以下、本発明に係る構成を図1から図29に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
(画像形成装置の構成)
図1及び図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す図であり、図1は機構部の全体構成の側面説明図、図2は同機構部の平面説明図である。
画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、記録ヘッド走査手段として、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。キャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(色を区別しないときは「記録ヘッド7」という)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、各色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の液体吐出ヘッドで構成することもできる。
また、本実施形態においては、記録ヘッドは、図15に示すようにヘッドを副走査方向に複数ほぼ直列に配列し、各ヘッドのつなぎ部分で各々のヘッドが互いにオーバーラップするように配置するように構成される。また、図15の構成のヘッドを更に繋げてフルラインヘッドとすることもできる。このとき、ヘッドを繋げる方向は主走査方向でも副走査方向でもどちらでもよい。
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送する搬送手段として、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
また、図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニットが着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニットは搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。この維持回復機56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット61内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベルト21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
また、印字待機中にはキャリッジ3は維持回復機構56側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
次に、記録ヘッド7を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図3では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
さらに、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
このように構成した液体吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
次に、画像形成装置の制御手段としての制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ(NVRAM)204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのホストI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ26にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の画像(情報)処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なっている。
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
次に、印刷制御部207及びヘッドドライバ208の一例について、図6を参照して説明する。印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302とを備えている。
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ315の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ315とを備えている。
アナログスイッチ315は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号MN0〜MN3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ315がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
