JP5515779B2 - タイヤ接地面が路面から受ける物理量を予測する方法、タイヤ摩耗の予測方法、タイヤ摩耗の予測装置、および、プログラム - Google Patents
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当該文献1のシミュレーション方法では、タイヤを有限個の要素に分割してトレッドパターン部を有するタイヤモデルを設定するモデル設定ステップと、予め定めた境界条件に基づいてタイヤモデルを仮想路面で転動させるシミュレーションを行ってタイヤモデルの摩耗特性を取得する摩耗シミュレーションステップと、前記摩耗特性に基づいて前記トレッドパターン部のトレッド面を凹ませてタイヤモデルを摩耗状態に修正するモデル修正ステップとを含み、かつ、前記修正されたタイヤモデルを用いてさらに前記摩耗シミュレーションステップが行われる。
前記路面からタイヤの接地面が受ける物理量をシミュレーションタイヤモデルで再現した再現物理量を、予め定められた前記接地面上の複数の地点毎に取得するステップと、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現物理量と、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現物理量とに基づいて、前記対象地点における前記再現物理量の補正をすることにより、前記路面から前記接地面が受ける物理量を予測するステップと、を有する。
路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎に取得するステップAと、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギと、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現摩擦エネルギとに基づいて、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギの補正をするステップBと、
補正された前記再現摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めることにより、タイヤ摩耗を予測するステップCと、を有する。
路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎に取得するステップAと、
取得された前記再現摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めるステップCと、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記摩耗量と、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記摩耗量とに基づいて、前記対象地点における前記摩擦量を補正することにより、タイヤ摩耗を予測するステップDと、を有する。
複数の要素を用いてタイヤを再現したシミュレーションタイヤモデルと前記路面を再現した路面モデルを作成し、前記タイヤモデルを前記路面モデルに接地させて転動シミュレーションを実行させることにより、前記路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギを再現した再現摩擦エネルギを、前記タイヤモデルのタイヤ接地面上の複数の節点毎に取得するステップAと、
取得された前記再現摩擦エネルギに基づいて、前記節点毎における摩耗量を求めるステップCと、
前記複数の節点のそれぞれを対象節点としたとき、前記対象節点における前記摩耗量から定まる前記対象節点の摩耗後の位置と、前記対象節点を取り巻く他の節点における前記摩耗量から定まる前記他の地点における摩耗後の位置とに基づいて、前記対象地点における摩耗後の位置を補正することにより、摩耗タイヤモデルを作成するステップEと、
作成した摩耗タイヤモデルを、前記シミュレーションタイヤモデルとして用いて、前記ステップA、前記ステップCおよび前記ステップEを繰り返すステップFと、を有する。
前記コンピュータを用いて、路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎にコンピュータに取得させる手順と、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギと、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現摩擦エネルギとに基づいて、前記対象地点の前記再現摩擦エネルギを補正することにより、コンピュータに、前記路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギを予測させる手順と、
