JP5674354B2 - 導電性針状酸化アンチモン錫微粉末およびその製造方法 - Google Patents

導電性針状酸化アンチモン錫微粉末およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、優れた導電性を有し、かつ耐環境性に優れた導電性針状酸化アンチモン錫微粉末およびその製造方法に関し、導電性塗料または導電性樹脂のフィラーとして、種々の用途分野において適用され、高付加価値化を図り得る優れた高機能性材料に関する。
導電性材料は、プラスチックス、ゴム、繊維などの導電性付与剤或いは帯電防止剤として、更には電子写真複写紙、静電記録紙などの記録材料の支持体用導電性付与剤等に利用される。
現在、導電性材料としては、界面活性剤、イオン導電材などのいわゆるイオン伝導型のタイプと、カーボンや酸化物系導電性粉末などのいわゆる電子伝導型のタイプが多く使用されている。
この電子伝導型のタイプのものは、イオン伝導型のものに比べ、湿度や温度に対する導電性の安定性が高いため、近年例えば、塗料、インク、プラスチックス、繊維など種々の分野での素材や製品の帯電防止用導電性付与剤として、環境に依存しない材料として非常に有効に使用されている。
電子伝導型のタイプの例としては、カーボン系材料、インジウム−スズ系(ITO)粉末、アンチモン−スズ系(ATO)粉末、SnO、アルミ−亜鉛系(AZO)酸化物などの酸化物系が知られている。カーボン系材料として代表的なカーボンブラックは、着色や発癌性誘発、ITO粉末は高価であること、酸化スズ(主成分がSnO)系の酸化物導電性粉末やAZO粉末は、導電性が低いことや経時劣化が生じ易いなどの問題があり、ATO粉末は、低抵抗の材料として着目されている。
更に言えば、一般に導電性付与剤を塗布して使用する場合には、導電性粉末は、ゴム、プラスチックス、紙等に充填されるか、或いは結合剤を含む溶液中に分散して塗布液とされ、この塗布液が、種々のフィルム、シート、支持体、さらには筐体などの被処理体上に塗布して用いられる。その場合、良好な導電性を得るには、少なくとも隣接する粉末同志が密に接触するように導電性粉末の含有量を多くしなければならず、球状等の粉末を用いる場合には、多量の導電性粉末の混入を必要とする。ここで、針状或いは繊維状の導電性粉末は、単位面積当たり或いは単位容積当たりで、少量の導電性粉末でも導電路を有効に形成することが可能となり、有利である。
そこで、針状または繊維状で導電性の酸化アンチモン錫または酸化錫として、種々のものが提案されている。例えば、導電性酸化第二錫繊維を製造するために、しゅう酸錫を非常にゆっくりと昇温焼成したり(特許文献1)、銅を溶媒として酸化アンチモン錫を蒸発させ、低温部に導入させ析出させたり(特許文献2)、錫化合物で紡糸液を作成し、紡糸する(特許文献3)等の方法で製造されることが知られているが、これらの方法で得られた物は、いずれも短軸が約0.5μmと太い、或いは、工業的生産性が極めて低い等の問題があった。
また、特に透明導電性と有する用途として、フィルムの埃防止のための帯電防止やICパッケージや電子機器の筐体などの静電気障害回避のための帯電防止処理、液晶ディスプレイやその他EL体の透明電極などが挙げられるが、このような用途に適用すると、粒子の径が大きいため、光吸収を起こし、かつ超薄膜の導電性膜を形成できないという課題があった。
そこで、公知の天然鉱物であるワラストナイトが針状結晶であるように、イノケイ酸塩鉱物等のケイ酸塩化合物が針状結晶になることはよく知られていることであり、これを利用して、短軸平均粒子径が0.005〜0.05μmであり、長軸平均粒子径が0.1〜3μmであり、かつアスペクト比が5以上であって、ケイ素成分を含有させることによる、針状導電性酸化錫微粉末または針状導電性アンチモン含有酸化錫微粉末が、提案されている(特許文献4、5)。これらは、錫成分、ケイ素成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を焼成し、次いで得られた焼成物の可溶性塩類を除去することにより製造される。
特開昭56−120519号公報 特開昭62−158199号公報 特開平5−117906号公報 特開平8−231222号公報 特開平8−217445号公報
しかしながら、ケイ素成分を添加して製造した針状導電性粒子は、塗膜にしたときのヘーズ値が高く、透明導電性膜として利用した場合に、塗膜が白濁してしまうため、ヘーズ値の低下が求められていた。
また、耐候性が求められる用途では、特にアルカリ性雰囲気における導電性の低下の改善が求められている。
そこで、発明者らは、鋭意研究した結果、針状導電性粉末を作製するときに、酸化アンチモン錫にゲルマニウムを添加することにより、導電性が高く、かつアルカリ雰囲気における導電性の低下が抑制される針状微粉末であって、この針状微粉末を用いた塗膜の表面抵抗率を低く、全光透過率を高くでき、かつヘーズ値を低下できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した導電性針状酸化アンチモン錫微粉末とその製造方法に関する。
(1)ゲルマニウムを含有する導電性針状アンチモン錫酸化物微粉末であって、短軸平均粒子径が5〜100nmで、アスペクト比が5以上であり、かつアンチモンを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有し、ゲルマニウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有する、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
(2)さらに、ケイ素を錫に対して質量基準で0.1〜2%含有する、上記(1)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
