以下に本発明の実施形態の例について、図面を用いて詳細に説明する。尚、同構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
尚、本実施形態では、画像形成装置として、KCMYの4色のインク及びそれを吐出する記録ヘッドを有し、記録ヘッドを記録用紙の搬送方向と直行する方向に往復動作することで画像を形成するシリアル方式のインクジェットプリンタを例に挙げて説明する。しかし、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
(機構部)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の機構部の全体概略構成例を示す。図2は、本実施形態に係る画像形成装置の機構部の要部概略構成例を示す。以下に、本実施形態に係る画像形成装置の構成について、図1及び図2に示す図を用いて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ4で駆動プーリ6aと従動プーリ6bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
キャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(以下、色を区別しないときは「記録ヘッド7」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列してヘッドユニットとし、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ等を、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものを適用できる。また、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等を圧力発生手段として備えたもの等も適用することができる。
また、記録ヘッド7は、各色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の液体吐出ヘッドで構成することもできる。
キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8には、インク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(例えば、インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
給紙カセット10等の用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部は、半月コロ(給紙ローラ)13、分離パッド14を備えている。給紙ローラ13は、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する。分離パッド14は、給紙ローラ13に対向して設けられ、摩擦係数の大きな材質から構成されている。この分離パッド14は、給紙ローラ13側に付勢されている。
上記給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送するための搬送機構として、搬送ベルト21、カウンタローラ22、搬送ガイド23、押さえ部材24、押さえコロ25、帯電ローラ26、を備えている。
搬送ベルト21は、用紙12を静電吸着して搬送する。カウンタローラ22は、給紙部からガイド15を介して搬送された用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送する。搬送ガイド23は、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせる。押さえコロ25は、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢されている。帯電ローラ26は、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である。
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されている。そして、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して回転することで、搬送ベルト21は、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回する。尚、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26を、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置している。
図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、さらにスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けている。本実施形態に係る画像形成装置では、上記スリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
さらに、本実施形態に係る画像形成装置は、記録ヘッド7で画像が記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
また、本実施形態に係る画像形成装置の背部には、両面給紙ユニットを着脱自在に装着している。この両面給紙ユニットは、搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで、反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。
この維持回復機56は、キャップ57、ワイパーブレード58、空吐出受け59、を備えている。キャップ57は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャピングする。ワイヤーブレード58は、ノズル面をワイピングする部材である。空吐出受け59は、空吐出を行う際の液滴を受ける部材である。ここで、空吐出とは、増粘した記録液を排出するために、記録に寄与しない液滴を吐出させることである。
上述したような構成を有する本実施形態に係る画像形成装置では、給紙部から1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12は、ガイド15で案内され搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送される。更に、用紙21は、搬送ガイド23で案内されて、先端を押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加する。これにより、搬送ベルト21は、交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電する。このように帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録する。1行分の記録が終了すると、用紙12を所定量搬送して、次の行の記録を行う。そして、記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット61内に送り込む。そして、用紙12を反転させることで裏面が印刷面となる状態にして、再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、上述したように搬送ベル21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
