本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、アウタ筒部材の装着孔からの抜け抗力を十分に確保しつつ、アウタ筒部材の合成樹脂化が達成され得る、新規な構造の筒型防振装置を提供することにある。
本発明の第一の態様は、インナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で連結された筒型防振装置において、前記アウタ筒部材が合成樹脂製とされて、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部には、外周面に係止用突起を有する係止部と、軸方向外方に突出するストッパゴムの基端部分を支持せしめるストッパ支持部とが一体的に設けられて、該アウタ筒部材の軸方向外方に開口する凹所を隔てて該係止部が該ストッパ支持部の外周側に位置せしめられており、該ストッパゴムが軸方向の圧縮変形に伴って外周側に膨らんで該係止部の内周面に当接することにより該係止部の内周側への変形が制限されるようになっていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた筒型防振装置では、サスペンションメンバ等の装着孔への装着状態下、係止部の係止用突起が装着孔の開口端面等へ係止されることにより、アウタ筒部材の装着孔からの抜け出しが防止される。しかも、ストッパゴムを介してアウタ筒部材を装着孔から抜け出させる方向への大きな軸方向荷重が及ぼされた場合には、ストッパゴムが外周側への膨らみ変形を巧く利用して、係止部の内周側への変形を制限することで、係止突起の装着孔の開口端面等への係止状態が効果的に維持されて、装着孔からの抜け抗力が有効に発揮され得る。
特に、係止部とストッパ支持部との間に凹所が設けられていることから、アウタ筒部材を装着孔へ挿し入れて装着する際には、係止部の凹所内への弾性的な変形が容易に許容されることとなり、小さな抵抗力で容易に作業することが可能になる。一方、アウタ筒部材の装着孔への装着状態下では、軸方向荷重でストッパゴムが凹所へ入り込む方向へ弾性変形することで、外周側に膨らんだストッパゴムの外周面が係止部の内周面へ当接位置しやすくされると共に、ストッパゴムの内周側への変形剛性も、ストッパ支持部で大きく確保されて、係止部の内周側への変形変位に対する阻止力が効果的に発揮され得る。
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る筒型防振装置において、前記ストッパ支持部の外周面が、軸方向の先端側から基端側に向かって次第に外周側へ広がる傾斜面とされているものである。
本態様の筒型防振装置では、装着状態下でストッパゴムへ軸方向荷重が及ぼされた際、凹所内へ入り込むように弾性変形せしめられるストッパゴムが、傾斜面による案内作用でより効率的に外周側へ膨らみ変形することとなる。その結果、外周側へ膨らんだストッパゴムによる係止部の内周側への変形制限が、一層効果的に発揮され得る。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に係る筒型防振装置において、前記凹所の底部には、前記ストッパ支持部の外周面と前記係止部の内周面との対向面間に当接ゴムが設けられており、該係止部の基端部分が該当接ゴムを介して該ストッパ支持部に対して弾性的に連結されているものである。
本態様の筒型防振装置では、係止部が内周側へ弾性変形せしめられた際に、係止部の弾性を補うように、当接ゴムによる弾性が係止部の基端部分に及ぼされることとなる。そして、当接ゴムによる弾性が係止部に付与されることで、ストッパゴムが膨らんで係止部に当接するに至るまでの状況下でも、係止用突起の装着孔の開口端面等への係止状態の安定化が図られると共に、係止部の部材厚さひいてはアウタ筒部材の部材厚さを過度に大きくせずとも、係止用突起の係止作用によるアウタ筒部材の装着孔からの抜け抗力をより効果的に得ることが可能になる。
本発明の第四の態様は、第一〜三の何れかの態様に係る筒型防振装置であって、前記ストッパ支持部の軸方向先端面に固着された前記ストッパゴムにおいて、該ストッパ支持部の外周面に広がる被覆ゴム層が一体的に設けられているものである。
