JP5637362B2 - 磁性粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁性粉末およびその製造方法に関するものであり、より詳しくは、磁気記録に好適な磁気特性を有するとともに塗布型磁気記録媒体に使用可能な磁性粉末およびその製造方法に関するものである。
ビデオテープ、コンピューターテープ、ディスク等として広く用いられている磁気記録媒体では、磁性層に含まれる磁性体量が同じ場合、磁性体の粒子サイズを小さくしていった方が、SNRが高くなるため高密度記録に有利である。
しかし、磁性粒子の粒子サイズを小さくしていくと熱揺らぎのため超常磁性となってしまい、磁気記録媒体に用いることができなくなる。これに対し、結晶磁気異方性が高い材料は、熱安定性に対する高いポテンシャルを有するため熱的安定性に優れる。そこで、熱的安定性に優れる磁性材料として、結晶磁気異方性が高い材料の研究が行われている。例えば、ハードディスク(HD)等においてはCoCr系磁性体にPtを加え、高い結晶磁気異方性を得ており、さらに高い結晶磁気異方性を有する磁性体としてCoPt、FePd、FePt等を用いる検討がなされている。また、高価なPtを含まず安価で高い結晶磁気異方性を有する磁性材料としてSmCo、NdFeB、SmFeN等の希土類元素を含む硬磁性体も知られている(以下、「第1の技術」という)。
しかし、結晶磁気異方性が高い材料は、熱的安定性に優れるものの、スイッチング磁界が増大するため記録に大きな外部磁場が必要となり記録性は低下する。そこで非特許文献1では、非磁性無機物上に気相製膜で形成した硬磁性の磁性層に軟磁性層を交換相互作用が生じるよう積層し、スイッチング磁界を下げる試みがなされている(以下、「第2の技術」という)。
日本応用磁気学会誌29,239-242(2005)
HD用媒体等の金属薄膜磁気記録媒体では、通常、蒸着時の高温に耐え得るガラス基板が支持体として使用されている。これに対し近年、安価な有機物支持体を使用した汎用性に優れた塗布型磁気記録媒体が提案され、ビデオテープ、コンピューターテープ、フレキシブルディスク等として広く用いられている。上記塗布型媒体においては、汎用性を維持する観点から、高価なPtを使用した磁性体を使用することは実用上困難であるため、第1の技術のように希土類元素を含む硬磁性体を使用することが考えられる。しかし、上記の通り、結晶磁気異方性の高い磁性体には記録性の改善という課題がある。
そこで、塗布型磁気記録媒体において、熱的安定性と記録性を両立するために、第2の技術を適用することが考えられる。しかし、塗布型磁気記録媒体において通常使用される非磁性有機物支持体は耐熱性に劣るため、気相製膜時に支持体が高温に晒される第2の技術を適用することは困難である。
そこで本発明の目的は、塗布型磁気記録媒体に適用可能な磁性材料であって、高い結晶磁気異方性と優れた記録性を兼ね備えた磁性材料を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の新たな知見を得た。
(1)硬磁性粒子表面に軟磁性体を被着させ、軟磁性体と硬磁性粒子を交換結合させることにより、硬磁性粒子の結晶磁気異方性(高Ku)を維持しつつ、磁性粒子としての記録性を改善することができる。この理由を、本発明者らは以下のように推察している。
高い結晶磁気異方性(高Ku)を有する硬磁性粒子(以下、「硬磁性相」または「硬磁性体」ともいう)表面に軟磁性体(以下、「軟磁性相」ともいう)を交換結合させることで、軟磁性相が先に外部磁場の変化に対応し、軟磁性相のスピンの向きが変わる。その結果、軟磁性相と交換結合した硬磁性相のスピンの向きを変えることができるため、粒子としてのスイッチング磁界を下げることができる。この結果、磁気記録に好適な保磁力(好ましくは80kA/m以上240kA/m未満の範囲)を有する、高Ku磁性材料を得ることができる。
(2)硬磁性粒子を含む遷移金属塩溶液から溶媒を除去することにより、該硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成した後、この被覆層中の遷移金属塩を還元分解することにより、硬磁性相と軟磁性相とが交換結合した磁性粒子を得ることができる。この磁性粒子の集合体からなる磁性粉末は、結合剤、溶媒等と混合し磁性塗料とすることで塗布型磁気記録媒体の作製に使用することができる。一方、前述の第2の技術は、硬磁性層上に軟磁性層をスタックするため、硬磁性層と軟磁性層との界面では微視的に見れば硬磁性粒子の硬磁性層表面に露出した部分が軟磁性体と接触した状態であるが、この状態を維持して磁性粒子を取り出すことは不可能あるため、塗布型磁気記録媒体に適用可能な磁性粉末を得ることはできない。これに対し、前述の通り、本発明者らが新たに見出した上記方法は塗布型磁気記録媒体用の磁性粉末の製造方法としても適用可能である。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的を達成する手段は、以下の通りである
[1]硬磁性粒子を含む遷移金属塩溶液から溶媒を除去することにより、該硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成すること、
前記被覆層中の遷移金属塩を還元分解することにより、硬磁性粒子表面に遷移金属を含有する軟磁性を形成すること、
を含み、
前記硬磁性粒子は、六方晶フェライト粒子であり、
前記還元分解を、炭化水素含有ガス存在下で行う、硬磁性粒子表面に前記軟磁性体が被着した磁性粒子の集合体である磁性粉末の製造方法。
[]前記軟磁性形成後に酸化処理を行うことを含む[]に記載の磁性粉末の製造方法。
[]前記還元分解を、前記被覆層形成後の硬磁性粒子を前記炭化水素含有ガス気流中で加熱することにより行う[]または[]に記載の磁性粉末の製造方法
[]前記炭化水素はメタンである[1]〜[3]のいずれかに記載の磁性粉末の製造方法。
[5]前記硬磁性粒子表面に軟磁性体が被着した磁性粒子上に炭素成分が存在する、[1]〜[4]のいずれかに記載の磁性粉末の製造方法。
本発明によれば、結晶磁気異方性の高い磁性体の記録性を改善することができる。
実施例13で得られた磁性粒子および原料バリウムフェライト粒子のX線回折による組成評価の結果を示す。
[磁性粉末]
本発明は、硬磁性粒子表面に該硬磁性粒子と交換結合した状態で軟磁性体が被着してなる磁性粒子の集合体からなる磁性粉末に関する。
硬磁性粒子は、結晶磁気異方性が高く熱的安定性に優れるが、高い結晶磁気異方性を有するため保磁力が高く、記録に必要な外部磁場が大きくなるため記録性は低下する。これに対し本発明では、硬磁性粒子表面に軟磁性体を被着させ、軟磁性体と硬磁性粒子とを交換結合させることにより、硬磁性粒子の結晶磁気異方性(高Ku)を維持しつつ、磁性粒子としての保磁力を、記録に適した保磁力に制御することが可能となる。このように本発明の磁性粒子は、硬磁性粒子に起因する高い結晶磁気異方性を有するとともに、記録に適した保磁力を示すものであり、塗布型磁気記録媒体における磁性体として好適である。