また、記録動作待機中には、キャリッジ3を維持回復機構56側に移動させてキャップ57で記録ヘッド7のノズル面をキャッピングすることで、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。この回復動作では、記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するために、ワイパーブレード58によってワイピングも行う。また、記録動作開始前又は記録動作途中等において、記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持することができる。
(記録ヘッド)
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の記録ヘッドの液室長手方向に沿う断面例を示す。図4は、本実施形態に係記録ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面例を示す。次に、記録ヘッド7に設けられた液体吐出ヘッドの例について図3及び図4を参照して説明する。
液体吐出ヘッドは、流路板101、振動板102、ノズル板103、ノズル104、ノズル連通路105、液室106、流体抵抗(供給)部107、共通液室108、インク供給口109、を備えている。
流路板101は、例えば、単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路である。振動板102は、流路板101の下面に接合した板であり、例えば、ニッケル電鋳で形成される。ノズル板103は、流路板101の上面に接合されている。ノズル104は、液滴(例えば、インク滴)を吐出する。ノズル連通路105は、ノズル104が連通する流路である。液室106は、圧力発生室である。共通液室108は、液室106にインク供給口109と流体抵抗部(供給路)107とを介してインクを供給する。流路板101と振動板102とノズル板103とを接合して積層することで、ノズル連通路105及び液室106、インク供給口109等を形成している。
液体吐出ヘッドは、積層型の圧電素子121、ベース基板122も備えている。積層型の圧電素子121は、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子である。ベース基板122は、圧電素子121を接合固定する。ここでは、積層型の圧電素子121が2列に配列された例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、後述する図6では、圧電素子121が一列設けられた例を示している。
また、液体吐出ヘッドは、圧電素子121の間に支柱部123を設けている。この支柱部123は、圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成する部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPC(Flexible Printed Circuits)ケーブル126を接続している。
上記振動板102の周縁部は、フレーム部材130に接合されている。このフレーム部材130により、圧電素子121及びベース基板122等で構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。フレーム部材130は、例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂やポリフェニレンサルファイト等を射出成形することにより形成されている。
ここで、流路板101は、例えば、結晶面方位の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)等のアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成するものである。しかし、流路板101としては、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂等を用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えば、エレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製している。しかしこれに限定されるものではなく、金属板や金属と樹脂板との接合部材等も用いることもできる。本実施形態に係る液体吐出ヘッドでは、振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、さらにフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は、各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。ノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型の圧電素子であり、本実施形態では、PZTを例として示している。この圧電素子121における交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には、個別電極153及び共通電極154が接続されている。尚、圧電素子121の圧電方向は何れの方向でもよく、変位を用いて液室106内インクを加圧する。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
上述したような構成を有する液体吐出ヘッドにおいては以下に示すようにインクを吐出する。
まず、圧電素子121に印加する電圧を基準電位から低下させることによって圧電素子121を収縮することで振動板102が下降し、液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入する。その後、圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長して、振動板102をノズル104方向に変形する。これにより、液室106の容積/体積が収縮し、液室106内の記録液が加圧されるので、液体吐出ヘッドは、ノズル104を介して記録液の滴を吐出(噴射)する。
記録液の吐出後は、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生する。この際、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そして、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
尚、この記録ヘッド7の駆動方法については上述した例に限定されるものではなく、駆動波形の与え方によって引き打ちや押し打ち等を利用した駆動方法を適用することもできる。
(制御部)
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の制御部の概略構成例を示す図である。次に、本実施形態に係る画像形成装置の制御部の概略構成例について図5に示すブロック図を参照して説明する。