(3)粉体体積抵抗が、1×10Ω・cm以下である、上記(1)または(2)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
(4)導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を質量基準で40%含有する厚さ1μmの塗膜にしたとき、表面抵抗率が1010Ω/□以下であり、塗膜の全光透過率が90%以上であり、かつヘーズ値が10%以下である、上記(1)〜(3)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
(5)錫成分、アンチモン成分、ゲルマニウム成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を、アルカリ金属のハロゲン化物の融点より高い温度、かつ1200℃以下で焼成し、次いで得られた焼成物の可溶性塩類を除去する、ゲルマニウムを含有する導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(6)被焼成処理物が、錫の水酸化物および/またはその脱水物と、アンチモンの水酸化物および/またはその脱水物、ならびにゲルマニウム成分で構成される前駆物質と、アルカリ金属のハロゲン化物を含む、上記(5)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(7)被焼成処理物が、ゲルマニウム成分を含有するアンチモン−錫の水酸化物および/またはその脱水物で構成される前駆物質と、アルカリ金属のハロゲン化物を含む、上記(5)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(8)ゲルマニウム成分と共にケイ素成分を含む、上記(5)〜(7)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(9)被焼成処理物が、錫の水酸化物および/またはその脱水物と、アンチモンの水酸化物および/またはその脱水物、ならびにゲルマニウムの水酸化物および/またはその脱水物で構成される前駆物質と、アルカリ金属のハロゲン化物を含む、上記(5)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(10)前駆物質が、さらに、ケイ素の水酸化物および/またはその脱水物を含む、上記(9)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(11)アンチモン化合物および錫化合物を含む溶液とゲルマニウム化合物を含む溶液を、中和により共沈させ、ゲルマニウム成分を含有するアンチモン−錫の水酸化物を生成する、上記(5)記載の針状導電性酸化アンチモン錫微粉末の導電性製造方法。
(12)ゲルマニウム化合物を含む溶液が、さらに、ケイ素化合物を含む、上記(11)記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(13)被焼成処理物の錫成分とアンチモン成分が、塩化錫と塩化アンチモンの混合溶液を中和または加水分解して得られるものである、上記(5)〜(10)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(14)アルカリ金属のハロゲン化物が、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである上記(5)〜(13)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(15)アルカリ金属のハロゲン化物の量が、前駆物質の錫の質量基準で10%以上である、上記(5)〜(14)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法。
(16)上記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を、水性媒体に分散させてなる水性分散体。
(17)上記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末、およびバインダー樹脂と水もしくは溶媒を含むバインダーを含む導電性塗布組成物であって、針状酸化アンチモン錫微粉末を、バインダー樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部配合してなる、塗布組成物。
(18)固形分として導電性針状酸化アンチモン錫微粉末と分散剤を含む上記(16)記載の水性分散体と結合用樹脂を含む塗布組成物であって、水性分散体の固形分を、結合用樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部配合してなる、塗布組成物。
(19)上記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末と成形用樹脂を含む樹脂組成物であって、針状酸化アンチモン錫微粉末を、成形用樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部配合してなる、樹脂組成物。
(20)上記(1)〜(4)のいずれか記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を含む、導電性塗膜または導電性樹脂成形体。
