<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナ10を適用したシートベルト装置12の構成の概略が車両幅方向内方からの側面図により示されている。プリテンショナ10の構成の説明に先立ちシートベルト装置12の全体構成の概略を説明する。
(シートベルト装置12の概略)
図1に示されるように、シートベルト装置12は、例えば、車両のセンターピラー14の近傍で車体に固定されたウエビング巻取装置16を備えている。ウエビング巻取装置16は軸方向が概ね車両の前後方向に沿ったスプール18を備えている。スプール18には可撓性を有する長尺帯状に形成されたウエビングベルト20の長手方向基端側が係止され、ウエビングベルト20の長手方向中間部よりも基端側がスプール18の外周部に巻取られている。
このため、ウエビングベルト20をその長手方向先端側へ引っ張ると、スプール18に巻取られているウエビングベルト20がスプール18から引出されると共に、スプール18がその軸周りの一方である引出方向に回転し、スプール18を引出方向とは反対の巻取方向に回転させるとウエビングベルト20がその長手方向基端側からスプール18に巻取られて格納される。また、ウエビング巻取装置16は渦巻きばね等により形成された図示しないスプール付勢手段を備えている。スプール付勢手段はスプール18が引出方向へ回転することで付勢力が増し、スプール18を巻取方向へ付勢する。これにより、スプール18からウエビングベルト20を引出した後に、スプール付勢手段の付勢力でスプール18にウエビングベルト20を巻取らせて格納できる。
スプール18から引出されたウエビングベルト20は、上述したセンターピラー14に沿って車両の上方に延ばされ、センターピラー14の上端部近傍に設けられたスリップジョイント22に形成されたスリット孔を通過して略車両下方へ折り返されている。このようにスリップジョイント22のスリット孔を通過したウエビングベルト20の先端部に対応してシート26の幅方向側方で且つシート26の後端部近傍にはアンカ部材としてのアンカプレート30が設けられている。アンカプレート30は厚さ方向が概ね車両の幅方向とされた板状に形成されている。
このアンカプレート30にはベルト係止部32が形成されている。このベルト係止部32にはベルト係止部32の厚さ方向に貫通したベルト通過孔34が形成されている。ベルト通過孔34は内幅が細く、しかも、長手方向が車両の下方側へ向けて開口するように湾曲している。ウエビングベルト20の先端側はこのベルト通過孔34を通過して上方へ折り返されている。さらに、ベルト通過孔34を通過したウエビングベルト20の先端側はウエビングベルト20におけるベルト通過孔34より基端側の部分と厚さ方向に互いに重ね合わされて縫合されている。これにより、ウエビングベルト20の先端側がアンカプレート30に係止されている。
このアンカプレート30に係止されたウエビングベルト20の先端部と、スリップジョイント22におけるウエビングベルト20の折り返し部分との間にはウエビングベルト20にタング40が設けられている。タング40は、シート26を介してウエビング巻取装置16やアンカプレート30とは反対側で、シートクッション28のクッション材を支持するシートクッションフレーム42や車体である車両の床部44(本実施の形態では、シートクッションフレーム42)に取り付けられたバックル46に装着可能とされている。
シート26に乗員が着席した状態でタング40をバックル46の側へ引っ張ってバックル46にタング40を装着すると、乗員の身体に対するウエビングベルト20の装着状態となる。この装着状態で、ウエビングベルト20のタング40とスリップジョイント22との間の部分はショルダベルトとされ、乗員の肩部から胸部を介して腰部近傍を拘束する。これに対して、ウエビングベルト20のタング40とアンカプレート30との間の部分はラップベルトとされ、乗員の腰部を拘束する。
(プリテンショナ10の構成)
次に、本プリテンショナ10の構成に関して説明する。
図1及び図2に示されるように、本プリテンショナ10はフレーム62を備えている。フレーム62は例えば箱状に形成されており、シート26のバックル46が設けられた側とは反対側(ウエビング巻取装置16が設けられた側)のシート26の後方で、上記の床部44やシートクッションフレーム42(本実施の形態では床部44)に固定されている。
図1及び図2に示されるように、このフレーム62には駆動手段としてのプリテンショナ本体64が設けられている。プリテンショナ本体64は軸方向がシート26の前後方向に沿った筒状のシリンダ66を備えている。シリンダ66はその軸方向に沿った中間部よりも先端側(すなわち、シリンダ66におけるシート26の前後方向に沿った中間部よりも前方側)がフレーム62の内側に入り込んでいる。このシリンダ66の内側にはピストン68がシリンダ66の軸方向に沿って摺動可能に配置されている。