本発明において「交換結合」とは、交換相互作用によりスピンの向きが揃うように、硬磁性体のスピンと軟磁性領域のスピンとが連動して動くように、あたかも1つの磁性体としてスピンの向きが変わるように結合していることをいう。軟磁性相が交換結合を生じずに硬磁性相表面に存在している場合、即ち単に物理的に付着している場合、軟磁性相の有無によって硬磁性体の保磁力は変化しない。したがって、硬磁性相と軟磁性相が交換結合していることは、磁性粒子の保磁力が、軟磁性相形成により減少することによって確認することができる。また、軟磁性相が交換結合を生じずに硬磁性相表面に付着している場合、M-Hループ(ヒステリシスループ)は軟磁性相のM-Hループと硬磁性相のM-Hループを足し合わせたものとなるため、軟磁性相の保磁力に相当するところでM-Hループに段が現れる。したがって、硬磁性相と軟磁性相が交換結合していることは、M-Hループの形状から確認することもできる。
また、本発明において「硬磁性」とは、保磁力が240kA/m以上であることをいい、「軟磁性」とは、保磁力が8kA/m未満であることをいうものとする。
以下、本発明のコア/シェル磁性粒子について更に詳細に説明する。
本発明の磁性粉末を構成する磁性粒子は、硬磁性粒子表面に軟磁性体が被着してなる。前記した通り、硬磁性粒子は結晶磁気異方性が高いため熱的安定性に優れる。硬磁性粒子の結晶磁気異方性定数は、1×10-1J/cc(1×106erg/cc)以上であることが好ましい。より好ましくは6×10-1J/cc(6×106erg/cc)以上である。結晶磁気異方性が高い方が、磁性粒子を小さくでき、SNR等の電磁変換特性上有利だからである。硬磁性粒子の結晶磁気異方性定数が1×10-1J/cc(1×106erg/cc)以上であれば、軟磁性体と交換相互作用を持たせ交換結合させた場合に磁気記録に適した保磁力を維持することができる。一方、前記硬磁性粒子の結晶磁気異方性定数が、6J/cc(6×107erg/cc)を超えると、軟磁性相と交換結合させた場合においても保磁力が高く記録性に劣ることがあるため、前記硬磁性粒子の結晶磁気異方性定数は、6J/cc(6×107erg/cc)以下であることが好ましい。
上記硬磁性粒子の飽和磁化としては、記録性の観点から0.5×10-1〜2A・m2/g(50〜2000emu/g)が好ましく、5×10-1〜1.8A・m2/g(500〜1800emu/g)がより好ましい。形状としては球形、多面体状等のいずれの形状でも構わない。また、上記硬磁性粒子の粒子サイズ(直径、板径等)としては、高密度記録の観点から3〜100nmであることが好ましく、5〜10nmであることがより好ましい。本発明における「粒子サイズ」は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。また本発明において粒子サイズに関する平均値は、透過型電子顕微鏡で撮影した写真において500個の粒子を無作為に抽出して測定した粒子サイズの平均値とする
前記硬磁性粒子としては、希土類元素、遷移金属元素からなる磁性体、遷移金属、アルカリ土類金属の酸化物、希土類元素、遷移金属元素および半金属からなる磁性体(以下、「希土類−遷移金属−半金属系磁性体」ともいう)を挙げることができ、上記好適な結晶磁気異方性定数を得る観点から、希土類−遷移金属−半金属系磁性体および六方晶フェライトが好ましい。なお、硬磁性粒子の種類によっては、硬磁性粒子表面に希土類酸化物等の酸化物が存在する場合もあるが、このような硬磁性粒子も本発明における硬磁性粒子に含まれるものとする。
以下、希土類−遷移金属−半金属系磁性体および六方晶フェライトについて更に詳細に説明する。
(希土類−遷移金属−半金属系磁性体)
希土類としてはY、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu等を挙げることができる。中でも、一軸磁気異方性を示すY、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Pr、Nd、Tb、Dyが好ましく、特に、結晶磁気異方性定数が6×10-1J/cc〜6J/cc(6×106erg/cc〜6×107erg/cc)となるY、Ce、Gd、Ho、Nd、Dyがよりいっそう好ましく、Y、Ce、Gd、Ndが特に好ましい。
遷移金属としてはFe、Ni、Coが強磁性体を形成するものとして好ましく用いられる。単独で用いる場合は、結晶磁気異方性、飽和磁化の最も大きくなるFeを好ましく用いることができる。
半金属としては、ホウ素、炭素、リン、シリコン、アルミニウムが挙げられる。この中でホウ素、アルミニウムが好ましく用いられ、ホウ素が最も好ましい。即ち、前記硬磁性相は、希土類元素、遷移金属元素、およびホウ素からなる磁性体(以下、「希土類−遷移金属−ホウ素系磁性体」という)であることが好ましい。希土類−遷移金属−ホウ素系磁性体をはじめとする希土類−遷移金属−半金属系磁性体は、Pt等の高価な貴金属を含まないためコスト面で有利であり、汎用性に優れる磁気記録媒体を作製するために好適に使用することができる。
希土類−遷移金属−半金属系磁性体の組成としては、希土類は10〜15at%であることが好ましく、遷移金属は70〜85at%であることが好ましく、半金属は5〜10at%であることが好ましい。
遷移金属として、異なる遷移金属、例えば、Fe、CoおよびNiを組み合わせて用いる場合、Fe(1-x-y)CoxNiyと表したとき、硬磁性体の保磁力を、例えば240kA/m〜638kA/m(3000Oe〜8000Oe)にコントロールすることができ好ましい組成は、x=0〜45at%、y=25〜30at%、またはx=45〜50at%、y=0〜25at%の範囲である。
低腐食性の観点からは、x=0〜45at%、y=25〜30at%、またはx=45〜50at%、y=10〜25at%の範囲であることが好ましい。
キューリー点が500℃以上で温度特性が優れるとの観点からはx=20〜45at%、y=25〜30at%、またはx=45〜50at%、y=0〜25at%の範囲であることが好ましい。
従って、保磁力、腐食性、温度特性の観点からはx=20〜45at%、y=25〜30at%、またはx=45〜50at%、y=10〜25at%の範囲であることが好ましく、x=30〜45at%、y=28〜30at%の範囲であることがより好ましい。