本発明(1)によれば、導電性で、かつアルカリ雰囲気における導電性の低下が抑制される針状の酸化アンチモン錫微粉末を提供することができ、本発明(2)によれば、用いた塗膜のヘーズ値が低い針状の酸化アンチモン錫微粉末を、本発明(3)によれば、導電性が非常に高く、かつアルカリ雰囲気における導電性の低下が抑制される針状の酸化アンチモン錫微粉末を、本発明(4)によれば、用いた塗膜の表面抵抗率を低く、全光透過率を高くでき、かつヘーズ値が低い針状酸化アンチモン錫微粉末を提供することができる。また、本発明(5)によれば、針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法を提供でき、この針状酸化アンチモン錫微粉末の使用による透明導電膜の製造を可能とする。従来の導電性微粉末に比して、本発明(3)の針状酸化アンチモン錫微粒子は、その配合量が少量であっても、これを用いた塗膜への導電性の付与が可能である。
また、本発明(11)で製造される導電性針状酸化アンチモン錫微粉末は、内部までほぼ均一であるので、高い導電率を有するものが安定して得られる。
実施例1で得られた導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末の透過型電子顕微鏡写真である。
以下本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量基準の%である。
〔導電性針状酸化アンチモン錫微粉末〕
本発明の針状酸化アンチモン錫微粉末は、短軸平均粒子径が5〜100nmで、アスペクト比が5以上であり、かつアンチモンを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有し、ゲルマニウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することを特徴とする。この針状酸化アンチモン錫微粉末は、酸化第二錫を主成分とし、酸化第二錫にアンチモンドープによる酸素欠陥が存在するとき、針状酸化アンチモン錫微粉末に導電性が付与される。
ここで、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた質量平均粒子径である(n=50)。短軸平均粒子径が5nm以上であると、良好な導電性、および良好な水への分散性を示し、100nm以下であると導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を含有する塗膜の全光透過率を高める。この平均粒子径は、5〜50nmであると、より好ましい。また、本発明において、微粉末とは、短軸平均粒子径が100nm以下のものをいう。
アスペクト比が5以上であると、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を用いる塗膜に良好な導電性を付与する。ここで、アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長軸平均粒子径/短軸平均粒子径)を計算して求める(n=50)。本発明において、「針状」とは、本発明の物性値で定義される針状のものの他、繊維状、柱状、棒状等の類似形状のものを含む。なお、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の長軸平均粒子径は、25nm〜10μmであることが、良好な導電性付与の観点から好ましく、25nm〜4μmが、より好ましい。
アンチモンは、錫に対して質量基準で0.1〜10%であり、0.1%より少ないと導電性が得られず、また、アルカリ雰囲気下における導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の導電性の低下を抑制することができない。10%より多いと針状粒子が得られず、球状粒子となってしまう。導電性針状酸化アンチモン錫微粉末中のアンチモンおよび錫の質量定量分析は、ICP法で行う。
ゲルマニウムは、錫に対して質量基準で0.1〜10%であり、0.1%以上であると透明性の針状粉末を得ることができ、10%以下であると良好な導電性が得られる。また、10%より過剰に添加しても添加効果の増大が少なく、経済的に有利でない。導電性針状酸化アンチモン錫微粉末中のゲルマニウムの質量定量分析は、ICP法で行う。
また、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末は、さらに、ケイ素を錫に対して質量基準で0.1〜2%含有すると、用いた塗膜のヘーズ値を低下する観点から、好ましい。導電性針状酸化アンチモン錫微粉末中のケイ素の質量定量分析は、ICP法で行う。
導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の粉体体積抵抗が、1×10Ω・cm以下であると、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を使用する塗膜が、帯電防止効果を発揮する表面抵抗10Ω/□を得るために必要な、塗膜への導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の混入量を抑制することができ、塗膜の全光透過率等の物性を維持することが可能となり、好ましく、1×10Ω・cm以下が、より好ましい。ここで、粉体体積抵抗とは、試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kgf/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定し、これより粉体体積抵抗を算出する。
導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を質量基準で40%含有する厚さ1μmの塗膜にしたとき、塗膜の表面抵抗率が1010Ω/□であり、塗膜の全光透過率が90%以上であり、かつ塗膜のヘーズ値が10%以下であると、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を透明導電膜として使用するために、好ましい。全光透過率とヘーズ値(%)は、ヘーズメーターで測定する。このとき、塗膜は、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を質量基準で38〜42%含有すればよく、塗膜の残部は、後述するバインダー樹脂である。また、膜厚は、0.95〜1.04μmの範囲で測定する。
