JP5422360B2 - リチウム二次電池活物質用金属多孔体の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池活物質用金属多孔体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池の電極活物質等として有用な金属多孔体に関する。
リチウム(Li)を可逆的に吸蔵および放出可能な材料(活物質)を有する正負の電極を備え、それら電極の間をリチウムイオンが行き来することで充放電するリチウム二次電池が知られている。現在、負極用の活物質としてはグラファイトが広く用いられている。しかし、グラファイトでは6個の炭素原子当たり1個のLiがインターカレートするため、その充放電容量には372mAh/gの上限がある。
一方、グラファイトに代わる活物質として、Liと合金化し得る材料を用いることも検討されている。例えば、スズ(Sn)、シリコン(Si)等は、グラファイトよりも大きな充放電容量を実現し得るものとして期待されている。しかし、これらの材料はLiと合金を形成する際に大きな体積膨張を起こす。このため、かかる材料を活物質に用いた負極(合金系負極)は、充放電の繰り返しに伴う膨張収縮によって活物質が次第に劣化(典型的には微粉化)し、これにより容量が減少してしまうことが知られている。
この点に関し、特許文献1には、Liと合金化する金属材料を多孔質の形態とすることによって、充放電に伴う体積変化を吸収または緩和することが記載されている。二次電池に関連する他の技術文献として特許文献2〜5が挙げられる。
特開2006−260886号公報 特開2004−327330号公報 特開2004−214054号公報 特開2002−203542号公報 特開昭61−8848号公報
特許文献1には、Liと合金化する金属の多孔質体を形成する方法として、導電性基板上に樹脂粒子を堆積させ、その堆積させた樹脂粒子に上記金属をメッキした後、該樹脂粒子を有機溶媒に溶解させて除去する方法が挙げられている。しかし、かかる方法では、得られる多孔質体に樹脂分や有機溶媒が不純物として残留しやすく、その不純物が電池性能に好ましくない影響を与えることが懸念される。また、上記樹脂粒子を有機溶媒に溶解させる代わりに熱分解させて除去しようとすると、数百度以上の高温で熱処理を行う必要があるため、使用する材料の劣化または変質を招く恐れがある。例えば、導電性基板として銅板を用い、Liと合金化する金属としてSnを用いる構成では、高温で熱処理を行うと銅(Cu)とSnとが合金を形成し、これにより電池容量が低下してしまう。
本発明の一つの目的は、リチウム二次電池の活物質等として有用な金属多孔体を製造する好適な方法を提供することである。本発明の他の目的は、かかる金属多孔体を有するリチウム二次電池および該電池用の電極を提供することである。関連する他の目的は、上記金属多孔体を有するリチウム二次電池を搭載した車両を提供することである。
本発明によると、金属多孔体を製造する方法が提供される。その方法は、有機溶媒中にメッキ成分を含むメッキ液を用いて、Liを可逆的に吸蔵および放出可能な金属MAとアルカリ金属(例えばLi)とを含む複合メッキ膜を基材上に形成することを包含する。さらに、前記複合メッキ膜に含まれるアルカリ金属を水洗により除去することを包含する。
上記方法では、複合メッキ膜に含まれるアルカリ金属を水で洗い出すことにより細孔が形成される。換言すれば、複合メッキ膜からアルカリ金属を水洗除去した残りが金属多孔体を構成する。したがって、樹脂粒子を除去することで多孔体を形成する特許文献1記載の技術とは異なり、本発明の方法によると、樹脂分(不純物)のない金属多孔体を容易に製造することができる。
上記基材としては、少なくとも表面が銅製である基材(銅製部材、銅メッキが施された部材等)を好ましく使用することができる。Cuは導電性がよく、またLiと合金を形成せず電気化学的安定性に優れる。したがって、少なくとも表面が銅製の基材は、ここに開示されるいずれかの方法により製造された金属多孔体を活物質として備える電極(例えば負極)の集電体として好適である。かかる基材を用いて上記方法を実施することにより、金属MAの多孔体が上記基材に保持された構成の電極が好ましく製造され得る。
ここに開示される金属多孔体製造方法は、金属MAがSnである態様で好ましく実施され得る。換言すれば、Sn多孔体の製造に好ましく適用され得る。例えば、少なくとも表面が銅製である基材の表面にSn多孔体を製造する方法として好適である。本発明の方法では、複合メッキ膜からアルカリ金属を水洗除去することでSn多孔体が形成され、この過程において樹脂が熱分解するような高熱を加える必要がない。したがって、CuとSnとの間で合金が形成される事態を回避することができる。このため、Cu上にSn多孔体を形成する場合には、本発明の方法を採用する意義が特に大きい。
前記メッキ液としては、例えば、金属MAとアルカリ金属とを1:2〜50のモル比で含有するものを好ましく用いることができる。かかる組成のメッキ液を用いて製造される金属多孔体は、Liの吸蔵および放出に伴う体積変化を適切に吸収または緩和するものとなり得る。
ここに開示される金属多孔体製造方法の一態様では、前記複合メッキ膜が、膜厚方向の一部と他部とで前記アルカリ金属の含有割合が異なる箇所を有する。かかる複合メッキ膜からアルカリ金属を水洗除去することにより、膜厚方向の一部と他部とで構造(例えば空隙率)が異なる箇所を有する金属多孔体が製造され得る。このような金属多孔体は、電極活物質(例えばリチウム二次電池用電極活物質)その他の用途に好ましく利用され得る。