また、シリンダ66内におけるピストン68の初期位置よりもシリンダ66の軸方向先端側にはジェネレータ取付部70が設けられている。ジェネレータ取付部70は筒状に形成されており、その軸方向はシリンダ66の軸方向に対して交差している。ジェネレータ取付部70は軸方向基端部にてシリンダ66に繋がっており、ジェネレータ取付部70の内部とシリンダ66の内部とが互いに連通している。このジェネレータ取付部70にはガスジェネレータ72が取り付けられている。
ガスジェネレータ72は図示しない制御手段としてのECUに電気的に接続されており、ECUから出力された起動信号がガスジェネレータ72内の着火装置に入力されると、ガスジェネレータ72内に設けられたガス発生剤が燃焼されて、瞬時にガスを発生させ、このガスをシリンダ66内に供給する。このようにガスジェネレータ72から供給されたガスによりシリンダ66の内圧が上昇すると、図3や図5に示されるように上記のピストン68がシリンダ66の基端側(すなわち、シート26の後方)へ摺動する。
また、図2に示されるように、ピストン68には連結手段としてのワイヤ74の長手方向基端部が係止されている。このワイヤ74はシリンダ66の先端部からシリンダ66におけるシート26の前方側へ引出されている。
一方、図1及び図2に示されるように、アンカプレート30は被ガイド片76を備えている。この被ガイド片76は厚さ方向がシート26の幅方向に沿った板状に形成されており、その先端部にて上記のベルト係止部32に繋がっている。図2に示されるように、被ガイド片76はフレーム62の内側に入り込んでいる。このフレーム62に入り込んだ被ガイド片76の長手方向基端部にはピン78が設けられている。
このピン78は軸方向がシート26の幅方向に沿った円柱形状に形成されており、被ガイド片76の厚さ方向一方の面(図2における紙面手前側の面)から突出するように被ガイド片76に形成されている。また、被ガイド片76の長手方向中間部のうち、上記のフレーム62に入り込んだ部分にはピン80が設けられている。このピン80はピン78と同様に軸方向がシート26の幅方向に沿った円柱形状に形成されており、被ガイド片76の厚さ方向一方の面(図2における紙面手前側の面)から突出するように被ガイド片76に形成されている。
さらに、被ガイド片76の厚さ方向一方の側(図2における紙面手前側)ではガイド手段としてのガイドステー82がフレーム62に取り付けられている。ガイドステー82にはガイド孔84が形成されている。ガイド孔84は上端が下端よりもシート26の前側に位置する長孔とされており、上記のピン78の先端側がガイド孔84の内側に入り込んでいる。このガイド孔84の内幅寸法はピン78の外径寸法よりも僅かに大きく、このため、ピン78はガイド孔84の長手方向両端間で移動できるが、ガイド孔84の内幅方向等、ガイド孔84の長手方向に対して交差する向きへのピン78の変位はガイド孔84の内周部にて規制される。
このガイド孔84よりもガイドステー82の上側には第1ガイド部としてのガイド孔86が形成されている。ガイド孔86は長手方向がガイド孔84の長手方向と同方向とされ、しかも、その長手方向寸法はガイド孔84の長手方向寸法に略等しい長孔とされている。このガイド孔86には上記のピン80が通過して、その先端側がガイド孔84の被ガイド片76とは反対側に突出している。このガイド孔84の内幅寸法はピン78の外径寸法よりも僅かに大きく、このため、基本的にはガイド孔86内においてピン80はガイド孔86の長手方向両端間で移動できるが、ガイド孔84の内幅方向等、ガイド孔84の長手方向に対して交差する向きへのピン80の変位はガイド孔86の内周部にて規制される。
但し、ガイド孔86の上端(ガイド孔86のガイド孔84とは反対側の端部)には第2ガイド部としてのガイド孔88が繋がっている。ガイド孔88はピン80がガイド孔86の上端に接している状態でのピン78を曲率の中心として湾曲している。ガイド孔88の内幅寸法はピン78の外径寸法よりも僅かに大きく、このため、ピン80がガイド孔86の上端に接している状態で被ガイド片76がピン78を中心に下方へ傾くように回転すると、ピン80がガイド孔88に入り込む。
さらに、このガイド孔88のガイド孔86と繋がった部分とは反対側はガイドステー82の外周部にて開口している。このガイドステー82の外周部におけるガイド孔88の開口よりも外側では、ガイドステー82の外周部がガイド孔88の内周部のうち、ガイド孔88の曲率中心側に位置する部分から連続するように同じ曲率でガイドステー82の外周部が一定範囲湾曲している。
