この発明における油圧制御装置は、主に車両に搭載されるとともに、摩擦クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を適宜に係合・解放させてトルクの伝達経路を変更することにより所定の変速段を設定する有段式の自動変速機や、プーリの可動シーブを動作させてベルトを巻き掛けるプーリ溝幅を変化させることにより変速比を連続的に(無段階に)変化させるベルト式無段変速機、あるいは互いに対向して配置した一対のディスクの間にパワーローラを挟み込み、パワーローラと各ディスクとの間でのトルクの伝達箇所を変位させることにより、変速比を連続的に変化させるトロイダル型(もしくはトラクション式)の無段変速機などの自動変速機の油圧制御を対象としている。すなわち、この発明は、上記のような摩擦係合装置や可動シーブあるいはパワーローラなどの動作状態を油圧により制御する際の油圧制御を行う自動変速機の油圧制御装置を対象としている。
具体的には、この発明で対象としている自動変速機の油圧制御装置は、油圧の発生源として、例えば車両の駆動力源であって、自動変速機が連結されている主動力源の出力により駆動されて油圧を発生する主オイルポンプと、主動力源とは別の動力源であって、主動力源に対して独立して運転・制御できる副動力源の出力により駆動されて油圧を発生する副オイルポンプとを備えている。そして、通常時すなわち主動力源が運転されている場合は、主オイルポンプにより油圧を発生させ、主動力源が停止した場合に、副オイルポンプにより油圧を発生させて、それら主オイルポンプあるいは副オイルポンプが吐出するオイルを、自動変速機の油圧作動部および潤滑や冷却のためにオイルを必要とするオイル供給部に供給するように構成されている。このようなこの発明で対象としている自動変速機の油圧制御装置のより詳細な構成を以下の具体例に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、この発明の第1実施例として、この発明で対象とする自動変速機の油圧制御装置HCUにおける油圧回路の一部を示している。図1において、符号1はこの発明における主動力源であり、ここでは、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはLPGエンジンなどの内燃機関を対象とした例を説明する。なお、以下の説明では、主動力源1すなわち内燃機関1をエンジン(Engine)1と記す。
エンジン1の出力側には、例えばトルクコンバータ(図示せず)などを介して、自動変速機の入力軸(図示せず)が連結されるとともに、機械式オイルポンプ2のロータ軸(もしくは入力軸)2aが連結されている。
機械式オイルポンプ2は、駆動力源であるエンジン1の出力トルクが伝達されることにより駆動されて油圧を発生するものであって、エンジン1の出力トルクを得てそのロータ軸2aを駆動することによって吸入口2iからオイルを吸引し、その吸入したオイルを吐出口2oから吐出するように構成されている。すなわち、この発明の主オイルポンプに相当するものである。
この機械式オイルポンプ2のポンプ機構としては、例えば、歯車ポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプや、あるいはピストンポンプなどの各種構成の公知のポンプを採用することができる。そして、この機械式オイルポンプ2は、例えばケーシング(図示せず)内の底部に設けられたオイルパン3に貯留されているオイルを吸入し、吐出口2oから吐出するようになっている。
機械式オイルポンプ2の吐出口2oは、オイルによる冷却や潤滑を行う必要がある自動変速機のオイル供給部4に連通されているとともに、コントロールバルブ5やマニュアルバルブ6、およびセレクトバルブ7を介して、自動変速機の油圧作動部8に連通されている。
オイル供給部4は、例えば、自動変速機内の歯車伝動機構や軸受(いずれも図示せず)など、車両走行中にエンジン1の動力が伝達されて自動変速機が駆動されている際に、オイルによる冷却や潤滑を行う必要がある部位である。したがって、このオイル供給部4に対しては、停車中にエンジン1の運転が停止してそれに伴い自動変速機の駆動が停止する際には、オイルの供給を一時的に休止することが可能な部分である。
コントロールバルブ5は、自動変速機の変速制御の際に、油圧作動部8に供給する油圧、すなわちこの発明における変速油圧を調圧して(具体的には減圧して)制御する調圧弁であって、その入力ポート5iが機械式オイルポンプ2の吐出口2o側に連通され、出力ポート5oが隣接するマニュアルバルブ6の入力ポート6iに連通されている。そして、例えば図示しないソレノイドバルブなどから供給される信号圧によって動作させられて、変速油圧を適宜に調圧して制御する構成となっている。
マニュアルバルブ6は、例えば自動変速機のシフトレバー(図示せず)などと連動して作動する切替弁であって、例えば図示しないソレノイドバルブなどから供給される信号圧によってスプールの位置が切り替えられ、それに対応して自動変速機の各レンジの切り替えが行われるようになっている。そして、その出力ポート6oが、セレクトバルブ7を介して油圧作動部8に連通されている。
セレクトバルブ7は、この発明の切替弁に相当するものであって、機械式オイルポンプ2および後述する電動式オイルポンプ10から油圧作動部8へ到る油路における油圧作動部8の直近に設けられていて、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧と、電動式オイルポンプ10の吐出圧とを選択的に切り替えて油圧作動部8に供給する構成となっている。このセレクトバルブ7の詳細な構成については、電動式オイルポンプ10と共に後述する。
油圧作動部8は、この発明の油圧作動部に相当するものであって、例えば有段式の自動変速機において所定の変速段を設定する際に係合・解放状態に動作させられる摩擦クラッチや摩擦ブレーキ、あるいは車両の駆動力源と自動変速機との間の動力伝達を伝達・遮断するための摩擦クラッチなどの摩擦係合装置、あるいはベルト式無段変速機のプーリの溝幅を変更するために動作させられる可動シーブ、さらにはトロイダル型無段変速機のパワーローラの姿勢を変更するために動作させられる油圧アクチュエータなど、自動変速機の変速制御の際に油圧を用いてその係合・解放状態や動作状態が制御される部分である。
また、車両に搭載される自動変速機は、車両の停止時には、その後の再発進に備えて車両の発進が可能な変速段もしくは変速比を設定しておく必要がある。そのため、車両の停止時であっても、再発進のための所定の変速段(変速比)を設定するのに必要な油圧を油圧作動部8に作用させ続けておく必要がある。すなわち、この油圧作動部8は、停車中のエンジン1停止時にオイルの供給を一時的に休止することが可能な前述のオイル供給部4に対して、停車中のエンジン1停止時であっても、油圧の供給が必要となる、もしくは供給されていた油圧を保持しておくことが必要となる部分である。
したがって、例えば信号待ちなどの一時的な停車時などエンジン1の運転を一時的に休止するいわゆるエコランを実行する際には、機械式オイルポンプ2をエンジン1に代わる他の動力源により駆動すること、もしくはエンジン1に代わる他の動力源により駆動されて油圧を発生させる機械式オイルポンプ2とは別のオイルポンプを設けておくことが必要となる。
そのためのエンジン1に代わる他の動力源として、エンジン1に対して独立して運転可能な動力源、すなわちこの発明における副動力源に相当する電動機(Motor)9が設けられている。そして、その電動機9の出力側に、この発明における副オイルポンプに相当する電動式オイルポンプ10が設けられている。すなわち、電動機9の出力側に電動式オイルポンプ10のロータ軸(もしくは入力軸)10aが連結されている。