ここに開示される金属多孔体製造方法の一態様では、前記複合メッキ膜が、膜厚方向に対して前記アルカリ金属の含有割合が徐々に変化する箇所を有する。かかる複合メッキ膜からアルカリ金属を水洗除去することにより、膜厚方向に対して構造(例えば空隙率)が徐々に変化する箇所を有する金属多孔体が製造され得る。このような金属多孔体は、電極活物質(例えばリチウム二次電池用電極活物質)その他の用途に好ましく利用され得る。
ここに開示される金属多孔体製造方法の一態様では、前記複合メッキ膜は、該メッキ膜のうち前記基材側よりも外側のほうが前記アルカリ金属の含有割合が高くなるように形成される。かかる複合メッキ膜からアルカリ金属を水洗除去することにより、基材側よりも外側(基材から遠い側)のほうが空隙の多い構造の金属多孔体が製造され得る。このような金属多孔体は、電極活物質(例えばリチウム二次電池用電極活物質)その他の用途に好ましく利用され得る。かかる金属多孔体を基材上に有するリチウム二次電池用電極によると、より高性能な(例えば、充放電サイクルに対する耐久性およびレート特性の少なくとも一方の性能が改善された)リチウム二次電池が実現され得る。
ここに開示されるいずれかの金属多孔体(ここに開示されるいずれかの方法により製造された金属多孔体であり得る。)は、リチウム二次電池の電極活物質等として好適に用いられて、より高性能な(例えば、充放電サイクルに対する劣化が少ない、レート特性が良い、の少なくとも一方を実現する)リチウム二次電池を構築し得る。したがって本発明は、他の側面として、ここに開示されるいずれかの金属多孔体からなるリチウム二次電池用活物質を提供する。
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの金属多孔体(ここに開示されるいずれかの方法により製造された金属多孔体であり得る。)を活物質として備えるリチウム二次電池用電極(典型的には負極)および該電極を用いて構築されたリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)が提供される。上記金属多孔体は、質量当たりに多くのLi(例えば、グラファイトの理論容量よりも多くのLi)を吸蔵可能であり、且つLiの吸蔵および放出の繰り返しによる劣化が少ない。したがって、該多孔体を活物質として利用した電極または電池は、より安定して大きな充放電容量を発揮するものとなり得る。
ここに開示される金属多孔体によると、上記のように、より安定して大きな充放電容量を発揮するリチウム二次電池が構築され得る。かかるリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)は、車両搭載用の電池として好適である。したがって、本発明によると、ここに開示されるいずれかのリチウム二次電池を備えた車両が提供される。特に、かかるリチウム二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が好ましい。
実施例1により作製した電極の表面のSEM像である。 本発明に係る金属多孔体製造方法を示す模式的説明図である。 本発明に係る金属多孔体製造方法を示す模式的説明図である。 性能評価用に作製したコインセルを模式的に示す部分断面図である。 比較例1により作製した電極の表面のSEM像である。 サイクル数と放電容量との関係を示す特性図である。 本発明に係るリチウムイオン電池の構成を例示する縦断面図である。 リチウムイオン電池を備えた車両(自動車)を示す模式的側面図である。 複合メッキ膜の形成工程を模式的に示す説明図である。 本発明に係る金属多孔体製造方法を示す模式的説明図である。 本発明に係る金属多孔体製造方法を示す模式的説明図である。 実施例2により作製した電極の表面のSEM像である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される技術において、Liを可逆的に吸蔵および放出可能な各種金属MAとしては、かかる性質を有する金属として従来公知の材料を適宜採用することができる。例えば、Sn、Zn、Al、Sb、Pb、Ag、Siおよびこれらを含む合金等を、金属MAとして採用し得る。本発明は、金属MAがSnまたはSn合金(Sn−Ni合金、Sn−Fe合金等)である金属多孔体等の製造に好ましく適用することができる。
アルカリ金属としては、Li、Na、K、RbおよびCsが挙げられる。ここに開示される技術におけるアルカリ金属としては、コストや取扱い容易性の観点から、Li、NaおよびKから選択される一種または二種以上を好ましく採用し得る。リチウムイオン二次電池向けの用途では、仮に少量が金属多孔体に残留しても電池性能への影響が少ないことから、アルカリ金属としてLiを用いることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、金属MAとアルカリ金属とを含む複合メッキ膜を形成可能なメッキ成分を有機溶媒中に含むメッキ液を使用する。このような有機溶媒系のメッキ液を用いることにより、水系のメッキ液ではメッキ不可能なアルカリ金属を、金属MAと共に析出(共析)させることができる。このメッキ液を構成する有機溶媒としては、一般的な有機溶媒系のメッキ液と同様の各種有機溶媒を単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、カーボネート類(例えばプロピレンカーボネート)等を用いることができる。一好適例としてDMFが挙げられる。
上記メッキ液は、金属MAを構成元素として有する化学種(MA成分)を含有する。このMA成分は、例えば、MAのイオン(MAが二種以上の金属の合金である場合には、該合金を構成する個々の金属元素のイオン)、MAを含む原子団のイオン等の形態であり得る。かかるMA成分を含むメッキ液は、例えば、金属MAの塩(塩化物その他のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩等)を上記有機溶媒に溶かすことにより調製することができる。