予測された前記摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めることにより、コンピュータに、タイヤ摩耗を予測させる手順と、を有する。
路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎に取得する取得部と、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギと、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現摩擦エネルギとに基づいて、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギを補正することにより、前記路面から受けるタイヤ接地面の摩擦エネルギを予測する摩擦エネルギ予測部と、
予測された前記摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めることにより、タイヤ摩耗を予測する摩耗予測部と、を有する。
このため、タイヤ摩耗の予測方法、タイヤ摩耗の予測装置において、再現精度の高い摩耗量の予測および摩耗タイヤの予測が可能となる。
図1は、第1の実施形態であるタイヤ摩耗の予測装置10の構成を示す構成図である。
予測装置10は、路面から接地面が受ける摩擦エネルギを予測する。予測装置10は、路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められた接地面上の複数の地点毎に取得する。この後、複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、予測装置10は、対象地点における再現摩擦エネルギと、対象地点を取り巻く他の地点における再現摩擦エネルギとに基づいて、対象地点の再現摩擦エネルギを補正することにより、路面から接地面が受ける摩擦エネルギを予測する。さらに、予測装置10は、補正された再現摩擦エネルギに基づいて地点毎における摩耗量を求めることにより、タイヤの摩耗を予測する。これにより、予測装置10はタイヤの摩耗形態を得る。
路面からタイヤの接地面が受ける物理量は、摩擦エネルギの他に、例えば、路面に対して垂直方向の力、せん断力、路面に対して垂直方向の応力、せん断応力、すべり量、あるいは、単位面積当たりの摩擦エネルギを含む。
以降、シミュレーションタイヤモデル上で得られる再現摩擦エネルギも、単に摩擦エネルギという。
具体的には、対象節点における単位摩擦エネルギの値と、関連節点における単位摩擦エネルギの値との加重平均(下記式(1)参照)を求めることにより、対象節点の単位摩擦エネルギを補正する。このときの加重平均に用いる重み付け係数は、対象節点および関連節点のそれぞれに与えられる。設定される重み付け係数の合計値は1である。この重み付け係数に関して、対象節点の係数が関連節点の係数に比べて大きく、関連節点のうち、重み付け係数に大きい値が与えられる関連節点ほど対象節点に近いことが好ましい。このような重み付け係数の付与により、より高い精度で摩耗量を予測することができる。
E’:補正された対象節点における単位摩擦エネルギ
W0,W1,・・・,Wn:重み付け係数(nは1以上の整数)
E0:対象節点における単位摩擦エネルギ
E1,E2,・・・,En:関連節点における単位摩擦エネルギ
図4(a)に示す関連節点B1〜B4は、対象節点Aから所定の距離R1の範囲内に位置する節点である。図4(b)に示す関連節点B5〜B12は、対象節点Aからの距離が距離R1より大きく距離R2以下の範囲に位置する節点である。図4(c)に示す関連節点B13〜B28は、対象節点Aからの距離が距離R2より大きく距離R3以下の範囲に位置する節点である。
図5(a)に示す関連節点C1〜C8は、対象節点Aと同じ要素を共有する節点である。図5(b)に示す関連節点C9〜C24は、関連節点C1〜C8と同じ要素を共有する節点である。図5(c)に示す関連節点C25〜C48は、関連節点C9〜C24と同じ要素を共有する節点である。
加重平均に用いるグループの関連節点の群は、少なくとも1つ以上あればよい。このとき少なくとも対象節点に最も近いグループの関連節点の群を用いることが好ましい。
また、関連節点を取り出す際、関連節点が路面モデルRMと接触するか否かを判定し、接触する関連節点のみを加重平均に用いることが好ましい。
