JP5454113B2 - 感熱記録体 - Google Patents

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Description

本発明は、高記録濃度で、記録部の耐可塑剤性、耐油性に優れ、しかも高温高湿下でも地肌かぶりが少ない感熱記録体に関する。
無色乃至は淡色のロイコ染料と該ロイコ染料の電子受容体として作用できる呈色剤とを、熱により反応させて発色させることにより記録像を得るようにした感熱記録体がよく知られている。
このような感熱記録体に用いられる呈色剤としては、記録濃度が高い記録部が得られる一方、記録部以外の地肌部では、所謂、地肌かぶりの少ない(地肌部の白色度が高い)ものが求められる。
更に、記録部については、種々の環境における長期間の保存性が求められることから、特に耐油性、耐可塑剤性に優れることが求められる。
このような要件を充足すべく、呈色剤、呈色助剤について、種々の提案がなされている。
例えば、記録部の耐油性、耐可塑剤性に優れた新たな電子受容体として、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種では、記録部の耐可塑剤性、耐油性は改善されるものの、高い記録濃度が得られ難く、高い記録濃度を得るためには増配する必要があるが、そうした場合は高温高湿保存下における白紙部(地肌部)の発色がみられるなど、地肌部の耐湿熱性が劣っている。
また、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを感熱記録材料に顕色性化合物として使用した場合、地肌部の保存性に優れるが低エネルギー発色における発色濃度に劣るという欠点をもつα型結晶と、地肌部の特性は維持されたままで高速発色に適応可能な低エネルギー発色性にも優れるβ型結晶が存在することが記載されている。そして、従来の市販品であるα型結晶ではなく、熱、水等に対する保存安定性及び低エネルギー発色性を付与することが可能であるβ型結晶を使用した感熱記録体を提案している(特許文献2参照)。
更に、4,4’−ビス(p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンまたは1,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデン〕ベンゼンとを併用する感熱記録体が記載されている(特許文献3参照)が、いずれの感熱記録体においても、記録感度及び記録像の保存性について満足のいく特性のものが得られていないのが現状である。
特開平5-147357号公報 特許第4216325号公報 特開平10−067176号公報
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録部の耐油性、耐可塑剤性が改善され、しかも高温高湿保存下でも地肌かぶりが問題とならない、長期保存性に優れた感熱記録体を提供することにある。
本発明の感熱記録体は、支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記呈色剤として、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を使用し、更に下記の特性(1)を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを含有しており、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種の含有量が、感熱記録層全固形分に対して5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは6〜20質量%、最も好ましくは7〜18質量%であり、前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの含有量が、感熱記録層全固形分に対して1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは2〜9質量%である。
(1)Cu―Kα線によるX線回折法における回折角(2θ)において、16.4°に鋭く強い1本のピーク、13°〜16°及び17°〜20.8°に鋭く中間強度の各3本のピーク並びに22°〜23°に少なくとも3本の中間強度のピークを有するX線回折図により特徴づけられる結晶形を有する。
また、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種と前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンとの合計含有量が、前記感熱記録層全固形分に対して、9〜27質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜25質量%である。9質量%未満では記録濃度が低く、27質量%を超えると、発色性成分が多くなってヘッドカスが発生し易くなるからである。
また、前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを、前記呈色剤1質量部に対して0.05〜0.9質量部を含有することが好ましい。
更に、前記支持体と感熱記録層との間に、下塗り層を備えていることが好ましい。
本発明の感熱記録体は、呈色剤として、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含有し、更に上記に記載の特定の結晶形を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを含有することにより、記録部の耐油性、耐可塑剤性を有すると共に、記録濃度、地肌部の耐湿熱性にも優れている。
第1図は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンのβ型結晶のCu―Kα線によるX線回折図を示す。 第2図は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンのα型結晶のCu―Kα線によるX線回折図を示す。
本発明の感熱記録体は、支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記呈色剤として、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含有し、更に上記に記載の特定の結晶形を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを含有するものである。
〔支持体〕
本発明の感熱記録体に用いられる支持体としては、特に限定しないが、例えば、中性または酸性の上質紙、合成紙、透明または半透明のプラスチックフィルム、白色のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体の厚みは特に限定しないが、通常、20〜200μm程度である。
〔感熱記録層〕
感熱記録層中には、ロイコ染料と、呈色剤として、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種が含有されており、更にCu―Kα線によるX線回折法における回折角(2θ)において、16.4°に鋭く強い1本のピーク、13°〜16°及び17°〜20.8°に鋭く中間強度の各3本のピーク並びに22°〜23°に少なくとも3本の中間強度のピークを有するX線回折図により特徴づけられる結晶形を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンが含有されている。
