本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールについて、図を参照して説明する。GSM900の通信信号、GSM1800の通信信号、GSM1900の通信信号の送受信とともに、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access通信システムの三種の通信帯域における送受信、すなわち、六種類の通信信号の送受信を行う高周波モジュールについて説明する。なお、W−CDMAの三種の通信帯域の一例としては、BAND1,BAND2,BAND5の組み合わせがある。ここで、GSM900、GSM1800、GSM1900の送受信回路は、省略することができる。また、これらのGSM系の通信信号とは別の通信システムの送受信数も三つに限るものではない。
また、以下の説明では、スイッチ素子の一例として、スイッチICを用いた場合を示すが、他の構造からなるスイッチ素子にも適用することができる。
まず、本実施形態の高周波モジュール10の回路構成について説明する。図1は本実施形態に係る高周波モジュール10の回路構成を示すブロック図である。
スイッチ素子SWICは、単一の共通端子PIC0と、八個の個別端子PIC11−PIC18を備える。スイッチ素子SWICは、グランドGNDに接続するためのグランド用端子PGNDを備える。グランド用端子PGNDは、高周波モジュール10の外部接続用のグランドポート電極PMGNDに接続している。
スイッチ素子SWICは、駆動電圧印加用端子PICVdd、および複数の制御電圧印加用端子PICVc1,PICVc2,PICVc3,PICVc4を備える。駆動電圧印加用端子PICVddは、高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVddに接続している。制御電圧印加用端子PICVc1,PICVc2,PICVc3,PICVc4は、高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVc1,PMVc2,PMVc3,PMVc4にそれぞれ接続している。
スイッチ素子SWICは、駆動電圧印加用端子PICVddから印加される駆動電圧Vddで駆動する。スイッチIC素子SWICは、複数の制御電圧印加用端子PICVc1,PICVc2,PICVc3,PICVc4にそれぞれ印加される制御電圧Vc1,Vc2,Vc3,VC4の組み合わせにより、単一の共通端子PIC0を、八個の個別端子PIC11−PIC18のいずれか一つに接続する。
共通端子PIC0は、ESD回路を兼ねるアンテナ側整合回路を介して高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PManに接続している。ポート電極PManは、外部のアンテナANTに接続している。
第1個別端子PIC11は、送信側フィルタ12Aを介して、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMtLに接続している。ポート電極PMtLは、GSM850の送信信号またはGSM900の送信信号が外部から入力されるポートである。送信側フィルタ12Aは、GSM850の送信信号およびGSM900の送信信号の2倍高調波および3倍高調波を減衰させ、GSM850の送信信号およびGSM900の送信信号の使用周波数帯域を通過帯域とするフィルタ回路である。
第2個別端子PIC12は、送信側フィルタ12Bを介して、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMtHに接続している。ポート電極PMtHは、GSM1800の送信信号またはGSM1900の送信信号が外部から入力されるポートである。送信側フィルタ12Bは、GSM1800の送信信号およびGSM1900の送信信号の2倍高調波および3倍高調波を減衰させ、GSM1800の送信信号およびGSM1900の送信信号の使用周波数帯域を通過帯域とするフィルタ回路である。
第3個別端子PIC13は、SAWフィルタSAW1の一方端に接続している。第3個別端子PIC13とSAWフィルタSAW1とを接続する伝送線路とグラント電位との間には、整合用のインダクタL5が接続されている。SAWフィルタSAW1は、GSM900の受信信号の周波数帯域を通過帯域とするフィルタであり、平衡−不平衡変換機能を有する。SAWフィルタSAW1の他方端は平衡端子であり、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMrLに接続している。
第4個別端子PIC14は、ダイプレクサDIP1のSAWフィルタSAWir1の一方端に接続している。第4個別端子PIC14とSAWフィルタSAWir1とを接続する伝送線路とグランド電位との間には、整合用のインダクタL6が接続されている。SAWフィルタSAWir1は、GSM1800の受信信号の周波数帯域を通過帯域とするフィルタであり、平衡−不平衡変換機能を有する。
第5個別端子PIC15は、ダイプレクサDIP1のSAWフィルタSAWir2の一方端に接続している。第5個別端子PIC15とSAWフィルタSAWir2とを接続する伝送線路とグランド電位との間には、整合用のインダクタL7が接続されている。SAWフィルタSAWir2は、GSM1900の受信信号の周波数帯域を通過帯域とするフィルタであり、平衡−不平衡変換機能を有する。