導電性針状酸化アンチモン錫微粉末は、全質量の70%以上が、短軸平均粒子径が5〜100nmであり、アスペクト比が5以上であり、かつゲルマニウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することが好ましい。
〔製造方法〕
本発明の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造方法は、錫成分、アンチモン成分およびゲルマニウム成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を、アルカリ金属のハロゲン化物の融点より高い温度、かつ1200℃以下で焼成し、次いで得られた焼成物の可溶性塩類を除去することを特徴とする。
被焼成処理物を製造するための前駆物質を、まず生成させる。前駆物質は、錫成分、アンチモン成分およびゲルマニウム成分を含む。錫成分としては、錫の水酸化物および/またはその脱水物であることが、好ましい。また、アンチモン成分としては、水酸化物および/またはその脱水物であることが、好ましい。
ここで用いられる錫成分の原料向けの錫化合物としては、塩化錫などのハロゲン化錫、酸化錫、酸化アンチモン錫、水酸化錫、水酸化アンチモン錫或いは、錫の硫酸塩、硝酸錫などの錫の無機酸塩(第一錫塩、第二錫塩)などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。第一錫塩としては、フッ化第一錫、塩化第一錫、ホウフッ化第一錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、硝酸第一錫、ピロリン酸錫、スルファミン酸錫、亜錫酸塩等の無機系の塩、アルカノールスルホン酸第一錫、スルホコハク酸第一錫、脂肪族カルボン酸第一錫等の有機系の塩が挙げられる。第二錫塩としては上記第一錫塩のそれぞれの第二錫塩が挙げられるが、気体であるもの、難溶性のもの等があるので、液体である塩化第二錫を用いるのが一般的であり、中でも塩化第二錫の塩酸水溶液を用いるのが、工業的にも望ましい。錫水酸化物は、塩化錫の塩酸水溶液をアルカリ中に滴下することで得られる。また、錫成分は、加水分解によっても得られる。この加水分解の方法は、当業者に公知の方法でよい。
ここで用いられるアンチモン成分の原料向けのアンチモン化合物としては、上記アンチモン錫化合物に加えて、塩化アンチモンなどのハロゲン化アンチモン、酸化アンチモン、水酸化アンチモン或いは、アンチモンの硫酸塩、硝酸などの無機酸塩などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。好ましくは、塩化アンチモンの塩酸水溶液を用いる。
ゲルマニウム成分の原料向けのゲルマニウム化合物としては、四塩化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム等のほか、有機ゲルマニウム等も使用できる。中でも、酸化ゲルマニウムは、アルカリに溶解するので、工業的に好ましい。具体的には、ゲルマニウム成分は、酸化ゲルマニウムをアルカリ水溶液に溶解させ、その後中和反応することによって生成する。ゲルマニウム化合物も、単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
ゲルマニウム成分と共に含むと好ましいケイ素成分向けのケイ素化合物としては、ケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、変性シリコーン等が挙げられ、ケイ酸ナトリウムとしては、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、オルトケイ酸ナトリウム(NaSiO)、NaSi2O、NaSi、水ガラス等が挙げられる。水ガラスが、均一性の観点から好ましい。ケイ素化合物も、単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
また、前駆物質は、ゲルマニウム成分を含有するアンチモン−錫の水酸化物および/またはその脱水物であることが、より好ましく、ゲルマニウム成分とアンチモン−錫を混合状態とすることにより、均一な針状微粒子を得ることができる。この方法は、各化合物の溶液を用いる種々の方法で行い得る。例えば、(a)70〜90℃の熱水中に、アンチモン化合物と錫化合物の塩酸水溶液と、ゲルマニウム化合物のアルカリ水溶液とを、それぞれ並行して、ほぼpH7を保持するように添加しながら中和し、ゲルマニウム成分を含有するアンチモン−錫水酸化物を共沈させる方法、(b)ゲルマニウム化合物のアルカリ水溶液中に、アンチモン−錫化合物の塩酸水溶液を添加して、中和することにより混合した水酸化物を共沈させる方法、(c)アンチモン−錫化合物中の塩酸水溶液中に、ゲルマニウム化合物のアルカリ水溶液を添加して中和し、混合した水酸化物を共沈させる方法、等の方法が挙げられる。このような方法の中でも特に上記(a)の方法がばらつきの少ないため工業的には望ましく、この場合、中和反応液のpHを5〜10に保持するように行うのが好ましい。また、錫成分とアンチモン成分は、塩化錫と塩化アンチモンの混合溶液等を加水分解することによっても得られる。この加水分解の方法は、当業者に公知の方法でよい。前駆物質は、ゲルマニウム成分と共にケイ素成分を含むと好ましく、例えば、上記(a)、(b)、(c)で、ゲルマニウム化合物を含む溶液に、ケイ素化合物を含ませることができる。