前記硬磁性粒子は、例えば気相法または液相法で合成することができる。ただし、結晶磁気異方性が高い磁性体を合成するには高い温度を必要とするため、塗布型磁気記録媒体の支持体として一般的に使用されている非磁性有機物支持体上で合成することは、支持体の耐熱性の観点から通常困難である。したがって、硬磁性粒子は、非磁性有機物支持体上に塗布する前に合成すべきである。
希土類−遷移金属−ホウ素系磁性体を得る方法としては、原料金属を高周波溶融炉等で溶解した後、鋳造する方法があるが、当該方法では初晶として遷移金属が多く含まれるものが得られるため、遷移金属を消去するために融点直下での溶体化処理を必要とする。溶体化処理で粒子サイズが大きくなることから、高密度記録に適した微粒子磁性体を得るためには、後述の合成法を用いることが好ましい。
溶融金属を回転ロール上に注ぐ急冷法(溶融合金急冷法)においては、初晶であるFeが発生しないうえに、微粒子状(好ましくは粒子サイズ3〜200nm)の希土類−遷移金属−ホウ素 ナノ結晶を急冷薄帯中に得ることができる。
また、溶融金属を回転ロール上に注ぐ急冷法によりアモルファス合金を作製した後、非酸化性雰囲気(例えば不活性ガス、窒素、真空)で400〜1000℃の熱処理でナノ結晶を析出させる方法においても、微粒子状(好ましくは粒子サイズ3〜200nm)の希土類−遷移金属−ホウ素 ナノ結晶を得ることができる。
合金に対して溶融金属急冷法を用いる場合は、酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、具体的にはHe、Ar、N2等を好ましく用いることができる。
溶融金属急冷法においては、冷却速度はロールの回転速度と急冷薄帯の厚みによって決定される。本発明において、急冷直後に急冷薄帯中に希土類−遷移金属−ホウ素ナノ結晶を形成する際のロール回転速度は、10〜25m/sとすることが好ましい。また、急冷により一旦、アモルファス合金を得る場合には、25〜50m/sとすることが好ましい。
急冷薄帯の厚みは10〜100μmとすることが好ましい。上記範囲の厚みとすることができるように、溶融金属を注ぐ量をオリフィス等でコントロールすることが好ましい。
その後、水素を吸脱着させる過程で粒子を微粒子化する方法(HDDR法)を用いて微粒子を得てもよいし、また、さらに気流分散、湿式分散を行い、微粒子を得てもよい。
(六方晶フェライト)
六方晶フェライトとしては、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等を用いることができる。具体的には、マグネートプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネートプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネートプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用できる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもあるが、本発明ではそれらも使用できる。
次に、上記硬磁性粒子表面に被着する軟磁性体について説明する。
前記軟磁性体の結晶磁気異方性定数は、硬磁性粒子と交換結合し、磁性粒子の保磁力を磁気記録に適した値に制御する観点から小さいほうが好ましく、負の値を取るものを選んでも構わない。ただし、負の結晶磁気異方性定数を有する軟磁性体を硬磁性粒子と交換結合させると、磁性粒子としての磁気エネルギーが小さくなってしまうことから、軟磁性体の結晶磁気異方性定数としては、0〜5×10-2J/cc(0〜5×105erg/cc)が好ましく、0〜1×10-2J/cc(0〜1×105erg/cc)がより好ましい。
軟磁性体の飽和磁化は、硬磁性粒子と交換結合し、磁性粒子の保磁力を磁気記録に適した値に制御する観点からは大きい方が好ましい。具体的には、1×10-1〜2A・m2/g(100emu/g〜2000emu/g)の範囲であることが好ましく、3×10-1〜1.8A・m2/g(300〜1800emu/g)の範囲であることがより好ましい。
前記軟磁性体としては、Fe、Fe合金、Fe化合物、例えば、鉄、パーマロイ、センダスト、ソフトフェライトが好ましく用いられる。また、前記軟磁性体は、遷移金属および遷移金属と酸素との化合物からなる群から選択されるものであることもできる。遷移金属としては、Fe、Co、Niを挙げることができ、Fe、Coが好ましく、硬磁性粒子が六方晶フェライトである場合には、Coがより好ましい。また、上記化合物は、後述の実施例でその存在が確認されているCoHO2のように、遷移金属と酸素に加えて水素を含むことが好ましい。なお、硬磁性粒子に被着させる軟磁性体は、例えば後述の実施例で示すように、アルカリ土類金属を含まないものであることもできる。また、軟磁性体は、硬磁性粒子表面に非晶質として存在してもよく、結晶性物質として存在してもよい。ここで非晶質とは、X線回折法による分析において回折ピークとして検出されないことをいい、結晶性とは同ピークとして検出されることをいう。
本発明の磁性粒子における硬磁性粒子と軟磁性体との間の交換結合エネルギーは、結合した際に磁性粒子の保磁力を磁気記録に適した値に制御する観点から、硬磁性粒子の結晶磁気異方性定数に応じて最適な値に調整することが好ましい。具体的には、軟磁性体の結晶磁気異方性定数は、硬磁性粒子の結晶磁気異方性定数の0.01倍〜0.3倍とすることが好ましい。
交換結合エネルギーは界面の不純物、歪、結晶構造等で調整することができる。
本発明の磁性粒子は、硬磁性粒子表面に、該硬磁性粒子と交換結合した軟磁性体が被着してなるものである。本発明の磁性粒子における軟磁性体の占める割合は磁性粒子の保磁力を磁気記録に適した値に制御する観点から、硬磁性粒子の保磁力に応じて決定することが好ましい。硬磁性粒子と軟磁性体の体積比(硬磁性粒子/軟磁性体)は、硬磁性粒子および被着させる軟磁性体の種類を考慮して、所望の保磁力が実現できるように調整すればよく、一態様では、例えば2/1〜1/20であり、更には1/1〜1/15であることができる。また、他の態様では、例えば500/1〜1/20であり、更には200/1〜1/20の範囲であることができる。また、硬磁性粒子が六方晶フェライトである場合には、該六方晶フェライト(硬磁性粒子)と交換結合した軟磁性体を被着させた磁性粒子において、軟磁性体が占める割合が2質量%未満であることが好ましく、0.1〜1質量%の範囲であることがより好ましい。なお、本発明の磁性粉末において、硬磁性粒子に被着する軟磁性体の厚さは特に限定されるものではないが、硬磁性粒子の体積に応じて、例えば上記体積比となるよう適切な値に設定することが好ましい。また、本発明の磁性粉末に含まれる磁性粒子は、硬磁性粒子であるコアの表面に被覆層(シェル)として軟磁性体が存在するコア/シェル構造を取ることができる。即ち、本発明の磁性粉末は、硬磁性相表面に軟磁性相の被覆層を有し、軟磁性相と硬磁性相が交換結合しているコア/シェル磁性粒子の集合体であることができる。ただし、本発明の磁性粉末では、硬磁性粒子の表面の少なくとも一部に該硬磁性粒子と交換結合した軟磁性体が被着していればよく、硬磁性粒子の全表面を軟磁性体で被覆することは必須ではない。したがって、一部に硬磁性粒子が露出した部分や他の物質が堆積した部分があっても、本発明におけるコア/シェル磁性粒子に含まれるものとする。なお、本発明の磁性粉末は、独立した磁性粒子のそれぞれが、硬磁性粒子表面に軟磁性体が被着した構造を取る点で、硬磁性層と軟磁性層の界面のみで硬磁性体と軟磁性体が接触した構造が形成される前述の第2の技術と明確に異なるものである。