以下、各順に説明する。
<ロイコ染料>
感熱記録層に使用される無色乃至は淡色のロイコ染料としては、各種公知のものが使用でき、具体的には、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、フルオラン等の青発色性染料、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−N−メチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン等の緑発色性染料、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−アニリノラクタム、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン等の赤発色性染料、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2,2−ビス{4−〔6’−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3’−メチルスピロ〔フタリド−3,9’−キサンテン−2’−イルアミノ〕フェニル}プロパン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−トリフルオロメチルフェニル)アミノフルオラン等の黒発色性染料、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等の近赤外領域に吸収波長を有する染料等。勿論、これらに限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用することもできる。
<4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテル>
4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルは、記録部の耐油性、耐可塑剤性に優れているが、記録濃度、耐油性及び耐可塑剤性を満足できるレベルを確保できる量を添加すると、高温高湿保存により地肌かぶりが起こるという問題がある。しかしながら、本発明においては、Cu―Kα線によるX線回折法における回折角(2θ)において、16.4°に鋭く強い1本のピーク、13°〜16°及び17°〜20.8°に鋭く中間強度の各3本のピーク並びに22°〜23°に少なくとも3本の中間強度のピークを有するX線回折図により特徴づけられる結晶形を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンとの併用により、地肌かぶりが問題とならず、優れた記録濃度、記録部の耐油性及び耐可塑剤性を確保することができる。
4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種は、感熱記録層中に、感熱記録層固形分に対して、5〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは6〜20質量%、最も好ましくは7〜18質量%含有される。
<1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン>
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、公知の呈色性化合物であり、例えば本州化学工業(株)製、商品名:BisP−APとして市場から容易に入手できる。後記するように、上記の市販品はα型結晶の結晶形であることが判明している。
本発明で使用する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、特許文献2に開示されている物質であり、β型結晶の結晶形を有する。特許文献2の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
β型結晶の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、下記の方法により製造が可能である。また、日本化薬(株)から購入することもできる。
β型結晶の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、上記したα型結晶の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを、重量比で1〜10倍、好ましくは1〜5倍量のエタノールに完溶させ(必要により加温してもよい)、次いでその溶液に重量比で1〜5倍量の水を撹拌下に滴下して結晶を析出させ、次いで析出した結晶を濾取することにより得られる。即ち、α型結晶の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンをエタノール−水系にて晶析することにより、その結晶形をβ型結晶へと変換することができる。
次に、図を参照しながら1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンのα型結晶及びβ型結晶を詳細に説明する。
第1図及び第2図は、粉末X線回折法によるものであり、Cu−Kα線による回折状態を高速半導体アレイ検出器を使用して記録した図である。第1図は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンのβ型結晶のものであり、回折角(2θ)において、16.4°に鋭く強い1本のピーク、13°〜16°及び17°〜20.8°に鋭く中間強度の各3本のピーク並びに22°〜23°に少なくとも3本の中間強度のピークを示している。なお、本発明の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの回折角の表示において、±0.2°程度の誤差は許容されるものとする。
なお、本明細書において、「鋭く強い1本のピーク」とは、X線回折図において最も強い強度を示すピークを指す。更に、本明細書において、「中間強度」のピークとは、「鋭く強い1本のピーク」の強度に対して中間程度の強度を有するピークを指し、具体的には、「鋭く強い1本のピーク」の強度に対し、おおよそ30〜70%の強度を有するものである。
第2図は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンのα型結晶のものであり、回折角(2θ)において、10°に孤立状態のやや強いピーク、17°〜17.5°に先割れした強いピーク、19°〜23°に比較的強い複数のピークを示している。(回折角の表示において、±0.2°程度の誤差は許容されるものとする。)第1図及び第2図は、両結晶の相違を明らかに示している。
前記の処理において、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンのα型結晶が本発明のβ型結晶に変換されたかどうかは、X線回折図を測定することによって判定されるが、より簡単な判別法としては、試料の融点(キャピラリー使用)を測定することによっても判定される。各結晶形のmp(融点)は、おおよそα型結晶がmp=185〜190℃の範囲内であるのに対し、β型結晶は低温側により広く、おおよそmp=170〜190℃の範囲内である。