SAWフィルタSAWir1,SAWir2は一体形成され、一つのダイプレクサDIP1を形成している。ダイプレクサDIP1のSAWフィルタSAWir1,SAWir2の平衡端子は共通化されている。この共通化された平衡端子は、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMrHに接続している。GSM1800の受信信号およびGSM1900の受信信号は、ポート電極PMrHから外部へ出力される。
第6個別端子PIC16は、デュプレクサDUP1に接続している。第6個別端子PIC16とデュプレクサDUP1との間には、キャパシタC2が接続され、当該キャパシタC2のデュプレクサDUP1側とグランド電位との間にはインダクタL3が接続されている。これらキャパシタC2とインダクタL3により整合回路が構成される。
デュプレクサDUP1は、SAWフィルタSAWut1とSAWフィルタSAWur1とから構成される。第6個別端子PIC16は、SAWフィルタSAWut1の一方端とSAWフィルタSAWur1の一方端の双方に接続する。
本発明の送信側フィルタに対応するSAWフィルタSAWut1は、第1通信信号の送信信号の使用周波数帯域を通過帯域とし、第1通信信号の受信信号の使用周波数帯域が減衰帯域内に設定されている。SAWフィルタSAWut1の他方端は、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMct1に接続している。ポート電極PMct1は、第1送信信号が外部から入力されるポートである。
本発明の受信側フィルタに対応するSAWフィルタSAWur1は、第1通信信号の受信信号の使用周波数帯域を通過帯域とし、第1通信信号の送信信号の使用周波数帯域が減衰帯域内に設定されている。SAWフィルタSAWur1は、平衡−不平衡変換機能を有する。SAWフィルタSAWur1の他方端は、平衡端子であり、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMcr1に接続している。ポート電極PMcr1は、第1受信信号を外部へ出力するポートである。
なお、デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1とSAWフィルタSAWur1とは、それぞれ個別の筐体を有する回路素子で実現される。そして、SAWフィルタSAWut1とSAWフィルタSAWur1とは、具体的には後述するように、離間して配置される。
第7個別端子PIC17は、デュプレクサDUP2に接続している。第7個別端子PIC17とデュプレクサDUP2との間の伝送線路とグランド電位との間には整合用のインダクタL8が接続されている。
デュプレクサDUP2は、SAWフィルタSAWut2とSAWフィルタSAWur2とから構成される。第7個別端子PIC17は、SAWフィルタSAWut2の一方端とSAWフィルタSAWur2の一方端の双方に接続する。
本発明の送信側フィルタに対応するSAWフィルタSAWut2は、第2通信信号の送信信号の使用周波数帯域を通過帯域とし、第2通信信号の受信信号の使用周波数帯域が減衰帯域内に設定されている。SAWフィルタSAWut2の他方端は、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMct2に接続している。ポート電極PMct2は、第2送信信号が外部から入力されるポートである。
本発明の受信側フィルタに対応するSAWフィルタSAWur2は、第2通信信号の受信信号の使用周波数帯域を通過帯域とし、第2通信信号の送信信号の使用周波数帯域が減衰帯域内に設定されている。SAWフィルタSAWur2は、平衡−不平衡変換機能を有する。SAWフィルタSAWur2の他方端は、平衡端子であり、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMcr2に接続している。ポート電極PMcr2は、第2受信信号を外部へ出力するポートである。
なお、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2とSAWフィルタSAWur2とも、それぞれ個別の筐体を有する回路素子で実現される。そして、SAWフィルタSAWut2とSAWフィルタSAWur2とは、具体的には後述するように、離間して配置される。
第8個別端子PIC18は、デュプレクサDUP3に接続している。第8個別端子PIC18とデュプレクサDUP3との間の伝送線路とグランド電位との間には整合用のインダクタL4が接続されている。
デュプレクサDUP3は、SAWフィルタSAWut3とSAWフィルタSAWur3とから構成される。第5個別端子PIC18は、SAWフィルタSAWut3の一方端とSAWフィルタSAWur3の一方端の双方に接続する。
本発明の送信側フィルタに対応するSAWフィルタSAWut3は、第3通信信号の送信信号の使用周波数帯域を通過帯域とし、第3通信信号の受信信号の使用周波数帯域が減衰帯域内に設定されている。SAWフィルタSAWut3の他方端は、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMct3に接続している。ポート電極PMct3は、第3送信信号が外部から入力されるポートである。
本発明の受信側フィルタに対応するSAWフィルタSAWur3は、第3通信信号の受信信号の使用周波数帯域を通過帯域とし、第3通信信号の送信信号の使用周波数帯域が減衰帯域内に設定されている。SAWフィルタSAWur3は、平衡−不平衡変換機能を有する。SAWフィルタSAWur3の他方端は、平衡端子であり、高周波モジュール10の外部接続用のポート電極PMcr3に接続している。ポート電極PMcr3は、第3受信信号を外部へ出力するポートである。