前記磁性粒子は、軟磁性体が被着した硬磁性粒子上に酸化物層を有することができる。酸化物層は、硬磁性粒子に対して軟磁性体を被着した後に、得られた磁性粒子に一般的な徐酸化処理を施すことにより形成することができる。徐酸化処理により最表層に酸化物層を形成することによって、磁性粒子の保存安定性やハンドリング性を高めることができる。
ただし、上記酸化物層を形成しないことが、磁気特性の点からは好ましい場合がある。徐酸化処理により酸化される部分は主に軟磁性体の表層部であるが、酸化されることにより該表層部の磁性が失われる場合があるからである。これに対し、後述するように磁性粒子表面に炭素成分を形成することは、炭素成分の存在により保存安定性やハンドリング性を高めることができる点でも好ましい。
前記磁性粒子の粒径は、好ましくは5〜200nmであり、さらに好ましくは5〜25nmである。これは、SNR等電磁変換特性上は微粒子であることが好ましいが、小さくしていくと、硬磁性粒子が超常磁性を示し、記録に適さなくなるからである。なお、その上に軟磁性体を被着させる構成上、硬磁性粒子は被着処理後の磁性粒子より小さくする必要があり、この要請は単一の粒子より厳しい。一方、粒径200nm超であれば、上記構成とすることなく、単一組成の構造で記録再生に適した粒子も存在する。したがって、前記磁性粒子は、単一組成の磁性粒子としては。記録再生に適した粒子を得ることが困難な粒径200nm以下の粒子であることが好ましい。
本発明の磁性粉末は、硬磁性粒子単独では高保磁力であり記録に不適であるところ、硬磁性粒子と軟磁性体とを交換結合させることにより、記録に適した保磁力を実現することができる。即ち、硬磁性粒子のスピンが交換結合(交換相互作用結合)した軟磁性体中のスピンの影響で動きやすくなることで、記録に適した保磁力を得ることができる。本発明の磁性粉末の保磁力は、軟磁性体が硬磁性粒子と交換結合しているため、硬磁性粒子の保磁力よりも低い。好ましくは80kA/m以上240kA/m未満の範囲である。保磁力が低すぎると、隣接記録ビットからの影響で記録を保持しづらくなり、熱的安定性が劣るからである。また、保磁力が高すぎると記録することができなくなるからである。保磁力としては、160kA/m以上240kA/m未満であることがさらに好ましい。なお、前述の通り硬磁性粒子を構成する硬磁性体の保磁力は240kA/m以上、軟磁性体の保磁力は8kA/m未満である。その上限、下限は特に限定されるものではないが、一般に入手可能な磁性体として、硬磁性体の保磁力は、通常1000kA/m以下、軟磁性体の保磁力は、通常0.04kA/m以上である。
また、上記のように硬磁性粒子のスピンと軟磁性体中のスピンを交換相互作用結合することにより、硬磁性粒子単独の場合と比べて飽和磁化を高くすることができる。これにより本発明の磁性粉末は、4.0×10-2〜2.2A・m2/g(40〜2200emu/g)の範囲の飽和磁化を実現することができる。上記範囲の飽和磁化を有することは、出力的に有利である。本発明の磁性粉末の飽和磁化は、より好ましくは5.4×10-2〜2.2A・m2/g(54〜2200emu/g)、よりいっそう好ましくは1×10-1〜2.2A・m2/g(100〜2200emu/g)、更に好ましくは1.2×10-1〜1.8A・m2/g(120〜1800emu/g)の範囲である。
[磁性粉末の製造方法]
更に本発明は、前述の本発明の磁性粉末の製造方法に関する。本発明の製造方法は、
硬磁性粒子を含む遷移金属塩溶液から溶媒を除去することにより、該硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成すること(以下、「第一工程」という)、
前記被覆層中の遷移金属塩を還元分解することにより、硬磁性粒子表面に遷移金属を含有する軟磁性相を形成すること(以下、「第二工程」という)、
を含む。本発明の製造方法により、硬磁性粒子表面に、該硬磁性粒子と交換結合した状態軟磁性体が被着した磁性粒子の集合体である、本発明の磁性粉末を得ることができる。なお、先に説明したように、前述の第2の技術では、上記磁性粉末を得ることはできず、したがって第2の技術を塗布型磁気記録媒体に適用することは困難である。これに対し、本発明の製造方法は、塗布型磁気記録媒体用の磁性粉末の製造方法としても適用可能である。
以下、本発明の製造方法について、更に詳細に説明する。
第一工程
第一工程は、硬磁性粒子を含む遷移金属塩溶液(以下、「硬磁性粒子含有塩溶液」、または単に「塩溶液」ともいう)から溶媒を除去することにより、該硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成する工程である。前記硬磁性粒子の詳細は、先に説明した通りである。
第一工程において使用する塩としては、遷移金属の塩であればよいが、還元分解した後に軟磁性体を形成するためにはFe、Co、Niの塩であることが好ましく、特にFeまたはCoの塩であることが好ましい。前記塩は、有機物、無機物のいずれでもよく、具体的には、塩化鉄、クエン酸鉄、クエン酸アンモニウム鉄、硫化鉄、酢酸鉄、鉄(III)アセチルアセトナート、蓚酸アンモニウム鉄、塩化コバルト、クエン酸コバルト、硫化コバルト、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化ニッケル、硫化ニッケル等を用いることができる。なお、前記塩には、遷移金属錯体(錯塩)が含まれるものとする。還元分解した際に、副生成物を取り除くという観点からは、前記塩は無機物であることが好ましい。
前記溶液の溶媒としては、使用する遷移金属塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。ただし、溶媒の除去の容易性の観点から、高沸点のものは好ましくない。この点から、水、ケトン類(例えばアセトン)、アルコール類、エーテル類が好ましく用いられる。硬磁性相を浸漬した際に酸化を防ぐ観点から、溶媒中の酸素を窒素等でバブリングして除いたものを用いることが好ましい。この際、予め、溶媒中をくぐらせた窒素ガスを用いると使用する溶媒の揮発を防ぐことができる。油状溶媒を使用することも可能であるが、溶媒の除去の容易性の点からは非油状溶媒を使用することが好ましく、この点からも、水、ケトン類、アルコール類、エーテル類を使用することが好ましい。
