JP5459564B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
ところが、モータの各相の電機子巻線の電流が検出されてから、これがd軸電流およびq軸電流に変換され、さらにd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値が出力するまでには、座標変換やPI演算などのための演算時間が必要である。また、ロータ回転角が検出されてから、それに基づいて回転角速度を演算する時間も必要である。この間にもロータは回転するので、それに伴ってd軸およびq軸が回転することになる。その結果、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値が出力されるときには、d軸およびq軸の方向が、モータ電流等の検出時のd軸およびq軸の方向からずれてしまっている。したがって、モータ電流等検出時のd軸およびq軸の方向に対応する非干渉化制御量を用いても、必ずしも、適切な電圧指令値を出力することができない。とくに、回転角速度が大きいときに、この問題が顕在化する。そのため、非干渉化制御が必ずしも期待どおりの効果を生じないうえ、モータ電流が変動的になり、振動や異音が生じるおそれがある。
また、この発明では、モータ電圧を求める際に、電気抵抗および検出電流の積だけでなく、今回および前回のモータ電流変化量とインダクタンスとの積も加味されている。この積は、電流微分項に対応する。この電流微分項を加味することで、モータ電圧が一層正確に求まるので、それに応じて、演算時間の遅れに起因する非干渉化制御量の誤差をより効果的に補償することができる。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ7と、車両の速度を検出する車速センサ8と、車両の舵取り機構3に操舵補助力を与えるモータ1と、このモータ1を駆動制御するモータ制御装置10とを備えている。モータ制御装置10は、トルクセンサ7が検出する操舵トルクおよび車速センサ8が検出する車速に応じてモータ1を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。モータ1は、たとえば、三相ブラシレスDCモータである。
電流検出部11はモータ1の電機子巻線を流れる電流を検出する。より具体的には、電流検出部11は、3相(U相、V相およびW相)の電機子巻線における相電流をそれぞれ検出する電流検出器11u,11v,11wと、電流検出器11u,11v,11wによる電流検出信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換するA/D変換器11u′,11v′,11w′とを有する。
基本目標電流演算部15は、トルクセンサ7により検知される操舵トルクと、車速センサ8により検出される車速とに基づいて、モータ1の基本目標電流I*を演算する。基本目標電流I*は、たとえば、操舵トルクの大きさが大きいほど大きく、車速が小さい程大きくなるように定められる。
dq軸電圧指令値演算部19は、d軸偏差δIdに対応するd軸電圧指令値Vd *とq軸偏差δIqに対応するq軸電圧指令値Vq *とを求める。
回転角速度演算部22は、レゾルバ2により検出されたロータ回転位置の時間変化(微分)を演算することによって、回転角速度ω(rad/sec)を求める。この回転角速度ωは、dq軸電圧指令値演算部19に入力されるようになっている。
dq軸電圧指令値演算部19は、d軸電圧指令値演算部51およびq軸電圧指令値演算部52を有する。d軸電圧指令値演算部51は、d軸偏差δIdを低減するように、d軸偏差のPI演算(以下「d軸PI演算」という。)等に基づいてd軸電圧指令値Vd *を求める。q軸電圧指令値演算部52は、q軸偏差δIqを低減するように、q軸偏差のPI演算(以下「q軸PI演算」という。)等に基づいてq軸電圧指令値Vq *を求める。
d軸PI演算部51aは、d軸偏差のPI演算によりd軸PI演算値Vdoを演算し、このd軸PI演算値Vdoをd軸第1加算部51cに出力する。
d軸第1加算部51cは、d軸PI演算値Vdoにd軸非干渉化制御量Ddを加算する。
d軸補正値演算部51eは、d軸非干渉化制御量Ddを補正するためのd軸補正値ΔDdを求めるものである。この参考形態では、d軸補正値演算部51eは、今演算周期におけるd軸非干渉化制御量Dd(n)(n=1,2,3,…)と前演算周期におけるd軸非干渉化制御量Dd(n-1)との差をd軸補正値ΔDd(=Dd(n)−Dd(n-1))として求める偏差演算部51fを有している。なお、図中、Z−1は信号の前回値を表す。
q軸PI演算部52aは、q軸偏差のPI演算によりq軸PI演算値Vqoを演算し、このq軸PI演算値Vqoをq軸第1加算部52cに出力する。