なお、デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3とSAWフィルタSAWur3とも、それぞれ個別の筐体を有する回路素子で実現される。そして、SAWフィルタSAWut3とSAWフィルタSAWur3とは、具体的には後述するように、離間して配置される。
次に、上述の回路構成からなる高周波モジュール10の構造について説明する。図2は、本実施形態に係る高周波モジュール10の構造を説明するための図であり、図2(A)が外観斜視図、図2(B)が天面実装図、および、図2(C)がスイッチ素子SWICの端子配列パターン図である。
高周波モジュール10は、積層体900と、該積層体900の天面に実装された、次に示す各回路素子からなる。
積層体900は、誘電体層を所定数積層し、内層電極が形成されており、以下の回路素子を除く高周波モジュール10を形成する電極パターンを実現している。また、本実施形態では詳細に図示していないが、積層体900の底面には、上述の外部接続用のポート電極がそれぞれ、所定配列で形成されている。
積層体900の天面に実装される回路素子は、上述のスイッチ素子SWIC、SAWフィルタSAW1、ダイプレクサDIP1、デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1,SAWur1、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2,SAWur2、デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3,SAWur3からなる。
この際、デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1,SAWur1は、それぞれ個別筐体で実現された回路素子である。同様に、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2,SAWur2も、それぞれ個別筐体で実現された回路素子である。デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3,SAWur3も、それぞれ個別筐体で実現された回路素子である。
さらに、回路素子としては、上述の整合回路を構成するためのインダクタ等も含む。
デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2、および、デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3は、積層体900を平面視した、一方の端辺に沿って、当該一方の端辺の近傍に実装されている。
デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWur1、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWur2、および、デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWur3は、積層体900を平面視した、一方の端辺と反対側の他方の端辺に沿って、当該他方の端辺の近傍に実装されている。
この構成により、デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1とSAWフィルタSAWur1が離間される。これにより、SAWフィルタSAWut1,SAWur1間の不要な電磁結合および静電結合を抑制し、アイソレーションを向上することができる。すなわち、ハイパワーの第1通信信号の送信信号が、SAWフィルタSAWur1側に漏洩することなく、デュプレクサDUP1としての特性を向上させることができる。
同様に、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2とSAWフィルタSAWur2が離間され、デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3とSAWフィルタSAWur3が離間される。これにより、SAWフィルタSAWut2,SAWur2間、および、SAWフィルタSAWut3,SAWur3間の不要な電磁結合および静電結合を抑制し、アイソレーションを向上することができる。すなわち、ハイパワーの第2通信信号の送信信号が、SAWフィルタSAWur2側に漏洩することなく、デュプレクサDUP2としての特性を向上させることができる。また、ハイパワーの第3通信信号の送信信号が、SAWフィルタSAWur3側に漏洩することなく、デュプレクサDUP3としての特性を向上させることができる。