前記塩溶液中の塩濃度は特に限定されるものではないが、前記塩溶液中の塩濃度が薄すぎると所望量の軟磁性相を硬磁性粒子表面に形成するために、硬磁性粒子を塩溶液に浸漬し、溶媒を取り除き、当該塩を硬磁性粒子表面上に析出させた後、塩を還元分解するという作業を何度も繰り返す必要がある。また、過度に高濃度であると、硬磁性粒子を塩溶液に浸漬し、溶媒を取り除き、当該塩を硬磁性粒子表面上に析出させた際、粒子同士がくっついてしまうことから好ましくはない。以上の点を考慮すると、前記塩溶液中の塩濃度は、溶液100gあたり0.1mmol〜20mmol程度が好ましい。
前記塩溶液中の硬磁性粒子量は、粒子表面に塩を均一に付着させる観点から、硬磁性粒子の表面が均一に濡れている程度の量とすることが好ましい。粒子表面に乾いた部分があるままであると塩の付着が不均一になり、塩溶液が多すぎる場合も、溶媒を除去する際に塩溶液に濃度むらができ、塩の付着が不均一となるからである。
前記塩溶液の調製方法は特に限定されるものではなく、硬磁性粒子と遷移金属塩を同時または順次、溶媒に添加混合することによって調製すればよい。
硬磁性粒子を溶液に浸漬する操作から第二工程に至る前の雰囲気は、硬磁性粒子の酸化を防止する観点から、窒素、アルゴン、He雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。
前記硬磁性粒子含有塩溶液調製後、調製した溶液から溶媒を除去することにより、硬磁性粒子表面に遷移金属塩が析出する。これにより、硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成することができる。加熱処理、減圧処理、またはこれらの組み合わせにより、前記硬磁性粒子含有塩溶液から溶媒を容易に除去することができる。加熱処理における加熱温度は、溶媒の沸点に応じて設定すればよい。ただし、前述のように不活性雰囲気中で処理する場合であっても、温度が高すぎると雰囲気中に不純物として含まれる酸素により硬磁性粒子が酸化されることがある。このような酸化を防止する観点からは、加熱温度は25〜250℃程度が好ましく、25℃〜150℃程度がより好ましい。加熱で溶媒を除去する際に、粒子同士が凝集しやすくなるので、低温で時間をかけ溶媒を除去することが好ましい。また、溶媒除去中、塩溶液を適宜攪拌することにより、硬磁性粒子表面に遷移金属塩を均一に析出させることができる。さらに、酸化を防止し、粒子同士が凝集することを防止するには、減圧処理により溶媒を除くことが好ましい。減圧処理は、アスピレーター、ロータリーポンプを用いて0.1〜8000Paの減圧下で行うことができる。この際、取り除いた溶媒をコールドトラップで取り除くことが好ましい。減圧処理時に溶媒の揮発に伴う気化熱によりサンプルの温度が下がり、溶媒を除去する効率が下がることから、25〜50℃で加熱することが好ましい対応である。
第一工程では、以上の操作によって硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成することができる。また、前記被覆層の厚さは、所望量の軟磁性相を硬磁性粒子表面に形成することができるように、塩溶液中の塩濃度等によって適宜調整すればよい。なお、本工程において形成される被覆層は、硬磁性粒子の全表面を被覆することは必須ではなく、一部に硬磁性粒子表面が露出した部分や他の物質が堆積した部分があってもかまわない。
第二工程
第二工程は、第一工程で形成した被覆層中の遷移金属塩を還元分解することにより、硬磁性粒子表面に遷移金属を含有する軟磁性相を形成する工程である。前記還元分解は、好ましくは、前記被覆層を有する硬磁性粒子を還元雰囲気中で加熱することにより行われる。還元ガスとしては水素、一酸化炭素、炭化水素等が用いられる。水素、一酸化炭素は還元分解時に酸化され、それぞれ水、二酸化炭素の形で気体として粒子から取り除かれる点で好ましい。還元分解時の雰囲気ガスは、還元分解の反応効率の点からは、還元ガスを50体積%以上含有するものが好ましく、90体積%以上含有するものがより好ましい。反応容器にガス流入口と排気口を設け、還元分解中に常時還元ガス気流を流入させつつ反応後のガスを排出することが、反応効率の点から特に好ましい。還元ガス気流中での還元分解は、Ca還元の様にCaが不純物として混入することもなく、還元分解での副生成物が気相中に移り除かれる点で有利である。なお、安全上の配慮から不活性ガスで希釈した水素も好ましく用いることができる。ただし、この場合は還元分解に長時間を要することとなる。
一方、設備上の観点等から還元反応を穏やかに進行させることが好ましい場合もある。また、酸化物(例えば六方晶フェライト)である硬磁性粒子は還元されやすいため、還元力の強い還元ガスを用いると、表面に被覆層が形成されている状態であっても硬磁性粒子全体が還元され分解される場合があるため、還元反応は穏やかに進行させることが好ましい。この場合には、比較的還元力の弱い還元ガスを用いることが好ましく、または、還元分解時の雰囲気ガス中の還元ガス濃度を、例えば5体積%以下程度まで低減することも好適である。
上記のように還元反応を穏やかに進行させたい場合に好ましい還元ガスは炭化水素である。上記炭化水素としては、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく特に限定されるものではない。具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、エチレン、アセチレン等の不飽和炭化水素を挙げることができる。取り扱いの容易性の観点からは、メタンおよびエタンが好ましく、メタンを用いることが特に好ましい。また、還元力の調整のために、窒素等の不活性ガスで希釈した炭化水素を用いることも好ましい。また、この態様は使用するガスを不燃性ガスとして扱えることから安全性の観点からも好ましい。なお、本願発明者らは、還元ガスとして炭化水素を使用すると、還元に伴い炭化水素が酸化されることにより生成した炭素または炭化物(本発明において、これらをまとめて「炭素成分という」)が被覆層表面に形成されると推察しており、後述の実施例で示すように、実際に還元分解後の磁性粒子最表面(即ち、硬磁性粒子表面に軟磁性体が被着した構造を有する磁性粒子の最表層)において、炭素成分(グラファイト)の存在が確認されている。したがって、本発明の一態様によれば、本発明の磁性粒子として、軟磁性体が被着した硬磁性粒子上に炭素成分が存在するものを提供することができる。本願発明者らは、還元反応を穏やかに進行させるべき場合に還元ガスとして炭化水素を使用することが好ましい理由は、この炭素成分が過度に還元が進むことを抑制する役割を果たしていることにもあると推察している。