q軸第2加算部52dは、q軸第1加算部52cの加算結果(=Vqo+Dq)に対して、q軸補正値演算部52eが演算するq軸補正値ΔDqを加算して、q軸電圧指令値Vq *(=Vqo+Dq+ΔDq)を出力する。
図4は、電流値取得および電圧指令値更新の各タイミングを例示する図解図である。演算周期の初期の所定のタイミングでA/D変換器11u′、11v′,11w′から検出電流値が取得され、かつ、レゾルバ2からロータ回転位置(モータ角)が取得される。そして、演算周期の後半の所定のタイミングで電圧指令値Vd *,Vq *が更新される。この電圧指令値Vd *,Vq *は、次の演算周期で更新されるまでは変化しない。
Dd(n+1)−Dd(n)≒Dd(n)−Dd(n-1)=ΔDd(n) …(1)
Dq(n+1)−Dq(n)≒Dq(n)−Dq(n-1)=ΔDq(n) …(2)
この予測された非干渉化制御量の誤差ΔDd(n),ΔDq(n)によって、非干渉化制御量Dd(n),Dq(n)を補正すれば、電圧指令値Vd *,Vq *はその更新タイミングにおいて適値を有することができる。すなわち、次式(3)(4)のとおりであり、これは、図2の構成における第2加算部51d,52dの出力にほかならない。
Vq *=Vqo+Dq(n)+ΔDq …(4)
図5は、モータ制御装置10によるモータ1の制御手順を説明するためのフローチャートである。まず、マイクロコンピュータ12は、トルクセンサ7、車速センサ8、電流検出器11u,11v,11wおよびレゾルバ2による検出値を読み込む(ステップS1)。基本目標電流演算部15は、検出された操舵トルクおよび車速に基づき、目標電流I*を演算する(ステップS2)。dq軸目標電流演算部16は、その目標電流I*に対応するd軸目標電流Id *とq軸目標電流Iq *とを演算する(ステップS3)。dq軸電流演算部17は、検出された相電流Iu,Iv,Iwに対応するd軸電流Idおよびq軸電流Iqを演算する(ステップS4)。d軸目標電流Id *とd軸電流Idとから、d軸偏差演算部18dにおいて、d軸偏差δIdが演算され、q軸目標電流Iq *とq軸電流Iqから、q軸偏差演算部18qにおいて、q軸偏差δIqが演算される(ステップS5)。また、回転角速度演算部22は、レゾルバ2によって検出されるロータ回転位置に基づいて、回転角速度ωを演算する(ステップS6)。
この参考形態では、d軸補正値演算部51eは、前演算周期(n−1)におけるd軸電圧指令値Vd *(n-1)と、今演算周期において検出されたd軸電流Id(n)と、モータ1および駆動回路13を含む電気回路の電気抵抗Rとを用いて、d軸補正値Cdを演算する。より具体的には、d軸補正値演算部51eは、d軸電流Id(n)および電気抵抗Rの積を求める乗算部51gと、この乗算部51gの出力と前演算周期におけるd軸電圧指令値Vd *(n-1)との差をd軸補正値Cd(=Vd *(n-1)−R・Id(n))として求める偏差演算部51hとを有している。この偏差演算部51hが求めたd軸補正値Cdが、d軸減算部51d′に与えられるようになっている。図中、Z−1は信号の前回値を表す。
この実施形態では、d軸補正値演算部51eは、前演算周期(n−1)におけるd軸電圧指令値Vd *(n-1)と、今演算周期において検出されたd軸電流Id(n)と、前演算周期において検出されたd軸電流Id(n-1)と、モータ1および駆動回路13を含む電気回路の電気抵抗Rと、モータ1のd軸インダクタンスLdとを用いて、d軸補正値Cdを演算する。より具体的には、d軸補正値演算部51eは、d軸電流Id(n)および電気抵抗Rの積を求める乗算部51gと、今演算周期と前演算周期とのd軸電流変化ΔId(=Id(n)−Id(n-1))を求めるd軸電流変化演算部51iと、このd軸電流変化演算部51iが求めたd軸電流変化ΔIdにd軸インダクタンスLdを乗じる乗算部51jと、乗算部51g,51jの各出力を前演算周期におけるd軸電圧指令値Vd *(n-1)から差し引いてd軸補正値Cd(=Vd *(n-1)−R・Id(n)−Ld・ΔId)として求める偏差演算部51hとを有している。この偏差演算部51hが求めたd軸補正値Cdが、d軸減算部51d′に与えられるようになっている。図中、Z−1は信号の前回値を表す。
また、前述の参考形態(図2)では、PI演算値を非干渉化制御量で補正し、さらに、その補正後の値をd軸/q軸補正値で補正しているが、非干渉化制御量をd軸/q軸補正値で補正し、この補正された後の非干渉化制御量でPI演算値を補正する構成としてもよい。
また、図8の実施形態では、前演算周期と今演算周期との電流の差を電流変化量として求めているが、他の計算方法で電流変化量を求めてもよい。
また、ロータ回転位置に基づいて回転角速度ωを求める代わりに、次式(5)(6)に示すモータの方程式を利用して回転角速度ωを求めるようにしてもよい。ただし、次式(5)(6)において、pは微分演算子を表す。