また、前駆物質は、アンチモン−錫の水酸化物および/またはその脱水物、ならびにゲルマニウム成分で構成することができ、錫の水酸化物および/またはその脱水物と、アンチモンの水酸化物および/またはその脱水物、ならびにゲルマニウム成分、或いは錫の水酸化物および/またはその脱水物と、アンチモンの水酸化物および/またはその脱水物ならびにゲルマニウムの水酸化物および/またはその脱水物で構成することもできる。この場合も、当業者に公知の方法で、前駆物質を作製すればよい。前駆物質は、さらに、ケイ素の水酸化物および/またはその脱水物を含むと好ましい。
被焼成処理物中のアンチモンを、好ましくは、錫に対して質量基準で0.1〜10%、より好ましくは0.3〜5%、特に好ましくは0.5〜3%添加する。0.1%より少ないと導電性が得られず、また、アルカリ雰囲気下における導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の導電性の低下を抑制することができない。一方、10%より多いと針状粒子が得られず、球状粒子となってしまう。
被焼成処理物中のゲルマニウムを、好ましくは、錫に対して質量基準で0.1〜10%、より好ましくは0.3〜5%、特に好ましくは0.5〜3%添加する。0.1%より少ないと針状性が得られず、10%より過剰に添加しても添加効果の増大が少なく、経済的に有利でない。
ゲルマニウム化合物は、より良好な針状性を得るためにはある程度多量に添加することが望ましいが、焼成後の生成物にゲルマニウム化合物が多量に残存すると、導電性に悪影響を及ぼし望ましくないので、可溶性であるゲルマニウム化合物を除去処理し、不必要な量のゲルマニウム化合物を除くことが、好ましい。
被焼成処理物中にケイ素を含有させるときは、ケイ素を錫に対して質量基準で、好ましくは0.1〜2%、より好ましくは0.3〜1.7%、特に好ましくは0.5〜1.5%添加する。ケイ素が0.1%以上、2%以下であるとゲルマニウムとの相乗効果により結晶性が向上し、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を用いた塗膜のヘーズ値をより低くすることができる。
ゲルマニウム化合物のアルカリ水溶液に使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩やアンモニア等が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
上記中和反応は水中、熱水中或いはアルコール中で行うことができ、熱水中で行うのが好ましい。ここで、アルコールとしては、エタノール、メタノール等が挙げられる。
次に、得られた前駆物質に、通常の洗浄、乾燥、粉砕等の処理を施した後、アルカリ金属のハロゲン化物と混合して被焼成処理物を生成する。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、種々のものを使用し得るが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等を挙げることができる。これらは単独で或いは混合して用いてもよい。
アルカリ金属のハロゲン化物の使用量としては、前駆物質の錫の質量基準で好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは75〜200%である。10%より低いと良好な針状粒子が得られず、また200%より多いと、添加の効果は現れず、後工程で余剰分を洗浄することになるため、経済的でない。
前駆物質とアルカリ金属のハロゲン化物との混合は、種々の方法によって行なうことができ、例えば、上記処理をした前駆物質とアルカリ金属のハロゲン化物とをヘンシェルミキサー等の混合攪拌機で行なうことができる。更に、この混合後、乾式粉砕機で粉砕を行うと、酸化アンチモン錫微粉末の針状性が均一化される点で、好ましい。
なお、このとき、導電性酸化アンチモン錫微粉末の性状を調節する目的で、種々の調節剤を添加することができる。例えば、導電性針状微粉末の針状性を調節する目的で、カリウム塩(例えば、リン酸カリウム)等を添加することもできる。
焼成は、アルカリ金属のハロゲン化物の融点以上、かつ1200℃以下で、好ましくは、800〜1200℃で行なう。焼成温度がアルカリ金属のハロゲン化物の融点以下であると、粒子の針状性が低くなり、1200℃を超えると粒成長が促進され、短軸径が太くなり、酸化アンチモン錫微粉末、およびこれを用いた塗膜の透明性が損なわれる。アルカリ金属のハロゲン化物の融点としては、NaClの800℃、KClの776℃、LiClの606℃等が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
焼成は、大気中で行うが、その他ガス雰囲気中で行うことでもかまわない。
焼成時間は、特に制限はないが、30分〜5時間が適当である。
次に、上記焼成生成物を、水、酸またはアルカリの水性媒液で処理して可溶性塩類を除去する。ここで用いる酸としては種々のものを使用し得るが、例えば、無機酸や有機酸等が挙げられ、中でも塩酸、硫酸、フッ化水素酸等の無機酸が好ましい。ここで、水またはNaOH、KOH等のアルカリの水溶液で除去される可溶性塩類は、上記ゲルマニウム化合物等が挙げられ、酸の水溶液で除去される可溶性塩類は、Na、K等が挙げられる。
上記のようにして可溶性塩類を除去して得た処理物は、必要に応じて、例えば、遠心沈降処理や種々の分級手段で針状性の不充分なものを除去した後、通常の濾過、洗浄、乾燥、仕上げ粉砕等を行なう。
以上によって、短軸平均粒子径が5〜100nmであり、アスペクト比が5以上であり、かつゲルマニウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有する導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を得ることができる。
本発明の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末は、水性媒体に分散させて、水性分散体として使用することができる。ここで、水性媒体には、水のほかに、分散剤や水と可溶する液体を含んでもよい。