また、ガイドステー82の下端部近傍にはガイドピン90が形成されている。ガイドピン90は軸方向がシート26の幅方向に沿った円柱形状に形成されており、ガイドステー82のアンカプレート30とは反対側の面から突出するように形成されている。シリンダ66の先端から引出されたワイヤ74の先端側はこのガイドピン90に掛け回されてから上記のピン80に先端が係止されている。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(通常着座状態でのプリテンショナ10の動作)
乗員の背中が充分にシート26のシートバック88に接し、しかも、乗員の臀部が充分にシートクッション28の後方に位置するシート26に対する通常着座状態で乗員がウエビングベルト20を身体に掛け回し、タング40をバックル46に装着した状態では、図2に示されるように、ピン80がガイド孔86の上端に接していると共に、ピン80の軸心からピン78の軸心への向きがガイド孔84やガイド孔86の長手方向に沿う。
車両が急減速状態になり、ECUから起動信号が出力されるとガスジェネレータ72内の着火装置が作動してガスジェネレータ72内のガス発生剤が燃焼される。これにより、ガスジェネレータ72に内にて瞬時に発生したガスがシリンダ66内に供給されてシリンダ66の内圧が上昇すると、図3に示されるように、シリンダ66内のピストン68がシリンダ66の基端側へ摺動する。このようにピストン68がシリンダ66の基端側へ摺動すると、ピストン68に基端部が係止されているワイヤ74が引っ張られてピストン68と共にシリンダ66の基端側へ移動する。
このようにワイヤ74が引っ張られると、ワイヤ74の先端部が係止されたピン80が引っ張られ、これにより、ピン80がガイド孔86に案内されてガイド孔86の下端側へ移動する。このようにピン80がガイド孔86の下端側へ移動することで、アンカプレート30の被ガイド片76がガイド孔86の上端から下端への向き、すなわち、シート26の下方で且つ後方へ引っ張られ、更に、ピン78もガイド孔84の下端側、すなわち、シート26の下方で且つ後方へ移動する。
このようにアンカプレート30が移動することでウエビングベルト20の先端がシート26の下方で且つ後方へ引っ張られ、乗員の身体をシート26のシートバック88に押し付ける。これにより、車両が急減速することで乗員の身体が車両前方側へ慣性移動することを防止又は抑制できる。
(前ずり状態でのプリテンショナ10の動作)
一方、上記の通常着座状態よりも乗員の臀部がシートクッション28の前方に位置し、通常着座状態よりも乗員の身体が寝た前ずり状態でウエビングベルト20を身体に掛け回し、タング40をバックル46に装着した状態では、通常着座状態よりもウエビングベルト20が前方へ引っ張られる。このため、この前ずり状態では、図4に示されるように、通常着座状態よりもシート26の前方へ引っ張られたウエビングベルト20によってアンカプレート30の先端側がシート26の前方へ変位するようにピン78を中心にアンカプレート30が回転し、これにより、図4に示されるように、ピン80の一部がガイド孔88に入り込む。
この状態で、プリテンショナ本体64が作動してワイヤ74がシリンダ66の基端側へ引っ張られ、これにより、ピン80が下方へ移動しようとすると、ピン80がガイド孔88の内周部に干渉される。このようにピン80がガイド孔88の内周部に干渉された状態で更にワイヤ74によってピン80が引っ張られると、図5に示されるように、ピン80はガイド孔88に案内されてピン78を中心にシート26の前方へ傾くように回転する。
これにより、アンカプレート30の先端側がシート26の下方へ移動するようにアンカプレート30が回転すると、ウエビングベルト20の先端がアンカプレート30と共にシート26の下方へ移動し、乗員の腰部をシート26のシートクッション28に押し付ける。これにより、車両が急減速した際の慣性で、シートクッション28とウエビングベルト20との間を乗員の身体が潜るように移動することを防止又は抑制できる。
このように、本プリテンショナ10では、シート26における乗員の着座姿勢に応じて適切な向きにウエビングベルト20を引っ張って、乗員の身体を適切に拘束できる。しかも、ピン80が下降した際にガイド孔88の内周部に干渉される程度にアンカプレート30が傾けば、アンカプレート30の先端側をシート26の前方へ傾けるようにアンカプレート30を回動させることができ、それ以外はガイド孔86及びガイド孔84にピン80やピン78を案内させてアンカプレート30をシート26の後方で且つ下方へ移動させることができるので、ガスジェネレータ72を作動させた場合にウエビングベルト20をシート26の後方又は下方へ必ず引っ張ることができる。