上記メッキ液は、また、アルカリ金属を構成元素として有する化学種(アルカリ金属成分)を含有する。このアルカリ金属成分は、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ金属を含む原子団のイオン、等の形態であり得る。かかるアルカリ金属成分を含むメッキ液は、例えば、アルカリ金属塩(塩化物その他のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩等)を上記有機溶媒に溶かすことにより調製することができる。
これらのメッキ成分(MA成分およびアルカリ金属成分)に加えて、上記メッキ液は、有機溶媒系メッキ液の分野において公知ないし慣用の添加剤を必要に応じて含有することができる。
上記メッキ液におけるMA成分(すなわち、金属多孔体形成成分)とアルカリ金属成分との含有比は、例えば、MA1モルに対してアルカリ金属1〜100モル程度とすることができる。MAに対するアルカリ金属の含有量が少なすぎると、水洗後に得られる金属多孔体の空隙率が低くなりすぎて、Liの吸蔵放出に伴う体積変化を十分に吸収し難くなる(その結果、劣化防止効果が小さくなる)場合がある。MAに対するアルカリ金属の含有量が多すぎると、水洗後に得られる金属多孔体の空隙率が高くなりすぎて、該多孔体の機械的強度や体積当たりの充放電容量が低下しやすくなる場合がある。かかる観点から、通常は、MA1モルに対してアルカリ金属2〜50モル(例えば5〜20モル)程度を含むメッキ液組成とすることが好ましい。また、メッキ効率の観点から、MAを0.05モル/L以上(好ましくは0.1モル/L以上)の濃度で含むメッキ液の使用が好ましい。
なお、後述するように複合メッキ膜を形成する過程においてメッキ液の組成を途中で異ならせる場合には、メッキ期間のうち少なくとも一部の期間(例えばメッキ終了時)におけるメッキ液の組成として上記金属多孔体形成成分/アルカリ金属成分の含有比を採用することができる。例えば、少なくともメッキ終了時を含む一部の期間におけるメッキ液の組成として、上記含有比を好ましく採用することができる。
ここに開示される方法に使用する基材は、上記メッキ液に対して耐性を示し、表面に複合メッキ膜を形成可能なものであればよく、特に限定されない。上記基材は、金属多孔体の製造過程から引き続いて、該金属多孔体に上記基材が隣接した形態で、電池(例えばリチウム二次電池)の構成要素として使用され得る。例えば、基材上に形成された複合メッキ膜を該基材から分離することなく(すなわち基材上で)水洗することにより、該基材上において金属多孔体を形成することができる。このようにして基材上に形成された金属多孔体を、該基材から分離することなく、リチウム二次電池の電極(典型的には負極)として好ましく使用することができる。かかる形態の電極において上記基材を金属多孔体(活物質)の集電体として好適に利用し得るように、少なくとも表面が良導電性材料(銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる基材を好ましく用いることができる。例えば、全体が銅製の部材や、エポキシ等の樹脂部材の表面に銅製皮膜(メッキ膜等)が設けられた部材等を、ここに開示される技術における基材として好ましく採用し得る。
基材(集電体)の形状は特に限定されず、例えば、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形状であり得る。好ましい形状として板状、シート状および箔状が例示される。上記基材には、複合メッキ膜(ひいては、該メッキ膜から形成される金属多孔体)との密着性を高めること等を目的として、適当な前処理が施されていてもよい。かかる前処理の一例として、プリント配線板の製造等の分野において銅配線にメッキを施す際に実施される一般的なソフトエッチング処理が挙げられる。
このような基材に上記メッキ液をメッキすることにより、該基材上に複合メッキ膜を形成する。典型的には、基材上に金属MAとアルカリ金属とを共析させてメッキ膜(共析メッキ皮膜)を形成する。このときのメッキ(典型的には電解メッキ)条件は、メッキ液の組成、基材の材質、目標とする複合メッキ膜の厚み等を考慮して適宜設定することができる。例えば、電流密度は0.1〜10A/dm(好ましくは0.5〜5A/dm)程度とすることができる。また、メッキ液(メッキ浴)の温度は例えば10〜35℃程度とすることが好ましい。かかるメッキ工程により、例えば図2に示すように、金属MA742とアルカリ金属744とが混在した複合メッキ膜74が基材72上に形成される。
次いで、複合メッキ膜74に含まれるアルカリ金属744を水で溶かし出す。これにより、図3に示すように、アルカリ金属の除去により生じた多数の細孔762を有する金属多孔体76が形成される。この水洗処理は、例えば、複合メッキ膜に水流を供給する方式、複合メッキ膜を水に浸漬する方式、等の適宜の方式で行うことができる。かかる水洗処理は、上記複合メッキ膜が基材上に形成されたままの状態で(すなわち、上記複合メッキ膜を基材から分離することなく)行うことができる。これにより、図3に示す例のように、基材72上に金属多孔体76を有する複合材料70が得られる。あるいは、基材から複合メッキ膜を分離し、その複合メッキ膜(粉状、薄片状等の形態であり得る。)を単独で水洗してもよい。