上記水性分散体の固形分濃度は、質量基準で0.1〜50%、好ましくは1〜40%、より好ましくは5〜30%で、水性分散体のpHは4〜12、好ましくは5〜10である。ここで、固形分には、針状酸化アンチモン錫微粉末、分散剤が含まれる。
本発明の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末は、導電性塗料或いは磁性塗料向けの導電性塗布組成物として利用することができる。この場合には、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を、バインダー樹脂と水もしくは溶媒とを含むバインダーに混合し、塗布組成物とする。ここで、バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル−スチレン共重合体、繊維素樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、セラック、ロジン誘導体、ゴム誘導体等の天然系樹脂等が挙げられる。
導電性針状酸化アンチモン錫微粉末のバインダーへの配合量は、バインダー樹脂:100質量部に対して3〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。
導電性塗料の場合には、該塗料を紙や高分子フィルム等の絶縁性基体に塗布することにより、該基体上に軽くて透明性や表面平滑性、さらには密着性に優れた導電性塗膜を形成させ、種々の静電防止塗膜、静電記録紙、電子写真複写紙等とすることができる。
なお、本発明の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を、水性系塗料向け導電性塗布組成物に適用する場合には、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末、もしくは導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の製造工程で生成する可溶性塩類を除去処理した後の処理物から、水性分散体を調製することができる。該水性分散体を塗料化に供すると、塗料化時の分散エネルギーや、針状酸化アンチモン錫微粉末製造工程における脱水、乾燥エネルギーの軽減を図る上で、好ましい。水性分散体の固形分の配合量は、結合用樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部、好ましくは、10〜100質量部である。ここで、結合用樹脂としては、上記バインダー樹脂と同じものを使用することができる。
このようにして得られた導電性組成物は、従来の球状の導電性粉末を配合した導電性組成物に比べて、バインダー樹脂または結合用樹脂に対してより少ない配合量で高い導電性が得られると共に、透明性も優れており、経済的にも有利である。
このように少ない配合量で導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を使用できることから、バインダー樹脂または結合用樹脂の接着強度低下を起こすことなく、透明で導電性の塗膜を形成可能な塗布組成物として利用することができる。
また高濃度の針状酸化アンチモン錫微粉末を含む導電性塗料に塗布組成物を使用したときには、薄い塗膜であっても所望の導電性が得られる。
本発明の塗布組成物を塗布して、塗膜を形成する基板としては、電気・電子機器をはじめとして様々な分野において広く用いられている、各種の合成樹脂、ガラス、セラミックス等を挙げることができ、これらはシート状、フィルム状、板状等の任意の形状であり得る。合成樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびフェノール樹脂等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
本発明の塗布組成物の基板への塗布または印刷は、常法により、例えば、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、スピンコート、スクリーン印刷、アプリケーター等の手法で行うことができる。その後、塗布組成物を、必要により加熱して水または溶媒を蒸発させ、塗膜を乾燥させて硬化させる。このとき、加熱または紫外線等を照射してもよい。
本発明の塗布組成物で形成された塗膜の厚さは、表面抵抗率、全光透過率とヘーズ値の観点から、0.05〜50μmであると好ましく、0.05〜10μmであるとより好ましい。
また、本発明の導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末は、プラスチックス、ゴム、繊維等に導電性付与材または基体として配合し、導電性プラスチックス、導電性塗料、磁性塗料、導電性ゴム、導電性繊維等の導電性樹脂向けの樹脂組成物として利用することができ、この樹脂組成物は、導電性樹脂成形体として使用される。
導電性プラスチックスとして利用する場合には、成形用樹脂として、いわゆる汎用プラスチックス、エンジニアリングプラスチックスの種々のものを使用し得るが、汎用プラスチックスとしては、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ユリア・メラミン樹脂が挙げられる。エンジニアリングプラスチック的汎用プラスチックスとしては、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂が挙げられる。エンジニアリングプラスチックスとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、フッ素樹脂等が挙げられる。また、スーパーエンジニアリングプラスチックスとしては、例えば、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ビスマレイミドトリアジン、ポリアミノビスマレイミド、オレフィンビニルアルコール共重合体、ポリオキシベンジレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末は、これらの成形用樹脂に配合される。