本実施形態に係る画像形成装置の制御部200は、画像形成装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)201と、CPU201が実行する本実施形態に係るプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM(Read-Only Memory)202と、画像データ等を一時格納するRAM(Random Access Memory)203と、画像形成装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、NVRAM)204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他画像形成装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC(Application Specified IC)205と、を備えている。
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F(インターフェィス)206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ26にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ35、43からの各検出信号、ドット形成位置のズレを来たす要因としての環境温度を検出する温度センサ215等の各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213等を備えている。また、この制御部200には、この画像形成装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作部214が接続されている。
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読み取り装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットワークを介してI/F206で受信する。
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部207からヘッドドライバ208に転送する。尚、本実施形態では、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行っている。
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定等に必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)等をヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROM202に格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバ208に与える駆動波形選択手段を含み、1つの駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を、選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば、前述したような圧電素子)に対して印加することで、記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)等、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出して、モータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31に対する駆動出力値(制御値)を算出して、モータ駆動部210を介して副走査モータ31を駆動する。
次に、印刷制御部207及びヘッドドライバ208の例について図6を参照して説明する。
印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302と、を備えている。
尚、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ315の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと滴制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルにレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ315と、を備えている。
このアナログスイッチ315は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。従って、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号M0〜M3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ315をオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
(インク)
次に、本実施形態に係る画像形成装置に好適なインクについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、顔料、水溶性有機溶剤、炭素数8以上のポリオール又はグリコールエーテル及び水を少なくとも含むインクを用いることができる。上記したようなインクを適用することで、普通紙に印字した場合でも、良好な色調、例えば、十分な発色性、色再現性を有する画像を実現することができる。さらに、高い画像濃度、文字・画像にフェザリング現象やカラーブリード現象のない鮮明な画質、両面印刷にも耐え得るインク裏抜け現象の少ない画像、高速印刷に適した高いインク乾燥性又は定着性、耐光性及び耐水性等の高い堅牢性、を有した高画質画像を実現することができる。これにより、画像濃度、発色性、色再現性、文字にじみ、色境界にじみ、両面印刷性、定着性等を大幅に改善することができる。
次に、上述したインクを使用する場合に好ましい駆動波形の例について、図7及び図8を参照して説明する。
駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、図7に示すように、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立ち下り後の状態から立ち上がる波形要素等で構成される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して加圧液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立ち下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して加圧液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴(小ドット)を形成するときには図8の(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴(中ドット)を形成するときには図8の(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択する。また、大滴(大ドット)を形成するときには図8の(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(例えば、滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには図8の(d)に示すように微駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加させるようにする。