特に限定するものではないが、上記複合メッキ膜の厚みは、例えば凡そ0.1μm〜100μm(好ましくは1μm〜50μm)程度とすることができる。この複合メッキ膜を基材から分離することなく水洗する場合には、該メッキ膜の厚みを50μm以下(より好ましくは20μm以下、例えば1μm〜10μm程度)とすることにより、該メッキ膜の全体からアルカリ金属を効率よく溶出させることができる。なお、通常は、上記水洗処理により、複合メッキ膜の外形に概ね対応する外形の金属多孔体が形成される。ここに開示される方法は、例えば、空隙率が凡そ5〜80体積%の金属多孔体を製造する方法として好ましく採用され得る。この空隙率は、使用するメッキ液に含まれるMA成分とアルカリ金属成分との比率によって調節することができる。後述するように場所(典型的には、膜厚方向に対する場所)によって空隙率が異なる金属多孔体の場合には、該金属多孔体全体の平均空隙率が上記範囲にある金属多孔体の製造方法として好適である。なお、ここに開示される金属多孔体を電極活物質として使用する場合における好ましい空隙率(場所によって空隙率が異なる場合には平均空隙率)は、例えば5〜80体積%であり、より好ましくは20〜60体積%である。
上記複合メッキ膜におけるアルカリ金属の含有割合は、均一であってもよく、場所によって(例えば、面方向の一部と他部、および/または膜厚方向の一部と他部とで)異なってもよい。ここに開示される技術の一態様では、上記複合メッキ膜におけるアルカリ金属の含有割合を場所によって意図的に異ならせるように(意図的に不均一にするように)、該複合メッキ膜を形成する。かかる構造の複合メッキ膜からアルカリ金属を除去することにより、該複合メッキ膜の各場所におけるアルカリ金属の含有割合を反映して、場所によって空隙の割合(空隙率)の異なる金属多孔体が形成される。したがって、得られた金属多孔体における空隙の割合およびその配置から、複合メッキ膜(すなわち、アルカリ金属を除去する前)におけるアルカリ金属の含有割合および配置を把握することができる。
上記複合メッキ膜は、例えば、該複合メッキ膜の膜厚方向の一部と他部とでアルカリ金属の含有割合が異なる箇所を有するものであり得る。このようにアルカリ金属の含有割合が膜厚方向に異なる箇所は、複合メッキ膜の面方向(広がり方向)の全範囲であってもよく、面方向の一部範囲であってもよい。典型的には、複合メッキ膜の面方向の全範囲に亘ってアルカリ金属の含有割合が膜厚方向に異なる箇所が形成される。アルカリ金属の含有割合が膜厚方向に対して段階的に(不連続に)変化する態様であってもよく、徐々に(連続的に)変化する態様であってもよく、これらを組み合わせた態様であってもよい。
複合メッキ膜におけるアルカリ金属の含有割合が膜厚方向に対して段階的に変化する態様の例としては、基材側から順に段階的に高くなる態様、基材側から順に段階的に低くなる態様、高い部分と低い部分とが交互に配置された態様(膜厚方向の中央部が低く両側が高い態様、中央部が高く両側が低い態様等を包含する。)等が挙げられる。このようにアルカリ金属の含有割合を段階的に変化させる態様には、例えば、複合メッキ膜の膜厚方向の各部におけるアルカリ金属の含有割合(ひいては、得られる金属多孔体の膜厚方向の各部における空隙率)を制御しやすいという製造上の利点がある。なお、上記段階的変化の回数は特に制限されない。一度のみの段階的変化であってもよく、二度以上(例えば2〜5回程度)の段階的変化であってもよい。
複合メッキ膜におけるアルカリ金属の含有割合が膜厚方向に対して連続的に変化(一定のレートでの変化に限定されない。)する態様の例としては、基材側から連続的に低くなる態様、基材側から連続的に高くなる態様、連続的に高くなる部分と連続的に低くなる部分とが交互に配置された態様(膜厚方向の中央部が低く両側が高い態様、中央部が高く両側が低い態様等を包含する。)等が挙げられる。膜厚方向の一部のみにアルカリ金属の含有割合が連続的に変化する箇所を有する態様(膜厚方向の他部ではアルカリ金属の含有割合が一定である態様、段階的に変化する態様等を包含する。)であってもよく、膜厚方向の全範囲に亘ってアルカリ金属の含有割合が連続的に変化する態様であってもよい。このようにアルカリ金属の含有割合(ひいては、得られる金属多孔体の膜厚方向の各部における空隙率)を連続的に変化させる態様には、例えば、得られる金属多孔体の構造(典型的には空隙の割合)を場所によって異ならせつつ、その構造が異なる箇所の間に生じ得る歪の程度を抑制し得るという利点がある。このことは、金属多孔体の強度や耐久性の観点から有利である。かかる構造の金属多孔体によると、より高性能な(例えば、充放電サイクルに対する耐久性およびレート特性の少なくとも一方の性能が改善された)リチウム二次電池が実現され得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記複合メッキ膜が、該複合メッキ膜の膜厚方向に対して基材側よりも外側のほうがアルカリ金属の含有割合が高くなるように形成される。基材側から外側に向かってアルカリ金属の含有割合が段階的に高くなる態様であってもよく、連続的に高くなる態様であってもよく、これらを組み合わせた態様であってもよい。例えば、複合メッキ膜の膜厚のうち基材側の端から外側に向かう所定の範囲に亘って(基材側の端から外側の端に至る全範囲であってもよい。)アルカリ金属の含有割合が連続的に高くなる態様を好ましく採用し得る。複合メッキ膜の膜厚方向のうち基材側の端におけるアルカリ金属の含有割合は、例えば20体積%以下とすることができ、10体積%以下であってもよく、5体積%以下であってもよい。好ましい一態様では、基材側の端から外側に向かって、アルカリ金属の含有割合が実質的にゼロから徐々に高くなるように複合メッキ膜が形成される。