電動式オイルポンプ10は、駆動力源である電動機9の出力トルクが伝達されることにより駆動されて油圧を発生するものであり、電動機9の出力トルクを得てそのロータ軸10aを駆動することによって吸入口10iからオイルを吸引し、その吸入したオイルを吐出口10oから吐出するように構成されている。この電動式オイルポンプ10のポンプ機構としては、前述の機械式オイルポンプ2と同様に、例えば、歯車ポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプや、あるいはピストンポンプなどの各種構成の公知のポンプを採用することができる。そして、この電動式オイルポンプ10も、例えばケーシング(図示せず)内の底部に設けられたオイルパン3に貯留されているオイルを吸入し、吐出口10oから吐出するようになっている。
電動式オイルポンプ10の吐出口10oは、前述のオイル供給部4には連通されず、セレクトバルブ7のみを介して、自動変速機の油圧作動部8に直接連通されている。前述したように、オイル供給部4では、停車中のエンジン1の停止時に、オイルの供給を一時的に休止することが可能である。そのため、停車中のエンジン1停止時には、最低限油圧作動部8にのみに再発進時の変速比を維持しておくために必要な油圧を供給し続ければよい、もしくは再発進時の変速比を維持しておくために必要な油圧を保持しておけばよい。このことに着目して、この発明における油圧制御装置HCUでは、上記のように電動式オイルポンプ10によるオイルの供給先を油圧作動部8に限定することにより、電動機9および電動式オイルポンプ10の小型・軽量化を図っている。
セレクトバルブ7は、2つの系統から入力される油圧のうち、高圧の方を選択して出力側に供給する形式のいわゆるマックスセレクト型の切替弁である。具体的には、このセレクトバルブ7は、第1,第2の2つの入力ポート7a,7bと、それら各入力ポート7a,7bに対応する第1,第2の2つのパイロットポート7c,7dと、出力ポート7oと、ドレーンポート7eとを有している。そして、機械式オイルポンプ2側の油圧の供給系統として、第1入力ポート7aおよび第1パイロットポート7cに、マニュアルバルブ6の出力ポート6oがそれぞれ連通されている。一方、電動式オイルポンプ10側の油圧の供給系統として、第2入力ポート7bおよび第2パイロットポート7dに、電動式オイルポンプ10の吐出口10oが連通されている。そして、出力ポート7oに油圧作動部8が連通されている。
また、このセレクトバルブ7は、各パイロットポート7c,7dに作用する油圧の大きさに応じてスプール(図示せず)の位置が切り替わるようになっている。具体的には、第1パイロットポート7cに作用する油圧が第2パイロットポート7dに作用する油圧よりも高い場合は、その第1パイロットポート7cに作用する油圧によりスプールが第2パイロットポート7d側(図1での右側)に押圧されて、第1入力ポート7aと出力ポート7oとが連通されかつ第2入力ポート7bとドレーンポート7eとが連通されるように構成されている。
そして、第2パイロットポート7dに作用する油圧が第1パイロットポート7cに作用する油圧よりも高い場合には、その第2パイロットポート7dに作用する油圧によりスプールが第1パイロットポート7c側(図1での左側)に押圧されて、第2入力ポート7bと出力ポート7oとが連通されかつ第1入力ポート7aが閉止されるように構成されている。
したがって、このセレクトバルブ7は、機械式オイルポンプ2から油圧作動部8へ到る油路と電動式オイルポンプ10から油圧作動部8へ到る油路とが合流する個所であって、油圧作動部8の直前の個所に設けられていて、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧とする油圧が電動式オイルポンプ10の吐出圧よりも高い場合に、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧とする油圧を油圧作動部8に供給しかつ電動式オイルポンプ10から吐出されるオイルをドレーンポート7eから排出し、反対に、電動式オイルポンプ10の吐出圧が機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧とする油圧よりも高い場合に、電動式オイルポンプ10で発生させた油圧を油圧作動部8に供給しかつ機械式オイルポンプ2側から油圧作動部8への油路を遮断する構成となっている。
そして、上記の油圧制御装置HCUにおけるソレノイドバルブあるいは電動機9などを電気的に制御するための電子制御装置(ECU)11が設けられている。この電子制御装置11は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータ等に基づいて所定のプログラムに従って演算を行い、ソレノイドバルブあるいは電動機9などの動作状態の制御を実行するように構成されている。また、この電子制御装置11に対しては、例えばオイルの温度を検出する油温センサ(図示せず)や各回転部材の回転数を検出する回転数センサ(図示せず)等の検出信号が入力されるようになっている。
このように、エンジン1の出力により駆動されて油圧を発生させる機械式オイルポンプ2とは別に、電動機9の出力により駆動されて油圧を発生させる電動式オイルポンプ10を設け、それら機械式オイルポンプ2側の油圧の供給系統と電動式オイルポンプ10側の油圧の供給系統とを、上記のようないわゆるマックスセレクト型のセレクトバルブ7を介して油圧作動部8に連通させることにより、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧と電動式オイルポンプ10の吐出圧との高い方を自動的に選択して、その選択した側の供給系統の油圧を油圧作動部8に供給することができる。
すなわち、図2の(a)に示す状態のように、エンジン1の運転中にそのエンジン1の出力により機械式オイルポンプ2が駆動されて油圧を発生している場合は、その機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧(仮にクラッチ圧と呼ぶことにする)Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも高くなる。したがって、セレクトバルブ7では、第2パイロットポート7dに作用する油圧(すなわち吐出圧Pm)よりも第1パイロットポート7cに作用する油圧(すなわちクラッチ圧Pc)の方が高くなり、その分だけセレクトバルブ7のスプールにそれを第2パイロットポート7d側(図2での右側)に押圧する力が作用する。そのため、スプールが第2パイロットポート7d側に移動して第1入力ポート7aと出力ポート7oとが連通させられる。また、第2入力ポート7bはドレーンポート7eに連通させられる。その結果、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcが、マニュアルバルブ6およびセレクトバルブ7を介して油圧作動部8に供給される。
なお、機械式オイルポンプ2が駆動されている場合は電動式オイルポンプ10は駆動する必要がないので、その電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmは0となる。仮に電動式オイルポンプ10を駆動して油圧を発生させたとしても、その吐出圧Pmの最大値は機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcよりも低く設定されるため、機械式オイルポンプ2が駆動されて安定してクラッチ圧Pcを発生している状態では、「Pc>Pm」となる。また、この状態で電動式オイルポンプ10を駆動して油圧を発生させた場合は、電動式オイルポンプ10からの油圧はセレクトバルブ7のドレーンポート7eから排圧されるので、電動式オイルポンプ10はほとんど仕事をしない。すなわち電動機9にはほとんど負荷が掛かからず、消費電力量も極僅かである。