さらに、積層体900を平面視した中央には、スイッチ素子SWICが実装されている。言い換えれば、デュプレクサDUP1,DUP2,DUP3を構成するSAWフィルタSAWut1,SAWフィルタSAWut2,SAWフィルタSAWut3の実装領域と、デュプレクサDUP1,DUP2,DUP3を構成するSAWフィルタSAWur1,SAWフィルタSAWur2,SAWフィルタSAWur3の実装領域との間に、スイッチ素子SWICが実装される。これにより、デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1,SAWur1間の不要な電磁結合および静電結合をさらに抑制することができる。同様に、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2,SAWur2間の不要な電磁結合および静電結合、およびデュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3,SAWur3間の不要な電磁結合および静電結合をさらに抑制することができる。特に、図2(B)に示すように、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2,SAWur2を結ぶ直線上、およびデュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3,SAWur3を結ぶ直線上には、スイッチ素子SWICが存在するため、不要な電磁結合および静電結合の抑制効果がより大きい。
また、スイッチ素子SWICは、図2(B)、(C)に示すように、駆動電圧印加用端子PICVdd、および複数の制御電圧印加用端子PICVc1,PICVc2,PICVc3,PICVc4からなる電源系端子群が、受信側フィルタであるSAWフィルタSAWur1,SAWur2,SAWur3側となるように、積層体900へ実装される。言い換えれば、これら電源系端子群が、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWut2,SAWut3側に対して、反対側となるように、スイッチ素子SWICは、積層体900へ実装されている。
この構成により、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWut2,SAWut3と電源系端子群とが離間されるので、アイソレーションを高く確保できる。したがって、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWut2,SAWut3からハイパワーの送信信号が漏洩して電源系端子群に入力される駆動電圧および制御電圧に重畳されることを抑制できる。これにより、スイッチ素子SWICの高調波特性等の各スイッチ特性を向上させることができる。
また、本実施形態の構成を用いれば、従来の送信側フィルタと受信側フィルタとが一体化されたデュプレクサと比較して、各送信側フィルタおよび受信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWut2,SAWut3,SAWur1,SAWur2,SAWur3の外形は小型化される。これにより、高周波モジュール10に各回路素子を実装する際の配置自由度が向上し、より確実且つ容易に、高周波モジュール10を小型化することができる。
なお、ダイプレクサDIP1およびSAWフィルタSAW1は、本実施形態では、上述の一方の端辺および他方の端辺に直交する別の端辺に沿って実装されているが、仕様に応じて、他の位置にあってもよい。
次に、第2の実施形態に係る高周波モジュールについて、図を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る高周波モジュール10Aの回路構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態の高周波モジュール10Aは、第1の実施形態に示した高周波モジュール10に対して、スイッチ素子SWICの電源系回路に、ノイズ対策用のインダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4を追加しただけのものであり、他の回路構成は同じである。したがって、回路構成の説明については、異なる箇所のみを説明し、他の箇所の説明は省略する。
スイッチ素子SWICの駆動電圧印加用端子PICVddと高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVddとの間には、インダクタLmが接続されている。
スイッチ素子SWICの制御電圧印加用端子PICVc1と高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVc1との間には、抵抗器R1が接続されている。スイッチ素子SWICの制御電圧印加用端子PICVc2と高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVc2との間には、抵抗器R2が接続されている。スイッチ素子SWICの制御電圧印加用端子PICVc3と高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVc3との間には、抵抗器R3が接続されている。スイッチ素子SWICの制御電圧印加用端子PICVc4と高周波モジュール10の外部接続用の電源系ポート電極PMVc4との間には、抵抗器R4が接続されている。
このような構成の高周波モジュール10Aは、次に示す構造からなる。図4は、本実施形態に係る高周波モジュール10Aの構造を説明するための図であり、図4(A)が外観斜視図、図4(B)が天面実装図、および、図4(C)がスイッチ素子SWICの端子配列パターン図である。図5は本実施形態の高周波モジュール10Aの積み図である。なお、図5は積層体900の各誘電体層を底面側から見た電極パターンを示している。図6(A)は本実施形態の高周波モジュール10Aの積層体900の最上層の実装状態図であり、図6(B)は最下層の外部接続用のポート電極の配列パターン図である。