このように基材側の端におけるアルカリ金属の含有割合を低くする(すなわち、基材側の端における金属多孔体の空隙率を小さくする)ことは、基材と金属多孔体との接合強度を高めるという観点から有利である。また、膜厚方向外側のアルカリ金属含有割合を基材側より高くすることにより、金属多孔体全体としては所望の平均空隙率を確保しつつ(例えば、電池用電極の場合、金属多孔体全体の平均空隙率が5体積%以上、典型的には5体積%以上80体積%以下であることが好ましい。)、基材と金属多孔体との接合強度を高めることが可能となる。また、金属多孔体全体としては所望の平均空隙率を確保しつつ(例えば、金属多孔体全体の体積当たりに含まれる金属MAの量を過度に少なくすることなく)、外側の空隙率を上記平均空隙率よりも高くすることができる。このことは、該金属多孔体を電池の活物質として用いる場合に、該電池のエネルギー密度向上の観点から好ましい。複合メッキ膜の膜厚方向外側のアルカリ金属含有割合を基材側より高くすることには、該複合メッキ膜からアルカリ金属を除去しやすいという利点もある。
このように基材側よりも外側のほうがアルカリ金属の含有割合が高い複合メッキ膜からアルカリ金属を除去することにより、基材側よりも外側のほうが空隙率の高い金属多孔体を形成することができる。このような金属多孔体を基材上に有する電極によると、特に高性能な電池(例えばリチウム二次電池)が実現され得る。例えば、充放電サイクルに対する耐久性およびレート特性(例えば、急速充放電時と低速充放電時とで電池性能の差が少ないこと)の少なくとも一方の性能が改善された電池が実現され得る。かかる構造の金属多孔体は、例えば、高いハイレート特性が求められる車両電源用電池(例えばリチウム二次電池)の電極活物質として特に有用である。
なお、基材側と外側とでアルカリ金属の含有割合(ひいては金属多孔体の空隙率)を異ならせる程度は特に限定されない。例えば、外側のアルカリ金属含有割合を基材側の1.2倍以上(典型的には1.5倍以上であり、通常は2倍以上が好ましく、5倍以上、さらには10倍以上であってもよい。)とすることができる。
アルカリ金属の含有割合が膜厚方向に対して異なる複合メッキ膜は、例えば、メッキ膜の作製に使用するメッキ液の組成を途中で変更する(変化させる)ことにより形成され得る。基材側から外側に向かってアルカリ金属の含有割合が連続的に高くなる複合メッキ膜を形成する一手法としては、例えば、少なくともMA成分を含むメッキ液から基材上にメッキ膜を成長させつつ、該メッキ液にアルカリ金属成分を連続的に添加する(これにより、該メッキ液におけるアルカリ金属成分の含有比を徐々に高くする)手法を採用し得る。上記アルカリ金属成分は、単独で(例えば、固体状のアルカリ金属塩として)メッキ液に添加してもよく、有機溶媒に溶かした形態で添加してもよい。
かかる手法を適用した複合メッキ膜形成工程は、例えば、図9に示す概略構成を有するメッキ装置を用いて実施することができる。このメッキ装置20は、メッキ液21を貯留するメッキ槽22と、メッキ液を攪拌可能に構成された攪拌装置(攪拌翼)23と、メッキ槽内にアルカリ金属成分28を供給可能に構成されたアルカリ金属成分供給装置24と、直流電源25とを備える。少なくともMA成分を含むメッキ液21をメッキ槽22に貯留し、直流電源25に接続された基材(カソード)26と対極(アノード)27とをメッキ液21に浸漬してメッキを行う。このとき、攪拌翼23を回転させてメッキ液21を攪拌しつつ、アルカリ金属成分供給装置24からメッキ液21にアルカリ金属成分28を連続的に投入する。
かかるメッキ工程により、例えば図10に示すように、金属MA742とアルカリ金属744とが混在し、基材26側から外側に向かってアルカリ金属744の含有割合が連続的に高くなっている複合メッキ膜29を基材26上に形成することができる。その後、複合メッキ膜29に含まれるアルカリ金属744を水で溶かし出すことにより、図11に示すように、アルカリ金属の除去により生じた多数の細孔762を有し、基材26側から外側に向かって細孔(空隙)762の割合が次第に高くなる金属多孔体30が形成される。
また、基材側から外側に向かってアルカリ金属の含有割合が段階的に高くなる複合メッキ膜を形成する一手法としては、例えば、少なくともMA成分を含むメッキ液から基材上にメッキ膜を所定厚さまで成長させ、ここでいったんメッキ膜の成長を止めて(通電を止める方法、メッキ液から基材を引き上げる方法、等を採用し得る。)、該メッキ液にアルカリ金属成分を添加し(すなわち、該メッキ液のアルカリ金属濃度を高め)、その後、さらにメッキ膜を成長させる手法を採用し得る。
基材側から外側に向かってアルカリ金属の含有割合が連続的に低くなる複合メッキ膜を形成する一手法としては、例えば、MA成分およびアルカリ金属成分を含むメッキ液から基材上にメッキ膜を成長させつつ、MA成分を含みアルカリ金属成分を含まない有機溶媒を上記メッキ液に連続的に添加する(これにより、該メッキ液におけるアルカリ金属成分の含有比を徐々に低くする)手法を採用し得る。基材側から外側に向かってアルカリ金属の含有割合が段階的に低くなる複合メッキ膜を形成する一手法としては、例えば、少なくともMA成分を含むメッキ液から基材上にメッキ膜を所定厚さまで成長させ、ここでいったんメッキ膜の成長を止めて、MA成分を含みアルカリ金属成分を含まない有機溶媒を上記メッキ液に添加した後、さらにメッキ膜を成長させる手法を採用し得る。
本発明の製造方法では、複合メッキ膜からアルカリ金属を除去することにより細孔が形成される。したがって、多孔体の細孔形状に対応した微細構造を有する被メッキ表面(ここでは基材表面)を用意する手間を要しない。例えば、特許文献1のような樹脂粒子を堆積する工程は不要であり、さらに該樹脂粒子を除去する工程も不要である。このことは、金属多孔体の製造プロセスを簡略化する上で有利である。また、本発明の方法によると、得られた金属多孔体に樹脂分が不純物として残る事象を確実に回避することができる。また、複合メッキ膜から金属多孔体を形成する操作は水洗により行われ、樹脂が熱分解するような高温での熱処理や、アルカリ金属以外の金属(例えばCu等)を溶解させる意図で行われる強酸あるいは強塩基による処理を必要としない。したがって、例えば集電体として利用可能な基材(導電性金属製の表面を有する基材等)上で金属多孔体を製造する場合においても、その製造過程が上記基材に与える影響(例えば、熱処理に伴う非意図的な合金化、酸やアルカリによる腐食等)を防止することができる。