本態様の筒型防振装置では、ストッパゴムがストッパ支持部の外周面にまで延びだして被覆ゴム層が一体的に形成されていることから、軸方向荷重の入力時におけるストッパゴムの凹所内へ入り込むような弾性変形が、応力や歪の過大な集中を回避しつつ良好に生ぜしめられ得る。その結果、ストッパゴムの耐久性も向上されると共に、ストッパゴムの外周側への膨らみ変形も一層効率的に生ぜしめられ得て、ストッパゴムの係止部への当接による係止状態の不用意な解除阻止作用がより効果的に発揮され得る。
なお、本態様は、前記第三の態様と組み合わせて採用することが好適であり、それにより、被覆ゴム層を介して、ストッパゴムと当接ゴムを連設させて、これらストッパゴムと被覆ゴム層と当接ゴムの全体を一体的に形成することも可能となる。
本発明の第五の態様は、第一〜四の何れかの態様に係る筒型防振装置において、前記アウタ筒部材が、軸方向一方の端部側において内周側に厚肉化されて前記ストッパ支持部が形成されているものである。
本態様の筒型防振装置では、アウタ筒部材の軸方向一方の端部側を他の部分よりも内周側に厚肉とすることにより、限られた外径寸法の設定範囲内において、アウタ筒部材の厚さ寸法を実質的に大きくすることなく本体ゴム弾性体のボリュームを有効に確保しつつ、係止部やストッパ支持部を設けることが可能となる。
なお、好適には、インナ軸部材とアウタ筒部材とを連結する本体ゴム弾性体において、ストッパ支持部とインナ軸部材との対向面間に広がって軸方向一方の端面に開口する肉抜部を設けることが望ましい。これにより、アウタ筒部材の内周側への厚肉化に起因して軸直角方向の厚さ寸法が小さくなる軸方向一方の端部側において、本体ゴム弾性体に過度の応力や歪が集中することを回避すると共に、著しい高ばね化を回避してばね特性のチューニング自由度の向上を図ることが可能になる。
本発明の第六の態様は、第一〜五の何れかの態様に係る筒型防振装置において、前記アウタ筒部材の軸方向他方の端部には、外周側に広がるフランジ部が設けられていると共に、該フランジ部から軸方向外方に突出する他方のストッパゴムが設けられているものである。
本態様の筒型防振装置では、軸方向の両方で外方に向かってそれぞれ突出するストッパゴムを簡単な構造をもって実現することが可能になると共に、それら両方のストッパゴムを介して軸方向の予圧縮荷重を及ぼした状態で装着することができる。その結果、アウタ筒部材の装着孔からの耐抜け強度の更なる向上が図られると共に、軸方向一方の端部側のストッパゴムに軸方向の予圧縮荷重を及ぼすことで、予め外周側へ所定量だけ膨らませて変形させておくことも可能になり、軸方向荷重の入力に際して、係止部の内周側への変形制限を一層速やかに且つ確実に得ることもできる。
本発明に従う構造とされた筒型防振装置では、アウタ筒部材の抜け方向への軸方向荷重が及ぼされた際のストッパゴムの外周側への膨らみ変形を巧く利用して、係止部の内周側への変形が制限されることとなる。それ故、係止突起の装着孔の開口端面等への係止状態が、簡単な構造で効果的に維持され得ることとなり、アウタ筒部材が装着状態へ安定して保持され得るのである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜3には、本発明に従う構造とされた筒型防振装置の第1の実施形態として、サスペンションメンバマウント10が示されている。サスペンションメンバマウント10は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が所定距離を隔てて内外挿配置されて、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言う。
より詳細には、インナ軸部材12は、金属や合成樹脂等の材料で形成されており、厚肉小径の略円筒形状を呈している。
アウタ筒部材14は、必要に応じて繊維補強された合成樹脂材料で形成されており、全体として薄肉大径の略円筒形状を呈している。
そして、アウタ筒部材14がインナ軸部材12に外挿されて、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が全周に亘って軸直角方向で所定距離を隔てて配置されており、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14の間に本体ゴム弾性体16が介装されている。特に、本実施形態では、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が、一つのマウント中心軸上で同軸的に配置されている。