積層体900の最上層には、第1の実施形態の高周波モジュール10と同様に、スイッチ素子SWIC、SAWフィルタSAW1、ダイプレクサDIP1、デュプレクサDUP1を構成するSAWフィルタSAWut1,SAWur1、デュプレクサDUP2を構成するSAWフィルタSAWut2,SAWur2、デュプレクサDUP3を構成するSAWフィルタSAWut3,SAWur3、および整合回路を構成する各回路素子が実装されている。
さらに、高周波モジュール10Aでは、上述のインダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4が実装されている。これらインダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4は、積層体900を平面視して、スイッチ素子SWICの実装位置と、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWフィルタSAWut2,SAWフィルタSAWut3の実装領域との間に、配列して実装されている。
このような構成により、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWフィルタSAWut2,SAWフィルタSAWut3と、受信側フィルタであるSAWフィルタSAWur1,SAWフィルタSAWur2,SAWフィルタSAWur3との間のアイソレーションをさらに向上させることができる。また、さらに、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWフィルタSAWut2,SAWフィルタSAWut3とスイッチ素子SWICとのアイソレーションもさらに向上させることができる。
この際、スイッチ素子SWICは、電源系端子群が、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWフィルタSAWut2,SAWフィルタSAWut3となっても、スイッチ素子SWICと送信側フィルタ群との間に介在するインダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4により、アイソレーションを確保することができ、送信信号の駆動電圧および制御電圧への重畳を抑制することができる。
さらに、インダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4を実装する際に、図3および図6に示すように、送信側フィルタ群の実装領域側へ、インダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4の外部接続用のポート電極に接続する側(図3、図6の「SB」側)の端子が向くように、インダクタLm、抵抗器R1,R2,R3,R4を実装する。これにより、さらに確実にアイソレーションを向上させ、送信信号の駆動電圧および制御電圧への重畳を抑制することができる。
次に、図5、図6を用いて、積層体900の内部構造および天面の実装パターン、底面の外部接続用のポート電極の配列パターンについて説明する。
積層体900は、14層の誘電体層を積層してなり、各誘電体層には高周波モジュール10Aを構成するための所定の電極パターンが形成されるとともに、層間を接続するビア電極が形成されている。ビア電極は、図5の各層に示す丸印で表されている。なお、以下では、最上層を第1層として、下層側になるほど数値が増加し、最下層を第14層として説明する。
最上層ある第1層の天面、すなわち積層体900の天面には、上述のように、各回路素子を実装するための素子実装用電極が形成されている。
第2層および第3層には引き回しパターン電極が形成されている。第4層には内層グランド電極GNDiが略全面に形成されている。第5層には引き回し電極が形成されている。第6層には所定領域に内層グランド電極GNDiが形成されている。
第7層、第8層、第9層、第10層、第11層、第12層には、送信側フィルタ12A,12B、アンテナ側整合回路11を構成するためのインダクタ用の電極パターンやキャパシタ用の電極パターンが形成されている。
第13層には内層グランド電極GNDiが略全面に形成されている。
最下層である第14層の底面、すなわち積層体900の底面には、外部接続用のポート電極が配列形成されている。図6に示すように、送信側フィルタであるSAWフィルタSAWut1,SAWut2,SAWut3の実装側の一方端辺に対応する第14層の一方端辺には、第1送信信号入力用のポート電極PMct1、第2送信信号入力用のポート電極PMct2、第3送信信号入力用のポート電極PMct3、および、GSM1800/1900の送信信号入力用のポート電極PMtH、GSM850/900の送信信号入力用のポート電極PMtLが配列形成されている。
この際、第1送信信号入力用のポート電極PMct1と、SAWフィルタSAWut1の送信信号入力端子用の実装電極Pst1とは、積層体900を平面視して少なくとも部分的に重なるように形成されている。そして、ポート電極PMct1と実装電極Pst1とは、ビア電極VHt1のみを介して接続されている。この構成により、ポート電極PMct1と実装電極Pst1とは、積層方向に沿って最短距離で接続され、他の回路要素に対して、不要な電磁結合および静電結合が発生しにくい。
また、第2送信信号入力用のポート電極PMct2と、SAWフィルタSAWut2の送信信号入力端子用の実装電極Pst2とは、積層体900を平面視して少なくとも部分的に重なるように形成されている。そして、ポート電極PMct2と実装電極Pst2とは、ビア電極VHt2のみを介して接続されている。この構成により、ポート電極PMct2と実装電極Pst2とは、積層方向に沿って最短距離で接続され、他の回路要素に対して、不要な電磁結合および静電結合が発生しにくい。