ここに開示される方法は、図3に示すように、基材72上に金属多孔体76を有する複合材料70の製造に好ましく適用され得る。かかる構成の複合材料70は、例えば、金属多孔体76を活物質とし、導電性を有する基材(金属多孔体に隣接する部材)72を集電体とする電極(リチウム二次電池用電極等)として好ましく利用され得る。したがって、この明細書により開示される事項には、Liを可逆的に吸蔵および放出可能な金属多孔体を活物質として備え、該活物質が集電体(例えば、Cu等の導電性金属を主体に構成された部材)に保持されたリチウム二次電池用電極を製造する方法であって:有機溶媒中にメッキ成分を含むメッキ液を用いてLiを可逆的に吸蔵および放出可能な金属MAとアルカリ金属とを含む複合メッキ膜を集電体上に形成すること;および、前記集電体上において前記複合メッキ膜に含まれるアルカリ金属を水洗により除去すること;を包含する電極製造方法が含まれる。
以下、本発明に係る金属多孔体を活物質として備えるリチウム二次電池の一好適例として、上記複合材料を負極に用いたリチウムイオン電池の構成につき説明するが、本発明に係る金属多孔体の使用形態をこれに限定する意図ではない。
ここに開示されるリチウムイオン電池は、上記複合材料を負極に用いることにより特徴付けられる。したがって、本発明の目的を実現し得る限り、他の電池構成材料や部材等の内容、材質あるいは組成は特に制限されず、従来のリチウムイオン電池と同様のもの等を用いることができる。例えば、正極としては、Liを可逆的に吸蔵および放出可能な活物質を、必要に応じて導電材、結着剤(バインダ)等とともに正極合材として集電体に付着させた形態のものを好ましく使用し得る。上記活物質としては、一般的なリチウムイオン電池に用いられる層状構造の酸化物系正極活物質、スピネル構造の酸化物系正極活物質等を好ましく用いることができる。かかる正極活物質の代表例として、リチウムコバルト系酸化物、リチウムニッケル系酸化物、リチウムマンガン系酸化物等のリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。導電材としては、カーボンブラック等の炭素材料、ニッケル粉末等の導電性金属粉末が例示される。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂が例示される。正極集電体としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。
正極と負極との間に介在される電解質としては、非水溶媒と該溶媒に溶解可能なリチウム塩(支持電解質)とを含む液状電解質が好ましく用いられる。かかる液状電解質にポリマーが添加された固体状(ゲル状)の電解質であってもよい。上記非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等の、一般にリチウムイオン電池の電解質に使用し得るものとして知られている非水溶媒から選択される一種または二種以上を用いることができる。
上記支持電解質としては、LiPF,LiBF,LiN(SOCF,LiN(SO,LiCFSO,LiCSO,LiC(SOCF,LiClO等の、リチウムイオン電池の電解液において支持電解質として機能し得ることが知られている各種のリチウム塩から選択される一種または二種以上を用いることができる。支持電解質(支持塩)の濃度は特に制限されず、例えば従来のリチウムイオン電池で使用される電解質と同様とすることができる。通常は、支持電解質を凡そ0.1mol/L〜5mol/L(例えば凡そ0.8mol/L〜1.5mol/L)程度の濃度で含有する非水電解質を好ましく使用することができる。
上記正極および負極を電解質とともに適当な容器(金属または樹脂製の筐体、ラミネートフィルムからなる袋体等)に収容してリチウムイオン電池が構築される。ここに開示されるリチウムイオン電池の代表的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。セパレータとしては、一般的なリチウムイオン電池に用いられるセパレータと同様のものを用いることができ、特に限定されない。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート、不織布等を用いることができる。リチウムイオン電池の形状(容器の外形)は特に限定されず、例えば、円筒型、角型、コイン型等の形状であり得る。
本発明により提供されるリチウムイオン電池の一構成例を図7に示す。このリチウムイオン電池10は、正極12および負極14を具備する電極体11が、図示しない非水電解液とともに、該電極体を収容し得る形状の電池ケース15に収容された構成を有する。負極14は、長尺シート状の負極集電体(例えば銅箔)142上に、金属多孔体(例えばSn多孔体)144が所定の厚さで設けられた構成を有する。この金属多孔体144は、負極14の活物質(活物質層)として機能する。電極体11は、長尺シート状の正極集電体122上に正極活物質層124を有する正極12と、上記構成の負極14とを、二枚の長尺シート状セパレータ13とともに捲回することにより形成される。電池ケース15は、有底円筒状のケース本体152と、上記開口部を塞ぐ蓋体154とを備える。蓋体154およびケース本体152はいずれも金属製であって相互に絶縁されており、それぞれ正負極の集電体122,142と電気的に接続されている。すなわち、このリチウムイオン電池10では、蓋体154が正極端子、ケース本体152が負極端子を兼ねている。