還元ガス含有雰囲気中で還元分解を行う場合、還元ガス含有雰囲気中での加熱温度が低すぎると還元分解に長時間を要し作業性の点で好ましくなく、高すぎると還元ガスが漏れた場合に危険である。以上の観点から、還元ガス含有雰囲気中、特に水素気流中での還元分解では、加熱温度は300℃〜550℃の範囲とすることが好ましい。なお、遷移金属塩を還元分解した際の副生成物を除去するため、排気ガスをスクラバーで処理することもできる。
以上の工程により、硬磁性粒子表面の被覆層中の遷移金属塩を遷移金属に還元することができる。これにより、硬磁性粒子表面に遷移金属を含有する軟磁性相を形成することができる。こうして形成される磁性粒子においては、軟磁性体と硬磁性粒子が交換結合した状態で存在している。形成された磁性粒子中で軟磁性体と硬磁性粒子が交換結合していることは、前述の方法によって確認することができる。なお、前記還元分解後の磁性粒子の硬磁性相中に、該相を形成するための原料として使用した遷移金属塩の一部が未反応で残存している場合には、例えば前述の溶媒を用いて洗浄除去することが、磁気特性の点から好ましい。
前記還元分解後の磁性粒子を前述のように酸化処理(徐酸化処理)し、最表面に酸化物層を形成することは好ましい対応である。これは、還元処理後の粒子は、燃えやすく、不活性ガス中でハンドリングをしなければならず、取り扱いが難しいからである。酸化処理は、公知の徐酸化処理によって行うことができる。ただし前述のように、炭素成分が存在する磁性粒子は、酸化物層を形成することなく良好なハンドリング性を示し得るものである。
以上説明した本発明の製造方法により、本発明の磁性粉末を得ることができる。ただし本発明の磁性粉末は、硬磁性粒子表面に、該硬磁性粒子と交換結合した状態で軟磁性体が被着した磁性粉末の集合体であればよく、本発明の製造方法により得られたものに限定されるものではない。
更に本発明によれば、後述の実施例で示すように、六方晶フェライトの表面に、遷移金属および遷移金属と酸素との化合物からなる群から選ばれる被着物が被着してなる磁性粒子の集合体からなる磁性粉末も提供される。上記磁性粉末は、実施例で示すように六方晶フェライトと比べて低い保磁力を示すことができ、したがって、六方晶フェライトの結晶構造に起因する高い熱的安定性を保持しつつ、優れた記録性を発揮することができるものである。
上記磁性粉末の詳細については、前述の磁性粉末およびその製造方法の説明を参照できる。
本発明の磁性粉末は、前述の第2の技術と異なり支持体上での高温処理を要することなく製造可能であるため、本発明の磁性粉末によれば、結合剤および溶媒と混合し塗布液として支持体上に塗布することにより磁性層を形成することができる。したがって、本発明の磁性粉末は、塗布型磁気記録媒体への適用に好適である。
以下に、本発明の具体的実施例および比較例を挙げるが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[参考例1〜8(Nd2Fe14Bを硬磁性相とした参考例)]
HDDR法で作製されたNd2Fe14B組成を有する硬磁性粒子(Hc:734kA/m、飽和磁化1.42×10-1A・m2/g(142emu/g)、平均結晶粒径100nm)の集合体からなる磁性粉末を粒子表面が濡れるように表1記載の塩溶液(磁性粉末1gに対し溶液0.5g)に浸漬し、窒素雰囲気下110℃で加熱することにより溶媒を除去した。この際、30分毎に塩溶液中の粒子を攪拌する処理を行った。
溶媒除去により得られた乾燥粉体を水素気流中で400℃1時間処理することで、粒子表面の被覆層に含まれるFe塩の還元分解を行った。還元分解中、排気した水素ガスには塩を分解した際の副生成物が含まれていることから、スクラバーで処理を行った。その後、室温まで温度を降温した後、反応容器内の雰囲気を窒素雰囲気に置換して粉体を取り出した。
その後、表1中の参考例3、6の磁性粉末については、窒素雰囲気で70℃昇温し、温度を70℃で保持しながら、窒素と空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて、表面酸化処理(徐酸化処理)を行った。
以上の工程により、Nd2Fe14B硬磁性相をコアとし、Fe含有軟磁性相をシェルとするコア/シェル磁性粒子の集合体からなる磁性粉末が得られた。
[比較例1]
HDDR法で作製されたNd2Fe14B組成を有する硬磁性粒子(Hc:734kA/m、飽和磁化1.42×10-1A・m2/g(142emu/g)、平均結晶粒径100nm)の集合体からなる磁性粉末そのものを、比較例1の磁性粉末とした。
磁性粉末の評価
(1)磁気特性の評価
参考例1〜8で得られたコア/シェル磁性粒子からなる磁性粉末および比較例1の磁性粉末の磁気特性を、玉川製作所製超電導振動式磁力計(VSM)を使用し、印加磁場3184kA/m(40kOe)の条件で評価した。各磁性粉末は、急速酸化を防ぐため窒素雰囲気下でアクリル容器に封入して評価を行った。
(2)組成の評価
HITACHI製のHD2300型STEM(200KV)により、各磁性粉末を構成する磁性粒子のFe/Nd比(原子比)を測定した。
(3)ハンドリング性(空気中での温度上昇)
ドラフト内で各磁性粉末をアルミナ性の坩堝に入れ、空気中で放置したときに温度上昇が生じるか否かを確認した。
評価結果
表1中、比較例1の組成は軟磁性相なしの磁性粒子のFe/Nd組成比であり、Nd2Fe14B組成を有する硬磁性粒子中のFe/Nd組成を示すものである。参考例1〜8の組成の値は、比較例1の値より大きいことから、参考例1〜8では、硬磁性粒子表面に軟磁性相としてのFeが存在していることが確認できる。
参考例1〜8の磁性粉末の保磁力が、比較例1の磁性粉末の保磁力と比べて低かったことから、参考例1〜8の磁性粉末では硬磁性粒子(硬磁性相)表面に硬磁性相と交換結合した軟磁性相が存在することが確認できる。硬磁性相は、高い結晶磁気異方性を有することに起因し熱的安定性に優れるものの、保磁力が高く記録に必要な外部磁場が大きくなり記録しづらい。これに対し本発明によれば、上記のように硬磁性相をコアとし、軟磁性相をシェルとするコア/シェル構造においてコアとシェルを交換結合させることにより、磁性粒子の保磁力を下げることができ、参考例1〜6では80kA/m以上240kA/m未満の範囲内の記録に好適な保磁力を実現することができた。このように本発明によれば、熱的安定性に優れる硬磁性粒子の記録性を改善することができる。