しかも、本プリテンショナ10では、特別な操作を行なうことなく、シート26における乗員の着座姿勢に応じた乗員の腰部の位置によってウエビングベルト20を引っ張る向きを切り替えることができる。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
(プリテンショナ110の構成)
図6には本発明の第2の実施の形態に係るプリテンショナ110の構成の概略が前記第1の実施の形態を説明した図2と同じ向きからの側面図により示されている。
図6に示されるように、本プリテンショナ110はプリテンショナ本体64に代わり駆動手段としてのプリテンショナ本体112を備えている。プリテンショナ本体112は、フレーム62の内側でフレーム62に取り付けられている。このプリテンショナ本体112はシリンダ114を備えている。シリンダ114は前記第1の実施の形態におけるプリテンショナ本体64のシリンダ66とは異なり、軸方向がシート26の上下方向に沿った筒状に形成されている。
このシリンダ114の内側にはピストン116がシリンダ114の上下方向に摺動可能に設けられている。また、シリンダ114の下端部にはガスジェネレータ72が取り付けられており、ガスジェネレータ72が作動することで生じたガスがシリンダ114に供給されることでシリンダ114の内圧が上昇するとピストン116がシリンダ114の上方へ摺動する。また、ピストン116のガスジェネレータ72とは反対側の端面にはラックバー118が形成されている。ラックバー118は長手方向がシート26の上下方向に沿った断面矩形の棒形状に形成されており、このラックバー118におけるシート26の前方側の端面にはラック歯が形成されている。
一方、シリンダ114におけるピストン116の初期位置よりも上側には開口120が形成されており、この開口120に対応してシリンダ114にはピニオン支持部122が形成されている。ピニオン支持部122は厚さ方向がシート26の幅方向に沿った板状に形成されており、開口120を挟んで両側にそれぞれ形成されている。このピニオン支持部122の間には支持軸124が設けられている。支持軸124は軸方向がシート26の幅方向に沿っており、その一端は一方のピニオン支持部122に支持されて他端が他方のピニオン支持部122に支持されている。この支持軸124にはピニオン126が回転自在に支持されている。ピニオン126は一部が開口120を通過してシリンダ114内に入り込んでおり、上記のラックバー118のラック歯に噛み合っている。
このピニオン126の軸方向側方にはガイド手段としてのガイドプレート132が設けられている。ガイドプレート132は厚さ方向がシート26の幅方向に沿った板状に形成されており、ピニオン126に対して一体とされている。
一方、上記のピニオン支持部122よりもシート26の前側にはアンカプレート30に代わるアンカ部材としてのアンカプレート134が設けられている。前記第1の実施の形態におけるアンカプレート30とは異なり、アンカプレート134はベルト通過孔34が形成された側とは反対側の端部近傍を支持軸136が通過している。支持軸136は軸方向がシート26の幅方向に沿った円柱形状に形成されており、その少なくとも一端がフレーム62に支持されている。上記のアンカプレート134はこの支持軸136周りに回転可能に支持されている。
また、このアンカプレート134は厚さ方向一方の面(図6における紙面奥行き側の面)がガイドプレート132と対向している。このアンカプレート134のガイドプレート132と対向する面にはピン138が形成されている。このピン138は軸方向がシート26の幅方向に沿った円柱形状に形成されている。このピン138に対応してガイドプレート132には第1ガイド部としてのガイド孔144が形成されている。ガイド孔144は内幅寸法がピン138の直径寸法よりも大きな長孔とされている。また、このガイド孔144の長手方向一端は長手方向他端よりもシート26の前方で且つ下方に位置しており、このため、ガイド孔144の長手方向はシート26の前後方向に対してシート26の幅方向を軸方向とする軸周りに傾斜している。
また、ガイドプレート132には第2ガイド部としてのガイド孔146が形成されている。ガイド孔146は内幅寸法がピン138の直径寸法よりも僅かに大きな長孔とされている。また、このガイド孔146の長手方向一端は長手方向他端よりもシート26の後方で且つ下方に位置しており、このため、ガイド孔146の長手方向はシート26の前後方向に対してシート26の幅方向を軸方向とする軸周りに傾斜している。このガイド孔146の長手方向一端は連結孔148の一端に繋がっている。連結孔148はその内周部が上方へ向けて張り出すように湾曲した孔とされている。