本発明においては、Cu−Kα線によるX線回折法によるものであれば、測定機器及び測定条件は特に制限されるものではないが、第1図及び第2図において、粉末X線回折に供した測定機器及び測定条件は次の通りである。
測定機器;X’pert−PRO−MPD(スペクトリス(株)製)
ターゲット;Cu
走査角度;5°〜40.0°
走査速度;0.2°/分
管電圧;45KV
管電流;40mA
入射側スリット;0.04°ソーラースリット、自動可変型ダイバージェンススリット、AS1°
受光側スリット;0.04°ソーラースリット
β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種と併用する事により、未記録部(地肌部)に影響を与えることなく、発色感度を上げることができる。
β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、感熱記録層中、1〜15質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは2〜9質量%である。
また、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種とβ型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの合計含有量が、前記感熱記録層全固形分に対して、9〜27質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンは、平均粒子径0.1〜3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.5μmである。
また、感熱記録層における4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種に対するβ型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの含有比率(質量比)は、0.05〜0.9であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.8であり、最も好ましくは0.2〜0.7である。4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンの割合が多くなるにしたがって、高温高湿保存下の地肌かぶりが起き易くなるからである。一方、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンの割合が少なくなり過ぎると、記録部における耐油性、耐可塑剤性の十分な改善効果が得られないからである。
本発明で使用する呈色剤は、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種であり、更にCu―Kα線によるX線回折法における回折角(2θ)において、16.4°に鋭く強い1本のピーク、13°〜16°及び17°〜20.8°に鋭く中間強度の各3本のピーク並びに22°〜23°に少なくとも3本の中間強度のピークを有するX線回折図により特徴づけられる結晶形を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンであるが、必要に応じて、支障のない範囲で各種公知の材料、例えば活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニル−4’−ベンジルオキシフェニルスルホン、4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4’−メチルフェニルスルホン等のフェノール性化合物、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、N−(p−トルエンスルホニル)カルバモイル酸p−クミルフェニルエステル、N−(p−トルエンスルホニル)カルバモイル酸p−ベンジルオキシフェニルエステル、N−(o−トルオイル)−p−トルエンスルホアミド、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(p−トリル)尿素等の分子内に−SONH−結合を有する有機化合物、p−クロロ安息香酸、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸等の芳香族カルボン酸、及びこれら芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属との塩、更にはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等の有機酸性物質等を併用することができる。
バインダー
感熱記録層用塗液中には通常バインダーとして、各種の樹脂が使用される。かかるバインダーとしては、澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、エチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・ブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の少なくとも1種が、感熱記録層の全固形分に対して5〜50質量%程度、特に10〜40質量%程度の範囲で配合される。
他の成分
本発明の感熱記録体において、感熱記録層は、前記呈色剤、ロイコ染料及びバインダーに加えて、更に、増感剤、保存性改良剤、その他の各種助剤を含有していてもよい。
<増感剤>
本発明の感熱記録層中には増感剤を添加してもよく、例えばステアリン酸アミド、メトキシカルボニル−N−ステアリン酸ベンズアミルド、N−ベンゾイルステアリン酸アミド、N−エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N−メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、p−ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−アセトトルイジド、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p−ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1−イソプロピルフェニル−2−フェニルエタン等が例示され、支障のない範囲で併用できる。
増感剤を使用する場合、その使用量は、増感のために有効な量とすればよいが、通常は、感熱記録層の全固形分に対して2〜40質量%程度、特に5〜25質量%程度の範囲で配合されるのが好ましい。
<保存性改良剤>
本発明の感熱記録層中には保存性改良剤を添加してもよく、例えば2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウムまたは多価金属塩、ビス(4−エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。
保存性改良剤を使用する場合、その使用量は、保存性改良のために有効な量とすればよいが、通常は、感熱記録層の全固形分に対して1〜30質量%程度、特に5〜20質量%程度の範囲で配合されるのが好ましい。