ここで、この画像形成装置において使用する記録液であるインクについて説明する。本発明に係る画像形成装置では、顔料、水溶性有機溶剤、炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテル、および水を少なくとも含んでなるインク構成を用いることにより、普通紙上へ印字した場合でも,(1)良好な色調(十分な発色性,色再現性を有する)、(2)高い画像濃度、(3)文字・画像にフェザリング現象やカラーブリード現象のない鮮明な画質、(4)両面印刷にも耐え得るインク裏抜け現象の少ない画像、(5)高速印刷に適した高いインク乾燥性(定着性)、(6)耐光性,耐水性などの高い堅牢性を有した高画質画像を達成することができ、画像濃度、発色性、色再現性、文字にじみ、色境界にじみ、両面印刷性、定着性等を大幅に改善することができる。
次に、このようなインクを使用する場合に好ましい駆動波形の一例について、図7及び図8を参照して説明する。
駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、図7に示すように、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで公正される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して加圧液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して加圧液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
そして、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴(小ドット)を形成するときには図8(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴(中ドット)を形成するときには図8(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴(大ドット)を形成するときには図8(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには図8(d)に示すように微駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加させるようにする。
中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積をかせぐために立ち上げ電圧は小さくしない。
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。
また、微駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの微駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
さらに、微駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積をかせぐことができる。つまり、微駆動パルスP2によって生じた振動周期によって加圧液室106の圧力振動に駆動パルスP3による加圧液室6の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図9に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルスは、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
(画像形成システムの構成)
次に、画像形成装置に接続された画像処理装置に記憶された本発明に係る画像形成プログラムを実行して、画像形成装置により印刷画像を出力する画像形成システムの一実施形態について図10を参照して説明する。画像形成システムは、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ(画像形成装置)500とが、所定のインターフェイス又はネットワークで接続されて構成されている。
画像処理装置400は、図11に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインターフェイスを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しないが、光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインターフェイス(外部I/F)407が接続されている。
画像処理装置400の記憶装置406には、本発明に係る画像形成プログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
なお、以下に説明する画像形成方法(バンディング低減方法)はインクジェットプリンタ側で実施することができるが、この例では、インクジェットプリンタ500側では、装置内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400内にソフトウェアとして組み込まれたプリンタドライバで画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)が生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され,インクジェットプリンタ500が印刷出力される例で説明する。
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。なお、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換される。
