62の逆転駆動の速度を低下させる。このため、タング28とアンカプレート26との間の部分におけるウェビング20の後方への移動速度が遅くなり、ウェビング20の厚さ方向下側の面やウェビング20の幅方向後端部と乗員100の太腿部との間の摩擦が急激に増大することがない。これによってもウェビング20が後方へ移動する際に反転してしまうことを防止又は抑制できる。しかも、上記のようにスプール18の巻取方向への回転が回転位置検出装置21に検出されると、ECUはモータアクチュエータ62の逆転駆動の速度を低下させるので、ウェビング20におけるタング28とアンカプレート26との間の部分が乗員100の腰部に到達した際に乗員100が感じる圧迫感を軽減できる。
さらに、図7に示されるように、ガイドプレート80が長孔70の後端側における初期位置に到達することで乗員100の身体に対するウェビング20の装着状態になり、モータアクチュエータ62が停止する。
ここで、本シートベルト装置10では、ガイドプレート80に形成されたウェビング通過部84が環状であるため、タング28と共にウェビング20が引っ張られてもウェビング通過部84からウェビング20が抜け出ることはない。しかも、ウェビング通過部84が形成されたガイドプレート80は、前後プレート部82に対して斜めプレート部88の後端側がシート30の下方に位置するように厚さ方向が傾いている。このため、シート30の上下方向にガイドプレート80をみた場合のシート30の幅方向に沿ったガイドプレート80の寸法が短くなる。このため、シート30の幅方向に沿ったガイドプレート80の大型化を抑制できる。
<第2の実施の形態の構成>
図8には第2の実施の形態に係るシートベルト装置140におけるリーチャ装置142の構成が車幅方向外側からの概略的な側面図によって示されている。なお、本実施の形態に係るシートベルト装置140もウェビング巻取装置12やウェビング20、アンカプレート26やタング28、更にはバックル36を備えているが、図8においてはこれらの図示を省略する。
図8に示されるように、シートベルト装置140のリーチャ装置142は駆動手段としての駆動部143を備えている。この駆動部143はボールねじ144を備えている。ボールねじ144は長手方向がシート30の前後方向に沿っており、シート30の幅方向外側に設けられた軸受け部148により自らの中心軸線周りに回動自在に支持されている。また、シート30の後端側における軸受け部146の下側にはモータアクチュエータ148が設けられている。
このモータアクチュエータ148の可動部150は間接的にボールねじ144に連結されており、モータアクチュエータ148から正転駆動力が出力されると、この正転駆動力がボールねじ144に伝わってボールねじ144が正転し、モータアクチュエータ148から逆転駆動力が出力されると、この逆転駆動力がボールねじ144に伝わってボールねじ144が逆転する。なお、このモータアクチュエータ148は前記第1の実施の形態においてモータアクチュエータ62を制御するECUと同様の構成(同様の作用を奏する)ECUに接続され、前記第1の実施の形態におけるモータアクチュエータ62と同様に制御される。
このボールねじ144の両端間には可動部150が設けられており、この可動部150にはシート30の前後方向に貫通した雌ねじ孔が形成されており、ボールねじ144はこの雌ねじ孔に螺合した状態で可動部150を貫通している。可動部150はその下端側におけるシート30の幅方向に沿った両端側にはガイドレール152が設けられている。ガイドレール152は可動部150に干渉しており、シート30の前後方向を軸方向とする可動部150の回転を規制している。これにより、ボールねじ144が正転すると可動部150がシート30の前方へスライドし、ボールねじ144が逆転すると可動部150がシート30の後方へスライドする。
一方ボールねじ144の上方には長手方向がシート30の前後方向に沿ったガイドレール162が設けられており、このガイドレール162の両端間にはガイド部材172が設けられている。図9に示されるように、ガイド部材172はベース部174を備えている。ベース部174は例えばブロック状に形成されている。このベース部174にはシート30の前後方向に貫通した透孔が形成されており、この透孔をガイドレール162が貫通している。ベース部174はガイドレール162によりシート30の上下方向及び幅方向の移動が規制されていると共に、ガイドレール162に案内されてシート30の前後方向に移動可能とされている。
このガイド部材172にはシート30の上下方向に貫通した軸受け孔が形成されている。この軸受け孔には軸方向がシート30の上下方向に沿ったシャフト176が貫通して、シャフト176がその中心軸線周りに回転自在に支持されている。このシャフト176の上端部にはウェビングガイド部178が一体的に取り付けられている。ウェビングガイド部178は細幅板状に形成されており、その長手方向基端側でウェビングガイド部178が結合されている。
このウェビングガイド部178の幅方向中間部にはウェビング通過部180が形成されている。ウェビング通過部180は長手方向がウェビングガイド部178の長手方向に沿った長孔とされており、その長手寸法はウェビング20の幅寸法よりも大きく設定されており、幅寸法はウェビング20の厚さ寸法よりも大きくウェビング20の幅寸法よりも小さく設定されている。図11に示されるように、本実施の形態では、ウェビング20におけるタング28とアンカプレート26との間の部分がウェビング通過部180を通過している。