本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円筒形状を有するゴム弾性体であって、内周面がインナ軸部材12の外周面に重ね合わされて固着されていると共に、外周面がアウタ筒部材14の内周面に重ね合わされて固着されている。これにより、インナ軸部材12とアウタ筒部材14は、本体ゴム弾性体16によって軸直角方向に弾性連結されている。なお、本体ゴム弾性体16は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14を備えた一体加硫成形品として形成され得る。
ここにおいて、アウタ筒部材14には、軸方向一方の端部となる上方端部において内径寸法が小さくされた、即ち内周側に厚肉化された厚肉部18が設けられている。なお、アウタ筒部材14の内周面において、アウタ筒部材14と厚肉部18の接続部分はテーパ形状とされており、かかる接続部分における内径寸法が滑らかに変化している。
また、厚肉部18には、軸方向端面に開口して厚肉部18の軸方向内方に延びる凹所20が形成されている。この凹所20は、周方向の全周に亘って略一定の断面形状で延びる溝状の凹所とされている。この凹所20により、厚肉部18の軸方向上端部分には、外周側の薄肉筒状の係止部22と、内周側の厚肉の円環ブロック状のストッパ支持部24とが構成されている。換言すれば、アウタ筒部材14の軸方向外方に開口する凹所20を隔てて、係止部22がストッパ支持部24の外周側に位置している。
そして、この係止部22の厚さ寸法(図1中の左右方向寸法)は、アウタ筒部材14の中間部分の厚さ寸法よりも僅かに小さくされて、容易な弾性変形が許容されている。なお、係止部22の上端部分の外周面には係止用突起26が形成されている。本実施形態では、この係止用突起26は、係止部22の外周面に所定の寸法で突出する鉤形とされており、且つ係止用突起26の上端面は、軸方向外方に行くに従って内周側に傾斜する傾斜面とされている。
また、本実施形態のストッパ支持部24は、内周面の内径寸法が全周に亘って略等しくされて軸方向に延びる筒形状とされている一方、外周面は先端側から基端側に行くに従って外周側へ広がる傾斜面とされている。そして、ストッパ支持部24の軸方向端面より係止部22が軸方向上方に僅かに突出している。
また一方、アウタ筒部材14の軸方向他方の端部である下方端部には、軸直角方向で外周側に広がるフランジ部28が形成されている。なお、係止用突起26の下端面とフランジ部28との軸方向の離隔距離は、後述するサスペンションメンバ44の装着孔における軸方向寸法と等しくされている。
さらに、アウタ筒部材14のストッパ支持部24の上端面には上側ストッパゴム30が固着されており、ストッパ支持部24の軸方向先端面から軸方向外方に向かって突出している。換言すれば、軸方向外方に突出する上側ストッパゴム30の基端部分がストッパ支持部24により支持されている。そして、この上側ストッパゴム30は、インナ軸部材12の軸方向上端面よりも軸方向外方の位置まで突出している。更に、本実施形態の上側ストッパゴム30は、内径寸法が略一定とされる一方、基端部分の外径寸法がストッパ支持部24の先端面の外径寸法よりも大きくされた厚肉の円環形状とされている。
また、本実施形態では、ストッパ支持部24の外周面の全周に亘って、薄肉の被覆ゴム層32が設けられており、必要に応じて固着されている。更に、凹所20の底部には、ストッパ支持部24の外周面と係止部22の内周面との対向面間において、当接ゴム34が設けられており、必要に応じて固着されている。これにより、係止部22の基端部分が当接ゴム34を介してストッパ支持部22に対して弾性的に連結されている。なお、係止部22のみであっても内周側への湾曲変形または外周側への復元変形は可能であるが、このような当接ゴム34が係止部22の内周面に当接または固着されていることにより、例えば、係止部22の外周側への復元の際に当接ゴム34の弾性復元力が利用できることから一層効果的である。なお、本実施形態では、上側ストッパゴム30、被覆ゴム層32、当接ゴム34が、連続して一体的に形成されている。更に、これらのゴムと本体ゴム弾性体16は、ストッパ支持部24の内周面において周上の複数箇所に等間隔に形成された接続溝を通じて接続されて一体的に形成されている。