図2の(b)は、上記のようにエンジン1の出力により機械式オイルポンプ2を駆動して油圧作動部8に油圧を供給している状態から、例えばエコランの実行時にエンジン1が停止させられた際に、電動機9の出力により電動式オイルポンプ10を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態を示している。
すなわち、エンジン1の停止時に電動機9を運転し、その電動機9の出力により電動式オイルポンプ10が駆動されて油圧を発生している場合は、その電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmが機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcよりも高くなる。したがって、セレクトバルブ7では、第1パイロットポート7cに作用する油圧(すなわちクラッチ圧Pc)よりも第2パイロットポート7dに作用する油圧(すなわち吐出圧Pm)の方が高くなり、その分だけセレクトバルブ7のスプールにそれを第1パイロットポート7c側(図2での左側)に押圧する力が作用する。そのため、スプールが第1パイロットポート7c側に移動して第2入力ポート7bと出力ポート7oとが連通させられる。なお、第1入力ポート7aおよびドレーンポート7eは閉じられる。その結果、電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmが、セレクトバルブ7のみを介して油圧作動部8に供給される。
前述の機械式オイルポンプ2を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する場合は、機械式オイルポンプ2から油圧作動部8へ到る油路においては、コントロールバルブ5やマニュアルバルブ6の周辺で不可避的にオイル漏れが発生する。また例えば切替弁やストップ弁などを特別に設けなければ、機械式オイルポンプ2で発生させられた油圧は自動変速機内のオイル供給部4などへも供給されるため、そのオイル供給部4の周辺でも不可避的にオイル漏れが発生する。
これに対して、上記のように電動式オイルポンプ10を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する場合は、電動式オイルポンプ10で発生させられた油圧は、セレクトバルブ7の第2入力ポート7bと出力ポート7oとを通って、油圧作動部8に直接供給される。したがって、電動式オイルポンプ10から油圧作動部8へ到る油路において、不可避的にオイル漏れが発生する可能性が有るのは、ほぼセレクトバルブ7周辺だけになる。すなわち、エンジン1の運転時に機械式オイルポンプ2で発生させた油圧を油圧作動部8に供給する場合と比較して、エンジン1の停止時に電動式オイルポンプ10で発生させた油圧を油圧作動部8に供給する場合は不可避的なオイル漏れが少なくなる。そのため、電動式オイルポンプ10に要求されるポンプ容量が小さくて済み、その分、電動式オイルポンプ10を小型・軽量化することができる。
上記のように例えばエコランの実行時に、機械式オイルポンプ2を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態と、電動式オイルポンプ10を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態とを切り替える際の各油圧等の変化を図3のタイムチャートに示してある。図3において、時刻t0の時点でエコランが開始されると、エンジン1の運転が停止されるとともに、電動機9の運転指令Pm_com(破線)が出力される。エンジン1の回転数Ne(一点鎖線)が低下するのに伴って、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧とするクラッチ圧Pc(二点鎖線)および油圧作動部8に実際に作用する実油圧Pc_real(実線)が低下するが、クラッチ圧Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも低くなる時刻t1の時点で、実油圧Pc_realがクラッチ圧Pcから吐出圧Pmに切り替わる。
その後、エコランを終了するためにエンジン1の運転が再開されると、エンジン回転数Neが上昇するのに伴って、クラッチ圧Pcが上昇する。そしてクラッチ圧Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも高くなる時刻t2の時点で、実油圧Pc_realが吐出圧Pmからクラッチ圧Pcに切り替わる。そして、エンジン回転数Neが通常時のアイドリング回転数に復帰する時刻t3の時点で電動機9の運転指令Pm_comが解除されて、エコランが終了する。
上記のようなクラッチ圧Pcと吐出圧Pmとの間の切り替えは、前述したようにセレクトバルブ7が機能することにより、それらクラッチ圧Pcと吐出圧Pmとの大小関係に応じて自動的に切り替わる。したがって、特に制御を行うことなく、またそのために複雑な構成・機構等を設けることなく、機械式オイルポンプ2と電動式オイルポンプ10との間で油圧の発生源の切り替えを容易に行うことができる。
(第2実施例)
図4は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第2実施例における油圧回路の一部を示している。この図4に示す例は、前述の第1実施例の構成におけるセレクトバルブ7に対して、電動式オイルポンプ10の非作動時に機械式オイルポンプ2側の油圧の供給系統と油圧作動部8とを連通させる位置にスプールを押圧するスプリング12sを有するセレクトバルブ12を用いた構成の一例である。その他の各部の構成は、基本的に前述の第1実施例で図1に示したものと同じである。したがって、以降の説明においては、前出の図面で説明したものと構成が同じものについては、その前出の図面と同じ参照符号を付けて詳細な説明は省略する。また、オイル供給部4、電子制御装置11等の記載も省略している。
図4において、この第2実施例の構成におけるセレクトバルブ12は、前述のセレクトバルブ7と同様に、この発明の切替弁に相当するものであって、機械式オイルポンプ2および電動式オイルポンプ10から油圧作動部8へ到る油路における油圧作動部8の直近に設けられていて、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧と、電動式オイルポンプ10の吐出圧とを選択的に切り替えて油圧作動部8に供給する構成となっている。
このセレクトバルブ12は、2つの系統から入力される油圧のうち、いずれか一方を選択して出力側に供給する形式の切替弁であって、2つの入力ポート12a,12bと、それら各入力ポート12a,12bに対応する2つのパイロットポート12c,12dと、出力ポート12oと、ドレーンポート12eとを有している。そして、機械式オイルポンプ2側の油圧の供給系統として、第1入力ポート12aおよび第1パイロットポート12cに、マニュアルバルブ6の出力ポート6oがそれぞれ連通されている。一方、電動式オイルポンプ10側の油圧の供給系統として、第2入力ポート12bおよび第2パイロットポート12dに、電動式オイルポンプ10の吐出口10oが連通されている。そして、出力ポート12oに油圧作動部8が連通されている。
そして、スプールに第1パイロットポート12cから第2パイロットポート12dへ向けた押圧力を作用させるスプリング12sが設けられている。すなわち、このスプリング12sは、スプールに、それを第1パイロットポート12cから第2パイロットポート12dへ押圧する方向の弾性力を作用させる弾性部材である。
したがって、このセレクトバルブ12は、第1パイロットポート12cに作用する油圧とスプリング12sの弾性力に相当する圧力との合成圧力が、第2パイロットポート12dに作用する油圧よりも高い場合は、その合成圧力によりスプールが第2パイロットポート12d側(図4での右側)に押圧されて、第1入力ポート12aと出力ポート12oとが連通されかつ第2入力ポート12bとドレーンポート12eとが連通される。