この連結孔148の他端は上記のガイド孔144の長手方向一端に繋がっており、全体的にガイド孔144、連結孔148、及びガイド孔146で略V字形状となっている。このガイド孔144とガイド孔146とは、通常着座状態でピン138がガイド孔144の長手方向一端側でガイド孔144に入り込み、前ずり状態でピン138がガイド孔146の長手方向一端側でガイド孔146に入り込むように設定されている。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(通常着座状態でのプリテンショナ110の動作)
本プリテンショナ110では、通常着座状態で車両が急減速状態になり、ECUから起動信号が出力されるとプリテンショナ本体112が作動することでシリンダ114内にガスが供給され、これにより、シリンダ114の内圧が上昇するとシリンダ114内のシリンダ114の上方へピストン116が摺動する。このように、ピストン116が上昇するとラックバー118が共に上昇し、これにより、ラックバー118のラック歯に噛み合うピニオン126が回転する。ピニオン126が回転するとピニオン126と一体のガイドプレート132がその先端側(ガイドプレート132におけるピニオン126とは反対側でガイド孔144やガイド孔146が形成されている側)を下降させるように回転する。
ここで、通常着座状態では、ガイド孔144の一端側にピン138が位置しているので、上記のようにガイドプレート132の先端側が下降するようにガイドプレート132が回転すると、図7に示されるように、ガイド孔144の一端側に位置するピン138はガイド孔144の他端側へ移動させられ、これにより、アンカプレート134はその先端側がシート26の後方へ移動するように支持軸136周りに回転させられる。このようにアンカプレート134の先端側がシート26の後方へ移動するようにアンカプレート134が回転することで、ウエビングベルト20の先端がアンカプレート134と共にシート26の後方へ移動し、乗員の身体をシート26のシートバック88に押し付ける。これにより、車両が急減速することで乗員の身体が車両前方側へ慣性移動することを防止又は抑制できる。
(前ずり状態でのプリテンショナ110の動作)
一方、前ずり状態では、乗員の身体によって通常着座状態よりもウエビングベルト20が前方へ引っ張られる。このため、この前ずり状態では、図8に示されるように、通常着座状態よりもシート26の前方へ引っ張られたウエビングベルト20によってアンカプレート134の先端側がシート26の前方へ変位するようにアンカプレート134が支持軸136周りに回転する。これにより、図9に示されるように、ピン138はガイド孔144の一端部近傍からガイド孔146の一端部近傍に移動する。
この状態で、プリテンショナ本体112が作動してガイドプレート132の先端側が下降するようにガイドプレート132が回転すると、ガイド孔146の一端側に位置するピン138はガイド孔146の他端側へ移動させられ、これにより、アンカプレート134はその先端側がシート26の前方で且つ下方へ移動するように支持軸136周りに回転させられる。このようにアンカプレート134の先端側がシート26の前方で且つ下方へ移動するようにアンカプレート134が回転することで、ウエビングベルト20の先端がアンカプレート134と共にシート26の下方へ移動し、乗員の腰部をシート26のシートクッション28に押し付ける。これにより、車両が急減速した際の慣性で、シートクッション28とウエビングベルト20との間を乗員の身体が潜るように移動することを防止又は抑制できる。
このように、本プリテンショナ110では、シート26における乗員の着座姿勢に応じて適切な向きにウエビングベルト20を引っ張って、乗員の身体を適切に拘束できる。しかも、ガイドプレート132の先端側が下降するようにガイドプレート132が回転すれば、ピン138はガイド孔144及び何れか一方の他端へ必ず移動する。このため、ガスジェネレータ72が作動すれば、ベルト係止部32をシート26の後方又は下方へ必ず回転させることができ、ウエビングベルト20をシート26の後方又は下方へ必ず引っ張ることができる。
しかも、本プリテンショナ110では、特別な操作を行なうことなく、シート26における乗員の着座姿勢に応じた乗員の腰部の位置によってウエビングベルト20を引っ張る向きを切り替えることができる。