また、感熱記録層用塗液中には必要に応じて各種の助剤を添加することができ、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、消泡剤、着色染料、及び顔料等が適宜添加される。顔料としては、例えばカオリン、クレー、炭酸カルシウム、焼成クレー、焼成カオリン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、珪藻土、微粒子状無水シリカ、活性白土等の無機顔料や、スチレンマイクロボール、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、生澱粉粒子等の有機顔料等が挙げられる。
感熱記録層用塗液
以上のような成分、即ち、ロイコ染料、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種、β型結晶形を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、増感剤、接着成分、更に必要に応じて添加させる添加物を、水媒体に分散させてなる塗工液(感熱記録層用塗液)を調製する。なお、一般には水を分散媒体とし、ボールミル、アトライター、サンドミル等の攪拌・粉砕機によりロイコ染料、呈色剤、増感剤等を一緒にまたは別々に分散する等して得られた材料を配合して調製される。
〔下塗り層〕
本発明では、必要であれば、支持体と感熱記録層との間に、記録感度をより高めるために、下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料、及び/または有機中空粒子、及び/または熱膨張性粒子、並びに接着剤を主成分とする下塗り層用塗液を支持体上に塗布乾燥して形成される。ここで、前記吸油量はJIS K 5101に記載の方法に従い求められる値である。
前記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の一次粒子の平均粒子径は0.01〜5μm程度、特に0.02〜3μm程度であるのが好ましい。吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層全固形分に対して2〜95質量%程度、特に5〜90質量%程度であるのが好ましい。
また、有機中空粒子としては、従来公知のもの、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50〜99%程度の粒子が例示できる。ここで中空率は(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。有機中空粒子の平均粒子径は0.5〜10μm程度、特に1〜3μm程度であるのが好ましい。前記有機中空粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層全固形分に対して2〜90質量%程度、特に5〜70質量%程度であるのが好ましい。
なお、前記吸油性無機顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性無機顔料と有機中空粒子とは前記使用量範囲で使用し、且つ吸油性無機顔料と有機中空粒子の合計量が下塗り層全固形分に対して、5〜90質量%程度、特に10〜80質量%程度であるのが好ましい。
また、前記接着剤としては、前記感熱記録層に使用される接着剤、特に澱粉−酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン系ラテックス等が好ましい。
前記接着剤の使用割合は広い範囲で選択できるが、一般には下塗り層全固形分に対して5〜30質量%程度、特に10〜20質量%程度の量で使用するのが好ましい。
〔保護層〕
本発明の感熱記録体は、感熱記録層上に可塑剤や油等の薬品に対する記録像の保存性、或いは記録適性を改良する目的で保護層を設けることも出来る。
保護層形成用塗液の調製方法については特に限定するものではなく、一般に水を分散媒体とし、澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等のバインダー、及び必要に応じてカオリン、軽質炭酸カルシウム、微粒子シリカ等の顔料を混合、攪拌して調製される。
保護層は、顔料を使用することなく、前記バインダー及び必要に応じて後述の各種助剤の1種以上を使用して形成することができる。
また、保護層は、前記バインダーと前記顔料とを併用して形成することもできる。この場合、前記バインダーの使用量は、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、一般には、保護層の全固形量に対して1〜95質量%程度、特に2〜80質量%程度とするのが好ましい。また、顔料の使用量も、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、一般には、保護層の全固形量に対して1〜95質量%程度、特に2〜90質量%程度とするのが好ましい。
更に、保護層用塗液中には、必要に応じてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤(分散剤、湿潤剤)、消泡剤、カリミョウバンや酢酸アルミニウム等の水溶性多価金属塩等の各種助剤を適宜添加することもできる。また耐水性を一層向上させるためにグリオキザ−ル、硼酸、ジアルデヒド澱粉、エポキシ系化合物等の硬化剤を併用することもできる。
特に、保護層中に、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の常温で液体の紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルを、保護層の全固形量に対して紫外線吸収剤が10〜40質量%程度、特に15〜38質量%程度となるように添加すると光暴露に対して地肌部の黄変や記録像の退色が著しく改良される。
本発明の感熱記録体
下塗り層、感熱記録層及び保護層の形成方法については特に限定されず、例えばエアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の適当な塗布方法により下塗り層用塗液を支持体上に塗布・乾燥した後、感熱記録層用塗液、更に保護層用塗液を前記下塗り層上に塗布・乾燥する等の方法で形成される。
下塗り層を設ける場合、下塗り層用塗液の塗布量は乾燥重量で3〜20g/m程度、好ましくは5〜12g/m程度である。感熱記録層用塗液の塗布量は乾燥重量で2〜12g/m程度、好ましくは3〜10g/m程度である。保護層を設ける場合、保護層用塗液の塗布量は乾燥重量で0.5〜15g/m程度、好ましくは1.0〜8g/m程度の範囲で調節される。
なお、必要に応じて感熱記録体の裏面側にも保護層を設け、一層保存性を高めたり、強光沢を持たせることも可能である。各層塗抹後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理を施したり、或いは感熱記録体の裏面に粘着剤処理を施して粘着ラベルに加工したり、磁気記録層や印刷用塗被層、更には熱転写記録層を設ける等、感熱記録体製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
実施例1
・下塗り層用塗液の調製
球状樹脂粒子分散液(商品名:グロスデール130S、組成:スチレン、平均粒子径:0.8μm、三井化学社製、固形分濃度53質量%)90部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、エンゲルハード社製)の50%水分散液(平均粒子径:0.6μm)120部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571、旭化成ケミカルズ社製、固形分濃度48質量%)10部、酸化澱粉の10%水溶液50部、及び水20部からなる組成物を、混合攪拌して下塗り層用塗液を得た。