例えば、中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力液室106の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積にするために、立ち上げ電圧は小さくしない。
つまり、複数の駆動パルスのうち、最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくする。これにより、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。
また、微駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの微駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの1つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
さらに、微駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積を大きくすることができる。つまり、微駆動パルスP2によって生じた振動周期によって加圧液室106の圧力振動に駆動パルスP3による加圧液室6の膨張を重畳させることによって、駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
尚、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、本実施形態に係る画像形成装置においては、図9に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さくし、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルスP2は、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
本実施形態に係る画像形成装置では、上述したような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
図10は、本実施形態に係る画像形成装置を適用した画像形成システムにおける画像処理装置の概略構成例を示す。次に、本実施形態に係る画像形成装置を適用した画像形成システムについて、図10に示す図を用いて説明する。尚、画像処理装置は、画像を形成する処理を画像形成装置に実行させるためのプログラムを搭載している。
図10には、画像処理装置と上述した画像形成装置であるインクジェットプリンタとを有する画像形成システムの例を示している。この画像形成システムでは、1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ500とが、所定のインターフェイス又はネットワークで接続されている。画像処理装置400としては、例えば、パーソナルコンピュータ(PC: Personal Computer)等を適用することができる。
図11は、画像処理装置の概略構成例を示す。図11に示すように、画像処理装置400は、CPU401、ROM402、RAM403、入力部404、表示部405、記憶部406、外部I/F407、を備えている。
メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインターフェイスを介して、ハードディスク等の磁気記憶装置を用いた記憶部406と、マウスやキーボード等の入力部404と、LCDやCRT等のモニタである表示部405と、図示しないが、光ディスク等の記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置等が接続され、また、インターネット等のネットワークやUSB(Universal Serial Bus)等の外部機器と通信を行う所定のインターフェイス(外部I/F)407が接続されている。
画像処理装置400の記憶部406は、本実施形態に係るプログラムを含む画像処理プログラムを記憶している。この画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取る、あるいは、インターネット等のネットワークからダウンロードする等して、記憶部406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理動作を行うことが可能な状態となる。尚、この画像処理プログラムは、所定のOS(Operation System)上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
尚、本実施形態に係る画像処理方法はインクジェットプリンタ側で実施することもできるが、ここでは、インクジェットプリンタ側では、プリンタ内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例を挙げて説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフト等からのプリント命令は、画像処理装置400(ホストコンピュータ)内にソフトウェアとして組み込まれた本実施形態に係るプリンタドライバで画像処理されて、インクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)を生成する。そして、印刷画像データがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され、インクジェットプリンタ500が印刷出力する例について説明する。
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば、記録する線の位置と太さと形等を記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置等を記述したもの)を描画データメモリに一時的に保存する。尚、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換する。命令が、文字の記録命令であれば画像処理装置400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし、指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換する。また、命令が、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換する。
その後、これらの記録ドットパターン(画像データ)に対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば、色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法等の中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理等がある。そして、画像処理装置400は、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンを、インターフェィスを経由してインクジェット記録装置500に転送する。