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図10には本実施の形態に係るプリテンショナ160の構成の概略が前記第1の実施の形態を説明した図2と同じ向きからの側面図により示されている。
この図に示されるように、本プリテンショナ160は厚さ方向がシート26の幅方向に沿ったガイド手段としての板状のガイドプレート162を備えている。ガイドプレート162は基部164を備えている。前記第1の実施の形態におけるガイドステー82とは異なり、ガイドプレート162は基部164がプリテンショナ本体64の先端側にボルト166により締結固定されている。
ガイドプレート162の厚さ方向一方の側(図10における紙面奥行き側)には支持プレート168が設けられている。支持プレート168は厚さ方向がガイドプレート162の厚さ方向に沿った板状の部材とされている。支持プレート168の長手方向基端側には段付きボルト170が支持プレート168の厚さ方向に支持プレート168を貫通している。この段付きボルト170は更にガイドプレート162を貫通しており、ガイドプレート162に対して支持プレート168を段付きボルト170周りに回転可能に連結している。
支持プレート168のガイドプレート162とは反対側には、前記第1の実施の形態におけるアンカプレート30や前記第2の実施の形態におけるアンカプレート134に代わるアンカ部材としてのアンカプレート172が設けられている。アンカプレート172は厚さ方向がシート26の幅方向に沿った板状の部材で、その先端側には長手方向がアンカプレート172の幅方向に沿ったスリット孔174が形成されており、このスリット孔174をウエビングベルト20の先端側が通過して折り返されている。
なお、本実施の形態ではこのようなスリット孔174をアンカプレート172に形成したが、前記第1の実施の形態におけるアンカプレート30や前記第2の実施の形態におけるアンカプレート134のように湾曲したベルト通過孔34をスリット孔174に代えて形成してもよい。また、このアンカプレート172の長手方向基端側にはワイヤ74の先端が係止されている。
一方、上記のガイドプレート162には第1ガイド部としてのガイド孔182が形成されている。ガイド孔182は長手方向がシート26の前方側の端部に対して後方側の端部がシート26の下方に位置するように傾斜した長孔とされている。また、ガイドプレート162には第2ガイド部としてのガイド孔184が形成されている。ガイド孔184は内幅寸法がガイド孔182の内幅寸法に略等しく、長手方向に沿ったシート26の前端側に対して後端側がシート26の下方に位置するように傾斜した長孔とされている。
このガイド孔182の前端(上端)とガイド孔184の前端(上端)との間には連結孔186が形成されており、この連結孔186によってガイド孔182の前端(上端)とガイド孔184の前端(上端)とが互いに繋がっている。連結孔186は内周部のうち、シート26の後方を向く部分が段付きボルト170の中心軸線を中心に一定角度湾曲した円弧状に形成されている。
ガイド孔182とガイド孔184とが繋がる部分にはスライダ192が設けられている。スライダ192はガイドプレート162の厚さ方向に沿ってみた形状が略二等辺三角形状とされている。このスライダ192の形状を二等辺三角形とみなした場合の(底辺を除いた)二辺の二等分線の長さは、ガイド孔182やガイド孔184、更には、連結孔186の内幅寸法よりも小さく設定されている。このため、スライダ192はガイド孔182の連結孔186とは反対側の端部からガイド孔184の連結孔186とは反対側の端部までの間でスライドできると共に、ガイド孔182やガイド孔184、更には、連結孔186の内側において内幅方向にスライドできる。
また、スライダ192の形状を二等辺三角形とみなした場合の底辺に対応する部分は、上述した連結孔186の内周部においてシート26の後方を向く部分に倣うように湾曲している。このため、スライダ192が連結孔186の内側にある状態では、段付きボルト170の中心軸線を中心に連結孔186に沿ってスライダ192が回転できる。
このスライダ192には段付きボルト198がガイドプレート162の厚さ方向に貫通している。このスライダ192に対応して上記の支持プレート168には長孔202が形成されている。長孔202は長手方向が支持プレート168の長手方向に沿っていると共に、内幅寸法が段付きボルト198の軸部分の直径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