一方、図9に示されるように、シャフト176の下端部には回動操作部182が一体的に取り付けられている。回動操作部182は厚さ方向が概ねシート30の上下方向に沿った板状に形成されている。回動操作部182におけるシャフト176との結合部分よりもシャフト176の回転半径方向外側では回動操作部182に回動操作孔184が形成されている。この回動操作孔184は上述した可動部150の上方に形成されており、可動部150の上面から突出した操作ピン186が回動操作孔184の内側に入り込んでいる。
また、図10に示されるように、回動操作孔184の内周形状は操作ピン186の外周形状よりも十分に大きく設定されている。さらに、回動操作孔184の内周壁は斜壁部188を含めて構成されている。斜壁部188はウェビングガイド部178のウェビング通過部180がシート30の前後方向に沿った状態でシート30の幅方向外方に対してシート30の後方へ傾斜した方向を向くように設定されており、この状態では斜壁部188の後方に操作ピン186が位置する。
また、回動操作孔184の内周壁は対向壁部190を含めて構成されている。図10に示されるように、対向壁部190はウェビングガイド部178のウェビング通過部180がシート30の幅方向に沿った状態でシート30の前方を向くように設定されており、この状態では対向壁部190の前方に操作ピン186が位置する。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本シートベルト装置140では、例えば、シート30に対応した車両のドアが開放されると、モータアクチュエータ148や回転位置検出装置21が接続されているECUがモータアクチュエータ148を正転駆動させる。モータアクチュエータ148が正転駆動すると、ボールねじ144が正転して、図11に示される状態から可動部150がシート30の前方へ移動する。これにより、可動部150の上面から突出した操作ピン186が斜壁部188を前方へ押圧すると、ガイド部材172がシート30の前方へ移動すると共に、図12に示されるように、斜壁部188が操作ピン186から受けた押圧力により、ガイド部材172の長手方向先端側(シャフト176との結合部分とは反対側)がシート30の幅方向外方を向くまでガイド部材172がシャフト176周りに回動させられる。
これにより、ウェビング通過部180を通過するウェビング20の厚さ方向がシート30の前後方向を向く。このため、ウェビング通過部180の内周部はウェビング20において厚さ方向を向く面をシート30の前方へ押圧するので、前記第1の実施の形態と同様にウェビング20の幅方向一端が他端に接近するようにウェビング20が撓む所謂『ジャミング』の発生を防止又は抑制できる。
また、可動部150の操作ピン186に斜壁部188が前方へ押圧されることでガイド部材172そのものもシート30の前方へ移動するため、前記第1の実施の形態と同様にウェビング20と共にタング28がシート30の前方へ移動する。このため、シート30に着座した乗員100はタング28を把持しやすくなる。
一方、可動部150と共にガイド部材172がシート30の前方へ移動してからタング28と共にウェビング20がバックル36側へ引っ張られると、前記第1の実施の形態と同様に、モータアクチュエータ148の正転駆動が終了し、代わってモータアクチュエータ148の逆転駆動が開始される。モータアクチュエータ148が逆転駆動することでボールねじ144が逆転すると、図13に示される状態から可動部150はシート30の後方へ向けて移動する。
これにより、可動部150の上面から突出した操作ピン186が対向壁部190を後方へ押圧すると、ガイド部材172がシート30の後方へ移動すると共に、対向壁部190が操作ピン186から受けた押圧力により、図14に示されるように、ガイド部材172の長手方向先端側(シャフト176との結合部分とは反対側)がシート30の前方を向くまでガイド部材172がシャフト176周りに回動させられる。これにより、ウェビング通過部180を通過するウェビング20の幅方向がシート30の前後方向を向く。
このように、ウェビング20の幅方向がシート30の前後方向を向くことで、前記第1の実施の形態と同様に、主にウェビング20の厚さ方向下側の面が乗員100の太腿部に摺接し、乗員100の太腿部がウェビング20の幅方向後端部に大きく干渉することはない。このため、ウェビング20が後方へ移動する際に反転してしまうことを防止又は抑制できる。
ここで、本シートベルト装置140では、ウェビングガイド部178に形成されたウェビング通過部180が環状であるため、タング28と共にウェビング20が引っ張られてもウェビング通過部180からウェビング20が抜け出ることはない。しかも、ウェビング通過部180は直線的な長孔形状であるため、ウェビングガイド部178の幅寸法はウェビング通過部180の幅寸法よりも大きければよく、このため、ウェビングガイド部178の幅寸法を比較的小さく設定でき、シート30の幅方向に沿ったウェビングガイド部178の大型化、ひいては、ガイド部材172の大型化を抑制できる。
なお、上記の各実施の形態では、シート30に対応したドアの開放に基づきモータアクチュエータ62、148の正転駆動を開始させる構成であったが、ドア開放後のドアの閉止に基づきモータアクチュエータ62、148の正転駆動を開始させる構成としてもよいし、シート30に乗員100が着座したことを検出してモータアクチュエータ62、148の正転駆動を開始させる構成としてもよい。