その後、これらの記録ドットパターンに対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインターフェースを経由してインクジェットプリンタ500へ転送されるものである。
本実施形態では、画像形成方法として、記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する、いわゆる1パス印字を用いても良いし、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査を行い画像を形成する、いわゆるマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向にヘッドを並べて同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
以下、マルチパス印字について説明する。ここでは、一つの記録領域に対して4回の主記録走査(4パス)を実行することによって画像を完成させる場合を例として説明する。
図12は、本実施形態の画像処理部600を概略的に示すブロック図である。図中、601は入力端子、602は記録バッファ、603はパス数設定部、604はマスク処理部、605はマスクパターンテーブル、606はオーバーラップドット制御部、607はヘッドI/F部、608は記録ヘッドを示している。
入力端子601から入力されたビットマップデータは記録バッファ制御部により、記録バッファ602の所定のアドレスに格納される。記録バッファ602は1スキャンと紙送り量分のビットマップデータを格納できる容量を有し、FIFOメモリのような紙送り量単位のリングバッファを構成している。記録バッファ制御部は、記録バッファ602を制御し、1スキャン分のビットマップデータが記録バッファ602に格納されるとプリンタエンジンを起動し、記録ヘッド608の各ノズルの位置に応じて記録バッファ602よりビットマップデータを読み出し、パス数設定部603に入力する。また、入力端子601から次回のスキャンのビットマップデータが入力されると、記録バッファ602の空き領域(記録が完了した紙送り量に相当する領域)に格納するように記録バッファ602を制御する。
次に、パス数設定部603では分割パス数を決定し、そのパス数をマスク処理部604へ出力する。マスクパターンテーブル605では予め格納されているマスクパターンテーブル、例えば、1パス記録、2パス記録、4パス記録、8パス記録のマスクパターンから、必要なマスクパターンを決定された分割パス数に応じて選択し、マスク処理部604に出力する。また、マスク処理部604は、記録バッファ602に格納されているビットマップデータを、マスクパターンを用いてパス記録毎にマスクし、オーバーラップドット制御部606(詳細は後述する)にてオーバーラップ領域内の端部域とそれ以外の領域のドットパターンを生成して、ヘッドドライバ607に出力すると、ヘッドドライバ607ではそのマスクされたビットマップデータを記録ヘッド608が用いる順に並び替え、記録ヘッド608に転送する。
このようにマルチパス印字を用いることで、1パス印字では目立つバンディングを平均化して目立たなくすることができる。
<バンディング低減制御>
(駆動周波数制御による方法)
次に、駆動周波数の制御によるバンディング低減方法について説明する。印刷の高速化を行う手段として、上述のような1パス印字や、つなぎヘッド方式、ライン方式の画像形成装置が挙げられる。しかしながら、1パス印字では用紙送り量のズレによるバンディングや、ヘッドを副走査方向に複数並べてノズル群を長尺化するような場合では、ヘッドつなぎ部のズレによるバンディングが発生する。上述したように、バンディングを抑止する方法として、ノズルの一部をオーバーラップさせる、すなわち、印字データを各々のノズルに分配させることでドットズレを分散させるようにする方法がある。
オーバーラップ領域においては、データ上1つのドットに対応するノズルは2つ存在するため、何ら手当てをしなければデータ上1つのドットに対して2つのノズルからドットが打たれることとなる。そのため、オーバーラップ部で色が濃くなってしまい、バンディングが発生するという問題がある。これに対し、オーバーラップ領域の印字データを、乱数を用いて各々のノズルに分配する方法が用いられてきたが、乱数を用いているため各々のノズルに分配されたドットが連続的/非連続的に打たれる箇所が混在することになる。これによりオーバーラップ領域では様々な駆動周波数で印字される場合が存在することになる。
本実施形態の画像形成装置では、吐出滴を予め定められた駆動周波数で吐出するときに狙いの吐出量となるように駆動波形が設計されている。駆動周波数が変わると、例えば、1パス印字から2パス印字に変更すると駆動周波数は半分となるため、吐出滴量も変動してしまう。したがって、オーバーラップ領域内で様々な駆動周波数で印字される場合が混在すると、吐出滴量の変動によりバンディングが発生することになる。
更に、オーバーラップ領域と非オーバーラップ領域とで駆動周波数の差異も発生し、オーバーラップ部にバンディングが発生することになる。そこで本実施形態では、図13に示すように、オーバーラップ領域の印字データを各々のノズルに分配するときに、オーバーラップ領域と非オーバーラップ領域の駆動周波数が同じとなるように印字データを分配するようにしている。しかしながら、本来、オーバーラップ領域においては、使用するノズルを分散させることでドットズレによるバンディングを吸収する方法がとられてきたため、ドットに偏りを持たせると、その部分でバンディングが見えてくる場合も考えられる。