このように、摩擦エネルギ予測部28は、タイヤ幅方向において距離の範囲を設定することにより、関連節点の群を複数のグループに分け、同じグループの関連節点の群に対して、同じ重み付け係数を与える。この場合、図6(a)に示す関連節点D1,D2に与える重み付け係数は、関連節点D3,D4に与える重み付け係数よりも大きく、関連節点D3,D4に与える重み付け係数は、関連節点D5,D6に与える重み付け係数よりも大きい。これにより、対象節点から離れている関連節点の群の影響が過大になるのを抑制できる。なお、タイヤ幅方向とは、タイヤの回転軸に平行な方向をいい、タイヤ周方向とはタイヤを回転軸の周りに回転させたときのトレッドの回転する方向をいう。
このように、タイヤ幅方向において対象節点Aと同じ要素を共有する関連節点の群、あるいは対象節点Aからみてこの関連節点の群より外側に位置し、この関連節点の群とタイヤ幅方向において同じ要素を共有する関連節点の群をグループ化することにより、関連節点を複数のグループに分ける。さらに、摩擦エネルギ予測部28は、同じグループの関連節点の群に対して、同じ重み付け係数を与える。
関連節点E1,E2に与える重み付け係数は、関連節点E3,E4に与える重み付け係数よりも大きく、関連節点E3,E4に与える重み付け係数は、関連節点E5,E6に与える重み付け係数よりも大きい。これにより、対象節点から離れている関連節点の群の影響が過大になるのを抑制できる。
また、対象節点がトレッドのブロックやリブ等の陸部の端に位置するとき、加重平均に用いる重み付け係数の値を、上記陸部の内部に位置する場合の重み付け係数と異ならせてもよい。
具体的には、メモリ16に記憶されている基準摩耗量および基準単位摩擦エネルギ、摩耗指数を用いて、各節点における摩耗量(トレッドの減った厚さ)を求める。摩耗量は、下記式(2)を用いて単位摩擦エネルギが算出された節点毎に求められる。
×(基準摩耗量)×(摩耗指数) ・・・・・・・・(2)
摩耗指数は、路面と接触するトレッドゴムの、基準とするトレッドゴム種に対する指数である。摩耗し易いトレッドゴムほど指数は大きくなる。この摩耗指数は、例えば、トレッドゴムの最表面に位置し、新品タイヤにおいて路面と接触する表面ゴム層と、摩耗が進展して、はじめて路面と接触を開始する内側ゴム層とが設けられているとき、タイヤの摩耗に伴って摩耗指数が変化することになる。
基準単位摩擦エネルギと基準摩耗量は、基準とするトレッドゴムを供えたタイヤ、または基準とするトレッドゴムの円環状のテストピースを、室内試験機を用いて走行させて、走行距離毎の摩耗量を計測するとともに、このタイヤの転動シミュレーションにより単位摩擦エネルギ算出することにより、得られる。
作成された摩耗タイヤモデルは、摩擦エネルギ取得部26、摩擦エネルギ予測部28、摩耗予測部30、およびモデル変更部32による各処理に再度用いられる。
コンピュータを用いて、路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎にコンピュータに取得させる手順と、
複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、対象地点における前記再現摩擦エネルギと、対象地点を取り巻く他の地点における再現摩擦エネルギとに基づいて、対象地点の再現摩擦エネルギを補正することにより、コンピュータに、路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギを予測させる手順と、
予測された摩擦エネルギに基づいて、地点毎における摩耗量を求めることにより、コンピュータに、タイヤ摩耗を予測させる手順と、を有する。
図8は、タイヤの摩耗の予測方法のフローを示す図である。
まず、設定部34は、オペレータからの入力を受け、この入力に基づいて、タイヤモデルの作成条件やタイヤの転動シミュレーションの走行条件等を含んだ各種条件を設定する。設定された条件はメモリ16に記憶される。
転動シミュレーションでは、タイヤモデルTMに対して空気圧充填処理、接地処理、および転動処理が実行される。
空気圧充填処理では、タイヤモデルTMのタイヤ空洞領域に面する内周面の各節点に、設定された圧力に相当する力が与えられる。
接地処理では、タイヤモデルTMが路面モデルRMに、所定の刻み幅で近づけられて、路面モデルRMとの間での接触の有無が判定される。さらに、接触するときの路面モデルRMからタイヤモデルTMの各節点が受ける力が算出され、この算出した力の合計値が設定された負荷荷重になるまで、タイヤモデルTMが路面モデルRMに近づけられる。