以下、本発明に関する実施例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定する意図ではない。
<実施例1>
100g/LのLiClおよび50g/LのSnClをDMFに溶解してメッキ液を調製した。基材としては、所定の前処理(常法による脱脂、ソフトエッチングおよび酸浸漬)を行った後に水洗し、水分を取り除いた銅箔(厚さ10μm)を使用した。この銅箔を上記メッキ液に浸漬し、2.0A/dmの電流密度でメッキを行うことにより、該銅箔の一方の表面に厚さ2μmのSn−Li複合メッキ膜を形成した。次いで、得られた複合メッキ膜付銅箔を水洗した。これにより、上記複合メッキ膜中のLiが水に溶出し、残ったSnからなる多孔質膜(Sn多孔体膜)が形成された。このようにして、銅箔の片面にSn多孔体膜(活物質層)を有する電極を作製した。
図1は、本例に係る電極の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して得られた像(SEM像)である。複合メッキ膜中のLiを水で洗い出すという簡易な操作により、他数の細孔を有するSn膜(Sn多孔体膜)が形成されたことがわかる。
<実施例2>
50g/LのSnClをDMFに溶解して初期メッキ液を調製した。例1と同じ前処理を施した銅箔を上記初期メッキ液に浸漬し、2.0A/dmの電流密度で2.5分間メッキを行った。ここで、上記2.5分のメッキ期間中、上記初期メッキ液に、1分間当たり40g/Lの速度でLiClを連続的に添加して攪拌溶解させた。このようにして、上記銅箔の一方の表面に厚さ2μmのSn−Li複合メッキ膜を形成した。その後、得られた複合メッキ膜付銅箔を実施例1と同様に水洗処理することにより、銅箔の片面にSn多孔体膜(活物質層)を有する電極を作製した。
図12は、本例に係る電極表面のSEM像である。上記のようにメッキ液のLiCl濃度を0g/Lから100g/Lまで連続的に上昇させつつ複合メッキ膜を形成したことにより、表面の空隙率が内部よりも高いSn多孔体膜が形成されたことがわかる。
<比較例1>
例1と同じ前処理を施した銅箔を、30g/Lの硫酸第一スズおよび100g/Lの硫酸を含む市販の水系メッキ液(レイボルド株式会社製品、商品名「クルモ」を使用した。)に浸漬し、2.0A/dmの電流密度でメッキを行うことにより、該銅箔の一方の表面に厚さ2μmのSnメッキ膜を形成した。メッキ終了後、上記メッキ液からSnメッキ膜付銅箔を引き上げて水洗した。このようにして、銅箔の片面にSnメッキ膜(活物質層)を有する電極を作製した。
図5は、本例に係る電極表面のSEM像である。実施例1に係る電極の表面(図1)や、実施例2に係る電極の表面(図12)とは異なり、緻密なSn膜が形成されていることがわかる。
[耐久性評価]
実施例1および比較例1に係る電極を、それぞれ直径15mmの円形に打ち抜いて試験用電極とした。対極としては、直径15mm、厚さ0.15mmの金属リチウム箔を使用した。セパレータとしては、直径22mm、厚さ0.02mmの多孔質ポリオレフィンシートを使用した。このポリオレフィンシートは、ポリプロピレン層の両側にポリエチレン層が設けられた三層構造(PE/PP/PE)を有する。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との体積比3:3:4の混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を約1モル/Lの濃度で溶解させたものを使用した。これらの構成要素をステンレス製容器に組み込んで、直径20mm、厚さ3.2mm(2032型)の図4に示すコインセル50を構築した。図4中、符号51は正極(試験用電極)を、符号52は負極(対極)を、符号53は電解液の含浸したセパレータを、符号54はガスケットを、符号55は容器(負極端子)を、符号56は蓋(正極端子)をそれぞれ示す。
上記コインセルに対し、電流密度0.1mA/cm、上下限電圧1.0V〜0.01Vの条件で30サイクルの充放電を行った。このときのサイクル数と放電容量との関係を図6に示す。この図から明らかなように、活物質として一般的な緻密構造のSnメッキ膜を有する電極(比較例1)を用いたコインセルでは、該Snメッキ膜がLiの吸蔵および放出に伴う体積変化を吸収し得ないため、5サイクル目付近から容量が大きく低下した。これに対して、活物質としてSn多孔体膜を有する電極(実施例1)を用いたコインセルは、容量の変動が小さく、良好な耐久特性を示した。初回の放電容量と30サイクル目の放電容量との比から算出した容量維持率は、比較例1では19%であったのに対し、実施例1では68%と、著しく改善された。
なお、メッキ液の組成により金属多孔体の空隙率を調節し得ることを確認するため、以下の実験を行った。すなわち、100g/LのLiClおよび75g/LのSnClをDMFに溶解して調製したメッキ液を使用し、その他の点については実施例1と同様にして銅箔上にSn多孔体を形成した。SEM観察の結果、このSn多孔体は実施例1に比べて低い空隙率を有することが確認された。この結果は、MA(ここではSn)1モルに対するアルカリ金属(ここではLi)の含有量を少なくすることにより、より空隙率の低い金属多孔体が形成されることを示している。
さらに、実施例2に係る電極を用いて上記と同様にコインセルを構築し、同様に耐久性評価を行った。その結果、基材側から表面に向かって徐々に空隙率が高くなるように形成されたSn多孔体膜を活物質として有する電極(実施例2)を用いたコインセルは、容量の変動が小さく、良好な耐久特性を示すことが確認された。初回の放電容量と30サイクル目の放電容量との比から算出した容量維持率は、実施例2では71%であり、比較例1の19%に対して著しい改善がみられた。また、この実施例2の容量維持率の値は、実施例1の68%と比べても更に高い。これは、基材側の空隙率を低くしたことにより基材との密着性が向上したためと考えられる。