・A液調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン100部、鹸化度60モル%、重合度200のポリビニルアルコールの20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン20部、及び水80部からなる組成物(懸濁液)を、サンドミルによりレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmとなる様に処理してA液を得た。
・B液調製
4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物(懸濁液)を、サンドミルによりレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmとなる様に処理してB液を得た。
・C液調製
β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン100部、スルホン変性ポリビニルアルコ−ル(商品名:ゴ−セランL−3266、日本合成化学社製)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン10部、及び水90部からなる組成物(懸濁液)をサンドミルによりレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmとなる様に処理してC液を得た。
・D液調製
シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、前出)の20%水溶液50部、天然油脂系消泡剤の5%エマルジョン2部、及び水98部からなる組成物を、サンドミルによりレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmとなる様に処理してD液を得た。
・感熱記録層用塗液の調製
A液25.0部、B液37.5部、C液12.5部、D液37.5部、微粒子無定形シリカ(商品名:ミズカシールP−527、水澤化学工業社製)10部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42、昭和軽金属工業社製)20部、鹸化度98モル%、重合度1000のポリビニルアルコールの12%水溶液125部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンZ−8−36、固形分濃度36%、中京油脂社製)13.9部、及び水18.6部を混合攪拌して感熱記録層用塗液を調製した。
・感熱記録体の作製
64g/mの上質紙(酸性紙)の一方の面に、下塗り層用塗液を乾燥後の重量が8g/mとなるように塗布乾燥して下塗り層を形成し、感熱記録層用塗液を乾燥後の重量が3.5g/mとなるように塗布乾燥して感熱記録層を形成した後、スーパーキャレンダーを施し、感熱記録体を得た。
実施例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液の量を2.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例4
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を87.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例5
実施例1のB液調製において、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンの代わりに、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例6(参考例)
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を20部に、C液の量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例7(参考例)
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液の量を45部に、C液の量を2部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例1
実施例1のC液調製において、β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの代わりに、α型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例2
実施例1の感熱記録層用塗料の調製において、B液の量を100部に変更し、C液を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例3
実施例1のB液調製において、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンの代わりに、2,2’−〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル(商品名:D−90、日本曹達社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例4
実施例1のC液調製において、β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの代わりに、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン(商品名:D−8、日本曹達製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例5
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、B液を使用せず、C液の量を12.5部から50部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
かくして得られた感熱記録体について以下の評価試験を行い、その結果を表1に記載した。
(1)記録濃度
感熱記録評価機(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用いて、印加エネルギー0.34mJ/ドットにて各感熱記録体を印字し、記録部及び未記録部(地肌部)の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914型、マクベス社)のビジュアルモードで測定した。
数値が大きい程、印字の濃度が濃いことを示しており、記録部については、実用上、1.20以上であることが必要とされる一方、地肌部については数値が小さいほど好ましく、0.2を超えると、地肌かぶりが問題となる。
(2)耐熱性
記録前の各感熱記録体を60℃、30%RH雰囲気下で24時間放置した後の地肌部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914型、マクベス社)のビジュアルモードで測定した。
数値が小さいほど好ましく、0.2を超えると、地肌かぶりが問題となる。
(3)耐湿熱性
記録前の各感熱記録体を40℃、80%RH雰囲気下で24時間放置した後の地肌部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914型、マクベス社)のビジュアルモードで測定した。