転動処理では、タイヤモデルTMに転動速度0から設定された転動速度まで徐々に速度が付与されることで、設定された転動速度で転動するタイヤモデルTMを作成する。このとき、例えば、路面モデルRMに、所定の転動速度を強制的に与えてタイヤモデルTMを回転させることで、路面モデルRMを転がるタイヤモデルTMの転動状態が再現される。または、タイヤモデルTMの所定の各節点に所定の転動速度が強制的に与えられて、路面モデルRMを転がるタイヤモデルTMの転動状態が再現される。または、図9に示すようなホイールモデルWMを別途作成し、このホイールモデルWMをタイヤモデルTMに組み合わせた車輪モデルを設定し、ホイールモデルWMに所定の転動速度を強制的に与えてタイヤモデルTMを回転させる。これにより、路面モデルRMを転がるタイヤモデルTMの転動状態が再現される。この転動処理では、タイヤモデルTMの各節点に路面モデルRMとの間の摩擦係数が与えられ、タイヤモデルTMの路面モデルRMに対する粘着、滑りの状態が再現される。
こうして、転動シミュレーションが行われ、タイヤモデルTMが路面モデルRMから受ける各種力や変位の結果はメモリ16に記憶される。
図10(a)は、摩擦エネルギの算出のフローを説明する図である。まず、摩擦エネルギ取得部26は、タイヤモデルTMのトレッドゴムの表面に位置する各節点の中から、路面モデルRMと接触して接触力を受ける節点を見出し、この節点について、路面モデルRMから受けるせん断力を含む接触力を取得する(ステップS42)。さらに、摩擦エネルギ取得部26は、上記節点における、路面モデルRMに対する相対変位であるすべり量を取得する(ステップS44)。摩擦エネルギ取得部26は、取得したせん断力とすべり量を乗算し、乗算結果を節点の節点面積で除算することにより、各節点における単位摩擦エネルギを算出する(ステップS46)。ここで、節点面積とは、以下のように定まる面積である。タイヤモデルTMが、例えば、図11に示すように、節点F1,F2,F4,F5を持つ要素X1と、節点F4,F5,F7,F8を持つ要素X2と、節点F5,F6,F8,F9を持つ要素X3と、節点F2、F3,F5,F6を持つ要素X4と、を有する場合を考える。この場合、節点面積は、節点F5を共有して節点とする要素X1〜X4の表面の面積を路面モデルRMと接触する節点の数で除算した値を、合計したものをいう。節点F5は要素X1〜X4で共有されるので、節点F5の節点面積の値は、図11中の要素X1の面積を節点の数4で除算した値と、図11中の要素X2の面積を節点の数4で除算した値と、図11中の要素X3の面積を節点の数4で除算した値と、図11中の要素X4の面積を節点の数4で除算した値とを合計した値となる。すなわち、節点面積の値は、図11中の斜線の面積をいう。
摩擦エネルギ取得部26は、節点毎に算出された単位摩擦エネルギをメモリ16に記憶する。
まず、摩擦エネルギ予測部28は、路面モデルRMと接触する対象節点を選択する(ステップS52)。次に、摩擦エネルギ予測部28は、選択された対象節点を取り巻く関連節点を抽出する(ステップS54)。このとき、関連節点は、図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)あるいは図7(a)〜(c)に示すように、複数のグループに分けて抽出される。
次に、摩擦エネルギ予測部28は、選定した対象節点および抽出した各グループの関連節点における単位摩擦エネルギを取得する(ステップS56)。この後、摩擦エネルギ予測部28は、対象節点および関連節点に対し、加重平均のための重み付け係数を付与し、対象節点および関連節点の単位摩擦エネルギの加重平均を算出することにより、単位摩擦エネルギの補正を行う(ステップS58)。
摩擦エネルギ予測部28は、補正した単位摩擦エネルギを摩擦エネルギの予測結果としてメモリ16に記憶させる。さらに、摩擦エネルギ予測部28は、摩擦エネルギの予測結果を出力装置22から出力させる。
まず、摩耗予測部30は、上述の式(2)に沿った摩耗量を算出する(ステップS62)。この後、モデル変更部32は、算出した摩耗量に応じて、タイヤモデルTMのトレッドから摩耗量に応じて厚さを差し引いてトレッドの厚さを薄くした摩耗タイヤモデルを作成する(ステップS64)。摩耗予測部30は、算出した摩擦量を出力装置22から出力させる。さらに、モデル変更部32は、作成した摩耗タイヤモデルを出力装置22から出力させる。