段付きボルト198は長孔202を通過しており、長孔202の長手方向一端と他端との間で段付きボルト198が移動できるようになっている。また、図11の断面図に示されるように、この長孔202に対応して上記のアンカプレート172には円孔208が形成されている。円孔208は内径寸法が段付きボルト198の軸部の外径寸法よりも僅かに大きく、この円孔208を段付きボルト198の軸部が通過している。
また、上記のスライダ192には回動規制片212が形成されている。回動規制片212は上記の長孔202に入り込んで、長孔202の内周部における内幅方向両側に接している。これにより、段付きボルト198はその中心軸線周りに自転可能であるものの、スライダ192の長孔202に対する回転は規制される。
さらに、アンカプレート172における円孔208の形成位置よりも先端側にはシェアピン222が設けられている。シェアピン222は、支持プレート168とアンカプレート172の双方を通過して支持プレート168とアンカプレート172の双方を連結している。上記のように、支持プレート168において段付きボルト198の軸部は長孔202を通過するため、段付きボルト198が長孔202内でその長手方向に移動することにより、支持プレート168に対してアンカプレート172は長孔202の長手方向に相対変位可能であるが、シェアピン222により支持プレート168とアンカプレート172とが連結されることで、シェアピン222が破断するまで長孔202の長手方向に沿った支持プレート168に対するアンカプレート172の相対変位が規制されている。
<第3の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(通常着座状態でのプリテンショナ160の動作)
本プリテンショナ160では、通常着座状態でウエビングベルト20の張力で段付きボルト170周りにアンカプレート172の先端がシート26の上方へ向こうとする。これにより、図12に示されるように、支持プレート168が、シェアピン222にて支持プレート168に連結されているアンカプレート172及び回動規制片212によって長孔202に対する相対回転が規制されたスライダ192を伴い連結孔186のガイド孔182側へ段付きボルト170を中心に回転する。
この通常着座状態で車両が急減速状態になり、ECUから起動信号が出力されるとプリテンショナ本体64が作動して、ワイヤ74の長手方向基端側がシリンダ66の基端側へ引き込まれると、アンカプレート172が支持プレート168の長手方向基端側(段付きボルト170側)へ移動しようとし、これにより、先ず、シェアピン222が破断される。このようにシェアピン222が破断されることで支持プレート168に対するアンカプレート172の相対変位が可能になると、それまで長孔202において段付きボルト170とは反対側の端部に位置していた段付きボルト198が、図13に示されるように、スライダ192を伴い長孔202における段付きボルト170側へスライドする。これにより、連結孔186の内周部におけるガイド孔182側の部分又はガイド孔182の内周部にスライダ192が干渉される。
上記のように、この状態では、連結孔186の内周部におけるガイド孔182側の部分又はガイド孔182の内周部にスライダ192が干渉されているため、この状態で更にワイヤ74の長手方向基端側がシリンダ66の基端側へ引き込まれると、スライダ192がガイド孔182の連結孔186とは反対側へ引き込まれる。このように、スライダ192がガイド孔182の連結孔186とは反対側へ引き込まれると、段付きボルト198周りにアンカプレート172が支持プレート168に対して回動する。さらに、スライダ192がアンカプレート172を伴いガイド孔182の連結孔186とは反対側へスライドする。
このように、スライダ192に伴われてアンカプレート172がガイド孔182の連結孔186とは反対側へ移動することで、図14に示されるように、ウエビングベルト20の先端がアンカプレート172と共にシート26の後方へ移動し、乗員の身体をシート26のシートバック88に押し付ける。これにより、車両が急減速することで乗員の身体が車両前方側へ慣性移動することを防止又は抑制できる。
(前ずり状態でのプリテンショナ160の動作)
これに対して、前ずり状態では、通常着座状態よりも乗員の腰部にウエビングベルト20が前方側へ引っ張られる。このため、アンカプレート172の先端は、ウエビングベルト20の張力で段付きボルト170周りにシート26の前方へ向こうとする。これにより、図15に示されるように、支持プレート168がアンカプレート172及びスライダ192を伴い連結孔186のガイド孔184側へ段付きボルト170を中心に回転する。