導電性ゴムとして利用する場合には、成形用樹脂として、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエタンポリマー、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の従来から知られているものに、導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を配合する。
導電性繊維として利用する場合には、成形用樹脂として、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂等の可錘性の繊維に、導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を配合する。
導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末の上記成形用樹脂への配合量は、成形用樹脂100質量部に対して、3〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
50質量%塩化第二錫水溶液:100gと三塩化アンチモン:0.9gを、3N塩酸水溶液:50mlに溶解した溶液を、水酸化ナトリウム:50gを溶解した90℃のイオン交換水:1l中に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を濾過し、その後、濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物:100質量部に対して、3質量部の酸化ゲルマニウム粉末と100質量部の割合の塩化ナトリウム粉末を加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を得た。
〔実施例2〕
50質量%塩化第二錫水溶液:100gと三塩化アンチモン:0.9gを3N塩酸水溶液:50mlに溶解した溶液を、水酸化ナトリウム:50gと酸化ゲルマニウム:1gを溶解した90℃のイオン交換水:1lに滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物:100質量部に対して、100質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を得た。
〔実施例3〕
50質量%塩化第二錫水溶液:100gと三塩化アンチモン:0.9gを3N塩酸水溶液:50mlに溶解した溶液と、水酸化ナトリウム:50gと酸化ゲルマニウム:1gをイオン交換水:100gに溶解した溶液を、90℃のイオン交換水:1lにpHが6から8の範囲になるように同時に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を、濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物:100質量部に対して、100質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
得られた焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を得た。
〔実施例4〕
50質量%塩化第二錫水溶液:100gと三塩化アンチモン:0.9gを、3N塩酸水溶液:50mlに溶解した溶液と、水酸化ナトリウム:50g、酸化ゲルマニウム:1g及び水ガラス3号:1.2gをイオン交換水:100gに溶解した溶液とを、90℃のイオン交換水:1lにpHが6から8の範囲になるように同時に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を、濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物:100質量部に対して、100質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
得られた焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする導電性針状導電性酸化アンチモン錫微粉末を得た。
〔実施例5〜6、比較例1〕
表1に示す条件で、実施例4と同様にして、試験を行った。
〔実施例7〜16、参考例1、比較例2〜4〕
表1に示す条件で、実施例3と同様にして、試験を行った。
実施例1で得られた針状導電性酸化錫微粉末の透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。
〔試験例1〕
前記各実施例1〜16、参考例1および比較例1〜4で得られた各導電性微粉末について、(1)電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して短軸径の質量平均粒子径を求め、またそれに基づいてアスペクト比を算出した。表2に、短軸径の質量平均粒子径(「短軸径」と記載)、およびアスペクト比を示す。
さらに、(2)各試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kg/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値を横河北辰電機会社製デジタルマルチメータ(型番:Model 2502A)で測定し、粉体体積抵抗を算出した。これらの結果を表2に示す。なお、表2において、例えば「5.0E+06」は、「5.0×1006」を表す。
〔試験例2〕