モデル変更部32は、作成した摩耗タイヤモデルの最も摩耗した部分の摩耗量(初期のタイヤモデルからの摩耗量)が所定の摩耗量を越えたか否かを判定する(ステップS70)。判定の結果が肯定である場合、摩耗寿命を迎えた摩耗タイヤモデルの形状が得られたと判断して、摩耗予測を終了する。
一方、判定の結果が否定である場合、摩耗タイヤモデルが用いられて、転動シミュレーションを実行するために、ステップS30に戻る。
このように、摩耗タイヤモデルを用いた転動シミュレーションおよび摩耗タイヤモデルの作成が繰り返されて、摩耗量の予測が繰り返される。
しかし、予測装置10は、各節点における単位摩擦エネルギを、対象節点の単位摩擦エネルギと関連節点における単位摩擦エネルギとの加重平均を用いて摩耗量を予測し、この摩耗量を用いて摩耗タイヤモデルを繰り返し作成するので、従来のように摩耗タイヤモデルのトレッドの形状に凹部、凸部が生成されることが抑制される。
このように、摩擦エネルギ予測部28が、転動シミュレーションの結果より得られる各節点における単位摩擦エネルギと、関連節点における単位摩擦エネルギとを用いて補正を行うことにより、実際のタイヤにおいてトレッドが受ける単位摩耗エネルギを高い精度で再現することができる。高い精度で再現することができることは、単位摩耗エネルギを用いて予測される摩耗タイヤモデルにおける摩耗形態が、後述するように実際のタイヤと近似することよりいえる。
図12(a)〜(d)は、実際の摩耗したタイヤのトレッドの形状と、予測装置10および図8に示すフロー(本発明の方法)で作成された摩耗タイヤモデルのトレッドの形状と、従来の方法で作成された摩耗タイヤモデルのトレッドの形状と、を比較して示す図である。従来の方法とは、図8中のステップS30の転動シミュレーションを行って得られた各節点における単位摩擦エネルギから直接摩耗量を予測する方法である。すなわち、従来の方法は、図8中のステップS50の摩擦エネルギの補正を行わない方法である。
また、従来の方法及び本発明の方法により作成されたタイヤモデルは、実際に使用したタイヤを再現したモデルである。転動シミュレーションにおいて、実際のタイヤと同じ走行条件を用いた。タイヤモデルの摩耗寿命時の摩耗量は、実際に使用したタイヤの車両装着内側の摩耗量(最大摩耗量)に合わせた。すなわち、実際のタイヤの最大摩耗量を図8中のステップS70における所定の摩耗量として設定した。
図12(b)は、実際のタイヤの実測結果である。トレッドの形状は、レーザ形状測定器を用いて行った。図12(c)は、従来の方法で得られるトレッドの形状を示す。図12(d)は、予測装置10および図8に示すフローを用いて得られるトレッドの形状を示す。図12(c)に示す、従来の方法によるトレッドの形状は、領域Z1,Z2において凹部、凸部が発生していることがわかる。
これに対して、図12(d)に示す、本発明の方法によるトレッドの形状は、凹部、凸部の発生は抑制され、図12(b)に示す実際のタイヤの実測結果に近似することがわかる。
図8に示す第1の実施形態の方法では、予測装置10は、路面モデルRMと接触する節点毎に、加重平均により補正された単位摩擦エネルギを算出し、この算出結果を用いて摩耗量を予測し、予測した摩耗量を用いて摩耗タイヤモデルを作成する。しかし、本変形例は、以下のように摩耗量を予測することもできる。
この後、摩耗予測部30は、図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)、あるいは、図7(a)〜(c)に示すような関連節点を抽出し、対象節点および関連節点における摩耗量に対して加重平均を行うための重み付け係数を付与する。これにより、摩耗予測部30は、対象節点における摩耗量と関連節点における摩耗量との加重平均を算出することにより、補正された摩耗量を算出する。加重平均の方法は、第1の実施形態において用いる単位摩擦エネルギの代わりに摩耗量を用いる以外は、同じ加重平均の方法を用いる。補正された摩耗量は、実施形態1の図10(c)中のステップS62で算出される各節点における摩耗量と同じ値になる。
したがって、図12(d)と同様のトレッドの形状、摩耗形態を得ることができる。
上記変形例1では、各節点(対象節点)における摩耗量に対して、対象節点における摩耗量と、関連節点における摩耗量とを用いた加重平均を求めることで、摩耗量の補正を行い、この補正された摩耗量を用いて摩耗タイヤモデルを作成する。しかし、本変形例は、以下のように摩耗タイヤモデルを作成することができる。
本変形例では、第1の実施形態のように単位摩擦エネルギの補正も、変形例1のように摩耗量の補正も行わない。その代わり、各節点について求めた摩耗量から、摩耗タイヤモデルにおけるトレッド表面の位置(座標値)に対して補正が行われる。