一方、第2パイロットポート12dに作用する油圧が、第1パイロットポート12cに作用する油圧とスプリング12sの弾性力に相当する圧力との合成圧力よりも高い場合には、その第2パイロットポート12dに作用する油圧によりスプールが第1パイロットポート12c側(図4での左側)に押圧されて、第2入力ポート12bと出力ポート12oとが連通されかつ第1入力ポート12aが閉止される。
すなわち、第1パイロットポート12cに作用する油圧すなわち機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧をPcとし、電動式オイルポンプ10の吐出圧をPmとし、スプリング12sの弾性力に相当する圧力をPsとすると、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcとスプリング12sの弾性力に相当する圧力Psとの合成圧力は「Pc+Ps」であるので、このセレクトバルブ12における調圧式は、
Pc+Ps=Pm
となる。
したがって、合成圧力「Pc+Ps」と吐出圧Pmとの大小関係が、
Pc+Ps>Pm
の場合に、セレクトバルブ12のスプールが第2パイロットポート12d側に移動し、第1入力ポート12aと出力ポート12oとが連通されて機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧とする油圧Pcを油圧作動部8に供給することになる。そして、合成圧力「Pc+Ps」と吐出圧Pmとの大小関係が、
Pc+Ps<Pm
の場合に、セレクトバルブ12のスプールが第1パイロットポート12c側に移動し、第2入力ポート12bと出力ポート12oとが連通されて電動式オイルポンプ10で発生させた油圧すなわち電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmを油圧作動部8に供給することになる。
この第2実施例の構成において、機械式オイルポンプ2を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態と、電動式オイルポンプ10を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態とを切り替える際の各油圧等の変化を図5のタイムチャートに示してある。前述の図3に示した第1実施例の場合と同様に、時刻t0の時点でエコランが開始されると、エンジン1の運転が停止されるとともに、電動機9の運転指令Pm_com(破線)が出力される。エンジン1の回転数Ne(一点鎖線)が低下するのに伴って、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pc(二点鎖線)および油圧作動部8に実際に作用する実油圧Pc_real(実線)が低下する。
そして、この第2実施例の構成では、クラッチ圧Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも低くなって実油圧Pc_realがクラッチ圧Pcから吐出圧Pmに切り替わる時刻t4が、スプリング12sの弾性力に相当する圧力Psが第1パイロットポート12c側に作用する分だけ、前述の第1実施例における時刻t1よりも遅くなっている。一方、その後エコランを終了するためにエンジン1の運転が再開され、エンジン回転数Neが上昇するのに伴ってクラッチ圧Pcが上昇し、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも高くなって実油圧Pc_realが吐出圧Pmからクラッチ圧Pcに切り替わる時刻t5が、同様にスプリング12sの弾性力に相当する圧力Psが第1パイロットポート12c側に作用する分だけ、前述の第1実施例における時刻t2よりも早くなっている。
したがって、この第2実施例の構成では、電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmが油圧作動部8に作用する実油圧Pc_realとなる時刻t4から時刻t5までの期間が、前述の第1実施例の場合に電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmが油圧作動部8に作用する実油圧Pc_realとなる時刻t1から時刻t2までの期間よりも短くなる。すなわち、電動式オイルポンプ10が負荷運転される時間が短縮される。
そのため、この第2実施例の構成によれば、エコランの実行時に、電動式オイルポンプ10の負荷運転時間が短縮され、電動機9の消費電力を低減することができる。また、エコランからの復帰時には、早期にすなわちエンジン1の回転数が低い間に、油圧発生源が電動式オイルポンプ10から機械式オイルポンプ2に切り替わるため、エコランからの復帰時における油圧発生源の切り替えの遅れを防止することができる。そして、エンジン1が運転される通常時には、スプリング12sの弾性力により、機械式オイルポンプ2から油圧作動部8に到る油路が確実に形成されるため、クラッチ圧制御の際の圧力損失を抑制することができ、また制御応答性も向上させることができる。
(第3実施例)
図6は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第3実施例における油圧回路の一部を示している。この図6に示す例は、前述の第1実施例の構成におけるセレクトバルブ7に対して、電動式オイルポンプ10の非作動時に電動式オイルポンプ10側の油圧の供給系統と油圧作動部8とを連通させる位置にスプールを押圧するスプリング13sを有するセレクトバルブ13を用いた構成の一例である。
図6において、この第3実施例の構成におけるセレクトバルブ13は、前述のセレクトバルブ7と同様に、この発明の切替弁に相当するものであって、機械式オイルポンプ2および電動式オイルポンプ10から油圧作動部8へ到る油路における油圧作動部8の直近に設けられていて、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧と、電動式オイルポンプ10の吐出圧とを選択的に切り替えて油圧作動部8に供給する構成となっている。
このセレクトバルブ13は、2つの系統から入力される油圧のうち、いずれか一方を選択して出力側に供給する形式の切替弁であって、第1,第2の2つの入力ポート13a,13bと、それら各入力ポート13a,13bに対応する第1,第2の2つのパイロットポート13c,13dと、出力ポート13oと、ドレーンポート13eとを有している。そして、機械式オイルポンプ2側の油圧の供給系統として、第1入力ポート13aおよび第1パイロットポート13cに、マニュアルバルブ6の出力ポート6oがそれぞれ連通されている。一方、電動式オイルポンプ10側の油圧の供給系統として、第2入力ポート13bおよび第2パイロットポート13dに、電動式オイルポンプ10の吐出口10oが連通されている。そして、出力ポート13oに油圧作動部8が連通されている。
そして、スプールに第2パイロットポート13dから第1パイロットポート13cへ向けた押圧力を作用させるスプリング13sが設けられている。すなわち、このスプリング13sは、スプールに、それを第2パイロットポート13dから第1パイロットポート13cへ押圧する方向の弾性力を作用させる弾性部材である。
したがって、このセレクトバルブ13は、第1パイロットポート13cに作用する油圧が、第2パイロットポート13dに作用する油圧とスプリング13sの弾性力に相当する圧力との合成圧力よりも高い場合は、その第1パイロットポート13cに作用する油圧によりスプールが第2パイロットポート13d側(図6での右側)に押圧されて、第1入力ポート13aと出力ポート13oとが連通されかつ第2入力ポート13bとドレーンポート13eとが連通される。一方、第2パイロットポート13dに作用する油圧とスプリング13sの弾性力に相当する圧力との合成圧力が、第1パイロットポート13cに作用する油圧よりも高い場合には、その第2パイロットポート13dに作用する油圧とスプリング13sの弾性力に相当する圧力との合成圧力によりスプールが第1パイロットポート13c側(図6での左側)に押圧されて、第2入力ポート13bと出力ポート13oとが連通されかつ第1入力ポート13aが閉止される。