更に、参考例1〜8の磁性粉末の飽和磁化が、比較例1の磁性粉末の飽和磁化と比べて高かったことから、硬磁性相に軟磁性相を交換結合させることにより、飽和磁化を高くすることができることも確認できる。
また、表1の結果から、塩濃度により硬磁性粒子上の軟磁性相量を制御することができ、その結果磁性粉末の保磁力および飽和磁化を調整できること、徐酸化処理を行うことによりハンドリング性を改善できること、がわかる。
[実施例9〜12(バリウムフェライトを硬磁性相とした実施例)]
バリウムフェライト(以下、「BaFe」と記載する)(Hc:270kA/m、飽和磁化5.2×10-2A・m2/g(52emu/g)、平均板径35nm、平均板厚8nm)の粒子の集合体からなる磁性粉末を粒子表面が濡れるように表2記載の塩溶液(BaFe粉末1gに対し溶液1g)に浸漬し、アスピレーターで減圧しながら、溶媒を除去した。この際、30分毎に塩溶液中の粒子を攪拌する処理を行った。
溶媒除去により得られた乾燥粉体を4vol%メタン96vol%窒素気流中で400℃1時間処理することで、粒子表面の被覆層に含まれるCo塩あるいはFe塩の還元分解を行った。
以上の工程により、BaFe硬磁性相をコアとし、Co,Fe含有軟磁性相をシェルとするコア/シェル磁性粒子の集合体からなる磁性粉末が得られた。
[比較例2]
塩溶液に代えてアセトンを使用した点以外、実施例9、10と同様の処理を行い磁性粉末を得た。
[比較例3]
塩溶液に代えてエタノールを使用した点以外、実施例11、12と同様の処理を行い磁性粉末を得た。
上記比較例2および3では、塩溶液を使用しなかったためシェルを持たないBaFe磁性粒子が得られた。
評価方法(磁気特性の評価)
実施例9〜12で得られたコア/シェル磁性粒子からなる磁性粉末および比較例2および3の磁性粉末の磁気特性を、玉川製作所製超電導振動式磁力計(VSM)を使用し、印加磁場3184kA/m(40kOe)の条件で評価した。各磁性粉末は、急速酸化を防ぐため窒素雰囲気下でアクリル容器に封入して評価を行った。
評価結果
上記磁気特性の評価において、実施例9〜12の磁性特性の評価で得られたヒステリシスループには、軟磁性相の保磁力に相当するところに段が見られないことを確認した。この結果から、実施例9〜12において軟磁性相と硬磁性相が交換結合した磁性粒子が得られたことが確認できる。表2中、比較例2、3の磁性粉末が未処理BaFe粉末とほぼ同等の保磁力を示したのに対し、実施例9〜12の磁性粉末の保磁力が未処理BaFe粒子の保磁力(270kA/m)と比べて低かったことは、実施例9〜12の磁性粉末ではBaFe粒子(硬磁性相)表面で軟磁性相が硬磁性相と交換結合した結果、記録性が改善できたことを示す結果である。更に実施例9〜12の磁性粉末は、表2に示すように未処理BaFe粉末と比べて飽和磁化が向上した。この結果も、硬磁性相と軟磁性相とを交換結合させることにより、記録性が改善できたことを示すものである。
評価方法(磁化の時間減衰の傾き、活性化体積)
実施例9〜12および比較例2、3の磁性粉末について、超電導電磁石式振動試料型磁力計(玉川製作所製TM−VSM1450−SM型)を用いて、次の手順で、磁気記録媒体の保存時に受ける反磁界相当の反磁界400Oe(≒32kA/m)と600Oe(≒48kA/m)の磁化の時間減衰の傾き、反磁界500Oe(≒40kA/m)での活性化体積を求めた。各測定において、サンプルとしては磁性粉末0.1gを測定ホルダーに圧密したものを用いた。
(1)磁化の時間減衰の傾き
熱揺らぎ磁気余効の場合、磁化の時間減衰においてΔM/(lnt1−lnt2)は一定となる。磁化は磁場によっても変化することから、磁場一定にした後の磁化を時間毎に測定することによって磁化の時間減衰の傾きを求めた。
具体的には、サンプルに40kOe(≒3200kA/m)の外部磁場をかけ、直流消磁した後、磁石を電流値制御とし目標の反磁界を発生させる電流を供給し、目標の反磁界に外部磁場を漸近させた。これは、外部磁場が変動することにより安定化処理がなされ、磁化の時間減衰が見かけ小さくなることを防ぐためである。
磁場が目標値に達した時間を零とし、1分毎に磁化を25分間測定し、磁化の時間減衰の傾きΔM/(lnt1−lnt2)を求めた。結果を表3に示す。なお、表3にはΔM/(lnt1−lnt2)を40kOeの外部磁場における磁化で割り規格化した値を示す。
(2)活性化体積
200Oe(≒16kA/m)だけ異なる反磁界H1(400Oe)とH2(600Oe)において、それぞれの反磁界で上記(1)と同様の手順で目標の反磁界に達したときから25分後の磁化を求めた。この磁化をそれぞれMBとMEとすると全磁化率Xtot=(MB−ME)/ΔH=(MB−ME)/200となる。
次に可逆磁化率Xrevは、H2から外部磁場を200Oeだけ増加させたときの磁化MFを求め、Xrev=(MF−ME)/ΔH=(MF−ME)/200により求めた。
不可逆磁化率(Xirr)はXirr=Xtot−Xrevにより求めた。
活性化体積(Vact)はVact=kT/(Ms(ΔM/Xirr(lnt1−lnt2))により求めた。ここで、k:ボルツマン定数、T:温度、Ms:サンプルの飽和磁化、である。
以上の工程により、反磁界500Oeにおける活性化体積を求めた。結果を表3に示す。
評価結果
上記方法により測定される磁化の時間減衰の傾きは、磁性粒子の熱的安定性を示す指標である。表3に示したように実施例9〜12の磁性粉末の磁化の時間減衰の傾きが比較例2、3と同等であったことから、硬磁性相に軟磁性相を交換結合させたことによっても磁性粒子の熱的安定性が損なわれず良好に維持されていることが確認できる。
また、表3に示す活性化体積は凝集の有無を示す指標であり、仮に凝集を生じているのであれば千の位以上で変化が現れるが、表3に示すように実施例9〜12の活性化体積は比較例2、3と同等であった。この結果から、硬磁性相に軟磁性相を交換結合させる過程で凝集を生じることがなかったことが確認できる。以上の評価結果から、硬磁性相に軟磁性相を交換結合させたコア/シェル磁性粒子は熱的安定性に優れ、しかも硬磁性相形成前の硬磁性粒子同等の微粒子であるため、高密度記録に好適であることが確認できる。
なお、活性化体積は百の位に誤差を含んでいることが知られている。表3に示す活性化体積の数値としては、実施例9〜12と比較例2、3とは同等であったが、実際には実施例9〜12で調製した磁性粒子は比較例2、3で調製した磁性粒子と比べて、シェルが存在する分、体積が増加していると考えられる。活性化体積の数値上、この体積増加が現れない理由は、上記誤差部分に体積増加分が埋もれているからであると推察している。
還元ガスの適性評価
実施例9〜12において硬磁性粒子として用いたBaFe(Hc:270kA/m、飽和磁化5.2×10-2A・m2/g(52emu/g)、平均板径35nm、平均板厚8nm)の粒子からなるBaFe粉末を、表4記載のガス気流中、表4記載の温度で10分間アニール処理を施した後、前述の方法で飽和磁化を測定した。結果を表4に示す。