すなわち、摩擦エネルギ予測部28は上記補正をせず、摩耗予測部28も上記補正をしない。その代わり、モデル作成部32が摩耗量に基づいて定まる摩耗タイヤモデルにおけるトレッド表面の位置(座標値)に対して補正を行う。
関連節点は、図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)、あるいは、図7(a)〜(c)に示すような方法で取り出される。さらに、モデル変更部32は、対象節点および関連節点に対して加重平均を行うための重み付け係数を付与する。これにより、モデル変更部32は、対象節点における位置(座標値)と関連節点における位置(座標値)との加重平均を算出することにより、対象節点における補正された位置(座標値)を算出する。加重平均の方法は、第1の実施形態において用いる単位摩擦エネルギの代わりに座標値を用いる以外は、同じ加重平均の方法を用いる。補正された対象節点の位置(座標値)は、第1の実施形態の図10(c)中のステップS64で作成される摩耗タイヤモデルの各節点における座標値と略同じになる。
したがって、図12(d)と同様のトレッドの形状、摩耗形態を得ることができる。
図13は、第2の実施形態であるタイヤの摩耗予測方法のフローを示す図である。第2の実施形態であるタイヤの摩耗予測方法は、図1に示す予測装置10を用いて行われる。
第2の実施形態の方法は、タイヤシミュレーションにおける複数の走行条件を用いてタイヤの摩耗量を予測する。
次に、摩擦エネルギ取得部26は、タイヤモデルTMに対して走行条件を設定する(ステップS120)。このステップは、図8におけるステップ20に該当するものである。走行条件は、空気圧、負荷荷重、タイヤ転動速度、スリップ角、キャンバ角、制駆動を表すスリップ率を含む。走行条件は、転動シミュレーションにおいて複数のシミュレーションを行うように、複数の走行モードの条件も含む。例えば、負荷荷重、転動速度、制動、駆動、旋回、あるいは、タイヤが転動する路面形状等の項目が一組の走行モードとして設定され、複数組の走行モードが設定される。
次に、タイヤモデルの転動シミュレーションの実行(ステップS130)、摩擦エネルギの算出(ステップS140)、摩擦エネルギの補正(ステップS150)が行われる。これらのステップは、図8中におけるステップS30,ステップS40、およびステップS50と同じステップであるので、説明は省略する。
第2の重み付け係数を用いて行う加重平均の算出は、各走行モードにおける補正された単位摩擦エネルギに、対応する走行モードの第2の重み付け係数を乗算し、この乗算結果を走行モード間で合計することにより行われる。
この後、摩耗予測部30は、ステップS180で算出された単位摩擦エネルギの加重平均を用いて摩耗量を求める。さらに、モデル変更部32は、求めた摩耗量を用いて、摩耗タイヤモデルを作成する(ステップS190)。このステップは、図8に示すステップS60と同じであるので、説明は省略する。
一方、判定の結果が否定である場合、作成した摩耗タイヤモデルが用いられて、転動シミュレーションを実行するために、ステップS130に戻る。
このように、摩耗タイヤモデルを用いた転動シミュレーションおよび摩耗タイヤモデルの作成が繰り返されて、複数の走行モードにおける摩耗量の予測が繰り返される。
12 CPU
14 バス
16 メモリ
18 入出力インターフェース部
20 入力操作系
22 出力装置
24 モデル作成部
26 摩擦エネルギ取得部
28 摩擦エネルギ予測部
30 摩耗予測部
32 モデル変更部
34 設定部34
36 処理モジュール群
Claims (17)
- 路面上を転動するタイヤの接地面が前記路面から受ける物理量を予測する方法であって、
前記路面からタイヤの接地面が受ける物理量をシミュレーションタイヤモデルで再現した再現物理量を、予め定められた前記接地面上の複数の地点毎に取得するステップと、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現物理量と、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現物理量とに基づいて、前記対象地点における前記再現物理量の補正をすることにより、前記路面から前記接地面が受ける物理量を予測するステップと、を有することを特徴とするタイヤの接地面が路面から受ける物理量を予測する方法。 - 前記物理量を予測するステップでは、前記対象地点における再現物理量と前記他の地点における再現物理量との第1の加重平均を行うことにより、前記補正をする、請求項1に記載の方法。