すなわち、第1パイロットポート13cに作用する油圧すなわち機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧をPcとし、電動式オイルポンプ10の吐出圧をPmとし、スプリング13sの弾性力に相当する圧力をPsとすると、電動式オイルポンプ10側の吐出圧Pmとスプリング13sの弾性力に相当する圧力Psとの合成圧力は「Pm+Ps」であるので、このセレクトバルブ13における調圧式は、
Pc=Pm+Ps
となる。
したがって、クラッチ圧Pcと合成圧力「Pm+Ps」との大小関係が、
Pc>Pm+Ps
の場合に、セレクトバルブ13のスプールが第2パイロットポート13d側に移動し、第1入力ポート13aと出力ポート13oとが連通されて機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcを油圧作動部8に供給することになる。そして、クラッチ圧Pcと合成圧力「Pm+Ps」との大小関係が、
Pc<Pm+Ps
の場合に、セレクトバルブ13のスプールが第1パイロットポート13c側に移動し、第2入力ポート13bと出力ポート13oとが連通されて電動式オイルポンプ10で発生させた油圧すなわち電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmを油圧作動部8に供給することになる。
この第3実施例の構成において、機械式オイルポンプ2を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態と、電動式オイルポンプ10を駆動して油圧作動部8に油圧を供給する状態とを切り替える際の各油圧等の変化を図7のタイムチャートに示してある。前述の図3に示した第1実施例の場合と同様に、時刻t0の時点でエコランが開始されると、エンジン1の運転が停止されるとともに、電動機9の運転指令Pm_com(破線)が出力される。エンジン1の回転数Ne(一点鎖線)が低下するのに伴って、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pc(二点鎖線)および油圧作動部8に実際に作用する実油圧Pc_real(実線)が低下する。
そして、この第3実施例の構成では、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも低くなって実油圧Pc_realがクラッチ圧Pcから吐出圧Pmに切り替わる時刻t6が、スプリング13sの弾性力に相当する圧力Psが第2パイロットポート13d側に作用する分だけ、前述の第1実施例における時刻t1よりも早くなっている。すなわち、実油圧Pc_realのクラッチ圧Pcから吐出圧Pmへの切り替えが速やかに行われている。
一方、その後エコランを終了するためにエンジン1の運転が再開され、エンジン回転数Neが上昇するのに伴ってクラッチ圧Pcが上昇し、機械式オイルポンプ2側のクラッチ圧Pcが電動式オイルポンプ10の吐出圧Pmよりも高くなって実油圧Pc_realが吐出圧Pmからクラッチ圧Pcに切り替わる時刻t7が、同様にスプリング13sの弾性力に相当する圧力Psが第2パイロットポート13c側に作用する分だけ、前述の第1実施例における時刻t2よりも遅くなっている。すなわち、実油圧Pc_realの吐出圧Pmからクラッチ圧Pcへの切り替えが、クラッチ圧Pcが十分上昇した後に確実に行われている。
このように、この第3実施例の構成によれば、エコランの実行時に、機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ10への油圧発生源の切り替えを速やかに行い、かつエコランの終了時に、電動式オイルポンプ10から機械式オイルポンプ2への油圧発生源の切り替えを確実に行うことができる。そのため、油圧作動部8に供給するオイルの油圧不足に起因するクラッチやプーリでの滑りに対して、常に安全側で油圧発生源の切り替えを行うことができ、その結果、自動変速機の信頼性を向上させることができる。
(第4実施例)
図8は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第4実施例における油圧回路の一部を示している。この図8に示す例は、電動式オイルポンプ10の吸入側に、オイルを冷却するオイルクーラ14を設けた構成の一例である。この図8では、前述の図4に示す第2実施例の構成(すなわちセレクトバルブ12を用いた構成)に、この第4実施例におけるオイルクーラ14を追加した構成例を示しているが、図1,図6に示す第1,第3実施例におけるセレクトバルブ7,13を用いた構成に、この第4実施例におけるオイルクーラ14を追加した構成であってもよい。
図8において、電動式オイルポンプ10の吸入側に、オイルを冷却するオイルクーラ14が設けられている。具体的には、オイルパン3と電動式オイルポンプ10とを繋ぐ油路の途中にオイルクーラ14が配置されていて、電動式オイルポンプ10の吸入口10iとオイルクーラ14の吐出口14oとが連通されている。オイルクーラ14の吸入口14iは、オイルパン3に直接もしくは間接的に連通されている。
オイルクーラ14は、吸入口14iから吸入したもしくは搬入されたオイルを冷却して、吐出口14oから吐出するもしくは搬出される構成となっていて、そのオイルクーラ14のオイルの冷却方式としては、例えば、空冷式、水冷式、あるいは熱交換式などの各種方式のものを採用することができる。
このように、電動式オイルポンプ10の吸入側にオイルクーラ14を設けたことにより、電動式オイルポンプ10を駆動して油圧を発生させる際には、電動式オイルポンプ10では、常にオイルクーラ14で冷却されたオイルを吸入することになる。すなわち電動式オイルポンプ10は、オイルクーラ14で冷却されて相対的に粘度が高い状態のオイルを吸入して油圧を発生させることになる。その結果、相対的に粘度が低い状態のオイルを吸入して油圧を発生させる場合と比較して、電動式オイルポンプ10の容積効率が向上する。そのため、電動式オイルポンプ10に要求されるポンプ容量が小さくて済み、その分、電動式オイルポンプ10を小型・軽量化することができる。
(第5実施例)
図9は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第5実施例における油圧回路の一部を示している。この図9に示す例は、電動式オイルポンプ10の吸入側にオイルクーラ14を設けた前述の第4実施例の構成に対して、オイルの温度に応じて電動式オイルポンプ10のオイルの吸入元を切り替える感温式の切替弁を更に追加した構成の一例である。
図9において、オイルパン3およびオイルクーラ14と電動式オイルポンプ10とを繋ぐ油路の途中に、感温式切替弁15が設けられている。具体的には、オイルパン3と感式温切替弁15の第1入力ポート15aとが連通されていて、オイルクーラ14の吐出口14oと感温式切替弁15の第2入力ポート15bとが連通されている。そして、感温式切替弁15の出力ポート15oと電動式オイルポンプ10の吸入口10iとが連通されている。
感温式切替弁15は、上記のように第1,第2の2つの入力ポート15a,15bと、出力ポート15oとを有していて、第1入力ポート15aと出力ポート15oとを連通させた状態と、第2入力ポート15bと出力ポート15oとを連通させた状態とを選択的に切り替えることができるように構成されている。そして、この感温式切替弁15は、例えば、形状記憶合金や、あるいはサーモワックス等の機能を利用して形成される感温ばね15sを更に備えていて、油温に応じて、第1入力ポート15aと出力ポート15oとを連通させた状態と、第2入力ポート15bと出力ポート15oとを連通させた状態とを切り替える構成となっている。