[レート特性評価]
実施例1、実施例2および比較例1の各電極を用いて構築された上記コインセルに対し、電流密度0.05mA/cmの条件で極間電圧が0.01Vになるまで試験用電極にLiを吸蔵させ、このときのLi吸蔵容量(放電容量)C0.05を測定した。次いで、電流密度0.05mA/cmにて極間電圧が1.0Vになるまで試験用電極からLiを放出させた後、電流密度10mA/cmの条件で極間電圧が0.01Vになるまで試験用電極にLiを吸蔵させ、このときのLi吸蔵容量(放電容量)C10を測定した。これらの測定結果から、次式:C10/C0.05×100[%];により、放電容量のレート特性を評価した。得られた結果を表1に示す。この表1には、実施例1、実施例2および比較例1の容量維持率を併せて示している。
この表に示されるように、Sn多孔体膜を備える電極を用いて構築された実施例1のセルは、緻密構造のSnメッキ膜を用いた比較例1のセルに比べてレート特性が約1.3倍に向上した。これは、緻密構造のSnメッキ膜に比べてSn多孔体膜のほうが電解液との接触面積(反応面積)が大きいためハイレート特性が向上したものと考えられる。さらに、基材側から外側に向かってSn多孔体膜の空隙率を高くした実施例2のセルによると、比較例1に対して2倍以上、実施例1と比べても1.7倍以上という優れたレート特性が実現された。これは、活物質の多孔質化による効果に加えて、該多孔体のうち外側の空隙率をより高くしたことにより、ハイレート使用時にもSn多孔体膜の内側まで電解液が行き渡りやすくなり(いわゆる液枯れが緩和され)、該多孔体の全体をより均一に利用して電池反応が進行したためと考えられる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記実施例では基材上に形成された金属多孔体を該基材から分離することなく使用して電池を構築したが、上記金属多孔体を基材から分離して用いてもよい。例えば、複合メッキ膜を基材から分離した後に該メッキ膜を水洗するか、あるいは基材上で形成した金属多孔体を該基材から分離することにより、金属多孔体が単独で、例えば粉末の形態で得られる。この金属多孔体粉末をリチウム二次電池用電極の活物質(典型的には負極活物質)として用いてもよい。例えば、該金属多孔体粉末を必要に応じて結着剤等とともに負極合材として負極集電体に付着させた形態の負極とすることができる。
本発明に係る金属多孔体によると、より安定して大きな充放電容量を発揮するリチウム二次電池が構築され得る。したがって、本発明によると、例えば図8に模式的に示すように、かかるリチウム二次電池(組電池の形態であり得る。)10を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)1が提供される。
1 自動車
10 リチウム二次電池
12 正極
13 セパレータ
14 負極
142 集電体
144 金属多孔体
15 電池ケース
152 ケース本体(負極端子)
154 蓋(正極端子)
70 複合材料
72 基材(集電体)
74 複合メッキ膜
742 金属MA
744 アルカリ金属
76 金属多孔体
762 細孔

Claims (12)

  1. リチウム二次電池の活物質用の金属多孔体を製造する方法であって、
    有機溶媒中にメッキ成分を含むメッキ液を用いて、リチウムを可逆的に吸蔵および放出可能な金属MAとアルカリ金属とを含む複合メッキ膜を基材上に形成すること;および、
    前記複合メッキ膜に含まれるアルカリ金属を水洗により除去すること;
    を包含し、
    ここで、前記複合メッキ膜は、前記メッキ液から前記金属MAと前記アルカリ金属とを共析させることにより形成される、リチウム二次電池活物質用金属多孔体製造方法。
  2. 前記アルカリ金属がリチウムである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記基材の少なくとも表面は銅製である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記金属MAがスズである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記メッキ液は、前記金属MAと前記アルカリ金属とを1:2〜1:50のモル比で含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記複合メッキ膜は、前記アルカリ金属の含有割合が膜厚方向の一部と他部とで異なる箇所を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記複合メッキ膜は、前記アルカリ金属の含有割合が膜厚方向に対して徐々に変化する箇所を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記複合メッキ膜は、該メッキ膜のうち前記基材側よりも外側のほうが前記アルカリ金属の含有割合が高くなるように形成される、請求項6または7に記載の方法。
  9. 前記複合メッキ膜に含まれるアルカリ金属を水洗により除去することにより、空隙率20〜60体積%の金属多孔体を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 請求項1からのいずれか一項に記載の方法により製造されたリチウム二次電池活物質用金属多孔体を活物質として備える、リチウム二次電池用電極。
  11. 請求項10に記載の電極を用いて構築された、リチウム二次電池。
  12. 請求項11に記載のリチウム二次電池を備える、車両。
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