- 前記第1の加重平均に用いる重み付け係数は、前記対象地点および前記他の地点のそれぞれに与えられ、前記重み付け係数に関して、前記対象地点の重み付け係数が前記他の地点の重み付け係数に比べて大きく、前記他の地点のうち、前記重み付け係数に大きい値が与えられる地点ほど前記対象地点に近い、請求項2に記載の方法。
- 前記再現物理量を取得するステップは、
前記タイヤを、複数の要素を用いて再現したシミュレーションタイヤモデルと、前記路面を再現した路面モデルを作成するステップと、
前記シミュレーションタイヤモデルと前記路面モデルとの間の摩擦係数を含む条件を定めて、前記シミュレーションタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて転動シミュレーションを実行するステップと、含み、
前記再現物理量を取得するステップでは、前記転動シミュレーションの結果に基づいて、前記再現物理量を取得し、
前記地点は、前記シミュレーションタイヤモデルの前記要素の節点である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 - 前記物理量は、前記路面から前記タイヤ接地面が受ける摩擦エネルギである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記再現物理量を取得するステップは、複数の走行条件毎に前記再現物理量を取得し、
前記物理量を予測するとき、前記補正は前記走行条件毎に行われ、前記走行条件毎に補正された前記再現物理量を前記走行条件毎の重み付け係数を用いて第2の加重平均を行うことにより、前記路面から受けるタイヤ接地面の物理量を予測する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 - タイヤ摩耗の予測方法であって、
路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎に取得するステップAと、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギと、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現摩擦エネルギとに基づいて、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギの補正をするステップBと、
補正された前記再現摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めることにより、タイヤ摩耗を予測するステップCと、を有することを特徴とするタイヤ摩耗の予測方法。 - 前記ステップAは、
複数の要素を用いて前記タイヤを再現したシミュレーションタイヤモデルと、前記路面を再現した路面モデルを作成するステップと、
前記シミュレーションタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて所定の条件で転動シミュレーションを実行させるステップと、含み、
前記ステップAでは、前記転動シミュレーションの結果に基づいて、前記再現摩擦エネルギを取得し、
前記地点は、前記タイヤモデルの前記要素の節点であり、
前記タイヤ摩耗の予測結果に応じて、摩耗したタイヤを複数の要素を用いて再現した摩耗タイヤモデルを作成し、作成した前記摩耗タイヤモデルを前記シミュレーションタイヤモデルとして用いて前記ステップA、前記ステップBおよび前記ステップCを繰り返す、請求項7に記載のタイヤ摩耗の予測方法。 - 前記ステップA、前記ステップBおよび前記ステップCを少なくとも1回行った後における前記摩耗タイヤモデルの前記要素に付与する材料定数は、前記タイヤモデルの前記要素に付与する材料定数の値に対して異なる、請求項8に記載のタイヤ摩耗の予測方法。
- 前記ステップBでは、前記対象地点における再現摩擦エネルギと前記他の地点における再現摩擦エネルギとの第1の加重平均を行うことにより前記補正をする、請求項8または9に記載のタイヤ摩耗の予測方法。
- 前記第1の加重平均に用いる重み付け係数に関して、前記対象地点の重み付け係数が前記他の地点の重み付け係数に比べて大きく、前記他の地点のうち、前記重み付け係数が大きい地点ほど前記対象地点に近い、請求項10に記載のタイヤ摩耗の予測方法。
- 前記ステップAでは、複数の走行条件毎に前記再現摩擦エネルギを取得し、