本実施形態では記録方法として、記録媒体に対して1回の主走査で画像を形成する、いわゆる1パス印字を用いても良いし、記録媒体の同一領域に対して同一のノズル群あるいは異なるノズル群によって複数回の主走査を行って画像を形成する、いわゆるマルチパス印字を用いても良い。また、主走査方向にヘッドを並べて同一領域を異なるノズルで打ち分けても良い。これらの記録方法は適宜組み合わせて用いることができる。
次に、上記したマルチパス印字について説明する。ここでは1つの記録領域に対して4回の主記録走査(4パス)を実行することによって画像を完成させる場合を例に挙げて説明する。
図12は、本実施形態に係る画像形成装置の画像処理部を概略的に示すブロック図である。図12に示すように、入力端子511、記録バッファ512、パス数設定部513、マスク処理部514、マスクパターンテーブル515、ヘッドI/F部516、記録ヘッド7を有している。
入力端子511から入力された印刷画像データであるビットマップデータは、記録バッファ制御部により、記録バッファ512の所定のアドレスに格納される。記録バッファ512は、1スキャンと紙送り量分のビットマップデータを格納できる容量を有し、FIFO(First-In First-Out)メモリのような紙送り量単位のリングバッファを構成している。記録バッファ制御部は、記録バッファ512を制御し、1スキャン分のビットマップデータが記録バッファ512に格納されると、プリンタエンジンを起動する。そして、記録バッファ制御部は、記録ヘッド7の各ノズルの位置に応じて記録バッファ512に記録されたビットマップデータを読み出し、パス数設定部513に入力する。また、入力端子511から次回のスキャンのビットマップデータが入力されると、記録バッファ512の空き領域、すなわち、記録が完了した紙送り量に相当する領域に次回のスキャンのビットマップデータを格納するように記録バッファ512を制御する。
次に、画像処理部におけるパス数設定部513の具体的構成例について説明する。
パス数設定部513では、分割パス数を決定し、そのパス数をマスク処理部514に出力する。マスクパターンテーブル515では、予め格納されているマスクパターンテーブル、例えば、1パス記録、2パス記録、4パス記録、8パス記録のマスクパターンから、必要なマスクパターンを決定された分割パス数に応じて選択し、マスク処理部514に出力する。マスク処理部514は、記録バッファ512に格納されているビットマップデータに対して、選択されたマスクパターンを用いてパス記録毎にマスクしてヘッドドライバ208に出力する。ヘッドドライバ208では、マスク処理部514でマスクされたビットマップデータを記録ヘッド7が用いる順に並び替え、記録ヘッド7に転送する。
上述したように、マルチパス印字を用いることで、1パス印字では目立つバンディングを平均化して目立たなくすることができる。
尚、印刷の高速化を実現する手段として、1パス印字や用紙幅以上のサイズのヘッドを有するプリンタが挙げられる。ここで、1パス印字や用紙幅以上のサイズのヘッドを有するプリンタは、一般的にラインヘッド型のプリンタである。しかしながら、1パス印字では用紙送り量のズレによるスジやバンディングが発生してしまう。また、ヘッドを副走査方向に複数並べてノズル群を長尺化するような場合であっても、記録ヘッドのつなぎ部のズレにより、スジやバンディングが発生してしまう。すなわち、上記したようなヘッド構成をもつシリアルプリンタでは、スキャンの改行位置でのスジが課題となる。
スキャンの改行位置では、用紙搬送の送り誤差等によって、前後スキャンのつなぎ目にあたる部分のドット着弾位置が乱れ、スジ状の画像障害を発生することがある。図13は、スジ状の画像障害を示している。図13の(a)に示すように、理想よりもドットがよって着弾すると、黒スジが発生する。他方、図13の(b)に示すように、理想よりもドットが離れて着弾すると、白スジが発生する。尚、ここでは、ドットの形成密度の粗密によって発生するスジのうち、明度が低く見えるスジを黒スジ、明度が高く見えるスジを白スジと便宜上呼ぶが、色味に関して言及するものではない。
ところで図13に示すようなスジ状の画像障害の目立ち方は、インクの明度特性にも関係している。明度の低いインクは、ドットのズレによって生じる明度変化も大きいためスジの発生が目立ちやすく、明度の高いインクは明度変化が比較的小さいためスジの発生が目立ちにくい。例えば、黒インクではスジの発生が目立ちやすく、イエローインクではスジの発生が目立ちにくい。
そこで本実施形態では、図14に示すように、明度が低くスジに影響の大きい色を吐出する記録ヘッドは、ノズル列方向と平行方向に相対位置をズラして配置する。つまり、図15及び図16に示すように、明度が低くスジに影響の大きい色による改行スジの発生位置が重ならないようにすることで、スジの目立ちを抑える。例えば、図15の(b)では、全てのノズル位置は揃っているため、黒スジの発生が目立ってしまう。他方、図15の(a)に示すように、本実施形態ではKCMのノズル位置をズラして配置しているため、ドットが密になる箇所が分散し、黒スジが目立たなくなる。図16においても同様に、全てのノズル位置が揃っている例を示す図16(b)に比較して、図16の(a)に示す本実施形態の例では、KCMのノズル位置をズラして配置しているためドットが疎になる箇所が分散するので、白スジが目立たなくなる。
本実施形態に係る画像形成装置におけるKCMYの4色構成は、KCMYの各インクと記録用紙との記録明度差が、K:70〜80、C:50〜60、M:50〜60、Y:5〜10程度である。尚、前記記録明度とはCIE(国際照明委員会)が1976年に勧告した心理計測明度の定義で、通常L*で表記する値を意味する(今後特に明記しない場合、明度、色相、彩度はCIE1976での定義とする)。また、記録明度の測定方法は、記録手段によって記録媒体上に記録した記録ドットの明度、または色材を100%ベタ記録した場合の記録領域の明度で、このときの光源は前記CIE定義の標準照明光D65である。
上述したように、KCMについては、記録用紙との記録明度差が大きい。そこで、本実施形態では、記録用紙との明度差の大きいKCMについては、ノズル列方向と平行方向にノズル位置を相対的にズラして配置する。尚、記録用紙との明度差の小さいYは、スジ状の画像障害への影響は少ないため、配置は問わないが、本実施形態のようなインク構成場合、図14〜図16に示すように、Kのノズル位置にYのノズルを揃えることが好ましい。
ここで、Yヘッドの相対位置を他ヘッドと揃えることで、ノズル数の減少を抑えることができる。また、CMYは同時に使われることが多く、KとYは同時に使われる状況が少ないため、本実施形態では、Kのヘッド位置にYのヘッド位置を対して揃えている。一般的に、Kが使われるのは黒の高階調部分である。黒の低階調部分を印字する場合には、CMYの混色主体で形成し、階調が上がるにつれてKの入れ量を増していく。それは、低階調のドット形成密度の低い階調では、明度の低いKを使用すると個々のドットが目立ち粒状感を損ねてしまうため、Kよりも明度が高くドットが目立ちにくいCMYを混色して黒を生成し、紙面の埋まる高階調では明度の低いKを多く使用して黒濃度を向上させるためである。このような背景があるため、KとYが同時に紙面上に使用される状況はあまり多くないため、KとYのスジの位置が重なっていても実画像上は影響しにくい。