より具体的には、この感温式切替弁15は、オイルクーラ14から吐出されるオイルの油温が所定値よりも高い場合は、第1入力ポート15aと出力ポート15oとを連通させた状態になり、反対に、オイルクーラ14から吐出されるオイルの油温が所定値よりも低い場合は、第2入力ポート15bと出力ポート15oとを連通させた状態になるように構成されている。なお、ここでの所定値は、例えば通常運転時における自動変速機内の平均油温や、冷間時におけるオイルクーラ14のオイルの冷却特性などを考慮して予め設定された値である。
したがって、この第5実施例の構成では、感温式切替弁15の機能により、オイルパン3のオイルと、オイルクーラ14から吐出されるオイルとのうち、油温が低い方を選択して電動式オイルポンプ10の吸入口10iに供給することができる。すなわち、電動式オイルポンプ10では、常に相対的に粘度が高い状態のオイルを吸入して油圧を発生させることができ、電動式オイルポンプ10の容積効率を向上させることができる。そのため、電動式オイルポンプ10に要求されるポンプ容量が小さくて済み、その分、電動式オイルポンプ10を小型・軽量化することができる。
(第6実施例)
図10は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第6実施例における油圧回路の一部を示している。通常、オイルクーラを設ける場合は、そのオイルクーラでのオイルの過冷却(オーバークーラー)を防止するために、オイルクーラを迂回する油路が設けられる。そして、その迂回油路とオイルクーラとの間でオイルの流入先を油温に応じて自動的に切り替えるため、例えばサーモスタットなどを用いた感温式の切り替え機構も設けられる。この図10に示す例は、既設の感温式の切り替え機構を流用した構成の一例である。
図10において、オイルパン3およびオイルクーラ14と電動式オイルポンプ10とを繋ぐ油路の途中に、切替弁16が設けられている。具体的には、オイルパン3とこの切替弁16の第1入力ポート16aとが連通されていて、オイルクーラ14の吐出口14oとこの切替弁16の第2入力ポート16bとが連通されている。そして、この切替弁16の出力ポート16oと電動式オイルポンプ10の吸入口10iとが連通されている。
切替弁16は、上記のように第1,第2の2つの入力ポート16a,16bと、出力ポート16oと、外部からのパイロット圧が入力されるパイロットポート16pと、そのパイロットポート16pに作用する油圧と対向する方向に弾性力を付与するスプリング16sとを有していて、第1入力ポート16aと出力ポート16oとを連通させた状態と、第2入力ポート16bと出力ポート16oとを連通させた状態とを選択的に切り替えることができるように構成されている。
したがって、この切替弁16は、パイロットポート16pに作用するパイロット圧がスプリング16sの弾性力に相当する圧力よりも大きい場合は、第1入力ポート16aと出力ポート16oとを連通させた状態になり、反対に、パイロットポート16pに作用するパイロット圧がスプリング16sの弾性力に相当する圧力よりも小さい場合は、第2入力ポート16bと出力ポート16oとを連通させた状態になるように構成されている。
一方、オイルクーラ14の吸入側には、オイルをオイルクーラ14に流入させる状態と、オイルをオイルクーラ14に流入させずに迂回油路(図示せず)に迂回させる状態とを、油温に応じて自動的に切り替えるためのクーラバイパスバルブ17が設けられている。このクーラバイパスバルブ17としては、例えば、バイメタルやサーモワックスなどの機能を利用して構成したサーモスタット(図示せず)が備えられていて、オイルクーラ14の吸入側の油温が所定値よりも低い場合に開いて、オイルを迂回油路等に迂回させるように構成されている。したがって、このクーラバイパスバルブ17の入力ポート17iは、オイルパン3に直接もしくは間接的に連通されている。また、クーラバイパスバルブ17の出力ポート17oは、迂回油路等に連通されている。
そして、この第6実施例の構成では、上記のような既設のクーラバイパスバルブ17のサーモスタットの機能を流用して、切替弁16を油温に応じて動作させるため、上記のクーラバイパスバルブ17の出力ポート17oと切替弁16のパイロットポート16pとが連通されている。
そのため、オイルクーラ14の吸入側の油温が所定値よりも低い場合は、クーラバイパスバルブ17が開き、その出力ポート17oから吐出される油圧がパイロット圧となって切替弁16のパイロットポート16pに作用する。したがって切替弁16は、パイロットポート16pに所定のパイロット圧が作用することにより、第1入力ポート16aと出力ポート16oとが連通した状態に設定される。すなわち、オイルクーラ14を迂回したオイルが、電動式オイルポンプ10の吸入口10iに供給される。
これに対して、オイルクーラ14の吸入側の油温が所定値よりも高い場合は、クーラバイパスバルブ17は開かず、その出力ポート17oからは油圧は吐出されない。すなわち、切替弁16のパイロットポート16pにはパイロット圧は作用しない。したがって切替弁16は、第2入力ポート16bと出力ポート16oとが連通した状態に設定される。すなわち、オイルクーラ14で冷却されてその吐出口14oから吐出されたオイルが、電動式オイルポンプ10の吸入口10iに供給される。
したがって、この第6実施例の構成では、既設のクーラバイパスバルブ17のサーモスタットの機能を利用して、オイルパン3のオイルと、オイルクーラ14から吐出されるオイルとのうち、油温が低い方のオイル、すなわち粘度が高い状態のオイルを選択して電動式オイルポンプ10の吸入口10iに供給することができる。すなわち、特に専用の構成を設けることなく、常に相対的に粘度が高い状態のオイルを電動式オイルポンプ10に吸入させて油圧を発生させることができ、電動式オイルポンプ10の容積効率を向上させることができる。そのため、電動式オイルポンプ10に要求されるポンプ容量が小さくて済み、その分、電動式オイルポンプ10を小型・軽量化することができる。
(第7実施例)
図11は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第7実施例における油圧回路の一部を示している。この図11に示す例は、この発明で制御の対象とする自動変速機として、特にベルト式無段変速機を制御の対象とした場合の構成例である。この図11に示す構成において、例えばエンジン1や機械式オイルポンプ2、あるいは電動機9や電動式オイルポンプ10など、前出の図面で説明したものと構成が同じものについては、その前出の図面と同じ参照符号を付けて詳細な説明は省略する。また、オイル供給部4、電子制御装置11等の記載も省略している。
図11において、符号18,19は、それぞれ、この発明における制御対象をベルト式無段変速機とした場合にこの発明の油圧作動部に相当する可動シーブ18およびクラッチ19を示している。ここで対象とするベルト式無段変速機は、従来車両に搭載されている公知の構成のものであり、駆動側および従動側の2組のプーリと、それら各プーリに巻き掛けられて動力伝達を行う伝動ベルトとから構成される変速機構が設けられている。また、それら各プーリと伝動ベルトとからなる変速機構および主動力源であるエンジン1が、いずれもそれ自体の回転方向を反転することができない構成であるため、通常ベルト式無段変速機では、前進段と後進段とを切り替えて設定するための前後進切替機構が設けられている。さらに、従来自動変速機で広く採用されているトルクコンバータに替えて、摩擦クラッチにより構成された発進機構を設けることもできる。