数値が小さいほど好ましく、0.2を超えると、地肌かぶりが問題となる。
(4)耐油性
記録濃度測定用で発色させた各感熱記録体の記録部にサラダ油を表面塗布し、24時間放置後に表面をガーゼで拭いた後の記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914型、マクベス社)のビジュアルモードで測定した。また、下記式により、記録部の保存率を求めた。サラダ油塗布処理後の記録濃度0.6以上で、保存率50%以上であれば問題ない。
保存率(%)=測定値(記録濃度)÷処理前の記録濃度×100
(5)耐可塑剤性
ポリカーボネイトパイプ(40mmΦ)上にラップフィルム(商品名:ハイラップKMA−W、三井化学社製)を三重に巻付け、その上に記録濃度測定用で発色させた各感熱記録体を載せ、更にその上にラップフィルムを三重に巻き付けて40℃で24時間放置した後の記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914型、マクベス社)のビジュアルモードで測定した。また、記録部の保存率を、耐油性の場合と同様に、上記式に基づいて、算出した。
処理後の記録濃度0.6以上で、保存率50%以上であれば問題ない。
Figure 0005454113



表からわかるように、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを組み合わせて用いる場合であってもα型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを使用した場合、記録濃度が低下する(比較例1)。
また、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンを単独で30質量%以上含有させることによって記録濃度を確保することができても、地肌部の耐熱性、耐湿熱性が問題となるレベルにまで低下した(比較例2)。
一方、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンまたは4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルとβ型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを組み合わせて用いることにより、地肌部の耐熱性、耐湿熱性を低下させることなく、記録濃度、記録部の耐油性、耐可塑剤性を改善できることがわかる(実施例1〜7)。
また、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンとβ型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを組み合わせて用いる場合であっても、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンの含有量が29質量%と多い場合には、地肌部の耐熱性、耐湿熱性が低下する傾向にあった(実施例4)。
但し、β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン/4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタンの比率が0.9を超えると、記録部耐油性、耐可塑剤性の改良効果が低下し(実施例6)、反対に上記比率が0.05未満では、記録濃度が低下する傾向にある(実施例7)。
以上から、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種と、β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを所定範囲内(好ましくは前者の化合物5〜20質量%、後者の化合物1〜15質量%、より好ましくは前者の化合物6〜20質量%、後者の化合物2〜10質量%、最も好ましくは前者の化合物7〜18質量%、後者の化合物2〜9質量%)で配合すると共に、両化合物の配合量比率(β型結晶のX線回折図を示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン/4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種)を0.05〜0.9の範囲内とすることが好ましいことがわかる。

Claims (5)

  1. 支持体上に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記呈色剤として、4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含有し、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種に対する前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの含有比率が、0.05〜0.90であり、更に下記の特性(1)を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを含有することを特徴とする感熱記録体。
    (1)Cu―Kα線によるX線回折法における回折角(2θ)において、16.4°に鋭く強い1本のピーク、13°〜16°及び17°〜20.8°に鋭く中間強度の各3本のピーク並びに22°〜23°に少なくとも3本の中間強度のピークを有するX線回折図により特徴づけられる結晶形を有する。
  2. 前記感熱記録層は、前記感熱記録層全固形分に対して、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を5〜20質量%、及び前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを1〜15質量%含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
  3. 前記感熱記録層は、前記感熱記録層全固形分に対して、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を7〜18質量%、及び前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを2〜9質量%含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
  4. 前記感熱記録層は、前記4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルメタン及び4,4’−(3−(トシル)ウレイド)ジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種と前記1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの合計含有量が、前記感熱記録層全固形分に対して、9〜27質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
  5. 前記支持体と感熱記録層との間に、下塗り層を更に備える請求項1〜のいずれか1項に記載の感熱記録体。
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