図14を用いて吐出滴の駆動周波数特性について説明する。図14では駆動周波数が5khzから20kHzまでの吐出滴量をあらわしている。1パス印字を20kHz、2パス印字は10kHz、4パス印字は5kHzとするとき、20kHzから10kHzとなるときは大きく吐出滴量が変動しているが、10kHzから5kHzとなるときでは吐出滴量に大きな差は見られなくなっている。
このことより、1パス印字を行っているときはオーバーラップ領域に対して非オーバーラップ領域の駆動周波数の半分とすると周波数特性の影響を大きく受けることになる。特に紙面を埋めるようにドットを打ち込むシャドー域で顕著になるが、ドットをまばらに打ち込むようなハイライト域では非オーバーラップ領域の駆動周波数も落ちているため、周波数特性の影響はほとんど発生しなくなる。
本実施形態では、シャドー域についてのみオーバーラップ領域と非オーバーラップ領域の駆動周波数を同じにするように階調レベルにより切り替え可能としている。なお、周波数特性はインクの粘度によって特性が変化するため、ヘッドの周辺温度により切り替える階調レベルを変動できるようにしても良い。特に、1パス印字時に駆動周波数の差異によるバンディングが顕著となるため、2パス印字等のマルチスキャンモード時はオーバーラップ領域を分散するように切り替えるようにしても良い。
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る画像形成装置によるバンディング低減制御の一実施形態(第1の実施形態)について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、図16に示すように、第一ヘッド7aと第二ヘッド7bとの一部を重複するようにオーバーラップさせて配置している。このつなぎヘッドの重複部分をオーバーラップ領域700という。オーバーラップ領域700における処理は、上述のように各々のヘッドに印字データを分配することで使用ノズルを分散させてバンディング低減を図ることができるが、本実施形態では、更に、オーバーラップ領域の端部領域701では別の処理を実施するものである。即ち、オーバーラップ領域の端部の領域(以下、端部領域という)701と、オーバーラップ領域の端部以外の領域(以下、端部以外の領域という)702とにより異なるオーバーラップ制御を行うようにしている。なお、端部領域とは、オーバーラップ領域内における相対的な端部の意であり、必ずしも最端部のノズルを意味するものではなく、ヘッドやオーバーラップ領域の大きさ等に応じて端部から所定範囲(1または複数ノズル分)の領域を指すものである。
本実施形態の画像形成装置の制御手段(オーバーラップドット制御部606)の処理について、図17のフローチャートを用いて説明する。先ず、印字データがセットさせると(S101)、それがオーバーラップ領域のデータか、それ以外の非オーバーラップ領域のデータかを判断する(S102)。
非オーバーラップ領域の場合(S102:No)、処理は終了し、ヘッドドライバ607に出力される。これに対し、オーバーラップ領域の場合(S102:Yes)、オーバーラップ領域の端部領域であるかを判断する(S103)。
端部領域以外の場合(S103:No)は、第一ヘッド7aと第二ヘッド7bに印字データを分配する処理(S105:打ち分け処理)を実施する。これに対し、端部領域の場合(S103:Yes)は、第一ヘッド7aと第二ヘッド7bに同じ印字データをセットし(S104)、更に各々のヘッドに対する印字データを変換し、印刷媒体へのインク付着量がより小さくなるように制御する(S106:滴サイズダウン処理)。
本実施形態の滴サイズダウン処理(S106)では、大滴に対応する印字データであれば中滴へ、中滴に対応する印字データであれば小滴へ、小滴に対応する印字データの場合はこれ以上小さい滴がないため、複数あるヘッドから印字データを間引くことでインク付着量を削減している。
以上のような印字制御を実行することにより、図18に示すように、複数のヘッドから重複印字をしても端部領域701と端部以外の領域702とで画素単位での総インク付着量を同じにすることが可能となる。なお、本実施形態では、全体の総インク付着量を同じにしているが、寄せ組みすることを前提としてオーバーラップ領域のインク付着量を非オーバーラップ領域のインク付着量よりも少なくなるようにしても良い。
以上のように、端部領域では、同一データを振り分けて滴サイズダウン処理(S106)を行っているが、仮に、滴サイズダウン処理を行わずに、端部以外の領域と同様に同一データを振り分けるだけだと、オーバーラップ部の吐出滴に着弾ズレがない場合には、重複分だけインク付着量過多となりインク滲みや黒スジとなってしまう。そこで、本実施形態では、端部領域に滴サイズダウン処理(S106)を行うことで良好な画像を得ることが可能となる。また、端部以外の領域では、使用するノズルが分散されるため、あるノズルで噴射曲がりが発生しても、走査線上に別のノズルを使用しているため、完全な画像欠けを防ぐことができる。