Vq−(R+pLq)Iq=ω(Φ+LdId) …(6)
より具体的には、微分項を省略して、次式(7)または(8)に従って回転角速度ωを求めることができる。
ω=(Vd(n-1)−RId)/(−LqIq) …(7)
ω=(Vq(n-1)−RIq)/(Φ+LdId) …(8)
このような演算によって回転角速度ωを求めることにより、応答のよい回転角速度演算が可能になるので、非干渉化制御量をより的確に演算することができるようになる。
また、前述の参考形態および実施形態では、電動パワーステアリング装置の駆動源としてのモータに関する例について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途のモータの制御に対しても適用が可能である。とくに、サーボ系で応答性や追従性が要求される用途でのモータトルク制御に応用すると効果的である。
特許請求の範囲に記載した事項のほかにも、この明細書の記載から、以下のような特徴が抽出され得る。
A1.モータ(1)を駆動するための基本駆動値を演算する基本駆動値演算手段(51a,52a)と、前記モータの非干渉化制御のための非干渉化制御量を演算する非干渉化制御量演算手段(51b,52b)と、この非干渉化制御量演算手段によって演算される非干渉化制御量を補正するための補正値を演算する補正値演算手段(51e,52e)と、前記非干渉化制御量演算手段によって演算される前記非干渉化制御量、および前記補正値演算手段によって演算される前記補正値によって、前記基本駆動値演算手段により演算される前記基本駆動値を修正してモータ駆動値を得る修正手段(51c,51d,52c,52d)と、この修正手段での修正によって得られるモータ駆動値に基づいて前記モータを駆動する駆動手段(20,21,13)とを含む、モータ制御装置。
この構成によれば、非干渉化制御量および補正値によって基本駆動値を修正してモータ駆動値が求められるようになっている。前記補正値を適切に定めることによって、演算時間分の遅れに起因する非干渉化制御量の誤差を補償することができる。これにより、応答性および追従性に優れたモータ制御が可能になり、非干渉化制御本来の効果を充分に享受することができる。
モータ駆動値(たとえば、電圧指令値)が出力されると、その結果としてのモータ電流が検出される。モータを含む電気回路の電気抵抗に当該モータ電流を乗じると、モータに実際に印加されたモータ電圧が求まる。このモータ電圧とモータ駆動値との差が、制御上の誤差となる。そこで、この発明では、モータ駆動値とモータ電圧(電気抵抗および検出電流の積)との差を、非干渉化制御量の誤差を補償するための補正値とするようにしている。これにより、効果的な非干渉化制御が可能になる。
A4.前記モータ制御装置が、所定の演算周期毎に前記モータ駆動値を更新して出力するものであり、前記演算周期毎に、前記モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段(11,17)をさらに含み、前記補正値演算手段が、前記モータ駆動値から、前記モータを含む電気回路の電気抵抗と前記モータ電流検出手段によって検出されたモータ電流との積を差し引き、さらに、今回の演算周期と前回の演算周期との間におけるモータ電流変化量にモータ巻線のインダクタンスを乗じた値を差し引いた値を前記補正値として演算するものである、A1項に記載のモータ制御装置。
Claims (1)
- モータを駆動するためのモータ駆動電圧を所定の演算周期毎に更新して出力するモータ制御装置であって、
前記モータを駆動するための基本駆動値を演算する基本駆動値演算手段と、
前記モータの非干渉化制御のための非干渉化制御量を演算する非干渉化制御量演算手段と、
この非干渉化制御量演算手段によって演算される非干渉化制御量を補正するための補正値を演算する補正値演算手段と、
前記非干渉化制御量演算手段によって演算される前記非干渉化制御量、および前記補正値演算手段によって演算される前記補正値によって、前記基本駆動値演算手段により演算される前記基本駆動値を修正してモータ駆動電圧を得る修正手段と、
この修正手段での修正によって得られるモータ駆動電圧に基づいて前記モータを駆動する駆動手段と、
前記演算周期毎に、前記モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段とを含み、
前記補正値演算手段が、前記モータ駆動電圧から、前記モータを含む電気回路の電気抵抗と前記モータ電流検出手段によって検出されたモータ電流との積を差し引き、さらに、今回の演算周期と前回の演算周期との間におけるモータ電流変化量にモータ巻線のインダクタンスを乗じた値を差し引いた値を前記補正値として演算するものである、
モータ制御装置。
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