更にまた、アウタ筒部材14のフランジ部28の下面には他方のストッパゴムとして下側ストッパゴム36が形成されており、フランジ部28から軸方向外方に向かって突出形成されている。この下側ストッパゴム36は、インナ軸部材12の軸方向下端面よりも軸方向外方にまで突出しており、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。なお、本実施形態では、かかる下側ストッパゴム36は厚肉の略円環形状とされている。
さらに、本実施形態では、本体ゴム弾性体16の軸方向上端面から軸方向内方に延びる上側肉抜部38がインナ軸部材12の周囲に形成されており、所定寸法で軸方向内方に延びている。この上側肉抜部38の外周面は、軸方向上部において上側ストッパゴム30の内周面につながっている。そして、上側肉抜部38が形成されていることにより、ストッパ支持部24の形成に伴う軸直角方向の高ばね化が回避されている。
また、本実施形態の本体ゴム弾性体16には、軸方向下端面に開口する下側肉抜部40が形成されている。この下側肉抜部40は、周方向の全周に亘って延びる環状の凹溝形状とされており、下側肉抜部40の外周面が、軸方向下部において下側ストッパゴム36の内周面につながっている。
特に、本実施形態では、下側肉抜部40の径方向一方向(図3中の左右方向)において、深さ寸法が大きくされた一対のすぐり部42,42が形成されており、それぞれ1/4周程度の大きさで対向配置されている。この一対のすぐり部42,42により、互いに直交する軸直角方向2方向におけるばね比が大きくされており、後述するサスペンションメンバマウント10の車両装着時において、車両の前後方向(図3中の左右方向)に比して、車両の左右方向(図3中の上下方向)のばね剛性を相対的に硬く設定し得るようにされている。
さらに、図4には、上記の如き構造とされたサスペンションメンバマウント10の車両への装着状態が示されている。即ち、サスペンションメンバ44の装着孔に対してアウタ筒部材14が挿入されていると共に、インナ軸部材12の内孔に固定ボルト46を挿通して固定ナット48で締結することで、車両ボデー50とインナ軸部材12がボルト固定されている。これにより、車両ボデー50とサスペンションメンバ44が、サスペンションメンバマウント10により防振連結されている。なお、サスペンションメンバマウント10は、例えば、図4中の上下方向が車両の上下方向、図3中の上下方向が車両の左右方向、図3中の左右方向が車両の前後方向となるように装着される。
より詳細には、サスペンションメンバ44の装着孔の下方からサスペンションメンバマウント10を挿入するに際しては、係止部22が内周側に湾曲変形することで係止突起26が装着孔の内周面に摺接状態で軸方向へ差し入れられる。そして、サスペンションメンバ44の下端がフランジ部28に当接して挿入端が規定されると、係止突起26が装着孔を上方に抜け出して、係止部22が弾性的に外周側へ復元変形する。これにより、係止用突起26の下端面がサスペンションメンバ44の上端面に当接して、サスペンションメンバ44が係止用突起26とフランジ部28との間で軸方向で位置決め固定される。
なお、係止部22の先端面は、係止突起26の外周縁から軸方向先端側に向かって次第に小径化するテーパ面とされており、サスペンションメンバ44の装着孔への差し入れに際して、装着孔内へ容易に導き入れられて、係止部22の内周側への弾性変形もスムーズに生ぜしめられるようになっている。また、サスペンションメンバ44の装着孔の内径寸法は、サスペンションメンバマウント10の装着を許容するために、アウタ筒部材14の外径寸法と略同じに設定されている。尤も、アウタ筒部材14の外径寸法よりも装着孔の内径寸法を僅かに小さくして、装着状態でアウタ筒部材14や本体ゴム弾性体16に縮径方向の予圧縮を及ぼすことも可能であり、かかる予圧縮を利用して、係止部22の弾性的な復元力を一層大きく設定し、係止用突起26のフランジ部28への係止状態保持力の向上を図ることも可能である。