次に、本実施形態における滴サイズダウン処理(S106)による端部領域での黒スジおよび白スジの低減効果について具体的に説明する。ここでは、図19(A),(B)を参照して、それぞれ黒スジ、白スジが発生するようなヘッドのズレが生じたときについて説明する。なお、図19(A)は、ヘッドつなぎ部が本来想定されるオーバーラップ領域(正規オーバーラップ領域)より、ヘッドが近づく方向にずれている場合、図19(B)は、ヘッドつなぎ部が正規オーバーラップ領域より、ヘッドが離れる方向にずれている場合を示している。
先ず、図19(A)を用いて、黒スジ発生時について説明する。端部領域において楕円で囲われた領域のドットを、矢印右側(a)と(b)に示している。ここで、(a)は端部以外の領域で実施している打ち分け処理(S105)を行ったときのドットの様子を示し、(b)は端部領域で実施される滴サイズダウン処理(S106)を行ったときのドットの様子を示している。
(a)のように、単に打ち分け処理を行った場合は、ヘッドがずれることによって非オーバーラップ領域とオーバーラップ端部のドットが近づくことにより単位面積あたりの濃度が高くなり、結果として黒スジが生じてしまう。これに対し、(b)では、非オーバーラップ領域とオーバーラップ端部のドットが近づくが、これを端部領域のドットの滴サイズを小さくすることにより、単位面積あたりの濃度増加を抑えることができ、黒スジを抑制することができる。
次に、図19(B)を用いて、白スジ発生時について説明する。同様に、端部領域において楕円で囲われた領域のドットを、矢印右側に(c)と(d)として示している。ここで、(c)は端部以外の領域で実施している打ち分け処理(S105)を行ったときのドットの様子を示し、(d)は端部領域で実施される滴サイズダウン処理(S106)を行ったときのドットの様子を示している。
(c)のように、単に打ち分け処理を行った場合は、ヘッドがずれることによって非オーバーラップ領域とオーバーラップ端部のドットが離れることで紙地が出てきてしまうのでインク付着との濃度差が顕著になり、結果として白スジが目立ってしまう。これに対し、(d)では、非オーバーラップ領域とオーバーラップ端部のドットが離れるが、端部領域のドットの滴サイズを小さくし、打ち分けを実施しないため紙地が出てくることがなく、濃度低下を抑えることができ、白スジを抑制することができる。
次に、図20(A)〜(C)を用いて、印字データ制御の詳細を説明する。第一ヘッド7aと第二ヘッド7bを一部が重複するようにオーバーラップ配置した状態にある記録ヘッドにより、(A)に示すように、中間調処理等の処理がなされた吐出滴サイズに対応する印字データの場合、先ず、(B)に示すように、第一ヘッド7aと第二ヘッド7bにデータを振り分ける。すなわち、この段階でオーバーラップ領域の端部以外の領域に関しては各々のヘッドにデータが分配される。さらに、(C)に示すように、オーバーラップ領域の端部領域の滴サイズダウン処理(S106)を実行するものである。
以上のような印字制御を実行することにより、ヘッドつなぎ部のずれがない場合にバンディングが発生しない状態から黒スジ方向にずれた状態では、端部領域と端部以外の領域とのドットが近づくことでインク付着量が増える結果、黒スジに見えてくるが、端部領域のドットが離れるためにインク付着量が減り、双方が相殺されてインク付着量に大きな変動が生じずバンディングを低減することが可能となる。また、逆に、白スジ方向にずれた状態では、端部領域のドットが端部以外の領域との間に発生するようになり、白スジ状の極端なインク付着量の変動が発生しないためバンディングを低減することが可能となる。
次に、図21を用いて、印字データ制御の他の実施形態を説明する。端部領域における最小ドットの打ち分けをする場合において、端部領域における各ヘッドの端部側(先端部、符号703で示す)と、各ヘッドの内側(中心よりの端部、符号704で示す)とでは、各ヘッドの内側における印字データの打ち分けの比率の方を高くなるように制御することが好ましい。
処理の流れは、上記図20に示した例と同様であるが、図21に示す例では、(A)に示すように、端部領域に該当する印字データが最小滴である小滴となっている。ここで、最小滴は(C)に示す滴サイズダウン処理にて第一ヘッド7aと第二ヘッド7bにそれぞれ振り分けられるが、端部領域は、ヘッドの端部側703と内側704とで振り分けられる比率を内側704が高くなるようにしている。例えば、第一ヘッド7aの内側704aと第二ヘッド7bの端部側703bに示すように、第一ヘッド7aの内側704aで2ドット小滴を振り分けるとき第二ヘッド7bの端部703bで1ドット振り分けられるように、比率2:1で繰り返すようにしている。
なお、本実施形態では、振り分けを繰り返すようにしているが、ランダムに分散するように振り分けるようにしても良い。この場合は、印字データが偏らないように制御する必要がある。例えば、上記の2:1の比率で振り分けるとき、第一ヘッドに20ドットを連続発生させ、第二ヘッドに10ドット連続発生をさせるような制御はせず、印字データが偏らないように制御を行うものである。
以上、第1の実施形態ではつなぎヘッドを有する画像形成装置を例に説明したが、ライン方式の画像形成装置についても以上述べた印字制御を行うことにより同様の効果を得ることができる。図22は、ライン方式の画像形成装置による印字の様子を示している。この画像形成装置は、用紙12の用紙幅に渡って、記録ヘッドがつなぎ合わされたヘッドユニット7uが配置され、ノズル列と直交する方向に用紙を搬送させて画像形成を行うものである。このようなライン方式の画像形成装置では、ヘッドつなぎ部が複数あり、また、原則として1回のスキャンで画像を完成させるため、ヘッドつなぎ部におけるスジ問題はより深刻な問題となる。しかしながら、各ヘッドつなぎ部につき上述した制御を行うことによりバンディングの低減を図ることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る画像形成装置によるバンディング低減制御の他の実施形態(第2の実施形態)について説明する。なお、上述の実施形態と同様の点については、適宜説明を省略する。