評価結果
表4に示すように、水素気流中または一酸化炭素・窒素混合気流中でアニールを施したバリウムフェライトは、アニール温度300℃までは飽和磁化が減少しアニール温度400℃では飽和磁化が増加した。これは水素、一酸化窒素は還元力が強いため、バリウムフェライトが還元分解されたためと推察される。
これに対し、メタン気流中でアニールを施したバリウムフェライトではアニール温度の違いによる飽和磁化の変化はほぼ見られなかった。これは、メタン気流中ではバリウムフェライトは還元分解されず安定であることを示す結果と考えられる。
本発明の製造方法により硬磁性相と軟磁性相が交換結合したコア/シェル磁性粒子を製造する際には、硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成した後に還元ガス雰囲気中での還元分解を行うため、上記評価のように硬磁性粒子全表面が還元ガスに晒されることはないが、上記評価結果からバリウムフェライトは還元分解されやすい性質を有すると推察されるため、還元力の強い還元ガスを用いると、被覆層下であっても還元分解され飽和磁化等の磁気特性が変化する可能性があると考えられる。したがって、バリウムフェライトのような酸化物を硬磁性粒子として使用する場合には、比較的還元力の弱い還元ガスを用いることが好ましく、この点から、炭化水素、特にメタンの使用が好ましいと考えられる。
[実施例13(バリウムフェライトを硬磁性相とした実施例)]
BaFe粒子(Hc:247kA/m(≒3100Oe)、飽和磁化4.6×10-2A・m2/g(46emu/g)、平均板径20.6nm、平均板厚6.1nm、粒子体積1680nm3)の集合体からなる磁性粉末を、6質量%塩化コバルト溶液(溶媒:アセトン)に粒子表面が濡れるように浸漬し(磁性粒子1gに対し溶液3g)、アスピレーターで減圧しながら、溶媒を除去した。この際、30分毎に塩化コバルト溶液中の粒子を攪拌する処理を行った。
溶媒除去により得られた乾燥粉体を4vol%メタン96vol%窒素気流中で350℃17時間処理することで、粒子表面の被覆層に含まれるCo塩の還元分解を行った。
以上の工程により、BaFe硬磁性相をコアとし、Co含有軟磁性相をシェルとするコア/シェル磁性粒子が得られた。
評価方法
(1)走査型透過電子顕微鏡(STEM)による組成評価
得られた磁性粒子と、参照としておよび未処理の原料BaFe粒子について、HITACHI製のHD2300型STEM(200KV)により、Co/Ba比およびCl/Ba比(いずれも原子比)を測定した。結果を下記表5に示す。
(2)X線回折による組成評価
得られた磁性粒子と、参照として未処理の原料BaFe粉末について、SPring−8によるX線回折分析によって組成評価を行った(Nb K edge波長0.65297Å)。結果を図1に示す。X線回折ピークの帰属は、実験過程で入り得る元素に基づきライブラリーを用いて行った。
(3)保磁力の評価
実施例13で得られたコア/シェル磁性粒子からなる磁性粉末の保磁力を、玉川製作所製超電導振動式磁力計(VSM)を使用し、印加磁場3184kA/m(40kOe)の条件で評価したところ、146kA/m(≒1830Oe)であった。磁性粉末は、急速酸化を防ぐため窒素雰囲気下でアクリル容器に封入して評価を行った。
評価結果
表5に示すように、原料BaFe粉末ではCoが検出されなかったのに対し、実施例13で得られた磁性粉末ではCoと、Coと酸素および水素との化合物であるCoHO2が検出された。この結果から、実施例13では、硬磁性粒子表面に軟磁性相としてCoおよびCoHO2が被着していることが確認できる。なお、実施例13において被覆層形成のために使用した遷移金属塩はアルカリ土類金属を含まないため、形成された軟磁性相もアルカリ土類を含まないものである。また、X線回折によりピークが検出されたことから、CoおよびCoHO2は結晶性物質として被着していることも確認できる。
また、実施例13の磁性粉末の保磁力が、原料BaFe粉末の保磁力と比べて低かったことから、実施例13の磁性粉末では、硬磁性相粒子(硬磁性相)表面に硬磁性相と交換結合した軟磁性相が存在することが確認できる。なお、表5に示すように実施例13の磁性粉末ではClの存在も確認されたが、これは軟磁性相の原料として使用した塩化コバルトの一部が未反応で残存しているからであることが、図1に示すX線回折のピークから確認できる。このように原料の遷移金属塩の一部が還元分解後の磁性粒子に残存している場合には、例えば遷移金属塩の溶液調製のために使用した溶媒(実施例13ではアセトン)により洗浄除去することが、磁気特性に優れた磁性粒子を得るために好ましい。なお、図1では原料BaFe粉末のスペクトルにおいてCoおよびCo塩に相当するピークが見られるが、これはバックグラウンドであり原料BaFe粉末にCoおよびCo塩が存在することを示すものではない。
また、図1に示すように、実施例13の磁性粉末においては、原料BaFe粉末には見られない、グラファイトに特異的なピークが検出された。この結果から、炭化水素(メタン)含有雰囲気下で気相還元分解を行うことにより、最表層に炭素成分(グラファイト)が存在する磁性粒子が得られたことが確認できる。
本発明の磁性粉末は安価な塗布型磁気記録媒体用として好適である。

Claims (5)

  1. 磁性粒子を含む遷移金属塩溶液から溶媒を除去することにより、該硬磁性粒子表面に遷移金属塩を含む被覆層を形成すること、
    前記被覆層中の遷移金属塩を還元分解することにより、硬磁性粒子表面に遷移金属を含有する軟磁性を形成すること、
    を含み、
    前記硬磁性粒子は、六方晶フェライト粒子であり、
    前記還元分解を、炭化水素含有ガス存在下で行う、硬磁性粒子表面に前記軟磁性体が被着した磁性粒子の集合体である磁性粉末の製造方法。
  2. 前記軟磁性形成後に酸化処理を行うことを含む請求項に記載の磁性粉末の製造方法。
  3. 前記還元分解を、前記被覆層形成後の硬磁性粒子を前記炭化水素含有ガス気流中で加熱することにより行う請求項またはに記載の磁性粉末の製造方法
  4. 前記炭化水素はメタンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性粉末の製造方法。
  5. 前記硬磁性粒子表面に軟磁性体が被着した磁性粒子上に炭素成分が存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性粉末の製造方法。
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