また、黒スジはドットの形成密度が密になる状況で発生しやすいため、つまりドットの重なりが発生しやすいため、紙面の埋まりのよい高階調で発生し、白スジは埋まりが不十分でかつ、紙面とのコントラストがつきやすい中間階調で発生しやすい。
上記した理由から、KとYが同時に使われる領域は主に高階調だが、Yは明度が高く黒スジを起こしにくいため黒スジを増幅しにくい。また、中間階調においては、Y以外にCMも吐出されており、CMYは相互にノズル配置をズラして配置しているため、白スジも目立ちにくい。すなわち、2次色等CMYで構成される色においてもこれらの色のヘッドは相対位置をズラして配置しているため、スジを目立たなくさせることができる。
以上のことから、上記ではYのノズル位置が、CMのノズル位置に対してズラして配置され、Kのノズル位置と揃っている例を好ましい例として示した。
ノズル位置をズラして配置する判定基準である記録用紙との明度差については、明度差を小さくなるように設定するほど、より画像品質を向上することができる。しかし、あまりにも明度差が小さくなるように設定すると、ズラして配置するノズルが増えるため、生産性が低下してしまう。
以上のことから、スジ状の画像障害を目立たなくするには、少なくとも記録用紙との明度差を、L≦40を満たす範囲で設定することが好ましい。
ここで、本実施形態では同色調インクを有する場合には、これらのヘッド同士は相対位置をズラし、スジの発生位置をズラすようにする。
例えば、図17に示すように、MとLMを有する構成の場合、LMの明度が所定の明度差、例えば、L≦40の範囲内であっても、LMのノズルの相対位置はMのノズル位置に対してはズラして配置する。これにより、Mに白スジが発生しても、LMのドットがスジを補間するように形成されるため、白スジをより目立ちにくくすることができる。
この際、他のヘッドに対する位置関係は特に限定はしないが、有効ノズル数の減少を抑えるためには、他色とのヘッドの位置関係は揃えた方が好ましい。揃えるヘッドに対しては特に限定するものではないが、上記でYについて述べたのと同様の理由から、記録用紙上で同時に使用される状況が少ないKヘッドに対して位置を揃えることが好ましい。例えば、図17では同系色であるCとLC、MとLMをズラして配置し、Kに対してLC、LM、Yを揃えている。
また、上述した例では、記録ヘッドをノズル列の垂直方向に並列したヘッドユニットを持つシリアルインクジェットプリンタについて説明してきたが、ヘッドをノズル列方向につないで長尺化したヘッドユニットを持つインクジェットプリンタにも適用することができる。
ヘッドのノズル数が多いほうが、1スキャンあたりに印字できる印字幅が広いため、より高速に画像形成を行うことが可能になるが、長尺ヘッドの開発生産は技術的、コスト的な課題が多いため短いヘッドを複数つないで長尺ヘッドの実現している。この際に課題になるのが、ヘッドのつなぎ目によるスジである。例えば、ノズル列方向につなぎ合わせるヘッドの組み付け精度が不十分な場合やヘッドのインク吐出特性が異なる場合、ヘッドつなぎ目においても改行時と同様のドット粗密が発生し、スジ障害を引き起こしてしまう。
改行時に発生するスジ状の画像障害に関しては、例えば、用紙送りの制御によって、スジの程度をコントロールするという手段も取り得る。しかし、ヘッドのつなぎ部において発生するスジ状の画像障害は、基本的にヘッド組み付けによってノズルの位置関係が固定されてしまうため、用紙送りの制御によるドット位置の調整が困難となる。
すなわち、図18に示すように、上述したようなヘッドの相対位置関係をもったヘッドをノズル列方向に連結することで、有効ノズル数を多く保ちながら、つなぎ部のスジの軽減を行うことが可能になる。尚、ヘッドのつなぎ方はこれに限定するものではない。例えば、図18では記録ヘッドを単純にノズル列方向に直列配置する例を示しているが、図19に示すように主走査方向にズラして配置する場合や、色の順序が異なるような場合にも適用することができる。
また、本実施形態は、ほぼ用紙の幅方向に渡る長さをもったヘッドを固定配置し、ヘッドノズル列方向と直行する方向に記録用紙を搬送して画像形成する、いわゆるライン方式のインクジェットプリンタにも適用することができる。
一般的に、ライン方式のインクジェットプリンタにおいて、1つのヘッドで用紙幅全域に渡るヘッドの開発・生産には課題が多いため、短いヘッドをつなぐことで長尺ヘッドを実現している。また、特にライン方式のインクジェットプリンタにおいては、改行動作をしないため、インターレスやマルチパスといった動作を行わないことに起因する画像のスジが目立ちやすく、これを回避軽減する上位モードを用意することが難しいため、画像スジ問題はより深刻になる。
そこで、上述したように、記録用紙との明度差を考慮してノズル位置をずらした記録ヘッドを適用することにより、ノズル数を多く保ちながら画像スジの軽減を図ることができる。尚、上述したように、記録ヘッドのつなぎ方、色順等に関しては限定するものではない。
また、図21に示すように、短いヘッドをつなぐ際にノズルを重ね合わせることや、改行時にノズルを重ね合わせることにより、ノズル重ね部のドットを打ち分け処理することで、ドットの粗密を軽減する処理をオーバーラップ処理という。オーバーラップ処理には、重ねるノズル数や打ち分け処理のパターン等種々の方式があるが、基本的には、記録ヘッドないしスキャン間のノズルを重ねてドットを打ち分けることで、この境界のドット配置を分散させて、スジ状の障害を目立ちにくくするものである。図21では、千鳥上にドットを配置振り分けた例を示している。
しかし、各インクのノズルを揃えている場合には、オーバーラップ処理によってある程度のドットの粗密を低減することができるが、ドットの配置自体は理想配置から崩れているため、充分にドットの配置の崩れを目立たなくすることは困難である。特に、2次色以上の色では付着量も多くダイナミックレンジも広がり、複数のヘッドのズレも加わってくるため、上記処理効果が十分に発揮し得ないこともある。
しかし、本実施形態に係る画像形成装置においてオーバーラップ処理を実施する場合、記録ヘッドないし改行のつなぎ位置そのものをズラすため、特に2次色以上の色においてスジの影響を低減することが可能になる。また、ノズル重ね処理をする場合、重ねたノズル分の有効ノズル数が減り、生産性を低下するが、本実施形態では明度差が大きくスジに影響しやすい色に関してのみ、記録ヘッドないし改行のつなぎ位置をズラして配置することで、有効ノズル数を過度に削ることを防ぐことができる。
本実施形態により、スジ状の画像障害に影響の大きい色についてヘッドないし改行のつなぎ位置をズラして配置することで、生産性を低下させずに、スジの目立ちを抑えることが可能となる。
尚、各動作をCPUが実行するためのプログラムは本発明によるプログラムを構成する。このプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、半導体記憶部や光学的及び/又は磁気的な記憶部等を用いることができる。このようなプログラム及び記録媒体を、前述した各実施形態とは異なる構成のシステム等で用い、そこのCPUで上記プログラムを実行させることにより、本発明と実質的に同じ効果を得ることができる。
以上好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した画像形成装置に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であるということは言うまでもない。