また、ライン方式以外のシリアル方式の画像形成装置(つなぎヘッドを有するものも含む)では、スキャンの改行部におけるバンディングが課題となる。なお、この場合のヘッドの重複部分についてもオーバーラップ領域と呼ぶ。図23は、スキャンの改行部でのスジの発生を説明する図であり、(A)は改行ズレがない場合、(B)はスキャン間の位置関係が狙いよりも寄ったために、つなぎ目のドット形成密度が密になり黒スジが発生している例、(C)はスキャン間の位置関係が狙いよりも離れたために、つなぎ目のドット形成密度が疎になり白スジが発生している例である。
以下の実施形態では、スキャン改行部におけるバンディングの低減について説明するが、上述のように、ヘッドつなぎ部についても同様に考えることができるので、第1の実施形態に以下に説明する構成をより好適な構成として含める構成としても良いのは勿論である。
本実施形態に係る画像形成装置は、オーバーラップ領域を構成するノズルの一方を利用して画像形成する領域(以下、「領域A」という)と、これ以外にオーバーラップ領域を構成する双方ノズルを利用して滴を吐出する領域(以下、「領域B」という)を設けることで、黒スジ、白スジ両方に対して耐性の高い印字制御を行うものである。
本実施形態では、図24(A)に示すように、領域Aの最もヘッド端部側にある画素に注目する。すなわち、領域Aの端部にある画素における印字データの有無により、上述の滴サイズダウン処理を実行するかどうかを判断する構成としている。
この領域Aの端部にある画素に印字データが割り当てられている場合は、さらにヘッド端部にある画素を領域Bし、印字データを両ヘッドに振り分けたあと同等以下のサイズの滴に変換し、画像形成する(滴サイズダウン処理)。なお、図24(B)で小さなドットで示されている場所が領域Bである。これに対し、領域Aの端部に印字データが設定されていない場合は、端部についても領域Aと同様に打ち分けを行うようにすれば良い(打ち分け処理)。
領域Bにおける滴サイズダウン処理は、例えば、ノズルが大滴21pl(pico litter)、中滴9pl、小滴3plの3種類の滴を吐出可能な構成からなる場合、領域Bにおいては、本来なら大滴(21pl)を吐出する画素において、オーバーラップさせている双方ノズルから中滴(9pl)を吐出させて画像形成するものである。
図25(A)に示すように、スキャン改行部が寄る方向にズレが生じる場合(黒スジ方向ズレ)において、(a)のように領域Bを設定しない場合は、オーバーラップ領域の端部において領域Aのドットと非オーバーラップ部のドットが近づいてインク付着量が150%近くまで上昇し、この部分で黒スジを招いてしまう。これに対し、(b)のように領域Bを設定した場合は、非オーバーラップ部のドットに近づくのは、9plの滴のうちの半分のみであるため、境界部分のインク付着量は、125%程度に留まり黒スジの発生を抑制することができる。
また、図25(B)に示すように、スキャン改行部が離れる方向にずれた場合(白スジ方向ズレ)において、(a)のように領域Bを設定しない場合は、オーバーラップ領域の端部のドット形成量が減るため、この部分が白スジ状になる。これに対し、(b)のように領域Bを設定した場合は、9plの滴の半分は、元のアドレスに着弾するため、白スジの発生を抑制することができる。
ここで、領域Bにおいて吐出するドットは、原則として、印字データを振り分ける前に吐出するはずだった滴と同等のインク付着量になるように滴を吐出すればよい。特にズレ量等に応じて使用するドットの構成の切り替えなどを行わない場合は、このようにすることが好ましい。例えば、本実施形態のドットサイズ構成の場合、例えば、大滴(21pl)→中滴(9pl)+中滴(9pl)、中滴(9pl)→小滴(3pl)+小滴(3pl)のようにすれば、元のインク付着量との差を少なくでき、つなぎのズレがない、あるいは少ない条件下においても画像不具合を招きにくい。
また、印字データに最も小さな滴が割り当てられている場合、例えば、本実施形態のドットサイズ構成の場合、小滴(3pl)の部分は、オーバーラップさせているノズルのうちいずれか一方のノズルからこの滴を吐出することが好ましい。小滴の場合は、これよりも小さなサイズの滴を吐出できず、オーバーラップさせているノズル双方から吐出を行うとインク付着量が倍になり、黒スジ発生させる原因となってしまうからである。なお、このようなサイズの滴は主にハイライト領域で使用されるため、この領域においては、ドット形成密度も低く、ズレが生じてもスジが発生しにくい。このため、上述のようにどちらか一方のヘッドから滴の吐出を行えばよい。
このようにいずれか一方のヘッドからのみ吐出を継続して行うと、ドットの粗密のつく領域が偏り画像品位を落とす原因となる。また、滴を吐出しない方のノズルはインクの流動が起きないため、ノズル周辺の乾燥が進み、インクの粘度が上昇し、吐出不良を招きやすくなるという問題がある。そこで、両方のヘッドから均等に滴が吐出されるように制御することが好ましい。この場合におけるヘッドの振り分けは、例えば、特定パターンに基づく振り分けやランダムに振り分ければ良く、特に限られるものではない。