上記の駆動側および従動側の各プーリには、それぞれ、各プーリの溝幅あるいは各プーリの伝動ベルトに対する挟圧力を変化させるためにプーリの回転軸線方向に前後動する可動シーブが設けられている。また、前後進切替機構は、例えば、1組の遊星歯車機構と、その遊星歯車機構における各回転要素同士を連結しもしくはいずれかの回転要素の回転を制止することにより、直結状態(すなわち前進段)と変転状態(すなわち後進段)とを設定するための摩擦クラッチおよび摩擦ブレーキと、から構成されている。また、発進機構は、上記のように摩擦クラッチにより構成されたものが採用される場合がある。
そして、上記の各プーリの可動シーブのプーリ回転軸線方向における前後動作、前後進切替機構の摩擦クラッチおよび摩擦ブレーキあるいは発進機構の摩擦クラッチ等の係合・解放動作は、いずれも油圧により制御されるように構成されている。したがって、この図11に示す構成において、可動シーブ18は、ベルト式無段変速機の駆動プーリおよび従動プーリにおける可動シーブを示すものであり、この発明における油圧作動部であって、特にこの発明における可動シーブに相当するものである。また、クラッチ19は、前後進切替機構における摩擦クラッチおよび摩擦ブレーキ、ならびに発進機構における摩擦クラッチ等を示すものであり、この発明における油圧作動部であって、特にこの発明におけるクラッチに相当するものである。
したがって、可動シーブ18には、セレクトバルブ20を介して、機械式オイルポンプ2もしくは電動式オイルポンプ10からの油圧が供給されるようになっている。同様に、クラッチ19には、セレクトバルブ21を介して、機械式オイルポンプ2もしくは電動式オイルポンプ10からの油圧が供給されるようになっている。
この第7実施例の構成におけるセレクトバルブ20,21は、いずれも、前述のセレクトバルブ7,12等と同様に、この発明の切替弁に相当するものであって、特に、セレクトバルブ20は、この発明におけるシーブ切替弁に相当し、セレクトバルブ21は、この発明におけるクラッチ切替弁に相当している。
セレクトバルブ20は、機械式オイルポンプ2および電動式オイルポンプ10から可動シーブ18へ到る油路における可動シーブ18の直近に設けられていて、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧と、電動式オイルポンプ10の吐出圧とを選択的に切り替えて可動シーブ18に供給する構成となっている。また、セレクトバルブ21は、機械式オイルポンプ2および電動式オイルポンプ10からクラッチ19へ到る油路における可動シーブ19の直近に設けられていて、機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧として調圧された油圧と、電動式オイルポンプ10の吐出圧とを選択的に切り替えて可動シーブ18に供給する構成となっている。
これらのセレクトバルブ20およびセレクトバルブ21は、前述のセレクトバルブ7,12等と同様に、2つの系統から入力される油圧のうち、いずれか一方を選択して出力側に供給する形式の切替弁であって、それぞれ、2つの入力ポート20a,20bおよび入力ポート21a,21bと、それら各入力ポート20a,20bおよび各入力ポート21a,21bに対応する2つのパイロットポート20c,20dおよびパイロットポート21c,21dと、出力ポート20oおよび出力ポート21oと、ドレーンポート20eおよびドレーンポート21eとを有している。
機械式オイルポンプ2側の油圧の供給系統として、各セレクトバルブ20,21の第1入力ポート20a,21aおよび第1パイロットポート20c,21cに、コントロールバルブ5の出力ポート5oが、それぞれ連通されている。一方、電動式オイルポンプ10側の油圧の供給系統として、各セレクトバルブ20,21の第2入力ポート20b,21bおよび第2パイロットポート20d,21dに、電動式オイルポンプ10の吐出口10oが、それぞれチェックバルブ22,23を介して連通されている。
チェックバルブ22,23は、それぞれ、電動式オイルポンプ10側から各セレクトバルブ20,21へ向かうオイルの流動を許容し、反対に各セレクトバルブ20,21側から電動式オイルポンプ10へ向かうオイルの流動を制止する一方向弁であり、可動シーブ18もしくはクラッチ19に作用する油圧が高圧になった場合の逆流を防止するためのものである。
また、各セレクトバルブ20,21の出力ポート20o,21oに、可動シーブ18およびクラッチ19が、それぞれ連通されている。そして、各セレクトバルブ20,21のスプールに第1パイロットポート20c,21cから第2パイロットポート20d,21dへ向けた押圧力を作用させるスプリング20s,21sが、それぞれ設けられている。すなわち、これらスプリング20s,21sは、それぞれ、スプールに、それを第1パイロットポート20c,21cから第2パイロットポート20d,21dへ押圧する方向の弾性力を作用させる弾性部材である。
したがって、これらの各セレクトバルブ20,21は、それぞれ、第1パイロットポート20c,21cに作用する油圧とスプリング20s,21sの弾性力に相当する圧力との合成圧力が、第2パイロットポート20d,21dに作用する油圧よりも高い場合は、その合成圧力によりスプールが第2パイロットポート20d,21d側(図11での下側)に押圧されて、第1入力ポート20a,21aと出力ポート20o,21oとが、それぞれ連通され、かつ第2入力ポート20b,21bとドレーンポート20e,21eとが、それぞれ連通される。したがってこの場合は、機械式オイルポンプ2で発生させた油圧、具体的には機械式オイルポンプ2の吐出圧を基にコントロールバルブ5で調圧された油圧が、可動シーブ18およびクラッチ19に供給されることになる。
一方、第2パイロットポート20d,21dに作用する油圧が、第1パイロットポート20c,21cに作用する油圧とスプリング20s,21sの弾性力に相当する圧力との合成圧力よりも高い場合には、その第2パイロットポート20d、21dに作用する油圧によりスプールが第1パイロットポート20c,21d側(図11での上側)に押圧されて、第2入力ポート20b,21bと出力ポート20o,21oとが、それぞれ連通され、かつ第1入力ポート20a,21aが、それぞれ閉止される。したがってこの場合は、電動式オイルポンプ10で発生させた油圧、すなわち電動式オイルポンプ10の吐出圧が、可動シーブ18およびクラッチ19に供給されることになる。
このように、この第7実施例の構成によれば、ベルト式無段変速機を油圧制御の対象とした場合に、ベルト式無段変速機における駆動側および従動側の各プーリの可動シーブ18の動作状態、および、ベルト式無段変速機における前後進切替機構や発進機構等で用いられる摩擦クラッチあるいは摩擦ブレーキなどの係合装置の動作状態を適切に制御することができる。すなわち、例えばエコランの実行時にエンジン1が停止し、機械式オイルポンプ2が油圧を発生しない場合であっても、油圧の発生源が機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ10へ切り替えられて、その電動式オイルポンプ10で発生させられた油圧が、可動シーブ18およびクラッチ19の直近にそれぞれ設けられたセレクトバルブ20,21を経由して、直接可動シーブ18およびクラッチ19にそれぞれ供給されて保持される。
したがって、例えばエコランの実行時などに、エンジン1が停止した場合は、可動シーブ18およびクラッチ19の直近にそれぞれ設けられたセレクトバルブ20,21により、電動式オイルポンプ10と可動シーブ18およびクラッチ19とを結ぶ油路が選択されて、電動式オイルポンプ10と、それら可動シーブ18およびクラッチ19との間が連通される。そのため、機械式オイルポンプ2に代わって電動式オイルポンプ10で発生させた油圧を可動シーブ18およびクラッチ19へ供給する際に、電動式オイルポンプ10の吐出圧を直接可動シーブ18およびクラッチ19に作用させることができる。特に、エコランの実行時にエンジン1および機械式オイルポンプ2が停止させられた際に、ベルト式無段変速機のプーリの可動シーブ18に、電動式オイルポンプ2によって必要な油圧を供給しかつ維持しておくことができ、エコラン終了後の再発進時において必要な変速比を適切に設定しておくことができる。