前記ステップBでは、前記補正は前記走行条件毎に行われ、前記走行条件毎に補正された前記再現摩擦エネルギを前記走行条件毎の重み付け係数を用いて第2の加重平均を行うことにより、前記路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギを予測する、請求項8〜11のいずれか1項に記載のタイヤ摩耗の予測方法。 - さらに、前記シミュレーションタイヤモデルあるいは前記摩耗タイヤモデルに対してタイヤ特性を調べるシミュレーション解析を行うステップを有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載のタイヤ摩耗の予測方法。
- タイヤ摩耗の予測方法であって、
路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎に取得するステップAと、
取得された前記再現摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めるステップCと、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記摩耗量と、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記摩耗量とに基づいて、前記対象地点における前記摩擦量を補正することにより、タイヤ摩耗を予測するステップDと、を有することを特徴とするタイヤ摩耗の予測方法。 - タイヤ摩耗の予測方法であって、
複数の要素を用いてタイヤを再現したシミュレーションタイヤモデルと前記路面を再現した路面モデルを作成し、前記タイヤモデルを前記路面モデルに接地させて転動シミュレーションを実行させることにより、前記路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギを再現した再現摩擦エネルギを、前記タイヤモデルのタイヤ接地面上の複数の節点毎に取得するステップAと、
取得された前記再現摩擦エネルギに基づいて、前記節点毎における摩耗量を求めるステップCと、
前記複数の節点のそれぞれを対象節点としたとき、前記対象節点における前記摩耗量から定まる前記対象節点の摩耗後の位置と、前記対象節点を取り巻く他の節点における前記摩耗量から定まる前記他の地点における摩耗後の位置とに基づいて、前記対象地点における摩耗後の位置を補正することにより、摩耗タイヤモデルを作成するステップEと、
作成した摩耗タイヤモデルを、前記シミュレーションタイヤモデルとして用いて、前記ステップA、前記ステップCおよび前記ステップEを繰り返すステップFと、を有することを特徴とするタイヤ摩耗の予測方法。 - タイヤ摩耗の予測をコンピュータに実行させる、コンピュータが実行可能なプログラムであって、
前記コンピュータを用いて、路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎にコンピュータに取得させる手順と、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギと、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現摩擦エネルギとに基づいて、前記対象地点の前記再現摩擦エネルギを補正することにより、コンピュータに、前記路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギを予測させる手順と、
予測された前記摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めることにより、コンピュータに、タイヤ摩耗を予測させる手順と、を有することを特徴とするプログラム。 - タイヤ摩耗の予測装置であって、
路面からタイヤの接地面が受ける摩擦エネルギをシミュレーションタイヤモデルで再現した再現摩擦エネルギを、予め定められたタイヤ接地面上の複数の地点毎に取得する取得部と、
前記複数の地点のそれぞれを対象地点としたとき、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギと、前記対象地点を取り巻く他の地点における前記再現摩擦エネルギとに基づいて、前記対象地点における前記再現摩擦エネルギを補正することにより、前記路面から受けるタイヤ接地面の摩擦エネルギを予測する摩擦エネルギ予測部と、
予測された前記摩擦エネルギに基づいて、前記地点毎における摩耗量を求めることにより、タイヤ摩耗を予測する摩耗予測部と、を有することを特徴とするタイヤ摩耗の予測装置。
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