また、図26に領域Aのドットの打ち分けパターンを変えた場合の例を示す。図26は5ノズルをオーバーラップさせ、中央の3ノズルを領域Aとした場合の例を示している。なお、図26(a)は千鳥状に分けた場合、(b)はランダムに散らした場合、(c)は主走査方向に数ドット連続形成するパターンの場合、(d)は連続させたかたまりをランダムに散らした場合、(e)は短冊状に振り分けた場合の例を示しており、この他にも種々のパターンが考えられるが、いずれもドットの形成位置を散らし、ドット位置ズレによる主走査方向へのドットのつらなりを軽減するものである。また、領域Aの一方のヘッドが吐出を担当する画素のうち、他方のヘッド側に近い画素よりさらに他方のヘッド側に位置する画素を領域Bとし、図26では小さなドットで示す部分が領域Bである。この場合も、図25で示したものと同様の効果を有する。
以上のような印字制御を実行することにより、特にスジの発生原因となるオーバーラップ部の端部において重複吐出部(領域B)を設けることで、複雑な構成を招くことなく、黒スジ、白スジの発生を抑制することが可能になる。また、端部に印字データがない場合には、オーバーラップ領域全体について同一の制御(打ち分け処理)を行うようにすれば良いので、処理量を低減することができる。
なお、上述の実施形態では、オーバーラップ領域を構成する双方のノズル(最小滴はいずれか一方のノズル)から同じサイズのドットを吐出する例を示したが、双方のノズルから吐出するドットを異ならせるようにしても良い。特にドットサイズ構成がより精密である場合は、異なる滴サイズを組み合わることで元のインク付着量とより同等に近づけることができるため好ましい。
(その他の実施形態)
以上、ヘッドつなぎ部および/またはスキャン改行部でのオーバーラップ制御について説明してきたが、特に、ヘッドつなぎ部における制御の場合、ヘッドの組み付けによって、つなぎの精度がほぼ固定状態となるため、用紙上の着弾状態等からヘッドつなぎ部の状態を正確に把握することで、それに見合った処理を実施することができ、より高精度化を図ることができる。
例えば、対象のヘッドつなぎ部が黒スジ方向にずれていることが分かれば、よりインク付着量を落とす構成にすることにより黒スジの改善効果をさらに高めることができる。具体的には、印字データが大滴の部分を中滴+小滴、中滴+無し、小滴+小滴、小滴+無し等と、インク付着量を落とす構成にすることが好ましい。また、逆に、対象のヘッドつなぎ部が白スジ方向にずれていることが分かれば、大滴の部分を大滴+小滴、大滴+中滴、大滴+大滴など、よりインク付着量を上げる構成にすることが好ましい。このようにすることにより、ヘッドつなぎ部の実際の状態に見合った設定で、バンディング低減効果を高め画像形成することが可能になる。
そのため、ドットの構成パターンを複数パターン用意しておき、ヘッドつなぎ部の状態に応じて、これらを切り替えることによって、よりハンディング低減処理の高度化を図ることができる。
例えば、ヘッドつなぎ部のズレは、例えば、ズレ判定用のチャートを印字して、それをスキャナやフォトセンサなどで読取ることや、チャートから目視で判定することにより取得することができる。このチャートの一例を図27に示す。
また、図28に示すように、ヘッドつなぎ部で罫線を印字し、そのガタツキ(図29の矢印部分)からズレ量を判定することができる。図28に示す例では、ズレにおうじたドット構成リストを持たせ、測定したズレ量に応じてオーバーラップ部分の処理に使用するドット構成を選択している。
また、図29に示すように、ドットの構成を変えた場合のヘッドつなぎ部の画像を印字し、最もスジが見えにくい画像を選ぶことにより、ドットの構成を決定するようにしても良い。図29に示す例では、最もスジの見えにくい中央のパッチを形成するドット構成(ドット構成「1」)にてオーバーラップ部分のドット処理を行っている。
さらに、ヘッドつなぎ部のずれ以外にも、装置内の温湿度、用紙の種別、選択されている印字モード等によっても、つなぎ部の印字状態は変わる。例えば、温湿度が変わると、インクの粘度が変わって噴射する滴そのものの大きさが変動したり、吐出するスピードが変動したりするため、紙面での着弾位置ズレに影響する。また、紙面上でのインクの広がり特性も変わる。
また、用紙の種類においても、普通紙やコート紙、光沢紙など紙種類によってドットの滲み方(大きさや形状)は異なり、用紙そのものの白色度も異なるため、ヘッドから同じ量の滴を吐出していても紙面状でのドットの状態やスジの目立ち方は様々である。
また、印字モードに関しても解像度の違いからドットの形成間隔や使用するドットの構成の違いがある。シリアル機においては、パスやインターレスなどの作像動作も関わるため、用紙送り量の違いにより改行精度そのものが異なったり、精度が同じでも1パスではスジが目立ちやすく、マルチパスでは作像によってドットが散らされるためスジが目立ちにくいなどがある。
よって、これらの情報に応じて、使用するドットの構成を変えることも好ましい。具体的には、例えば、滴サイズダウン処理を行う端部領域または領域Bにおいて吐出する滴の構成パターンを複数保持し、取得した情報に応じて設定パターンを切り替えるようにしておけば良い。この際、打ち分け処理を行う端部以外の領域または領域Aについても打ち分け方のパターンを変えても良い。なお、情報の取得に関しては、温湿度に関しては、例えば、画像形成装置に温湿度検知用のセンサ等を設けて該センサにより取得すれば良い。また、用紙種別、印字モードに関しては、例えば、ユーザによる設定情報から取得するようにすれば良い。