また、第3送信信号入力用のポート電極PMct3と、SAWフィルタSAWut3の送信信号入力端子用の実装電極Pst3とは、積層体900を平面視して少なくとも部分的に重なるように形成されている。そして、ポート電極PMct3と実装電極Pst3とは、ビア電極VHt3のみを介して接続されている。この構成により、ポート電極PMct3と実装電極Pst3とは、積層方向に沿って最短距離で接続され、他の回路要素に対して、不要な電磁結合および静電結合が発生しにくい。
なお、これらのビア電極VHt1,VHt2,VHt3は、比較的に近接し、平行に延びる電極となるが、これらの間には、図5の第4層や第13層に示すように、ビア電極間に内層グランド電極GNDiが介在しているので、これらの間の不要な電磁結合および静電結合も抑制されている。
また、受信側フィルタであるSAWフィルタSAWur1,SAWur2,SAWur3の実装側の他方端辺に対応する第14層の他方端辺には、第1受信信号出力用のポート電極PMcr1、第2受信信号出力用のポート電極PMcr2、第3受信信号出力用のポート電極PMcr3が配列形成されている。
この際、第1受信信号出力用のポート電極PMcr1と、SAWフィルタSAWur1の受信信号出力端子用の実装電極Psr1とは、積層体900を平面視して少なくとも部分的に重なるように形成されている。そして、ポート電極PMcr1と実装電極Psr1とは、ビア電極VHr1のみを介して接続されている。この構成により、ポート電極PMcr1と実装電極Psr1とは、積層方向に沿って最短距離で接続され、他の回路要素に対して、不要な電磁結合および静電結合が発生しにくい。そして、上述の第1送信信号用に設けられたポート電極PMct1と実装電極Pst1とがビア電極VHt1のみを介して接続される構成と組み合わせることで、第1通信信号の送信系回路と受信系回路とを大きく離間し、不要な電磁結合および静電結合を、より確実に抑制できる。これにより、第1通信信号の送信系回路と受信系回路との間に高いアイソレーションを実現できる。
また、第2受信信号出力用のポート電極PMcr2と、SAWフィルタSAWur2の受信信号出力端子用の実装電極Psr2とは、積層体900を平面視して少なくとも部分的に重なるように形成されている。そして、ポート電極PMcr2と実装電極Psr2とは、ビア電極VHr2のみを介して接続されている。この構成により、ポート電極PMcr2と実装電極Psr2とは、積層方向に沿って最短距離で接続され、他の回路要素に対して、不要な電磁結合および静電結合が発生しにくい。そして、上述の第2送信信号用に設けられたポート電極PMct2と実装電極Pst2とがビア電極VHt2のみを介して接続される構成と組み合わせることで、第2通信信号の送信系回路と受信系回路とを大きく離間し、不要な電磁結合および静電結合をより確実に抑制できる。これにより、第2通信信号の送信系回路と受信系回路との間に高いアイソレーションを実現できる。
また、第3受信信号出力用のポート電極PMcr3と、SAWフィルタSAWur3の受信信号出力端子用の実装電極Psr3とは、積層体900を平面視して少なくとも部分的に重なるように形成されている。そして、ポート電極PMcr3と実装電極Psr3とは、ビア電極VHr3のみを介して接続されている。この構成により、ポート電極PMcr3と実装電極Psr3とは、積層方向に沿って最短距離で接続され、他の回路要素に対して、不要な電磁結合および静電結合が発生しにくい。そして、上述の第3送信信号用に設けられたポート電極PMct3と実装電極Pst3とがビア電極VHt3のみを介して接続される構成と組み合わせることで、第3通信信号の送信系回路と受信系回路とを大きく離間し、不要な電磁結合および静電結合をより確実に抑制できる。これにより、第3通信信号の送信系回路と受信系回路との間に高いアイソレーションを実現できる。
また、ポート電極PMct1、ポート電極PMct2およびポート電極PMct3と、ポート電極PMcr1、ポート電極PMcr2およびポート電極PMcr3との間となる、第14層を平面視した中央領域には、グランドポート電極PMGNDが形成されている。これにより、実装面においても、送信系回路と受信系回路とのアイソレーションを高く確保することができる。
なお、上述の実施形態では、接続すべきポート電極と実装電極とをビア電極のみで接続する例を示したが、例えば平面視したSAWフィルタの実装領域に対応する程度の範囲内で、所定の内層電極により引き回しを行ってもよい。この構成でも、同じ通信信号の送信系回路と受信系回路との間のアイソレーションを高く確保することができる。
なお、上述の第2の実施形態で示した、積層体900の引き回し電極パターン、実装電極、ポート電極の配列パターンに関しては、第1の実施形態に示した高周波モジュール10にも適用することができる。これにより、第1の実施形態に示した高周波モジュール10においても、積層体900内での送信系回路と受信系回路との間のアイソレーションを高く確保することができる。
また、上述の説明では、デュプレクサを三個用いた例を示したが、一個を含む他の個数の場合でも本発明の構成を適用することができる。複数個の場合には、各デュプレクサを構成する複数の送信側フィルタを一つの筐体に一体形成してもよい。このような一体化を行うことで、各送信側フィルタを個別に実装するよりも、高周波モジュールを小型化することができる。なお、送信側フィルタに限らず、受信側フィルタにおいても同様に、複数の受信側フィルタを一つの筐体に一体形成してもよい。