ここにおいて、図1に示されている単体状態でのサスペンションメンバマウント10における上側ストッパゴム30の上端面から下側ストッパゴム36の下端面までの軸方向寸法をL1、図4に示されている車両装着状態での同寸法をL2とすると、L2<L1とされている。即ち、単体状態では、上側ストッパゴム30および下側ストッパゴム36が、インナ軸部材12の軸方向上端および下端より軸方向外方へ延び出していたが、サスペンションメンバマウント10が車両に装着されることにより、上側ストッパゴム30および下側ストッパゴム36がインナ軸部材12の軸方向両端と同じ位置まで圧縮されている。これにより、車両装着状態では、サスペンションメンバマウント10には軸方向の予圧縮荷重が及ぼされて、軸方向のばね特性が調節されている。
このようにして車両に装着されたサスペンションメンバマウント10では、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間に及ぼされる各種方向の振動に対して、本体ゴム弾性体16や上下のストッパゴム30,36による防振効果が発揮されることとなる。特に、車両の左右方向と上下方向となる図3中の上下方向と左右方向では、ばね比が大きくされることにより、車両の操縦安定性と乗り心地の両立が図られ得る。
また、車両走行時における段差乗り越え等に際して、サスペンションメンバ44を車両ボデー50に対して上方へ突き上げる方向の大荷重が入力されると、インナ軸部材12がアウタ筒部材14に対して相対的に軸方向下方へ変位せしめられる。その際、インナ軸部材12の軸方向上端部に固着された車両ボデー50により上側ストッパゴム30の上端面が押圧されることから、車両ボデー50による軸方向下方への大荷重が、上側ストッパゴム30を介して、ストッパ支持部24からアウタ筒部材14へ直接的に及ぼされることとなる。それ故、車両上下方向に入力される大荷重が、アウタ筒部材14を、サスペンションメンバ44の装着孔から下方へ引き抜く方向へ及ぼされることとなるのである。
ここにおいて、上述の如きサスペンションメンバマウント10では、図5に示されているように、上側ストッパゴム30の基端部分がストッパ支持部24で支持されていることから、上側ストッパゴム30が車両ボデー50とストッパ支持部24との対向面間で効率的に軸方向に圧縮変形せしめられる。その結果、上側ストッパゴム30が、外周側へ大きく且つ安定して膨出変形することとなり、かかる膨出変形部分が係止部22の内周面に対して接近方向へ変位することとなる。これにより、係止部22における内周側への弾性変形が、上側ストッパゴム30の膨出変形部分への当接によって制限され得る。
しかも、係止部22とストッパ支持部24との間には、凹所20が形成されていることから、上側ストッパゴム30の軸方向圧縮変形に際して外周側に膨らんだ部分が凹所20内へ入り込む方向に弾性変形して、膨出変形部分が上側ストッパゴム30の軸方向下側部分で大きく生ぜしめられることにより、下方に位置せしめられた係止部22の内周面への当接が有利に発現され得る。
特に、本実施形態では、ストッパ支持部24の外周面が傾斜面とされており、上側ストッパゴム30が弾性変形して凹所20内へ入り込むのに伴って、かかる傾斜面の案内作用や分力作用に基づいて上側ストッパゴム30が一層効率的に外周側へ膨出変形せしめられることとなる。しかも、凹所20内へ入り込むように弾性変形せしめられた上側ストッパゴム30は、ストッパ支持部24により径方向内方への変形剛性が大きくされることから、係止部22への当接反力に対する抵抗力も十分に確保され得る。
加えて、上側ストッパゴム30の基端部分の外径寸法が、ストッパ支持部24の先端面の外径寸法よりも大きくされていることから、上側ストッパゴム30の軸方向圧縮変形に際して、上側ストッパゴム30の外周部分における凹所20内への入り込み方向の弾性変形、ひいては係止部22との径方向対向部位における上側ストッパゴム30の膨出変形が、一層効率的に生ぜしめられ得る。
さらに、本実施形態では、サスペンションメンバマウント10の装着前の単体状態において、上側ストッパゴム30を支持するストッパ支持部24の上端面が、係止部22の先端部よりも軸方向内方に控えた位置に設定されている。これにより、係止部22の先端部が、ストッパ支持部24の上方で上側ストッパゴム30に対して径方向で対向位置せしめられていることから、上述の如き軸方向荷重の入力に伴って上側ストッパゴム30が外周側へ膨出変形せしめられた際、かかる膨出変形部分が係止部22に対して一層効率的に当接され得ることとなる。