実施例1〜16、参考例1および比較例1〜4で得られた導電性微粉末各20gを、水180gに分散した。分散液の作製には、ビーズミルを使用した。
次に、上記水分散液を、樹脂固形分濃度60wt%であるDIC社製水溶性塗料(製品名:ハイドランAP−40)50gに攪拌し、混合して塗布組成物を調製した。
これらの塗布組成物をバーコーターNo.3を用いてポリエステルフィルムに塗膜厚:6.87(μm)、塗工量:6.87×10−4(ml/cm)となるように塗布し、80℃で30分間自然乾燥して試験シートを作成した。なお、塗膜厚1μmのシートも同様に作製することができる。
これらの試験シートの表面抵抗率(Ω/□)を、川口電気製作所製デジタルオームメーター(型番:R−506型、)を用いて測定した。これらの結果を表2に示す。なお、表2において、例えば「1.0E+12」は、1.0×1012を表し、「>1.0E13」は、表面抵抗率が「1.0×1013」よりも高く、上記デジタルオームメーターの測定レンジを超えていたことを表す。
また、試験シートの全光透過率(%)とヘーズ値(%)を、日本電色工業製ヘーズメーター(型番:NDH−300A)を用いて測定した。このとき、測定値からベースフィルムであるポリエステルフィルムの全光透過率とヘーズ値を除外した塗膜としての値に換算した。これらの結果を表2に示す。
〔試験例3〕
試験実施例1〜16、参考例1および比較例1〜4で得られた粉末10gを、100mlの15wt%NaOH水溶液に入れて、80℃で30分間、撹拌した後、洗浄し、乾燥した。乾燥後の粉末の粉体体積抵抗を、試験例1と同様に測定した。表2に、これらの結果を「耐アルカリ性試験後の粉体体積抵抗」として記載する。なお、比較例の結果は、「>1.0E+08Ω・cm」と粉体体積抵抗が「1.0×10 Ω・cm」よりも高く、上記デジタルオームメーターの測定レンジを超えていたことを表す。
表2からわかるように、実施例1〜16は、いずれも針状粉で、短軸径が15〜40nm、アスペクト比は5〜20、粉体体積抵抗は、5〜500000Ω・cmであり、耐アルカリ性試験後で粉体体積抵抗の変化がなく、これらを用いた塗膜の表面抵抗率は3×10〜7×10Ω/□、全光透過率は、95〜99%、ヘーズ値は、2〜8%であり、全てにおいて良好な結果であった。特に、Geと共にSiを含む実施例4〜6は、用いた塗膜のヘーズ値が2〜3と著しく低かった。これに対して、Geを含有せずにSiを含有する比較例1は、ヘーズ値が35%であり、塗膜が白濁していた。Sbを含有しない比較例2は、粉体体積抵抗、表面抵抗率が高く、耐アルカリ性試験後の粉体体積抵抗も高かった。Sbを12%含む比較例3、Geを含まない比較例4では、針状粉が得られず、表面抵抗率が高かった。なお、参考例1では、Geを12%含有するが、Geを10%含有する実施例12と同様の結果であった。
上記の実施例からわかるように、本発明の導電性針状アンチモン酸化錫微粉末は、導電性が高く、かつアルカリ雰囲気における導電性の低下が抑制されており、これを用い、表面抵抗率が低く、全光透過率が高く、かつヘーズ値が低い塗膜を得ることができた。

Claims (8)

  1. ゲルマニウムを含有する導電性針状アンチモン錫酸化物微粉末であって、短軸平均粒子径が5〜100nmで、アスペクト比が5以上であり、かつアンチモンを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有し、ゲルマニウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有し、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を質量基準で40%含有する厚さ1μmの塗膜にしたとき、表面抵抗率が10 10 Ω/□以下であり、塗膜の全光透過率が90%以上であり、かつヘーズ値が10%以下である、導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
  2. さらに、ケイ素を錫に対して質量基準で0.1〜2%含有する、請求項1記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
  3. 粉体体積抵抗が、1×10Ω・cm以下である、請求項1または2記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末。
  4. 請求項1〜のいずれか1項記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を、水性媒体に分散させてなる水性分散体。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末、およびバインダー樹脂と水もしくは溶媒を含むバインダーを含む導電性塗布組成物であって、針状酸化アンチモン錫微粉末を、バインダー樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部配合してなる、塗布組成物。
  6. 固形分として導電性針状酸化アンチモン錫微粉末と分散剤を含む請求項記載の水性分散体と結合用樹脂を含む塗布組成物であって、水性分散体の固形分を、結合用樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部配合してなる、塗布組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末と成形用樹脂を含む樹脂組成物であって、針状酸化アンチモン錫微粉末を、成形用樹脂:100質量部に対して、3〜200質量部配合してなる、樹脂組成物。
  8. 請求項1〜のいずれか1項記載の導電性針状酸化アンチモン錫微粉末を含む、導電性塗膜または導電性樹脂成形体。
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