以下、ドットの構成パターン切り替えの一例を図27を参照して説明する。図27に示す例は、表1に示すように印字モードと紙種により、基本的なドットの組み合わせリスト(表2のパターンA〜Cに対応)を選択し、さらに、表2に示すように、ズレ量と温湿度環境からパターンリスト内からドットの構成を選択するものである。
図27に示す例では、普通紙600×300dpi1パス、ズレ量−30μm、温湿度MMの条件下の例について示している。先ず、表1より印字モードに応じたパターンを選択する。表1より普通紙600×300dpi1パスはパターンAを使用するため、表2のパターンAを参照する。さらに、上記条件ではズレ量が−30μm、温湿度MMのため、表2のパターンAからこれに該当する箇所を参照する。ここではドット構成2を選択するため、表3のドット構成2に該当するドット構成で領域Bを形成するものである。
以上より、上記条件下では、領域Bにそれぞれ大、中、小滴の印字データが設定された場合、
・大滴の場合は、一方のヘッドは中滴、他方ヘッドは小滴を吐出する。
・中滴の場合は、一方のヘッドは小滴、他方ヘッドは小滴を吐出する。
・小滴の場合は、一方のヘッドは小滴、他方ヘッドは滴を吐出しない。
とする印字制御がなされる。なお、図27に示す例では、1パスで作像しスジが発生しやすい「普通紙モード」では、比較的少ないズレ量で滴量の調整を行うようにし、マルチパスで作像するためスジが目立ちにくくスキャン数の多さから1回の改行量が少なく改行つなぎの精度も高い「光沢紙モード」では、あまり滴量を偏らせない構成としているが、これらは、実験的に適した条件を決定すれば良く、特に限られるものではないが、例えば、パラメータとして予め記憶させておけば良い。
以上の実施形態において説明した画像形成装置における画像形成方法(バンディング低減方法)は、ROM等の本体メモリに格納されているプログラムで実行することができる。この画像形成方法を実行するためのプログラムは、例えばインターネット上からのダウンロードによって提供し、画像処理装置から画像形成装置にインストールすることができる。また、本発明の処理は、画像処理装置のプリンタドライバで行う構成とすることもできる。また本発明は、濃度補正方法を実行するためのプログラムを画像形成装置で実行可能に記録した記録媒体の態様にも適用される。
また、上記実施形態において説明した画像形成装置における画像形成方法(バンディング低減方法)によれば、シリアルヘッド、ヘッドを繋げて長尺化したつなぎヘッド、および、ラインヘッドを用いた画像形成装置において、従来にないスジムラの少ない印字結果としてのインクジェット記録物を作成することができる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態において、オーバーラップ領域を構成するノズル数やそのうちで端部領域またはB領域を構成するノズル数等は、図示された例に限られるものでなく、記録ヘッド全体のノズル数等に応じて適宜設定すればよく、特に限られるものではない。
また、つなぎヘッドを有するシリアル方式の画像形成装置においては、ヘッドつなぎ部とスキャン改行部とが両方あるため、ヘッドのつなぎ部と改行部とで制御内容を分けることも好ましい。例えば、ヘッドつなぎ部ではオーバーラップ部分のインク付着量の制御を行ない、スキャン改行部では、黒スジ白スジどちらに転んでもよいようにインク付着量を、非オーバーラップ領域における各々の画素に対応するインク付着量と同等とするように制御して、インク付着量が変化しにくいような構成をとることが好ましい。
また、例えば、上述の実施形態の画像形成装置では、記録ヘッドが圧電素子を用いる圧電型ヘッドの例で説明しているが、電気熱変換素子を用いて膜沸騰で滴吐出を行うサーマル型ヘッドもよいことは勿論である。圧電型ヘッドでは上述したように駆動波形によって大きさ異なる液滴を吐出させることができ、階調画像の形成が容易になる。これに対して、サーマル型ヘッドは、ノズルの高集積化が容易であるので、解像度が高い画像を高速で印刷するのに有利である。
なお、サーマル型ヘッドには、例えば、エッジシュータ方式のヘッドやサイドシュータ方式のヘッドがある。エッジシュータ方式のヘッドにおいては、各部分の精度良い微細化やノズルのマルチ化、あるいは小型化が極めて容易であり、また量産性に富むという利点を有する。また、サイドシュータ方式のヘッドは、吐出エネルギー発生体からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、またインクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有し、吐出エネルギー発生体に発熱素子を用いた場合に特に効果的である。また、エッジシュータ方式において問題となる気泡が消滅する際の衝撃により吐出エネルギー発生体を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象をサイドシュータ方式であれば回避することができる。つまり、サイドシュータ方式において、気泡が成長し、その気泡がノズルに達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらないことから、ヘッドの寿命が相対的に長くなる。