従って、本実施形態のサスペンションメンバマウント10では、係止部22の内周側への弾性変形に伴う係止用突起26のサスペンションメンバ44の装着孔周縁に対する係止状態の解除が、上側ストッパゴム30の圧縮変形を巧く利用して効果的に防止されることとなり、サスペンションメンバマウント10のサスペンションメンバマウント44からの抜け抗力が向上されて、たとえ大きな軸方向荷重が及ぼされた場合でも、サスペンションメンバ44の装着孔に対するアウタ筒部材14の組み付け状態が安定して保持され得るのである。
なお、上述の説明から明らかなように、上側ストッパゴム30が軸方向で圧縮変形されて外周側に膨らむことによって、かかる外周側の膨出部分が係止部22の内周面に当接して、係止部22の内周側への変形を制限するものであれば良く、例えば図1に示された単体状態や図4に示された装着状態では、上側ストッパゴム30が係止部22に当接せずに、両者の対向面間に大きな隙間が存在していても差し支えない。また、図5に示されている如き軸方向荷重が入力されて上側ストッパゴム30が膨出変形せしめられた状態でも、係止部22との径方向対向面間にある程度の隙間が残存していても良い。即ち、係止用突起26の突起高さ寸法L3(図5参照)だけ係止部22が内周側へ弾性変形して係止状態が外れてしまうまでの状態で、係止部22の内周面に対して上側ストッパゴム30の膨出変形部が当接して係止部22へ変形制限作用を及ぼし得るものであれば良い。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、本体ゴム弾性体16と上側ストッパゴム30と被覆ゴム層32と当接ゴム34が一体的に形成されていたが、かかる態様に限定されず、それぞれ別体で形成されてもよい。尤も、本発明において、被覆ゴム層32と当接ゴム34は必須ではない。即ち、サスペンションメンバマウント10に対して軸方向の荷重が入力された場合、上側ストッパゴム30のみが膨出変形して凹所20内に入り込み、係止部22の内周側への湾曲変形を制限するようにしてもよい。
また、上側肉抜部38、下側肉抜部40、すぐり部42の大きさは前記実施形態の形状に限定されない。これらの大きさは要求される防振特性に応じて適宜設計変更可能であり、また、これらの大きさを調節することにより、要求される防振特性に対してチューニングが可能である。尤も、これらは本発明において必須なものではない。
さらに、前記実施形態では、係止部22およびストッパ支持部24が周方向の全周に亘って形成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。即ち、係止部とストッパ支持部は、それぞれが周上の複数箇所において形成されていてもよいし、一方を周上の全周に亘って形成すると共に、他方を周上の複数箇所において形成する等してもよい。また、係止部を周上の複数箇所に形成する場合には、かかる係止部の周方向両端部分にアウタ筒部材14の軸方向端面から軸方向に延びるスリットを設ける等して形成してもよく、このスリットの大きさを調節して係止部の変形特性を調節することもできる。
更にまた、前記実施形態では、アウタ筒部材14の軸方向下端部において、フランジ部28が周方向の全周に亘って形成されていたが、例えば周上の複数箇所において部分的に形成されていてもよい。尤も、本発明においてフランジ部28は必須ではなく、例えばサスペンションメンバの装着孔に対してアウタ筒部材の軸方向位置を規定する必要がある場合でも、アウタ筒部材の軸方向下端部に対して、軸方向上端部と同様の係止構造を採用してもよい。
また、前記実施形態において、鉤形の係止用突起26が採用されていたが、前述の特許文献2に記載の如き山形断面の係止用突起等も採用可能であり、係止用突起の形状はアウタ筒部材に外挿されるサスペンションメンバの形状に応じて適宜変更可能である。
さらに、本発明は、例示の如きマウント中心軸を略上下方向に向けて配される各種の筒型防振装置の他、マウント中心軸を略水平方向等に向けて配されるブッシュ等にも適用可能であり、特に軸方向の入力荷重がアウタ筒部材を装着孔から抜け出させる方向に及ぼされる防振装置に対して好適である。