この前ずり状態で車両が急減速状態になり、ECUから起動信号が出力されるとプリテンショナ本体64が作動して、ワイヤ74の長手方向基端側がシリンダ66の基端側へ引き込まれると、アンカプレート172が支持プレート168の長手方向基端側(段付きボルト170側)へ移動しようとし、これにより、先ず、シェアピン222が破断される。このようにシェアピン222が破断されることで支持プレート168に対するアンカプレート172の相対変位が可能になると、それまで長孔202において段付きボルト170とは反対側の端部に位置していた段付きボルト198が、図16に示されるように、スライダ192を伴い長孔202における段付きボルト170側へスライドする。これにより、連結孔186の内周部におけるガイド孔184側の部分又はガイド孔184の内周部にスライダ192が干渉される。
上記のように、この状態では、連結孔186の内周部におけるガイド孔184側の部分又はガイド孔184の内周部にスライダ192が干渉されているため、この状態で更にワイヤ74の長手方向基端側がシリンダ66の基端側へ引き込まれると、スライダ192がガイド孔184の連結孔186とは反対側へ引き込まれる。このように、スライダ192がガイド孔184の連結孔186とは反対側へ引き込まれると、段付きボルト198周りにアンカプレート172が支持プレート168に対して回動する。さらに、スライダ192がアンカプレート172を伴いガイド孔182の連結孔186とは反対側へスライドする。
このように、スライダ192に伴われてアンカプレート172がガイド孔184の連結孔186とは反対側へ移動することで、図17に示されるように、ウエビングベルト20の先端がアンカプレート172と共にシート26の下方へ移動し、乗員の腰部をシート26のシートクッション28に押し付ける。これにより、車両が急減速した際の慣性で、シートクッション28とウエビングベルト20との間を乗員の身体が潜るように移動することを防止又は抑制できる。
このように、本プリテンショナ160では、シート26における乗員の着座姿勢に応じて適切な向きウエビングベルト20を引っ張って、乗員の身体を適切に拘束できる。しかも、スライダ192の形状が略二等辺三角形状で、ワイヤ74がアンカプレート172を引っ張ってスライダ192を移動させると、スライダ192の形状を二等辺三角形とみなした場合の頂点部分が連結孔186やガイド孔182又はガイド孔184の内周部に干渉される。
このため、連結孔186内においてガイド孔182側にスライダ192が位置していれば、この状態でワイヤ74がアンカプレート172を引っ張ってスライダ192の頂点部分が連結孔186やガイド孔182の内周部に干渉されると、その後はガイド孔182の連結孔186とは反対側の端部へ向けてスライダ192が移動する。
また、連結孔186内においてガイド孔184側にスライダ192が位置していれば、この状態でワイヤ74がアンカプレート172を引っ張ってスライダ192の頂点部分が連結孔186やガイド孔184の内周部に干渉されると、その後はガイド孔184の連結孔186とは反対側の端部へ向けてスライダ192が移動する。
このため、乗員が通常状態でシート26に着座しているか、前ずり状態でシート26に着座しているかを感度よく検知してスライダ192のスライド方向を切り替えることができる。
なお、上記の各実施の形態に係るプリテンショナ10、110、160は、何れもウエビングベルト20の先端が係止されるアンカプレート30、134、172に対応した構成であったが、バックル46に対応してプリテンショナ10、110、160を設けてもよい。
また、前記第1の実施の形態では、ワイヤ74を請求項2に記載の本発明を構成する連結手段としたが、連結手段の構成がこのようなワイヤ74に限定されるものではない。例えば、前記第2の実施の形態にて説明したように、ラックとピニオン、更に、このピニオンと共に回動するレバーを介してアンカプレート134を駆動手段に繋げ、駆動手段の駆動力をラック及びピニオンを介してレバーに伝えて、レバーを移動させることでアンカプレート134を移動させる構成としてもよい。
一方、前記第2の実施の形態では、駆動手段としてのプリテンショナ本体112の駆動力を、ラックバー118及びピニオン126を介してガイド手段としてのガイドプレート132に伝える構成であったが、請求項3に記載の本発明の観点からすれば、駆動手段の駆動力をガイド手段に伝えるための伝達手段の構成がこのようなラックバー118及びピニオン126に限定されるこのではない。例えば、駆動手段としてのプリテンショナ本体112のピストン116に長手方向基端部が繋がり、長手方向先端部がガイドプレート132に繋がったワイヤを伝達手段として駆動手段の駆動力をガイド手段に伝える構成としてもよい。