また、上記のように、可動シーブ18およびクラッチ19の直近に、それぞれセレクトバルブ20,21が設けられることにより、機械式オイルポンプ2の吐出圧が低くなった場合、もしくは機械式オイルポンプ2が停止して油圧を発生しない場合に、可動シーブ18およびクラッチ19側から機械式オイルポンプ2への油圧の逆流を防止するためのチェックバルブを設けなくともよくなる。機械式オイルポンプ2の吐出圧が低くなり、その機械式オイルポンプ2の吐出圧を基に調圧された油圧よりも電動式オイルポンプ10の吐出圧が高くなると、セレクトバルブ20,21が電動式オイルポンプ10と可動シーブ18およびクラッチ19とを結ぶ油路を選択するように速やかに切り替わるので、可動シーブ18およびクラッチ19側から機械式オイルポンプ2への油圧の逆流を考慮しなくとも良いからである。
一般に、車両に搭載されるベルト式無段変速機においては、例えば車両の牽引時、すなわち車両の全ての動力源が停止した状態で車両が走行する場合の、ベルト式無段変速機の駆動プーリ側におけるギヤやベアリング等の焼き付き防止のために、各可動シーブ18から不可避的に発生するオイル漏れに対して、駆動プーリ側の可動シーブ18におけるオイル漏れ量よりも、従動プーリ側の可動シーブ18におけるオイル漏れ量の方が多くなるように構成されている。従動プーリ側の可動シーブ18でより多くのオイルが漏れることにより、牽引走行時にベルト式無段変速機としては増速側に変速し、駆動プーリの回転速度が低下する方向に変化する。そのため、駆動プーリ側におけるギヤやベアリング等の焼き付きを防止することができ、ベルト式無段変速機の耐久性を確保している。
したがって、機械式オイルポンプ2が停止した際の逆流防止のために、特に従動プーリ側の可動シーブ18と機械式オイルポンプ2との間にチェックバルブを設けると、従動プーリ側の可動シーブ18におけるオイル漏れが許容されなくなり、上記のように駆動プーリの回転速度を低下させることができなくなってしまう。それに対して、上記のようにセレクトバルブ20,21が設けられることによってチェックバルブを廃止することができるので、上記のように、牽引走行時等におけるベルト式無段変速機の耐久性を確保することができる。
(第8実施例)
図12は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第8実施例における油圧回路の一部を示している。この図12に示す例は、前述の第7実施例の変形例であって、第7実施例の構成におけるセレクトバルブ20,21の第1パイロットポート20c,21cに入力されるパイロット圧を変更した例である。したがって、この図12に示す構成において、前出の図面で説明したものと構成が同じものについては、その前出の図面と同じ参照符号を付けて詳細な説明は省略する。また、オイル供給部4、電子制御装置11等の記載も省略している。
図12において、この第8実施例の構成におけるセレクトバルブ20,21の第1パイロットポート20c,21cは、それぞれ、油路24,25によって、機械式オイルポンプ2の吐出口10cに連通されている。したがって、この第8実施例の構成では、セレクトバルブ20,21の第1パイロットポート20c,21cに、セレクトバルブ20,21の第1入力ポート20a,21aに入力される油圧、すなわち機械式オイルポンプ2の吐出圧を基に調圧された変速油圧(クラッチ圧)よりも高圧の機械式オイルポンプ2の吐出圧を、パイロット圧として入力することができる。
このように、この第8実施例の構成によれば、セレクトバルブ20,21の第1パイロットポート20c,21cには、機械式オイルポンプ2の吐出圧、もしくはその吐出圧を元圧として調圧された変速油圧よりも高い油圧が入力され、セレクトバルブ20,21の第2パイロットポート20d,21dには、電動式オイルポンプ10の吐出圧が入力される。したがって、機械式オイルポンプ2と電動式オイルポンプ10との間で油圧の発生源を切り替える際、特に、エンジン1が停止していた状態から再始動されて油圧発生源を電動式オイルポンプ10から機械式オイルポンプ2へ切り替える際には、セレクトバルブ20,21の第1パイロットポート20c,21cに入力される変速油圧よりも高圧のパイロット圧に基づいて、セレクトバルブ20,21の切り替え動作が行われることになる。
そのため、それらセレクトバルブ20,21の切り替え動作の応答性を向上させることができる。さらに、変速油圧よりも高い油圧、具体的には機械式オイルポンプ2の吐出圧をパイロット圧とすることにより、セレクトバルブ20,21の切り替え動作を迅速にかつ確実に実行させることができるので、それらセレクトバルブ20,21におけるバルブスティック等の発生を防止もしくは抑制することができる。
なお、この第8実施例で示す構成、および前述の第7実施例で示す構成において、前述の第4ないし第6実施例で示した構成におけるオイルクーラ14を適用した構成とすることもできる。そうすることにより、この第8実施例で示す構成、および前述の第7実施例で示す構成においても、前述の第4ないし第6実施例で示した構成の場合と同様に、電動式オイルポンプ10の容積効率を向上させることができ、そのため、電動式オイルポンプ10に要求されるポンプ容量が小さくて済み、その分、電動式オイルポンプ10を小型・軽量化することができる。
また、この発明は上述した具体例に限定されない。例えば、上記の各実施例の構成において、この発明の副オイルポンプとして設けられている電動式オイルポンプ10は、図13に示すような、従来一般的なソレノイドバルブの基本構造を応用して油圧を発生させる構成のポンプ26(いわゆるバルブポンプ、ソレノイドポンプ、電磁弁ポンプ等)に置き換えることができる。その構成を簡単に説明しておくと、図13において、バルブポンプ26は、電磁コイル27が備えられたコイル部26cと、オイルの流動を一方向に規制する逆止弁28,29およびオイルの吸入・排出が行われる油室30などから構成されるバルブ(ポンプ)部26vと、油室30内を往復動作するプランジャ26pとから構成されている。
逆止弁28は、バルブポンプ26の吸入口26iにおいて、吸入口26iから油室30内へのオイルの流動を許容し、反対に、油室30内から吸入口26iの外側へのオイルの流動を制止する構成となっている。また、逆止弁29は、バルブポンプ26の吐出口26oにおいて、油室30内から吐出口26oの外側へのオイルの流動を許容し、反対に、吐出口26oから油室30内へのオイルの流動を制止する構成となっている。そして、プランジャ26pは、電磁コイル27の電磁力の作用により油室30内を往復動作するように構成されている。
そして電磁コイル27に供給する電流を制御することにより、プランジャ26pを油室30内で高速で往復動させることができる。そのため、そのプランジャ26pの往復動作に伴なって、油室30内においてオイルの吸入と吐出とを繰り返し行うことができ、したがって、バルブポンプ26を往復動型の容積ポンプとして機能させることができる。
このようなバルブポンプ26をこの発明における副オイルポンプとして適用することにより、例えばブラシレス型の回転モータを動力源として備える電動式オイルポンプ10を用いた場合と比較して、装置の構成をより簡素化し、また小型・軽量化することができる。
また、上記の具体例では、この発明で対象とする自動変速機として、有段式の自動変速機と、ベルト式無段変速機を例に挙げて説明しているが、例えば、前述したようにトロイダル型(もしくはトラクション式)の無段変速機も対象とすることができる。あるいは、手動変速機における変速操作を所定の油圧作動機構により自動制御するようないわゆるセミオートマティック式の変速機の油圧制御などに適用することもできる。